真姫「泡沫の雨。」

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1: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:14:44.21 ID:KxAOg6xF0.net
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ざあざあと、雨が降る


今年は、梅雨に入るのが早いらしい


ざあざあと、雨が降る


お気に入りのパンプスの、色が変わる


ざあざあと、雨が降る


傘にかかる雨粒が、行く手を阻む


ざあざあと、雨が降る


まるでそれは、家に帰るのを拒むように






「…メンドクサイ。」

元スレ: 真姫「泡沫の雨。」

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2: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:15:34.14 ID:KxAOg6xF0.net
絶え間ない雨粒が

私の、視界を覆う


「…キライ。」



雨、雨、雨


尽きる事の無い雨に打たれて

私は、家路を急ぐ

明日は、久しぶりのお休みなんだから


濡れて気持ちの悪い、足を運ぶ


激しくなる雨に、嫌気がさす

こんな日は、決まって面倒な事が続く


「…」


ほら、やっぱり


「…おかえりなさい、真姫ちゃん。」


「希…」
3: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:16:10.97 ID:KxAOg6xF0.net
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「…一体、何時間待ってたのよ。」


「えーっと…」


その、頬にそっと手を当てる


「真姫ちゃ…」


「これだけ冷たくなるぐらいには、待っていたんでしょ?」

「まだ、5月なのよ?」


「…」


「…とりあえず、入って。」


玄関の、鍵を開ける


今日も、早くには寝れそうにない



「…お邪魔します。」
4: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:16:40.46 ID:KxAOg6xF0.net
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「ごめんな、真姫ちゃん。」


「…」


「お風呂、湧かしたから。」

「早く入って。」


「…一緒に入る?」


「いいから、ほら。」


少し乱暴に、脱衣所に押し込む


「もう、真姫ちゃんのいけず。」


そんな顔したって、面白い返事は返せそうにない

…私も、疲れてるんだから


「はい、タオル。」




「…ありがと。」
5: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:17:10.73 ID:KxAOg6xF0.net
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希がお風呂に入った事を確認して

どさっと、ソファに座る


「…」


鞄から取り出した、煙草に火をつける


「…げほっ、けほっ。」


吸い込んだ瞬間、むせた

こんな物、なにが美味しいのか


「…なんで、こんなもの。」


机の上に置かれた、真新しい灰皿にそれを押し付ける

残りは、部屋の隅に置かれたゴミ箱へ投げ入れた


「…はあ。」


出て来るまで、もう少しかかりそう

私は、ソファに深く腰掛けた
6: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:17:39.17 ID:KxAOg6xF0.net
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「…ちゃん。」


「真姫ちゃん。」


「…?」


「お風呂、ありがとう。」


「…寝てた?私。」


「うん…少し。」


「…そう。」


深く沈み込んだ身体を、起こす

感じるのは、日々の疲れと気だるさ


「…ごめん。」


何に対しての謝罪か分からない言葉には答えず

立ち上がって、キッチンへ



「…紅茶でいい?」

「これしか無いけど。」


また、買っておかなきゃ
7: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:18:12.80 ID:KxAOg6xF0.net
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「…美味しい。」


「よかった。」


隣に座って、一口それを含む

口の中に広がる、アッサムの香りと

舌に感じる、ほのかな苦み



「…それで、今日はどうしたの?」


聞くつもりなんて、無かった

何も聞かず、お風呂に入って

ベッドに、横になって


…気付いたら、朝になってるはずだった


けど、口から漏れ出たそれを

無かった事にする手段はなくって



「…好きな人に、ふられたんよ。」


やっぱり、面倒な事だった
8: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:18:40.66 ID:KxAOg6xF0.net
「…じゃあ、どうして私の家に?」


「なんとなく。」

「真姫ちゃんなら、受け入れてくれる気がして。」


「断られるとは、思わなかったの?」


「…その時は、その時やん。」


それでも、家に入れてしまう私は

端から見たら、優しく見えるのかしら


「…で、どうしてふられたの?」


「好きな…人がいる、って。」


「それで、諦められるの?」


「諦め…られない。」


「なら、貴女はどうしたいの?」


「もう一度、アタックしてみようかな、って。」


「結果は、目に見えてるのに?」


「それでも…なんよ。」
9: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:19:07.43 ID:KxAOg6xF0.net
「…相手に、迷惑だとは思わないの?」


「迷惑…なんかな?」


「そりゃ…断ったんだから。」


「もう、諦めた方がいいんかな?」


「それを私に聞いて、どうするの?」


「えへへ…言ってみただけ。」


「諦められないの?」


「…うん。」


「そんなに、好きなの?」






「…大好き。」
10: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:19:36.30 ID:KxAOg6xF0.net
「でも、その人にも大好きな人がいるんでしょ?」


「…そうみたい、やね。」


「奪い取るの?」


「ウチには、無理かもしれん。」


「…なら、諦めるの?」


「それも、できないんよ。」



話は、ずっと平行線

時計の針は、躊躇無く進む

カチカチと、止まる事無く


「…呆れた。」


「ふふ、駄目な先輩でごめんな?」


「別に…」

「それに、先輩禁止、なんでしょ?」



「…懐かしい。」
11: 名無しで叶える物語(玉音放送)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:20:01.69 ID:KxAOg6xF0.net
「あの時は、楽しかったね。」

「みんなが、ひとつにまとまって。」

「ラブライブに向けて、努力して…」


「希…」


「…っと、ごめん。」

「真姫ちゃんの服やのに…」


絶賛洗濯中の服の代わりに貸した、私の服

袖口が、塩水で濡れる


「別に…気にしないわ。」


どうせ、この雨なんだし


「ねえ、真姫ちゃん。」


「…何?」


「…少し、寒いね。」
12: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:20:40.77 ID:KxAOg6xF0.net
「…断ったら、どうするつもりなの?」


「その時は、その時。」


「…面倒な人。」


「真姫ちゃんなら、受け入れてくれるかな、って。」


「買いかぶり過ぎ。」


そっと、その手に手を重ねる

少し震える、小さな手


「…まだ、寒い?」


「ううん、大丈夫。」


「そう。」


片手で持っていたティーカップを

そっと、テーブルに置く


カチャ…と、静かな音を立てて
13: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:21:14.10 ID:KxAOg6xF0.net
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「どうせ、今日は泊まっていくんでしょ?」


「…いいの?」


「だいたい、時間見なさいよ。」

「もう、電車のある時間じゃないでしょ?」


「え…もう、そんな時間?」


「本当に、いつから待ってたのよ…」


「えへへ…」


「…」

「冷えて来たわね。」


お風呂は、明日入ればいいか


「ほら、もう寝るわよ?」



「…一緒に、寝ても良い?」
14: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:21:42.47 ID:KxAOg6xF0.net
「駄目。」


「でも…」


「私、お風呂入ってないから。」


「ウチは気にせんよ?」


「私が気にするのよ。」


「…」


「…はあ。」


用意しかけた布団を追いやって

ベッドの、片側に寄る


「…ありがと、真姫ちゃん。」


そうよ

流される…私が悪いんだから




「おやすみなさい。」
15: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/26(月) 01:22:45.67 ID:KxAOg6xF0.net
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「…おはよ、真姫ちゃん。」


「おはよう。」


朝、目が覚める

目の前に、希の顔


「…紅茶、入れるわ。」


今は、これしか家にないから



「…それで、どうするの?」


また、同じ質問


「やっぱり、諦められんから。」

「もう一度、アタックしてみるよ。」


「…断られたら?」


「その時は…その時。」


「そう。」


「…」





「…好きだよ、真姫ちゃん。」



雨は、まだ止まない
26: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:38:22.47 ID:5YtrG0xH0.net
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「ん…」


窓にかかる雨音で目が覚める

ああ、そう言えば二度寝しちゃったっけ


「…」


携帯のランプは、点いてない

希は…ちゃんと、帰れたかしら?



