ツバサ「可能性の頂点へ。」

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ツバサ-アイキャッチ4
1: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:28:59.13 ID:/sRruJaG.net
以前落ちてしまったスレです。

A-RISEのifストーリーです。

元スレ: ツバサ「可能性の頂点へ。」

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2: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:29:33.56 ID:/sRruJaG.net
---15年前


平凡な家庭の第一子として、私は生まれた

体重も平凡、見た目も平凡


平凡な学校生活を迎え

そこそこの友達にも恵まれた


学力に秀でていた訳ではない

運動能力も、一般的なそれより少し高いだけで


特にこれといった特徴のない

少し活発な、女の子だった


この境遇を疎ましく感じた訳じゃない

ただ---何か、物足りなかった


何かを、求めていた
3: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:30:02.61 ID:/sRruJaG.net
それが何かと聞かれると


『何か』と答えるしか無かった

明確なヴィジョンがあった訳ではない


ただ、毎日巡り往く日常に

…少しだけ、逆らってみたいと思った


ただ、それだけの理由



ただ、それだけの理由で

…私は、ここに足を踏み入れたのだった





「…では、受験番号28番。」


「…はい!」


「綺羅ツバサです。」

「よろしくお願いします!」
4: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:30:39.37 ID:/sRruJaG.net
-----


「…ありがとうございました!」


「…では、次。」

「受験番号29番。」


「…はい!」



私は今、受験会場にいる

秋葉原で唯一、芸能科のある高校

---UTX学院


入学した者には、相応の待遇と

結果次第で、芸能界への道が約束される



…別に、芸能界が目当てではなかった

ただ、日常では絶対に得られない刺激が

ここにはあると感じた



「…では次、受験番号33番。」


「はい!」
5: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:31:37.23 ID:/sRruJaG.net
そして今、私はここにいる

相応の設備を提供してくれる高校

見返りが大きい分、家庭へのプレッシャーも大きい


受験料:5万円

入学金:100万円


その辺の私立大学と変わらない金額

とてもじゃないけど

ごく平凡な家庭にとって高すぎるそれは

到底、すんなり払ってもらえるものではなかった


…それに、なりたい物があった訳じゃない

単に興味本位な理由で、受験を許してもらえる訳がなかった


やはり私には、平凡な人生が似合っているのだろうか

…そう思っていた矢先


『推薦入試』の案内が、届いた
7: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:32:37.58 ID:/sRruJaG.net
推薦入試で良い成績を収めれば

特待生として、入学金が免除になる


また、学内で優良な成績を獲得する事が出来れば

授業料の免除、その他の特約もつく


…これしか、無いと思った


両親を説得して

落ちれば、諦めるという約束の下

私は、UTX学院の推薦入試を受ける事になった



…正直、自信と呼べるものは無かった

受験して落ちれば、笑い者だ


それも、あのUTX学院

誰が見ても、不釣り合いだった
8: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:33:14.39 ID:/sRruJaG.net
…だけど、それでも

これに、賭けてみたいと思った


合格できなくてもいい

上を知る事で

何か、自分のこの平凡な人生が変わってくれれば


…そんな、願いもあった



幸い、何人かの友達は応援してくれ

両親の勧めで、ダンススクールに少しの間、通わせてもらえる事にもなった


毎日毎日、自分との闘い

何一つ出来なかった、自分を恥じた


…なのに、諦めようとは一度も思わなかった


なぜか、高揚していた

何かが変わる気がする


…ただ、それだけが続ける理由だった
9: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:34:08.41 ID:/sRruJaG.net
自分の番が終わって、少し考える

果たして私は、合格できるのだろうか


ダンスも歌も、付け焼き刃だ

それに、本気で目指している生徒だって、いるだろう


そんな場所にいる私は、凄く小さく思えた


…落ちたら、仕方が無い

向いていなかった、という事だから


その言葉を飲み込んで

私は、他の受験生を見ていた


特に、目立った感じの生徒はいなかった

単に私が、興味が無かっただけかもしれない



…けれど、そんな考えは

すぐに、間違いだと気付かされた


「…受験番号38番。」


「…はい。」
10: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:34:59.70 ID:/sRruJaG.net
「統堂英玲奈です。」

「よろしくお願いします。」



~♪


「…」


ただ---魅せられた


彼女の、踊っている姿に

…いや、舞う、と言った方が正しかったのかもしれない


面接官の目の色が変わるのが、見て取れた

受験生の空気が変わったのを、肌で感じた



「綺麗…」


そんなありふれた言葉しか、出てこなかった


それ程までに、その空間は

彼女に支配されていた
11: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:35:55.83 ID:/sRruJaG.net
UTX学院の推薦受験の内容は

学院側が用意した選曲から

ひとつ選んで、歌とダンスを披露する、というもの


選曲は5曲あって

それが5段階の難易度に分かれていた


私が選んだのは、難易度でいうと3番目

可も無く、不可も無い選曲

自分に出来る精一杯が、ここだと思ったから


…だけど、彼女は

今まで誰一人やらなかった


最高難易度の曲を、踊って見せた


「…ありがとうございました。」


一瞬の間を置いて

受験会場から、拍手が巻き起こる


お礼を言った彼女の息は

…ひとつも、乱れてはいなかった
12: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:36:38.11 ID:/sRruJaG.net
-----



「…あのっ。」


「…?」


受験が終わって、みんなが帰り支度をしている時

私は、彼女に声をかけた


…なぜ、声をかけたのかは分からなかった


私が、単に何も考えていなかったからかもしれない

その風格に圧倒されて

みんなが、遠巻きに見つめる中


ただ一人近付いたのが、私だったから


「君は…」


「綺羅ツバサ、よ。」


「…そうか。」

「私は…」


「知ってる。」

「統堂英玲奈さん。」
13: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:37:03.89 ID:/sRruJaG.net
「…そうか。」

「で、用件は何だ?」


「用件というか…」

「もし良かったら、少し話さない?」


「…」

「なぜ…?」


「何故って…駄目かしら?」


「…いや。」

「だが、話す事なんて特には無いと思うが…」



第一印象は、ただの嫌な奴

好意的に笑顔で話しかけた私を


ばっさりと、切り捨てられた


「…いいから、行きましょう?」


---単なる、意地だった
14: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:37:43.43 ID:/sRruJaG.net
-----



「…君は、人の話を聞かないな。」


「それは…貴女もでしょう?」


学内に用意されたカフェに来て

彼女の第一声に、少しイラッとする


…こう見えても、私は大人しい性格ではない


「少しくらい、いいでしょ?」

「せっかく、会えたんだから。」


「それに、このカフェに入れるのは、今日しかないんだから。」


「入学すれば、入り放題だと思うが…」


「それは、貴女だけでしょう?」

「私は、まだ入学できるなんて決まってない。」


とことん、神経を逆撫でされる

人の事言えないかもだけど、これは流石に無いんじゃないかしら?
15: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:38:16.23 ID:/sRruJaG.net
「…いや、私はもう来ないよ。」


「…は?」


「ここに、入学するつもりは無いからな。」


「…なんで?」

「あのダンスと歌なら、余裕で合格なのに。」


…訳が分からない

あんなに、みんなの注目を集めて

何が、不満なのか


「別に、入学したくて受験した訳じゃないんだ。」

「単なる、腕試しだった。」


「腕試し…?」


「芸能科に、興味がある訳じゃない。」

「ただ、この辺りで一番倍率が高かったから。」


「…挑戦しただけだ。」
16: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:39:23.36 ID:/sRruJaG.net
「…何それ。」


私が言えた事じゃない

それでも、腹が立った


ここに合格する事を夢見て

本気で、頑張って来た人たちがいるのに


そんな人たちよりいい結果を出しておきながら

…そんな理由だけで、受験したなんて



「…別に、どう思ってくれてもいい。」

「単に、興味が無いだけなんだ。」


「…昔から、やれば何だって出来て。」

「特に苦労した事が無かった。」


「…」


「ただの自慢に聞こえるだろうが。」

「…これも、難儀な物でな。」
17: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:40:13.87 ID:/sRruJaG.net
「やれば出来た人生だ。」

「たった15年という間だが。」

「何かを本気でやる、という事が無くなってしまった。」


「ここを受けたのも、それが理由だ。」

「倍率15倍なんて狭き門。」


「合格する事が出来なければ。」

「一度挫折を味わえば。」


「…何か、変わるかもしれない。」


「…ただ、それだけが理由なんだ。」


「…」


何故だか、私にも分からなかった

ただ、それは咄嗟に口から出た


「…貴女にだけは、負けたくない。」
18: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:40:45.75 ID:/sRruJaG.net
「…!」


初めて、彼女の目が見開いたのを見た

こんな顔もするんだ


だけど、それも一瞬

さっきまでの、彼女に戻る


「…だが、合格するかは分からないのだろう?」


確かに、分からない

むしろ、合格できたら奇跡みたいな物だった


それでも…


「絶対、合格してみせる。」

「だから、貴女も入学して。」


「…」


「いつか、貴女を挫折させてあげるわ。」
19: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:41:19.57 ID:/sRruJaG.net
「…」


「…」


「…ふっ。」

「はははははっ…!」


突然、彼女は笑い出した

って言うか…笑う事、出来るのね


「ははっ…いや、すまない。」

「今まで、そんな事を言う人なんていなかったからな。」


「…少し、驚いた。」


「な、なによ…!」

「私は真面目に…」


「いや、笑ってしまったのは謝る。」

「だが…少し、期待している。」


「…!」
20: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:42:08.45 ID:/sRruJaG.net
「…いいだろう。」

「君に、乗せられてみるとしよう。」


そう言って彼女は、携帯を取り出した


「連絡先を、教えてもらえないか。」

「君が合格すれば、連絡をくれ。」

「私も、ここに入学するとしよう。」


「…」


少し癪だったけど

私も、自分の携帯を出した。


「…では、私は帰るよ。」

「良い連絡を、待っている。」


そう言って、席を立つ彼女


「絶対…」

「絶対、負けないから!」


「…ああ、望む所だ。」



これが…

英玲奈との---初めての出会いだった
21: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:43:07.70 ID:/sRruJaG.net
-----


あの日から2週間

とても、早かった気がする


とは言っても、落ちた時に備えて

一般の高校への受験準備もしていたからかもしれない


落ちていれば…音ノ木坂学院に

受かっていれば…


あの、嫌みな彼女とUTXに


学校から帰って、お母さんから封筒を受け取った


数百グラムにも満たない封筒の中に

私の高校生活が入っているとなると

開けるのが億劫になる


「ふぅー…」


大きく息を吐き出して

ビリッと封筒に切れ目を入れる
22: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:43:47.11 ID:/sRruJaG.net
「…」


封筒の中に入ってた、一枚の紙切れ

目に飛び込んで来たのは…


『合格』の2文字


「…!」


嬉しかった

半ば諦めかけていた道が、繋がったのだから


…でも、それ以上に

見返したい気持ちの方が、大きかった


両親に報告に行く前に

手早く、メールを打つ


返って来たメールには

絵文字も、句読点も無く


…ただ

『おめでとう』とだけ


でも…なぜだか

少しだけ、認められた気がした
23: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:44:30.20 ID:/sRruJaG.net
-----


あれから、時は過ぎて

中学は、卒業式を残すだけになった


そして今日は

あのUTX学院の、入学説明会


推薦入試の人も、一般入試の人も

今日、全員が集まる


もちろん、他の学科の人達もいるから

今日は、学内全体が人で溢れている


「えっと、芸能科の説明会場は…」


辺りを見回して、看板を探す

人より少し低い背が

こんな時は、もどかしく感じる


「…ッ、ごめんなさい。」

誰かと、ぶつかってしまった

すぐに振り向いて、頭を下げる
24: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:45:02.18 ID:/sRruJaG.net
「…こちらも、ごめんなさい。」

「なんだか人が多くって…」


そう答えた彼女は

この学院にふさわしいような

お嬢様みたいな人だった


ゆるいパーマのかかったその髪をなびかせて

彼女も、すっと頭を下げた


「…あ、えっと。」


「貴女も、芸能科?」


「え?ああ…ええ。」


「そう。」

「私と同じね。」


「よろしく♪」


手を、差し出された
25: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:45:38.25 ID:/sRruJaG.net
「…こちらこそ。」

「綺羅ツバサよ。」


「ふふっ、ありがとう。」

「私は、優木あんじゅ。」


「仲良くしましょうね♪」


どこかの誰かとは違って

とても友好的な人


とった手は、ほんのりと暖かかった


「それじゃ、説明会に向かいましょう?」

「だいぶ、空いて来たみたいだし。」


「ええ、そうね。」

「こっちみたい、行きましょう。」


彼女の隣を歩いて、会場へと向かう

うちの中学からは私だけだったので

友達が増える事は、心強かった
26: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:46:14.98 ID:/sRruJaG.net
-----


説明会を一通り終え

学内の食堂で、昼食をとる


せっかく出会ったので、と

彼女---優木あんじゅと、共にいた


「それにしても、大人数だったわね。」


「…仕方ないんじゃないかしら?」

「都内有数の、お嬢様学校で。」

「人気も、芸能科が出来てからは上がってるみたいだし…」



「優木さんも…芸能科志望で?」

「アイドルとか…」


「あんじゅで良いわよ。」

「せっかく、仲良くなれたんだし。」


「…なら、私もツバサでいいわ。」

「名字で呼ばれるの、慣れてないから。」


「ふふっ、分かった♪」
27: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:47:14.89 ID:/sRruJaG.net
「そうねえ…」

「昔から、ちょっとした憧れはあって。」


「両親が、アイドルとかが好きで、勧められた感じかな?」

「もちろん、一番は私が、楽しそうだと思ったからだけど。」


「アイドル…か。」


「ツバサも、そうじゃないの?」


「私は…」


明確な理由があった訳じゃない

単に、変われるかも

…そんな理由


なにより、受験が終わってからは、ずっと…


「…私は、別にアイドルとかになりたかった訳じゃないの。」

「今までの平凡な人生を、何か変えてみたくって。」


「受験してみたのが…始まり。」
28: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:47:55.51 ID:/sRruJaG.net
「…でも、特待生でしょ?」

「すごいじゃない。」


「私は流石に無理だったから、一般受験にしたもの。」



「それなんだけど…」

「私も、受かるなんて思ってなかったの。」

「ダンスも歌も、つい最近始めたばかりで…」


「そうなの?」

「でも、それで推薦を通ったんだから凄いじゃない。」

「きっと…才能あるのよ。」


「才能、か…」


『才能』


その言葉を聞くと、あの姿がちらつく


…そういえば、今日は見てないな
29: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:48:34.15 ID:/sRruJaG.net
「ああ…何だかイライラしてきた。」


「イライラ?」


「入試の時にね?」

「ダンスも歌も、一目見て凄い、って分かるような子がいたの。」

「正直…魅せられた。」


「でも、終わってから彼女に聞いたら。」

「単なる、腕試しだ、って。」

「入学する気なんてない、って言われちゃって。」


「なんだか…それに腹が立って。」

「そんな才能あるのに、何事にも無関心で。」


「なんだか…負けたくない、って思ったの。」

「いつか、見返してやる、って。」


「…」


「…ふふっ。」

「そうは言うけど、ツバサはその子を認めてるのね?」


「…!」
30: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:49:04.78 ID:/sRruJaG.net
「み、認めてるって言うか…」

「確かに、歌もダンスも凄かったけど。」

「あんなに性格悪い人、見た事が無いっていうか。」

「統堂英玲奈め…」



「…紹介、どうもありがとう。」


「…!」

「統堂英玲奈!」



「…久しぶりだな、綺羅ツバサ。」

「元気にしていたか?」


「…今、その元気が吹き飛んだわ。」


「…それは良かった。」


皮肉も、通じない
31: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:49:47.93 ID:/sRruJaG.net
「…君は?」


「優木あんじゅです♪」

「英玲奈さん…で、いいかしら?」


「ああ、好きに呼ぶといい。」

「君も、芸能科か?」


「ええ、そうよ。」

「これからよろしくね?」


「…ああ、そうだな。」


そう言って、彼女は隣の席に着いた


「何で座って…」


「なに、他の席が空いていなくてな。」

「…仕方なく、だ。」


この、態度

やっぱり…好きになれない
32: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:50:52.89 ID:/sRruJaG.net
それから、あんじゅが中心となって

3人で昼食の時間を過ごした


…とは言っても

私は彼女の態度から、ケンカ腰だし

統堂英玲奈は我関せず、と言った態度で昼食をとる


あんじゅだけが

さも可笑しいと言わんばかりに、笑っていた


笑う顔にも、どこか気品を感じて

…改めて、自分が場違いな所にいる事を理解する


それでも、悔いはなかった

むしろ、早く入学したい


その気持ちで、溢れていた


…不安よりも、負けたくない気持ちが大きかったから
33: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:51:38.14 ID:/sRruJaG.net
「…そういえば。」

「君は、入試の時には見なかったな。」


「ええ、私は一般入試だから。」

「だから芸能科と言っても、2人とはレベルが違うの。」


「あ…そっか。」


私と統堂英玲奈は、言わば特待生組

それに対して、あんじゅは研修生組

受ける授業も、基礎的な内容からのスタートになる


芸能科は、特に体育会系の格差がある

研修生組は、校内で行われる昇級審査に合格しないと

特待生組のクラスに入る事はできない


また、使用可能なスペースも限られており

その名の通り、研修扱いになっている
35: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:52:12.42 ID:/sRruJaG.net
私達、特待生組は

その上の存在と言った所で

好きな時間に、学内のトレーニングルームや

レッスン場を使用できる

屋内プールも、入り放題


また、学内にあるステージで、公演を行う事が出来る

一般に解放してるこのステージでは

1日2回、公演が行われて

そこで評価を得られた人が、成績優良者となる


また、この特待生組の中でも

特に、優秀だとされる人に関しては

授業料免除などの高待遇のほか

学内のプライベートラウンジの使用許可などの特典がつく



…何よりも
36: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:52:45.58 ID:/sRruJaG.net
この学院のコネクションを使って

卒業と同時に、芸能界入りを果たす事が出来る


…私と統堂英玲奈は、その一歩手前に立っている



とは言え、そこに上がれるのは、ほんのわずか

それどころか、過去、芸能科が設立されてからは1組しかいない

ほとんどの生徒は、卒業してからも養成学校に通ったり

別々の道を歩んでいく


それでも入学者が増え続ける一方なのは

それだけ、芸能界と言うブランドが大きいのかしら?



「はあ…2人とも凄いわね。」

「ツバサも英玲奈さんも、応援してるから頑張ってね♪」


「…それは、綺羅ツバサ次第だな。」


「…すぐに負けても、知らないわよ?」
37: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:53:27.77 ID:/sRruJaG.net
「ふふっ。」

「なんだか2人とも、すっごく仲がいいみたい♪」


「どこを見て言ってるの?」

「こんな、横暴な態度…」


「それを言うなら、君もだろう?綺羅ツバサ。」

「試験が終わってすぐ、連れ出されたのだからな。」


「少しくらい話してもいいじゃない。」

「統堂英玲奈には、そんな余裕すら無いの?」


「そもそも、君が勝手に私に負けないと宣ったのだろう?」


「それは…!」


「あのー…」


「何?あんじゅ。」


「どうした?優木。」


「どうして…お互い、フルネームで呼んでるの?」
38: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:53:54.27 ID:/sRruJaG.net
「何でって…」


「…ふむ。」

「確かに、そうだな。」


「これから同じクラスなのだから。」

「呼びたい様に呼んでもらって私は構わないが?」


「…確かにそうね。」


でも…なんて呼ぶ?

統堂さん?

いや、こんな態度の人に『さん』付けは…


英玲奈?

なんだか、馴れ馴れしい気が…



「あ、それと。」

「英玲奈さんも、私の事、あんじゅでいいよ?」


「…む、そうか。」

「では、よろしくな、あんじゅ。」
39: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:54:25.02 ID:/sRruJaG.net
「…君も、ツバサと呼ぼうか?綺羅ツバサ。」


「…」


「…いい。」


「…?」


「私の事は、綺羅ツバサでいいわ。」

「貴女の事も、統堂英玲奈と呼ばせてもらう。」


「その代わり…」


「貴女が、私を認めたら。」

「私の事、名前で呼んで。」


「…なるほど。」

「果たして、何年後だろうな。」


統堂英玲奈が、にやりと笑う
40: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:54:57.07 ID:/sRruJaG.net
「見てなさい。」

「すぐに、ツバサさんと呼ぶ事になるわ。」


「…ふっ。」

「では、そう呼ぶ練習をしておくよ。」


「…そろそろ時間だな。」

「私は、これで失礼する。」


「また後で会おう。」

「あんじゅ…そして、綺羅ツバサ。」


「ええ、英玲奈さん♪」


「…ふん。」


統堂英玲奈の流し目をあらぬ方向に流して

コップに入った水を、一気に飲む


「…すぐに、名前で呼ばせてあげるわ。」


熱くなる心とは裏腹に

あんじゅは、にこにこと笑ってた
41: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:55:32.03 ID:/sRruJaG.net
-----


中学の卒業式を終え

UTX学院の入学式を迎えた


特に何かを思う訳でもなく

入学式を過ごして、始まった授業


当然、高校生に変わりはないので

通常の高校と同じ様に一般科目の授業がある


だが、その比重は一般の学校の2/3ほど

また、体育の授業という物は無く

ただひたすら、上に昇るためのレッスンがある


想像はしていた

むしろ、覚悟をしていた


でも、それを上回る勢いで

UTX学院での生活が、始まった
42: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:56:08.38 ID:/sRruJaG.net
来る日も来る日も

一日の大半がレッスン

表情のトレーニングから

姿勢・ウォーキングの作法などを初めに

ステップや体幹のトレーニング

発声練習に筋力トレーニング


一日の大半をレッスンに使い

体を酷使していく


…分かっていた、はずなのに


ここで行っている事は

その辺の養成所よりも抜きん出ていた


授業が始まっておよそひと月

特待生組の人数は、半分にまで減っていた
43: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:56:46.88 ID:/sRruJaG.net
芸能科の特例として

続ける事が無理な場合

研修生組にランクダウンして、基礎を学ぶ場合と


…また、普通科の生徒として編入する事が出来る

UTX学院、独自のカリキュラムだった


説明会でこの話を聞いたときは

生徒の事を、ちゃんと考えてくれているのだと思った

最悪続けられなくても

UTX学院を卒業したというブランドは、得られるのだから


…だけど、そんなに甘い物ではなかった

この制度がある、本当の意味は

生徒にとって『逃げ道』が与えられているという事


それはつまり…

生半可な気持ちの生徒は、必要ないという事だった
44: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:57:16.57 ID:/sRruJaG.net
実際、仲良くなった友達が

次の日からいない、というのは多々あった


…たったひと月

たったひと月で、生徒の目の色が変わる


学校なんて、生易しい物ではなかった

言わば、学内そのものが

ひとつの芸能界として存在していた


ここでは、先輩などいない

みんなが同じレベルで扱われる

だからこそ、熾烈な競争が繰り広げられていた

芸能界入りを…目指して



私は---まだ、そこにたどり着けてすらいなかった
45: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:58:09.41 ID:/sRruJaG.net
当然と言えば、当然だけど

付け焼き刃で、こなせるレベルの物ではなかった


みんなの前で怒鳴られ

延々と、居残って練習する日が続いた


…それでも、まだ遠い

トップ争いなんて遠い夢の様に


地面を舐める、毎日が続いた


どちらかと言うと、プライドは高い方だと思う

それでも、逃げたいと思う事があった

毎日同じ事を繰り返して

同じ事で注意され、みんなの前に晒される


こんな恥ずかしい事を続けて

果たして意味があるのだろうか


…そんな事を、考える日もあった
46: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:58:44.41 ID:/sRruJaG.net
それでも未だに続けられるのは


平凡な毎日に戻りたくないという願望と

嫌でも目に入る、天才の横顔


私の持ってない物を持っている、その天才に

せめて、一泡吹かせてやりたい


私を突き動かすものは

ただ、その二つだった



「…では、今日はここまで!」

「各自、ストレッチと今日の復習を忘れないように!」


「解散!」


「「ありがとうございました!!」」
47: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 15:59:37.10 ID:/sRruJaG.net
…同じ学年に

言葉を発する生徒はいなかった

みんな、息も絶え絶えに

膝を落として、座り込む



疲れ果てた生徒は、重い腰を上げて出て行く


先輩達も、話はするが、元気は無い

私達より2年も先に入った人たちでさえ、こうだ


越えるべき壁は

一体、どれだけあるのだろうか



…今すぐにでも、座りたかった

膝が笑って、上手く立てない

でも、絶対に座らないと決めた


涼しそうな顔が、私の目の前にあったから
50: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:26:43.72 ID:/sRruJaG.net
「…」


「…何?」


「…いや、何でもない。」

「私は帰るよ。」

「また明日。」


「…ええ。」


一人になったレッスン場で

軽くストレッチをしてから、今日のおさらいをする


スタミナの無くなった

まっすぐ立てない程の体を、無理矢理動かす


まだ、足りない

全然、足りないから



「…」
51: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:27:11.01 ID:/sRruJaG.net
-----



「はあ…はあ…」

「も…だめ…」


力尽きて、うつぶせに倒れ込む

掛け時計を見ると、夜の8時を回っていた


「…気持ちいいわね。」


火照った体を冷ましながら

ひんやりと冷えた、床に寝そべる



「…お疲れさま♪」


目の前に、パックのジュースが置かれた

この声は…


「…あんじゅ?」


「…ふふ、振り向く元気もないんだね♪」


背中の方から、声が聞こえた
52: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:27:37.99 ID:/sRruJaG.net
なんとか起き上がって、壁にもたれる

動くには…もう少し、かかりそう


「こんな時間まで、自主練?」

「大丈夫なの?」


「…そう言う、あんじゅこそ。」

「もう、授業が終わって3時間も経ってるのに。」


「まあ…私も、同じようなものかしら?」


そう言って、あんじゅはジュースに口をつける


「…ありがとう。」

座って、2人でジュースを飲む


案外、未だに続けていられるのは

あんじゅが、いてくれるからかもしれない


…今度は、私が買って来てあげよう
53: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:31:10.90 ID:/sRruJaG.net
-----



--初夏

5月も終わりを迎え

暑く感じる日が多くなる


…そう言えば

今年の夏は、例年より暑くなるんだっけ



目の前に迫った、学内オーディション

与えられる--チャンス


これに、合格する事が出来れば---




「…やっぱり、ツバサも目指してるの?」


「何を?」


「…A-RISE。」


「ああ…」
54: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:31:40.35 ID:/sRruJaG.net
『A-RISE』


UTX学院の代名詞と言っても、過言ではない


数ある厳正なオーディションを勝ち抜いた人にのみ、背負う事を許される

至高の存在だった


まさに、頂点

以前に成績優良者の話の時にも触れたが

そこにたどり着けた人に与えられる特約・チャンス

それが、芸能科全員の目標と言っても、間違いではなかった


A-RISEに入れたからと言って、芸能界に入れる訳ではなかった

だけど、A-RISEに入る事が出来ないレベルでは

そもそも、芸能界を生き抜いていける訳が無い
55: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:32:15.58 ID:/sRruJaG.net
実質、UTX学院が設立したのは私が6年生になった時

そして、その翌年から、A-RISEは存在していた


常に少人数のそのグループは

結成当初から、世代交代を経て継承されて来た物だ

そこには年齢など関係なく、ただ実力のある人がメンバー

それ故に、今まで

継承して来たのは、2組だけ


…つまり、一期生と、現在の3年生

この2組だけが、A-RISEを名乗る事を許されている


幸か不幸か、今のA-RISEは3年生

来年の3月には卒業する


だからこそ、今年は殺気立っている

必ず、世代交代が行われるのだから
56: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:32:44.04 ID:/sRruJaG.net
「…だけど、流石に無理ね。」

「今はまだ、着いていくので精一杯。」

「とてもじゃないけど…遠すぎる。」


「でも、今の先輩が卒業すれば、メンバーは一人もいなくなる。」

「そうしたら、チャンスは平等に与えられるって事。」

「…そうでしょ?」


「そうだけど…」


確かに、あんじゅの言ってる事は正しい

何より、彼女に認めさせるには

そこにたどり着く他にないと思う


だけど…


私は、焦っていた


本当に---たどり着けるのだろうか
57: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:35:13.33 ID:/sRruJaG.net
-----


梅雨入りを果たした、6月

オーディションは、惨敗だった


結果を知るより先に、知ってしまった

理解してしまった


手の届かない、その場所に


…なら、どうすればいいんだろう

毎日のレッスンは、なんとか着いてこられる様になった

膝が笑う事も、少なくなった


レッスン後の、練習時間を増やした

早朝に来て、自主練をこなした


…成長だけは、感じる事が出来なかった


「…」


焦りだけが、大きくなる
58: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:35:51.53 ID:/sRruJaG.net
-----


オーディションの結果が知らされた

合格者は一名


…統堂英玲奈、だった


『A-RISE候補生』

統堂英玲奈は、わずか3ヶ月でたどり着いた


日に日に開く差に、更に焦りが募った

あの日の自分を、殴りたかった



「それでは、新しく特待組のメンバーを紹介する。」

「入ってこい。」



「…!」


研修生組からも、一名が昇級した





…あんじゅだった
59: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:37:02.81 ID:/sRruJaG.net
-----


「…驚いた。」


「ふふ、私もびっくりした。」

「でも…少し、嬉しかった。」


「英玲奈さんもそうだけど…」

「これからは、ツバサと一緒に頑張れるから。」


「…そうね。」

「改めて、よろしく。」


「ええ、こちらこそ♪」


レッスンが終わってから

いつも、あんじゅと一緒だった


…つまり、私が頑張っている間

あんじゅもあんじゅで、頑張っていたという事
60: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:37:47.71 ID:/sRruJaG.net
…正直な所

私も、嬉しかった


あんじゅが昇級したという事は

レッスン後、一緒に練習できるという事


疲れた時に、そばにいてくれた

いつも、笑ってるあんじゅを見て

私も、元気づけられていたから





--その考えを、私はすぐに後悔した


「…」


紹介後のレッスンで

彼女の実力を、目の当たりにしてしまったから
61: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:38:17.00 ID:/sRruJaG.net
UTXに入学して

私にも、アイドルやダンスの知識がついた

その知識が、目の前の状況を容易く理解させる


統堂英玲奈のダンスは

アップテンポなナンバーと相性がいい

メリハリ・静動と言えば良いのか

キレのあるダンスが、特徴的だった


…それに対するかの様に

あんじゅのダンスは、華麗で流麗

ステップから振り付けまで

全てが繋がっているようなダンス


統堂英玲奈とは逆のベクトルで

私はまた、魅せられた



こんなにも--違うのか
62: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:38:54.55 ID:/sRruJaG.net
-----



「…ふう。」

「やっぱり、特待生組のレッスンは違うわね。」

「流石に、疲れちゃった。」



「英玲奈さんも、ツバサも凄いわ。」

「この上、自主練なんて…」


そう言いながらも、笑顔を見せるあんじゅ

それが更に、私の焦りを加速させた



見下していた、なんて言うつもりは無い

それでも、心のどこかで

特待生としての自分を、誇っていたのかもしれない


研修生としてのあんじゅに

どこかで、安心しきっていたのかもしれない




…ただ、そこから目を背けていただけだった
63: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:42:03.86 ID:/sRruJaG.net
-----


「…ねえ、ツバサ。」

「今日も…?」


「…ええ。」

「先に、帰ってていいわ。」

「私は、もう少ししてから帰るから。」


「…分かった。」

「無理、しないようにね?」



あんじゅが帰った後も

ただひたすら、練習した


「…無理?」


無理なんて、とうにしている


それでもまだ、前に進めている気はしなかった
64: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:43:29.26 ID:/sRruJaG.net
「はあ…はあ…っ。」


あんじゅのダンスを見てから

今までに増して、練習を増やした


警備の人に注意されるまで、やっていた事もあった


あんじゅと過ごす時間は、ほとんど無くなった

家にいる時間も、短くなった


遅くまで自主練をして

家に帰れば寝て、また早朝に練習する


それでも、壁は高かった

越える事も、壊す事も出来ずに


ただ、目の前に立ちふさがっていた



---焦る
65: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:44:53.50 ID:/sRruJaG.net
-----



「…ッ。」


ふとした時に、目頭が熱くなる


「…」


泣いては、いけない

泣くもんか


「ふうー…っ。」


泣いたら、認めてしまう

前に進めない事を、理解してしまう



「もう一度…」


こんなのじゃ、認められる訳が無い

こんなのじゃ、見返してやれない


--ただ、それだけのために
66: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:48:00.65 ID:/sRruJaG.net
-----



「はあ…はあ…っ。」


あんじゅと一緒にレッスンを受けるようになって、ひと月

日に日に、その差が浮き彫りになる


ステップひとつ取っても

タイミング、つま先の向き、重心

意識しなければならない事はたくさんある


「…っと。」


私の隣で、ステップを踏むあんじゅ

数回で、それを物にしていた


…これが、センス

私が、持っていないもの


統堂英玲奈が挫折するのは

私ではなく、あんじゅなのかもしれない


その奥で踊る彼女の顔は見えない


…今、彼女の目に私は映っているのだろうか
68: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:51:10.23 ID:/sRruJaG.net
-----



「…」


どさっと、床に倒れ込む

時計は、夜9時を回っていた

そろそろ出て行かないと、また怒られる

…それでも、体は動かない


「才能…か。」



「…ッ。」


腕で、顔を覆う

私は、この先どうすればいいんだろう


何を、目指せばいいんだろう

そもそも私は


何を---




「…まだいたのか。」
69: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:53:01.33 ID:/sRruJaG.net
「…!」


バッと、飛び起きる


「もう、9時を過ぎている。」


「…分かってる。」


「…」


「…何しに来たの?」


「…」

「あんじゅから、君の様子がおかしいと聞いて。」


「…そう。」


「…」


「…笑えばいいじゃない。」


「笑ってほしいのか?」
70: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:53:26.11 ID:/sRruJaG.net
「…」

「…帰って。」


「…何のために、そこまで頑張る?」


「…何のため?」

「貴女を、見返すために決まってるじゃない。」


「…そうか。」


「…ッ。」

「一体何なの!?」

「笑えばいいじゃない!」


「お前なんかに、出来る訳が無いって!」

「何の才能も無い私が、滑稽だって!」

「そう言えばいいじゃない!!」


「…」


「貴女やあんじゅみたいに…」

「才能がある人たちとは違うの!!」
71: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:53:49.38 ID:/sRruJaG.net
「いくら頑張っても、離れていくだけ!」

「どれだけ練習しても、たどり着けない!」


「それどころか、更に遠くなった!!」


「…無様だって、笑えばいいじゃない。」

「あれだけタンカをきっておいて。」

「出来もしない事言うなって、言えばいいじゃない。」


「…」


「貴女を、見返してやりたかった。」

「無関心で興味のない貴女を、越えたかった。」

「挫折させてやりたかった。」


「…その結果が、これよ。」


「私には…才能なんてもの、無いの。」


「…」
72: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:54:13.73 ID:/sRruJaG.net
「…なら、諦めるのか?」


「…」


「…期待していたんだがな。」


「…ッ!」


「勝手に期待したのは貴女じゃない!!」

「勝手に失望しないでよ!!」


「…なら、どうすればいいんだ?」


「…貴女みたいな。」

「才能のある人には分からないわよ…」


「…」



「どれだけ頑張ったって、追いつけない。」

「…自分でも。」

「どうして良いのかなんて分からないんだから。」
73: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:54:51.31 ID:/sRruJaG.net
「才能…か。」


「…そうよ。」

「結局は、才能なの。」


「どれだけ頑張ったって…」

「凡人は、凡人のまま。」

「才能ある人に…勝てる訳がない。」


「…」


「貴女も、そう思ってるんでしょ?」


「…」

「才能なんて、本当に必要なのか?」


「…は?」


「才能なんて目で見えない物が、本当に大事なのか?」


「…当たり前でしょ?」
74: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:55:41.11 ID:/sRruJaG.net
「才能があれば、何だって出来る。」

「貴女みたいにダンスの才能があれば、こんな事悩まなくて済む。」

「あんじゅみたいに、辛くても楽しめる。」


「結局…才能が、全てなのよ。」


「才能が無ければ…続けられないと?」


「…ええ。」



「…ならば、おかしいな。」

「綺羅ツバサの言う通り、才能がなければ続けられないとする。」

「現A-RISEのメンバーや、私に才能があったとして。」


「…では、今続けている上級生や、同級生。」

「ここまでやって来れた君には、才能は無いのか?」


「…え?」


「才能が無ければ、続けられないと言うのであれば。」

「君は、そもそも何故、今ここにいる?」
75: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:56:05.98 ID:/sRruJaG.net
「何故って…」


「才能なんて、目に見える物ではないだろう?」

「辞めていった連中には、確かに才能がなかったのかもしれない。」


「…なら、今いるメンバーはどうなる?」

「彼女たちにも、才能は無いのか?」

「無いなら、何故続けていられる?」


「それは…」


「確かに、君にはダンスの才能は無いのかもしれない。」

「だが、才能とはそれだけか?」


「…」


「才能なんて曖昧なものを。」

「君は、免罪符にしているだけではないのか?」

「それこそ私には、滑稽に見えるが。」


「…」
76: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 16:56:41.69 ID:/sRruJaG.net
「…君は、何のためにここにいる?」

「何のために、頑張るんだ?」


「…何のために、ここに来たんだ?」


「…」


「…少し、喋りすぎたな。」

「今日は、もう帰った方がいい。」


そう言って、統堂英玲奈はレッスン場のドアを開けた



「…それから。」

「君は私が失望したと言ったが、それは間違いだ。」


「…」


「早く挫折させてくれないと…」

「私は、A-RISEとして昇り詰めてしまうぞ?」


「…!」


「…それでは、私は行くよ。」

「また明日。」


「…」




「どうすればいいって言うのよ…」





---季節は、夏に突入した
87: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:19:15.98 ID:/sRruJaG.net
-----



「…はあ。」

「最悪…」


じめじめと続く梅雨の時期には

こっちの気分まで、滅入ってしまう


…何よりも

オーバーワークがたたって

私は風邪を引いてしまった


「こんな事、してる場合じゃないのに…」


こうして休んでいる間にも

その差は、どんどん開いていく


あれだけ練習したのに

前に進むどころか、後退してしまった


…私は、何がしたいんだろう
88: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:20:25.18 ID:/sRruJaG.net
「…37.2度。」

「あっつ…」


数日の療養で、少しは熱も下がった

でも、まだ動くのは辛い


何もする事が無いというのは、退屈なもので

妙にクリアな頭の中に

統堂英玲奈の言葉が、こだまする



「そんな事言ったって…」


『才能』という二文字に

どれだけ、憧れたか


それが無いと知って

どれだけ、涙をこらえたか


「…」
89: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:22:03.93 ID:/sRruJaG.net
どうしたいのかも、分からない

ただ、その言葉だけが浮かんでくる


「…!」


不意に、部屋の扉をノックされた

お母さんに、呼びかけられる


…あんじゅが見舞いに来た、と


「…」


「…調子はどう?」


「…ええ、なんとか。」


…少し、気まずい

自分で招いた事なのに

口を開こうとして、また閉じて

やっと…ひねり出した言葉


「…レッスン、どう?」
90: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:22:44.68 ID:/sRruJaG.net
「…みんな、頑張ってるわ。」

「私も、なんとか着いていけるようになったし。」

「英玲奈さんも…」


何かを察して、あんじゅの口が止まる


「…」


「…」


「…ねえ、あんじゅ。」


「なあに?」


「才能って…信じる?」


「才能?」


「あんじゅや…統堂英玲奈を見てると思うの。」

「結局…才能が無ければ、頑張ったって意味ないんじゃないか、って。」


…同じ質問を、あんじゅにしてみた
91: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:23:35.85 ID:/sRruJaG.net
「才能…か。」

「確かに、英玲奈さんを見てると。」

「それを認めない訳には…いかないのかも。」


「…やっぱり。」


才能は、必ずある

目に見えなくても…必ず


「…私ね。」

「ずっと…統堂英玲奈を、見返したかった。」

「周りが真剣に頑張ってる事を簡単にやってのけて。」

「挫折した事の無い人生を歩んで来た、彼女を。」


「…いつか、自分の手で挫折させてやるんだ、って。」


「…」


「UTXに合格が決まった時。」

「これで、見返す事が出来る…そう思ったの。」


そう…確かにあの時、そう思った
92: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:24:57.01 ID:/sRruJaG.net
「でも結局…それは、ただの夢で。」

「日に日に、差は開いていった。」


「どれだけ頑張っても、届かなくて。」

「毎日、遅くまで練習した。」

「朝、誰よりも早くからダンスをおさらいした。」


「…その結果が、今。」

「届くどころか…余計に、離れただけだった。」


今まで、私がやって来た事は

全部…


「…悔しい。」


また、目頭が熱くなる

膝を抱えて、指先に力を入れる


「ツバサ…」


「…」


声が、出なかった
93: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:25:55.77 ID:/sRruJaG.net
目の前が、霞み始める

…こんなはずじゃ、無かったのに


すぐに追い越せるなんて思っていなかった

それでも、頑張ればきっと…って



視界に入った、茶色いウェーブの髪

…優しい、においがした


「…」


膝を抱えていた手は

あんじゅの、背中に伸びていた


「…ツバサが頑張ってた事、ちゃんと知ってる。」

「毎日朝から晩まで、ずっと練習して。」

「それでも、追いつけなくて悩んでいた事も。」


「…私が昇級して、焦りが大きくなった事も。」



「…!」
94: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:26:34.63 ID:/sRruJaG.net
「あんじゅ…気付いて…」


「…気付くわよ。」

「だって…ツバサの顔、どんどん暗くなっていくんだもの。」


「…」


「…それでも、ツバサは諦めなかった。」

「自分から、投げ出す事は無かった。」


「…そうでしょ?」


「…」


「…確かに、才能はあると思う。」

「英玲奈さんには、ダンスの才能があった。」

「それはきっと事実。」


「…でも。」

「だからといって…ツバサが諦める理由にはならないでしょう?」



「…」
95: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:26:58.09 ID:/sRruJaG.net
「…ツバサは何をしに、ここに来たの?」


「それは…」

「統堂英玲奈を、見返すために…」


「…本当に?」


「…?」


「あの日…貴女が、語ってくれた理由。」

「貴女が、UTXを選んだ本当の理由は、それだけ?」



「…」


「…」


「…違う。」


そうじゃない

統堂英玲奈を挫折させると決めたのは、その後


…何のために?
96: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:28:09.53 ID:/sRruJaG.net
「…人生を、変えるため。」


そうだ


「平凡な人生から…抜け出したい。」


それを願って、ここを選んだはず


「その目標に…英玲奈さんは、関係ある?」


「…」


「レッスン…少しも、楽しく無かった?」


「…」


「一緒に…レッスンして。」

「終わったら、2人でジュースを飲んで。」

「その日の事、話しながら帰って。」


「…ツバサの目には、あの景色はどう映ってたの?」



「…」

そうだ

あの日々は、私にとって

今までで一番…



「輝いてた。」
97: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:28:54.24 ID:/sRruJaG.net
「…楽しかった。」


…ちゃんと、覚えてる


「苦しくても、あの毎日が。」

「頑張って、レッスンを終えた達成感が。」


「辞めたいなんて…思わなかった。」



…そう

確かに、楽しかった


ダンススクールに通ったときだって

ずっと…前を向いていた



…いつから?



