ss書いたから読んでくれ

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海未-アイキャッチ29
1: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:28:44.29 ID:WscA0wRQ0.net
些細な用事を終えた後ふと高層ビルへ立ち寄った園田海未は,4階の映画館の中へそのまま引き寄せられていた。

その理由は,誰かに連れられたわけでも,友人に薦められたわけでも,好みの俳優の主演作が公開されたからでもなく,単に海未の無意識がここへ引き寄せたから,であるようだ。

ポップコーンの香りに釣られたから,でも構わないと海未は思った。

きっと深い理由はない

でなければ,このように公開中或いは公開予定の映画のパンフレットを丁寧に一枚ずつ抜き取ることや,大きな窓ガラスのそばに設置されたイスでそれらの一字一句を熟読したりなどはしないであろう。

「……?」

さて,園田海未がそれを見つけたのは,パンフレットの束の上から4枚目,ハナから興味のない先週公開した宇宙人のコメディ映画のパンフレットをめくったときであった。

元スレ: ss書いたから読んでくれ

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2: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:31:18.02 ID:WscA0wRQ0.net
園田海未が耳にした会話は次のようであった。


「大学ぅ、どこにするぅ~」

「○×の文学ぅ~」

「え~、でもA子ゎ理系、じゃん??」

「あそぉびたい~」


海未は早々に立ち去りたいと思い,早足になった。


「文学部ってぇ~、なにやんの~」

「知らなぁい~、本とか、読むんぢゃね??」

「A子、最近ん~何、読んだのぉ~」

「進撃ぃ~(笑)」

「をい!! マンガ、ぢゃん!!わら」


不幸にも,早足になったぶん歩幅が小さくなってしまったことと彼女達の声がやけに通ったことにより,それらははっきりと海未の聞くところとなった。

昨日の放課後の話である。
3: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:34:02.60 ID:WscA0wRQ0.net
海未はチケット販売の受付へ向かい,モニターを見上げた。

ちょうど一時間後に上映開始するものがあったので,受付嬢に確認をしてもらうと,最前列のちらほら,もう一つ真ん中の行の真ん中の列のぽっかり空いた席を残し全て埋まっていた。

流石は上映初日のことだけある,と海未は思った。

中央の列はお手洗いに行きづらく,毎回両隣の客にホルダーを奪われることは海未にとっていつものことである。

しかし,最前列に座りながら首を痛めずに過ごす術を知らない海未は,真ん中の席を選ぶのであった。
5: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:36:08.54 ID:WscA0wRQ0.net
園田海未には憂鬱と感じるときがあった。

数学や理科の定期テストはもちろん避けたい時間である。

それ以上に海未が憂鬱だと感じていたのは,総合という名の単位の,進路指導の時間であった。

二年生になって設置されたこの枠では毎回プリントが配布され,それをもとに進路を決めていくことになっている。

このプリントには日付がついており,周ごとにプリントをファイルする必要がある。

7日ずつ重なっていく日付けはまさに決断までの猶予が消えていくことを示すものであり,そのたびに海未は自分の余命が削られていくような思いがするのである。

そして,そのたびに海未は親友の二人のほうを見てしまうのであった。
6: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:38:35.54 ID:WscA0wRQ0.net
高坂穂乃果という少女は海未の幼馴染というだけでなく,境遇まで少し似ていた。

同じ部活に所属し,一緒にスクールアイドル活動をする仲間である。

その上,彼女の実家は老舗の和菓子屋である。

つまり彼女も家業を継ぐという選択肢を持っている、ということである。

海未は穂乃果の進路についての意思や決断にはとても興味があるものの,机に突っ伏して眠っている穂乃果と,その下のくしゃくしゃになったプリントを見て溜息をつく。

そしてその後ろの席で黙々と作業をする,既に明確なヴィジョンを持っているもう一人の幼馴染,南ことりを羨むのも毎回のことであったのだ。
7: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:40:32.37 ID:WscA0wRQ0.net
園田海未の毎日は忙しい。

朝の武芸の鍛錬に始まり,学校では授業,放課後は生徒会,弓道またはダンスをこなし,帰宅してからも竹刀を振ることがある。

夜遅くにはノートを広げ担当している作詞,または勉強をする。

海未に与えられた自由時間は思いの外少なく,さらにその時間はアイドルグループの今後の方針の会議に費されるのだ。

実際のところ,このように宿題と作詞をほっぽり出して映画館に来てしまったことは,多忙な日々への反抗,
海未の無意識の叫びだったのかもしれない。
9: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:42:16.83 ID:WscA0wRQ0.net
「だいたい私は、」