いっそ、気にしないでいられたら楽なのに

どうやら、私にはそれが出来ない


大事な、友達だからなのか


…それとも

単に、嫌われるのが嫌なのか
27: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:38:50.99 ID:5YtrG0xH0.net
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「…もしもし。」

「ピザを、注文したいんですけど…」



軽く部屋の掃除をして

全国チェーンに電話をする


「お金…下ろしてて良かった。」


こんな雨の日に、外出なんてしたくない


久しぶりの休みは、部屋でごろごろすると決めた



「…」


きっと、便りがないのはいい便り


携帯は、まだ動かない
28: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:39:26.09 ID:5YtrG0xH0.net
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「…ありがとう。」


ピザを受け取って、部屋に戻る

私一人しかいない空間に

漂う、ジャンクな香り



テーブルにそれを広げて

グラスを…ひとつ、持ってくる


今日は、お休みだから

ワインでも、飲もうかしら


「…」


目についたボトルに、手を伸ばす


伸ばして---辞めた

その、隣のボトルを手に取る


いつか買った、辛口の赤

そんなに、いいものじゃないけれど…
29: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:39:59.00 ID:5YtrG0xH0.net
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「…ふぁ。」


思っていたより多かったピザを食べきって

いつの間にか、寝ていたみたい


また、雨音で目が覚めた



「…もう、こんな時間。」


せっかくのお休みを満喫できずに

私は、ソファからほとんど動いていない


こんなに眠たくなるのは

日々の疲れなのか


…それとも、別の理由があるからか


「あ…」


すっかり、忘れてた

明日の朝ご飯を、用意していない
30: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:40:56.06 ID:5YtrG0xH0.net
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「…もう。」


行き場の無いやるせなさを感じながら

髪を軽く整えて、服を着る


乾燥機に突っ込んであった

パーカーに袖を通す


お日様の香り、なんて謳い文句の洗剤のくせに

鼻に抜けるのは、雨のにおい


「コンビニで…」


どうせ濡れるんだし

昨日から乾ききっていないパンプスを履いて

玄関の、ドアを開ける


コンビニまでは、およそ10分

…早く、帰ってこよう
31: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:41:26.94 ID:5YtrG0xH0.net
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食パンと、いくつかのお菓子を買って

来た道を、戻る


雨の勢いは、未だ変わらず

冷えた足下に、降り掛かる


…帰ったら、すぐお風呂に入ろう


大通りから、細い道へと出る

等間隔に並ぶ街頭と

等間隔に刻む、パンプスの音


…どこにいても、家の中と変わらないみたい


「明日も…雨かしら。」


いや、きっとそうなんだろう

今年は、梅雨に入るのが早いんだから
32: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:41:56.10 ID:5YtrG0xH0.net
コツコツ、と響く足音と

カサカサ、と揺れるビニールの音

それを飲み込む、続く雨音



もう後少しで、家に着く

あと、少しで…



「…!」


向こうから、人影が見えた

人通りの多くないこの道

時間も…もう、遅いのに


ほんの少し、身構えながら

私は、足を速めた


面倒臭い、事は大嫌い

そんな私が、一番面倒なのかもしれない



「…あ、真姫ちゃん。」


「…こんばんは、希。」
33: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:42:40.46 ID:5YtrG0xH0.net
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「…ごめんな、真姫ちゃん。」

「お邪魔しちゃって。」


「…別に。」


「丁度、仕事の帰りやったんやけど…」


「…」

「…はい、紅茶。」


今日も、これしかないから


「…ありがとう。」

「これ頂いたら、すぐ帰るから。」


「そう。」


ソファに座る、希の背中が小さく震える

クローゼットからブランケットを取り出して


…そっと、背中からかけた
34: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:43:08.82 ID:5YtrG0xH0.net
「あ…ありがと。」

「ちょ、ちょっと寒くって…」


「…何、してたの?」


「さっきも言ったやん?」

「仕事の帰りやって。」


「希の会社、残業ないんじゃなかったの?」


「最近、すっごく忙しくなって来てな?」

「もう、みんなで頑張ってるんよ。」


「だから、あんな時間にあそこにいたの?」


「そうそう、帰る途中で…」



「2駅先の、希の家まで?」


「…」



分かって聞いてる私と

分かってほしくない希を


…また、雨音が包む
35: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:43:36.04 ID:5YtrG0xH0.net
「…ごめん、真姫ちゃん。」

「あの…あのな?」



その顔が、みるみる歪む


…違うの

泣かせたい、訳じゃない


「寂しいんよ…」


それは、知ってる

貴女の気持ちは、何だって



「そんなに寂しいなら、エリーのとこに…」


私は、何を言ってるんだろう


「…ごめん。」


「ううん。」

「真姫ちゃんは、悪くないよ。」


まるで、私が慰められるみたいに
36: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:44:31.68 ID:5YtrG0xH0.net
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「…はい。」


希に差し出す、タオルと部屋着


「え、でも…」


「いいから、受けとって。」


「…」


「勘違い、してほしくはないけれど。」

「私は、貴女と一緒にいる事は出来ない。」

「…貴女とは、付き合えない。」



「でも、希の…そんな姿、見たくないの。」

「だから…その。」

「寂しいときぐらいは、頼っていいから。」


本当に、勘違いしてはいけない

まるで自分を戒める様に

私は、それを口に出す



ここで突き放せないのは

ただ、逃げているだけだと知っていても
37: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:45:08.11 ID:5YtrG0xH0.net
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「…おやすみ、真姫ちゃん。」


「おやすみ。」



今日は、希は何も言わず布団に入った

きっと…



「…」



違う、これは気の迷い

ただ、彼女に流されているだけ



「えっ…真姫ちゃん!?」


そっと、希の布団の中に入る


希の背中は

…少し、お日様の香りがした




「おやすみ。」



「…」
38: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:45:28.54 ID:5YtrG0xH0.net
-----



「…」


昼間、寝てしまったからか

夜中に、目が覚めた


希は…うん、ちゃんと寝てる


蛇口をひねって、水をグラスに

一息に、飲み干す


「…」

グラスをキッチンに置いて

また、寝室の方に戻る


「まき…ちゃ…」


希の目元に浮かぶそれを

…そっと、指ですくいとった


そして、もう一度キッチンの方へ
39: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-A+Eg) 2015/10/27(火) 13:46:18.97 ID:5YtrG0xH0.net
「…」


「…」


『…はい。』


あ、出た


「もしもし?」

「こんな遅くに、ごめんなさい。」


『どうしたの?』


「少し…話があるの。」

「明日、時間あるかしら?」


『…ええ、いいわよ。』


「ありがとう。」

「ごめん、それだけ。」



「おやすみ、エリー。」


『----------』


最後の言葉が聞き取れない程

窓を叩く雨は---勢いを増した
45: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/29(木) 08:30:42.11 ID:fn7sBDaG0.net
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「おはよう、希。」


「あれ、真姫ちゃん…」


あれから、あまり寝付けなかった

いつもよりも、早い時間に目が覚めた私は

少し早めの、朝食の準備をしていた


「ふわ…いいにおい。」


食パンとソーセージ、スクランブルエッグ

サラダには、勿論トマトを添えて


これぐらいなら、私でも作れる様になった


「…ほら、座って?」

「食べるわよ。」


また、紅茶を入れる

これしか、ないけれど…


でも、好きだから
46: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/29(木) 08:31:08.55 ID:fn7sBDaG0.net
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聞こえるのは

雨音と、フォークが食器に当たる音


特に、話したりなんてしない

昨日の事も、含めて


「…どうしたの?」


気付くと、希がこっちを見ていた


「ううん…何でも無い♪」


「…そう。」


また、訪れる沈黙---



「…ねえ、真姫ちゃん。」


「何?」




「真姫ちゃんの好きな人って…誰?」
47: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/29(木) 08:31:39.95 ID:fn7sBDaG0.net
-----



今日も、いつもと変わらない

だけど、少し風は弱まった


しとしとと、雨が降る

クセのある髪の毛が、歪む


しとしとと、雨が降る

蒸れた襟元のボタンを外す


しとしとと、雨が降る

今日も、足下は濡れたまま



雨粒を照らすような、煌めく艶髪

空をそのまま映したような

ほのかな憂いを帯びる、その瞳


…見つけた


「久しぶり、エリー。」


「…久しぶり。」
48: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/29(木) 08:40:13.52 ID:fn7sBDaG0.net
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「…ダージリンティーを。」


「私も、同じ物を。」


「かしこまりました。」


街のはずれのカフェで

エリーと、少しの雑談


…とは言っても

確信に触れるのは、すぐそこに


「…それで、どうしたの?」


込み合う店内で遅れる注文

エリーが少し苛ついて見えるのは


そのせいなのか

それとも…



「あのね---」
49: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/29(木) 08:40:42.66 ID:fn7sBDaG0.net
-----



「---そう。」


カップを置いた音は

耳障りな騒音に消える


だけど彼女の言葉は

はっきりと、聞き取る事が出来た


まるで、耳を塞ぎたくなる程に



「---可哀想。」


それが、誰に対しての言葉なのか

次の彼女の言葉で、理解する



「希を、貴女の逃げ道にしないで。」


「…!」


「貴女のそれは、ただ目を背けてるだけ。」

「自分本位で、身勝手な…」

「ただの、臆病な人間のそれよ。」
50: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/29(木) 08:41:17.56 ID:fn7sBDaG0.net
「待ってエリー、私は…!」


「だったら、希を私に頂戴!!」

「この8年間、ずっと想い続けて来た!」

「希に救われた日から、ずっと!」


「なのに、たった一年しか過ごしていない貴女に負けたの!」

「就職して、会う機会も減った!」

「たまに会えた時だって、貴女の話ばかり!!」

「たまったモンじゃないわ!!」


群衆の視線が、刺さる

見られてる---怖い


「…貴女に分かる?」

「好きな人に会う度、その人の好きな人の話を聞くの。」

「その時の顔が、表情が、一番生き生きしているの。」


「…」


「私は、貴女みたいな人とは違う。」
51: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/29(木) 08:41:47.65 ID:fn7sBDaG0.net
「気持ちが抑えられなくなって。」

「告白して、ふられたの。」

「貴女の事以外、考えられないからって。」


「それでも、希は今まで通り接してくれた。」

「今まで、通り…」



「貴女の話を、一度もしないで。」


「…」


「…分からないでしょう?」

「好きな人に、気を使われる思いなんて。」

「分からないでしょう?」

「その恋敵に、相談される心情なんて。」



「エリー…」



「今すぐ、希から離れて。」

「じゃないと、私もどうするかわからない。」
52: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/29(木) 08:42:24.10 ID:fn7sBDaG0.net
-----


「…」


伝票は…エリーが、持っていった

目の前のカップを、口に運ぶ


冷めてもなお、その香りを引き立たせて---



エリーの言葉に、何も答えられなかった

…きっと、今何を言ったって聞いてはもらえない

それこそ、火に油を注ぐのは目に見えていた


「…」


失敗---か


失敗と言うなら…どこで、道を間違えたんだろうか


「…ッ。」


声を、押し殺す


名前…一度も、呼んでもらえなかったな


聞こえるはずの無い雨音が

頬から落ちて、テーブルに音を立てた
58: 名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/ (JP 0Hb0-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:15:47.97 ID:AdiQdHkTH.net
-----



「…」


しとしとと、雨が降る

一度も、やまない雨が


しとしとと…

雨は、降っているんだろうか



気がつくと、帰り道の公園にいた

…私、いつお店を出たんだっけ?