「…ツバサが英玲奈さんを、UTXに引き込んだのよね?」

「前に、聞いた。」


「必ず…挫折させてみせる、って。」
98: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:30:02.63 ID:/sRruJaG.net
「…英玲奈さんは、本当にそれを望んでると思う?」


「…?」


「ツバサは…英玲奈さんに、責任を感じてるんじゃないの?」

「自分が巻き込んだ、って。」


「…」


「ツバサの言葉が、英玲奈さんの人生を、決めてしまった、って。」


「…」


「…もしそう感じてるのなら。」

「それは…違うと思うの。」


「選んだのは、英玲奈さん。」

「…そうでしょう?」



「でも…!」

「それでも…」


私があの時、言わなければ…
99: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:30:32.88 ID:/sRruJaG.net
「…英玲奈さんが、ここに来て一度でも後悔した事があった?」

「来なければ良かったって、言った事あった?」


「才能とか、限界とか…」

「決めつけてるのは、ツバサ自身じゃないの?」


「…」


『君は私が失望したと言ったが、それは間違いだ。』


『早く挫折させてくれないと…』

『私は、A-RISEとして昇り詰めてしまうぞ?』



「…!」


「言わなかった…」

「来なければ良かったなんて…一度も…」



「…嘘だと思う?」


「…」
100: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:32:43.72 ID:/sRruJaG.net
「…ツバサがもう一度立ち上がるなら。」

「私は、応援する。」


「きっと…英玲奈さんだって。」


「でも…」


「思い出して?」

「自分を変えたいと言った、あの時のツバサは。」


「…ただ、前を向いていたはず。」

「疲れても、決して顔を下げなかった。」


「…私は、そんなツバサに憧れたの。」


「…!」


「そんなツバサの、隣に立ちたくて、頑張った。」


「ツバサに、勝ちたい訳じゃなかったの。」

「ツバサを、支えたかった。」

「ただ…貴女の隣で、笑いたかった。」



「あんじゅ…」


「…ツバサは、何のためにここに来たの?」


「…」


何のために…
101: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:33:42.31 ID:/sRruJaG.net
-----



「…もういいのか。」


「…ええ。」


「復帰早々、朝練をして平気なのか?」


「大丈夫。」

「いなかった分…頑張らないと。」


「…」

「また…無理をするのか?」


「…」

「…違う。」

「私は…自分を変えるために、ここに来たの。」

「平凡な人生から抜け出すために、来たの。」


「…」


「私は…ここで、自分を変える。」

「諦めるなんて出来ない。」
102: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:34:26.13 ID:/sRruJaG.net
「私は、今までの私に打ち勝つためにここにいる。」

「貴女を挫折させるのは…そのついでよ。」


「…ほう。」


「才能が無くたって、それが諦める理由にはならない。」

「ダンスの才能が無くても、やれるって事を証明してみせる。」

「それが…きっと、私が変わるために必要なもの。」



「だから…」


「私に、ダンスを教えて。」


「…!」

「…ふふっ。」


「勝ちたい相手に、頭を下げるのか。」


「…」


「…」



「ストレッチをした後、今までのおさらいからだ。」


「…!」

「ええ!」



雨が止んだ---気がした
103: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:35:01.61 ID:/sRruJaG.net
-----



「…それでは、今回の合格者を発表する。」

「ステージ公演、昇級試験の結果…」



統堂英玲奈に教えを受けてしばらく

2回目の、昇級試験が行われた


前回の試験をふまえて

今回は一般公開しているステージでの結果も考慮された



「…合格者は、無しとする。」


周囲から、ため息が漏れる

私だって、悲しくない訳じゃない


…でも、もう下は向かないと決めた


この結果を、噛み締める

まだ…まだ、足りない
104: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:35:31.08 ID:/sRruJaG.net
「…落ちちゃったわね♪」


「…そうね。」


少しでも明るくしようと、あんじゅが話しかけてくれた

あの日の事があって以来

私の事を、余計に気にかけてくれるようになった

「…」


「…そんな顔しなくても、大丈夫。」

「次は…必ず、合格してみせるから。」


「…うんっ♪」



やっぱりあんじゅには、笑顔が似合う


一度、この笑顔を曇らせてしまった

…だからこそ今、私が頑張る理由のひとつになった
105: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:35:56.61 ID:/sRruJaG.net
「諦めたのか?」


「…まさか。」

「次こそは、追いついてみせるわ。」


「ふっ…そうか。」



嫌味ったらしいこの話し方も、いつもの事だ


この性格に慣れてしまったのか

あるいは、少しは成長できたのか



立ち止まっている暇なんてない

失敗を胸に刻んで

結果を踏みしめて


--ただ、前に
106: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:37:13.80 ID:/sRruJaG.net
「…今日も、付き合ってもらうわよ?」


「…いいだろう。」


交わす言葉は、少なく

それでも、伝わっている


あんじゅとのそれとは、また違った

歪な2人の関係性



…でも、それでよかった

慣れ合うために、一緒にいる訳ではないから



「…ああ、それと。」

「統堂は、あとでミーティングルームに来てくれ。」


「…はい。」


トレーナーの言葉に、統堂英玲奈が反応する



「…それでは、また後で。」
107: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:37:45.37 ID:/sRruJaG.net
-----


「…ふう。」


レッスン後、自主練に励むのもいつも通り

膝が笑う事は無くなった

地べたには座らず、深呼吸をしながらストレッチをする


今日はあんじゅは用事があるからと、先に帰ってしまった

統堂英玲奈は、トレーナーに呼ばれて戻ってこない



ここ数日は、よく2人と一緒にいたから

1人の時間が、新鮮に感じる



「…よし、もう一度。」


姿見の中の自分と目を合わせる


成功をイメージして

目の前の『私』に、手を差し出した
108: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:38:26.77 ID:/sRruJaG.net
-----



「…精が出るな。」


「…いつ来たのよ。」


「ほんの、数分前だ。」



気付くと、ドアの前に彼女は立っていた

いつもと変わらぬ態度と

いつもと変わらぬ表情で



「ほら、早く教えてよ。」

「準備はバッチリなんだから。」



「…」


「どうしたの?」


「…ああ、そうだな。」
109: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:38:55.30 ID:/sRruJaG.net
-----



「…こんなかんじ?」


「違う、重心がおかしい。」

「ステップを踏み出す前に、先に重心を動かすんだ。」

「足を動かす前に、膝を先に向けろ。」

「そうすれば、足は勝手に着いてくる。」


「…さあ、もう一度だ。」


「ええ…!」



こんな事を言っては、失礼かもしれない

それでも、トレーナーの指導より

統堂英玲奈の言葉の方が、すんなりと頭に入ってくる


認めたくはないけれど

…やはり、これも統堂英玲奈の才能なんだろうか
110: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:39:51.57 ID:/sRruJaG.net
「…やった。」


何度も何度も練習して

たった一度の成功


それでも…嬉しかった



「どう!?出来たわよ!?」


「…ああ。」

「ちゃんと見てたよ。」


無愛想に、そう答えた


「…ほら、次を教えて。」

「忘れないうちに、早く。」



「…」


「…何?」
111: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:40:43.92 ID:/sRruJaG.net
「そんなに頑張って…どうするんだ?」


「え?」


統堂英玲奈は、何を言っているのだろう


「…言ったでしょ?」

「自分を、変えるためって。」


「…変わらなかったら、どうする?」


「…」

「ねえ、一体どうしたのよ…?」


「…」

彼女の表情は、いつもと変わらない


「…逆の質問をしてもいいか?」


「…?」
112: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:41:14.01 ID:/sRruJaG.net
「目の前に、ある人が現れて。」

「一等が当たった宝くじを差し出したとする。」

「無条件で、差し上げる…と。」


「正直、お金に困っている訳でも、それが欲しかった訳でもない。」

「…だが、その人はただでくれると言う。」


「…綺羅ツバサ。」

「君は…それを、受け取るか?」



「…質問の意味が、よく分からないんだけど。」


「…難しい事じゃない。」

「心理テストのような物だとでも思ってくれ。」


統堂英玲奈が、心理テスト…?

なんて、似合わない言葉なのかしら


でも…
113: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:41:41.48 ID:/sRruJaG.net
「…私なら、受け取る。」


「例え、それが欲しくない物だったとしても。」

「差し出されたのなら、そのチャンスがあるという事。」


「なら…もらっておいて、損は無いでしょう?」

「いつか、使うときが来るかもしれない。」

「それを受け取る事で、何かが変わるかもしれない。」


「…そうじゃない?」


「…」


「…そうか。」



「…で、答えは一体なんなの?」


「…質問してみただけだ。」


「…ほんと、貴女ってよく分からない。」
114: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 21:42:17.08 ID:/sRruJaG.net
-----


それから数日経ったある日

授業を終えて、トレーニングルームへ


…何故か、少し落ち着かない


足早に着替えを済ませ、ドアを開けて中に入る


「…揃ったか。」


待っていた、と言わんばかりに

トレーナーが、口を開く

その横には…統堂英玲奈が



「…君たちに、知らせておく事がひとつある。」

「先日、本人には伝え、承諾してもらった事ではあるが…」


嫌な、予感がした


「今年9月より、うちと提携してるプロダクションから。」

「統堂英玲奈が、アイドルとしてデビューする事になった。」


やっと動き出した歯車に---ヒビが入る音がした
116: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:21:53.81 ID:/sRruJaG.net
-----


「一体…どういう事?」


全体ミーティングが終わったレッスン場で

私は、彼女に声をかけた



「…どういう事も何も。」

「今、聞いた通りだ。」


「…私は、アイドルとしてデビューするそうだ。」


こんな時まで、他人事のように

確かに彼女は、統堂英玲奈だ


「いきなり…どうして?」


アイドルに興味はないと、言ってたのに

どうして、アイドルとしてデビューするのか
117: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:22:48.06 ID:/sRruJaG.net
「…何も、いきなりじゃないさ。」

「君には話しただろう?」


「…え?」


「差し出された物を、受け取っただけだ。」


「それって…」


「…」


…私の、せい?




「私が、選んだだけの事。」

「綺羅ツバサには、関係のない話だ。」


…関係ない?



「ちょっ…ツバサ!!」


気付けば私は、統堂英玲奈のTシャツを掴んでいた
118: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:23:15.85 ID:/sRruJaG.net
「関係ないって何!?」

「関係ない訳無いじゃない!!」


「…離してくれないか。」


あくまで冷静に、彼女は答える


「ツバサってば…っ!」


あんじゅに手を解かれ、気がつく



「…君は言っただろう?」

「自分なら、それを受け取ると。」


「…何かが変わるかもしれない、と。」



「それは…」


確かに、私は言った

だけど…
119: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:23:44.39 ID:/sRruJaG.net
「でも、それでも…!」



「…私は、君の言葉通りの事をしたはずだ。」

「何が、君は気に入らないんだ?」


「…!」


何?


何って…







…なんだろう?
120: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:24:07.07 ID:/sRruJaG.net
「…それでは、失礼する。」

「やる事が沢山あるんだ。」


「英玲奈さん…」


あんじゅの言葉に一度だけ振り向いて

統堂英玲奈は、部屋を後にした


「…」


「…ツバサ?」


…私は、何がしたいんだろう?


どうして、あんな事を言ってしまったんだろう?


どうして、あんなに簡単に答えてしまったんだろう



…どうして?
121: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:25:18.67 ID:/sRruJaG.net
-----



「…はあ。」


仰向けにふとんに倒れ込む

ふかふかのベッドが

今日は、少し無機質に感じる


「…」


思えば、最初からそうだった

勝手に私がライバル心を燃やして

彼女を、この学校に引き入れた


あの時だって彼女は

自分がそうしたいと言っていた訳ではなかった



「…」


「…本当、何やってたのかしら。」
122: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:25:42.08 ID:/sRruJaG.net
今回だって、そうだ

私の言葉が、原因だった



「自分の考えで動きなさいよ…」



…いや

自分の考えで、動いた結果なんだろう



結局私は、彼女に届く事は無かった


「…」


…これで、本当によかったのか

その言葉が、頭に浮かぶ



…本当に?
123: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:26:44.67 ID:/sRruJaG.net
初めて会ったあの時から

統堂英玲奈は、一方的なライバルだった


私が勝手に追いつくと決めて

ずっと、その背中を追って来た


私の勝手な意地で

彼女に突っかかった事もあった


どんなときだって

彼女は、淡々としていたっけ


眉ひとつ動かさずに、私を見据えて

嫌味ったらしく、口を開いて







…本当に?
124: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:27:12.69 ID:/sRruJaG.net
「…あれ?」




ガバッと、ベッドから飛び起きる


「…」


違う、そうじゃない

決して、そんな事はなかった



「…そっか。」


だからこそ…




「…だからこそ、私なんだ。」
125: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:27:43.68 ID:/sRruJaG.net
-----


「…行ってきます!!」


服を着替え直して、外に飛び出る

真っ暗な空に浮かぶ、丸い月


仄暗い道を駆け抜けて

私は、目的地へと足を動かした



「はあ…っ…はあっ…」


せっかくお風呂に入ったのに

体は、汗でべとべとする


…また、帰ってから入れば良い



目的地にたどり着いて

少し肩で息をする私を

月明かりが、照らす


「…さあ、始めましょう。」



私には---やるべき事がある
126: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:45:41.91 ID:/sRruJaG.net
-----



「…急に呼び出したと思ったら、何の用だ?」


いつも通りの無愛想な顔で

彼女は、そう口を開いた



「…ダンスを、見てほしいの。」


…嘘は、言ってない


「君は本当に、なんと言うか…」


「ダメかしら?」


「…良いだろう。」


一瞬の沈黙の後

私は、プレーヤーのスイッチを入れた
127: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:46:10.30 ID:/sRruJaG.net
「…!」

「これは…」


流れたのは、懐かしい一曲

私が統堂英玲奈を知った、初めての曲


推薦入試の時に、彼女が踊った

最高難易度の、あの曲


~♪


曲のリズムに合わせ、ステップを踏む

目に焼き付いた、成功のイメージをたどる



「…」


彼女の表情が、真面目な物に変わった
128: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:46:35.52 ID:/sRruJaG.net
~♪


もうすぐ、ラストスパートに入る

上がったテンポと激しくなるダンス


…それでも、踊れたのは

目の前に、そのイメージがあったから



Bメロは終わりに近付き

…遂に、その時が来た



一層激しくなる動きの中で、私は


鏡の中の自分ではない

目の前にあるイメージの向こう側



統堂英玲奈、本人に---手を伸ばした
129: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:47:00.43 ID:/sRruJaG.net
「…!」


瞳孔が開いたのが、見て取れた


一呼吸置いた後

…彼女は、ステップを刻む


指先からつま先まで

全神経を集中させて


私は、踊る


目に焼き付いたイメージと

統堂英玲奈の姿が重なる





…簡単な事だった
130: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:47:27.21 ID:/sRruJaG.net
-----



「はあ…っ。」


曲が終わって、静けさの中

私の上がった息の音だけが聞こえる


統堂英玲奈は、汗すらかいていない

聞こえてこない彼女の息づかいの代わりに


ドアの辺りから、手を叩く音がした



「…とっても、綺麗だった。」

「まるで、二人で練習してたみたいに。」


「あんじゅ…」



「…説明、してもらおうか。」


統堂英玲奈が、口を開いた
131: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:48:37.83 ID:/sRruJaG.net
「…一体、どういう事だ?」


「…別に?」

「ただ、ダンスを見てほしかっただけ。」


「…」



「…答えは、聞くまでもないみたいね。」


一番驚いているのは、私かもしれない

だって…昨日まで、出来なかったんだから



飛び跳ねたいくらいの気持ちを抑えて

今は、彼女の心と向き合おう
132: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:49:01.97 ID:/sRruJaG.net
「…案外、統堂英玲奈って大した事ないのかしら?」


「…何?」


「ツバサ…?」



「私は、ダンスを初めてまだ数ヶ月。」

「そんな私でも踊れるダンスをして。」

「天狗になっていただけじゃないの?」


「貴女の才能なんて、思ってたよりもちっぽけな物かもね。」


「…何だと?」






「…少し、がっかりした。」
133: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:49:52.46 ID:/sRruJaG.net
「英玲奈さん…っ!!」


気付けば、統堂英玲奈にシャツを掴まれていた


「本気で言っているのか…?」


「…」


「…貴女って、つまらない人ね。」


彼女の手に、力が入ったのが分かった



「…君に何が分かる!?」


「私の何が!!」
134: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:50:16.97 ID:/sRruJaG.net
「今まで、やれば何だってある程度はできた!」

「そんな私を、周囲の皆は褒めてくれた!」



「だが、それも最初だけだ!」

「日が経つに連れ、褒めてくれる人は減っていった!」



「私なら、出来て当たり前。」

「まるでロボットの様に、何でもこなすと!」





「その時の気持ちが、君に分かるか!?」
135: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:50:42.02 ID:/sRruJaG.net
「…」


「…それにだって、慣れたさ。」

「いくら努力をしても、才能と言う言葉で片付けられて。」


「それでも、認められている事が、ひとつの救いだった。」



「…」



「…それがどうだ?」

「なにかひとつでも出来ない事があると、今度は失望された!」


「出来た時には何も言わず、出来ないと堕とされる!」


「勝手に期待したくせに、勝手に失望したのはそっちじゃないか!!」

「一体私に、どうしろと言うんだ!!」






「それって…」
136: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:51:06.76 ID:/sRruJaG.net
…そう


私が、以前、彼女自身に言った事だ

私は、それを自分の逃げ道として使った


…だけど


彼女はずっと、その言葉に縛られていたんだろう


私だって、最初はそう思った

何だって出来る、完璧な人


…憧れた


けど、そうじゃなかった


…だからこそ


今、彼女は叫んでる
137: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:51:32.38 ID:/sRruJaG.net
「変わりたいと願う事が、何か間違っているのか!?」


「君に誘われて、ここに来た!」

「確かに、選んだのは私だ…」


「だが、それでも変われなかった!!」



「なら、環境を変えるしか無いじゃないか!」

「そのチャンスがあるなら、手を伸ばしたいと思うだろう!?」



「だから私は…選んだんだ。」

「君の言った、通りに。」




「私は…何か、間違っているのか?」




---彼女の心を、初めて見れた気がした
138: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 22:51:56.34 ID:/sRruJaG.net
「ツバサ…」


心配そうなあんじゅが、こちらを見つめる


私のシャツを掴んだままの、統堂英玲奈

その顔は…見えない


「教えてくれないか…?」

「私は…どうしたらいいんだ?」


「…」



「…ぷっ。」


ああ、駄目だ…こらえきれない


「ふふふっ…」


「…何がおかしい。」


だって…

こんなにも…





---似ているのだから
139: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:05:04.58 ID:/sRruJaG.net
「ふふっ…おかしくて、仕方が無いわ♪」


「貴女って…案外、バカなのね。」



「…何を言っている?」



「…」



「誰が、貴女をロボットだって言ったの?」


「そうやって、自分の事で悩んで、苦しんで。」

「変わりたいと願っている貴女は。」




「…誰よりも、ヒトらしいじゃない。」
140: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:05:32.37 ID:/sRruJaG.net
「君は…」



「…最初は。」

「ただの、むかつく人だった。」


「やれば何だって出来て、そのくせ無表情で。」

「何を考えてるかも分からない。」


「…そんな貴女が、私は嫌いだった。」


「…」


「…だけど、そうじゃなかった。」


「貴女は誰よりも…努力していた。」

「自分自身を、曲げないために。」


「周りの目を…変えたいために。」
141: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:06:50.65 ID:/sRruJaG.net
「…気付いてないの?」



「そうやって怒った顔も。」

「私の言葉に、笑った事も。」





「…貴女は、ここに来て本当に変われなかった?」



「…!」



「確かに私なら、それを受け取ると言った。」

「巡ってきたチャンスを、無駄にしないために。」


「でも…」



「貴女に、それは本当に必要なのかしら?」
142: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:08:16.74 ID:/sRruJaG.net
「…」


「思い出して。」

「ここに来てから、貴女は何も変わらなかった?」


「今までと同じだった?」


「ここで…何も、得られる物は無かった?」


「…」




「…私は、違う。」

「貴女に出会えて…私は変われた。」


「…!」
143: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:08:49.41 ID:/sRruJaG.net
「結局…似た者同士だったのよ。」


「平凡な人生を変えたいと願った私も。」

「非凡な人生を変えたいと願った貴女も。」


「きっと、だからこそ私は貴女に惹かれたの。」

「そして…負けたくないと思った。」



「…貴女が、いたから。」



「…」


彼女の両手から、力が抜けた

乱れた服を直して


私は、彼女の瞳を見つめる
144: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:09:16.63 ID:/sRruJaG.net
「私は、確かに自分を変えたいと願った。」

「そのためのチャンスなら、私は受け取ると言った。」


「…でも、それは。」

「今の日常を捨ててまで欲しいとは思わない!」


「貴女の目に、私達はどう映ってるの?」

「今までの貴女の周りと同じ?」


「それとも…」



「…」



「私には、貴女が必要なの。」

「この平凡な人生を、変えるために。」



「だからこそ、約束するわ。」



「…私が、必ず貴女を変えてみせる!」
145: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:09:41.33 ID:/sRruJaG.net
「…!」



「…私に、ダンスを教えて。」

「貴女に、見た事無い景色を見せてあげるわ。」



「…」



…果たして、届いただろうか

いや、届かなくてもいい


ただ、伝えたかった

あの笑顔を見た時、思った


…こんなに綺麗に、笑えるのだから




「…ッ。」
146: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:10:14.98 ID:/sRruJaG.net
「くくくっ…」

「ははははは…っ。」



「…英玲奈さん?」



「…そうか。」


「私はずっと…」


「君に、憧れていたんだな。」

「…綺羅ツバサ。」



「…」


「いつだって君は、私に向かって来た。」

「その差を見せつけられても、なお。」
147: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:10:46.38 ID:/sRruJaG.net
「だからこそ君が諦めかけた時。」

「私は、もったいないと感じた。」



「…それだけの才能が、君にはあったから。」


「いつだって諦めず、前を向いて。」

「自分と向き合って、道を歩んでいく君が。」


「私は…羨ましかったんだな。」



「…私は。」

「私自身の考えを、才能なんて一言で表してほしくない。」



「私は、自分で選んだの。」

「統堂英玲奈という、目標に向かって。」
148: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:11:14.68 ID:/sRruJaG.net
「…だから、貴女も選んで。」


「この場所で、自分を変えるのか。」

「それとも…与えられたチャンスに身を任せるのか。」



「…!」



そっと、右手を差し出す

友情の証なんかじゃない


…これは、宣戦布告だ


私自身の手で、貴女を挫折させてみせる

…貴女を、変えてみせる


この手で、改めて誓おう

そのために、私はここにいる


…似ているからこそ

反発し合って、引き合って

そして、高め合う事が出来る


…そのために、私はここにいる
149: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:11:44.73 ID:/sRruJaG.net
長い沈黙を破る様に

その右手に、電気が走る


繋いだその手は、あたたかかった



「…いいだろう。」

「君の口車に、乗せられてみるとしよう。」


「…あの時のように。」


「…」



「私を、変えてくれるのだろう?」

「今度こそ、君に期待しているよ。」


「…!」



「その余裕の表情を崩すのが。」

「楽しみで仕方がないわ♪」



「ふふっ…そうか。」
150: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:12:13.90 ID:/sRruJaG.net
「…さあ、今日は帰るわよ!」


入って来た時とは180度違う表情で

見慣れたレッスン場を後にする


これで解決した訳ではないだろう

それでも、この先に道は続いていく


それを歩むのは…

きっと、この2人と共に




「…ありがとう、---」



「…?」

「何か言った?」


後ろで、統堂英玲奈の声が聞こえた


「…いや、何でも無い。」


「…?」


向き直って、更衣室へ
151: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:12:54.37 ID:/sRruJaG.net
「…2人とも、素直じゃないんだから♪」


「…何の事だ?」


「別に~?」

「あ、でも…」


「改めてよろしくね、英玲奈♪」



「…そうだな、あんじゅ。」



後ろで話してた2人に、声をかける

「…ほら、早く帰らないとまた警備員に怒られるわよ?」


「はーい♪」

「…ああ。」


明日から、また新しい日々が始まる

それが楽しみで仕方がない


逸る気持ちを抑えて、私は一歩を踏み出した



「…」



「…一番素直じゃないのは、私なのかもね。」
154: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:16:47.36 ID:/sRruJaG.net
Side Story

夢の中の陽だまり
155: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:17:13.22 ID:/sRruJaG.net
---



「ん…」

ふと、目が覚めた


「…あれ?」

今…なにしてなんだっけ?

思い出せない…


何かが、あった気がするけど…


とても心地が良かった事を覚えている


でも、思い出せない


「…夢?」


だとしたら、すごくもったいない気がした
157: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:17:57.91 ID:/sRruJaG.net
「…ツバサ!」


クリアになってきた頭に、優しい声が届いた

焦点のあった視界に、あんじゅの顔が映る


「…あんじゅ?」


「…もう、やっと起きた。」

「先生も、呆れて出て行っちゃったわよ?」


あんじゅにそう言われて

授業中だった事を思い出した


…ああ、やっぱり夢だったのか


良い夢を見ていた気がするのに…
158: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:19:52.21 ID:/sRruJaG.net
「…ふふ、ツバサらしいな。」


「…!」

「統堂英玲奈!?」


え、今、ツバサって…


「…ふむ。」

「そう呼ばれるのも、久しいな。」

「まだ、寝ぼけているのか?」


「え…?」



「もう、そろそろちゃんと起きてよ?」

「明日は、ライブなんだから…」



「ライブ…?」
159: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:20:26.90 ID:/sRruJaG.net
「…はあ。」

「一体、いつまで夢の中にいるつもりだ?」


この嫌味ったらしい口調

間違いなく、彼女本人だ


「もう、しっかりしてよ…?」



「…ごめん。」



…そっか

すっかり、記憶がとんでた…


私達は…
160: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:20:56.89 ID:/sRruJaG.net
-----



「…それでは、今日はここまで。」

「明日のために、疲れを残さないように!」


「「「はいっ!!」」」


レッスンを終え、着替えて外に出る


明日は、私達にとって一番大事な日だ

そのために、今日のレッスンは早く上がる事になった




「ねえ、何処かに寄っていかない?」


「ええ、いいわよ。」

「…そうだな。」


あんじゅの一言に、私達も賛同する
161: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:21:25.91 ID:/sRruJaG.net
-----


入ったのは、モダンな雰囲気のカフェ

あんじゅのお気に入りのこの場所は

奥のスペースに入ると、半個室になる


「…いよいよ、明日だな。」

「そうね…」


明日は、私達のファーストライブ

この3人でここまでやって来た成果を、披露する日だ


「…長かったな。」


ふと、英玲奈が口を開いた


「…そうね。」


あんじゅも、それに続く
162: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:22:14.88 ID:/sRruJaG.net
…今まで、色んな事があった

決して、楽しい道ばかりじゃなかった


それでも、今

こうして、ここにいれるのは…




「…ありがとう。」


ぽつりと、口から溢れた


「ツバサ…」


「…ふっ。」


感慨深い顔をするあんじゅとは対照的に

英玲奈には、鼻で笑われた
163: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:22:43.24 ID:/sRruJaG.net
「…何よ?」


そんなに、変だっただろうか

そんな事を考えていると

彼女からは、意外な答えが返って来た


「…それは、こちらの台詞だ。」


「…!」


「ふふっ…その通りね♪」


「ありがとう、ツバサ。」

「ここまで来られたのは、君のお陰だ。」



「なっ…えっと…///」


予想外すぎる反応に

少し慌てる、私


それを見て笑顔になる、目の前の2人
164: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:23:07.64 ID:/sRruJaG.net
「…」


「どうした?ツバサ。」


「…ううん。」



言葉を、飲み込む


きっと、これを言うのは…


明日の本番を、終えてから



「…さあ、明日は私達の晴れ舞台よ!」

「精一杯、やりきりましょう!」


「おーっ!」

「ああ。」
165: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:24:04.44 ID:/sRruJaG.net
-----


「…それでは、待ちに待ったこのグループの登場です!」

「数あるオーディションを勝ち抜いた、UTXの代表者!!」


「新生A-RISEの、初舞台です!!」


舞台袖にいても分かる、歓声

私達を見に来てくれた、ファンのみんな

支えてくれた、人たち



漏れてくる光に、想いを馳せて

2人と、目を合わせる


「…さあ、行きましょう。」


目の前に並ぶ、2人に続いて

その先の、光の中へ


これが、私達の…

新生A-RISEの、始まり---
166: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:25:27.43 ID:/sRruJaG.net
-----


「…サ!」

「…バサ!!」


「ん…」


「ツバサ!!」


「…!」


体が、ビクッと反応する


「…あれ?」


確か今、私は…



「…あれ?」


そこには、見慣れた教室と

そばには、頬を膨らませる、あんじゅの姿
167: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:25:50.11 ID:/sRruJaG.net
「もう、先生も呆れて出て行っちゃったわよ?」


「…」


あれ?

どこかで聞いた事のある…


「…まだ、寝ぼけているのか?」

「君らしいな。」


「英玲奈!」


「「!?」」


「…ほう。」

「ようやく君も、私を認めるようになったのか。」

「…綺羅ツバサ。」



…あれ?
168: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:26:56.53 ID:/sRruJaG.net
「ち、違うわよ!!」

「単に、寝ぼけてただけっていうか…」


「ま、まだ全然、認めてないんだからっ!!」



どうして、私は彼女を名前で呼んだんだろう

…思い出せない


「…ほら、しっかり目を覚まして。」

「レッスン、始まるわよ?」


「…さて、私は先に行くとしよう。」


そう言って、教室から出て行こうとする2人の背中を見る


「…?」

「何の夢、見てたんだっけ…」
169: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:27:21.45 ID:/sRruJaG.net
思い出そうとしても、出てこない

…だけど、確かに夢を見ていた


思い出せなくても

どこか、あたたかいような…


「ツバサ、置いていくわよー?」


扉の前で、振り返って私を呼ぶあんじゅ

振り向きもせずに、でも、待っている統堂英玲奈


いつも通りの、この風景

いつも通りの、この時間


それでも、どこか…


「…♪」
170: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/04(火) 23:28:03.12 ID:/sRruJaG.net
自然と上がった口角が

とても、気持ちよく感じる


どんな夢を見ていたかなんて、分からない

でも、それはもしかしたら…


私が望んだ、ひとつの未来なのかもしれない




…たったひとつ、覚えている事


この2人と、扉の向こう

その先へと、共に足を踏み出した気がする



私達の…


進むべき、未来に向かって---



To Be Continued...
178: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:15:04.73 ID:wrF4KSSN.net
-----


季節は、秋も終わり頃

緋色だった葉々からは色が抜け

冬に向け、色褪せていく景色




…でも、そんなの私には関係なかった


私にとっての現在は

色褪せてなんていなかったから


肌寒くなった季節と相反して

たっぷりの、汗をかく



『楽しい』



それだけを、私は感じていた
179: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:15:31.04 ID:wrF4KSSN.net
ダンスが、出来る様になった訳ではない

統堂英玲奈と、仲良くなった訳ではない


それでも、今の私は

楽しくて、仕方が無かった


月日が経つに連れ

レッスンの難易度は上がっていく

それでも、私がここにいるのは


目指すべき目標で、打ち勝つべきライバルがいて

疲れた時に、そばにいてくれる友達がいて

ひたむきに打ち込める、環境があって



…それが今の私を作る、何もかも
180: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:16:01.80 ID:wrF4KSSN.net
-----



「…はい、ツバサ。」


「ありがと…あんじゅ。」



あんじゅが買って来てくれた、ジュースを飲む

乾いた喉に、冷たい水分が入っていく


…心地いい



あんじゅは、いつも、いつの間にか

疲れた私に、それを差し出してくれる

いつか、私も…

そう思っていたけれど


彼女はいつも先に用意していてくれた


…少し、申し訳なく感じる
181: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:16:28.64 ID:wrF4KSSN.net
「いつも、ありがとう。」


「どういたしまして♪」


そう言って、いつも彼女は笑う

ふんわりとした、いつもの笑顔で



…綺麗だった




「…あ、英玲奈もお疲れさま♪」


トレーニングルームから、統堂英玲奈が出てくる


「…ああ、いつもすまない。」


あんじゅは、嬉しそうにジュースを差し出す




…少し、嫉妬したりもする
182: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:16:50.77 ID:wrF4KSSN.net
「…」


「…どうした?綺羅ツバサ。」


「…別に?」


なんだろう

阿吽の呼吸とも言うべきか…


2人には、どこか気品を感じて

多くは語らなくても、分かり合っている感じ


…いつの間にか、あんじゅも呼び捨てだし


2人の間に、一体なにがあったのか…
183: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:17:15.71 ID:wrF4KSSN.net
「そう言えば、もうすぐね。」


「ああ…そうだな。」


そう

もうすぐ、次の昇級試験がある


私には、それが楽しみで仕方なかった


「今度こそ、絶対に貴女に並んでみせるわ。」


「…おや、並ぶだけでいいのか?」


「もちろん、越えてみせる。」

「…でも、まずは同じ土俵に立ってからよ。」


彼女の嫌味も、特に気にならなかった

それが、単なる嫌味だけではないと知ったから
184: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:17:38.26 ID:wrF4KSSN.net
「…まあ、ほどほどに期待しておくとするよ。」


「いいのかしら?」

「あっさり抜かれちゃっても知らないわよ?」


「…望む所だ。」



「ふふっ。」

「2人とも、頑張ってね♪」



「…何言ってるの?あんじゅ。」

「貴女もでしょ?」


「…え?」


「…そうだな。」

「案外、あんじゅの方が先に昇ってくるかもしれないからな。」
185: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:18:02.67 ID:wrF4KSSN.net
「それは無いと思うけど…」


そう言いながらも

あんじゅも、その伸び代は見えない

うかうかしていると、すぐに置いていかれる


…そんなポテンシャルを、彼女には感じていた



「…そうね。」

「統堂英玲奈もそうだけど…」

「貴女も、私にとってはライバルだから。」


「負けないわよ?」


「…」


「…あんじゅ?」
186: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:18:32.83 ID:wrF4KSSN.net
「えっ?」

「あ、うん…」


「…そうね。」

「私も、2人に負けない様に頑張るから♪」


いつもの笑顔で、いつもの雰囲気で

あんじゅは、答える



そうなる前の、ほんの一瞬

少し、寂しそうな彼女の横顔




気付いたのは

私じゃなくて…




統堂英玲奈だった
188: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:19:35.29 ID:wrF4KSSN.net
-----


「…なあ、綺羅ツバサ。」


「…何?」


ある日のレッスン後

私は、統堂英玲奈に呼び止められた


「いや…」

「最近、あんじゅの様子はどうだ?」


「…あんじゅ?」


「…ああ。」


「別に…いつも通りだと思うけど?」


「…そうか。」
189: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:20:01.65 ID:wrF4KSSN.net
「…どうしたのよ?」


「…いや。」

「それなら、いいんだ。」


「何か、気になる事でもあるの?」


「…まあ、そんな所だ。」

「だが、君が気付かないのであれば。」

「私の杞憂という事だろう。」


「…」


「君たちは、仲がいいからな。」

「きっと何かあれば、君に言うだろう。」



「そう…なのかもね。」
190: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:20:27.18 ID:wrF4KSSN.net
イマイチ要領を得ない彼女の話を聞いて

私は、少し逡巡する


…何か、あったのだろうか


それでも、きっと何かあれば

あんじゅは、私に話してくれるだろう


…だけど、統堂英玲奈が意味も無く

こんな発言をするとも思えない



「…よし。」


悩んだ所で

不器用な私には、こうする他なかった
191: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:20:47.20 ID:wrF4KSSN.net
-----


「はい、お疲れさま♪」


「ありがと、あんじゅ。」


いつも通りの、レッスン後

いつも通りの時間を過ごす


「ジュース、美味しいね♪」


「…」


「…ツバサ?」


「…ねえ、あんじゅ。」


「…?」



「何か、悩んでる事…ない?」
192: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:21:16.45 ID:wrF4KSSN.net
「…どうしたの?ツバサ。」


「ううん…」

「今まで、あんじゅには沢山お世話になったから。」


「何か…私も、してあげられないかな、って。」


「…ふふ、そっか。」


「ねえ、あん…」


「心配しなくても、大丈夫よ?」

「何も、悩み事なんて無いから♪」


そう言って

あんじゅは、いつもの笑顔で

私に、笑いかけてくれる


いつもと全く変わらないその姿を見て

やはり、杞憂だったんだと…思った
193: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:21:45.22 ID:wrF4KSSN.net
「ふふっ…でも、嬉しい。」


「…何が?」


「ツバサが、そんな風に思っててくれたなんて。」


「それは…」


「…私はね?」

「私がやりたいと思った事を、してきただけ。」


「UTX学院に来て、ツバサと出会って。」

「私と、仲良くしてくれた事。」

「ともだちに…なってくれた事。」


「…とっても、嬉しかった。」



「…」
194: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:22:11.01 ID:wrF4KSSN.net
「ツバサも、英玲奈も…」

「今の私にとっては、大切な存在。」


「だから、そんな2人と、一緒にいたいと思った。」

「そんな2人と…笑っていたいと思った。」


「あんじゅ…」


「だから、私は何も特別な事をしたつもりはないの。」

「2人が笑ってくれる事が。」

「仲良くしている所を見るのが。」


「私は…」



「…なんて、ちょっと恥ずかしいじゃない///」


少し赤みを帯びた、あんじゅの顔

…綺麗だと、思った
195: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/05(水) 19:22:45.26 ID:wrF4KSSN.net
「でも、そうねえ…」

「少し、気になってる事と言えば…」


「…?」


「ほんのちょっと、太っちゃった事かな?」


「もう、何よそれ…」



「「ふふふっ…」」


こんな、ありふれた時間が

とても、心地よかった

ずっと、こうしていたいと思えるほどに




「…じゃあね、ツバサ。」


「またね、あんじゅ!」


向き直って、家の方へ





「…ごめんね。」

「英玲奈…ツバサ。」
205: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 22:20:38.84 ID:y8J5z4lD.net
-----




「綺羅ツバサ!!」



「…ッ!」


気付いた時には、もう遅かった


部屋に響く、乾いた音

揺れる、栗色の髪の毛

じん、と熱くなる右手

視界を覆う、淡い世界



数秒経って、理解する

涙を浮かべた私の右手が

…何を、とらえたのかを
207: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 22:28:01.27 ID:y8J5z4lD.net
「どうして…ッ!!」


本当に、どうして

こんな事に、なってしまったのだろうか…


「…」


何も、答えなかった

騒ぎを耳にして、クラスメイトが駆け寄ってくる


「…ッ。」


何を言っていいのか分からずに

気付けば、教室を飛び出していた
208: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 22:31:46.22 ID:y8J5z4lD.net
「なんでよ…」


駆けて、駆けて

気付けば、誰もいない公園に

「…」


「…あ、荷物置いて来ちゃった。」


「…いきなり飛び出して、みんなに心配かけちゃったかな。」


「今日のレッスン、休んじゃったし…」


何も無い空に向かって、ぽつり、ぽつりとこぼす


「あんじゅ…ッ。」


何も答えてくれない空から

涙を隠す様に、雨粒が落ちて来た
209: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 22:46:27.94 ID:y8J5z4lD.net
-----



その日はいつもと同じだった


いつもの様に、授業を受けて

いつもの様に、昼食をとって

また、いつもの様に談笑して



…そんな、いつも通りの日に


彼女は、いつも通りの笑顔で

いつもとは違う事を口にした





「私…芸能科、辞めようと思うの♪」
210: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 22:59:26.20 ID:y8J5z4lD.net
「え…?」


突然の発言に


私も…統堂英玲奈でさえも

驚かずにはいられなかった



「どういう事だ…?」


何も言葉が出てこない私に代わって

統堂英玲奈が、声を発した


「どうって…」

「言葉通りの、意味。」


また、彼女は口を開く

…いつもと、同じ笑顔を浮かべながら
211: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 22:59:47.97 ID:y8J5z4lD.net
「…」


なんで?