武道がある,アイ活がある,生徒会がある

稽古は毎日やらねばならないし,スクールアイドルは3年になっても続けるだろう

生徒会の仕事は3年の途中まで続く

この重責の中で進学を志すなど簡単に出来ることではない

勿論この重荷を放棄することはしたくないし、かといって勉強する時間が取れないのであればろくな結果は得られないだろう

それならばいっそ最初から,ということも考えなければならない

家への帰り道にて,海未はそのようにこぼした。


「難しいね…」


返答に困っているのであろうか,南ことりは苦笑いをするだけであった。
11: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:44:25.31 ID:WscA0wRQ0.net
「お父さんたちはなんて言ってるの?」


ことりは慎重に,地雷を踏み抜かぬように質問した。


「私の考えを尊重する、と」


縛ってくれたら楽だったのに,と海未は思っていた。

諦めさせてくれればこんなに迷わずにすむのだ

だいたい,できるはずがない

今の忙しい生活に受験勉強などが割り込む余地はない

自分にはどうにかやっていけそうにない,無理である

しかし,それでも……

海未はそのような根拠のない期待を抱いてしまう自分がたまらなく嫌だった。

与えられた夢が淡いものであるがゆえに,苦しみはいっそう大きくなるようであった。
13: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:48:16.85 ID:WscA0wRQ0.net
「そもそも具体的に何をするか決めていないのに大学へ行くなど……」


そんなものは学費の無駄遣い,そう続けようとしたが止めた。

それはただの僻みであることに気がついたからである。

ことりは相変わらず不安そうな顔をしていた。


「すみません、ことり…こんな話を」


自分のせいでことりに気まずい思いをさせてしまったことに,海未はますます落ち込んだ。


「ううん、気にしないで」

「私でよければいつでも相談に…」


二人の足取りは,別れたときまでも重いままであった。


その日の夜,園田海未は夢を見た。

それは,海未がどこぞの学校の入学試験の採点官となっており受験生を全員落とす,というものであったという。
14: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:49:58.27 ID:WscA0wRQ0.net
この映画のチケットを買った理由もとくにないのであろう

別に,くだらぬ宇宙コメディでも,公開終了間際のアクションでも良かったのだ

なんならスプラッター映画でも恋愛映画でも,それこそ各パンフレットを眺めるだけでも,要するに時間を潰せるのならばなんでも良かったのである。

海未はそのように結論付けた。


ただし,海未が通常通りの思考をしていたならば,この映画に惹かれることはなく,ましてスクリーンに入ることは尚更のことであっただろうことはここで断っておく。
15: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:52:43.57 ID:WscA0wRQ0.net
公開まで一時間,さらに時間を潰さねばならない。

時間を潰すために時間を持て余すという矛盾のような,本末転倒のような結果になったので,海未は吹き出してしまいそうになった。

海未はイスに座り,自分のかばんの中を探った。

しかし目的の物は出てこなかった。

それは英語の単語帳である。

どこに置き忘れたかを覚えていない。

教室か,電車の中か,或いはそこらの店の中か……

少なくとも家にはなかったはずである

海未は漁る手を止め,溜息をついた。

しかし,1000円という金額は高校生の自分にとってまだまだ痛い金額であるにも関わらず,不思議と海未は内心せいせいした気分であった。
16: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:55:17.31 ID:WscA0wRQ0.net
海未はイスに座ってパンフレットの束を眺めることにした。

ところがチケットを買う前と比べて,まるで頭に入ってこない。

同じ文章を5回読み直していたことに気がついたあと初めて,海未は自分が上映を楽しみにしているとわかった。

一度意識してしまうと気になって仕方がないので,スマートホンを取り出し,作品について調べることにした。


以前からだんだん増えていることは知っていたのだが,シリーズ総勢で40人以上いることに海未は驚かされた。

また,今の作品がプリンセス風で,自分の記憶の中の汗が散る泥臭い雰囲気の作品とは全く異なっていること,現在でも黒が結構な人気を誇っていることにも驚かされた。

時間を忘れてwiki内のページを飛び回っていた海未が幼い妹二人を連れた矢澤にこと遭遇したのは,上映開始10分前のことであった。
17: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:56:48.03 ID:WscA0wRQ0.net
「海未ちゃん、こんにちは」
18: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 19:58:30.02 ID:WscA0wRQ0.net
このシリーズは10年以上前から続いている。