意味を成さない、傘を立てかけて

濡れたベンチに腰掛ける

びしょ濡れの、私


「…ははっ。」


少しも、寒くなんて無い

雨に打たれて笑う

私は、不審者だ
59: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:16:15.70 ID:AdiQdHkT0.net
「…」


冷たさなんて

これっぽっちも、感じない程に

それ以上に冷たい物が、胸の中に


「…無様ね。」


いや、これがきっと当たり前なんだ


欲に負けて

理性に負けて

流されたのは、私だから


『今すぐ、希から離れて。』


彼女の言葉が、こだまする


「やめてッ…!」


雨の音が、そう言っている様に聞こえて

思わず、両手で耳を塞いだ
60: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:16:52.79 ID:AdiQdHkT0.net
-----



「…ちゃん。」


「…きちゃん。」


「…真姫!」


「っ…!」



どれくらい、時間が経ったのか

塞いだ耳に、声が届いた


おそるおそる、顔を上げる


「一体、どうしたのよ…!?」


今日の私は、本当についてない

いや、これも報いなのか


今、一番会いたくない人に

今、一番見られたくない姿を晒して



雨の中でも揺れる

綺麗な---緑髪


「にこちゃん…」
61: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:17:23.32 ID:AdiQdHkT0.net
-----



「…はい、これ。」


「ありがと…」


ここ最近、やっていた事

ただ、立場が逆で

相手が、にこちゃんだという事


「…やっぱり、にこの服じゃ少し小さいわね。」


そんなことない

そう言いたげに、首を振る


「…とりあえず、これ飲んで。」


差し出された、カップに手を伸ばす


「インスタントで、悪いけど。」


「…ううん。」


口に含んだ、ほろ苦いコーヒー


どこか、懐かしい味がした
62: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:17:56.65 ID:AdiQdHkT0.net
「…それで、一体何があったの?」


「…」


「あんな雨の中、傘もささずに何してたのよ?」


「…」


「そうやって、答えないでいるつもり?」


「何でも…ない。」


「アンタ、それ逆の立場でも言えるの?」


「にこちゃんには…」


関係ない


そう言おうとして、口を閉じる

本当に、身勝手で傲慢だ


「何か…事情でもあるの?」


ほら、鋭い

にこちゃんらしい、その心遣いが


今は---とても、邪魔に思えた
63: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:18:38.99 ID:AdiQdHkT0.net
「…分かったわよ。」

「無理には、聞かないから。」


「真姫ちゃんが、話したくなったら言って。」


本当に、どこまでも優しいんだから


「…でも、約束して。」

「何があったかは分からないけど…」

「もう、あんな事はしないで。」


「…?」


「風邪でも引いたら、どうするつもり?」

「いくら、長い事会ってなかったとは言え…」

「心配するじゃない。」


「…ッ。」


きっとこれも、流されているだけ

何の変哲もない、当たり前の台詞が

こんなに…

こんなに、胸に刺さるなんて
64: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:19:10.50 ID:AdiQdHkT0.net
必死に、両手を握る

胸に当てて、力を入れる


流されちゃ、いけない

甘えちゃ、いけない


私には、どうする事も出来なかった



「…!」

「にこ、ちゃ…」


そっと、後ろから抱きしめられる

何も、知らないのに

こんなに、ずるい私の事も

こんなに、ひどい私の事も

何一つ、知らないのに


その姿は、行動は

あの日から何一つ変わる事無くここにあった


「本当に…何があったかなんて、分からないけど。」

「ずっと、アンタは大事なにこの後輩なんだから。」
65: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:19:52.05 ID:AdiQdHkT0.net
-----



「…本当にいいの?」


「ええ、もう大丈夫。」

「迷惑かけて、ごめんなさい。」


「もう少し、ゆっくりしていっても…」


「…本当に、大丈夫だから。」


これ以上、甘えたくない

受け入れたくなる、自分が出る前に


「…ありがとう、にこちゃん。」


「ねえ、真姫ちゃ…」


「服は、洗って返すから。」

「今日は本当にありがとう。」

「…それじゃあね。」


少し早歩きで、エントランスに降りる

顔を見るのが、見られるのが怖かったから


「真姫…」
66: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:20:20.31 ID:AdiQdHkT0.net
-----



どっぷりと日が落ちて

冷えた空気に、頬が触れる


雨の勢いは少し弱まって

今じゃ、小雨もいいところ


私の家まで、すぐそこだ

帰ったら、すぐに寝よう

また、大きく感じるあのベッドで



街頭に照らされた、玄関の前に立つ

希の姿を見るまでは---そう思ってた



「あ…」


「どうして…」


「えっと、その…」

「ご、ごめんなさい。」


「朝の様子が、少し気になって…」
67: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/10/30(金) 02:21:31.79 ID:AdiQdHkT0.net
希と目が合う度

エリーの言葉を思い出す


「…ッ。」


思わず、目を背けてしまう


どこか腑に落ちないような

疑問を感じた目で、希が私の顔を覗く


「真姫ちゃん…」




「にこっちと、会って来たん?」


「なん、で…」


「…その服。」

「にこっちに、ウチが選んであげた物なんよ♪」



そう言って笑う、希の笑顔と

また降り出した雨の音


その日の---最後の記憶だった
78: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:09:23.73 ID:Xm+IJEPB0.net
-----



「…36.8度。」

「やっと、熱も下がったね。」


あの日

雨に打たれ続けた私は熱を出した


気がつくと、家のベッドで

傍らには、希が


泣きそうな顔と、目が合った



「…ありがとう、希。」


「ううん、気にせんといて♪」


あれから、2日経って

ようやく、熱も下がって来た


「今日は、ちょっと栄養あるもの食べようか。」


そう言って、キッチンへと行く希

あの日の話は、まだ、一度も出ていない
79: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:09:54.59 ID:Xm+IJEPB0.net
「お待たせ、真姫ちゃん。」

「おうどんさん、食べれるかな?」


おかゆばかりの食事に飽きた私の鼻を

ダシの香りが、誘う


「ウチも、一緒に食べるな?」


2人で、椅子に腰掛ける


「…いただきます。」


そっと、うどんを持ち上げて

息をかけて、冷ます


「…んっ。」


口に含むと、ちゅるんと入って

もちもち、ぷっつり、噛み切れる


「美味しい。」


「良かった♪」


そう言って、希も口に運ぶ
80: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:10:34.35 ID:Xm+IJEPB0.net
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「ごちそうさま。」


「お粗末様でした♪」

「片付けるから、真姫ちゃんはゆっくりしてていいよ。」


「…私も手伝うわよ。」


「病み上がりなんやし、座ってて?」


やんわりと断られ

私は、リビングのソファに移動する


テレビを点けると、ニュースがやっていた

まだ、雨は続くらしい


暦は6月に入って

本格的な梅雨が来る



「…どうぞ、真姫ちゃん。」


差し出された、カップには

不釣り合いな、ほうじ茶



「…美味しい。」


身体が、暖まる
81: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:11:19.11 ID:Xm+IJEPB0.net
「…でも、長引かなくてよかった。」


ぽつりと、希が言った


「…本当に、ありがとう。」


今日まで、お世話になってばかりだったから


「…ウチが、したくてしてる事やし。」

「お邪魔じゃ、なかったかな?」


そう言って、えへへと笑う希

あの日から、希の笑顔をよく見る様になった気がする

…何故かは、分からない



「ねえ、のぞ…」


「真姫ちゃん。」


「え…?」


「今週いっぱいは、お休みもらったんやろ?」


「え、ええ…」

「せっかくだし、有給の消化も兼ねて、って。」




「それじゃ、週末にデートいこ?」
82: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:11:46.67 ID:Xm+IJEPB0.net
-----



「お待たせ、真姫ちゃん♪」


「…別に、待ってないわよ。」


「ええー?」

「そこは、今来たとこ、じゃないん?」


けらけらと

…いや、にやにやと笑う、希



「それじゃ、いこっか♪」


傘をまとめて、切符を買う

仕事以外で電車を使うのって、久しぶりかも


他愛無い話をして、目的地へと向かう

本当に、他愛の無い

どこか、見えない壁を感じて


着いた場所は---



水族館
83: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:12:17.35 ID:Xm+IJEPB0.net
-----



「ほらほら、真姫ちゃん!」

「こっちこっち!」


そう言って、小走りで駆け出す希


「もう…時間はたっぷりあるでしょ?」


「だって、せっかく来たんやもん!」

「目一杯、楽しまなきゃ♪」


…それも、そうかしら?