どうして?


聞かずには…いられない


「…ッ。」


それでも、言葉に出すのをためらう


口にしてしまったら…

もう、戻れない気がして




「訳を…聞かせては、くれないか?」


「…」
212: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:00:26.09 ID:y8J5z4lD.net
「もう…疲れちゃったの。」











「え…?]
213: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:07:08.27 ID:y8J5z4lD.net
「レッスンもしんどいし…」

「2人は、どんどん先に進むし。」

「ついていくのが、やっとだった。」



「なんでよ…?」

「頑張ろうって、言ったじゃない。」

「悩みなんて無いって…」


「いつも、笑ってたじゃない…」

「辛かったなら、言ってくれれば…!」






「だから…もう、疲れたの。」
214: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:07:41.81 ID:y8J5z4lD.net
「あんじゅ…」


「ずっと前だけ向いて走っていく貴女にも。」

「無愛想で、何を考えてるか分からない英玲奈にも。」


「もう…疲れちゃった。」


「本気…なの…?」


「ええ、勿論♪」


「あんなに…一緒に頑張ろうって…」

「みんなで、笑っていたいって…」

「全部…嘘だったの…?」





「…嘘よ。」


「…ッ!!」



振り上げた右手は、止まらなかった
215: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:13:43.91 ID:y8J5z4lD.net
-----


「…」


「…あんじゅ。」


「…もう、これで終わり。」

「さよなら、英玲奈。」


「…待ってくれ。」


「…離して。」


「…あれは、君の本心なのか?」


「ええ…本心よ。」

「だから…もう、いいでしょう?」


「…」




「…さよなら。」
216: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:19:02.60 ID:y8J5z4lD.net
-----



「…」


あれから、何日経っただろう

雨に打たれた私は

…また、風邪を引いてしまった


どうして、こう…

体が弱いのか


あの日の夜

英玲奈が、荷物を届けに来てくれた


…でも、何を話したかは覚えてない


気付けば、今日

あんじゅも、学校には来てないらしい


クラスメイトからの、メールで知った
217: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:19:26.98 ID:y8J5z4lD.net
…これじゃ、前と同じじゃない


あの時、私を支えてくれたのも

あんじゅだったっけ…





「…」

何をする気も起きないけど

何かをしなければ駄目だと思った


…でも、何を?


熱の下がった体を起こして

洋服に着替える


…今日は、休日だ

外に、出てみよう
218: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:26:56.11 ID:y8J5z4lD.net
-----


コンコン…


「…?」


「…少し、失礼する。」


「英玲奈…!」


「お母様に、部屋にいると聞いたんでな。」


「…何で来たの?」


「少し…聞きたい事があってな。」


「私は…話す事なんて無いわ。」


「ああ…」

「本当にあれが、本心なら…な。」


「…」


「少しだけで、いいんだ。」

「…あんじゅ。」


「…」
219: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:27:32.73 ID:y8J5z4lD.net
-----



「…ちょっと、意外だった。」


「…何がだ?」


「来るとしたら…ツバサだと、思ってたから。」


「…そうか。」


「…」


「ツバサは…また、熱が出たみたいでな。」


「え…?」


「…対した事はないさ。」

「きっとまた、すぐに元気になるだろう。」


「…そう。」
220: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:28:25.84 ID:y8J5z4lD.net
「…なあ、あんじゅ。」

「私には、どうしても…」


「あの言葉が、本心からだとは思えない。」


「いつも…私が見て来たあんじゅは。」

「笑顔で、ツバサの隣にいて…」


「…」


「…いや。」

「言いたくない事を、無理に聞くつもりは無い。」

「ただ…」



「…羨ましくなったの。」



「…何?」



「平凡な自分を変えたくて、ここに来たツバサと。」

「非凡な自分を変えたくて、ここに来た英玲奈が。」
221: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:41:02.42 ID:y8J5z4lD.net
「そんな2人が出会って。」

「お互いが、お互いを高め合って。」

「気付いたら、仲良くなって…」

「同じ物を目指して、努力して。」


「…そんな2人を見てるとね。」

「私自身が、凄く小さく思えて来たの。」


「…」


「…私ね。」

「別に、A-RISEに入りたい訳じゃないの。」



「…何故。」
222: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:41:45.23 ID:y8J5z4lD.net
「2人と、ダンスをするのが嫌な訳じゃない。」

「ありふれた日々が、とても楽しかった。」

「2人に褒めてもらえたら嬉しかったし。」

「私にも、ダンスの才能があるのかな…なんて、思えるほどに。」


「…そうだ。」

「確かに君には、ダンスの才能はある。」


「ここで腐らせてしまうのは…勿体ないと私は思うが?」


「ふふ…ありがとう。」

「英玲奈に、そう言ってもらえるなんて…」



「だとしたら、何故…?」
223: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:42:13.96 ID:y8J5z4lD.net
「…言ったでしょう?」

「私は、A-RISEに入りたい訳じゃないの。」


「2人と楽しくいれたら。」

「2人の笑顔が見れたら、それでいいの。」


「…そうやって考えたらね?」


「私には、2人みたいに熱中できる物が、無いんだって思って。」


「…!」


「ダンスは、確かに楽しい。」

「踊れたら嬉しいし、歌だって…」


「…でもね、気付いたの。」

「私…今まで、『悔しい』って感じた事が、無いの。」
224: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:45:06.12 ID:y8J5z4lD.net
「それは…」


「昇級試験だって、そう。」

「落ちて真っ先に考えたのは、ツバサの事。」

「自分の事は、どうでも良かったの。」


「ツバサみたいに、悔しいって思えたら。」

「今度こそ必ず受かってみせる、って言えたら。」


「…でも、そんな考え、ひとつも浮かばなかった。」

「ただ…2人と、一緒にいられたら。」


「私は、それだけで十分なの。」



「なら…」
225: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:45:26.14 ID:y8J5z4lD.net
「…なら、一緒にいればいい、って?」


「…」


「確かに、2人と一緒にいたいとは思う。」

「こんなに楽しい毎日を、送れるのなら…」

「それも、悪くないかな、って。」


「…でもね。」


「このままだと…」

「私はきっと、2人の足を引っ張ると思う。」


「…それは流石に、飛躍しすぎじゃ無いか?」


「ううん、そんな事無い。」
226: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:46:15.47 ID:y8J5z4lD.net
「次の昇級試験、きっとツバサは受かる。」

「それだけの力を、今のツバサは持ってる。」


「…でも、きっと私は受からない。」

「それでも、落ちた時に私は、悔しいとは思えない。」

「だって…別に、望んでる訳じゃないから。」

「そこに上がる事を。」


「…」


「英玲奈なら、分かるでしょう?」

「私の…気持ちが。」



「…」


「…そうだな。」
227: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:55:23.02 ID:y8J5z4lD.net
-----



「…」


着替えて、街に出て来たけれど

特に、何も感じ無かった


むしろ、周囲の喧噪が、耳障りにさえ感じる



ひとりになりたい



向かった先は、近くの公園

街並から少し外れた


人のあまり来ない、場所だったから



「…?」
228: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:56:01.22 ID:y8J5z4lD.net
そう思って来た場所には、先客がいた


背丈は、自分と同じくらい

高校生…かしら


でも、そんな事私にはどうでもよかった


隅っこのベンチに、そっと座る

風が、少し冷たい


暖かい飲み物でも、買って来たら良かったかな…?


「…」

まあ、いいか

きっと…体しか、暖まらないだろうから
229: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:56:32.06 ID:y8J5z4lD.net
「…!」


視線を上げると、女の子と目が合った

少し気まずくなった私は、目を伏せる


下を向いていた私に、聞こえて来たのは

テレビで聞いた事のある曲


少し、視線を前に戻すと

彼女は、ステップを踏んでた


「…」


お世辞にも、上手いとは言えないステップ

ターンだって、ふらついてる


でも…



私も最初は、こんなだったっけ…
230: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:57:28.46 ID:y8J5z4lD.net
-----



ぼーっと、彼女を眺めていると

いつかの自分を、思い出した


ここまで酷くはなかったけど…なんて


それでも、UTXに入ったときはボロボロで

よく、あんじゅに励ましてもらったっけ…


いつも笑顔で、お疲れさま、って


あれは…



「…ッ。」


視界が、霞む

溢れ出したそれが、どうやったら止まるのか分からずに

あたふたしている私に


目の前から、声が聞こえた
231: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:58:24.18 ID:y8J5z4lD.net
「…ちょっと、集中できないんだけど?」

「いきなり来たかと思えば、こっちジロジロ見て…」

「挙げ句の果てに、いきなり泣き出すし…」


「一体、どうしたのよ?」


「えっ…その…」

「ごめんなさい。」


「…ほら。」


「え…?」


「ハンカチ、持ってないんでしょ?」

「使いなさいよ。」


「え、でも…」


「いいから、使いなさい!」

「そんな泣き顔見てる、こっちの身にもなりなさいよ!」


「ご、ごめんなさいっ。」
232: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/06(木) 23:59:06.42 ID:y8J5z4lD.net
「ほら。」


「…ありがとう」


「ったく…一体、どうしたのよ?」


「え…?」


「目の前で泣かれたら、気になるじゃない。」

「何があったのか知らないけど。」

「話して楽になるのなら聞いてあげるから。」


「え…」


「見た所、同い年くらいでしょ?」

「私でよければ、聞くから。」


「あ、うん…」


「まったく…調子狂うわね…」



名前も知らない、目の前の彼女に

私は、今日までの事を話してみた
240: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:24:21.15 ID:UUa0HSjX.net
-----



「なるほどねえ…」

「友達が、辞めちゃった、か…」



「…ええ。」


話を聞いてもらって、少し落ち着いた

単に、吐き出せる場所が欲しかったのかもしれない


…それでも

彼女は、ちゃんと話を聞いてくれた

最後まで…ちゃんと


「アンタも…苦労してるのね。」



「…も?」


「…」
241: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:24:51.24 ID:UUa0HSjX.net
「…私もね。」

「見たと思うけど…」


「アイドル、目指してるの。」



「1年生の時にね?」

「アイドル研究部を結成してから。」

「ずっと…努力、してきた。」


「どれだけ人に笑われたって。」

「変な目で見られたって。」

「踊っているのが、好きだったから。」

「歌うのが、好きだったから。」


「アイドルになりたい。」


「ただ…そのために、頑張って来たの。」
242: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:25:38.61 ID:UUa0HSjX.net
「そう…」


…あれ?

1年生の時、って事は…



「その頑張りを見てなのかは、分からないけど。」

「新入部員が、入って来てくれた。」


「2人とも、同い年でね?」

「ステージで、キラキラしたいって、言ってくれた。」


「…正直、嬉しかった。」


「誰かと、頑張って何かを目指すって。」

「こんなにも…楽しかったんだ、って。」


「…」
244: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:26:33.09 ID:UUa0HSjX.net
「それから、何度かライブもしてね?」

「会場は満席…とは、いかなかったけれど。」


「それでも、見に来てくれる人がいて。」

「拍手を、送ってくれた。」


「そんな人たちのためにも。」

「もっと…もっと頑張ろうって、みんなで決めたの。」


「いつか…この学校で一番人気の。」

「スクールアイドルになってやるんだ、ってね。」


「じゃあ、今もそのために…?」


「…」







「…辞めちゃった。」
245: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:27:15.47 ID:UUa0HSjX.net
「え…?」



「…2年に、上がる前にね。」

「退部届けを、渡されたの。」


「もう…私に、ついて来れない、って。」


「そんな…」


「…私も、嘘だと思いたかった。」

「あんなに、一緒に練習して来たのに、って。」


「あんなに笑ってたのは、一体なんだったんだろう、って。」


「同じ…」


「…え?」


「私、も…」


「…そっか。」
246: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:30:58.67 ID:UUa0HSjX.net
-----



「…」


「…だから、もういいの。」

「このままだと、私がツバサの足を引っ張るから。」


「…それは、彼女自身の問題だろう?」

「何故、君がそこまで気にする必要がある?」


「…」

「なんでだろう。」


「私にも、不思議なの。」

「でも、あんなに一生懸命なツバサを見て。」


「何故か…そう、思ったの。」


「…そうか。」
247: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:31:29.52 ID:UUa0HSjX.net
「だから、もう辞めるわ。」

「これから、どうするかは分からないけど…」


「でも、私もきっと変わらなくちゃいけないの。」

「…2人みたいに。」


「それは…」

「…いや。」


「あんじゅの気持ちは、分かった。」

「私は、どちらの考えも否定するつもりは無い。」


「かつて…私が、そうだったからな。」


「だから、後は…」

「綺羅ツバサの、気持ち次第だろう。」
248: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:31:59.09 ID:UUa0HSjX.net
「ツバサの…?」


「ああ。」

「私の時も、そうだった。」


「結局の所。」

「我々を動かすのは、彼女のひたむきな想いだけなのだろうから。」


「それって…」


「とりあえず、私は帰るよ。」

「それから、きっともうすぐ、彼女がここに来るはずだ。」


「そのときは…」

「彼女の気持ちに、ちゃんと向き合ってやれ。」



「…彼女も、それを望んでいるだろうから。」
249: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:32:33.26 ID:UUa0HSjX.net
「でも…」


「君が、我々を…」

「綺羅ツバサを傷つけない様に。」

「ああやって終わらせようとした気持ちは分かる。」


「だが、きっと彼女にとって。」

「気持ちを隠された事が、何よりも辛いと感じているはずだ。」


「私が言えた事ではないが…」


「君が、ちゃんと想いを口に出せば。」

「彼女も、納得はするだろう。」


「君たちは、互いに優しすぎる。」

「結局の所、本音で向き合わなければ。」


「…先には、進めないんだ。」


「…」
250: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:33:09.68 ID:UUa0HSjX.net
「…それでは、私はこれで失礼する。」

「今日は、話してくれてありがとう。」


「…ううん。」


「…そうだな。」

「2人のわだかまりが解けたなら…」

「近いうちに、食事でも行こう。」


「立場がどうであれ。」

「君はもう、我々の友人なのだから。」


「英玲奈…」


「じゃあな、あんじゅ。」

「また会おう。」










「…本当に。」

「2人とも…おせっかいなんだから…」
251: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:33:55.14 ID:UUa0HSjX.net
-----


言葉が…見つからない

何も言えずにいると

また…彼女は、口を開いた



「案外、私達って似てるのかもね。」

「…でも。」


「貴女には、まだ友達が。」

「仲間が、いるんでしょ?」


「…」


「…去っていった子を、連れ戻したい?」


「…うん。」


「どうして?」


「大事な…友達だから。」


「向こうは、それを望んでなくても?」


「それは…」
252: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:34:27.96 ID:UUa0HSjX.net
「…そうね。」

「アンタの話を、聞いといてなんだけど…」


「同じ境遇だった私が、アドバイスできる事なんて何も無いと思う。」

「それが出来てたら…」

「私にも、仲間がいただろうから。」


「…」


「…でもね。」

「アンタは…きっと、私とは違う気がする。」


「…え?」


「話、聞いて思ったんだけど…」

「私には、その友達が本気で辞めたがってる様には思えない。」


「だって…それまで、笑ってたんでしょ?」

「楽しいって…言ってたんでしょ?」
253: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:35:19.04 ID:UUa0HSjX.net
「私は…」

「私は、気付けなかった。」

「彼女達が出してた、SOSに。」


「今更になって、考えてみたら。」

「最期の方に笑ってたのって…私だけだったな、って。」


「目指していた、アイドルって目標ばっか見てて。」

「何も…あの子達の事を、見てあげられてなかった。」


「それは…私の、ミス。」

「私に、見えてなかったもの。」



「…でも、アンタは違う。」


「それだけ…友達の事で、悩めるんだから。」

「誰かのために、泣けるんだから。」
254: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:36:00.91 ID:UUa0HSjX.net
「…」


「…もしかしたら。」

「その子には、不治の病があるのかもしれない。」


「え…?」


「例えばの話よ。」


「もしかしたら、貴女の事が嫌いになったのかもしれない。」

「もしかしたら、他にやりたい事が出来たのかもしれない。」


「…もしかしたら、本気で辞めたくなったのかもしれない。」


「どんな理由があるにせよ。」

「聞かなきゃ…始まらないでしょ?」


「ちゃんと…その子と、話した?」


「…」


首を、横に振る
255: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:36:29.78 ID:UUa0HSjX.net
「…そんな事だろうと思った。」

「いや、聞いてたからそんな気はしたんだけどさ。」


「…結局、その先に進むためには。」

「アンタが納得しなきゃ、意味ないでしょ?」


「ちゃんと話して。」

「ちゃんとした理由があって。」

「それで辞める、って言うなら。」


「アンタはそれに、納得しなきゃいけない。」

「それが、その子の出した答えなんだから。」


「でも、そうじゃ無いなら…」

「その子の腕引っ張って、連れ戻しちゃえばいいのよ!」


「え…」
256: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:37:03.53 ID:UUa0HSjX.net
「悩むぐらいなら、ぶち当たってみたら良いのよ。」

「どうせ、辞めるって言ってんでしょ?」

「なら、怖いものなんてないじゃない。」


「こんなとこでウジウジ悩んでる方が、時間の無駄。」

「…そう思わない?」


「…うん。」


「ほら、そう思うんならさっさと行った!」

「私も早く練習したいの!」


「え?えっと…」


「ほら、行きなさい!」


「あ、あの…!」


そう言って、彼女はぐいっと私の背中を押す
257: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/07(金) 23:37:34.44 ID:UUa0HSjX.net
「あ、ありがとうございました!!」


ペコッと頭を下げて、走り出す

そうだ

止まっている暇なんて無い


聞かなきゃ

あんじゅの、本当の気持ちを

伝えなきゃ

私の、あんじゅへの想いを!








「はぁ~…行った行った。」

「やっと、練習できるわ。」


「…」





「…いつか。」

「いつか、にこにも。」



「あんな仲間が、出来るといいな…」
270: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 01:58:48.66 ID:C44GHOZP.net
-----



「…で。」

「私は確か、急いであんじゅの所に向かおうとしたんだけど…」


「…どうして、こんな所にいるのかしら?」


今私がいるのはオシャレなカフェ

目の前には、紅茶とケーキのセット


「…なに。」

「ここのケーキセットが美味しいらしくてな。」

「たまたま君を見つけたから、入っただけだ。」


「そう。」


「…じゃなくて。」
271: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:02:15.07 ID:C44GHOZP.net
「私、急いでるんだけど?」


「それは、重々承知している。」

「だが、その前に話しておきたい事があってな。」


「話…?」


「あんじゅの、事だ。」


「…」


あんじゅの家に急いでいた私は

途中で、統堂英玲奈に捕まった


…そして、今ここにいる


「君にも…話しておいた方がいいと思ったからな。」
272: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:02:54.87 ID:C44GHOZP.net
「どうして…?」


「…?」


「私が、あんじゅと向き合わなきゃいけない。」

「私が直接、彼女から聞いた方が良かったんじゃないの?」


「…ふむ。」


「それとも…」

「何か、理由でもあるの?」


「理由…と、言うより。」

「ちょっとした…お願いがあってな。」


「お願い?」


「とりあえず、頂こう。」

「冷めてしまうぞ?」
273: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:13:36.44 ID:C44GHOZP.net
-----


「…そう。」

「あんじゅが、そんな事を…」


「…ああ。」


「…」


「綺羅ツバサ?」


「…私、あんじゅの事、何も知らなかった。」

「いつも彼女は笑ってて。」

「ずっと…それが、普通だと思ってた。」


「疲れた時に、そばにいてくれて。」

「レッスンが終われば、ジュースを渡してくれる。」


「…それが、いつも通りだった。」


「…」
274: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:21:15.73 ID:C44GHOZP.net
「…私。」

「あんじゅが好きなジュースなんて知らなかった。」

「好きな食べ物とか、嫌いな物とか。」


「何を…考えているのか、とか。」


いつも笑顔の彼女に

きっと私は、頼ってばかりだったんだろう

それに…満足していた



「…今、君は何を考える?」


「…そんなの、最初から決まってる。」

「あんじゅの事が…知りたい。」


「今度こそ…」

「ちゃんと本音で、向き合いたい。」


「…そうか。」
275: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:21:50.28 ID:C44GHOZP.net
「あんじゅが、君に迷惑をかけまいと思ったのは…」


「…分かってる。」

「統堂英玲奈の話を聞いて、分かった。」

「あんじゅが…何を、考えていたのか。」


「今なら…分かる。」

「だから貴女は。」


「何も言わずに…出て来たんでしょう?」


「…」


「これはきっと、私がすべき事。」

「…そのために、私がいるんだと思う。」


「…そうだな。」
276: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:33:09.09 ID:C44GHOZP.net
「…それで、お願いって?」


「…」

「いや、君に任せた。」


「…何よそれ。」


「大した事じゃないんだ。」

「ただ…君なら、何とかなるような気がしてな。」


「…はあ。」

「まあいいわ。」


「ところで…」

「さっきから大事そうに持っている。」

「そのハンカチは何だ?」


「あっ…!」

返すの、忘れちゃってた…
277: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:33:34.25 ID:C44GHOZP.net
「…名前、聞くの忘れた。」


…こういう所が、駄目なのかしら


「…ここに来る前。」

「ある…人に、会ったの。」


「同じような状況でも、頑張ってるその人に。」

「ほんの少し…勇気をもらった。」


「…そうか。」


手の中にある、ピンクのハンカチ

悪い事、しちゃったかな…?



「…あれ?」


端っこに、刺繍がしてある


「にこ…」


にこ…さん

また…会えるといいな
278: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:41:42.17 ID:C44GHOZP.net
そっとそれを鞄に入れて

そろそろ、私も用意しなくちゃ


「…行くのか。」


「ええ。」

「きっと…あんじゅが待ってる。」


「そうか。」

「…ここは払っておこう。」

「君は行くといい。」


「でも…」


「君が彼女をつれて帰って来た時。」

「また…ごちそうしてもらうさ。」


「それ、私の方が損じゃない…」
279: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:42:13.91 ID:C44GHOZP.net
でも…

何となく


統堂英玲奈が、私を待っていた訳が分かった


「…それじゃ、今度は3人で来ましょうか。」


「ああ、そうしよう。」


「それじゃ、行くわ。」

「ごちそうさま。」


「ああ…行ってこい。」


荷物をまとめて、あんじゅの家へ

やっと…彼女と、向き合える


今度は、ちゃんと話そう

例え、どんな結果になったとしても
280: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:43:05.91 ID:C44GHOZP.net
「…君は、きっと気付いていないだろうが。」

「あんじゅも…私も。」

「一人では、ここに立ってなどいなかっただろう。」


「我々を、繋ぎ止めているのは…」

「ただ、君の想い故にだ。」


「だから、君に託そう。」

「あんじゅを、必ず連れて戻ってこい。」


「私も…いや。」

「きっと…」

「これが、我々の在り方だろうから。」




「頼んだぞ…ツバサ。」








「…む。」

「これは、美味いな…」
281: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:48:08.11 ID:C44GHOZP.net
-----



「…ふうー。」


大きく、深呼吸をする

この扉の向こうに、あんじゅがいる


…そっと、あのハンカチを握りしめる

大丈夫


私が…

私だから


私にしか、出来ない事をしよう



ノックをして、数秒

艶やかな声で、返事があった


…そっと、ノブをひねる


さあ、行きましょう
282: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:49:18.85 ID:C44GHOZP.net
-----


「あんじゅ…」


「いらっしゃい、ツバサ。」


やっぱり彼女は

いつもの笑顔で、そこにいた


まるで、あの日の事が無かったみたいに…


「さっきまで、英玲奈がいたのよ?」


「…知ってる。」

「さっき…会ったから。」


「…そう。」

「それじゃ…」


「ええ。」

「あんじゅが考えてる事、聞いた。」


「でも…あんじゅの口から、教えてほしい。」


ちゃんと…向き合うために


「…分かった。」
283: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:49:41.34 ID:C44GHOZP.net
-----



「…これが、英玲奈に話した事。」

「多分…聞いたと思うけど。」


「…そうね。」


「…」


静かな時間が、流れる

でも、不思議と悪い気はしなかった


多分…

これから自分が何をしたいか

何を言いたいかが、分かってたから


あんじゅの話を聞いて、思った

…なんて単純な事で、悩んでたのか
284: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:50:30.56 ID:C44GHOZP.net
「…ねえ。」


「…?」


「あんじゅって、何味のジュースが好きなの?」


「え…?」


「よく…りんごジュースを買って来てくれたけど。」

「あんじゅが、好きだから?」


「…ええ。」

「でも、どうして…」


「あんじゅの、好きな食べ物って何?」

「嫌いな物とか…」


「趣味、とか…」


「…ツバサ?」
285: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:50:53.96 ID:C44GHOZP.net
「…私ね。」

「あんじゅの事…何も知らなかった。」


「いつもあんじゅは、私達といて。」

「いつも…笑顔だった。」


「どんなときだって、そばにいてくれて。」

「私が、自分の事で悩んでいたときも…」


「…だからかしら。」

「きっと、あんじゅはそういう子なんだと思ってた。」

「…ううん、私が決めつけていたの。」


「いつでも…あんじゅは、私といてくれる、って。」


「…」


「どこかで、安心してたんだと思う。」
286: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:52:16.30 ID:C44GHOZP.net
「…でも、何も知らなかった。」

「あんじゅの事、何も…」


「1年近く一緒にいたのに。」

「私…貴女の事、何も知らない。」


「だって…私の中でのあんじゅは。」

「いつでも笑って、そばにいてくれたから。」


「…だからって言うのも、あると思う。」

「あの日、初めて気付いたの。」


「あんじゅが…抱えていた物に。」


「…」


「どうして言ってくれなかったんだろう、って思った。」

「あんなに笑ってたのに、って。」
287: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:52:40.15 ID:C44GHOZP.net
「…でも、違った。」

「私が、知ろうとしなかっただけ。」


「それが…当たり前だったの。」


「ツバサ…」


「だから、って訳じゃ、無いんだけど。」

「過程はどうあれ。」

「今…あんじゅが、ちゃんと話してくれた事。」


「…それが、何よりも嬉しいの。」


「ちゃんと、向き合えてる、って思えるから。」


「…」


「でも、私は…!」


「…ねえ、あんじゅ。」
288: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:53:07.11 ID:C44GHOZP.net
「あんじゅの言いたかった事…今なら、分かる。」

「私の事…考えてくれた、って事も。」


「…あのね、ツバサ。」

「私ね、2人といるの、すごく楽しかった。」

「ずっと笑ってたのも、嘘なんかじゃない。」


「ただ…あの場所が、好きだった。」


「…」


「でも、ツバサが頑張ってる姿を見て。」

「どんどん前に進んでいく姿を見て…思ったの。」


「私がいたら、きっとツバサの足を引っ張る、って。」


「…」
289: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:53:33.12 ID:C44GHOZP.net
「私…試験に落ちても、悔しいって思えない。」

「それはきっと、ダンスに…アイドルに、真剣じゃないから。」


「ただ、貴女達といられる事だけで良かった。」

「…それだけだから。」


「だからね?」

「きっとこの先、この関係で続けていけないと思うの。」

「だって…」



「悔しいって気持ちを、感じる事が出来ないから。」



「あんじゅ…」


「例えば、試験に落ちても。」

「私は、きっと悔しくない。」


「同じクラスにいれるだけで、満足してるから。」
290: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:54:00.88 ID:C44GHOZP.net
「そして、もし3人でA-RISEになれた時も、そう。」

「きっとこの先、ライブをしたり。」

「色々な事があると思う。」


「全部が全部、成功するなんてあり得ない。」

「きっと何処かで、私達は壁にぶつかる。」


「そんな時…」

「私はきっと、貴女達の気持ちを理解できないと思う。」


「一緒に、笑う事は出来る。」

「だって、楽しいから。」


「でも…きっと、一緒に泣く事は出来ない。」

「だって、私は悔しくないんだもの。」
291: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:54:25.69 ID:C44GHOZP.net
「そんな時でも。」

「きっとツバサは、私の事を気にすると思う。」


「いっそ、叱ってくれたら。」

「いっそ、突き放してくれたら。」

「…何か、変わるのかもしれない。」


「でも、ツバサは優しいから。」

「きっと、そんな事はしない。」


「私の事を、一番に考えてくれると思う。」




「…それが、私にとっては辛いの。」

「貴女達が進む道を…邪魔したくないから。」


「…」
292: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:54:50.96 ID:C44GHOZP.net
「…それに、羨ましくなっちゃったの。」


「ここに来て、変われた2人が。」

「本気で目指す目標のある、2人が。」


「変わった2人を見て。」

「…私も、変わりたいと思った。」


「何かに、必死になれたらな、って。」


「…きっとそのためには。」

「ここにいてはいけないんだと思う。」


「ここは…私にとって。」

「幸せで、溢れてるから。」


「このままいたいと思えるほど。」

「満足…しちゃってるから。」
293: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:55:17.26 ID:C44GHOZP.net
「…だからね。」

「私自身が、変わるために。」

「貴女達みたいに、なりたいから。」


「そして…貴女達の迷惑に、なりたくないから。」


「それが、私が芸能科を辞める理由。」

「分かって…くれたかしら?」


「…」



ああ、やっぱり

あんじゅは、どこまで行ってもあんじゅなんだ


まったく…







これじゃ、予想通りじゃない
294: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 02:55:42.37 ID:C44GHOZP.net
「ねえ、あんじゅ。」


「…なあに?ツバサ。」


「色々、言いたい事はあるんだけど…」
















「貴女、馬鹿なのね。」
301: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:29:16.10 ID:C44GHOZP.net
「え…?」


「本当に…馬鹿なんだから。」


「ツバサ…?」


「私達のために、とかじゃなくて。」

「もっと…単純に考えたらいいのよ。」


「今、貴女はちゃんと私と話してくれた。」

「気持ちを、教えてくれた。」


「…楽しかったって。」


「その気持ちは、嘘じゃないんでしょ?」


「…」


「…うん。」
302: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:30:14.15 ID:C44GHOZP.net
「なら、それでいいじゃない。」

「あんじゅは、真面目すぎるの。」


「でも、このままじゃ…!」


「悔しいって、感じれないから駄目なの?」

「楽しいって、思えるだけじゃ駄目なの?」


「レッスンが苦しいなら。」

「私達といるのが嫌なら。」

「楽しく…思えないなら。」

「それは、仕方の無い事だと思う。」


「…でも、違うんでしょ?」

「楽しいって、あんじゅが思って。」

「…幸せを、感じてくれているなら。」


「きっと…ここにいて良いのよ。」
303: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:30:37.48 ID:C44GHOZP.net
「でも、それじゃ…」


「別にいいじゃない。」

「悔しいって、感じられなくても。」


「え…?」


「…私ね。」

「あんじゅが、笑ってるのが好きなの。」


「今まで通り、笑ってくれたら。」

「隣にいてくれたら、何だって頑張れる。」

「辛いときでも、きっとそう。」


「…そう、思えるの。」


「…」
304: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:31:04.02 ID:C44GHOZP.net
「あんじゅが、悔しいって思えないなら。」

「それでも、いいと思う。」


「もしこの先、何か壁にぶつかったときだって。」

「あんじゅは、隣にいてくれたらいいの。」


「そりゃあ、悔しいって気持ちは大事だと思う。」

「悔しいって思えるから、きっと次頑張れる。」

「次に、進めるんだと思う。」


「…でもね?」

「悔しいって感じた時に。」

「そんな私を支えてくれる存在が、必要なの。」


「…あの時、あんじゅがそうしてくれた様に。」


「…」
305: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:32:07.31 ID:C44GHOZP.net
「私、不器用だから。」

「何かあったときは、人一倍悔しいって思うの。」

「だからきっと、あんじゅの分も悔しいって感じてる。」


「どんな事があっても。」

「例えば、私達が前に進めなくなった時も。」


「…そんな時に、あんじゅがいてくれたら。」

「きっと…私は、下を向かずに前に進める。」


「だから、無理して悔しいって思えなくてもいいの。」


「その分、私達が夢を叶えた時。」

「人一倍、嬉しいって感じられたら。」


「その笑顔を見せてくれたなら。」


「…私は、それで十分。」
306: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:32:38.22 ID:C44GHOZP.net
「ツバサ…」


「…私も、馬鹿だから。」

「もしかしたら、もっといい方法があるのかもしれない。」


「でもね?」

「私が頑張るのは、私が変わりたいと思ったから…」

「だけじゃ、無いの。」



「あんじゅの笑顔が見たい。」

「一緒に、歩んでいきたい。」


「…これも、理由のひとつなの。」


「…え?」


「…あんじゅに、私は救ってもらったから。」
307: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:33:09.32 ID:C44GHOZP.net
「あの日、あんじゅがいてくれなかったら。」

「きっと今、私はここにいない。」


「…それぐらい、嬉しかったの。」

「あんじゅが、そばにいてくれた事が。」

「私を…支えてくれた事が。」



「あの時に、決めたの。」

「もしこの先、あんじゅが悩む事があったら。」


「…今度は、私の番だ、って。」



「そして、それはきっと今なの。」

「私が、貴女を救いたい。」

「貴女を、支えたい。」


「…そう、思ったから。」
308: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:33:41.48 ID:C44GHOZP.net
「だから…」

「私が今、言える事は。」


「…ううん。」

「私が今、言いたい事は。」



「…あんじゅ。」

「私には、貴女が必要なの。」

「きっと…統堂英玲奈にも。」


「だから…」

「これからも、隣にいてほしい。」

「あんじゅと、同じ景色が見たいから。」



「私と一緒に、来て…!」
309: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:34:10.73 ID:C44GHOZP.net
言いたい事、きっと半分も言えてない


そんなの、私のわがままじゃないか、とか

あんじゅの気持ちを無視してる、とか

せっかくの決意を、否定してる、とか


端から見たら

本当に、何の解決にもなっていないと思う


…でも、それで良かった

こうするべき、とか

こうしなきゃ、とか


そんなの、もうどうだって良い



想いはいつだって、単純で


…だからこそ、心に届くから
310: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:34:47.33 ID:C44GHOZP.net
あの時の私が、そうだった

屁理屈をこねて

下を向いていた私に


…本音で、答えてくれた


まだ、何も返せていない

まだ、何もしてあげられてない


これはきっと、優しさの押し売りだ

それでも、私がそうしたいと決めたから


嫌われたって、いい

避けられたっていい


ただ…伝えたかった

ただ…届けたかった


貴女への、気持ちを
311: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:35:38.53 ID:C44GHOZP.net
「…」

「でも…」


「…あのね、あんじゅ。」

「もし…まだ、変わらなきゃって思ってるなら。」


「それは、きっと間違ってる。」


「…」


「変わらなきゃ、って思った時点で。」

「貴女はもう…変わったの。」


「私達の事を、羨ましいと思ってくれた。」

「変わりたいと、願った貴女は。」


「…もう、スタート地点に立ってるの。」


「後は…足を踏み出すだけ。」
312: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:36:02.36 ID:C44GHOZP.net
「でも、やっぱり一人だと疲れちゃうから。」

「肩を貸してくれる人が、必要なの。」


「私にとってそれは、あんじゅで。」

「あんじゅにとって、私がそうでありたい。」


「…それじゃ、駄目かしら?」



「…」


失敗…だったかも

あんじゅの顔が、暗くなった


…笑顔が、見たい







「…馬鹿。」
313: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:36:34.07 ID:C44GHOZP.net
「…」


「ここまで言われて…」

「断れる訳、ないじゃない。」


「でも…」


ああ、もう

これはきっと、私の悪い癖なんだろう


「ふぇっ…!?」

「ひゅばさ…?」


あんじゅの、頬を引っ張る


「でもとか、だけどとか、もうたくさん。」

「私と、一緒に来るの。」


「もう、決定だから♪」
314: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:37:06.60 ID:C44GHOZP.net
「え、ちょっと、ツバサ…!」


「ほら、行くわよ!」


勢い良く、あんじゅの手を引っ張る

やっぱり、こっちの方が私らしい


「いいから、着いて来て!」

「変わりたいなら、私が変えてあげる!」


「もともと、統堂英玲奈の事だってあるんだから。」

「あんじゅ一人増えた所で、大した事無いわ!」


「2人まとめて、私が変えてみせるから♪」


あんじゅが、困ったような顔をする

でも、きっと…これで良いから



「…もう。」

「本当に…おせっかいなんだから。」
315: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:37:44.34 ID:C44GHOZP.net
「ねえ、ツバサ…」


「何?あんじゅ。」


「今…私ね?」

「なんだか、とっても楽しいの♪」


いつも通りの、その笑顔で

彼女は、笑った


夕日が照らしたその顔は

やっぱり、綺麗で…


「…ありがと、あんじゅ。」


「…え?」


「ううん、何でも無い!」


戻って来てくれて

また、3人で踊れる事が


…何よりも、嬉しかったから
316: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:55:04.30 ID:C44GHOZP.net
-----


「…で、連れて来たのか。」


「なんでまだいるのよ…?」


「…なに。」

「思ってたより、ケーキが美味かったんだ。」

「君も、食べずに出て行ったからな。」


「…はあ。」


彼女の言葉に、一気に脱力する


「それはそうと…」


「…どうしたの?」


「おかえり、あんじゅ。」


「…!」


「あ、えっと…」




「ただいま、2人とも。」
317: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:55:46.44 ID:C44GHOZP.net
「よし。」

「それでは、食事に行こうか。」


「え、今から?」


「おごってくれるんだろう?」


ニヤッと笑う顔が、近くに来る


「散々食べたんでしょ…!?」


「たかだか3つ程だ。」

「まだ、余裕はある。」


「ほんっ…と、貴女って人は…」


「あ、じゃあ、オススメのイタリアンがあるんだけど…」


「って、あんじゅも乗り気なの!?」


「では、行こうか。」


「もう…」
318: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:56:19.74 ID:C44GHOZP.net
そう言いつつも

また、前と同じ関係に戻れた事が

…やっぱり、嬉しかった


「はいはい、分かったわよ。」

「それじゃ、あんじゅのオススメのお店に行きましょう?」


「はーいっ♪」


笑顔のあんじゅを見て

私も、統堂英玲奈も笑顔になる


「っと…そうだ。」


「どうしたの?」


「ちゃんと、連れて帰って来たからな。」

「一応、お礼を言っておこう。」
319: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 22:56:47.95 ID:C44GHOZP.net
「今更、貴女にお礼なんて…」