無印シリーズが放映されていた頃の海未たちは小学校へ入学したかしていないかくらいの歳であり,穂乃果と販促のおもちゃで遊ぶ機会は実際に何度もあった。

黒と白とがいるキャラクターのうち,白の役を取り合いしたこと,「穂乃果はほのか」という理屈にいつも折れていたこと,変身道具が携帯電話型をしていたので,携帯電話に憧れていたこと,ところ構わずにいちゃつく妖精たちを可愛いと思えなかったこと

色々なことを覚えている。

しかし,そらで言えたあの名乗り口上は,決め台詞は,必殺技はもう言えなかった。
19: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:00:56.87 ID:WscA0wRQ0.net
「ポップコーン高すぎ!」

「ちょっと、もっと味わって食べてよ…!」


なんという偶然か,海未と矢澤一行はスクリーンが一致し,さらに隣り合う席であった。


「だめ! いまはジュース無し! 後でね! ニコのお小遣い無くなっちゃうから……!」


にこに頼まれ,にこと海未は二人の妹を挟むように座ることになった。

妹二人の間には巨大なポップコーンがあり,上映前にも関わらず競うように食べていた。

海未はにこの妹との間のホルダーに,オレンジジュースのカップを入れた。

ホルダーを利用したことは海未にとって初めての経験であった。
20: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:03:14.26 ID:WscA0wRQ0.net
小学校高学年になったときには既に海未はこのシリーズを観ていなかった。

毎回のワンパターンに思える戦闘に飽きてしまったのである。

作中の彼女達は毎回同じようなタイミングで変身し,同じようなタイミングでピンチに陥り,同じようなタイミングで必殺技でザコ敵を倒し,結局敵幹部を逃す。


「最初から(必殺技)使えばいいのに」


内々に思っていたことが,ある日ついに口から出た。
その週から,海未はこのシリーズを見なくなったそうである。


補足すると,視聴を止めることは子どもの成長の証であると周りの人間は捉えている,という側面がある。

海未の母親はこのときの海未に,「もう卒業したのですね」と声をかけ暖かい目をして微笑んだ。

ゆえに,海未はその後しばらく,大きくなってもそのシリーズを見続けていることは恥ずかしいことだと思うに至ったのであった。
21: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:04:45.63 ID:WscA0wRQ0.net
「ところで海未ちゃん、なんでこんなところにいるの?」


矢澤にこの質問は自然なものであった。

なぜなら,実際海未自身もこの問いに答えかねていたからである。


「なぜでしょうか、ただなんとなく、かも」

「ふうん…」


自分から尋ねておきながら,にこは素っ気なく返事をした。

それからにこは,見透かしたような目をしてこう言うのであった。


「(海未ちゃんも)いろいろ大変だね」
22: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:06:41.57 ID:WscA0wRQ0.net
映画が始まった。

ミラクルプリンセスライトの軽い説明がなされ,周りの女の子達が試しに灯りを付けて振っている様子が見られた。

2頭身の小さなキャラがスクリーンに登場した。

これは,つい先ほど調べた情報によると,短編のCGアニメであるらしい。


「ほぉ……」


デズニーのCG映画のようだ,と海未は思った。

途中ライトを振る合図があったものの,客席から光はあまり出ていないようであった。


学生の客も結構いるようである。
23: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:08:43.49 ID:WscA0wRQ0.net
次のアニメが始まった。

今作は三本立てであるらしかった。

この手描きのアニメがおそらく一番長いものであろう。


『……ステキ過ぎるぅ~!』

『……この私をお探しですか?』

『夢を……』

『ほざけええええ!!!』

『……諦めないで!』

『ミラクルプリンセスライトを!』

『グアアアアアア!!!』

『ごきげんよう……!』


間の二人は定期的にあくびをしていた。

海未は最後まで熱心に見ていた。
24: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:11:18.58 ID:WscA0wRQ0.net
三本立て最後のアニメは通常の頭身で,かつCGのものであった。

主人公らは少女とともに敵を蹴散らして走り,昼を取り戻すために上へ上へ登っていくもので,勢いがあったのでとても爽快な気分になった。

かぼちゃの敵が怖いと海未は思ったのだが,にこの妹達は特別気にしていない様子であった。


映画が終わり,館内が明るくなった。

海未は喉が渇いたのでジュースを手に取った。

だが,容器は既に空であった。
海未は,自分は映画に夢中になって知らず知らずのうちにこんなに飲んでいたのか,と驚いた。
25: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:12:25.06 ID:WscA0wRQ0.net
「こころも喉乾いた?」