「…ほら、いこっ?」


希の左手に掴まれる

私の、右手


「ちょ、ちょっと…///」


「ほら、まずは巨大水槽!」


まるで、子供と親のカンケイ

子供が出来たら、こんな感じなのかも
84: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:12:41.73 ID:Xm+IJEPB0.net
-----



「真姫ちゃん、カワウソやって!」


元気にはしゃぎ回る希と

その手に引かれる、私


「あ、ラッコさんのえさやりやってる!」


「向こうはアザラシさんもおるよ!」


いつも以上にテンションの高い希を眺めていたら


「…真姫ちゃん?」


「どうしたの、希?」


「もしかして…嫌やった?」


「嫌なら…来ないわよ。」


「…そっか。」


少し寂しそうに笑う、希
85: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:13:09.09 ID:Xm+IJEPB0.net
「…もう。」

「ほら、近くで見るわよ。」


そう言って、希の手を取って前に出る


「え…」


「…せ、せっかく来たんだし。」

「楽しまないと、損でしょ?」


くるくると、髪の毛をいじる


「…うんっ♪」


今だけは、考えたって仕方ない

希に、気を使わせるだけだから


こんなのが、お礼になるかは分からないけど

せめて、希が目一杯笑ってくれたなら


ここ数日の感謝も込めて

そっと、きゅっと、手を握った
86: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:13:50.96 ID:Xm+IJEPB0.net
-----



「わぁ…」


「クラゲね。」


暗いライトに照らされて

小さな部屋に、幻想的な空間


ここだけ、他とは違う雰囲気で

ふわふわと、浮いているクラゲ


「こんなに、種類があるのね…」


大きさも、色も、形も

それぞれバラバラだけど

悠々と泳ぐその姿には

…少し、惹かれる部分があった


「実は、くらげさんって自分で泳ぐ事って出来ないんよ。」


「…そうなの?」


「力が、すっごく弱くてな?」

「泳いでるように見えるけど。」

「実は、海流の流れに乗って漂ってるだけなんよ。」


「…へえ。」


案外、苦労してるのね
87: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/01(日) 02:15:09.89 ID:Xm+IJEPB0.net
「もちろん、全員が泳げない訳じゃないし。」

「危険が迫ったりしたら、泳ぐけどね。」


フォローするように、希が付け加える


「…詳しいのね。」


「ウチ、くらげさん好きなんよ。」


「変わってるわね。」


正直な、感想



「…なんだか、ウチと似てるから。」




「…希?」


「…っ、ああ、ごめんな?」

「そろそろ、ご飯にしよっか♪」



そう言って、また歩き出す希

繋いだ手に、少し力が入るのが分かった
92: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:11:06.89 ID:Wv51dpPH0.net
-----



「すごい…」

「これ、全部希が?」


「うん…えへへ。」

「ちょっと、張り切りすぎちゃって。」


屋内広場のベンチで広げられた

色鮮やかな、お弁当


「でも、希って確か…」


「あ…うん。」

「あんまり、料理は得意じゃないから…」

「美味しくなかったら、ごめんな?」


「そんなこと…」


このお弁当を見て、言える訳がない


「ありがとう、希。」

「いただきます。」


「召し上がれ♪」
93: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:11:50.75 ID:Wv51dpPH0.net
卵焼きを、口に含む

ふわっと、柔らかな抵抗


「…美味しい。」


微かに、甘い香りのする

優しい、希らしい味


「…昔、お母さんが良く作ってくれたんよ。」

「甘い卵焼きが好きだったウチのために。」


「…そうなんだ。」

「でも、これって…」


砂糖の甘さとは、ちょっと違う

なんて言うか、もっと柔らかくて


「ふふ、初めて食べた?」

「その甘み、蜂蜜でつけてあるんよ。」


「風邪を引かない様に、って。」

「元気でいてほしいって。」


「お母さんが…ウチを思って、よく作ってくれた。」
94: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:12:28.98 ID:Wv51dpPH0.net
「希…?」


「ほら、他のも食べてみて?」


希に勧められた、他の具も食べる

どれも、美味しくて


これに自信がないと言われれば

私なんて、どうなるんだろう…



「どれも美味しいわ、希。」

「改めて、ありがとう。」


「ううん、良かった。」

「味見しすぎて、よく分からなくなってたから。」


「ふふっ…希らしい。」


「…あ、やっと笑った。」


「え…?」


「真姫ちゃん、今日はよく難しい顔してたから。」

「楽しく…無かったんかな、って。」



…本当、希には敵わない
95: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:13:52.98 ID:Wv51dpPH0.net
「楽しく…無い訳じゃないの。」


少し、視線が落ちる


「あのね、のぞ…」


「分かってるよ。」


「…?」


「せっかくデートに来たんだから。」

「真姫ちゃんには、もっと笑ってほしい。」


「希…」


「作って来たお弁当で。」

「真姫ちゃんが笑顔になれたなら、ウチは満足なんよ♪」


そう言って、一層笑顔になる、希


「…もう///」


その笑顔が、眩しすぎて

こっちが、恥ずかしくなるぐらいに
96: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:14:40.49 ID:Wv51dpPH0.net
-----



それからの私達は…

もとい、私達のデートは

楽しいと言える時間が過ぎていった


「ほらほら真姫ちゃん、こっち!」


「待ってよ…!」

「魚は逃げないでしょ?」


気付いたら笑顔になっていて


「真姫ちゃん、あ~ん♪」


「のっ、希…///」


今日が雨だって忘れるくらい

時間が経つのを忘れるくらい


遊んで、廻って、笑顔になった


「もう…希ってば。」


繋いだ手は、とても暖かく感じていた
97: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:15:10.63 ID:Wv51dpPH0.net
-----



「あ…もう、こんな時間。」


気付けば、閉園時間が近付いていた


「ほんとやね…気付かんかった。」


それくらい、楽しかったから


「…どうする?希。」


「…」

「最後に、真姫ちゃんの家、寄っても良い?」


「私の家?」

「別にいいけど…」


「ありがと♪」


そう言って、差し出される左手

手を伸ばすのも、慣れてしまった


…また、そのぬくもりを感じたくて
98: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:15:38.45 ID:Wv51dpPH0.net
-----



「…はい、希。」


やっぱり、今日もこれしかない

紅茶と、目の前の希


「ありがと、真姫ちゃん。」


「…お礼を言うのは、こっちよ。」

「今日は、楽しかった。」


「誘ってくれて…ありがとう。」


自然に、溢れた笑み

今日、希がいてくれたから


「…そっか。」

「それなら、良かった♪」


希が、そっと私の左手に触れる

「…」


私も、軽く握り返した
99: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:17:11.04 ID:Wv51dpPH0.net
「…」


希が、軽く深呼吸する


「のぞ…」


私が言いきる前に

希の口が、動いた















「真姫ちゃん、今までありがとう。」
100: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:17:49.54 ID:Wv51dpPH0.net
「え…?」



「今日、デートしてくれて嬉しかった。」

「最初は…やっぱり、唐突すぎて。」

「真姫ちゃんも、楽しめなかったかもだけど…」


「それでも、ご飯を食べてから。」

「真姫ちゃんの、笑顔が見れて。」

「楽しく話して、お魚さんたちを見て。」

「クレープを食べて、2人で笑い合って。」


「…」

「好きな人とのデートって、こうなんかな…って。」


右手が、ずっしりと重くなる

気付けなかった自分に、気付かなかった自分と


「のぞ、み…」


親子なんて物じゃなかった

だって、ずっと希は…




「…ありがとう、真姫ちゃん。」

「今まで迷惑かけて、ごめんな?」
101: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:18:21.36 ID:Wv51dpPH0.net
「…」


口をぱくぱくと、鯉みたいに開ける

何と答えていいのか

何て、言えば良いのか

でも…言わなきゃ


「迷惑、なんかじゃ…」


やっと絞り出した答えは

本当に伝えたい言葉なんかじゃ、なくて



「…ううん、もういいん。」

「今まで、ウチがして来た事。」

「ずるいなあ…って、思ってたから。」


違う


「断れない真姫ちゃんに甘えて。」

「家に来て、一緒に寝て。」

「それが…幸せやと思ってた。」

「ほんの、ひとときの夢でも。」


違う
102: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:18:55.40 ID:Wv51dpPH0.net
「…今まで、甘えてごめんな?」

「今日、デートしてくれて、本当に嬉しかった。」


「本当に楽しくて、笑えて。」

「…諦めたくないと、思えるくらいに。」

「諦める、決心が出来たよ。」


「…」


「…大好きだったよ、真姫ちゃん。」

「今まで…ごめんなさい。」



「待って!」

「待ってよ希、それじゃ…!」


今日のは、そのために


解かれた右手で

希の、手首を掴む


「…離して、真姫ちゃん。」


希の声が冷たく聞こえるのは

きっと、この雨音のせいだと


…自分を、ごまかして
103: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:19:32.93 ID:Wv51dpPH0.net
「…離して、真姫ちゃん。」