「…ありがとう、ツバサ。」


「…えっ?」


「さて、出発だ。」


「えっ…ちょっと!」

「今の…!!」


ひらひらと、手を振って

彼女は、先を歩いていく


「何よ、もう…」


彼女の身勝手さには、いつも振り回される

でも…



「…どういたしまして、英玲奈。」


今日だけ、特別だから


前を行く2人に追いつく様に

私は、そっと駆け出した
335: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:00:14.25 ID:Qx2ZS5FU.net
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「…お待たせ、ツバサ♪」


「おはよう、あんじゅ。」


「私服で会うのって、なんだか新鮮ね。」

「ツバサのその服、可愛い♪」


「ふふ、ありがとう、あんじゅ。」

「あんじゅも、似合ってるわよ?」


「…ホント?ありがとう。」



今日は、ちょっとした秋休み

レッスンも無いから、せっかくだし

秋葉でも散策しようと、あんじゅが提案してくれた
336: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:00:48.56 ID:Qx2ZS5FU.net
この休みが終われば、昇級試験が待っている

気合いを入れすぎない様に

リフレッシュの意味も込めている



「…待たせたな。」


後ろから、声がかかる


「ううん、時間ぴったり。」

「おはよう、英玲奈。」


「…ああ、おはよう。」

「あんじゅに…綺羅ツバサ。」


「…」


「…どうした?」


「…別に?」

「おはよう、統堂英玲奈。」
337: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:01:20.73 ID:Qx2ZS5FU.net
やはり、聞き間違いだったのかも

あれ以来、彼女はいつも通り

私の事を、フルネームで呼ぶ


…少しは、認められたかと思ったのに


「…まあ、いっか。」


そもそも、まだ並べてもいないのに

こんな事を考えるのはよそう、と

今日を楽しむ事に意識を向ける


「それじゃ、行きましょうか。」


前に一歩踏み出した所で

統堂英玲奈から、声がかかる


「…まずは、どこに行くんだ?」


「…」
338: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:02:01.41 ID:Qx2ZS5FU.net
「…どこにいくの?あんじゅ。」


「え?」

「別に、決めてないけど…」


「そうなの?」


てっきり、あんじゅが提案したから

どこか、行きたい所があるのかと…


「たまには、あても無く歩くのもいいじゃない?」


と、あんじゅが言うので

とりあえず、人ごみに向かって歩き出した



…さて、どこに行こうかしら
339: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:02:27.84 ID:Qx2ZS5FU.net
-----


「お帰りなさいませ♪」

「こちらのお席へどうぞ♪」


まず最初に来たのは

ストリートに面している

お洒落な、可愛いカフェテリア


でも、ここって…


「お嬢様、こちらのメニューをどうぞ♪」

甘い声で、渡されたそれに

書いてあるのは、呪文のようなメニュー
340: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:02:45.80 ID:Qx2ZS5FU.net
「ねえあんじゅ、ここって…」


「ええ、メイドカフェよ?」

「一度、来てみたかったの♪」


屈託の無い笑顔でそう言われると

それ以上、何も言えないけれど…


「…ふむ。」

「なかなか、面白いな。」


統堂英玲奈は、いつも通りで

私だけ、何だか緊張してるみたい


…いや、確かに興味はあったんだけど
341: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:03:37.23 ID:Qx2ZS5FU.net
何を注文すべきか、悩んでいると

さっきの可愛らしいメイドさんが、声をかけてきた


「…お嬢様、こういった所は初めてですか?」


「え?ええ…」


「そんなに緊張しなくても、大丈夫ですよ♪」

「お嬢様にくつろいで頂くのが、私の喜びですから♪」


そう言って彼女は、笑顔になる

無垢な笑顔を見ていると

ちょっとだけ、緊張が解ける


…なんだか、あんじゅに似てるかも
342: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:04:05.31 ID:Qx2ZS5FU.net
「悩んでるようでしたら、こちらはいかがですか?」


そう言って彼女が指したのは

可愛い小さな、チーズケーキ


「私の、一番のオススメなんです♡」

「とぉ~っても、甘くて美味しいですよ♪」


幸せそうに言う彼女を見て

…ちょっと、食べたいと思ってしまう

お店からしたら、いい鴨なのかもしれないけど


「あ、じゃあ、それひとつ…」

流される様に、それを注文する


「はい、かしこまりました♪」

「心を込めて、お作りしますね♪」
343: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:04:33.37 ID:Qx2ZS5FU.net
それぞれが注文を終えて

待っていると、あんじゅが口を開いた


「ふふ、ツバサったら、ずっと緊張してるんだもの♪」


「し、しょうがないでしょ…?」

「こんな所、初めてだし…」


「そんな事言ったら、私も英玲奈もそうだけど?」


「…ああ、そうだな。」


あんじゅはともかく

統堂英玲奈に関しては

もはや我が家のようにくつろいでいる


…その度胸が、少し羨ましい


それにしても…
344: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:05:02.18 ID:Qx2ZS5FU.net
「メイドカフェってぐらいだから。」

「もっと男性が多いのかと思った。」


案外お店の中は、女子で賑わっている

それも、年の近い女の子ばかり


だからなのかも知れないけど

さっきから、近くの席の子達に見られてる気がする

それはきっと…


「…?」

「どうした?綺羅ツバサ。」


横目で、その顔を見る

今日の服装とも相まって格好よく見えてしまう


…ほんの、これっぽっちだけだけど
345: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:05:34.53 ID:Qx2ZS5FU.net
クールビューティーという言葉を

そのまま当てはめたようなルックス


これも、彼女の才能のひとつなのかしら


対するあんじゅも、可愛い服に身を包んで

絵になるような、2人




そんな事を考えてると

さっきのメイドさんが、料理を運んで来た


「お待たせしました♪」


その笑顔を見て

やっぱり私が、一番場違いなのかも、なんて思った
346: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:05:58.10 ID:Qx2ZS5FU.net
-----



ケーキを食べて

コーヒーを飲み終え

やっと、このお店の雰囲気に慣れた気がした


「…さて、そろそろ行くか。」


「そうね♪」


2人の後に続いて、お会計へ


レジには、あのメイドさんが来てくれた


「お嬢様、楽しんで頂けましたか?」


「…ええ、ありがとう。」

「貴女のおかげよ。」
347: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:06:25.04 ID:Qx2ZS5FU.net
「…いえ、楽しんで頂けたなら、何よりです♪」

「また、良かったらいらしてくださいね?」


「ええ、もちろん。」


その言葉に、また彼女は素敵な笑顔を見せてくれた


「それでは、行ってらっしゃいませ♪」


深々と頭を下げる彼女を背に

ほんの少し、名残惜しさを感じつつも、お店を後にした



「…可愛かったわね、彼女。」


お店を出て、あんじゅが言った
348: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:06:57.12 ID:Qx2ZS5FU.net
「…そうね。」


「彼女ね、秋葉のカリスマメイドらしいわよ?」

「…ほら。」


そう言って、あんじゅはSNSを見せてくれた

「ミナ…リンスキー?」


「入って間もないらしいけど、すごいわね。」


「確かに、いい接客だったな。」


統堂英玲奈の言う通り

ハキハキとした、いい接客だったと思う

でも、それ以上に…


あの笑顔が、印象に残っていた
349: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/11(火) 23:07:39.04 ID:Qx2ZS5FU.net
「ツバサも気に入ったみたいだし。」

「また、3人で来ましょうか♪」


「ふむ。」

「それでは今度は、何かサービスを頼むとするか。」


「サービスって?」


「オムライスに文字を書いてもらったりする、あれだ。」


「ふふ、英玲奈も気に入ったのかしら?」


「もう、2人で好き勝手言って…」


でも、いつかまた

あの笑顔を、見に来ようかしら



「…さあ、次に行きましょう!」


ほんの少し、気分が高揚する

まだ今日は、始まったばかり---
353: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 00:52:43.97 ID:s/TR9Izi.net
-----



「…なるほど、興味深いな。」


道を歩いていると、あるお店の前で足が止まった

アイドルグッズ専門店


…それも、スクールアイドルの


店舗の前には、私達UTX学院の

現A-RISEの先輩達のグッズが置いてあった


スクールアイドルが有名になったのはここ最近だけれど


お店の中は、たくさんのグッズで溢れていた

少し気になって、中に入ってみたら…
354: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 00:53:12.05 ID:s/TR9Izi.net
「わあ、こんなにたくさん…」


店頭には収まりきらないような

A-RISEのグッズが、そこにはあった


自分達じゃないにしろ

…なんだか、少し嬉しくなった


世間が、こんなにA-RISEに注目してる

それに、私達はなろうとしているのだから



そっと、手を伸ばそうとした時

体に、軽い衝撃を感じた


「きゃっ…!?」


「にゃっ…!?」
355: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 00:54:05.92 ID:s/TR9Izi.net
少しふらついたけど、こけたりはしなかった

毎日、足腰を鍛えてたおかげかもしれない


「…大丈夫?」


尻餅をついた女の子に、手を伸ばす


「あっ…えっと…」

「…ごめんなさい。」


申し訳なさそうに、彼女は私の手を取った


「もう…危ないって言ったのに…」

後ろから、彼女の友達らしき人が、出て来る


「あの…凛ちゃんが、ごめんなさい。」

そう言って、頭を下げられた
356: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 00:54:36.92 ID:s/TR9Izi.net
「ええ、私は大丈夫。」

「でも、気をつけなきゃ駄目よ?」


「「はい。」」


少し落ち込んだ2人を見て

なんだか、いたたまれなくなる

どうやら、まだ中学生みたいだし…


「…あら?」


最初に気付いたのは、あんじゅだった


「それ、A-RISEの…?」


「は、はいっ、そうですっ!」


眼鏡をかけた女の子が持ってたのは

先輩達の、グッズだった
357: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 00:55:16.08 ID:s/TR9Izi.net
「A-RISE…好きなの?」


なんとなく、声をかけてみた


「はいっ!」

「初代A-RISEに続いて、2代目となるA-RISEですが…」

「そのパフォーマンスは初代にひけをとらないほど!」

「何より、全員が3年生とあって、完成されたダンスが素敵で…」

「私の、憧れのスクールアイドルですっ!!」


途端に笑顔で饒舌に話す彼女に圧倒されつつも

こんなに熱心なファンがいる事に

恥ずかしいやら、嬉しいやら


…まるで、自分の事のように
358: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 00:55:49.01 ID:s/TR9Izi.net
「憧れ…と言う事は。」

「君も、スクールアイドルになりたいのか?」


「ええっ!?」


「…違うのか?」


少し高圧的な統堂英玲奈に怯えつつも

彼女は、口を開いた


「わ、私は…」

「昔から、歌も下手だし、運動音痴だし…」

「きっと、無理だと思います。」


「そんな事、ないと思うけど…」


それよりも、大事な物があると思うから
359: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 00:58:11.67 ID:s/TR9Izi.net
「得手不得手は仕方が無いとして…」

「やりたいと思う気持ちが、大事なのではないか?」


統堂英玲奈に、言われちゃったけど

私も、そう思うから


「そうだよ!」

「かよちん、昔からなりたいって、言ってたもん!」


「で、でも…」


「自分の力量を把握する事は大事だとは思うが。」

「そんな物お構いなしに、やりたい気持ちだけで努力してる奴を。」

「…私は、知っているが。」


「え…?」


それって…
360: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 00:59:32.33 ID:s/TR9Izi.net
「それで、そっちの子は?」


「え…?」


「聞いてたら、貴女はどうなのかな?って♪」


「り、凛は、かよちんと違って…」

「可愛くないし…アイドルなんて…」


…なんだか、似た者同士ね


「そう?」

「私からすれば、2人ともすっごく可愛いわよ?」


「そ、そんな事…」


「ほら、照れてる顔も可愛い♪」


「…///」
361: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 01:00:02.65 ID:s/TR9Izi.net
「…まあ、自分が可愛いと思ってる子なんて。」

「ほとんどいないと思うけどね。」


「…確かにそうだな。」


「私は、やってみたいと思うなら、やった方がいいと思うし。」

「やらなくって後悔するよりは。」

「やって、それでも無理だった時の方が、スッキリすると思う。」

「…それに。」


「ダンスや歌の才能なんてない私でも。」

「…今まで、続けてこられたから。」


2人の顔を見て、話す

…何故だか、伝えたくなった
362: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 01:00:31.31 ID:s/TR9Izi.net
「え、じゃあ、もしかして。」

「3人とも…」


眼鏡の子の言葉に、答える


「…ええ。」

「私達も、スクールアイドルを目指して頑張ってる。」


「続けてたって、叶うかは分からない。」

「…それでも、やりたいって思うから。」

「楽しいって、思えるから。」


「だから、続けて来れた。」



「そうよ?」

「やってみれば、案外どうにかなっちゃうんだから♪」
363: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 01:00:56.52 ID:s/TR9Izi.net
「そう…なんだ…」


「…ふふ。」

「2人とも、それぐらいにしておこう。」


「ごめんなさい、偉そうな事言って。」

「私達も、まだまだだから。」


そう言って、お店を出ようとする


「あ、あの…!」


「「…?」」


「が、頑張って下さい!」

「応援してます!!」



「…ええ、ありがとう!」
364: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 01:01:22.22 ID:s/TR9Izi.net
-----



「ツバサが、あんな事言うなんて…♪」


あんじゅは、どこか嬉しそう


「何となく…言いたくなったの。」


「彼女達に、伝わったのだろうか。」


「どっちでもいいわ。」

「それは、彼女達が決める事。」


「…でも、ほんの少しでも。」

「何かの切っ掛けになったなら…」


「…ええ。」

「いつかまた、どこかで会えるかもね♪」


「…そうだな。」


ショップを出た私達は

また、並んで歩き出した
365: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 01:02:10.29 ID:s/TR9Izi.net
-----



「小腹が空いた。」


…とは、統堂英玲奈の台詞

そう言えば、お昼は食べてなかったっけ


でも、ケーキは食べたのに…


とりあえず、近くの喫茶店に入る

私とあんじゅは、飲み物を

統堂英玲奈は…


本当、なんであんなに食べて太らないのかしら?


あんじゅは、それを見てにこにこと笑っている
366: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/12(水) 01:02:37.76 ID:s/TR9Izi.net
次第に、会話も少なくなり

まったりとした、時間が流れる

何となく、心地よく感じて来た時に



後ろの席の会話が、聞こえて来た



「…お、お待たせ。」


「あー、やっと来た!」

「待ちくたびれたよー。」


「え?あ、その…」


「ふふっ…うそうそ!」



「さ、座って?真姫ちゃん。」


「ありがと…尾崎さん。」
372: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:03:24.53 ID:MOkW2Axa.net
「ふふっ…」

「でも、真姫ちゃんがこうして遊んでくれるなんて思わなかった♪」


「べっ別に…」

「誘われたから…」



声の感じからして、同い年くらいかしら?

なんだかよそよそしく聞こえるその会話が

普通の学生っぽい、初々しさを感じさせる



受験…という言葉が聞こえた事から

恐らく、後ろの2人は中学生みたい


「そう言えば、もうすぐ文化祭だね!」

「良かったら、一緒に回ろう?」


無邪気な、その言葉が

…なんだか、少し羨ましくも思えた
373: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:04:24.30 ID:MOkW2Axa.net
「…ツバサ?」


「…?」


「どうしたの?」


「あ、ううん、別に…」


そろそろ、お店を出ようか

荷物をまとめようとした時に、それは聞こえた


「私と一緒にいると---変なふうに見られるかもよ?」


少し素っ気なく聞こえたのは

…きっと、真姫、って子の言葉


胸が---熱くなる
374: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:05:01.95 ID:MOkW2Axa.net
なんだか、もやもやした気持ちがこみ上げる

全く知らない他人なのに

どうして---こうも頭に響くのか


「…!」


パッと、顔を上げると

統堂英玲奈と、目が合った


「きっと…大丈夫だ。」


ぶっきらぼうに答える、その瞳が

安心できた事は、本人には言えないけど…
375: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:05:31.01 ID:MOkW2Axa.net
「…どうして、そう思うの?」


「…」

「不器用…だから。」



ああ…分かった

どうして、彼女の言葉に胸が熱くなったのか

どうして、他人事だと感じなかったのか



---似てるからだ

不器用で…見栄を張って

本音を言えないで、ふさぎ込んで…


いつかの、私の様に

いつかの---私達のように
376: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:06:12.87 ID:MOkW2Axa.net
「そんなの、気にしなくて良いのにっ♪」


「でも…」


「真姫ちゃんが思ってる程、私、器用じゃないよ?」

「やりたい、って思った事を、やってるだけ。」

「それだけだもん!」


「私は、真姫ちゃんといるの、楽しいよ?」

「仲良くなれて、よかったって思ってる。」


「…」


「時間は、あとちょっとしかないけど…」

「真姫ちゃんと、楽しい思い出、いっぱい作りたいの♪」


「だから、一緒に回ろ!!」


「尾崎さん…」
377: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:06:51.23 ID:MOkW2Axa.net
そっと、席を立つ


統堂英玲奈の言う通り

…何も、心配なんていらなかった


私の顔を見て、2人とも笑顔になる



「…さ、次に行きましょうか!」



レジに向かう時に、見えたのは



とても恥ずかしそうで…

とても綺麗な、笑顔だった


「ありがとう。」


そう---聞こえた気がした
378: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:07:17.13 ID:MOkW2Axa.net
-----


それから、私達は

ぶらぶらと、街中を歩く


ゲームセンターに行って、プリクラを撮ってみたり

モール内のショップで、洋服を選んだり


こんな衣装には、こんなのが似合うかも!

…なんて

アクセサリーを、買ってみたり


思い思いの方法で休日を過ごし

気付くと、UTXの近くまで来ていた


街頭にある、大型ディスプレイには

先輩達が、映っている
379: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:07:52.43 ID:MOkW2Axa.net
「やっぱり…凄いわね。」


「ええ…」


もうすぐ、あそこに立てるかが決まる

泣いても笑っても、今回が

年内最後の…チャンス


でも、不思議と不安は無かった

ただただ、楽しみに感じていた


それは、自分に自信がついたのか…

それとも、この2人がいるからなのか…



「…くだらない。」


そんな思いを打ち消すかの様に

後ろから…声が聞こえた
380: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:08:13.46 ID:MOkW2Axa.net
「…!?」


反射的に、後ろを振り向いた

綺麗なアクアブルーの瞳と、目が合う


「…何?」


「くだらないって言ったの…貴女?」


「…ええ、そうだけど?」


悪びれもせず、目の前でそう告げる


「くだらないって…どういう事?」


「どうもこうも…そのままの意味よ。」

「アイドルなんて…」

「まして、スクールアイドルなんて、くだらない。」


彼女の言葉に、体温が急上昇する
381: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:08:38.98 ID:MOkW2Axa.net
「貴女に…何が分かるの?」


「…別に?」

「ただ、彼女達を見ても、素人にしか見えない。」


「何言って…!?」


あんじゅに、腕を引っ張られる


「…貴女達も、あんなものを目指してるの?」

「そんな事をしてるぐらいなら、もっと有意義な事をするべきよ。」


「なっ…!!」


前に出ようとする私を、統堂英玲奈が遮る


「…では、君の言う有意義な事とは、一体なんだ?」


「…」
382: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:08:59.41 ID:MOkW2Axa.net
「…気を悪くしたなら謝るわ。」

「それじゃあね。」


そう言って彼女は、振り向いて歩き出した


「ちょっと待ちなさいよ…!」


「ツバサ!」


「でも…」


私だけじゃない

今まで、頑張って来たメンバーや

ここにいる、2人

それに、A-RISEの先輩達まで馬鹿にされた


…黙っていられる訳が無い
383: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:09:34.90 ID:MOkW2Axa.net
「…見てなさい!!」


「いつか、貴女が凄いと思えるような!」

「憧れるような存在になってみせる!!」


「決して、くだらないなんて事は無い!」

「誰もが認めるようなアイドルに、なってみせるからっ!!」



…一瞬、足を止めたけど

また、歩き始めた


こちらを、振り向く事もなく



…でも、黙ってなんていられなかった

なにか、言ってやりたかったから
384: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:09:55.23 ID:MOkW2Axa.net
-----


「もうっ。」

「ツバサったら…」


周りの注目を集めてしまったから

あんじゅ達に引っ張られて

人通りの少ない道まで、連れてこられた


「…君は、すぐに熱くなるな。」

「悪い癖だ。」


「だって…!」


「…分かってるから、ツバサ。」


「え…?」


「よく、言ってくれた。」
385: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:10:35.91 ID:MOkW2Axa.net
「ツバサの気持ちは…ちゃんと、分かってるから。」

「…ううん。」

「私達も、同じ気持ち。」


「そうだ。」

「ぜひ、なってやろうじゃないか。」

「…彼女も、認めるくらいにな。」


「2人とも…」


2人も、同じ気持ちでいてくれた

…少しだけ、もやが晴れる


「…でも、ああいう人たちもいるんだから。」

「ツバサは、もうちょっと我慢を覚えなくちゃね♪」


子供をあやす様に

あんじゅに、諭される


「それは…」
386: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/13(木) 15:11:13.43 ID:MOkW2Axa.net
分かってるけど…

どうも、すぐに頭に血が上ってしまう


「まあ、あんな言い方する奴ばかりじゃないさ。」

「大抵の人間は、無関心だからな。」


「彼女にも…何か、思う所はあるのだろう。」


「…」


「…もう、そんなにむすっとしないの。」

「ほら、甘いものでも食べて、元気出しましょう?」


そう言って、あんじゅが指差したのは

…老舗の、和菓子屋だった


「…うむ、それがいいな。」


2人に促されて、お店に足を運んだ




「…いらっしゃいませっ!!」
414: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:01:08.57 ID:RnzLW5ax.net
-----


店内に入ると、ほのかに甘いにおい


「いいにおい…」


ショーケースの奥には

同じくらいの年格好の女の子


「いらっしゃいませっ!」

「どれにしましょう!!」


溌剌としたその雰囲気は

さっきカフェで会った女の子に、どことなく似ている


「どれがいいかしら…?」


あんじゅが、ショーケースを眺める
415: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:01:37.99 ID:RnzLW5ax.net
「どれも、オススメですよっ。」


朗らかな笑顔で、笑いかける彼女

確かに、どれも美味しそう…


眺めていると、ひとつのおまんじゅうに目が止まる

小さな、まあるいおまんじゅう


「おおっ!お客さん、お目が高い!」

「うちの一番人気です!」


より一層、目を輝かせる


「ふふっ…」


なんだか、面白い
416: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:02:17.95 ID:RnzLW5ax.net
「高校生…ですか?」


「ええ、1年生よ。」


「穂乃果と一緒だ!」

「私も、音ノ木坂の1年生なんですっ!」


「音ノ木坂…」


もし、私がUTXに受かってなかったら

この子と…出会っていたのかしら


「3人は、どこの…」


「…穂乃果。」


彼女が口を開いた時

奥から、大和撫子のような

割烹着の似合う、女の子が出てくる
417: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:03:04.10 ID:RnzLW5ax.net
「あ…海未ちゃん。」


「…接客中だったのですね。」

「お母様が、呼んでましたよ?」


「えーっ。」

「せっかく、お話しようと思ったのにー…」


「お喋りするために、ここにいるのではないのですよ?」

「ここは、私がやっておきますから。」


「…はーい。」

彼女が、頬を膨らませる


「…!」

「すぐ戻ってくるから、ちょっとだけ待ってて下さい!」


そう言って、彼女は奥へと入っていく
418: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:03:33.37 ID:RnzLW5ax.net
「もう…」

「穂乃果が、すみません。」


「いいえ?」

「楽しませて、もらったから。」


「貴女も、ここの人?」


「…いえ、私は穂乃果の幼なじみでして。」

「よく、こうしてお手伝いを頼まれるんです。」


「幼なじみって、なんだかいいわね♪」


「…それが。」

「じっとしていられない彼女に、どれだけ振り回されたか…」


そう言って彼女は、少し呆れた顔をする
419: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:04:27.95 ID:RnzLW5ax.net
「でも、一緒にいるって事は…」


「…ええ、そうですね。」

「色々、振り回される事はありますが…」


「案外、私も楽しんでいるみたいです♪」


とても綺麗に笑う、彼女を見て

それが本心だと、納得する


「貴女方も、同じ学校なんですか?」


「ええ、そうよ?」

「私達は…」


「おっまたせーっ!!」


私達の会話を遮る様に

彼女が、奥から飛び出して来た
420: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:05:15.81 ID:RnzLW5ax.net
「こら、穂乃果!」


「もう、海未ちゃん気にし過ぎだよー。」


そう言って、彼女は小包を差し出した


「はい、これ!」

「よかったら、3人で食べて!」


「え…?」


「おまんじゅう!」

「せっかく、仲良くなれたから!」


仲良くなれたって、まだそんなに話してないのに…


「流石に、それは…」


好意は、嬉しいけど…
421: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:05:42.84 ID:RnzLW5ax.net
「いいのいいの!」

「もうすぐお店閉めるし…」

「せっかく、来てくれたから!」


「でも…」


「いいから…はいっ。」


手を添えて、渡される


「私、今からお母さんのお手伝いしないとだから…」

「よかったら、また来て下さい!」


ペコっと、頭を下げられた


「それじゃ、海未ちゃん。」

「後はよろしくね~♪」


また、彼女は奥に駆け込む
422: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:06:56.01 ID:RnzLW5ax.net
「もう…穂乃果ったら…」


「ふふっ。」

「彼女、じっとしてられない性格なのね♪」


あんじゅが、口を開く


「…そうですね。」

「本当に…振り回されてばかりです。」



「でも、楽しいのよね?」


「…そうですね。」

「私も…もうひとりの、幼なじみも。」


「…仲、いいのね。」


「もう、何年も一緒にいますから。」

「これが私達の、日常ですね。」
423: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:07:23.48 ID:RnzLW5ax.net
「穂乃果は、いつも私の手を引いて。」

「見た事無い景色を、見せてくれるんです。」


「時々、どうしようも無いときもありますが。」

「あの底抜けの明るさと元気に。」

「…私も、何度も救われましたから。」


見た事無い…景色

きっとそれは…


「ああ…でも、分かる気がするよ。」


「ええ…本当に♪」


「…?」
424: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:07:45.37 ID:RnzLW5ax.net
「…案外、私達って似てるのかも?」


「そうなのですか?」


「ああ、確かにな。」


「…私達にも、いるんだ。」

「一度決めた事に向かって、走って。」

「気付いたら、腕を引っ張られて。」



「そうねえ…」

「気付いたらそれが、普通になってたけど。」

「私達も、ずいぶん振り回されたから…」


「それって…」


「…!」
425: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:08:17.32 ID:RnzLW5ax.net
「も、もう!」

「2人とも、行くわよ?」


「…これ、ありがとう!」

「彼女にも、伝えておいて!」


…何だか、熱くなった顔を見せられずに

お店を、出て来てしまった


「…」



---



「…ふふっ。」

「お二人にとって…それが、彼女と言う訳ですね?」


「ああ。」
426: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:08:49.43 ID:RnzLW5ax.net
「でも…貴女の言葉を借りるなら。」

「私達も、あの子に腕を引かれて、ここまで来たの。」

「何度だって、悩む事があったけど。」

「その度…彼女は、手を差し伸べてくれた。」


「…ああ。」

「本人は、自覚していないだろうが…」

「彼女の行動が、私達を導いている。」

「見た事の無い景色を…見せてくれる。」


「だからかな…」

「どんな事でも、今は楽しいんだ。」


「…ええ、本当に。」


「そう…なんですね。」
427: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:09:21.36 ID:RnzLW5ax.net
「ほら、2人とも行くわよ!」


出てくるのが遅い2人に、声をかける

一体、何を話してるんだか…


「はーい♪」


「それでは、失礼する。」

「今日は、ありがとう。」


「いえ。」

「よろしければ…また、寄ってくださいね?」


「ええ、勿論♪」

「それじゃあね?」


「はい、ありがとうございました!」
428: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:09:59.35 ID:RnzLW5ax.net
-----


「もう…一体、何を話してたのよ?」


「ふふっ…秘密♪」


「ちょっと…気になるでしょ?」


そう言いながらも

2人は、微かに笑っていて…


きっと、何か良い事があったんだろう


「それにしても…」

「だいぶ、暗くなって来たわね。」


「…それじゃ、おまんじゅうも頂いた事だし。」

「あそこで、食べない?」


あんじゅに促されて

3人で、階段を上っていく
429: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:10:24.51 ID:RnzLW5ax.net
-----


「うわあ…美味しそう♪」


手に取ってみると

お店で感じたあのにおい


「…それでは、頂こうか。」

統堂英玲奈は

もう、待ちきれないと言った感じ


神田明神に繋がる、男坂と呼ばれる長い階段

その一番上で、景色を見る

参拝客が少ないからと

…少し、行儀が悪いけれど

一番上の段に座って、それを口にする


「…おいしい。」
430: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:10:59.06 ID:RnzLW5ax.net
思わず、顔がほころんだ


夕暮れに映える、音ノ木の街並

民家が建ち並ぶ、その奥に見える電気街


昼間、あんなにうるさかった雑踏が

消し去られたような、静かなこの場所


様々な物が入り乱れるこの街で

私達は、この先どこへ向かうのか


「…綺麗ね。」


あんじゅが、ぽつりとこぼす


「ええ…本当に。」


「…そうだな。」
431: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:11:54.16 ID:RnzLW5ax.net
-----



「…っと。」


食べ終わった私は、立ち上がって

2、3歩ほど、後ろに下がる


目の前に出来たスペースに

そっと…手を伸ばした


「…ツバサ?」


「…なんだか。」

「じっと、してられなくて。」


リズムをとり、手を広げる

一日踊ってないだけで

…こんなに、体を動かしたくなるなんて
432: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:12:25.29 ID:RnzLW5ax.net
「まったく、君は…」


「…本当にね。」


そう言いながら、2人も立ち上がる

ワンテンポ待って、タイミングを合わせる

踊るのは、今度の試験の課題曲


そして、この曲は…


「…ねえ、2人とも。」


「なあに?ツバサ。」


ステップを踏みながら

目線は、前を向いて


「昇級試験…」

「必ず、合格してみせるわ。」



「「…」」
433: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/18(火) 00:13:38.15 ID:RnzLW5ax.net
「…ええ。」

「今度は…私も。」

「2人の隣に、いたいから。」


「…そうだな。」

「私も…そろそろ、1人は飽きて来た所だ。」



「自分を、変えるために。」

「貴女達と変わるために。」


「次こそ…必ず、受かってみせる!」


ダンッと足を揃えて

3人で、ポーズを決める

曲は無くても、覚えてる


…今まで、ずっと練習してきたから



ふう…と、息を吐いた時

後ろから聞こえたのは


…小さな、拍手
442: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:52:22.29 ID:mHfbGZZr.net
「…!?」


驚いて、後ろを振り返る


髪をひとつにまとめた

巫女服の似合う、女の子


「…貴女は?」


「…ああ、急にごめんな?」

「掃除してたら、踊ってるのが見えたから。」


「…そう。」



「…綺麗なダンス、踊るんやね。」

「あんまり、詳しくはないけど…」

「すごいのは、分かった。」



「ありがとう。」
443: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:52:52.37 ID:mHfbGZZr.net
「貴女達も、スクールアイドルなん?」


「ええ…目指してるの。」


「…やっぱり。」

「そんな気が、した。」


優しそうに、笑う彼女

でも、何処か寂しげで…


「会ってすぐ、こんな事聞くのはどうかと思うけど…」

「貴女達は、何のために頑張ってるん?」


「何のため…?」


「いきなり来て、怪しいとは思うけど…」

「良かったら、聞かせてほしい。」


そう告げる彼女の顔は、どこか真剣だった
444: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:53:24.50 ID:mHfbGZZr.net
「…夢を、叶えるため。」


「夢…?」


「最初は、自分を変えたくて始めたの。」

「でも、やっているうちに。」

「目指すべき…目標ができた。」

「その目標を目指してる内に、仲間と出会えた。」


「不器用で、衝突する事もあったけど…」

「その仲間の努力を見て。」

「その仲間の笑顔を見て。」


「そんな仲間と、一緒に進んでいきたいと思った。」


「…」


「そうやって考えてたら。」

「叶えたい事とか、頑張る理由が一杯になっちゃって。」
445: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:54:13.61 ID:mHfbGZZr.net
「…だから、全部あわせて、夢って事にした。」

「どの理由も…叶えたい、未来だから。」


「ツバサ…」


「じゃあ、もし夢が叶わなかったら…?」

「頑張って、努力もして。」

「例え一人になっても、諦めずにやって来て。」

「それでも…実らなかったら…?」


「そんなの、その時考えればいいじゃない。」


「…!」


「自分が叶えたいと思ってる間は。」

「可能性は、ゼロじゃないでしょ?」

「だったら、自分が諦めるまで続ければ良いのよ。」



「…そうでしょ?」
446: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:54:43.71 ID:mHfbGZZr.net
「…」


「貴女も…何か、叶えたい夢があるの?」


「…ウチは。」

「ウチの友達が…」


「その子も、貴女達と同じ、スクールアイドルを目指してた。」

「…ううん、今でも目指してる。」


「仲間も出来て、頑張ってたんよ。」

「なのに…」



「…その子は、また一人になった。」



「…」


「それでも、まだ頑張ってる。」

「弱音も、吐かんと…」
447: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:55:14.86 ID:mHfbGZZr.net
「それって…」


「…?」


「…いいえ、何でも無いわ。」

「それで、貴女はどうしたいの?」


「…あの子の、夢を叶えてあげたい。」

「手助けを…してあげたい。」

「でも…どうすればいいか、分からなくて。」



「…」

「…これは、最近知り合った人から聞いたんだけど。」

「その人も、スクールアイドルを目指してた。」

「どれだけ人に笑われたって。」

「変な目で見られたって。」

「踊るのが、歌うのが大好きだから。」

「アイドルになりたいからって、頑張ってた。」
448: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:55:48.34 ID:mHfbGZZr.net
「その子にも、仲間が出来た。」

「一緒に夢を目指せて、嬉しいって。」

「頑張るのが、楽しいって言ってた。」



「…でも、その仲間は辞めちゃって。」

「彼女、一人が残った。」


「…!」


「彼女は、言ってたわ。」

「気持ちに、気付いてあげられなかった。」

「自分だけが、前を向いていた、って。」



「…」


「その人に、言われたの。」

「私達、似てるのかも、って。」
449: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:56:25.68 ID:mHfbGZZr.net
「貴女の言う人に、私は会った事は無いけれど。」

「もし、その人が私と似ているのなら…」


「その人は、理解してくれる友達が、欲しいんだと思う。」

「自分の、本当の気持ちを。」


「そして、理解したいんだと思う。」

「自分の事を、想ってくれてる人の事を。」


「…」


「貴女の気持ち、きっとその人は知ってると思う。」

「知ってて、素直になれないだけだと思う。」


「だったら、もう…」

「素直になってくれるまで、その人のそばにいるしかないでしょう?」



「…」

「そう…なんかな?」
450: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:56:49.20 ID:mHfbGZZr.net
「…さあ?」

「私はその人じゃないから、本音は分からないわ。」


「でも、貴女は。」

「その人に夢を叶えてほしいんでしょう?」


「…うん。」


「それなら、貴女が思った事をしたらいいの。」

「その人の事を考えて、行動して。」

「それで無理だったら、また次よ。」


「でも…」


「貴女が想って、行動するんでしょ?」

「…その人のために。」


「なら…それはもうきっと、貴女の夢なの。」



「ウチの…?」
451: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:57:19.05 ID:mHfbGZZr.net
「…会ったばかりの貴女に言うのもどうかと思うけど。」

「私だって、悩む事はあるし、むしろ悩んでばっかりよ。」


「何度だって後悔したし、今もしてる事だってある。」

「…それでも、ここに来てよかった。」

「そう思えるのは、一緒に夢を叶えたいと思える、仲間が出来たから。」


「悩んだ時に、手を取ってくれる仲間がいるから。」


「…だから、彼女達の夢が、私の夢にもなった。」

「その夢を叶える、力になりたいと思った。」


「きっと、それは…」



「…ええ♪」

「それは、私達も同じ気持ち。」

「手を…差し伸べて、もらったから。」
452: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 00:58:43.24 ID:mHfbGZZr.net
「…そうだな。」

「何一つ興味を持てなかった自分に。」

「本音で、本気でぶつかって来たから。」


「…応えて、くれたからな。」


「…そっか。」

「少し…羨ましいな。」



「貴女も、そうなりたくは…ない?」


「え…?」


「貴女の望む答えを出せたかは、分からないけど…」

「その人の夢を叶えたい、って思って。」

「そのための勇気が欲しいなら。」


「…私が、背中を押してあげる。」


そっと、彼女に手を差し出した
453: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:00:14.54 ID:mHfbGZZr.net
「…!」


「私は、必ず夢を叶えてみせる。」

「そのために、今まで頑張って来たから。」


「もし、貴女が私と同じ様に。」

「自分の夢も、誰かの夢も叶えたいって言うなら。」

「それが、貴女自身の夢だって言うなら…」


「きっと、貴女は叶えられる。」

「その力を、持ってるの。」


「…それを、私が証明してみせる。」


「…」


「後は、勇気を持つだけよ?」




「…うんっ。」
454: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:00:48.30 ID:mHfbGZZr.net
彼女が、私の手を取った


「…できるかな、ウチにも。」


「できるか、じゃないの。」

「やり遂げるのよ。」


「叶えられない夢なんか、無いんだから。」


「…そうやね。」


「それだけ、誰かのために考えられるんだから。」

「誰かのために、悩む事が出来るんだから。」


「…きっと、必要な物はそれだけでいいのよ。」



「…うん。」

「ありがとう。」



「…ふふっ。」

「どういたしまして♪」
455: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:02:21.86 ID:mHfbGZZr.net
-----



「…ちょっと、スッキリできた。」

「急に声かけたのに、答えてくれてありがとう。」



「…いいえ。」

「私達にとっても、良い機会だったから。」



「あ、良かったら…」

「名前、教えてくれんかな?」


「ええ、私は…」



「…?」


「…やっぱり、辞めとく。」


「え…?」
456: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:03:01.25 ID:mHfbGZZr.net
「こうして、出会えたんだから。」

「きっとまた、その内会えるわ。」

「それに…」


「それに…?」


「まだ、お互い夢の途中だから。」


「いつか、お互いが夢を叶えた時。」

「改めて、自己紹介しましょう?」


「胸を張って、今度こそ笑顔で♪」



「…分かった。」

「ウチも…諦めない。」


「絶対に、叶えてみせる。」

「貴女達に、自慢できるくらいに。」



「…ええ♪」

「約束よ!」
457: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:03:38.93 ID:mHfbGZZr.net
-----



「んんーっ…」

「今日は、色々あったわねー…」


暗くなった夜空に

うん、と手を伸ばす


「ねえ、ツバサ…」


「…何?あんじゅ。」


「どうして、名前教えてあげなかったの?」

「別に、名前ぐらい…」



「…まあ、理由は色々とあるけど。」

「彼女には…」

「ううん、彼女達には、また会える気がするの。」



「彼女達…?」
458: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:04:42.27 ID:mHfbGZZr.net
「…まあ、そっちはあんまり大した理由じゃないわ。」


「なら、一番の理由は何だ?」


「そりゃあ…」

「私達の名前は、もうすぐ分かるじゃない。」

「…ほら。」



そっと、空に指を指す


「ははっ…確かにな。」


「もう、気が早いんだから…」


それに映った月を見て

3人で、笑い合う


それを映し出す

あの、スクリーンの下で---
459: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:05:09.30 ID:mHfbGZZr.net
「さあ、夕食でも食べて帰ろうか。」


「えー、英玲奈、また食べるの?」


「勿論、3食しっかり食べないとな。」


「貴女、3食以上食べてるじゃない…」


前を歩く2人を見ながら

もう一度、振り返ってみる


「…」


初めて会って、応援してくれる子がいた

自分自身に、悩んでる子がいた

初対面で、敵意むき出しの子だっていたし


…そして、誰かの事で悩む子も
460: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:06:02.66 ID:mHfbGZZr.net
出会った事に意味があるなら

…きっと、それは出会えたから


それがきっと、どんな出会い方だって

良い出会い方でも、悪いものでも

意識していても、していなくても


…繋がったから


きっと、出会いは一期一会

良く言われるけど、間違いじゃないと思う


出会ったその一瞬、その時を大事にしろ、って


でも、きっとそれで終わりなんかじゃない

そこから先は、自分自身で紡ぐ物だから
461: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/19(水) 01:06:34.10 ID:mHfbGZZr.net
もしかしたら、もう会えないかもしれない

もしかしたら、意味なんて無いのかもしれない


…でも、私は直感する

きっと、今日あった事に意味が無い事なんてひとつもない


そして、きっとまた会える

あの、月が照らすこの街で


また会えたら---友達になりたい

また会えたら---見せつけてやる

また会えたら---導いてあげよう


そして---いつかのお礼を添えて





初めて出会えた、あの、仲間と共に---
474: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:37:26.24 ID:zr7wYNpS.net
-----



「…それでは。」

「これより、審査結果を発表する。」

「年度内最終選考であるため。」

「合格者三名をもって、A-RISEの第三期生とする。」



レッスン場に、動揺が見られた

現A-RISEのメンバーが総入れ替えとなる今回

今から発表されるメンバーが、新生A-RISEとなる


新しいメンバーは3人

…ほぼ間違いなく、その内の一人は統堂英玲奈だろう



なら、残り2枠に入るのは

あんじゅか…私か…

2人とも、もしくはそれ以外…
475: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:38:04.39 ID:zr7wYNpS.net
「…では、まず一人目。」


「…」

「今までトップを崩さず、よくここまで来た。」

「統堂英玲奈…君だ。」



「…はい。」


返事をして、一歩前に出る

いつもの表情で、みんなの方へ向き直った



「…それでは、二人目。」


…そう

ここからが、私達には本番だから


「二人目は…」
476: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:38:54.66 ID:zr7wYNpS.net
トレーナーの口が、スローに見える

早く名前を聞きたい気持ちと

もし、自分ではなかったらという気持ち

鬩ぎ合うその気持ちにふたをして

ただ、意識を集中させる



「…優木あんじゅ。」


「は、はい…!」


少し、驚いたようなその顔で

上擦った声で返事をする、あんじゅ


『まさか…』なんて言いたそうな

その顔に、小さくウインクする


頑張って来た事を、知っているから






残り---1人
477: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:39:30.15 ID:zr7wYNpS.net
「…では、最後のメンバーを発表する。」

「最後の一人は…」



…なぜだろう

さっきまで鬩ぎ合っていた心の中が

しん…と静まり返る


まるで、時間を極限まで引き延ばした様に

それは、長く感じた、刹那の瞬間


自分の鼓動の音が、大きく聞こえる

それでも、心拍数は変わらない


諦めたのか、それとも…






「…綺羅ツバサ、君だ。」
478: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:40:54.48 ID:zr7wYNpS.net
「…はい。」


一歩を踏み出し、二人の元へ

三人で並んで、姿勢を正す




「君たちが、今回の合格者だ。」

「そして、A-RISEの名を引き継ぐ事になる。」

「もちろん、結果が出せなければ降格してもらう。」

「ここUTX学院の代表となる事を、肝に銘じておけ。」

「…いいな?」



「「はいっ!!」」


同級生からの祝福を受けて

上級生の涙を見る



その身にのしかかる

代表としての、重圧
479: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:41:41.46 ID:zr7wYNpS.net
「…それでは、ミーティングはここまでとする。」

「君たち3人は、次回から別メニューだ。」

「いくつかのレッスンをこなした後…」

「現A-RISEのレッスンに、参加してもらう。」



…ようやく

本当にようやく、ここまで来た

目指していた物の、スタート地点

そこに、立つ事が出来たのだから




「…それから。」

「次回のレッスンまでに、リーダーを決めておくように。」


「それでは、解散。」



「「…ありがとうございました!!」」
480: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:42:06.82 ID:zr7wYNpS.net
-----



「リーダー…か。」


トレーニングルームで

日課となった、それをこなす


「…ふう。」

「君は、どう思うんだ?」


「私は…」


認めたくないけれど

…ううん、とっくに認めてはいたけれど



「…統堂英玲奈。」

「貴女が、適任でしょう?」



「…」
481: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:42:44.34 ID:zr7wYNpS.net
「リーダーシップがあるかは置いておいて…」

「この中じゃ、実力は飛び抜けてるし…」


「私と違って、冷静に状況も見れると思うし…」


「…って。」

「別に、貴女をまだ認めた訳じゃないけど!」


私の言葉を聞いて

2人は、ニヤニヤと笑う

統堂英玲奈に至っては…もはや、嘲笑に近い


「その言葉…もう、認めてるようなものじゃない?」


「…!///」


一気に、顔が熱くなる

こんなの…らしくない
482: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:43:04.55 ID:zr7wYNpS.net
「あのね、ツバサ。」

「私は…」


そう言って、あんじゅは統堂英玲奈の顔を見る


「…ああ、そうだな。」

「我々は、君を推している。」


「…は?」


推す?