「ううん、別に。でも(ドリンクバー)ほしい」

「ん? あれ? そうなの、まあいいか」


海未達は映画館の近くのファミリーレストランに来ていた。


「紅い女の子が格好良かったですね」


パスタを食べながら海未達は映画の感想を話し合っていたのだ。


「だよね! えーと、名前なんだっけ」

「「スカーレット」」


「最後のCGのやつが凄かったですね、かぼちゃの兵士ををばんばん倒していって」

「うんうん!ニコもそう思う!」
26: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:13:59.69 ID:WscA0wRQ0.net
「あのメガネの娘はなんだったのですか?」

「いつもあんなふうなことやってる」


登場人物の,サポート役の女の子についての話である。

海未は仲間外れな感じがして可哀相だ,と思っていた。


「爬虫類みたいな悪役に負けそうになったシーンにはハラハラさせられました」

「諦めずに立ち上がって、お城の必殺技を決めるシーンはとても格好良かったですね」

「うんうん!」


「でもさ」


にこの妹の一人が呟いた。


「はじめから(ミラクルプリンセスライトを)つかえばよかったのにね~」
27: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:16:50.00 ID:WscA0wRQ0.net
「まあ……」


あのときの自分と同じだ,と思い,その“正論”を肯定しかけたとき,海未はハッとした。

言葉の続きは出てこなかった。

自分に何かをいう資格などないのでは,と感じたからである。

海未は自分自身に問いかけた。

自分が彼女たちと同じ状況になったときに,果たして諦めずに同じ行動が取れるだろうか

強大な力に吹き飛ばされても,自分はまた立ち上がることができるだろうか

答えは出て来ず,代わりに海未の頭の中に浮かんできたものは例の週置きの日付であった。
28: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:18:34.80 ID:WscA0wRQ0.net
作中の「あきらめない」という台詞が,身体の中でいつまでも反響して回って残っているような感じがした。

なぜなら,海未の近頃の記憶に,その経験があったような気がしてきたからである。


「……」


つまり,あのとき出した自分の中での考えが,結論が,合理性のあるものではなく,ただ自信をなくした自分の,諦めからやってきたものであるような気がしていたのだ。
29: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:20:14.23 ID:WscA0wRQ0.net
自分になにが言えるだろうか

あのような絶望的な状況になっても彼女たちは,夢のために夢を決して諦めることをしなかった

その一方で,自分は後ろを向いていた

自信が無いという,それだけの理由から諦めていたのかもしれない

逃げようとしていたのかもしれない

そんな自分が彼女達に言えることなど,一体なにがあるというのだろうか

海未は自分がひどく未熟であるように感じた。
30: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:24:29.89 ID:WscA0wRQ0.net
「にこは、卒業したらどうしますか?」


落ち込んだ海未はそう訊ねていた。


「なんだなんだ、どうしたいきなり……ん~そうだなあ、バイトしながらデビュー、かなぁ、ふへへ」


にこが臆すことなくデビューという単語を出したことに海未は驚いて,こう返した。


「まさか……もうスカウトとか、声を掛けられたりしたのですか?」


一瞬,にこはあっけにとられたような顔をして、すぐに笑ってこう言った。


「そんなわけ! まだまだぜーんぜん、かからないよ!」

「では……」

「でもね」


海未の言葉は,にこに遮られる形となった。


「アイドルになるために頑張ってる今だって、とっても楽しいし充実してるよ! 先はまだまだぜんぜん見えないけど…」


にこの笑顔は,やはり眩しい

なるほど,夢を追い続けるプリンセスはこのようである,と海未は思った。


『やってみなくちゃわからないよ!』


台詞が再びこだました。
31: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:27:42.21 ID:WscA0wRQ0.net
海未は自分自身の夢がなにかまだわかっていない。

おおよその見当もつかないというのが本音であった。

したがって,自分がいま何に挑むべきなのかをまるで知らない。

しかし,やってみたいこと,挑戦してみたいことはあったのだ。

それらに挑まず,弱気のままに甘んずることが,まだ視えぬ自分の夢に繋がるとも到底思えなかった。


にこたちと別れ,海未は家までの道を歩いていた。

今日,大切なことを学んだ,と海未は思った。

そして同時に,決意した。

明日,このことを穂乃果やことり達に話そう,と思った。

疲れていたはずの海未の足は軽かった。

単語帳はかばんの奥底にあった。
32: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:29:08.81 ID:WscA0wRQ0.net
後日の話である。

部室にいたにこと映画についてまた話す機会があった。

海未がこのことを話すと,


「海未ちゃんそんなこと考えてたの? 変なの」


矢澤にこはそう言って海未の話を笑った。

だが,その目は,あの頃の海未の母親より,ずっと暖かい目をしていたということである。
33: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイW 6943-+VFO) 2015/10/31(土) 20:29:38.14 ID:WscA0wRQ0.net
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