今度は、さっきよりもはっきりと


「なんで、こんな急に…」


「急なんかじゃ、ないよ。」

「ずっと…こうしなきゃ、って思ってた。」


「真姫ちゃんに、迷惑かけちゃ駄目って。」

「真姫ちゃんに、甘えたらいけないって。」



「迷惑だって、私が言った!?」



「…迷惑、なんよ。」

「真姫ちゃんといると、決心が鈍る。」


「ウチは…」


「真姫ちゃんにとって都合のいいウチも。」

「ウチにとって都合のいい真姫ちゃんも。」


「そんなの、見たくないから。」
104: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:20:10.75 ID:Wv51dpPH0.net
「…ッ、でも、それでも…!」


分かってる

引き止める事が、彼女を傷つけている事に


分かってる

全てを招いたのが、私だって事



「…離してよ、真姫ちゃん。」


希の言葉に、雨音が混じる


「せっかく…忘れようと思ったのに。」

「楽しい思い出で…終わりたかったのに。」

「泣いてる顔なんて…見られたくなかったのに。」


部屋の中にも、雨が降る


「…ッ。」


瞬間、身体が熱を帯びた


「真姫ちゃんに会えて、良かった。」








「…さよなら。」
105: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-i6Qr) 2015/11/03(火) 12:20:50.95 ID:Wv51dpPH0.net
「…」


今日も、変わらず雨は降る


ざあざあと、ぱらぱらと

しんしんと、ぽたぽたと


部屋に降る雨が落ち着きを取り戻した頃

外を降る雨が、激しさを増した


…まるで、こっちの分まで泣いてくれる様に



後に残ったのは

希の泣き顔の記憶と

お揃いの、クラゲのキーホルダー


『なんで、こんなもの…』


そう言ったあの時の自分を

私は、一生恨むだろう



「希…」


これは、きっと罰なんだ




…この日を境に

希が家に来る事は---無かった
114: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 04:35:05.93 ID:bjiwetOA0.net
-----



「…」


今日も、仕事終わりの疲れた身体に

当たる、水飛沫


家と職場を往復するだけ

家に帰っても、私は1人で

ベッドに入ると、広い空間


本格的な梅雨の月

濡れる傘と、急ぐ2本の足

3日目の夜に、路地を歩く


「…疲れた。」


帰ったら、早くお風呂に入ろう

ワインを開けて、明日の用意をして

冷たいベッドに、飛び込んで


何かが---頭に浮かぶ前に


ぴちゃぴちゃと、傘に当たる雨音が

目の前にも、聞こえた気がした


「…久しぶり、真姫ちゃん。」

「もう、遅いよー!」



「凛…花陽…」
115: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 04:35:43.83 ID:bjiwetOA0.net
-----



「…ふう。」

「なんで、こうなったんかな…」


「…」

「ううん、もう決めた事やし。」


「…帰ろう。」






「希ちゃん?」



「穂乃果ちゃん…」



「今、仕事帰り?」


「うん、そうなんよ。」

「穂乃果ちゃんも?」


「うんっ!」

「希ちゃんは、どうしてここに…?」



「えっと…」
116: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 04:36:08.58 ID:bjiwetOA0.net
「…?」



「別に、何もないよ?」

「単に、ちょっと寄ってみただけ。」


「そうなの?」


「ウチにとってここは…」

「明神さんは、パワースポットなんよ。」

「ここに来れば、元気をもらえる気がして。」


「…じゃあ、何でそんなに寂しそうなの?」


「え…」


「…ね、希ちゃん。」

「これから、時間ある?」


「穂乃果ちゃん?」


「もし、何か嫌な事あったのならさ…」

「思いっきり遊んで、忘れちゃえばいいんだよっ!」
117: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 04:36:38.00 ID:bjiwetOA0.net
「でも…」


「もう…ほらっ!」


「ちょっ…穂乃果ちゃ…!」


「穂乃果の元気、分けてあげるから!」


「そ、そんなに引っ張らなくても…」


「よーしっ!」

「今日は飲むぞー!」

「行こっ、希ちゃん。」



「…もう。」

「穂乃果ちゃんには、敵わんなあ…」


「えへへ~♪」

「それじゃ、駅前にゴー!」





「…ふふっ。」

「早く…忘れんとね。」
118: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 04:37:16.57 ID:bjiwetOA0.net
-----



「…で、一体どうしたの?」


家の前で2人に遭遇した私は

今、2人と個室のある居酒屋に


今日も、早くは寝れないみたい


「どうしたって…ねえ?」

凛が、不思議そうに花陽の顔を見る

少し髪を伸ばしたその顔は

かつての彼女より、大人びて…


「…あのね、にこちゃんから連絡が来て。」

「真姫ちゃん、なんだか元気がないから、って。」


「…そう。」


花陽は、内気な性格は無くなって

目を見て、話せる様になった

人一倍優しいのは、そのままに


まるで成長してないのは…


「…はあ。」

「あのね…」


この2人なら、話しても良いかと思えるのは

かつて重ねた、日々のお陰かしら
119: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 04:37:49.70 ID:bjiwetOA0.net
-----



「そっか…」

「希ちゃんが…」


私を元気にさせるために来てくれた2人の

元気をなくさせる程に私の話は重かったみたい



「本当…最低よね。」

「自分の事ばっかり考えて。」

「希の気持ち、ないがしろにして。」

「大事な事なんて、ひとつも言えずに…」


カラン、とグラスの中の氷が音を立てる


「それに…」


「にゃああああっ!!」


凛が、勢い良く立ち上がる


「真姫ちゃん、馬鹿なのっ!?」


「な…っ!」

「そ、そんなの、分かってるわよ!」


「分かってないよ!」

「そんなに後悔してるなら…」


「なんで、言葉にしないの!?」
120: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 04:38:47.60 ID:bjiwetOA0.net
「凛…?」


「でも…」


凛の強い眼差しに

思わず、目を背ける


「…ほら、凛ちゃんも落ち着いて?」

「凛ちゃんは、直情的だからね。」


「でも…!」


「凛ちゃん…ね?」


「…うん。」


花陽に諭されて、凛が椅子に座る

目は、こちらに向けたまま


「…でもね、真姫ちゃん。」

「私も、凛ちゃんの気持ち、わかるよ?」


「花陽…」


「真姫ちゃんは、ちょっぴり言葉にするのが苦手なだけ。」

「でもそれは、真姫ちゃんの良い所でもあるんだよ?」
121: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 04:39:48.96 ID:bjiwetOA0.net
「え…?」


「確かに、希ちゃんの気持ちを知って。」

「それでも、その歪な関係が続いたのは良くなかったとは思う。」


「最もそれは、希ちゃんも望んだ事で。」

「真姫ちゃんだけが悪いんじゃないよ?」


「でも…!」



「…人の気持ちを否定する事って、怖いよね。」

「嫌われたくない、って思うのは当然だし。」

「目の前に泣いてる人がいたら助けてあげたくもなる。」

「…それが、自分の事を想ってくれてる人なら、尚更。」


「力になってあげたいって…思うのは、間違ってないよ?」



「そんなに…高尚なものなんかじゃない。」

「ただ、嫌われるのが怖かっただけ。」

「希の気持ちから…逃げたの。」



「…なら、どうして最初は断ったの?」
122: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 05:04:56.50 ID:bjiwetOA0.net
「それは、好きな人が…」



「…きっと、普通はね。」

「断る時にそんな正直には言わないの。」

「まして、私達は女同士だから。」

「断る理由なんて、いくらでもあるんだよ?」


「だって、それは…!」


「希ちゃんの為を思って、正直に話す真姫ちゃんは…」

「ちょっぴり馬鹿で、とっても…優しいんだよ?」


「…」


「…嘘をついちゃ駄目だって、思ったんでしょ?」

「向けられた気持ちに、答えなきゃと思ったんでしょ?」


「だから、ちゃんと言葉にした真姫ちゃんは、間違ってない。」


「そんな真姫ちゃんに甘えて、家に来た。」

「ずるいのは…希ちゃんの方だよ?」
123: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 05:05:22.12 ID:bjiwetOA0.net
「花陽…?」


とても、驚いた

まさか、花陽の口からそんな言葉が出るなんて


「真姫ちゃんは、ちゃんと断った。」

「自分の気持ちを、言葉にして。」


「突き放す事が出来なかったのは。」

「嫌われたくなかったんじゃない。」

「これ以上、希ちゃんに傷ついてほしくなかったから。」


「…買いかぶりすぎよ。」

「私は、そんな人間じゃない。」

「身勝手で、自分の事ばかりで…」

「ただ、目を背けてただけ。」

「あの頃から…何も、変わってなんかないの。」



「…うん、真姫ちゃんは変わってないよ。」

「あの頃から、ずっと…」

「誰かの事を想える、優しい人のままだから。」
124: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 05:05:48.83 ID:bjiwetOA0.net
「確かに、真姫ちゃんの言う通り。」