誰を?


私を?

リーダーに?



「ええええええっ!?」

「ど、どうして…!」


過去一番の、驚きかもしれない
483: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:44:05.30 ID:zr7wYNpS.net
「ふふっ。」

「理由は…まあ、色々あるんだけど。」

「リーダー、任せてもいいかしら?」


「で、でも…!」


「なんだ?」

「何か、断る理由でもあるのか?」


「そうじゃ…ないけど…」


イマイチ、掴めない

なんで私が…


「ま、リーダーなんて形式的な物だもの♪」

「私達は、今まで通りやればいいんじゃない?」


「それは…」


…そうだけど
484: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:45:07.03 ID:zr7wYNpS.net
「では、決定だな。」

「よろしくな、リーダー。」



そう言う彼女の顔は

やはり、少しニヤついてる



「もう、勝手過ぎじゃない…」



私だって、リーダーというものに憧れた事だってあった

誰かを引っ張る存在に、なりたいと思った



でも、今の私は…

そんな誰かに、引っ張ってもらってばかりだ
485: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:45:32.61 ID:zr7wYNpS.net
-----


「…なるほど。」

「綺羅ツバサが、君たちのリーダーか。」


トレーナーに、頷く


実際、何をしていいのかも分からないし

自分が向いてるなんて思えない


…それでも、任されたから


もし、私の何かに期待してくれているなら

それに、応えたい


今まで、2人には助けてもらったから



「それではこれより、レッスンを開始する。」


「「はい!!」」
486: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:46:21.52 ID:zr7wYNpS.net
-----



「「ありがとうございました!」」



「…疲れた。」


最初にでた言葉は、それだった

特にレッスンがしんどくなった訳ではないのに

少し、体が重く感じる


プレッシャー…なんだろうか



「…!」


レッスン場のドアを叩く音がした

入ってきたのは…



「君達が、次期メンバーだね?」

「初めまして…でも、無いけれど。」

「現A-RISEのリーダーとして、挨拶しとこうと思って♪」
487: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:47:03.39 ID:zr7wYNpS.net
「お、おつかれさまです!!」


「ふふっ、そんなに固くならなくて良いよ♪」

「同じ、高校生なんだしね。」


「あ…はい。」



「君達の事は、よく聞いてる。」

「トレーナーさんも、褒めてたよ。」


「それに、私達も。」

「君達のレッスンや、ステージを見せてもらったから♪」


「特に…君には、期待してる。」

「統堂英玲奈さん。」


「…!」

「ありがとうございます。」
488: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:47:36.21 ID:zr7wYNpS.net
…やっぱり

一番目を引くのは、統堂英玲奈

それは、どこに行っても変わらない


だからこそ…

どうして、私がリーダーなのだろう



「でも…一番期待してるのは、君だよ。」

「同じリーダー同士、仲良くしようね?」


「綺羅ツバサさん♪」


「え…?」


「…で。」

「早速で悪いんだけど…彼女、借りていってもいい?」


「…へ?」
489: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:48:06.79 ID:zr7wYNpS.net
「ええ、もちろん♪」

「お好きな様にどうぞ♪」


「ちょ、ちょっとあんじゅ!?」


「ま、これも経験、って事で♪」

「着いて来て?」


そう言って、彼女は部屋の外に


「え、えっと…」


「置いてくよー?」


「い、今行きます!!」


振り向けば、2人は笑顔で手を振ってる

いつも通りの、優しい笑顔と

なにか企んでいるような、その顔


とりあえず

彼女に、着いていってみよう
490: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:48:30.91 ID:zr7wYNpS.net
-----


「紅茶でよかった?」


「はい…ありがとうございます。」


ソファに腰を下ろして

紅茶が運ばれてくるのを待つ


「ここって…」


「そう、プライベートラウンジ。」

「A-RISEだけが入れる、特別な場所。」


「…もう、君たちも入れるんだよ?」


「…そっか。」


いつか入ってみたいと思っていた場所

こんなに、近くに来たんだ
491: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/20(木) 22:50:11.78 ID:zr7wYNpS.net
「ごめんね、急に連れて来たりして。」


「あ、いえ…」


「君と、一度話してみたかったんだ。」


「あの…」


「…ん?」


「どうして…?」


「…そうだなあ。」

「一番…緊張してたからかな?」


「えっ。」


「ふふ、冗談。」

「まあ、君に期待しているから…」

「とでも、思ってくれれば良いよ♪」


「…」


「おっと、飲み物が来たみたい。」

「それじゃ、頂こうか♪」


「…いただきます。」


静寂とアッサムの香りに包まれて

私は、それを口に含んだ---
498: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:16:13.12 ID:s6kjeptp.net
-----


「…それで。」

「どう?」

「リーダーになった感想は?」


「えっと…」

「まだ、実感っていうか…」


「どうしてリーダーになったのかも、分からなくて…」



「ははっ。」

「やっぱり、そうだよねえ?」

「私も、メンバーに推薦された口だからさ。」


「君の気持ちは、よくわかるよ♪」



「先輩も…?」
499: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:16:52.80 ID:s6kjeptp.net
「ねえ、ツバサさん。」

「A-RISEを見て…どう思う?」


「え…?」


「そんな、難しく考えなくてもいいからさ。」

「ツバサさんの中では、どんなイメージなのかな、って♪」


A-RISEの、イメージ…


「…そうですね。」

「やっぱり…私達の、憧れです。」


「ダンスも、完璧に揃ってて。」

「歌だって、激しい動きなのにぶれないし…」


「べた褒めだね。」

「ありがとう。」


彼女は、少し頭をかく
500: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:17:30.09 ID:s6kjeptp.net
「やっぱり…」

「みんな、才能があったんですよね?」


「…どうして、そう思うの?」


「見てて、思うんです。」

「どれをとっても、完璧なダンスで。」

「初代に、ひけを取らないと言われている程。」

「今の先輩方は、みんなの憧れなので。」


「ふふっ、そっかー。」

「なんだか、そう言われると嬉しいね♪」


照れる顔が、可愛らしいと思った



「…ね、ツバサさん。」


「…?」


「才能って…信じる?」
501: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:18:16.20 ID:s6kjeptp.net
「え…?」


「ツバサさんは、才能が無いと続けられないと思う?」


「…」


「…ここに来たばかりの頃は。」

「才能を持ってない自分が、嫌いでした。」


「間近に、統堂英玲奈という存在がいて。」

「彼女に追いつきたいと思って、がむしゃらに努力をして。」

「…それで、体を壊した事もありました。」


「…その時、統堂英玲奈に言われたんです。」

「『才能なんて目に見えない物を信じるのか』って。」

「『才能とは、それだけなのか』…なんて。」


「…そっか。」
502: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:18:54.71 ID:s6kjeptp.net
「現実に、才能はあるとは思います。」

「勿論、ここにいる限り、ダンスや歌の才能があれば良いとは思うけど…」

「才能って、ひとつだけじゃないんだな、って思って。」


「ここに来て、色んな事がありました。」

「色んな人と出会って、挫折して、立ち上がって。」

「みんな、色んな才能を持っていました。」


「誰かを笑顔にできたり、誰かのために行動できたり。」

「人に物を教えたり、自分の事を自覚してたり。」


「…きっとそういうのも、ひとつの才能なんだな…って。」


「…」


「私に、ダンスの才能はありませんでした。」

「それは、自分自身が良く分かってます。」
503: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:19:36.53 ID:s6kjeptp.net
「…一度、それで2人と衝突した事もありました。」


「じゃあ、どうしてツバサさんは今、ここにいるの?」


「…思ったんです。」

「確かに、ダンスの才能は無いけれど。」

「それが、諦める理由にはならないな、って。」


「私にその才能がないなら。」

「その分、努力すればいいだけだ、って。」


「…私は、自分を変えるためにここに来ました。」

「なら、諦めなければ変わるかもしれない。」

「何かを得る事が出来るかもしれない。」


「…そう思って、ここまで続けて来たんです。」
504: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:20:19.95 ID:s6kjeptp.net
「続けて来て、得られるものはあった?」


「…」

「最高の仲間と…出会えました。」


「それは良かった♪」


彼女の顔は、より一層、無邪気に笑う


「…じゃあ、そんな仲間を手に入れた、ツバサさんに質問。」

「どうして彼女達は…君に、リーダーを任せたんだと思う?」


「え…」


「さっき言った様に、私も勧められた側だから。」

「なんとなく分かるんだ…」

「君の気持ちも、彼女達の気持ちも。」
505: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:20:53.15 ID:s6kjeptp.net
「でも、私は…」

「先輩みたいに、歌もうまい訳じゃないし。」

「まして、ダンスなんて高校に来てからで…」

「きっと、立場は違いますよ?」


「んー…なるほど。」

「まだまだ甘いな、後輩くん♪」


「…?」


「私、めちゃくちゃ運動音痴だったんだよ?」

「ダンスなんか、壊滅的なレベルでね♪」


「え…」

「で、でも!全然、そんな風には…」


「ちなみに、ダンスを始めたのも、君と同じ。」

「ここに来てから。」
506: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:21:32.64 ID:s6kjeptp.net
「そりゃあ、大変だったよ?」

「UTXが出来てすぐに入ったから、もっと大量に人はいたし。」

「毎日、10人単位で人がいなくなったりしてたんだから…」



「残ったのは、ダンスを続けて来たメンバーと。」

「ステップもまともに踏めない、私だけ。」


「毎日毎日、トレーナーさんに怒鳴られてさ。」

「私が出来ないからって、レッスンも遅れて。」


「周りからは、足引っ張るだけなら辞めろ、って言われた事もあったっけ…」


「どうして…」


「ん?」


「どうして、続けられたんですか?」






「…負けたくなかったから。」
510: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 02:46:50.06 ID:/AUJ3Fgk.net
「…!」


「確かにさ、UTXの芸能科なんだから。」

「私みたいなのがいる方が稀だと思うし。」

「それでやりたい事が出来ないんだから、怒るのも分かるよ?」


「…でもさ、何で自分の夢を、他人に奪われなくちゃいけないんだ、って思ったの。」


「こっちは、やりたくてやってる訳でしょ?」

「才能なんて無いのは、自分が一番良く知ってる。」

「だからこそ、出来ないのは悔しいし…」

「何より、ひとつでも出来たら嬉しかった。」


「それを否定されたら、今までの努力はなんだったんだ、って話。」

「それだけは、絶対に嫌だった。」



「…だから、今まで以上に努力した。」
511: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 02:47:23.40 ID:/AUJ3Fgk.net
「毎日、誰よりも早く来て、練習して。」

「夜は、動けなくなるまで踊った。」


「たまのオフにみんなが遊びに行ってる時だって。」

「トレーナーさんに頭下げて、部屋を開けてもらった。」


「…」


「後から聞いたけど、ツバサさんも同じ事してたみたいだね。」

「守衛さんが、心配してたよ?」


「あ、えっと…」

「あの時は、自暴自棄になってて…」


なんだか、人から自分の話を聞くのは恥ずかしい

ただでさえ…あの頃は焦って、周りが見えてなかったから


「…まあ、私も注意できる人間じゃないしね。」
512: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 02:48:18.40 ID:/AUJ3Fgk.net
「それが、どんどん習慣化していってさ。」

「周りの事なんて、どうでもよくなっちゃって。」

「ただ、その時は体を動かす事が楽しくて…」


「ダンスの出来なかった私に友達なんていなかったし。」

「そもそも嫌われてるレベルだったからね。」

「だから、ずっと一人で踊ってた。」


「…そしたらさ、倒れちゃった。」

「いきなり、ばたーん、って。」


「えっ…」


「しかも、夕方だったから発見が遅れてさ。」

「トレーナーさんや守衛さん達に、それはもうこってり怒られてさ。」

「ダンスは追いつくどころか離されるわ。」

「今までやって来た事って、全部無駄だったのかな、って。」
513: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 02:48:44.83 ID:/AUJ3Fgk.net
「それって…」


「ふふ、馬鹿みたいでしょ?」


「何日も家で過ごしてさ。」

「両親にも心配かけたし。」

「この辺が引き際かなーって、思ってたんだ。」


「…」


「そんな時にね?」

「我が家を尋ねてくる、物好きがいたんだよ。」

「それも、2人も。」


「もちろん喋った事なんてほとんど無いから。」

「お互い初対面みたいな喋り方でさ。」

「でも…それでも、どこか嬉しかった。」
514: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 02:49:16.19 ID:/AUJ3Fgk.net
「挨拶もほどほどに、怒られたよ。」

「何のために、長い間頑張ってたんだ、って。」


「そのとき、初めて自分が見られてた事に気がついた。」

「自分の中では、秘密特訓、って思ってたから。」

「自分でも、子供だったなあ…って思ってる。」


「そこからはさ、2人していじめるんだもん。」

「やれ、もっと効率的にだとか。」

「ステップが全然なってないとか。」

「もう、ほっといて、って感じで。」


「才能ある奴なんかに、私の考えなんて分かる訳無い!」

「…って、怒鳴っちゃった。」


「先輩…」
515: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 02:49:50.61 ID:/AUJ3Fgk.net
「その時の2人ったら、酷いんだよ?」

「2人揃って、馬鹿じゃないの?って。」

「もう、頭の中ハテナマークばっかりでさ。」

「開いた口が塞がらなかったよ。」


「あんなに下手で、みんなに辞めろって言われても。」

「諦めずに続けられる、その気持ちだって才能でしょ、って。」


「…それを聞いたとき、妙に納得しちゃった。」

「あ、そんな考え方もできるんだ、って。」


「久しぶりにレッスンに顔出したら。」

「私に辞めろ、って言ってたメンバーが、いなかったの。」

「聞いたら、みんな辞めた、って。」


「残ってたメンバーは…」

「みんな、私の努力を見ていてくれた人たち。」
516: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 02:50:23.25 ID:/AUJ3Fgk.net
「それから、そのメンバーにも怒られちゃった。」

「どうして、頼ってくれなかったの?って。」


「立て続けに言葉で刺されるとさ。」

「なんか、思考停止しちゃうよね♪」

「最初、みんなが何言ってるか分からなかったもん。」


「頼るって…何?みたいな。」


「…」


「…いつの間にかさ。」

「一人でいる時間が長過ぎて。」

「誰かに弱みを見せるのが、恥ずかしいと思ってた。」

「頼っちゃいけない、って壁を作ってたのは。」

「周りの事、見えてなかったのは…」


「むしろ、自分の方だったのにね。」
517: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 02:50:48.58 ID:/AUJ3Fgk.net
「…そんな経験、ない?」


「…あります。」

「って言うより、むしろ…」

「先輩と、そっくりでした。」


「そっか♪」


そう言って、少し冷えた紅茶を口にする


「あの…先輩。」

「良かったら…続き、聞かせてもらえますか?」


「うん、喜んで♪」


無邪気に見えるその笑顔の裏で

私以上の境遇があったなんて、思えない

それほどまでに、目の前の笑顔は

…とても、優しい物だったから
522: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:56:53.89 ID:/AUJ3Fgk.net
「…と言ってもさ。」

「あとはもう、あんまり話す事ないんだよね。」

「それからの毎日は…」

「まだまだ下手だった私に、誰かが教えてくれて。」

「怒って、笑って…」

「そんな、毎日だった。」


「私が満足できないからって、遅くまで付き合わせて。」

「休日も、誰か誘って踊ったりして。」

「それで、周りに呆れられるなんて事ばっかりだった。」


「誰かとダンスするって、こんなに楽しいんだ、って。」

「笑えるって、こんなに嬉しい事だったんだ…って。」


「…」
523: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:57:41.89 ID:/AUJ3Fgk.net
「それでもやっぱり、結果が出ずに辞めていく子もいた。」

「私達はひとつ上にA-RISEがいたからね。」

「2年間、ずっとその背中を見て来たし…」

「君たちみたいに、1年生でいきなりA-RISEになれるなんて事、無かったから。」


「だからかな…」

「どうしてもそれが、届かない壁に見えて。」

「諦めちゃう子達もいた。」


「2年生になって、後輩が出来て。」

「そんな後輩に抜かれたくない、って躍起になったり。」

「色々、大変だったんだよー?」


彼女は、それでもくすくすと笑う
524: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:58:13.89 ID:/AUJ3Fgk.net
「どんどん広くなるスペースがさ。」

「私には、どうしても耐えられなくて。」

「辞めたいって子の家まで突撃しちゃった事もあった。」


「昇級試験で結果が出ずに、みんなの空気が悪くなった時も。」

「無理矢理笑ってみたり…」

「みんなが、少しでも元気になってくれたら、って。」


「…後半なんて。」

「レッスンよりも、そっちばっかり気にしちゃってたもん。」


「私、そんなキャラじゃないのにさー。」

「みんなが笑える様に、ってずっと走り回ってた。」



「そしたら…」

「いつの間にか、A-RISEに選ばれてた。」
525: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:58:49.75 ID:/AUJ3Fgk.net
「そりゃあもう、自分が一番ビックリしたよ!」

「ダンスだって、私よりもっと上手い人いるし。」

「歌だって、せいぜいカラオケで80点が平均だったんだよ?」


「…もう、何の嫌がらせだ、って思ったよ。」


「でもさ…」

「トレーナーさんから、その事を伝えられて。」

「てっきり、みんなには嫌われるかと思ってた。」

「何で、私なんかが…って。」


「そしたらさ、みんなおめでとうしか言わないの。」

「最終的に胴上げまでされちゃって…もう、恥ずかしいって言ったのにね。」


「なんで?って聞いたらさ。」

「みんな、『頑張ってたから』としか言わないの。」
526: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:59:27.19 ID:/AUJ3Fgk.net
「いや、みんなの方が頑張ってたじゃん!」

「って、素で言っちゃったんだけど…」

「また、怒られちゃった。」


「そしたら、トレーナーさんにリーダーの事言われて。」

「みんな面白がって、勝手に多数決とって…」

「満場一致で私に決定!」


「もうさ、ある種のいじめかと思ったよ…」


「ふふっ…」


「あ、やっと笑ってくれた♪」


「あ、えっと…///」


「そうだよね、重たい話ばっかりだったし。」
527: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:00:32.22 ID:/AUJ3Fgk.net
「…さて!」

「ここで、最初の話に戻るんだけど。」


「ツバサさんは、どうして私がリーダーに選ばれたと思う?」

「そして、どうして今、ツバサさんがリーダーをやってると思う?」


彼女は、そう言って私に投げかける

でも、どうしてと言われても…


「じゃあ、ひとつヒント♪」

「私も、ツバサさんも…ある種、同じ才能を持ってる事。」

「そして、同じ性格をしてる、って事。」


「これが答えだよ♪」


「才能…」
528: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:01:02.77 ID:/AUJ3Fgk.net
「ツバサさんはさ。」

「『才能』って言葉をあんまり良く思ってないみたいだね。」


「え…?」


「最初の話ね、ちょっとだけ嘘、ついちゃった。」

「君が、英玲奈さんと衝突したとき。」

「…あの時、私もレッスン場のそばにいたの。」


「…!」


「君は、自分のやって来た事を『才能』って一言で表してほしくないって言ってたけど。」

「私は、そうじゃないと思う。」


「もちろん、今はツバサさんも意識し始めてるみたいだけど…」



「私は、才能っていうのは。」

「その人の努力の上に存在する物だと思うの。」
529: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:01:37.03 ID:/AUJ3Fgk.net
「才能って言うと、確かに持って生まれたもの、ってイメージがあるけどさ。」

「だったら、才能ある人の人生はイージーモードか、って言われると。」

「…そうじゃないよね?」


「才能ある人にだって、悩みはあるし。」

「才能があっても、諦めちゃう人もいる。」


「結局さ、才能なんて言ってるのは。」

「出来ない人からの妬みなんだよ。」

「あんな才能あって、楽しそうで羨ましい…っていうね。」


「本人からしたら、今まで褒められてた物が。」

「いきなり手の平返されるんだもん。」

「…何、勝手に言ってんの?って感じ。」


「そうは思わない?」
530: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:02:09.68 ID:/AUJ3Fgk.net
「その通りだと…思います。」

「だから、才能なんて言葉に甘えたくなかった。」

「才能なんて無くても、努力で見返したかった…!」


「…うん、分かってる。」


「だからこそ、努力してきたのも知ってる。」

「何度挫折しかけても、諦めずに努力して来た事。」

「…あの2人と、ここまで来た事。」

「それは、君が誇っても良い事なんだから。」


「先輩…」


「それをふまえて、あえて才能、という言葉を使うけど。」

「ツバサさん、君には…努力する才能が、あると思う。」


「え…?」
531: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:02:49.98 ID:/AUJ3Fgk.net
「今までの、話も聞いた。」

「君が、どうやってここまで来たのかを。」

「どれだけの事を乗り越えて、ここに来たのかも。」


「何度も、苦しい事があったと思う。」

「それでも、諦めずに前を向いて来た君のその想いは。」

「…もはや、ひとつの才能だと、私は思うんだ。」


「…」


「そして、それはきっと君だからこその才能なんだよ。」

「英玲奈さんには、ダンスの才能がある。」

「あんじゅさんには、誰かを包み込む才能がある。」

「でもその才能は、いつかその身を傷つけるかもしれない。」

「…傷つけて来たかもしれない。」


「そんな時に、その人を救えるのは。」

「諦めないで前を向く、君のその心だけなんだ。」
532: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:03:30.30 ID:/AUJ3Fgk.net
「…」


「まだ、理解できない、って顔してるね?」


「その…才能、の事は、分かったつもりです。」

「そしてきっと…先輩にも、それがあるって事を。」


「でも…」


「ふふっ…本当、昔の私と似てるなあ。」

「あのね、ツバサさん。」

「『諦めないで努力が出来る』って才能を持つ人はね。」

「そんな難しい事、考えたって一緒なんだよ?」


「え…?」



「私も、君も…」



「基本的に、バカだからさ♪」
533: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:04:19.32 ID:/AUJ3Fgk.net
「え、せんぱ…」


「もうさ、根本的にバカなの。」

「難しく考えるのが面倒だから、やってみればいいじゃん、って考えで。」

「とりあえず、挫折するまで頑張ってみればいいじゃん、って♪」


「あの…」


「ぐだぐだ悩んでる自分が嫌で、街に飛び出したりさ。」

「誰かの手をとって急に走り出したり。」

「自分の想いをぶちまけたり。」

「相手の気持ちなんか考えず、手を引っ張ったり。」

「とにかく自分がこうと決めたら、ひたすら一直線。」


「…そんな、真面目バカなんだよ、私たち!!」


「えっと…」


「今まで、そうじゃなかった?」
534: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:04:50.47 ID:/AUJ3Fgk.net
「…」

「そう…かも、しれません。」



「…別に、バカだから駄目とかじゃ無くてさ。」

「保守的な人は、自分が出来る範囲で物事を考えちゃうから。」

「だから、自分の殻に閉じこもりやすい。」

「自分の現状に、少なからず満足しちゃうんだよ。」


「勿論、それが間違ってる訳じゃない。」

「失敗を犯さずに進める、堅実的な方法だと思うよ?」


「…でも、私からしたら、それって楽しいの?って思っちゃう。」

「だって、周りには楽しそうな事がもっと一杯あるんだよ?」


「見た事ない物が、見れるかもしれないんだよ?」



「あ…」
535: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:05:22.31 ID:/AUJ3Fgk.net
「だから、私はみんなの事、ついつい連れ出しちゃう。」

「あんな事しようよ、とか。」

「あそこ行こうよ、とか。」


「遊びも、レッスンも同じ。」

「私にとっては、A-RISEも何一つ変わらない。」

「楽しそうな場所だから…」



「…分かる気がします。」

「今まで何度も、驚かれました。」


「馬鹿じゃないの、って言葉に反発した事もあったけど…」

「結局は、私が単なるバカだった、って事ですね。」


「…それも、真面目バカだから、一番たちが悪いけどね♪」


「…」

「…」


「「ふふっ…」」
536: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:06:04.62 ID:/AUJ3Fgk.net
「リーダーにさ、きっと技術は必要ないと思う。」

「もちろん、あって困る物じゃないけど。」


「でも…一番重要なのは。」

「きっとそうじゃない。」



「…そうですね。」

「なんとなく…すっきりした気がします。」

「私がリーダーとして、出来る事。」

「ひとつひとつ、探していこうと思います。」


「うん♪」

「何も、私と同じ事をする必要はないから。」

「ツバサさんらしく、やればいいんだよ♪」


「今日は、ありがとうございました。」




「…それじゃ、最後にひとつ。」

「A-RISEの先輩として、君に課題を出そう!」



「課題…ですか?」
549: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:36:14.90 ID:z79o9Y96.net
-----


「…」


「…」


「…」


「ツバサ、顔が恐いわよ?」


「あー…ごめん。」


「課題の事?」


「ええ…」


「考えても無駄だと言われたばかりだろう?」


「それは…そうだけど。」


もう少し、言い方を考えてくれないかしら



先輩と話して、2日

先輩からの課題に、答えあぐねている
550: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:37:03.80 ID:z79o9Y96.net
-----


「課題…ですか?」


「そう、課題。」

「とは言っても、そんなに難しく考えないでいいんだけどね。」


「伝統…と言うには、歴史は浅いけど。」

「初代のリーダーから、A-RISEのリーダーを受け継ぐ時に言われたんだ。」


「A-RISEというグループに、どんな想いを込めるのか。」


「想い…?」


「もちろん、上昇至上主義。って言うのは大げさだけど。」

「常に高みを目指すのは、目標として掲げてほしいんだけど…」

「それとは別に、ツバサさん自身が、A-RISEにどんな想いを込めるか。」

「君は、A-RISEをどんなグループにしたいのか。」


「…それを、考えてほしいんだ。」
551: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:37:49.78 ID:z79o9Y96.net
「どんなグループに…」


「もちろん、みんなで相談してくれていいよ!」

「でも、それがあるのと無いのとじゃ、意識も変わってくるだろうから。」


「ちなみに、先輩は?」


「私は…」

「私みたいな子でも、A-RISEになれるって証明したかったから。」

「だから、『誰もが憧れる・目指せる存在』になるって、決めた。」

「実際…出来たかと言われると、微妙なんだけどね。」


「いえ…」


「…?」


「…目標ですから。」


「…ふふっ、ありがとね♪」


「分かりました、考えてみます。」


「また、決まったら教えてね。」
552: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:38:42.98 ID:z79o9Y96.net
-----


そして、何も思いつかずに2日が過ぎた


「…」


「…まあ、我々のリーダーは君だ。」

「思いついたなら、それに従うだけだ。」


「みんなで考えていいって言われたんだから。」

「もう少し自主性を出してもいいんじゃないの…?」


「そうは言うが、私の目標…ないし、望む事は。」

「綺羅ツバサに挫折させてもらう事だからな。」


にやっと笑う、統堂英玲奈


「もう…」


こういう所は、出会った時からひとつも変わらない
553: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:39:23.68 ID:z79o9Y96.net
「まあ、私も英玲奈に賛成だけど…」

「でも、何か思いついたら言うから♪」


「ありがとう、あんじゅ。」


「それより…」

「それも大事だけど、テスト勉強も忘れないでね?」


「…せっかく忘れようとしてたのに。」


A-RISEを襲名するからといって、特別変わる事は何も無い

学生の本分は学業であって、故にテストがあるという事


そしてそれは、すぐそこまで来ていた


「早く踊りたいわね…」


「そのためには、ちゃんといい成績とらないと。」


「…分かってる。」
554: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:39:57.48 ID:z79o9Y96.net
「…」


「なんだ?」

「教えてほしいのか?」


「…いいえ。」


統堂英玲奈は、そう言ってまた笑う

本当に、憎たらしい笑顔は増えて来た

だけど、文武両道なのは間違いない


あんじゅも、テストの平均は軽く越えている


もちろん、UTXに入学したのだから

私も、そこまで頭が悪い訳ではない


…けど、それとこれとは話が別で


テストなんか、さっさと終わらせたい気持ちが強い
555: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:40:22.21 ID:z79o9Y96.net
-----


「とりあえず、今日はレッスンもないし。」

「帰って各自、勉強しましょう。」


荷物をまとめて、学校を出る



「それじゃあね、ツバサ。」


「ええ…また明日。」

「…統堂英玲奈も。」


「ああ…そうだな。」

「…」

「…綺羅ツバサ。」


「…何?」


「君の良さは、その単純さ、だ。」


「…褒めてるの?けなしてるの?」


「ふふっ、さあな。」


「全く…」
556: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:40:57.58 ID:z79o9Y96.net
-----


「…疲れた。」


帰って来てから、教科書を開いたけど

…どうも、乗り気にならない

お風呂に入って、リフレッシュしようかしら…


「…」


せめて、この英語だけでも終わらせよう

ノートと教科書を目で追いながら、長文を解く


「He makes his sister to…」

「make…ああ、確かここでは違う意味だっけ?」

「確か…人に~させる、よね。」


こういう、はっきりしない言葉があるから

英語って、めんどくさい…

もちろん、歌うのは好きだけど
557: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:41:28.58 ID:z79o9Y96.net
「はっきりしない…か。」


まるで、今の自分みたい

悩み始めても答えがでないのは

やっぱり、私が馬鹿だからだろうか…


「Then he had run the business for…」

「ああ、このrunって何だっけ…?」


目の端に映る電子辞書に手を伸ばす


「えっと…run、っと。」

「ああ、そうだ…経営する。」


忘れないうちに、ノートにそれを書き込む


「それにしても…」


逃げる、浮かぶ

立候補する、こぼれる


「ひとつの単語なのに、沢山意味があるのね…」
558: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:42:58.71 ID:z79o9Y96.net
「意味を当てる時、ややこしいとか思わなかったのかしら…?」


ぶつくさ言いながらも

他の意味も覚えてしまう

次、忘れない様に


「…」


ほんの気まぐれで

5つのスペルをタイプする


勉強から目を背けるための、ささやかな反抗だった


「へえ…やっぱり…」


「…!」


勢い良く辞書を閉じて

ベッドの上にある携帯に飛びついた
559: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:43:39.98 ID:z79o9Y96.net
============

今すぐ駅前の公園に集合!

============


トークアプリで2人に送って

そそくさと準備をする


「財布と、携帯と…」


忘れちゃいけない、それを持って

部屋着のまま、外に飛び出す


やっぱり私は、馬鹿なのかもしれない

だけど…だからこそ


今、こんなに楽しいのだから
560: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:44:37.08 ID:z79o9Y96.net
-----


「いきなり呼び出したと思えば…」


「一体どうしたの?ツバサ…」


2人とも、もちろん部屋着で来た

完全にリラックスモードであっただろう

その顔には若干の眠気も見えている


…それでも、呼べば来てくれた2人には

改めて、感謝したい所だけれど


「…決まったの。」


「何が?」


「決まったのよ!」


テンションの高い私とは裏腹に

その私を見て引く2人


…少し、傷つくけど
561: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:45:04.57 ID:z79o9Y96.net
「それで…?」

「一体何が決まったんだ?」


「これよ…!」


「電子…辞書?」


暗い公園で、バックライトを点けたそれに目を送る


「これって…」


「いきなり呼び出したのは、謝るわ。」

「でも…これしか、無いと思って。」


「一応…理由を、聞こうか。」

「君が、これに決めた…理由を。」


大した理由なんて、ない

思い立ってすぐ、ここに2人を呼んだのだから

だから…私が今、言える事は…





「私が、馬鹿だからよ!」
562: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:45:38.79 ID:z79o9Y96.net
「ツバサ…」


「ついに、おかしくなったのか?」


「…違うから。」



「…」


息を、そっと整える

頬が、少し熱い


「…ここに来た時は、A-RISEなんて夢のまた夢で。」

「到底、届かない存在だと思ってた。」


「目指す場所には統堂英玲奈がいて。」

「そのすぐそばに、あんじゅがいて。」


「どれだけ遠いんだろう、って…感じてた。」
563: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:46:10.88 ID:z79o9Y96.net
「がむしゃらに努力して、体調を壊して…」

「2人に、迷惑をかけた事もあった。」


「…ああ、あれは確かに八つ当たりだったな。」


「ふふっ…本当にね♪」


「もう…茶化さないでよ。」

「…」


「自分で、自分の限界を決めて。」

「才能なんて言葉、認めたくないくせに。」

「その言葉に、私は逃げてた。」



「そんな私に、真正面からぶつかってくれたあんじゅ。」

「…歪んだ性格で、奮い立たせてくれた、統堂英玲奈。」

「…」

「貴女達がいたから…私は今、ここにいるの。」



「…ありがとう。」



「「…」」
564: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:47:10.69 ID:z79o9Y96.net
「そのあとも、誰かさんがひねくれて。」

「自分の事を見失ったり…」


「…!」


「どこかの誰かさんは。」

「勝手に自分が迷惑になるなんて思って辞めようとしたり…」


「…ッ!」


「まあ、色々とあったけれど…」


「少し、嫌味が入ってないか?」


「って言うか…雑すぎない?」


「ふふっ…いいじゃない。」

「だからこその…私達でしょう?」


「…」
565: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:47:34.61 ID:z79o9Y96.net
「そんな事を思ってたら…気付いたの。」

「確かに、A-RISEに憧れてた。」

「なりたいと…思ってた。」

「でもそれは、きっとA-RISEじゃ無くても良かった。」



「何度も何度も、諦めかけて。」

「挫折して、喧嘩して、ぶつかって。」

「それでも…ここまでこれた。」


「ここまで、これたから…」


「…ッ。」


「ああもう…!」

「こんなのが言いたいんじゃなくて…!」



もっと単純に、私らしく
566: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:48:10.71 ID:z79o9Y96.net
「今ここに私がいるのは…」

「私が、綺羅ツバサが、ここにいる一番の理由は…!」


「優しくて、最高の笑顔で迎えてくれるあんじゅがいて!」

「不器用だけど、誰よりもおせっかいな…」

「英玲奈!貴女がいるからよ!!」


「…!」


「…2人がいるから、私は私でいられる。」

「私らしく、進んでいける。」

「今までだってそうだった…」


「2人がいたから、諦めなかった。」

「2人がいたから、努力できた。」


「他の誰でもない…貴女達だから。」
567: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:48:46.58 ID:z79o9Y96.net
「私…馬鹿だから。」

「きっと、これからも貴女達には迷惑かける。」


「でも、貴女達となら…」

「例え、どんな困難があったとしても…」

「何度でも立ち上がって、乗り越えていけると思う。」


「…ううん、絶対。」

「私は、そう確信してる。」


「だからこそ…arise。」

「『何度でも立ち上がる』。」


「私は、A-RISEとしてだけでなく。」

「私達3人だから叶えられる夢を、叶えていきたい。」


「貴女達…2人と。」
568: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:50:03.78 ID:z79o9Y96.net
「…ツバサらしい。」


「駄目…かしら。」


「ああ、駄目だな。」


「…!」


「言いたい事だけ、言って。」

「こちらの話も聞かずに、まくしたてて。」

「そんなもの…文句を言わずに着いて来いと言ってるような物だろう?」


「その通りよ!」

「今までやってこれたんだもの…」

「きっと、なんとかなるはずよ!」



「「…」」


「「…はあ。」」
569: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:51:28.42 ID:z79o9Y96.net
「何度も言うけど、馬鹿だから。」

「これからも、きっと2人を振り回すわ。」


「…それに、黙って従えと?」


「ええ、もちろん♪」

「そのかわり、約束は守るから。」


「約束?」


「忘れたの?」

「これから、やりたい事全部やって。」

「どんどん2人を連れ回して。」

「そのかわり、貴女達だけじゃ見られないような景色を、見せてあげる!」

「見た事無い景色が見えるとこまで、連れて行ってあげる!」


「そして、いつか必ず、貴女達を変えてみせる!!」

「この私のアイドル人生をもって!」
570: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:52:28.37 ID:z79o9Y96.net
「…本当、最後までツバサらしいわね。」

「私達の気持ちぐらい、聞いてくれたって良いのに。」


「もう…とっくに、そのつもりなんだから。」


「ああ…全くだ。」

「本人がそう言うぐらいだ。」

「これからも、散々振り回されるんだろうな。」


「ええ、きっとね♪」

「でも…」


「…でも、楽しみで仕方が無い。」

「そんな顔だな。」


「そう言う、英玲奈こそ…♪」


「ふふっ…かもしれないな。」
571: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:54:47.53 ID:z79o9Y96.net
-----



「…と、言うのが、私達の答えです。」


「ふーん…」

「A-RISEとしてだけじゃなく…」

「逆境を恐れず、何度でも立ち上がる…か。」


「…」


「…あーあ、これで私達も引退かー。」


「…!」


「一緒のレッスン、厳しくいくからね!」

「覚悟しといて!!」


「はい!」


「次のリーダー、任せたよっ♪」


向けられた期待に、笑顔に

最大限、応えよう

私達らしく、精一杯---
572: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 23:55:28.75 ID:z79o9Y96.net
-----



「…」


「…♪」


「ツバサ、そろそろ…」


「すぐ行くわ、あんじゅ。」


「何をニヤついてるんだ…」


「なっ…///」


「我々のリーダーなんだろう?」

「頼むぞ…ツバサ。」


「…ええ、英玲奈。」


「さあ、今日も始めましょう!!」




張らなくなった意地を捨てて

新たな一歩を踏み出そうとする私達

そして…


近付いてくる---デビューの足音
581: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:35:42.52 ID:0aMjstSX.net
-----



それからの日々は早かった

トレーナーからのレッスンを受けて

それが終われば、A-RISEとのレッスン


---ただ、すごかった


目の前で見る彼女達は

ディスプレイのそれとは迫力が違った


それでも、以前までとは違う

追いつきたいと思っていた存在を目の前にして

私達の意志は、ひとつだった



『追い抜きたい』


何度も、3人で口に出した
582: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:36:19.09 ID:0aMjstSX.net
この先輩達の見た、景色の向こうへ

誰も見た事の無い場所まで


私達を突き動かす、感情


目標が、ライバルへと変貌する



『負けたくない』---という、想い


それは私達だけじゃなく、彼女達にもある

一分一秒に神経を尖らせる

瞬きの一瞬でさえ、惜しく感じる


手を伸ばせば届く場所に

目指していた存在がいる

その努力を、結果を、姿を、目に焼き付けて
583: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:37:01.25 ID:0aMjstSX.net
-----


合同レッスンが始まって、およそ一ヶ月

こんなにも時間が早いのかと、改めて実感する


年越しまで…あと、一週間

奇しくも今日は、クリスマス・イブ

年内最後の、練習日


散りばむ雪が外気を冷やした

今年は…ホワイトクリスマスみたい


その冷たさを、壁一枚隔てて

私達は、熱気の中にいる


ひたすら貪欲に、目の前の技術をトレースする

覚えるだけ?


…ううん

更に、鋭さを増して---
584: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:37:30.74 ID:0aMjstSX.net
-----


「…ふうっ。」


集中の糸を断って

火照った体が、冷える前にストレッチに移る


「…見て、2人とも。」


「わあ…!」

「…すごいな。」


この時初めて、雪が降っている事に気付いた

いつから…?

白銀が、街を彩る


「クリスマス…か。」

流石にもう、サンタさんを信じる年でもないけれど


「…綺麗ね。」

来年も…見れるかしら
585: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:38:01.40 ID:0aMjstSX.net
「…お待たせ、3人ともっ♪」


隣のトレーニングルームから、A-RISEが出てくる


「わあっ、すっごくカワイイ♪」


赤い帽子と、マントを羽織って

3人が、姿を見せた


先輩の手には…リボンのついた、一枚のCD


「ふふっ…衣装っぽく着てみたけど、照れるね。」

その言葉に、先輩達が赤くなる


「…っと、それはどうでもよくって。」

「はい、これ。」


持っていたCDを、手渡される


「これって…?」
586: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:41:19.94 ID:0aMjstSX.net
「私達からの、クリスマスプレゼント!」

「中身は、お楽しみだよ♪」

そう言って、笑顔になる先輩達


「あ…ありがとうございます!」

「「ありがとうございます!」」


「それじゃ、よいクリスマスを!」

「じゃーねー♪」


これひとつを渡すためだけに

あんな用意までしてたなんて…


「ふふっ…」


案外、先輩達も子供っぽいのかも


「あ、これ…」

よく見て、気がついた

CDじゃなくて、DVDみたい…
587: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:41:50.55 ID:0aMjstSX.net
しん…と静まったレッスンルームで

プレーヤーにDVDを入れる


先輩達はそそくさと帰ったみたいで

今、この場には私達だけ


ラベルの無いそのDVDに

一体、何が入っているのか…


2人と目を合わせて、再生ボタンに力を入れる


「…?」


流れて来たそれは

今まで聞いた事も無い、A-RISEが踊る曲


新曲…?


この、タイミングで…?
588: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:42:49.54 ID:0aMjstSX.net
でも、何よりも私が感じたのは---

『踊ってみたい』

…ただ、それだけ


ただ、それだけしか感じられない程に

プレーヤーに流れる映像は

私達の心を掴んだ


~♪


『What'cha do what'cha do? I do “Private Wars”』

『ほら正義と狡さ手にして』

『What'cha do what'cha do? I do “Private Wars”』

『ほら人生ちょっとの勇気と情熱でしょう?』


~♪
589: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:43:53.84 ID:0aMjstSX.net
~♪


『Can I do? I take it, baby! 』

『Can I do? I make it, baby!』


『…』


『…』


10秒程の沈黙

プレーヤーは、次のトラックに

どうやら、音声データだけみたい


『…』

『あー…こほん。』

『この曲、気に入ってくれたかな?』


「この声…」


先輩の、優しい声
590: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:44:20.74 ID:0aMjstSX.net
『これが、A-RISEの新曲…』

『つまり、君たちのデビュー曲になる。』


「「…!」」


『各部署に掛け合ってね。』

『私達も、制作に携わらせてもらった、初めての曲。』

『結構、いい出来に仕上がったと思ってるんだ。』

『もらってくれると…嬉しいな。』


「先輩方の手がけた曲、か。」


『…さて、もし君たちが気に入ってくれたんだとしたら。』

『君たちの性格上、すぐに練習したくなるだろうと思って。』


『…施設の使用許可は、とってあるよ。』


「「…!」」
591: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:45:01.56 ID:0aMjstSX.net
『音源やダンスのデモは、まとめて置いてるから。』

『自由に使ってくれていいからね♪』

『但し、遅くなるまでには、ちゃんと帰る事!』

『もう、守衛さんに心配させちゃ駄目だよ?』


「もう…先輩ってば…」


『新年明けたら、私達のラストライブと。』

『君たちのファーストライブが待ってるからね。』

『レッスン、もっとハードになる事、期待しててねっ。』


『…メリークリスマス!』

『それから、良いお年を♪』


「…」


再生が終わったプレーヤーに

…そっと、手を伸ばす
592: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 04:45:50.64 ID:0aMjstSX.net
「…直接、言ってくれれば良かったのに。」


「本当にね。」

「そしたら…みんなで、一緒に踊れたのに。」


「…まあ、好意に甘えるのも良いんじゃないか?」



「それじゃ、お言葉に甘えて…」

「早速、始めましょう!」



最高のプレゼントをもらって

最高の時間を、2人と過ごす

今までで、最高のクリスマス


「…ありがとうございます。」


寒空に映る、外の静けさをかき消す様に

漏れた光に映る、3人の踊る影


更けていく夜と、沸き上がる気持ち


今---私は、幸せだ
596: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:16:12.48 ID:0aMjstSX.net
-----



年が明けて、日々を重ねる

レッスンを重ねて、想いを束ねて

刻一刻と迫るその日に向けて

私達は、汗を流した


過ぎ去る日々を、少しでも長く

長く、感じる事が出来たなら


そんな思いをよそに

時計の針は進む、進む


気付けばそれは、もう目前に迫っていた


…ああ、悔しい
597: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:16:51.30 ID:0aMjstSX.net
今思い返せば

この1年に私達の軌跡は多く残った


自分を変えたいと願った私が

ここに来て、出会った人・物

ぶつかった気持ち

投げかけた想い


ここでしか手に入らなかった物で、溢れている


自分の弱さに悩んで

悔やんで、泣いた日々がある

涙を拭いて、立ち上がった日々がある


何も知らなかった

何も出来なかった私が、今ここにいる


それらを、一度、リセットしよう
598: 名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:17:28.07 ID:0aMjstSX.net
もう、あの時の私じゃない

もう、あの時の想いじゃない


変わりたいと願った私が

変われたか、と私に問う


例えそれが100分の1でも

私はきっと、変われたと告げる


だって、それは…


---


「…サ!」

「…ツバサ!!」



「ん…」
599: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:18:15.49 ID:0aMjstSX.net
「…あんじゅ?」



「…もう、やっと起きた。」

「先生も、呆れて出て行っちゃったわよ?」


あんじゅにそう言われて

授業中だった事を思い出した


「…あれ?」

なんだか、前にも見た事あるような…


「…ふふ、ツバサらしいな。」


後ろから、嫌味な彼女の声が聞こえる


「…何よ、英玲奈。」


「…何でもないさ。」
600: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:18:42.47 ID:0aMjstSX.net
「ほら、さっさと用意して、行くわよ?」

「いつまでも、寝ぼけてちゃ駄目よ。」



「…分かってる、あんじゅ。」


「ふふっ、そういう事だ。」

「行こうか、ツバサ。」


「…ええ、英玲奈。」


そうだ、今日は

最後の、練習の日

彼女達と、最後の…



そして理解する

全ては、明日のためにあった
601: 名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:19:14.37 ID:0aMjstSX.net
-----


「…それでは、今日はここまで。」

「明日のために、疲れを残さないように!」



「「はいっ!」」

「「ありがとうございました!!」」


疲れを残してはいけないと

体をならして、今日が終わる


「ん~っ…」


「…何だか、物足りない、といった顔だね。」


「先輩…」


「ま、私もそうだよ。」

「もちろん、私達だけじゃないみたいだけど…♪」


視界に映る、みんなの笑顔
602: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:19:47.27 ID:0aMjstSX.net
「ま、ここはトレーナーさんの言う事聞いて。」

「さっさと、帰る用意でもしようか!」


先輩の一言で、服を着替えて、外に出る


いつもと同じ、夜の街並に

いつもと同じ、6人の足音


これが普通になったのは最近だけど

まるで最初からこうだったみたいに

私達の足取りは、同じペースを刻む


「…それじゃ、私達はここまで♪」

「君たちも、寄り道せずに帰るんだよっ!」


「…」

「先輩達も…ですよ?」


「…ありゃ、バレてた?」
603: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:20:15.89 ID:0aMjstSX.net
先輩達の気持ちがわかるからこそ

少し、笑いながらそう告げる


みんな、口に出さなくても分かってた

…分かってるからこそ、ここまで


「それじゃ、また明日♪」

「最後まで、私達らしく頑張ろう!」


「「はいっ!!」」


…きっと、積もる話もあるだろう

それでも、その足取りはいつもと同じで

だからこそ、私達もいつも通りに


「…ねえ。」

「どこか、寄っていかない?」


いつも通りの、あんじゅの提案
604: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:20:51.93 ID:0aMjstSX.net
-----


「いらっしゃいませー。」


店員さんに人数を告げて

一番奥の、お気に入りの席へ

あんじゅに教えてもらったこのカフェも

一体、どれだけ来たんだろう…


「…いよいよ、明日だな。」


注文もそこそこに、英玲奈が口を開く

それが意味するのは

私達の事か、それとも…


「…そうね。」


「…長かった、な。」


そんな道のりも、明日で一度潰える

その先は…私達にも、分からない
605: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:21:20.94 ID:0aMjstSX.net
「…」

「ありが…」


「ありがとう、ツバサ。」


「え…?」


「ここまで、私達を連れて来てくれて。」


「あんじゅ…?」


「ああ…そうだな。」

「ありがとう、ツバサ。」


「英玲奈まで…」

「い、一体、どうしたのよ…?」


何故だろう?

前は、私が最初に言ったのに…


…あれ?

前って、いつの事だっけ…?
606: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:21:47.67 ID:0aMjstSX.net
「君が言いたい事は、分かっているつもりだ。」

「だが、あえて我々から言わせてもらおう。」


「…ありがとう、ツバサ。」

「ここまで来れたのは、君のお陰だ。」


「…!」


「そん、な…」

「私、まだ全然…!」


「ふふっ…やっぱり。」


「ああ…全くだ。」


2人の言いたい事が、まるで分からない

だって…まだ、私、何も…
607: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:22:18.39 ID:0aMjstSX.net
「…言いたい事はあるだろうが。」

「まずは、聞いてくれないか?」


「…」


「…君と初めて会ったときは。」

「私には、目に映るものが色褪せて見えていた。」


「興味のない試験を受けて。」

「帰り際に、君に声を掛けられた時も。」

「…ただの、変な奴としか思えなかった。」


「君の誘いに乗ったのも、今思えばただの気まぐれだった。」


「まさか入学してくるとは思わなかったし。」

「そして、君のレベルの低さにも改めて驚かされた。」


「…」
608: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:22:51.85 ID:0aMjstSX.net
「…だが、それでもどこか嬉しかったんだ。」


「…!」


「前にも話したとは思うが。」

「私が何事にも興味が無くなったのは、過去の事があったからだ。」

「そんな私に、声をかけてくる者など…」

「まして、挑んでくる人間なんて、正直見た事が無かった。」


「…君が、初めてだった。」


「だからこそ、君が自分に限界を感じ、諦めかけた時。」

「非情に、惜しいと思った。」

「同時に、いつのまにか君に期待していた事に、気付いた。」


「…思えば、あの時からだったんだろう。」

「自分の気持ちひとつで立ち向かっている、君に憧れたのは。」


「英玲奈…」
609: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:23:24.83 ID:0aMjstSX.net
「君は、私が持っていない物を持っていた。」

「才能なんて言葉は、もう使わないが。」

「確かに、君にはそれがあった。」

「…そんな君に、私は惹かれたんだ。」


「…無論、嬉しかったさ。」

「こんな私に、立ち向かって。」

「あろうことか、本音まで理解する者がいるなんて。」

「そして、君は私を変えてくれると言った。」


「…その言葉に、私は救われたんだ。」



「…私もよ、ツバサ。」


「あんじゅ…」
610: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:23:56.49 ID:0aMjstSX.net
「いつだって、貴女は真剣だった。」

「まっすぐ、ぶつかってくれてた。」


「その真っ直ぐさ故に、トラブルもあったけど。」

「結局、貴女は自分で解決に向けて努力した。」


「勿論、私達が手を貸した時もあったかもしれない。」

「でも、貴女はいつだって…嘘をついた事は、無かった。」


「そんなの…!」


「いいえ、貴女は嘘なんてついていなかった。」

「嘘をついたとしたら、それはきっと私達のため。」

「貴女は、自分のために嘘をついたことなんて無かった…!」


「あんじゅ…」


「私は、自分の心が怖かった。」

「自分を、見せたくなかった。」

「…きっと、がっかりされるだろう、って。」
611: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:24:33.17 ID:0aMjstSX.net
「そんな私に、手を差し伸べてくれたのは。」

「そのままでいい、って言ってくれたのは。」

「他でもない…ツバサ、貴女だった。」


「私は、自分の心が嫌いだった。」

「悔しいって感じられない事が、嫌だった。」

「貴女達の、迷惑にだけはなりたくないと思った。」


「そんな私を受け入れてくれた…貴女達だったから。」


「そんな私を、貴女はまた、笑顔にしてくれた。」

「そんな貴女に…私も救われたの。」


「…」


「…勿論、これで終わりなんかじゃない。」

「君にとっては、そんなつもりは無かったのかもしれない。」


「でも…現に。」

「君に救われた人間が…ここに、2人いるんだ。」
612: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:25:05.50 ID:0aMjstSX.net
「2人とも…」


「貴女にとっては、きっとまだまだだと思う。」

「でも、貴女がいなかったら、今の私達はいなかった。」

「ここで、私達3人がこうしていられるのは…」

「他でもない、貴女がいたから。」


「…だが、君にはまだまだ働いてもらうぞ?」

「私もあんじゅも、こんな所で満足している訳ではない。」

「むしろ、ここからが始まりだ。」

「…君も、そうだろう?」


「…!」


「ここはまだ、我々にとってのスタートラインだ。」

「まだまだ先があるし、見た事の無い景色が広がっているだろう。」
613: 名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:26:28.97 ID:0aMjstSX.net
「それを見るのは…見る事が出来るのは。」

「きっとこの3人で、君がいるからだ。」



「…今までみたいに、私達の手を引っ張って。」

「貴女は、どんどん先に連れて行ってくれる。」

「私達が、望んでるその先まで。」



「我々は、これからも君に、そうやって引っ張っていってほしいんだ。」

「それが、A-RISEのリーダーとしての。」

「綺羅ツバサとしての、役目だろう?」



「…貴女が、そうやっていてくれるなら。」

「私と英玲奈は、貴女を支える力になる。」

「貴女が迷った時に、声をかけられるように。」

「貴女が疲れた時に、この肩を貸せるように。」
614: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:27:16.60 ID:0aMjstSX.net
「ふふっ。」

「まあ、言った所で君には難しい話かもしれないが…」


「…どういう意味よ?」


「言いたい事は、たったひとつだけだ。」


「…こんなに、長々と語っちゃったけどね♪」

「だから…ツバサ。」


「そうだ…ツバサ。」


「「これからもよろしく。」」


「…!」

「…」


「…ッ。」

「馬鹿ね…」






「そんなの、お互い様でしょ!!」
615: 名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:27:58.33 ID:0aMjstSX.net
-----



「…ツバサ。」


「…瞑想は済んだか?ツバサ。」



「…ええ。」


私達は今、暗いトンネルの中にいる

だけど、もう迷う事はない


この2人が、隣にいるから

その先に見える、光があるから


もう、何も怖くない

どんな事があっても、進んで行ける


だから、ただ、足を踏み出そう

胸を張って、前を向いて

目の前に漏れてくる光に

これまでの、想いを馳せて---
616: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 11:28:41.47 ID:0aMjstSX.net
すう…っと、小さな深呼吸

2人と、目を合わせる


ラストライブを終えた先輩達への声援を

ファーストライブの私達へ向けるために


「…さあ、行きましょう。」


目の前に並ぶ、2人に続いて

目の前に広がる

その先の、光の中へ


新しい私達の軌跡を、刻み付ける

だって、ここからが私達…



新生A-RISEの---始まりだから
623: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:34:06.73 ID:WKz+xyER.net
-----



「…行ってきます。」


玄関のドアを開けると

ほのかに香る、薫風


またあの季節が来たんだと

改めて実感する


もうお馴染みになった通学路

舞い散る花が、あの時を思い返す


「もう…1年か。」


英玲奈に出会い頭に喧嘩を売って、1年

あんじゅの最初の笑顔を見てから、1年


今は、その1年後の世界
624: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:34:54.01 ID:WKz+xyER.net
世界…なんて、大げさだけど

そんな言葉を、口に出来る程

私を取り巻く世界は変わった


「…っと。」


鞄から出した、眼鏡をかける

自意識過剰、なんて言われればそれまでだけど

一応、これにも理由はある



「…」


電気街を抜けた先に見えてくる

巨大なスクリーン

映っているのは、A-RISEの3人


つまり…私達と、あの2人
625: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:35:37.91 ID:WKz+xyER.net
先輩達のラストライブ

そして、私達のファーストライブ


あの日を境に

良くも悪くも、周囲の環境は一変する


街に張り出されていたA-RISEのポスターは剥がされ

新しく張り出された、私達のポスター


巨大スクリーンに映る

私達からの、メッセージ


あんなにあった先輩達の軌跡が

私達のそれに、塗り替えられる


少し寂しく思ってしまった私に

「これが、卒業するって事だから。」

と、笑いかけてくれた先輩達
626: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:36:08.21 ID:WKz+xyER.net
訪れたその日を受け止めきれず

まだまだ一緒に踊りたい

そう伝えてしまった事を後悔した


…みんな、同じ気持ちだったのに


直接話すようになって

一緒に行動してたのなんて、たかが数ヶ月

端から見れば、大した事は無いのかもしれない


…それでも、私にとってその日々は

かけがえの無い、大切な時間だったから


「…ッ。」


すっと、空を見上げる

ああ、駄目だ

私は、まだまだ弱いから
627: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:36:38.11 ID:WKz+xyER.net
ちゃんと、受け止めて

今度は、私達の番だから


受け取ったバトンを、繋いで

彼女達より、更に先へ

たどり着けなかった景色を見に---



2代目A-RISEの卒業

そして、3代目を当時1年だった私達が襲名した事

それがキッカケかは定かではないけれど

世間のスクールアイドルの人気に火をつけた

UTXだけでなく他の学校でも結成されるグループ


ティーン誌に、特集まで組まれる始末
628: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:37:45.51 ID:WKz+xyER.net
嬉しい反面、どこか恥ずかしい

それでも、何より

注目された事は、嬉しかった


スクリーンの下に集まる

人、ヒト、ひと…


それをかいくぐって、UTXの校舎に入る

学生証でゲートを通り

眼鏡を取って、更衣室へ



「…おはよ。」


ウェアを着替えている、先客に挨拶する


「ああ、おはよう。」


今日もまた---始まる
629: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:38:09.86 ID:WKz+xyER.net
-----


「…そう言えば、聞いた?」


ある日、ぽつりとあんじゅが言った


「何を?」


「音ノ木坂学院、ってあるじゃない?」

「あの、国立の学校。」


「…ええ、知ってるわ。」

「ここに落ちたら、行くつもりだったし…」


「そう言えば、ツバサはそうだったな。」

「それで…その音ノ木坂が、どうしたんだ?」


「…ちょっと言いにくいんだけどね?」

「あそこ…廃校になるかも、って。」


「え…?」
630: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:38:41.35 ID:WKz+xyER.net
「まだ、噂でしか無いんだけど…」

「ほら、私達がA-RISEとしてデビューして。」

「入学希望者が殺到したじゃない?」


「ああ…今年の受験は、倍率が今まで以上に跳ね上がったらしいな。」

「それも、芸能科が特に。」


「ええ、それだけが原因じゃ無いみたいだけど。」

「年々、入学希望者が減ってるらしいの。」

「今年の1年生は…クラスがひとつだけみたい。」


「そう…」


特に何か思い入れがある訳じゃないけれど

少し、寂しくも感じた


もしかしたら

あの時の笑顔を、思い出したからかもしれない
631: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:46:19.81 ID:WKz+xyER.net
「伝統ある学校が無くなってしまうのは惜しいが。」

「…仕方の無い事なのかもな。」


「…そうね。」


「ツバサ…?」


「え?あ、ううん、何でも無い。」

「それより、ただの噂でしょ?」


「本当にそうなるかも分からないんだし。」

「何より、私達にはやる事があるでしょう?」


「…少しは、リーダーの自覚が出て来たのか?」


「そりゃあ…もう、2年生だし。」

「それよりほら、早く行きましょう?」


「ふふっ…せっかちなとこは、相変わらずだけど♪」


「あんじゅ…!」
632: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:46:56.31 ID:WKz+xyER.net
-----


あんじゅから、そんな話を聞いて

数日経ったある日

その話は、急に現実味を帯びた


「入学者打ち切り…か。」


これを機に、来年度以降の入学者増加を狙って

今まで以上にメディアに出る事になるだろう


…そう、トレーナーに告げられる


何とも複雑な気持ちになる

もちろん、それはきっと正しい事で

そして、私達への人気を集めるチャンス


それでも…

どこか、後ろ髪を引かれる思いではあった
633: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:47:30.11 ID:WKz+xyER.net
-----



===========

昼休み、ラウンジに来て
くれ。

面白い物があるんだ。

===========


ある日の授業中に届いた、英玲奈からのメール

休み時間に聞いても

「お楽しみだ。」としか、教えてくれなかった


って言うか…授業、受けなさいよ


仕方が無いから、一旦忘れてノートに向き直る


面白いもの…?

一体、何だろう…?


授業は、頭に入ってこなかった
634: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:48:02.81 ID:WKz+xyER.net
-----


「…で?」

「一体、どうしたの?」


ラウンジで昼食をとってから

アフタヌーンティーで喉を潤す


優雅な時間…なんて言えるはずも無く

英玲奈の方に、身を乗り出す


「…まあ、そう焦るな。」


いじらしく、もったいぶる

こういう所は、本当に変わらない


「英玲奈、そろそろツバサが拗ねるから…」


待って、あんじゅ

私は、拗ねたりなんてしないけど?
635: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 04:48:37.63 ID:WKz+xyER.net
「…これを、見てほしい。」


英玲奈が取り出したのは、ノートパソコン

そこで、あるサイトを開く


「サイト?」


そこには、よく目にする動画投稿サイト

よく、スクールアイドルが自分達のダンスを上げたり

私達も、屋内ステージの放送に使ったりした物


「見てほしいのは、このグループなんだ。」


英玲奈が、あるグループの動画を再生する


「これ…」


そこには、あの日見たのと同じ笑顔で

少し拙い歌とダンスを披露する


ある3人が---映っていた
640: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:22:15.06 ID:gVq9BMFQ.net
「…」


画面から聞こえる歌声は震えているし

ダンスだって、いかにも素人と言えるような


…きっと、本当に素人なんだろう

それでも、その歌はどこか心地よくて

どうしてかは分からないけど

すっと、心に入って来た


…何よりも

こんなに楽しそうに歌っている

踊っている、彼女達を見て


手に汗がにじむのを---感じた
641: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:22:39.75 ID:gVq9BMFQ.net
「…」


「…ツバサ?」


「…行きましょう。」

「お昼休みが終わるわ。」


そう告げて、少し足早にラウンジを出る


「「…?」」


いつか見た彼女達の姿を

こうした形で見る事になるなんて

それは、私の気持ちを高揚させる


同時に、私には…

ある、ひとつの懸念が頭をよぎった



「早く…踊りたい。」
642: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:23:07.20 ID:gVq9BMFQ.net
-----


「一体…どうしたんだ?ツバサ。」


休憩の合間に

英玲奈が、ドリンクを手渡してくる


「…何が?」


「今日は、一段と気合いが入ってるじゃないか。」


「…そうかしら。」


「原因は…彼女達か?」


「…」


「英玲奈は…あれを見た時、どう思った?」

「どう…感じた?」


「私か?」
643: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:24:03.00 ID:gVq9BMFQ.net
「そうだな…」

「可愛らしい、ダンスだったな。」


「…」


「ふふっ。」

「聞きたい事は、そうじゃないんだろう?」


「…分かってるなら、最初から言ってよ。」


「まあ、恐らく同じ気持ちだ。」

「彼女達には、期待しているよ。」


「…そう。」


「無論、勝つのは我々だ。」

「そうだろう?」



「…ええ。」
644: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:24:31.82 ID:gVq9BMFQ.net
やはり、英玲奈も何となく気付いている

そしてきっと、あんじゅも…


「勝つ」という英玲奈の表現は

何故か、私をすんなり納得させた

まるで、これからの事がわかっていたみたいに


「リーダーは…恐らく、彼女か?」


「多分、そう。」

「そうじゃなきゃ…」


こうして、踊ったりなんてしていないだろ


「…お待たせ、2人とも。」


「おかえり、あんじゅ。」

「さあ、再開しましょう。」


手に持ったそれを一口含んで

私は、立ち上がった
645: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:25:01.51 ID:gVq9BMFQ.net
-----


『~♪』


パソコンから流れる、あの歌

ごろん、とベッドに横になる


「…」


耳に届く歌声は

私の心をくすぐる


「…」


もちろん、嬉しかった

あの日出会った彼女達が、同じ事を始めたからか

それとも、また顔を見れたからなのか

分からないけど、確かに嬉しかったのは覚えている


…それから、気付いた

これが、デビュー作なんだと
646: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:25:30.90 ID:gVq9BMFQ.net
「…」


もともと、そのポテンシャルはあったのかもしれない

それこそ、私達はほんの少し話しただけだったんだから


「…」


ダンスは、自分達で考えたんだろうか

衣装は、発注をかけたのかも知れない


…じゃあ、曲は?

あの、歌は?


最初は、アイドルのコピーかと思った

だけど探してみても、同じ物なんて無かった


…作ったんだ

自分達で、一から

あの詩と、曲を
647: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:26:08.54 ID:gVq9BMFQ.net
「…」


漠然とした、不安

もちろん、怖じ気づいている訳ではない

だけど…


オリジナルの曲が作れる

…これは、ひとつの脅威


ダンスは、練習すれば上手くなる

歌だって、私が今こうして歌えてるんだから

声の震えなんて、慣れればそれまでだ


きっと、彼女たちは自分達で出来る限りの事をしたんだろう

出来る限りを出し尽くしたのが、あの動画


あの、3人で…?
648: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:26:36.22 ID:gVq9BMFQ.net
もし、私の考えが間違っていなければ

もし、私の不安が的中しているのなら


「…穂乃果さん。」


確か、そんな名前だった気がする

あの日の記憶を、呼び出す


先輩の言葉を思い出すのなら

私をリーダーにしてくれた

2人の気持ちを思い返すなら


…あの時、3人が笑っていたのが分かる


きっと…彼女も、持っているんだ


「私と、同じ…」
649: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:27:09.30 ID:gVq9BMFQ.net
-----



その2つの知らせが届いたのは

ほぼ、同時期だった


「ラブライブ…」


スクールアイドルの祭典

スクールアイドルの甲子園と揶揄されるそれが

開催されるとの通達だった


そのPR活動の一環として

私達A-RISEが、抜擢されたと言う事


スクールアイドルの頂点を決める、ラブライブ

これだけ爆発的に普及したそれに

目をつけられるのは、当然の事だった

そして、私達に白羽の矢が立つ事も
650: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:27:31.83 ID:gVq9BMFQ.net
告知用に、PR動画を撮って

ネット配信や、UTXのモニターでの発表

準備は、着々と進んでいた


…でも、それよりも私が気になったのは


彼女達に、メンバーが増えたという事


音ノ木坂学院アイドル研究部

…μ's


メンバーは…7人に、増えていた

最後の一人は…


「にこ、さん…」


そっと、ハンカチを握る

あの日から、一体どれだけの月日が経っただろうか
651: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:28:15.60 ID:gVq9BMFQ.net
…もしかしたら

なんて、思った事もあった


私達のデビュー翌日

UTXの学生課から受け取った

…ひとつの、小さな植木鉢


可愛らしいそれに、植わっていたのは

赤い、小さなポインセチア


嘘だと、思った

そんな偶然…なんて


メッセージカードに書かれた

愛らしい、その文字


書いてある名前は---矢澤にこ
652: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:28:42.71 ID:gVq9BMFQ.net
もしかしたら、気付かなかったのかもしれない

あの日、私は泣いていたし

まさか、あんな憔悴していた私が

A-RISEになっただなんて、信じてもらえなかったのかもしれない


でも、届いたそれに書いてあった

応援してくれている気持ちは、本当だと思った


もしかしたら、人違いかもしれない

同じ名前の、別人かも


それが、一気に現実味を帯びた


彼女達の新たな動画に映っていた、彼女は

まぎれも無く、あの日の彼女と同じだったから
653: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 01:29:20.82 ID:gVq9BMFQ.net
「…おめでとう。」


小さな声で、そっと呟いた


貴女にも…理解してくれる、仲間が出来た


ラウンジに、最初に飾ったポインセチア

その周りに置かれた、他の花々


あの日から、何度も彼女は送ってくれた

欠かす事無く、ずっと

私達がメディアに出る度

…それは、毎月の様に


枯れる度に、それは届いた

花束だったり、植木鉢だったり

それでも…きっと、彼女だと思った


赤いポインセチアが、揺れる

花言葉は---『祝福』
654: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 02:00:38.71 ID:gVq9BMFQ.net
-----


ラブライブの開催が発表されて

各学校がエントリーする

ランキング形式のそれは

結果を、如実に表す


ラブライブに出場できるのは

上位20位に入ったグループ


彼女達---μ'sは

わずか数ヶ月の間に

50位まで昇り詰めた


やはり、私の考えは間違っていなかったんだと理解する

…同時に沸き上がる、ひとつの感情



『負けたくない』
655: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 02:01:19.55 ID:gVq9BMFQ.net
「…また、見ていたのか。」


「ツバサったら、最近そればっかりね♪」


ラウンジに入って来た2人の声に

少し、胸が跳ねる

そんなに、私は集中していたのか


「…嬉しい?」


「…ええ、勿論。」


勿論、嬉しい

こんなにも胸が弾んだのは、いつ以来だろう


アウトロでポーズをとる、μ'sのメンバー

その人数は、9人まで増えていた


「9人の…歌の女神、か。」
656: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 02:01:46.75 ID:gVq9BMFQ.net
英玲奈の言葉通りの解釈をするならば

これは、必然なのかもしれない

穂乃果さんが、名付けたのか

まるで、この9人になる事を予測していたみたいに---


「…」


もしも、この世に運命と言うものがあるとしたら

あの日、彼女達と会えたのは

そういう事なのだろうか


画面の中の彼女達を見る度に

あの日の事が、思い出される


その出会いが、例えどんな風であったとしても

こうして、私達を繋いでいるのか---



「運命って…信じる?」
657: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 02:02:17.27 ID:gVq9BMFQ.net
小さい頃から、アイドルに憧れて

私達を応援してくれると言った、彼女が

…今、自らその舞台に立っている



自分に自信がひとつもなくて

可愛いという言葉を受け入れようとしなかった、彼女が

…今、可愛い衣装で踊っている



自分に素直になれなくて

人との関わりを避けていた、彼女が

…今、あの時と同じ笑顔で歌っている
658: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 02:03:00.96 ID:gVq9BMFQ.net
私達に敵意をむき出しにして

くだらないと告げ、理解すらしようとしなかった、彼女が

…今、その一番前で笑っている



自分の願いを叶えるよりも

友達の夢を叶えたいと告げた、彼女が

…今、その友達と手を取り合ってる




そんな彼女達の先頭に立って

自分の思うがまま、引っ張っていく彼女

…高坂穂乃果さん

そんな無茶な彼女を支える、2人の幼なじみ



…そして

最後まで諦めなかった、彼女
659: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 02:03:33.85 ID:gVq9BMFQ.net
そんな彼女達が、ひとつのグループとして存在している

これを、偶然なんて言葉で片付けていいのだろうか


もし、例えるなら…

これは、必然なのかもしれない


あの日出会った、8人と

その夢をずっと追いかけていた、1人が

同じ場所に集まった


そして、きっと---



「負けたくない、な。」


「きっと…私達の所まで昇ってくる。」

「そう思ってるんでしょ?ツバサは。」


「…ええ。」

「負けられない。」

「負けたくない。」


ただ、その先にたどり着くために---
669: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 05:58:48.76 ID:NiHF1+t3.net
motivate

---動機・刺激を与える


その言葉通り

彼女達の活躍は

私達の努力と比例する


私達の活動に

特に目新しい物はない

今までのそれを、洗練していく日々


それはある種の

私達A-RISEであるが故の、ひとつのプライド



そんな時に訪れた

μ's、秋葉での路上ライブ
670: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:00:10.56 ID:NiHF1+t3.net
見惚れた…というのは大げさだけど

確かに、彼女達の努力はそこにあった


自分達で、ビラ配りをして

簡素な舞台を整えて

路上でやる、小さなライブ


街往く人が、その歌声に足を止める

止まって、聞き続ける人

写真を撮る人、動画を撮る人

興味を持たず、立ち去る人


大きな舞台も、機材も無い

ただ、そこで声をあげるだけ


…なのに、どうして

彼女達の声に、惹かれるんだろう
671: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:00:39.54 ID:NiHF1+t3.net
その差は、どんどん縮まっているように思えた

明確な理由なんてものは分からない


…ただ、ちらほら聞こえ始めた

『A-RISEの好敵手』という、言葉


あの時のように、不安が加速する


…なんで

…どうして


彼女達と私達の違い

それは、一体…



「ラブライブ…」
672: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:01:22.19 ID:NiHF1+t3.net
彼女達の登場は

そしてその活躍は

確かに、私達のモチベーションを上げる理由となった


私達が、手を抜いたつもりは無い

むしろ、今まで以上に努力をしてるつもりだった


ランキング1位という、プライド

ラブライブ優勝という、目に見える結果

それが、私達の目指す、目標だった


…じゃあ、私達と彼女達の違いは、何だろう?

メンバーとか、曲とかじゃない

もっと、根本的な所


それが分かれば

この不安も払拭できるのだろうか
673: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:01:51.99 ID:NiHF1+t3.net
「ツバサ。」


「あんじゅ…」


「また、μ'sの事?」


「ええ…」

「私達と、彼女達の違い。」

「それが分かれば、もう一歩進める気がして。」


「…そう。」

「でも、それはそれ。」

「もうすぐ、レッスン始まるわよ。」


「…ん、わかった。」


「今日は、第2レッスン場ね。」

「トレーナーさんが、準備してくれてるわ。」
674: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:02:19.99 ID:NiHF1+t3.net
-----



「「ありがとうございました!」」


レッスンを終え、ストレッチがてら、その場に座る


「…英玲奈、手伝って。」


「ああ、いいだろう。」


ごろん、と仰向けになって

右足を、宙に持ち上げる


英玲奈に支えてもらって

ゆっくり、力が入る


筋肉が、弛緩していくのが分かる

痛いけど、気持ちいい


英玲奈に任せて

…少しだけ、目を閉じた
675: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:02:50.89 ID:NiHF1+t3.net
レッスンは、今まで以上にハードになった

それを続けられる、体力がついた

成功させる、技術がついた


1年前から、磨いてきた物

これは、確かに私達の力だった


UTXに入って

色々な事を経験した

それは、まぎれも無い事実


ここに来たからこそ、出来たこと

ここに来たからこそ、得られた物

それが今の私をつくる、何もかも


ここに来たから、出会えた仲間


…これは、私の誇りだ
676: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:03:16.02 ID:NiHF1+t3.net
いつだって彼女達がそばにいてくれたし

その努力を見てくれた、トレーナーがいた

私達を認めてくれた、先輩がいた


持っている物を引き出すカリキュラムがあって

能力を引き上げる設備があって

A-RISEとしての、特約があって

それらが反映される、環境があって


…あれ?


「…!」


「…ッ!」


「あ…ごめん、英玲奈。」


勢い良く起き上がったせいで

英玲奈の手を、蹴ってしまった
677: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:03:43.92 ID:NiHF1+t3.net
「…どうした?」


急な私の行動に

英玲奈が、顔をのぞかせる


「何で、気付かなかったんだろう…」


こんな、簡単な事に


「ツバサ…?」


例のごとく、ジュースを買って来てくれたあんじゅも

心配そうに、駆け寄ってくる


「私達と、彼女達の違い…」


「…分かったのか?」


「ふふっ…」

「こんな、簡単な事だったなんて…」





私達の周りには---与えられた物しか無かった
678: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:04:17.45 ID:NiHF1+t3.net
UTXの芸能科という、狭き門も

指導してくれるトレーナーも

自由に施設を使える、環境も

それを可能にする最高の設備

A-RISEとしての、名声だって


…全て、与えられた物だった


自分達の力で、たどり着いたと思った

もちろん、支えてくれる人たちがあってこそ

だけど、努力できる環境があったのは

自由に使える時間や設備があったのは


…全て、ここがUTXであるが故の事



私達A-RISEは、その上に立っているだけだった
679: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:04:56.54 ID:NiHF1+t3.net
μ'sの名を知ってから

レッスンと平行して、彼女達の事を調べた


分かった事は

彼女達には、何も無かった


全てが、一からのスタート


スクールアイドルを、結成した事

場所が無くて、毎日外で練習した事

部室が無くて、外で着替えていた事

存在を否定する、生徒会があった事


そのどれもが、私達には元々あって

彼女達は、自ら勝ち取ったという事



…私達は、そんな努力をしてきただろうか
680: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:05:39.88 ID:NiHF1+t3.net
与えられた、最高の環境

与えられた、最高の設備

与えられた、私達の楽曲


何かひとつでも、自らの力で得たものがあっただろうか



…勿論、自ら選んでここに来た

自分を磨いて、努力をした

支え合える、最高の仲間ができた


それは、私がここに来て

自分の力で、得たもの


だけどそれは

敷かれたレールの上を、歩いているに過ぎなかった
681: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:06:05.68 ID:NiHF1+t3.net
それが、間違っていたとは思わない

それを求めて、ここに来たから


…なら、そのままでいいのか


そのままで、本当にいいのだろうか

私達が---その先に進むために



「…ねえ、2人とも。」

「これは、私のわがままなんだけど…」


私は、ひとつの提案をした

彼女達に、勝つために


そして、現状に抗ってみたかった


…例え、それが上手く行かなかったとしても
682: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/08/30(日) 06:06:56.47 ID:NiHF1+t3.net
-----


また、いつもと同じ日々が始まった

…でも、どこか気が楽になった


私の提案を、2人は飲んでくれた

思う所があったのかも知れない


それ以外は、いつも通りに

この与えられた環境を、最大限に生かす、レッスン


思う所はあれど、不満がある訳じゃない

使える物は、使う主義

…なにより、負けたくなかったから


私の提案は、きっと間に合わない

それでも、まだ次がある

今は、目の前のラブライブに全力を尽くして

彼女達に、勝つために!