「真姫ちゃんが希ちゃんに甘かったように。」

「私は、真姫ちゃんに甘いのかもしれない。」


「…私は、真姫ちゃんの事、大好きだから。」

「だから…力に、なりたいの。」


「花陽…」


「真姫ちゃんは、逃げてなんかない。」

「だって今、こうして、悩んでるんだから。」

「希ちゃんの事、後悔してるんでしょ?」

「…伝えたい事、伝えられなかったから。」


「…」


「何が間違ってたのか、とか。」

「どうしたら良かった、とか。」

「考えだしたらキリがないよ。」


「もしかしたら、真姫ちゃんと少しの間でも一緒にいられたから。」

「希ちゃんも、何か気付く事が出来たのかもしれない。」

「全てが間違ってた、なんて事はきっとないの。」
125: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 05:06:24.26 ID:bjiwetOA0.net
「もし、間違ってた事があるとすれば…」

「希ちゃんと最後に会った日。」

「…ううん、その前でも。」


「真姫ちゃんが、自分の気持ちを伝えなかった事。」

「思ってる事を、言えなかった事。」



「…それを、ふまえて聞くね?」

「希ちゃんに告白されてから、今日まで。」

「ひとつも、楽しい事はなかった?」

「嬉しいって思える事、なかった?」


「…」


「決して、正しい事じゃなかったかもしれない。」

「でも、そうやって過ごして。」

「希ちゃんの想いにどう向き合うのか。」

「断るにしても、ちゃんと伝えなきゃ。」


「前には…進めないんじゃないかな?」



「花陽…」
126: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 05:07:02.27 ID:bjiwetOA0.net
「…あのね、真姫ちゃん。」

「なんとなく、凛が言いたい事はかよちんが言ってくれたけど。」


「真姫ちゃんが優しいって事、凛も知ってるよ?」

「あの日、かよちんの手を引いて穂乃果ちゃん達の所に連れて行った時から。」

「凛は、真姫ちゃんの事、ずっと凄いと思ってた。」


「真姫ちゃんは、面倒な人なんかじゃ、ないよ。」

「不器用だけど、絶対に人を傷つけたりなんかしない。」

「…だから、希ちゃんは好きになったんだと思う。」


「真姫ちゃんが、自分の評価を下げるのはいつもの事だけど。」

「そんな真姫ちゃんを好きになった、希ちゃんがいるんだよ?」


「…その気持ちとは、ちょっと違うかもしれないけど。」

「凛も、真姫ちゃんの事、大好きだから。」


「凛…」


「真姫ちゃんが、どんな答えを出したって。」

「それが本当の気持ちなら、きっと希ちゃんは受け入れてくれるよ。」

「凛が知ってる希ちゃんは、そんな真姫ちゃんみたいに、優しい人だから。」
127: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 05:07:37.13 ID:bjiwetOA0.net
「凛ちゃんの言う通り、だよ?」


「例え真姫ちゃんがどんな結果を出したって。」

「本気で悩んで出した答えなら、きっとそれは間違ってない。」


「真姫ちゃんが、大好きな人がいる事。」

「希ちゃんも、分かってる。」

「それでも、耐えきれなくなって告白したの。」


「ちゃんと受け止めて、そして、返してあげて?」

「真姫ちゃんの想いを、真姫ちゃんの言葉で。」


「あの日、2人が私の背中を押してくれた様に。」

「あの日、2人で凛ちゃんの背中を押した様に。」

「今度は私達が真姫ちゃんの背中を押す番なの。」


「…私達は、ずっと真姫ちゃんのともだちだよ?」


「えへへっ、そのとーりっ!!」



「花陽…凛…」








「…ありがとう。」
128: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 05:13:31.52 ID:bjiwetOA0.net
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ざあざあと、雨が降る

それでも、気にならないくらいに

私は、2人に力をもらった


ちゃんと、言葉にしよう

もう、後悔なんてしないように

ちゃんと、想いを告げよう

例えそれが、悲しい結果を生んだとしても


…私の、この気持ちを



「さーて、2件目いっくにゃーっ!」


テンションの上がった凛は

言葉遣いが昔に戻る程


…久しぶりに、お酒が美味しく感じられた

にこちゃんにも、今度お礼言わないと


3人で、ほんの少し笑顔になって

商店街を、うろつく


少し歩くと、混雑する駅前の広場にたどり着いた
129: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/06(金) 05:14:12.06 ID:bjiwetOA0.net
「それじゃ、次はどこに行く?」


「もう、良い時間だし…真姫ちゃんにも悪いよ?」


「別に…ちょっとくらいなら、付き合うわよ。」


「やったーっ!」


「ちょっと…!」


凛が、急に飛びついてくる

受け止めたつもりが、人にぶつかった


「ご、ごめんなさ…」


「あれ、凛ちゃん?」


「穂乃果ちゃん!それと…」


「あっ…」


しっかりと繋いだ手が離れる瞬間と

浮かんでいた笑顔が消える刹那は

スローモーションに、目に焼き付いた


「真姫、ちゃん…」



気持ちを、伝える…?






「ふふっ…さよなら。」
135: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:36:14.58 ID:O2lkkiUf0.net
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「…真姫ちゃん。」


2、3、社交的な会話を終えて

私は、その場を後にした


何か、後ろで声が聞こえた気がしたけれど

振り返るのも面倒くさくて


…ただ、あの日来たカフェにたどり着いた


「息、上がってるじゃない。」

「ここまで走って来たの?」


「そうじゃなくて…!」


「とりあえず、座りなさいよ。」

「凛も…紅茶かしら?」


「真姫ちゃんってば!」


「…ほら、みんな見てるじゃない。」

「まずは、座って。」


「…」
136: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:36:48.97 ID:O2lkkiUf0.net
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注がれた、赤い紅茶

ほんのりとたつ、湯気


そこに、レモンスライスを浮かべる

引き立つ香りと、感じる酸味


最近はストレートだったから

たまには、こういうのも悪くはない


…うん、悪くない


「2人とも、砂糖は?」


運ばれて来た、2つの紅茶

そっと、シュガーポットを差し出す


「もう、真姫ちゃ…!」


「ありがとう、真姫ちゃん。」

「頂くね?」


凛の言葉を遮って

花陽が、ひとつ、角砂糖を取る


「…うん、美味しい♪」
137: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:37:24.06 ID:O2lkkiUf0.net
「ちょっと、かよちんまで…」


「…はい、凛ちゃんも。」


「…イタダキマス。」


店内に流れる、ジャズのBGM

ゆっくりと流れる空間で聞こえるのは

カップを持ち上げて、下ろす音


「…今日は、2人ともありがとう。」


「え…?」


「久しぶりに会えて、楽しかったわ。」

「それに…」


「ちょっ、ちょっと待って真姫ちゃん!」


「もう…なによ、凛。」


「何って…いいの?」


「…」
138: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:37:57.39 ID:O2lkkiUf0.net
「…いいも何も。」

「私と希は、そういう関係じゃないし。」


「でも…」


「ふふっ、ありがとう、凛。」


そっと、その頭を撫でる

さらさらと、指を通り抜ける髪の毛


「…」


「確かに…あそこを飛び出して来た事は駄目だったけど。」

「特に、何かが変わる訳じゃないもの。」


「…それに。」


「貴女達が、いてくれたから。」


…私は、ひとりじゃない


「本当に…ありがとう、2人とも。」


2人に、笑いかける
139: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:38:28.85 ID:O2lkkiUf0.net
「真姫ちゃん…決めたの?」


「…ええ、花陽。」

「貴女達の、お陰よ。」


そう…これは、私自身の問題だ


あの光景を目の当たりにして

あの時の、希の顔を見て


…答えは、決まった


いや、最初から決まってた

ただ、そこから目を背けてただけ


2人に、私は力をもらった

前に進むための、力を


全ては、ここで清算しよう


だから今、ちゃんと、声に出して


「…凛、花陽。」


「貴女達と…出会えて、よかった。」



ほら、笑える
140: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:39:00.60 ID:O2lkkiUf0.net
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ざあざあと、今日も雨が降る

窓に映る、変局した景色


「…よし。」


お気に入りのクラシックを流して

今日の、準備をする


グラスを2つ、テーブルに置いて

取り出した、お気に入りのワイン


小さな音で、呼び鈴が鳴る

エプロンを外して、曲を止めて


私は、玄関へと出向いた



「…いらっしゃい。」


「お邪魔…するわね。」


「ええ、入って?」




「…エリー。」
141: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:39:45.61 ID:O2lkkiUf0.net
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「このワイン…」


「覚えてる?」

「就職が決まった時。」

「エリーが、私にプレゼントしてくれたもの。」


「あの時は、少しキザだったかもね。」


「…ふふっ。」

「それでも、嬉しかったのよ?」


「飲まずにとって置いたけれど…」

「ずっと置いておくのもなんだし。」

「せっかくなら、エリーがいるときに、って。」


「…そう。」



「さ、座って?」

「もうすぐ、出来上がるから。」


「ねえ、今日は…」


「いいから。」

「話は、食べ終わってから。」
142: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:40:12.54 ID:O2lkkiUf0.net
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「…美味しい。」


「自分が選んだワインでしょ?」


「それは、そうだけど…」


「本当に、美味しい。」

「ありがとう、エリー。」


「…気に入ってくれたなら、良かったわ。」



「さあ、料理も食べて?」

「みんなみたいに、上手には出来ないけど…」



「そんなことないわ。」

「ありがとう。」


「…うん、美味しい。」



「本当?」

「良かった。」
143: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:40:45.65 ID:O2lkkiUf0.net
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「…聞いたわ、希の事。」