…そして訪れた、ラブライブ

スクールアイドルの、祭典


そこに…



彼女達の姿は---なかった
697: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:03:39.90 ID:ueDOdXOF.net
-----


『ラブライブ優勝』


決勝を勝ち抜いて得た、称号

そこを目指して、努力してきた

正直、負ける気はしなかった

スクールアイドルの頂点

そこに立てば、何かが変わると思った

そこに立てば、新しい何かが見つかると思った


---何も、変わりなんてしなかった

見える景色は、何一つ変わらずそこにあった


「…」


酷く、無関心

観客へのパフォーマンスもそこそこに

ステージ裏へと足を進める
698: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:04:12.89 ID:ueDOdXOF.net
「…これを、目指していたのか。」


「そんな訳…無いじゃない。」

「スクールアイドルの、頂点が…」

「こんな物なはず、ない。」


自分でも、認めたくなんてなかった

だけど、現実としてそこにあった

手に入れたかった称号が

何でも無い…無機質な物に感じた


「…帰りましょう。」


私達は、顔を見合わせる事もなく

会場を…後にした
699: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:04:51.92 ID:ueDOdXOF.net
-----


私達の気持ちとは裏腹に

世間は、私達に声を上げる


校区に並ぶフェンスに貼られた

私達のポスター

巨大スクリーンに映される

プロモーション映像


周囲に広がる評価と反比例する

私達3人の心の熱


もちろん、レッスンが無くなった訳じゃない

私達の活動が、終わった訳じゃない


今までの日々に、戻っただけだった
700: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:05:22.93 ID:ueDOdXOF.net
『自惚れるな』

なんて言葉が聞こえるかもしれない

それでも、期待していた程の衝撃はなくて


久しぶりに、トレーナーに怒られる

そんなつもりは無かったけれど

やっぱり、どこか気が抜けていたんだろうか


贅沢を言っていたつもりは無いけど

私自身、スクールアイドルの頂点と言う物を

神格化していただけなんだろうか


「…ああ、それから。」

「以前に頼まれていた件、なんとかなったぞ。」


「詳しい事は、追って連絡する。」

「…以上だ。」
701: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:06:20.65 ID:ueDOdXOF.net
-----


トレーナーが出て行った後

3人で、輪になって座る


「以前の件って…」

「ツバサが言ってた?」


「ええ、多分。」

「でも…」


「気が乗らないのは分かるが、これはチャンスだろう?」

「ツバサも言っていただろう。」

「敷かれたレールの上を歩いていただけだ、と。」


「先人達に従って来た結果が、今回だ。」

「…なら、それを変える事が出来るのは、私達自身じゃないのか?」


「…そうね。」
702: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:06:51.30 ID:ueDOdXOF.net
-----



ある日の昼下がり

私は、街に出ていた


休日と言う事もあり

街中は、人で溢れている


電気街を少し抜けた所に

小さな、喫茶店があった


豆を挽いたミルから漂う香りが

私の鼻を、刺激した


「…いらっしゃい。」


少し仏頂面のマスターが、水の入ったグラスを差し出す


「アイスコーヒー…ひとつ。」


店内に流れるジャズの音が

私の心を、落ち着かせる
703: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:07:36.01 ID:ueDOdXOF.net
「…いい香り。」


時間がかかって出て来たそれは

どこか、普通のアイスコーヒーと違ってた


「…美味しい。」


アイスコーヒー特有のえぐみが無く

スッキリと、かつ繊細な味わい

口に入れた瞬間に鼻腔に抜ける

お店の外で感じた、あの香り


「…水出しコーヒーは、初めてかい?」


「水出しコーヒー…」


話に聞いた事はあったけれど

実際に飲むのは、初めてだった
704: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:08:28.74 ID:ueDOdXOF.net
「…ごちそうさま。」

「また、来ます。」


マスターといくつかの世間話をして

私は、お店を出た

お客さんが私だけだった事もあってか

マスターは、色々な話をしてくれた

これも、ひとつの人生経験だ



美味しいコーヒーを頂いて

少しだけ、心に余裕らしき物ができた


…もう一度、向き合おう

私達の、これからに

私達が今、やるべき事に




「…おーい、ツバサー♪」
705: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:09:03.70 ID:ueDOdXOF.net
閑静なお店の場所から、わずか数百メートル

電気街の入り口辺りを越えた所で

聞き慣れた声に呼び止められた



「あんじゅ…!」


「こんにちは、ツバサ。」

「街に出てたなら、連絡くれれば良かったのに。」


「…」


「なーんてね♪」

「行きましょう?」

「あっちに、英玲奈もいるから。」


そう言って、返事をする前に

あんじゅは私の手を取って歩き出した
706: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:09:45.16 ID:ueDOdXOF.net
-----


「…おや、来たのか。」


ゲームセンターの一角に、彼女はいた


「ここで何して…」



「ゲームセンターとは、ゲームを楽しむ場所だろう?」

「ついさっきまで、これをやっていたんだ。」


英玲奈が指したのは

よくあるダンスゲーム


「さっきまであんじゅとやっていたんだが。」

「案外難しくて、やりこんでしまった。」

「君も、やってみるか?」


…本当に、私達はダンスに縁があるんだろうか

こんな休みの日でさえも
707: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:10:21.83 ID:ueDOdXOF.net
「…ま、息抜きには丁度いいわね♪」


自慢じゃないけど

こういったゲームは結構やりこんだ事がある

これなら、英玲奈に勝てるかもしれない♪



コインを入れて、曲を選択する

難易度は…とりあえず、一番上でいっか


BPMの高い曲だからこそ難易度も上がる

私のプライドにかけて、英玲奈に勝ってみせる


流れてくるメロディに合わせて

膝を使って、リズムをとる



「勝負よ、英玲奈…!」


「望む所だ。」
708: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:11:00.22 ID:ueDOdXOF.net
-----



「もう1回!」


「いや…もう、十分だろう。」


「い、いいじゃない!」

「あと1回だけ!」


戦績は、2勝3敗

勝ち逃げなんて、許さないから


「…もう、今日はここまでだ。」

「休養日に体を酷使する必要はないだろう?」


「それは…」



「…はい、2人ともお疲れさま♪」


あんじゅは、本当にいつも通りだ

手には、冷えているりんごジュース
709: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:19:04.17 ID:ueDOdXOF.net
「ツバサも、ゲームとは言え英玲奈に2回勝てたのよ?」

「私なんて、1勝も出来なかったんだから。」


そう言って、フォローしてくれる


「…また、時間がある時に付き合おう。」

「いつでも挑戦してくるといい。」


「あと1回で引き分けかもしれないじゃない!」


なんだか、見下されてるようで腹が立つ

確かに、実力はそうかもしれないけど…


「…次こそ、必ず勝つわ。」


「ああ、全力で…だな。」


こうして対立してはいるけれど

その実、お互い楽しんでいる

全力で競い合える、相手が出来たから
710: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/02(水) 23:19:50.92 ID:ueDOdXOF.net
「あ…」


そこまで考えて、気がついた

答えは、目の前にあった


「…どうした?」


「ふふっ…何でもない。」

「さあ、今日は目一杯遊びましょ?」


2人の手を取って、先に進む

今日は、一女子高生として楽しもう

この先きっと、必要になってくるから


自分の中で一度止まった針が

少しだけ、動き出した音がする


敷かれたレールへの、ほんの少しの反抗

私達が私達だからこそ、出来る事



私達で---曲を作ろう
719: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/05(土) 10:58:01.77 ID:h2IHzROP.net
-----



真っ白なノートに向き合って

いくつかの、単語を書き出す


好きな事、やりたい事

響きのいい単語


私達らしい…言葉


「さて…どうやってこれを、歌詞にする?」


目の前の雑多に並べられた単語を見て

英玲奈が、口をひらく


「う~ん…」

「それに、私達らしさも必要よね?」


あんじゅも、頭を悩ませる
720: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/05(土) 10:58:39.17 ID:h2IHzROP.net
確かに、曲を作りたいと思った

私達が出来る、私達らしい姿を


先輩達が敷いてくれたレールも、悪くはなかった

むしろ、心地よかった事さえあった


…だけど、それは結局

私達としてではなく、UTXのA-RISEとしてだったから


だから、この答えに行き着いた

私達が…今のこの3人が、A-RISEである証

それを、形にしたかった


だから…



「全部、入れよう。」


今までの私達も、全部

今までの全部があって、ここにいるから

…そして、これからは私達自身が
721: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/05(土) 10:59:08.08 ID:h2IHzROP.net
『踊りたい』


一番最初に浮かんだのは、このフレーズだった

ここに来て、初めてやり始めたダンス

一度、諦めかけた事もあったけれど

いつでも、それは私とあった


もっと、踊りたい

早く、踊りたい


今じゃ、そんな考えばっかりだ


「Private Warsは、先輩達が私達にくれた曲。」

「A-RISEとしての私達のために作ってくれた曲。」


「だからこそ…」

「今度のこの曲は、先輩達に対しての。」

「今までの私達に対しての、アンサーソングでありたい。」

「私は…そう思ってる。」
722: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/05(土) 10:59:32.74 ID:h2IHzROP.net
もう、伝える事は怖くなかった

本音を話しても、この2人なら聞いてくれる

分かってくれる


だからただ、伝えればいい

話せば良い

私の、素直な気持ちを



「…それなら、いっそ曲調なんかは変えずにやってみる?」


「ああ、今まで通りのアップテンポな方が。」

「私達らしい、というものだろう?」


「…うん。」


もっと、踊りたい

ダンスが、したい


なら、後はそれを歌にするだけ
723: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/05(土) 11:00:09.73 ID:h2IHzROP.net
「ダンス…Dancing?」

「英語の方が、響き的にはいいわね。」


「なら、思い切って同じようなフレーズにしてみるか?」


ずっと、踊ってたいから

ノンストップで…最後まで



「なら、最初はこのフレーズを使うとして…」

「Aパートはどうする?」


「…ねえ、2人とも。」

「私は…これが、新しい私達のスタートだと思うの。」


「ラブライブで、優勝という名前を手にして。」

「それでも、どこか満足できずに、ここまできた。」

「だからこそ…私は、もう一度ここからスタートしたい。」


「今までよりも、もっと、ずっと上に昇りたいから。」
724: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/05(土) 11:00:57.24 ID:h2IHzROP.net
「…そうだな。」

「何より、まだ何も見れていないしな。」


「そうよ。」

「きっと、まだまだ先がある。」

「私達に見えてない景色が、きっと。」


「それが見れたら…」

「私達は、変わっていける。」

「見える世界は、きっと違うから。」



「スタートかあ…」

「今はその、準備期間なのかもね?」



『始める準備』


『世界が回りだす』
725: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/05(土) 11:01:24.71 ID:h2IHzROP.net
「これは、UTXとかは関係ない。」

「私達自身のために、必要な物だから。」


「私達が変わりたいと思えた事。」

「この先変わっていけるかは、私達次第。」



「ああ。」

「これは、我々が選んだ道だ。」

「誰の指図でもない、我々が望んだ事。」



「そうよ。」

「導かれて、ここまできたんじゃない。」

「自分達で勝ち取るために、努力してきた。」


「スクールアイドルの、頂点を目指して。」



『誰かのためじゃない』

『自分次第』


『誰かのせいじゃない』

『主役は私達』
726: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/05(土) 11:01:56.30 ID:h2IHzROP.net
「…本当に。」

「人生は、ちょっとの勇気と情熱なのかもね。」



「…そうかもしれない。」

「今までずっとやって来た事。」

「努力してきた、って言える事。」


「そのどれもが…私達の夢だった。」

「英玲奈も、あんじゅも…勿論、私も。」


「自分に無い物が、欲しかった。」

「自分を、変えたかった。」


「…だから、今私達はここにいる。」

「知らなかったものを知って。」

「その先が見たくて、何度も立ち上がった。」

「だからこそ…A-RISE、私達の、想い。」


『もっと知りたい』

『その先を、もっと』


だから今、私達は言葉を紡いでる

不格好だって、何だって

---それが、私達の目指す物だから
732: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/06(日) 23:54:19.03 ID:gNup/xD8.net
真っ白だったノートが

真っ黒に埋め尽くされていく


曲を作るって、楽しい

それが、素直な感想


自分の想いを、言葉にするだけで

叶えたい願いを、歌にするだけで

いとも簡単に、手が動く

言葉が紡ぐ、綴られた詩



もう一度、今を見つめ直す

私達に、何が足りないのか

何が、一番必要なのか


…答えは、ずっと目の前に
733: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/06(日) 23:54:55.84 ID:gNup/xD8.net
ここまで来れたのは?

…英玲奈をライバルと決めたから


諦めなかったのは?

…あんじゅが支えてくれたから



この場所に立てたのは?

…最高の仲間と、競い合えたから



誰かと競い合えるからこそ

私達は、昇ってゆける

競い合って、勝ち取るからこそ


…届いた景色は、色を変えるから


『世界を掴み取る』
734: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/06(日) 23:55:27.97 ID:gNup/xD8.net
「…最初は、ただの強がりだった。」

「見栄を張って、目の敵にして。」

「でもそれは、私一人のわがままで。」


『強気が、本音』

『孤独だった想い』


「敵対する事で、自分を慰めてた。」

「…ただ、逃げてただけ。」

「誰かに、変えてもらうんじゃない。」


『他人任せじゃ駄目だった』


「自分で選んで、ここに来た。」


「だからこそ、変わりたい。」

「だからこそ、踊りたい。」

「今度こそ逃げずに…ただ、全力で。」


『強気が、本気』

『誰もが他人』


…だからこそ、競い合えるから
735: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/06(日) 23:56:01.62 ID:gNup/xD8.net
「私達に、必要な物。」

「それはきっと…」



「我々と競い合えるライバルと。」


「支え合える最高の仲間と♪」


「私達が私達としてあるための…この歌。」




「…立ち止まるのは、これが最後。」

「最高の仲間は、今目の前にいる。」

「最高の曲は、今完成した。」


「…後は、競い合える、最高のライバル。」
736: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/06(日) 23:56:32.17 ID:gNup/xD8.net
「手に入れた称号は、もう過去の物。」

「今度こそ、私達の力で掴み取る。」


「そのために、この曲を送りましょう。」

「私達のライバルとなり得る、全てのスクールアイドル達へ。」



「この曲が、どこかで同じ想いをしている誰かに届いてほしい。」

「そんな衝撃を与える、曲であってほしい。」


「英玲奈…あんじゅ。」

「私達は、最高のグループよ。」


「そして、最高のステージを彩るパーティでありたい。」

「また、あのスクールアイドルの祭典で。」


「そして今度こそ。」

「掴み取った景色を、この目で見たい。」

「貴女達と…一緒に。」


そして、まだ見ぬ頂点へ---



『Shocking Party』
748: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:32:17.32 ID:pCBSp2mr.net
-----



季節は、秋が訪れる

爽やかな薫風を浴びながら

まるで不釣り合いな電気街を抜ける


幾度となく見て来た景色が

私達の眼前に広がる

ここに来るのに憧れてから

幾度と無く季節が移った


巨大なスクリーンには

見知った顔が映っている


新曲が出来た事を伝えるその顔は

ここに来た時と変わっただろうか
749: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:32:49.66 ID:pCBSp2mr.net
あれから、作った歌詞を推敲して

私達らしいメロディにのせた

私達だけで作った曲じゃない

それでも、私達が初めて作った曲

そして、だからこそ嬉しかった

これは、私達と

私達を支えてくれる人たちと作った、最高の曲


メロディを聞く度

ステップを踏む度

そして、歌を口ずさむ度に実感する


ここに、私達がいる意味を
750: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:33:18.88 ID:pCBSp2mr.net
-----


新曲が完成するのと同じ頃

それは大々的に発表された


第2回『ラブライブ』の開催


その報告は、何よりも私の心を踊らせた

ずっと、待ち望んでいた舞台

最高の武器を携えて

最高のライバルと競い合うために


今度こそ、きっと

今度こそ、絶対に


まだ見ぬ景色を見るために



願わくば---彼女達と
751: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:33:55.12 ID:pCBSp2mr.net
新曲を披露していないのは、好機だった

開催の発表後すぐに

各学校がエントリーを始める


それは、前回の比ではなかった

前回の倍以上のグループのエントリー


それに合わせて、ひとつの規定がなされた

使用楽曲は、未発表のものに限られる、と


それでも、エントリーが減る事は無く

続々と集まるグループに対して

地区予選が行われる事となった


選ばれるのは、4グループ
752: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:34:30.94 ID:pCBSp2mr.net
-----



エントリー数の都合もあって

今回の予選は、用意された会場以外でも行う事が出来る


ネット配信を利用して

視聴者に、投票してもらう事になる


画面に映る、いくつかの特設ステージ

申請すれば使う事は出来る


「…」


グラスに入った氷が

澄んだ音を立てて崩れた


…うん


やっぱり、予定通りに
753: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:35:01.37 ID:pCBSp2mr.net
そっと、光の漏れるそれを閉じる


…自然と、口角が上がる

気持ちが、高揚しているのが分かる



その名前を見たときから

この気持ちは、収まらなかった



これは、言わば私達の集大成

今までの私達の努力が

想いが間違ってなかった事の証明


そして、その先の可能性に手を伸ばして


今、思い描いていた夢が

私達が私達としてあるための闘いが




「…始まる。」
754: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:35:35.07 ID:pCBSp2mr.net
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第2回ラブライブのプロモーション


狙い澄ましたように作った

新曲のPR動画


予選が始まるにも関わらず

むしろ、広報活動への偏りが大きかった


勿論、練習を欠かした事は無かったけれど

ちょっとだけ、それらから離れてみて

ゆっくりとくつろげる時間が出来た



「もう、あんじゅってば…」


せっかく、くつろごうとしていたのに

学校を少し抜けて、お気に入りのケーキを買いにいく途中

あんじゅから、電話が入った
755: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:36:08.21 ID:pCBSp2mr.net
『面白い物が見れるから、帰って来て♪』


やっと並んでいた列が進んだと思ったら、これ

こっちの都合だってあるのに…


渋々、列から抜けて来た道を戻る

振り回されている、という意味でなら

…あんじゅも、私と大差はないんじゃないかしら?



「面白い物って…?」


見えてくる、人の波

いつも、UTXの前は人で溢れている

見上げているのは…やっぱり、私達のプロモーション映像
756: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:36:39.96 ID:pCBSp2mr.net
少しだけ低い私の背は

上を見上げるみんなの視界に入らないのだろうか


コツ、コツと

夕暮れを明るい足音が彩る


私の視界を彩ったのは

夕焼けと同じ色を映し出す

あの、サイドテールだった

「…!」


一呼吸、間を置いて

何故もっと早く知らせてくれなかったのか、なんて考える

…いや、そうじゃない


髪型は、変じゃないかしら

服は?顔は?


なんだか少しだけ緊張しつつも

前に、回り込んでみた



「…高坂さん♪」
757: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:37:22.29 ID:pCBSp2mr.net
「…」


きょとん、とした顔に向かって

精一杯の笑顔を、作ってみた


「…!」

「…!!!」


彼女が声を上げる前に

口元に人差し指を立てて、左腕を掴む


「来て!」


どうやってお話ししよう、とか

嫌われてたらどうしよう、とか


考えたけど答えは決まらずに

私らしく、連れ出してしまった
758: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:37:45.83 ID:pCBSp2mr.net
「…?」


高坂さんを引っ張っているとき

左の方から、視線を感じる


もしかして、気付かれちゃったかも

そう思って振り返ると

あの時応援してくれた子が、そこにはいた


声をかけても良かったんだけれど…

周りの人にバレたら、騒ぎになるから

少し、おどけてウインクをした



勿論、真後ろから感じる

殺気のような好意にも、気付いてはいたけれど…



とりあえず、人のいないエントランスに飛び込んだ
759: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/10(木) 23:38:24.38 ID:pCBSp2mr.net
-----


急に走り出した事もあってか

目の前の彼女は、肩で息をしている


ようやく、彼女と目が合った

とりあえず、伝える言葉は…


「はじめまして。」


A-RISEのリーダー、綺羅ツバサとして


「っ…はじめまして!」


初々しいその挨拶は

私を、自然と笑顔にさせた




「…ようこそ、UTX学院へ♪」
765: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:10:31.00 ID:8bWmFSwB.net
「…A-RISEぅ!?」


後から駆けて来た、2人

やっぱり、もうひとりは彼女だった


「あ、あの…」

「よ、よろしければ…サ、サインください!」


この子も、やっぱり会った時と変わらない


「ふふっ、良いわよ♪」


サインを求められて、断る訳が無い

大切な、ファンの一人でもあるのだから


「でも、どうして…」

投げかけられる、最もな疑問


「…それは、前から知ってるからよ。」

「μ'sの皆さん♪」



「…さ、着いて来て?」
766: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:11:02.31 ID:8bWmFSwB.net
-----


後から来たメンバーも連れて

プライベートラウンジへと招待する


「ゆっくりくつろいで?」

「ここはこの学校のカフェスペースになっているから。」

「…遠慮なく♪」


社交辞令的な会話を挟んで

ここに連れて来た訳を話す


「一度、挨拶したいと思っていたの。」

「…高坂穂乃果さん。」


「…!」


「下で見かけた時、すぐに貴女だと分かったわ。」

「映像で見るより本物の方が、遥かに魅力的ね♪」


「人を惹き付ける魅力…カリスマ性とでも言えば良いのだろうか。」

「9人いても、尚輝いている。」


「「…」」
767: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:11:31.94 ID:8bWmFSwB.net
「私達ね?」

「貴女達の事、ずっと注目していたの。」


「「…えっ?」」


「実は前のラブライブでも…」

「一番のライバルになるんじゃないか、って思っていたのよ?」


「そ、そんな…」


「貴女もよ。」


「絢瀬絵里。」

「ロシアでは常にバレエコンクールの上位だったと聞いている。」


「そして西木野真姫は。」

「作曲の才能がすばらしく…」

「園田海未の素直な詩と、とてもマッチしている。」


「星空凛のバネと運動神経は。」

「スクールアイドルとしては全国レベルだし。」


「小泉花陽の歌声は。」

「個性が強いメンバーの歌に、見事な調和を与えている。」
768: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:12:00.88 ID:8bWmFSwB.net
「牽引する穂乃果の対になる存在として。」

「9人を包み込む包容力を持った東條希。」


「…それに。」

「秋葉のカリスマメイドさんまでいるしね。」


「…!」


「いや、元と言った方が良いのかしら?」


「うぅ…///」


「どうして、そんなに…」


私達の言葉に、高坂さんが反応する


「言ったでしょう?」

「ずっと、注目してたって。」


あの、初めて会った日から


「…ずっと。」


「…ツバサさん?」
769: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:12:24.31 ID:8bWmFSwB.net
「ふふっ♪」

「それだけ、世間も貴女達に注目してる、って事。」


あんじゅが、そっとフォローしてくれる


「…そして、矢澤にこ。」


「…!」


喉まで出た言葉を、飲み込む


「いつもお花ありがとう♪」


「「ええっ!?」」


「結成当初から応援してくれているよね?」

「すごく嬉しいよ?」

「…ほら♪」


窓際に置かれた、小さな鉢達を差す


「あ…」
770: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:13:12.61 ID:8bWmFSwB.net
「にこ…そうだったの?」


「…!」


「知らなかったんやけど…」


「い、いやあ~…」

「μ's始める前からファンだったから…」


「毎日、ツバサがお手入れしてるのよ?」


「え…?」


「ちょっと、あんじゅ…!」


欠かす事無く送られてくるそれは

…本当に、嬉しかったから


「…いつも、感謝してるの。」

「一度、お礼を言いたかったから。」


「そっ…///」

「って言うか!」

「私の良い所は!?」
771: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:13:39.42 ID:8bWmFSwB.net
急な話題の転換と共に

彼女の耳が赤くなるのが見て取れた


「…ふふっ♪」

「グループには無くてはならない…」

「…」

「小悪魔、って所かしら?」


そう、それは本当に…



「なぜ、そこまで…」


絢瀬さんの言葉に続ける


「これだけのメンバーが揃っているチームは、そうはいない。」

「だから注目もしていたし…応援もしていた。」


「そして何より…」




「負けたくないと思ってる。」
772: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:14:12.65 ID:8bWmFSwB.net
「…でも、貴女達は全国一位で、私たちは…」

園田さんの言葉に、2人が反応する


「それはもう過去の事。」


「私達はただ純粋に。」

「今この時、一番お客さんを喜ばせる存在でありたい。」


並べられた、最もな理由

その裏に隠された、彼女達への敬意と

叶えたい、大きな夢


「…μ'sの皆さん。」

「お互い、頑張りましょう?」

「そして、私達は負けません。」


立ち上がって、外に出ようとする

伝えたかった気持ちを、押し込んで


…今はまだ、その時じゃない
773: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:14:40.87 ID:8bWmFSwB.net
「あのっ!!」


背後から、声がかかる


「…A-RISEのみなさん。」


立ち上がって見える、全員の表情

…ああ、この目は知ってる


今まで何度も見て来た

言葉を形にする、意志を持った瞳


「私達も負けません!」


「…!」


「今日は、ありがとうございました!」


一瞬で笑顔になる、彼女


「…あははっ。」

「貴女って面白いわね…!」


「…?」
774: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:15:11.38 ID:8bWmFSwB.net
「ねえ、もし歌う場所が決まっていないんなら…」

「うちの学校でライブやらない?」


「「え…っ!?」」


「屋上にライブステージを作る予定なの。」

「もしよかったら、ぜひ♪」


「一日、考えてみて?」


「…やります!!」


「「ええーっ!?」」


思っていた通りの、即答

そして、その思い切りの良さ


…ああ、負けたくない気持ちには

私の、個人的な気持ちも含まれている気がする


「…ありがとう。」

「それじゃ、また詳しい話は追ってするわ。」
775: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/12(土) 23:15:49.09 ID:8bWmFSwB.net
-----


彼女達を見送って、廊下を歩く

元気な彼女達を見た後だと

やけに、静かに感じる


「…思惑通りか?」


「…まさか。」

「私が、そこまで考えられると思う?」


「…それもそうだな。」


「…失礼じゃない?」


目も合わさずに、英玲奈と話す

また、コツコツと踵が音を鳴らす


「でも…」


止まる、足音


「…ツバサ?」


「やっぱり、夢だったから。」


「…ふふっ、分かってる♪」


そしてまた、音を鳴らす

口ずさんだ、終わらないメロディ
785: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:27:09.00 ID:s/g1rXS4.net
-----



「…いよいよね。」


「あんじゅ…」


日が南に傾きだした時

私は、またあのラウンジにいた


いよいよ今日が予選の時

そして、私達の新曲の初披露


高ぶる気持ちを落ち着かせるために

日課となった、水やりをこなす


「…応援、してくれてるのかしら?」


開け放った窓から、風が入る

その葉を揺らす、小さな花々


「いいえ…」

「きっと、激励よ。」


私達にとっても…

彼女達にとっても
786: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:27:50.15 ID:s/g1rXS4.net
-----



「…早かったな。」


「…そう?」

「むしろ、私はずっと待ってたけど?」


「そうね。」

「この2週間、今まで以上に打ち込めたし…」

「良い時間だったんじゃ無いかしら?」


「…そうだな。」


「でも、良い時間だったかは…」

「今日の、ステージで決まるの。」


「ええ、勿論♪」


ステージ衣装に着替えて、彼女達の控え室に

あんじゅが考えてくれた衣装

スカートで揺れる、想いの詰まった小さな造花


「…こんにちは。」
787: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:28:19.44 ID:s/g1rXS4.net
「…あ、こんにちは!」


後ろから、高坂さんと東條さんが現れる


「いよいよ、予選当日ね。」

「今日は同じ場所でライブが出来て、嬉しいわ。」


「予選突破を目指して…」

「互いに高め合えるライブにしましょ?」


「…!」


高坂さんに、右手を伸ばす

その手に、様々な想いを込めて


「はいっ!」


とってくれた、暖かい右手


「…それじゃあ、屋上ステージで♪」


ライブまであと1時間を切っていた
788: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:28:44.79 ID:s/g1rXS4.net
-----


闇に包まれていく街を

屋上ステージに付けられたライトが彩る


「…ツバサ。」


その淡い光を見ていると

後ろから、声がかかった


「改めて、教えてくれないか?」

「何故…彼女達を、このステージに?」


「…そうね。」


そう言えば、ちゃんと口にした事はなかったかしら

別に、もったいぶるような理由でも無いけれど


「ここにステージを設営したのは。」

「私達の新しいスタートに、うってつけだと思ったから。」


「ここで出会った全ての人に、想いに、感謝したくて。」

「そんな人たちがいたから、私達はまた歩き出せた。」
789: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:29:10.90 ID:s/g1rXS4.net
「私達の考えた、歌。」

「その想いは、ここにいたからこそ。」

「…だから、ここで歌う事で。」

「その想いを、気持ちを、表現したかった。」


「…それに、私達が今、私達としてあるのは。」

「何も、支えてくれた人たちがいるから…だけじゃない。」


「…高坂さん。」

「彼女や、他のμ'sのみんな…」


…そして、彼女がいる


「ここに呼んだのは、その感謝の気持ちと。」

「負けたくない想いを、ぶつけるため。」



「…それに、何より。」

「叶えられなかった、同じステージに立つって夢を。」

「同じステージで競い合う、って夢を。」

「…現実にしたかった。」



「ただ…それだけ。」
790: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:29:39.17 ID:s/g1rXS4.net
-----


高鳴る鼓動、かかる爆音

揺れる腰と、紫のライト


振り返って、ウインクする

私達は今、ここにいるって


『Dancing, dancing! Non-stop my dancing』

『Dancing, dancing! Non-stop my dancing』

『Dancing, dancing! Non-stop my dancing』

『Dancing, dancing! Let me do!』


『Party! Shocking Party!! 始める準備はどう?』

『さあ来て ここに来て』 

『Party! Shocking Party!! 世界が回りだす』

『さあ来て ここに来て』



この目で、この手で、想いを送る

まだ見ぬライバルに


…そして、目の前のライバルに
791: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:30:00.19 ID:s/g1rXS4.net
『誰かのためじゃない』

『私とfreedom』

『自分次第だから』

『Go,go! We are freedom』


届くかな?

…届いてほしい



『誰かのせいじゃない』

『心はfreedom』

『主役は自分でしょ?』




届け、届け、とどけ…!




『分かるでしょ?』
792: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:30:29.00 ID:s/g1rXS4.net
『もっと知りたい知りたい過剰なLife』

『いま夢の夢の中へ』

『もっと知りたい知りたい過剰なLife』

『だから…Shocking Party!!』



『Dancing, dancing! Non-stop my dancing』

『Dancing, dancing! Let me do!』


片足を上げて、ポーズをとって

静まる会場と、火照るこの身体


会場に、カメラの向こうに手を振って

成功した事に、顔を見合わせて手を叩く


目の端にちらつく、彼女達の姿と顔

違う、そんな顔が見たいんじゃないの


「…そんな事ない!」


彼女の声が、響く--- 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
793: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:31:08.15 ID:s/g1rXS4.net
「心配無用だったみたいだな。」


「…別に?」

「こんな所で終わる人達じゃ、ないでしょ?」


「ふふっ、そうかもね♪」


「…」


駆け込んで来た、彼女達のともだち


当たり前の事過ぎて、忘れてたけど

彼女達にだって、支えてくれた人達がいる



そこに、さっきまでの雰囲気は無かった

空気が、ピン、と張りつめる

ステージに上がる彼女たちに、不安の色は欠片も無い





『ユメノトビラ』

『ずっと探し続けた』

『君と僕との繋がりを探してた---』
794: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:32:00.93 ID:s/g1rXS4.net
「…ツバサ?」


「…ふふっ。」

「いいえ、何でも無い。」


芽生えた、少しだけくらい気持ちに

そっと、蓋をする


その姿を、今は目に焼き付けて-----





「ありがとうございました!」


「こちらこそ、ありがとう。」


「やっぱり、A-RISEの皆さんは凄いです!」

「私達も…」


「こちらの台詞よ。」

「…嫉妬するくらいに。」


「え…?」
795: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:32:25.81 ID:s/g1rXS4.net
「μ'sの皆さん。」

「今日は、本当にありがとう。」


「結果が分かるのは、少し先だけれど。」

「また…こうして、次も貴女達と踊りたい。」


「…そして。」

「勝つのは…私達よ。」



「ツバサさん…」

「…」


「私達も、負けません!」

「今日は、本当にありがとうございました!!」


「「ありがとうございました!!」」



「…行くわよ、2人とも。」


「ちょっ…ツバサ!」
796: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/15(火) 13:35:28.24 ID:s/g1rXS4.net
「ツバサさん…?」



「…すまないな。」

「きっと、何か思う所があったのだろう。」


「あ、いえ…」


「すばらしい、ステージだった。」

「ツバサの言った事は、本心だ。」

「また、君たちと戦いたい。」


「…結果を、楽しみにしている。」


「は、はいっ!!」





-----


「…」


「ああ…やっぱり。」


座り込んだ廊下は

火照った体を冷ます程に冷たかった---
801: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 12:18:29.74 ID:UeplrIBy.net
-----


「…ハロウィンイベント?」


街中がオレンジの景色に変わり始めた頃

季節は、秋の終わりに迫っていた


「実は今年、秋葉をハロウィンストリートにするイベントがあるらしくって。」

「地元のスクールアイドルとして有名な私達と。」

「最近注目の高まったμ'sに、出演依頼が来ているみたいなの♪」


「μ'sにも…」


「というより、我々はほぼ出演する予定で準備されている。」

「…ただ、我々の意志も確認して、と言う事だそうだ。」


「…そう。」


「どうする?ツバサ。」


「え…?」


「我々は、君の決定に従おうと思う。」
802: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 12:18:59.15 ID:UeplrIBy.net
「え?でも…」


「…」


「そうね。」

「もちろん、出るわ。」


「「…!」」


「どうしたの?」


「ああ、いや…」

「その、大丈夫なのか?」


「…ええ、勿論よ。」

「ほら、そうと決まったら早速練習しましょ?」


ウェアを着替えて、吸い込んだ秋の風は

冷たくもないのに、胸に刺さった
803: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 12:19:25.32 ID:UeplrIBy.net
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「…」


『さあ!と、言う訳で!』

『今日から始まりました、秋葉ハロウィンフェスタ!』


パソコンから聞こえる、明るい声

いよいよ今日からが、開催日

私達の出番は、最終日に

μ'sと共に、街中でのライブ


『せ、精一杯がんばります…』


慣れていない彼女の口からは

たどたどしい言葉が綴られる


なんて…彼女らしいのだろう


『私達は常日頃、新しい物を取り入れて…』


歓声の先にあるその声は

私には、酷く無機質なものに感じた
804: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 12:20:35.25 ID:UeplrIBy.net
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「ちょっと、ツバサ、本気!?」


あんじゅが声を荒げたのは、久しぶりに感じる


「イベントの曲をPrivate warsにするなんて…」

「せっかく予選を突破できて!」

「地区予選まで、もう時間ないのよ!?」


「どのグループも、自分達を印象づけようとしてるのに。」

「それに…私達の曲は!?」


あんじゅの言葉が正論すぎて

否定する言葉なんて出てこない

でも、それでも…


「ずっと、ここまで練習して…!」


「…いいだろう。」


「英玲奈!?」


「…!」


「ここは、ツバサに従おう。」

「我々の…リーダーに。」
805: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 12:21:06.38 ID:UeplrIBy.net
-----



「リーダー…」


ちゃぷん、と音を立てて

掬ったお湯で、顔を流す


「そんなの…分かってる。」


私が、しっかりしなきゃいけない事

私に、ついてきてくれている事


私達についた、ファン

そして、彼女たち…


「…」


分かってる

全部、分かってるから…


とぷん、とお風呂に身体ごと沈める

聞こえなくなった雑音と

聞こえてくる水音のノイズに


…何故だか、少しだけ安心した
806: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 12:21:38.55 ID:UeplrIBy.net
-----



「みんな、ありがとー!」


観客の前では、笑顔は絶やさない


曲が始まった時は、少しざわついた

それでも、次第にみんなは手を挙げる


それに応えるように、激しさを増すダンス

技術は、何一つ劣っていなかった


今まで以上に、洗練されたそれは

歴代のA-RISEの中でも、最高に輝いていた


『もっともっと踊らせて』

『みんなみんなとまらない』

『涙は青春のダイヤモンド』

『君を飾る光』




目の前で輝くそれに

---眩まされない程度には
807: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 12:22:09.29 ID:UeplrIBy.net
-----



「…綺羅!」

「何度も同じミスをするな!」


トレーナーに怒鳴られる事、3回目


…分かってる

けど、それすらも雑音に感じてしまう


「…もういい、少し休め。」


小さく頭を下げて、部屋を出る





「…」


シャワールームで汗を流して

蛇口を止めて外に出ると、2人がいた


「…今日は、レッスン中止だそうだ。」


「…そう。」


「ねえ、ツバサ…」



「…ごめんなさい。」


消え入るような声でそう伝えて

そそくさと、その場を後にした
808: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 12:22:35.98 ID:UeplrIBy.net
-----



「はあ…」


一体、何をしているのか

いや、何がしたいんだろう


自分に何を求めて

彼女達に、何を求めているのか


『リーダー』


その言葉が、頭に響く


…そうだ、リーダー

私は、A-RISEのリーダーなんだ


「…」


「リーダー…だから。」


だから…一体、何なのだろう


石段に腰掛けて、遠くを見つめる


「…ひゃっ!?」

何分、経っていただろう

首筋に当てられた冷たい何かに

私は飛び上がった


「貴女は…」
817: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:43:42.49 ID:8NB0o5m3.net
「…よかったら、コーヒーどうぞ。」


「あ…」


差し出された、それを受け取る


「あの、東じょ…!」


彼女は、そっと唇に指をあてる


「…?」


「…今日は、どうしたん?」


「え…」


「何も知らないウチだから。」

「聞ける事、あるかもしれないよ?」


そう言って、彼女は一口、コーヒーを飲む


「自信が…ないの。」


水分を含んで滑らかになった舌は

そっと、今の想いを吐き出した
818: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:44:11.13 ID:8NB0o5m3.net
「今まで…ずっと、頑張って来た。」

「色んな人に支えられて。」

「自分の夢を叶えたくて、ずっと…」


「そして、遂に。」

「…いいえ、やっと。」


「願っていた物が、目の前に現れた。」

「叶えたい夢が、届く所に見えて来た。」


「あと…ほんの、少しなのに。」


「…」



「…出会って、しまったの。」

「私と同じ想いを、性格をした彼女に。」


「そして、気付いてしまったの。」

「彼女には…到底、敵わないって事。」


それほどまでに彼女は、輝いていた---
819: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:44:41.21 ID:8NB0o5m3.net
「そう思ったら、私らしい、って何なんだろうって。」

「あんじゅも…英玲奈も。」

「私には無い、彼女たちらしさを持ってる。」

「それは、決して他の人には真似できないような物。」


「…なのに、私は。」

「そんな彼女達の腕を、掴んで走り出すくらいしかできない。」

「そうやって、自分勝手に走り出して、何度も壁にぶつかって来た。」

「でも、私にはそれしか無くて…」


「それなのに彼女は、私と同じ事をして。」

「…なのに、たった半年でこの場所まで来た。」


「…怖い。そして、悔しい。」

「一体私は、何を今までしてきたんだろう、って…」

「そう考えたら、私達らしく、って作った歌、歌えなくなった。」



「…本当、笑っちゃうでしょ?」


「…笑わないよ。」


「え…?」



「…私は、笑わない。」
820: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:45:07.20 ID:8NB0o5m3.net
「貴女…」



「…私もね。」

「誰かに誇れるような物なんて、何一つなかった。」

「自分に自信なんてこれっぽっちもなくて。」

「ずっと…誰かと関わるのを、避けて来た。」

「自分らしいと言える事なんて…」


「そういう意味では、貴女と同じかも知れない。」


「…」


「そんな私に、手を差し伸べてくれた子がいた。」

「不器用だけど、真っ直ぐで。」

「私の事を、見てくれた。」

「私は私だ、他の誰でもない、って叫んでくれた。」


「だから…」


「…」



「だから、今のウチがある。」

「あの子にもらった、他の誰にも無いもの。」


「…ウチらしさ。」
821: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:45:43.00 ID:8NB0o5m3.net
「…ウチは、貴女じゃ無いから。」

「全ての気持ちがわかるなんて事は、言えない。」

「それはきっと、貴女だけにしか分からない、悩み。」


「でも…もしも、貴女に。」

「同じ悩みを打ち明けられる人がいたなら。」

「支え合える、仲間がいたなら。」

「その人達と手を取り合って来たのが、今の貴女なら。」


「…きっと、それは貴女だけの物。」

「似ていても、決して同じじゃない。」


「貴女だけの…貴女らしさ。」


「そう…思うんよ。」


「そんな仲間が…友達が。」

「貴女には…いるんと違う?」



「え…?」


彼女の視線の先には

そんな私の---仲間がいた
822: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:46:11.23 ID:8NB0o5m3.net
「なん、で…」


早歩きで、あんじゅが近付いてくる

怒っているようで

泣きそうな、顔をしながら


立ち止まった距離、約85センチ

手を伸ばせば、そこに彼女がいる


「…」


聞かれて、いたんだろうか

いや、聞かれていた所で

何も、変わりはしない


私は今、どんな顔をしているんだろう


「…!」


瞬間、手を振り上げられる

あの日、あんじゅはこの景色を見ていたのかな…
823: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:46:43.25 ID:8NB0o5m3.net
「…ッ。」


「…」


「…?」


恐る恐る、目を開けると

振り上げた手は、力なく下げられていて…


「…!」


香る、あの優しいにおい

暖かい身体に、鼓動が2つ聞こえた



「…ばか。」


ぎりぎり聞き取れる大きさの、あんじゅの声


ああ…




ごめんなさい
824: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:47:36.90 ID:8NB0o5m3.net
あの時、私は嫉妬してしまった

自分に持っていない物を持っている、彼女に

自分に出来ない事をやってのける、彼女に


…目に見えていた物は、それだけだった



「…貴女には、夢がある?」

「叶えたい、夢。」


「…ええ。」

「叶えたい…最高の夢が。」


「それは、貴女一人の夢なん?」


「…いいえ。」


「ここにいる2人と、最高の景色を見るために。」

「最高の私達で、あるために。」


「そして…2人の夢を、叶えるために。」



「…そっか♪」
825: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:48:10.81 ID:8NB0o5m3.net
「…きっと、その気持ちがあればいいんよ。」

「自分に自信が無くても、叶えたい未来がある。」

「例え、自分の事が信じられなくなっても。」

「自分を信じてくれる、ともだちを信じれば良い。」


「…そうやろ?」

「だって、貴女が貴女だから、その2人は。」

「今、貴女と一緒にいてくれるんやと思う。」


「きっとそれが、貴女にしかない、貴女らしさやと思うから。」


「そんな自分を信じてくれる、ともだちの。」

「夢も、貴女の夢なんやろう?」


「…!」


「それなら、貴女が思った事をすれば良い。」

「心から、やりたいと思う事をすれば良い。」


「その人のために、想って行動できるなら。」

「…それはもう、あなたの夢のひとつだから。」



「…勇気が欲しいなら、背中を押してあげる。」

「かつて…ウチが、誰かにしてもらったように。」
826: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:48:43.93 ID:8NB0o5m3.net
「…」


そっと、差し出された手をとる


「…」


いつか感じた事のあるような

あたたかい、手のひらだった



「名前…教えて、くれない?」

「貴女の…名前。」



「…ふふっ。」

「それは、夢が叶った時に、な?」



「…そうね。」


まだ、まだまだ叶えてない夢が沢山あるから



「…行きましょう、2人とも。」


今度こそ、ちゃんと、自己紹介できるように

胸を張って、これが私だ、って言える様に
827: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:49:18.67 ID:8NB0o5m3.net
「…少しでも、力になれたかな?」



「…ええ、勿論よ。」

「ありがとう。」


「…頑張ってな?」

「貴女なら、きっと叶えられるよ。」

「貴女自身の、夢を。」



「…そうね。」

「私の夢も、2人の夢も。」

「受け継いだ、夢も。」


「全部…もう、私の夢だから。」



そっと、その場を後にする

名残惜しい気もするけれど

今は…2人がいるから



「…ねえ。」


「ん?」


「貴女も夢、叶えてよね?」

「貴女自身の…夢。」


さあ、私達の居場所へ








「ウチの夢…か。」


「叶うのなら…」
828: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/20(日) 17:49:56.63 ID:8NB0o5m3.net
-----




すっかり日も暮れた頃

街頭の明かりを頼りに、道を進む


「…」


言葉はなかった

なんて言えばいいのか、分からなかった


私に自信がなくて、ごめんなさい?