「あの時は…ごめんなさい。」



「謝らないで、エリー。」

「貴女は、ひとつも間違ってなんかなかった。」


「…ただ、私が甘えてただけなの。」



「でも…!」



「ねえ、エリー。」

「どうして、今日は来てくれたの?」

「正直…断られると、思ってた。」



「どうしてって…」



「その気持ちだけで、私は嬉しいの。」

「また、あの時みたいに…」


「μ'sにいたあの頃みたいに、過ごせたら、って。」




やかんの、お湯が沸いた
144: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:41:19.68 ID:O2lkkiUf0.net
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「それは、私も…」



「ありがとう、エリー。」


少し蒸らした茶葉から、香りが引き立つ

ティーポットに入れて、エリーの所へ


「あら、この香り…」


「ふふ、気付いた?」

「これも、エリーに勧められて。」

「気に入って、ずっと買ってるの。」


「…そう。」




「…はい、エリー。」


「ありがとう。」


2人で、紅茶に口を付ける




「「…美味しい。」」
145: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-JTgj) 2015/11/08(日) 00:42:04.50 ID:O2lkkiUf0.net
-----



「今日は、来てくれてありがとう。」


「…どうしたの?急に。」



「私、エリーにもらってばかりだった。」

「こんな面倒な私を、μ'sにとけ込ませてくれたあの日から。」

「ずっと…もらってばかり。」


「いつかね、エリーと、にこちゃんとカフェに行った時。」

「紅茶を飲む姿が、あんまり格好いいから。」

「…憧れて、真似しちゃう事もあった。」

「この紅茶も、そう…」


「もらってばかりで、何も返せてなんかいないのに。」

「また、エリーは私にくれたの。」


「…本当はね?」

「紅茶よりも、コーヒーが好き。」

「それでも、どこか真似したくて。」

「…どこか、繋がっていたくて。」



「こんなに…誰かを想う、気持ちをもらった。」





「…好きよ、エリー。」


「貴女の事が、好き。」
156: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:00:43.73 ID:mks3a9830.net
「ちょっ…ちょっと待って!」

「今まで、そんな事…」


「…」



「いつから…?」



「ずっと…よ。」

「貴女に、手を差し伸べてもらった時から。」

「…ううん。」

「もしかしたら、会ったときから。」


「エリーの事、目で追っている自分がいた。」



「でも、真姫…!」


「…ふふっ。」

「やっと、名前で呼んでくれた。」


「もう…茶化さないで!」
157: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:01:18.18 ID:mks3a9830.net
「ごまかしてた…訳じゃ、ないの。」

「ずっと、伝えたかった。」

「私の事…見てほしかった。」


「エリー達が卒業する時。」

「…そこしか、ないと思った。」


「…」


「覚えてる?」

「卒業祝いに、エリーと食事に行ったときの事。」


「覚えてる?」

「貴女が、どれだけ希を想ってるか教えてくれた時の事。」



「あ…」

「いや、そんなの…」



「あの時、気付いた。」

「ああ…私じゃ、きっと希には勝てないんだろうな、って。」
158: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:01:49.64 ID:mks3a9830.net
「それじゃ、私…」



『…貴女に分かる?』

『好きな人に会う度、その人の好きな人の話を聞くの。』

『その時の顔が、表情が、一番生き生きしているの。』



「私…!」



そっと、エリーの手に手を重ねる


「…聞いて、エリー。」

「悩んでほしい、訳じゃないの。」

「貴女を、困らせたい訳じゃない。」


誰かの辛い顔を見るのは、もうたくさん

笑っててほしい

輝いていてほしい


あの時の、私達の様に


…ただ、前を向いて
159: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:02:26.74 ID:mks3a9830.net
「真姫、私は…!」



「エリーの気持ちは、分かってる。」

「分かってるから、言えなかった。」

「言っちゃ…いけないと思った。」


「でも…違ったの。」



だからこそ

今度はちゃんと、目を合わせて

今度はちゃんと、私の言葉で



伝えたい事を伝えよう



「…貴女の事が、好き。」

「他の誰よりも、一番。」



ただ、声に出して伝えよう

今、前に進む為に
160: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:03:00.75 ID:mks3a9830.net
「真姫…」


エリーの青い瞳が、真っ赤に染まる

泣かせたい、訳じゃなかった

何も言わずに、気付いてほしかった


…単なる、独りよがりだ




「…ごめんなさい。」



雨の音は、私の鼓動にかき消される



「貴女とは…一緒にいられない。」



分かっていた、言葉

聞けずにいた、言葉


…ああ、こんなにも心にくる物なんだ



「…分かってる、エリー。」

「分かってるから…」


きっと、聞く事が出来て嬉しいから

伝える事が出来て、嬉しかったから


この視界が霞むのも…きっと、そう
161: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:03:33.95 ID:mks3a9830.net
「真姫、私は…!」



「大丈夫、エリー。」

「全部…分かってるから。」



今日も、部屋の中に雨は降る

でも…どこか、きっと



「真姫…」



「ふふっ、ごめん。」

「紅茶、冷えちゃったわね。」

「新しいのを…」



「これから…どうするの?」


カチャッと、カップが小さな音を立てる


「いつもと…変わらないわ。」

「今までと同じ様に、起きて、仕事して。」

「そして、ここに帰ってくる。」


「そんな当たり前の日常に、戻るだけよ。」
162: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:04:14.43 ID:mks3a9830.net
「でも…」

「逃げるのは、もう辞める。」


聞けなかったのは

伝える事が出来なかったのは

…相手を、想いやっての事じゃない



怖かった

苦しかった

逃げたかった


そんな気持ちで溢れてた



「一度口に出しちゃえば、こんなに簡単なのにね。」




「…好きよ、エリー。」

「ほら、ちゃんと伝えられる。」


ちゃんと、伝えられるから

前に、進もう

悲しみを乗り越えて

前に、前に---




「…好きだったわ、エリー。」

シンクに、最後の雨が落ちた
163: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:04:56.79 ID:mks3a9830.net
-----



「…何、ボーッと立ってんの?」



「ちょっと…考えてた。」



「…前にも、同じような光景見た事あるんだけど?」



「もしかして…数日前の事かしら?」



「はあ…まったく。」

「アンタもあの子も、ほんとめんどくさいわね。」



「自覚してる分…私の方がマシじゃないかしら?」



「どんぐりの背比べ、ね。」

「ほら、ちょっと家に来なさいよ。」



「ふふっ…お邪魔するわね、にこ。」



「ほら、行くわよ…絵里。」
164: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:05:25.93 ID:mks3a9830.net
-----



「…ふう、サッパリした♪」



「アンタ、いい気なもんね。」



「そう?」

「だって、気持ちよかったんだもの。」



「…それで?」

「何があったの?」



「…言わなきゃ駄目?」



「駄目よ。」

「あの子にも、そう言ってはぐらかされたんだから。」



「ふふっ、らしいわね。」

「…その子に、告白されたわ。」



「…そう。」
165: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:05:53.16 ID:mks3a9830.net
「それで…いいの?」



「良いも何も…私は、ずっと希一筋よ。」

「振り向いてもらえなくても、ずっと。」



「…そう。」



「にここそ、いいの?」



「何が?」



「別に…何とは、言わないけど。」



「私は、アンタ達みたいなお子様とは違うのよ。」



「見た目は、一番お子様だけどね♪」



「ちょっと!!」



「…本当に、いいの?」

「後悔…してない?」
166: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:06:29.34 ID:mks3a9830.net
「後悔…か。」

「そんな物、とっくにしてるわよ。」


「でも、だからこそ私はこうあろうと決めた。」

「いつだって、にこらしい、にことして。」



「…そう。」



「…あの子ね、とってもいい笑顔で笑うの。」

「アンタの話をする度、いつも。」

「その時の顔が、一番輝いてた。」



「あ…」



「何よ?」



「いいえ?」

「私も…同じ事、あの子に言っちゃったから。」

「わかってたんだ…」



「絵里…」
167: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:06:59.57 ID:mks3a9830.net
「さ、飲みましょう、にこ。」



「アンタ、既に酒臭いんだけど?」



「さっきまで、一緒に飲んでたから♪」



「…で、当の本人は?」



「寝ちゃったから、置いて来たの。」

「あ、でも、ちゃんと鍵はポストに入れたから安心して?」



「そんな事聞いてるんじゃないわよ…」



「今なら、夜這いできるわよ♪」



「する訳ないでしょっ!?」



「ふふっ…意気地なし。」



「アンタもね…」
168: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:07:32.60 ID:mks3a9830.net
「…本当に、いいの?にこ。」



「…言ったでしょ。」

「私は、こうあるべきだ、って。」



「我慢…してるんじゃないの?」



「もう…慣れたわ。」



「…」



「あの子には、ずっと笑っていてほしい。」

「どんな事があっても、ずっと。」


「例えそれがにこのそばじゃなくたって。」

「…あの子が、笑えていればいいの。」

「あの…笑顔で。」



「…そう。」
169: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-CXd0) 2015/11/14(土) 00:08:07.26 ID:mks3a9830.net
「…それじゃ、何か作って来るわ。」