怖じ気づいちゃって、ごめんなさい?


イベント、無理言ってごめんなさい?


なんて言えば…?


言葉は、見つからずに

時間だけが、過ぎてゆく


「「…!」」


言葉の代わりに…そっと、2人と手を繋ぐ

きゅっと、優しく握り返してくれた2つの手は


暖かく、心も繋いでくれる気がした


『分かってる』


まるで、そう伝えてくれるような


暖かさが、胸に込み上げた---
836: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:45:34.72 ID:o9gurirb.net
-----



「ん…」


空気の冷たさに、目を開ける

いつもと変わらない、私の部屋


光を遮るカーテンを開けると

目に飛び込んでくる、白銀の世界


キラキラ、きらきらと

この目に反射して、輝くそれは

私達を応援してくれているのか

それとも…



「つめた…」


敷いたカーペットが意味を成さないくらいに

足裏から伝わる、冷たい刺激


改めて、目が冴える

---ああ、やっとここまで



「…!」


玄関の、チャイムが鳴る

扉を開けると、見慣れた顔



「「おはよう、ツバサ。」」
837: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:46:04.60 ID:o9gurirb.net
-----


「現地集合、って言ってたじゃない。」


「ふふ、そのつもりだったんだけど…」

「英玲奈がね♪」


「…まて、乗って来たのは君もだろう?」


「もう、貴女達は本当に…」


本当に…だいすき


「…待ってて。」


くるっと後ろを向いて、制服を用意する

こんな顔、2人になんて見せられない


目尻が下がって、口角が上がった

こんな、だらしない顔を


「…君は、本当に馬鹿だな。」


「あら?素直なのがツバサの良い所でしょ?」


…前言撤回

『だいっきらい』



---なんて
838: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:46:34.10 ID:o9gurirb.net
「…お待たせ。」


いつもの私の、いつもの制服

この白に身を包むのも

もう、慣れた物だ


「ほら、ツバサ。ネクタイ…」


…そうでも、なかったみたい


「全く…こんな時まで、君らしいな。」


そう言って、口元を押さえる英玲奈

この顔にも、もはや驚かされなくなった



「…2人とも、ありがとう。」


「「…?」」


「こんな私に、着いて来てくれて。」

「こんな私と…歩んでくれて。」


顔が赤くなるような、歯の浮いた台詞も

降り積もる雪の重みで、足を地につける様に

私の口から、溢れる


「…ありがとう。」
839: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:47:09.29 ID:o9gurirb.net
「『こんな私に』じゃ、ないでしょう?」

「言われた事、忘れたの?」


「…そうだな。」

「そんな君、だからこそ。」

「我々は今、ここにいるのだから。」


「…ッ。」


本当に、この2人には

言葉なんていらないと、つくづく思う


特に、何かを話し合った訳じゃない

特に、2人に頭を下げた訳じゃない


何も、言葉になんてしなかった

繋いだ手だけが、暖かかった


口にしなくても、伝わる想いが

繋がった気持ちがここにある事


私達が、私達である事

私達として、歌う事

私達だけの、あの歌を


…それが、私達らしさ

私達らしさを作る

私自身にしかない、私らしさ



「…さあ、行きましょう!」
840: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:47:45.68 ID:o9gurirb.net
-----



会場に入ると同時ぐらいに

降り続く雪は、激しさを増した

彼女達は、もう着いたのだろうか

…最終予選が行われる、この場所に



時間が経つのは早い

改めて、そう実感する

第2回ラブライブ開催の発表から

気付けば、今日、最終予選に


それでもここに来て思い出されるのは

厳しいレッスンの日々よりも

英玲奈と、あんじゅと

3人で過ごした、他愛の無い日々だった



「…本当にここがいっぱいになるの?」

「この天気だし…」


歩く通路の先に、見つけた彼女達


「きっと大丈夫よ。」


…せっかくだから

そう思って、声をかけた


「びっしり埋まるのは間違いないわ。」
841: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:48:16.37 ID:o9gurirb.net
「完っ全にフルハウス♪」

「最終予選にふさわしいステージになりそうね。」


「あっA-RISE…!」


「…駄目よ、もう対等。」

「ライバルなんだから。」


その言葉に、見せはせずとも高揚する

私達だけじゃない

…彼女達も、そう思ってくれている


「どうやら、全員揃ってないようだが…」


「あ、ええ…」

「穂乃果達は、学校の用事があって遅れています。」

「本番までには、なんとか…」


「…そう。」

「じゃあ、穂乃果さん達にも伝えて?」


「今日のライブで、この先の運命は決まる。」

「互いにベストを尽くしましょう?」


「でも…」


「私達は負けない。」


胸に込み上げる、いくつかの些細な気持ちなど

終わってから、考えれば良い事だから
842: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:49:32.31 ID:o9gurirb.net
-----


「…」


「…」


コツコツと、3人の足音が鳴る

彼女達は、着いて来ていないかしら?


まだ、駄目だ

せめて、あの角を曲がるまで…



「…ぷっ。」


ああ、もう限界


「くくっ…あははっ…!!」


「完っ全にフルハウス!!…だったか?」


「ちょっ…///2人とも!!」


「あははっ、まさかあのあんじゅが…!」


「い、いいじゃない!」

「私だって、テンション上がってるんだから!」


「ふふっ、ごめ…」


「ツバサ、流石に笑い過ぎだ…ッ!」



「…もうっ!!」
843: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:50:23.63 ID:o9gurirb.net
-----


「はあー…」


「落ち着いたか、ツバサ。」


「英玲奈だって、笑ってたくせに…」


「まあ、面白かったからな。」


「もう…」


「…」

「さて、冗談は置いておいてだな。」

「彼女達は、間に合うだろうか?」


「確かに、この雪じゃ…」


「…来るわ。」


「ツバサ…?」


「彼女達は、必ず来る。」

「彼女達の、夢を叶えるために。」


「それに…来てくれないと。」

「私達の夢も、叶えられないでしょ?」



「彼女達は、必ず全員揃って、最高のライブをする。」

「そして…」


「それ以上に、最高のライブが、私達には出来るって事。」


「私は信じてる。」




「…さ、着替えにいきましょう?」
844: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ 2015/09/24(木) 01:53:05.11 ID:o9gurirb.net
-----



「…間に合ったようね。」


私の言葉通りに

穂乃果さん達は、会場に着いた


「…」


胸が、熱くなる

きっと、今からのステージが楽しみで仕方が無いんだろう


「…そろそろだな。」


英玲奈の声に、会場へと足を進める


…そっと、またその手を伸ばしてみた

誰も知らない、私達だけの姿

繋がった私達の手と、3人の同じ夢


思い描いた、その夢に向かって


「…さあ、行きましょう!!」











---私はまだ、気付いていなかった

この最終予選の結果が、私の運命を変える事に

そして、私達のこれからをも


くるくると廻る運命の歯車に

小さな音を立てて、大きな歯車が噛み合った

まるで、新しい可能性の種が芽吹くように
883: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:02:13.42 ID:6m/lItB90.net
---長い

長い時間が、過ぎた様に思う

一週間?

一ヶ月?


そんな永い眠りから覚めたように


私は、重たい身体を起こした



目が、覚めなければいいとさえ思った

ずっと、あの夢の中にいられたら、なんて思える程


「朝…か。」


ぽすっ…と身体をベッドに倒す

ああ、何も考えられずに2度寝できたなら


「…」


ああ、もうこんな時間

気だるい身体を、無理矢理に起こす


「…負けたんだ。」


永遠に感じた、刹那とも言える数日間
884: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:02:44.54 ID:6m/lItB90.net
-----


「おはよう、ツバサ。」


「あんじゅ…おはよう。」


「まだ、暗い顔してるの?」


「…大丈夫。」


こんな時に、こんな事を考えるべきじゃないのは、分かってる

でも、ほんの少しだけ、あんじゅが羨ましかった


彼女にとっての楽しさとは

ダンスとは、私達ありきのものだから


だからこそ、あんじゅの寂しそうな顔を見るのは

きっと…私のせいなのだろう


「行きましょ?ツバサ。」


「…ええ。」


ただの、日常に戻っただけ

この学校に来た、あの日の様に


いつも通りの、毎日が過ぎる
885: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:03:31.98 ID:6m/lItB90.net
---あの日

私達は、全力でステージに望んだ


最高のステージを

最高の、仲間と


全力で、その身を焦がした


突きつけられた結果は

『敗退』の2文字だった



悔しかった

悲しかった


…何より、道が途絶えた


それでも、どこか

彼女たちのパフォーマンスを見て

こうなる気はしていた



『μ's』の文字を見た瞬間

最初に感じたのは---


どこか、ほっとした気持ちだった

理由は、分からない
886: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:04:18.18 ID:6m/lItB90.net
-----


「初詣に行こう。」


年越しを目前に控えたある日

レッスン終わりに、英玲奈が言った


「…我々には、来年もあるだろう?」


その言葉の真意は

その時の私には分からなかった


「…そうね。」


それでも、何かが変わるかもしれない


今までと同じ様に繰り返される日々

抗ってみたいと思うのは、私の意地だ


ラブライブ出場が無くなったって

私達の生活が劇的に変わる事は無かった


授業を受け、レッスンに励む

結局の所、私達がここにいるのは

ただ、歌って踊るのが好きだから
887: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:04:52.10 ID:6m/lItB90.net
-----


一月一日、元旦

日が変わった時

私達3人は、神田明神にいた


「…何をお願いしたの?」


「秘密♪」


「もう、ツバサってば…」


時間が解決してくれる

そんな無責任な言葉を、今、身を以て理解する


少し薄れた、あの日の苦悩は

神様が、少し溶かしてくれたのか


手を合わせた私には

…何も、願い事なんて出てこなかった


「…後ろもつかえてる。」

「行こうか。」


「ええ。」


果たしてこの一年を

私は、どんな思いで過ごすのだろうか
888: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:05:32.22 ID:6m/lItB90.net
-----


「…あら。」


「貴女達…」


会いたくないような

会っておきたいような

そんな人達に、遭遇した


「…やっぱり。」


少し、顔がほころんだ

なぜ、なんだろう


「明けましておめでとうございます!」


時間の遅さを感じさせない、元気な姿

…彼女らしい


「おめでとう。」


「…初詣?」


「はい、A-RISEの皆さんも?」


「ええ、地元の神社だしね。」


「ですよね…」
889: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:06:02.14 ID:6m/lItB90.net
彼女達それぞれと、目が合う

何を考えているのかなんて、分からないけれど


その顔に、その目に

惹かれてきたのは、私達だ


「…」

「じゃあ、行くわね。」


階段を、ひとつひとつ降りていく

すれ違う度感じる、彼女達の視線

…決して、悪い物ではなかった


彼女達が、彼女達だからこそ

ここまで、来れたんだから


…とっくに、そんなの認めてる


「…ねえ。」


「優勝しなさいよ、ラブライブ!」


かつて、託された夢を

今度は---彼女達に
890: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:06:33.72 ID:6m/lItB90.net
-----



「話があるの。」


あれから、また変わりのない日々が続いた

歌う事は、楽しい

踊る事は、もっと楽しい


端から見れば、きっと充実した毎日なんだろう


実際、年が明けてから

笑顔になれるまで、そう時間はかからなかった


いつだって私達は

A-RISEとして、ここにあるから


ただ、その中で生まれる、疑問

避けては通れないもの


…ううん、きっとそうじゃなくて

これからの私達に、きっと必要なもの


それが知りたくて…

つい、彼女に会いに来てしまった


驚いた彼女だったけれど

すぐに、笑顔で了承してくれた
891: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:07:05.31 ID:6m/lItB90.net
-----


「…ごめんなさいね。」


コーヒーを一口、飲んで

彼女に、声をかける


「でも、どうしてもリーダー同士。」

「2人きりで話したくて…」


「いえ…」

「海未ちゃんもことりちゃんも、分かっていると思いますから。」


「…練習は頑張ってる?」


「はい!」

「本戦ではA-RISEに恥ずかしくないライブをしなきゃって。」

「みんな気合い入ってます!」


「…そう。」



「あの、A-RISEは…」


沈黙に耐えきれなくてか

それとも、私達を気にしてか

彼女が、口を開いた
892: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:07:32.49 ID:6m/lItB90.net
「…心配しないで。」

「ちゃんと練習してるわ。」


「ラブライブって目標が無くなって。」

「どうなるかって思ったけど。」

「やっぱり私達…歌うのが好きなのよ。」


…そう

今、私達をA-RISEたらしめているのは

その気持ちが根底にあるからこそ


「よかった…」


「ただ、やっぱり…」

「どうしても、ちゃんと聞いておきたくて。」


「…?」


「私達は最終予選で、全てをぶつけて歌った。」

「そして潔く負けた。」


「その事に、何のわだかまりも無い。」

「…と、納得させようとしたんだけどね。」


「…!」
893: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:08:08.07 ID:6m/lItB90.net
「ちょっとだけ引っかかってるの。」

「なんで負けたんだろ、って。」


「そう…なんですか…」


「理由が知りたいの。」

「確かにあの時、μ'sは私達よりもファンの心を掴んでいたし。」

「パフォーマンスもすばらしいライブだった。」


「結果が出るまでに、私達は確信したわ。」

「…でも。」

「なぜ、それが出来たの?」


「えっ…」


「確かに努力はしたんだろうし。」

「練習もつんで来たのは分かる。」

「チームワークだっていい。」


「でもそれは、私達も一緒。」

「むしろ私達は、貴女達よりも強くあろうとしてきた。」

「貴女達を…一目見た、そのときから。」


「それがA-RISEの誇り、スタイル。」


何より…私達の、夢
894: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:09:03.99 ID:6m/lItB90.net
「だから負けるはずが…」

「…」

「負けたくない、そう思ってた。」


「でも、負けた。」



「…その理由を知りたいの。」


「μ'sを突き動かしている物って、何?」

「貴女達を支えているもの…原動力となる想い。」

「それは何なの?」


手に、力が入る

もし、それがリーダーの力の差なのだとしたら…



「え、えっと…」

「…」

「ごめんなさいっ!!」


「…!」


「私、良く分からなくて…」




ごまかさずに、ちゃんと話してくれた事が

私には、何よりも嬉しかったように思う
895: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:09:35.25 ID:6m/lItB90.net
「…今日はありがとう。」


「ごめんなさい。」

「なんか、ちゃんと答えられなくて…」


「気にしないで?」


「でも、A-RISEがいてくれたからこそ。」

「ここまで来られた気がします!」


「…」


「あ…」


「…ふふっ、そんな悲しそうな顔しないで?」

「それに…」


「…?」


その台詞を言うのはきっと…





私達の方だから
896: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-wjkg) 2015/10/20(火) 00:11:40.68 ID:6m/lItB90.net
-----


穂乃果さんから、メールが届いた

μ'sのキャッチフレーズが、完成したと

そして…見てほしい、とも

UTXの、街頭ディスプレイ

これも、もうすっかり彼女達に染まってきた気がする


…なんて

「すっかりツバサも、μ'sのファンだな。」


「もう、そういう訳じゃ…」


茶化されるのも、もう慣れたもの

いよいよ、発表の時


11番目に流れて来た、そのフレーズに

私は、目を奪われた---


『みんなで叶える物語』


「…ふふっ。」


「…ツバサ?」


なんだ…

こんなに、簡単な事だったなんて


「…」

ああ、もう

…こんなに、悔しいなんて


「…ねえ、2人とも。」



「話があるの。」
906: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 15:55:41.14 ID:/Uvb6QVm0.net
-----



「いよいよ明日…か。」


壁にかけたカレンダーに目をやる

この一年が、本当に早かった様に感じる


UTXに入学を決めた日から

英玲奈と出会って

あんじゅと出会って

…そして


彼女達、μ'sと出会って


それも…きっと、明日で終わる

これは、ほぼ確信だった


一度、あんじゅ達と話した事がある

今後、彼女達はどうなるのか


あんじゅは、きっとこの先も続いていく

そう答えたけれど


…私と英玲奈の考えは、違っていた
907: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 15:56:19.78 ID:/Uvb6QVm0.net
事実上の、解散

3年生達の卒業


通常なら、世代交代によって

メンバーの入れ替えがあるだけの事


でも、μ'sは…

高坂穂乃果が中心となって

まっさらな一から、作り上げたもの


そんな一からのスタートが

結果、大きな舞台に足を運ぶ事になった


彼女達しか経験し得る事の無い

彼女達の、夢とともに


それは、彼女達9人だけの物語だった

…だからこそ、μ'sはあの9人だけなのだ、と
908: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 15:56:58.77 ID:/Uvb6QVm0.net
もしかしたら、ただの杞憂かもしれない

彼女達の想いを繋いで、紡いで

新生μ'sとしての、新たなスタートを切るのかもしれない


…でも、恐らくそれは無いだろう

私には、どうしてもそのイメージが浮かんでこなかった


それとともに実感する

ある、ひとつの現実


彼女たちと、同じステージに立つ事はもう出来ない


今更だけれども、後悔が募る

もっとずっと早くに、彼女達が結成していれば

もっと早く、彼女達と出会えていれば


そんなもしもを心の中にしまい込んで

私は、そっと目を伏せる


…そうじゃない

だからこそ、なんだと
909: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 15:57:36.74 ID:/Uvb6QVm0.net
この世には、『もしも』の世界がある

いつか読んだ本に、書いてあったっけ


もし、私がUTXに来ていなければ

彼女達と一緒に、μ'sの一員としてあそこに立っていたかもしれない

でもそれは、英玲奈とあんじゅと出会えていなかった、という事


…なんだか、それは悲しく思えた


きっと、ここに来たから

私は、自分自身と戦えた

きっと、ここに来たから

2人に出会う事ができた


きっと、ここに来たから

μ'sと出会う事ができて

きっと、ここに来たから

最高のライバルが出来た


もしも、なんて必要ない

今だからこそ、私だから

だからこその、私なんだ



そしてそれはきっと

私の未来を紡ぐひとつの可能性になった
910: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 15:58:23.84 ID:/Uvb6QVm0.net
-----



「…ええ、もう驚かないから。」


玄関の扉を開けると

見慣れた顔が、2つ


「あはは、やっぱりバレちゃった?」


「言っただろう?」

「ツバサも、流石に学習していると。」


「もう、貴女達は…」


大丈夫、今日はおかしな所は…


「ほら、ツバサ。」


あんじゅに、立ってた襟を直される


「…はあ。」


成長…できていないのかも


「さ、行きましょう?」

「私達の最高のライバルの。」


「最高のステージを、見に!」
911: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 15:58:59.81 ID:/Uvb6QVm0.net
-----


暗くなって来た夜空を

明るい色のライトが照らす

雲ひとつない空の下で

たくさんのグループが、観客を湧かす



「…彼女達、最後らしいわね。」


「プログラムを見たよ。」

「なんとも、彼女達らしい最後だな。」


まるで、最後の最後まで一緒に踊りたい

そう思っている、気がした


私達の予想でしか無いけれど

今日は、彼女達の

μ'sとしての、ラストライブになる


きっと、これからの彼女達は

μ'sではない、ただのスクールアイドル


私達が卒業するまで

もし、戦う事があるとすれば


μ'sでは無い、新たなグループとして
912: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 15:59:36.45 ID:/Uvb6QVm0.net
-----



「…始まる。」


夜空を染めていたライトが消え

包まれた、静寂の最中


…ぽつりと、口から溢れた



『どんな明日が待っているんだろう?』

『なんてね僕は 僕たちは』

『少しずつ手探りしてた』


『励まし合ってぶつかりあった時でさえ分かってた』

『おんなじ夢を見てると』


『目指すのはあの太陽』

『大きな輝きを捕まえて』

『いつかの願いへと近づいて』

『光の中で歌うんだSensation』


不意に、目がかすむ

前が見えない


…でも、見ないと

彼女達の、最後の、最高の輝きを
913: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 16:00:25.02 ID:/Uvb6QVm0.net
『奇跡それは今さ ここなんだ』

『みんなの想いが導いた場所なんだ』

『だから本当に今を楽しんで』

『みんなで叶える物語 夢のStory』


『まぶしいな』

『いいな』

『おいでよ』


『うれしいな』

『いいな』

『もっとね』


『ひとつになれこころ…キラキラ』



終わりゆくメロディの中

なぜか、それは瞼から零れ落ちた


「…ツバサ!?」


手に落ちたそれは

あの日、2人と繋いだ手と同じ温度だった
914: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/22(木) 16:01:13.47 ID:/Uvb6QVm0.net
「…ありがとう。」


そして、お疲れさま


歓声に紛れて、届く事の無い声で

私はそっと、呼びかけた


「…!」


そんな事、あるはずが無いのに

ステージの上の彼女と、目が合った

…気がした


「…ありがとうございました!!」


客席に届く、穂乃果さんの声

拍手と声援が、彼女達を包む



…そういえば、約束してたっけ





「東條希!」


「綺羅ツバサ…よ。」




お互いの夢は---叶いましたか?
920: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/24(土) 23:50:15.40 ID:k3EBjgG90.net
-----



「…こんな所にいたのか。」


「英玲奈…」


「見納め…か?」


「まあ、そんなところ。」


「あっと…言う間だったな。」

「少し、感慨深くも思う。」


「…そうね。」


「…」


「…」


「あんじゅは?」


「もう、会場に向かったよ。」

「教師に何か頼まれていたようだ。」


「…そう。」


「私も、先に行ってるよ。」


「ええ、わかった。」
921: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/24(土) 23:50:48.25 ID:k3EBjgG90.net
「…」


一人残されたラウンジで

色とりどりの、花に囲まれる


「この景色も、いつ以来かしらね…」


もはや当たり前になった、この空間で

ほんの少しの時間に想いを馳せる


色々、あった

本当に、色々…


「あれから、もう一年…か。」


気がつけば、もうここまで来ていた

私達の積み上げて来た想いは、記憶は

一旦、今日で途切れる



「もう…卒業なのね。」


風に揺れる花々に

そっと、言葉を投げかける
922: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/24(土) 23:51:32.75 ID:k3EBjgG90.net
あれから、私達の予想通り

μ'sは、彼女達9人で無くなると同時に、解散した


改めて、穂乃果さんからメールが来たっけ

宣戦布告にも、とれるような

そんな、思いの詰まったメール


春に、地域のイベントで会った彼女達は

μ'sのそれとはまた違ったベクトルで、輝いていた

新しいメンバーが増えて

新しい、想いを抱いて

彼女たちは、今まで通りに楽しそうに歌う


『負けたくない』

決して、彼女達には


『応援したい』

そんな、彼女達だからこそ


夏に行われた、第3回ラブライブ

結果は…もはや、語る必要なんてない


ただ、感じた全てが今の私を作るなにもかも
923: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/24(土) 23:52:06.09 ID:k3EBjgG90.net
「…よしっ。」

過去は、ここで全て清算する

ここを出て、UTXを出て

私は、その先に進む


…そう、決めたから


改めて、ラウンジを見渡す

咲き乱れる花、華、はな


少し、申し訳ないけれど

ここにある花の世話は、後輩達に託した

引き継いだ、『A-RISE』の名と共に


「…」

ラウンジを出ようとした足を、止める

そっと…振り返って

窓際にある、それに手を伸ばす


「…せめて、これだけは。」


私がここにいた証として

ここにいた意味を、忘れないために


一輪の、ただの造花

それを、胸のポケットにさす


「…ありがとう。」
924: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/24(土) 23:52:35.66 ID:k3EBjgG90.net
-----



「…ッ…うぅ…」


「ほら、あんじゅ。」


英玲奈が、あんじゅにハンカチを差し出す

泣いてはいないその背中が

今日は、少し小さく感じる


「だって…だって…ッ!」


「…もう。」


そっと、彼女を抱きしめる

いつか、私がそうしてもらったように


「ツバサぁ…」


「ほら、泣かないの。」

「あの時、決めたでしょう?」


そう、あの時決めたから

私達が歩んでいく

これから先の、未来の事を
925: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/24(土) 23:53:15.51 ID:k3EBjgG90.net
-----



「…話があるの。」


あの日、私は2人を連れて

UTXのトレーニングルームにいた

彼女達が決めた、彼女達のキャッチフレーズ

彼女達自身の、原動力

10文字にも満たないあのフレーズに

私は、心を突き動かされた


…いいえ

きっと、厳密には

知らぬ間に押さえ込んでた感情の蓋を

勢い良く、開けられた様に


「どう…思った?」


2人に、投げかける

答えはもう、決まっているのに


「「…」」


私達が、私達であるが故に

もう、言葉を交わさずとも分かっていた

気付いていた


この先の、私達それぞれの未来
926: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/24(土) 23:54:45.47 ID:k3EBjgG90.net
「…もう、決めたんだろう?」

英玲奈と、目が合う

「…」

あんじゅが、少し目を伏せる


「みんなで叶える物語。」

「…本当に、いいフレーズね。」


今まで出会った全ての人がいて

友達がいて

家族がいて

仲間がいて

…ライバルがいて


そのどれもが、彼女達を作り上げた様に

私達も、彼女達が彼女達であるための

彼女達の、描いた夢を叶えるための

…ひとつの、歯車だった


「私達が、μ'sの夢を叶えるためにいたのだとしたら。」

「…きっと、私達の夢を叶えるために、彼女達もいた。」


だからこそ

それは、私達ひとりひとりにも当てはまるから
927: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:00:12.31 ID:Fk91qh6F0.net
「…私ね。」

「UTXに来て、本当に良かったと思ってる。」

「貴女達と出会えて。」

「目指したい、物が出来て。」

「…楽しかった。」


「貴女達2人と、ここまでやってこれて。」

「本当に…本当に、楽しかった。」


「ありがとう。」

余計な、言葉なんていらない

もう、分かってるから
928: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:00:56.81 ID:Fk91qh6F0.net
「それが、君の出した答えか?」

「ええ。」


「そんなの…納得できないッ!」


「あんじゅ…」


「そんなの…」


「だって、私が今ここにいるのは…」

「A-RISEとして、ここまでこれたのは…」


「ツバサと、英玲奈がいて。」

「2人が笑ってる姿を見たかったから!」

「3人で、いつまでも笑ってたかったから…ッ!」
929: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:01:49.69 ID:Fk91qh6F0.net
「…」


「…あのね、あんじゅ。」


「…?」


「私ね、世間では天才、ってよく言われるの。」


「ツバサ…?」


「A-RISEの、スクールアイドルの立役者。」

「女子高生の憧れだ、って。」


「…もちろん、私は自分の事を天才だなんて思った事は無いし。」

「自分の努力で、ここまで来れたと思ってる。」

「でも…」


「そんな私が、最高に憧れた人が、2人いるの。」

「負けたくないって思って。」

「同じ場所に立ちたいと願って、努力して来た。」
930: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:02:42.48 ID:Fk91qh6F0.net
「初めて、そのダンスを見たときから。」

「…憧れてたの。」

「それだけの魅力が、力が、想いが。」

「…彼女達には、あったの。」

「それだけの物を、持っていたの。」


「それって…」



「英玲奈…あんじゅ。」

「私は、ずっと貴女達に憧れてここまで来た。」

「だからこそ。」


「貴女達に…勝ちたい。」

「ただ、ひとりのアイドルとして。」



「…それが理由。」
931: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:03:54.29 ID:Fk91qh6F0.net
-----


「…あの時から。」

「私の想いは、ひとつも変わってない。」


「ここに来て。」

「沢山の事を経験して。」

「今、私達は卒業したの。」


「本当に、貴女達と出会えてよかった。」

「最高の、高校生活を。」

「…そして、最高のスクールアイドルとしての時間を、過ごす事ができた。」


「あの日、3人でA-RISEになった時に描いてた。」

「望んでいた未来に、私達はいるの。」
932: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:04:20.47 ID:Fk91qh6F0.net
「私達がA-RISEとして描いた可能性に。」

「私達は、手を伸ばす事が出来た。」

「掴み取る事ができた。」


「きっと、勝ち負けじゃないの。」

「あの日描いた可能性に、私達はたどり着く事が出来た。」



「…だからこそ。」

「今度は、私自身の可能性を掴み取りたいの。」

「貴女達に、勝ちたい。」

「憧れたまま、終わりたくはない。」


「この先の、綺羅ツバサとしての可能性を、私は信じたい。」
933: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:07:36.47 ID:Fk91qh6F0.net
「みんなで叶える物語。」

「叶えたい私の夢の、ひとつは叶った。」

「貴女達とともに、最高のスクールアイドルになれた。」

「…今度は、ライバルとして。」

「あの時、私達がμ'sに対してそうだったように。」

「今度は、私達それぞれが。」

「それぞれの夢を叶える歯車としてありたいの。」


「それが、今の私の夢。」

「私自身の、可能性。」

「英玲奈…あんじゅ。」

「私と出会ってくれて、ありがとう。」


「そして今度は…」

「ライバルとして、親友として。」

「私は、貴女達とこの先もありたい。」




「初めて出来た、大切な、最高の、ともだちだから。」
934: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:09:46.17 ID:Fk91qh6F0.net
-----



通い慣れた学び舎を、後にする

これから先の未来は、私にも分からない


それでも、仲間がいる

心に決めた、ライバルがいる


それだけで、胸がはずむくらい

この先が、楽しくて仕方が無い


ふと立ち止まって、空を見る

明日から、どんな未来が待っているんだろう


彼女達の答えは、聞いてない

言葉にする必要が、なかったから
935: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:10:16.92 ID:Fk91qh6F0.net
もう、分かってる

いつだって、私達は

目の前の可能性に歩き出している


壁にぶつかっても

悩み悔やんでも

同じ未来を希う、かつての仲間


胸に刺した、造花が揺れる

七色に染まった、一輪の薔薇


レインボーローズ

花言葉は…『可能性』


彼女からもらった

最後の---最高のプレゼント






fin.
936: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 00:13:29.89 ID:Fk91qh6F0.net
約1年前に落ちたスレを、ここまで保守ありがとうございました。
書けない間も、保守・声援のおかげでなんとか書ききれました。

お詫びではないですがほんの小さなエピローグを用意してます
少ししたら投下します
941: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:49:30.40 ID:Fk91qh6F0.net
Epilogue


その手の中にあるものは
942: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:52:22.54 ID:Fk91qh6F0.net
-----



「はっ…とっ…」


「んっ…」



「はあ…はあ…」


「ちょっと休憩…」



「んくっ…ぷはあ…っ。」

「えっと、タオルは…」


「…」


「…これ、よかったら使って?」


「あ、ありがと。」

「…」

「…へ?」


「久しぶり、にこさん。」


「きっ…綺羅ツバサぁ!?」
943: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:53:01.49 ID:Fk91qh6F0.net
-----


「えっと…」

「きょ、今日はどうして…」


「そんなに、かしこまらなくてもいいのよ?」

「第一、にこさんの方が先輩なんだし。」


「で、でも…」


「…今日は、これを返そうと思って。」


「え…?」

「これって…」


「あの時、貴女のお陰で私は救われたの。」

「そして、これはあの日から私のお守りになった。」


「も、もしかしてあの時の泣き虫って…」


「な、泣いてた事は忘れてよっ…!」


「え…ええーっ!?」



「ありがとう、にこさん。」
944: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:53:31.17 ID:Fk91qh6F0.net
「…そっか。」

「あの時、にこ達は会ってたんだ。」


「ええ。」

「そして、貴女の言葉で私は救われた。」

「A-RISEに、3人でなる事ができた。」


「そうだったんだ…」


「ずっと、いつか返そうって思ってたんだけど。」

「なかなか、機会がなくって…」


「…」


「改めてありがとう、にこさん。」

「それに…お花の事も。」


「そ、それは単に、ファンだったからで…」


「ふふっ。」

「それでも、毎回欠かさずプレゼントしてくれるのは、貴女だけだったから♪」


「えへへっ、いやあ~…」
945: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:54:04.60 ID:Fk91qh6F0.net
「はい、これ。」


「…」


「にこさん?」


「いいわ。」

「貴女にあげる、それ。」


「…え?」


「…お守り、なんでしょ?」

「それに、今更返してもらった所で。」

「にこはもう、新しいの買ってるし…」


「…分かった。」

「ありがとう。」


「別に…///」

「そ、それで、今日はそのためだけに…?」


「それも、もちろんあるんだけど。」

「先に、挨拶しておこうと思って…」


「挨拶?」


「4月からよろしくお願いします、先輩♪」
946: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:54:30.17 ID:Fk91qh6F0.net
「…へ?」


「私、貴女と同じ養成所に通う事にしたの。」

「だから、4月から先輩後輩の立場、ってコト。」


「…は?」


「あれ?」

「喜んでもらえると思ったんだけど…」


「い、いやいやいやいや!」

「そんなの、ネットの情報にひとつも…」


「驚かせたくって♪」


「…じゃない!!」

「アンタ、本当にそれでいいの!?」


「…?」


「芸能界、入れたんでしょ!?」

「どうして…」
947: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:54:57.83 ID:Fk91qh6F0.net
「確かに、そういったオファーがあったのは事実だけど…」

「それは、私自身が勝ち取った物じゃなかったから。」


「それに…」


「なに?」


「貴女と、一緒にアイドルをやってみたかったの。」


「え…?」


「…似ていたから。」

「力に、なりたいと思った。」

「私を、救ってくれたから。」


「…」


「にこさん?」


「…嬉しくない。」
948: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:55:23.93 ID:Fk91qh6F0.net
「そんな、同情みたいな気持ちで。」

「同じ道を歩んでなんて欲しくない。」


「私には、私の夢がある!」

「それにアンタを巻き込むつもりも無いし。」

「ましてや、恩返しだなんてごめんよ!」


「…」


「あ、その…ごめん。」

「でも…」


「ふふっ。」

「やっぱり、そう言うと思った♪」


「…は?」


「貴女の、そういう所。」

「…私、大好きなの。」
949: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:55:54.61 ID:Fk91qh6F0.net
「もちろん、貴女に救ってもらった恩はある。」

「それでも、私がここに来た一番の理由は。」

「…やっぱり、貴女がいるからなの。」


「自分を曲げずに。」

「一人になっても、諦めずに夢を目指した。」

「自分が辛い時でも、誰かの事を考えられて。」

「…そして、答えを出す。」


「そんな貴女の生き方が、好きになったの。」

「そして、そんな貴女を、間近でもっと見たいと思った。」


「ツバサ…さん。」


「それに、私なら貴女に遅れを取る事はないし♪」


「なっ…!?」

「ちょっとそれって…」
950: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 01:57:07.20 ID:Fk91qh6F0.net
「私は、本気でアイドルになりたい。」

「そして、かつての仲間に、ライバルに勝ちたい。」

「自分の可能性のその先、頂点まで駆け上がりたい。」

「そのためには、貴女から学ぶべきだと思った。」

「貴女と、高め合いたいと思った。」


「…」

「もちろん、馴れ合うだけのために来たんじゃない。」

「貴女も、私にとってのライバルだから。」


「…そう。」

「なら、さっきの発言は取り消すわ。」


「言っておくけど、アイドルに対しての想いは誰にも負けるつもりは無い。」

「勿論…貴女にもよ、ツバサ。」


「…!」
951: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 02:02:03.63 ID:Fk91qh6F0.net
「負けないわ、にこさん。」


「呼び捨てで良いわよ。」

「それに…もう、仲間でしょ?」


「…!」

「…そうね。」


「改めてよろしく、にこ。」


「歓迎するわ、ツバサ。」


「早速、私も一緒に練習していい?」


「…」

「ありがとう、ツバサ。」


「…何か言った?」


「ううん、何でも無い。」

「さ、やるわよ!」


「ええ!」



---あの日のにこに、見せてあげたい

望んでた仲間が…できたんだ、って事



fin.
952: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/25(日) 02:04:55.95 ID:Fk91qh6F0.net
これにて完結
リクエストから始まったSSでしたが
読んでくれてどうもありがとうございました

今新しいのも書き始めているので
また機会があれば会いましょう
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『ツバサ「可能性の頂点へ。」』へのコメント

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