「美味しいのよろしく、にこ♪」



「にこの料理は全部美味しいわよ!」



「ふふっ…分かってる。」



「それじゃ、ちょっと待ってて。」



「ええ、勿論♪」








「…ふふっ。」

「こんなに、みんなから想われてる貴女を。」

「嫌いに…なれる訳、ないじゃない。」



「…あ、良いにおい。」







「ありがとう…真姫。」
179: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:31:44.46 ID:29Owdbo40HAPPY.net
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「今日も雨…か。」


天気予報なんてあてにならない

降水確率30パーセント

予報に反して、今日も雨は降る


「えっと…あ、もうこんな時間。」


軽く準備を済ませて

ポーチを、肩にぶら下げて


「…行ってきます。」


誰もいない、部屋に告げる


鍵を鞄にしまい込んで

玄関から傘を取って


今日も、ただ、雨の中へ
180: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:32:27.61 ID:29Owdbo40HAPPY.net
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風のない道を、歩く

この調子だと、夜には止むかもしれない


ちょっとだけ高いヒールを履いて

七分丈のパンツを履いて

手には、不釣り合いな白い紙袋



「早かった…な。」


そっと、夜空を見上げる

綺麗とは言えない雲が広がっていた


「…でも。」


明けない夜が無い様に

晴れない雲が無い様に

上がることの無い雨は無い


そっと、耳を澄ませてみる


私は…雨が嫌い---だった



さっきしまった、鍵を差し込んで---
181: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:33:01.03 ID:29Owdbo40HAPPY.net
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「せーのっ!!」



「「希ちゃん!」」

「「お誕生日おめでとう!!」」



「ふふっ…みんな、ありがとう。」



暗い空なんて気にもせずに

明るく祝う、今日だけの日


かつての顔ぶれが集まって

ひとつのお店を、貸切って



「「いただきまーす!!」」


並べられた料理と

色とりどりのお酒

そして、みんなの笑顔


忙しい中、それでも全員揃うのは

…彼女の、人徳とも言えるものなのか
182: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:33:55.56 ID:29Owdbo40HAPPY.net
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「…おや?」

「真姫は、飲まないのですか?」


日本酒を片手に、海未が尋ねる

相変わらず、その姿は様になっている


「…ええ、今日はいいわ。」

「明日も仕事だし。」


「ホンット、仕事人間ね…」


呆れた顔して、にこちゃんも加わる


「もう…なんだっていいでしょ?」


あの日の事を口にしないのは

にこちゃんらしいと思う


「…それじゃ、真姫ちゃん。」

「はい♪」


「…ありがと、ことり。」


アラカルトに盛られたお皿を、受け取る

私の、好きな物ばかり
183: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:34:26.16 ID:29Owdbo40HAPPY.net
「…ん、美味しい。」


「当たり前だよっ!」

「何たって、凛とかよちんが決めたお店だもん!」


「えへへ…」

「気に入ってくれたなら、嬉しいな♪」



「ええ、とても美味しいわ。」

「ありがとう、2人とも。」


「「うんっ♪」」


2人の目を見て、口にする

その笑顔を見て、頬が少し緩む



「…ほら、穂乃果もどう?」


「えっ…」

「えっと…」


「…はい、これ。」

「早くしないと、無くなっちゃうわよ?」


「真姫ちゃん…」


そっと、穂乃果の口元にそれを運ぶ
184: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:35:08.74 ID:29Owdbo40HAPPY.net
「…早くしてよ。」

「私も、恥ずかしいんだから…///」



「あっ、えっと、その…」

「いただきますっ!」



「…どう?」



「すっごく美味しい。」

「…ありがとう、真姫ちゃん。」


「…別に。」


きっと、今、言葉はいらない


「…真姫、私にももらえる?」


「…もう。」

「はい、エリー。」


「んっ…ほんとに美味しいわね。」

「ありがとう、真姫。」



「どういたしまして。」
185: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:35:33.84 ID:29Owdbo40HAPPY.net
-----



みんなの近況を聞いて

かつての舞台に想いを馳せて


そして、未来の話をして



楽しい時間が過ぎるとともに

終わりの時間が、近付く


食べて、飲んで、話して、笑って


過ぎ行く時間を心に刻んで


彼女に渡した、プレゼント



「…はい、希。」


「ありがとう、真姫ちゃん。」


今、彼女はどんな気持ちなんだろう

悟らせるなんて事はしないで

ただ、その気持ちを胸に秘めて



…ああ、私もこうだったんだ
186: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:36:44.52 ID:29Owdbo40HAPPY.net
-----




「ふふ~ん♪」

「もう飲めないよ~…」


「もう…穂乃果、しっかりしてください!」


「えへへ、海未ちゅわぁ~ん…」


「あはは…穂乃果ちゃん、見事に酔っちゃったね♪」


「もう、置いて帰りますよ!?」


潰れてしまった穂乃果を皮切りに

パーティは、お開きとなった


「それじゃ、帰りましょうか、希。」


「うん、そうやね。」


「ねえ、せっかくだし、久しぶりに…」




「…待って、エリー。」


「真姫…ちゃん?」


「…」
187: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:37:16.52 ID:29Owdbo40HAPPY.net
「…話が、あるの。」


「…そう。」


少しの沈黙と

それに耐えられなくなった希が、声を出す


「あっ、じゃ、じゃあ、ウチは行くな?」


「…待って、希。」

「貴女に…話があるの。」



「えっ…?」



「…どうして、私に聞くのかしら?」


「なんとなく…よ。」



「…いいわ。」


エリーが、近寄ってくる

私の肩に手を置いて

香る、シャンプーのにおい



「-----」
188: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:38:33.22 ID:29Owdbo40HAPPY.net
-----




「これ…真姫ちゃんの?」



「ええ、そうよ。」



雨の中でも良く分かる

赤い、赤い自動車


就職祝いにとパパがくれた

必要ないし分不相応な

わずらわしく感じてたこの車


そっと私は、鍵を差し込む

今日は、少しだけ、あってよかったと思った



「…乗って、希。」

「濡れるわよ?」



「…うん。」

「お邪魔…します。」



ヘッドライトをつけて

そっと、静かに、走り出した
189: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:39:08.67 ID:29Owdbo40HAPPY.net
-----



「…」


私は、雨が嫌いだった


傘に、降り注ぐ雨音も

窓に打ち付ける雨音も

身体にかかる、雨音も


全てが、同じだった


聞きたい音を遮って

酷く無音な空間が私を包む


…そんな雨が、嫌いだった



「…」


でも、そうじゃなかった


ざあざあと、ばしゃばしゃと

ぱらぱらと、ぽつぽつと

空から落ちる雨音が

たくさんの音を、奏でる


耳を塞いでいたのは

ただ、私の心だった



世界は---こんなにも音で溢れてる
190: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:39:39.98 ID:29Owdbo40HAPPY.net
-----



フロントガラスにかかる雨音が

静寂を奏で始めた頃

そっと、隣から音がした



「…ねえ、真姫ちゃん。」

「今日は…どうして?」



「…」


私は、それには答えない


「あのね…希。」

「貴女に、ひとつだけ聞いておきたかったの。」



「え…?」



「エリーから、少しだけ聞いた。」

「でも、貴女の口から、ちゃんと聞きたい。」



「貴女にとっての、クラゲって何?」

「どうして…似ていると、思ったの?」
191: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:40:12.51 ID:29Owdbo40HAPPY.net
-----




「…よかったの?」



「何が?」



「希の事よ。」



「…まあ、ね。」

「にここそ、良かったの?」



「…私も、アンタと同じ気持ちなのかもね。」



「きっと…そんな大層なものじゃないわ。」

「それに、傷ついた希を受け止める、って役目もあるしね。」



「…ま、それが本心かどうかなんて知らないけど。」



「ねえ、にこ…」



「それじゃ、にこも帰って支度しようかしら。」

「真姫ちゃんの胃袋を掴める料理を…ね。」
192: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (HappyBirthday! b0a6-bTf7) 2015/11/20(金) 01:41:21.65 ID:29Owdbo40HAPPY.net
「あら、それじゃ、その料理の味見役が必要じゃない?」



「…何言ってんのよ。」

「食べてくれるのは真姫ちゃん一人で十分よ。」



「でも、作りすぎちゃったら勿体ないじゃない?」



「…要するに、食べ足り無いんでしょ?」



「勿論、お酒もね♪」



「はあ…まったく。」



「それじゃ、行きましょうか♪」



「はいはい、何処かで、タクシーでも拾わないとね。」



「「…」」




「…ありがとう、にこ。」


「…お互い様よ。」
201: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-bTf7) 2015/11/24(火) 12:40:10.16 ID:PlDo6AX50.net
-----



「くらげ…?」



「ずっと、気になってたの。」

「希と、最後に会った…あの日。」

「貴女と、デートした日。」


「どうして…あの時、あんな顔をしたのか。」



「…別に、大した意味なんて無いよ?」


そう言って、あはは、と乾いた笑いを浮かべる



「…嘘。」


「…」


「今のは、嘘…でしょ?」


「ふふ、嘘なんかと違うよ。」

「ウチはただ…」



「…希。」

「貴女の…気持ちが、心が知りたいの。」
202: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-bTf7) 2015/11/24(火) 12:40:47.17 ID:PlDo6AX50.net
「…本当に、大した意味なんてないんよ。」

「ただ…似てると、思っただけ。」


「似てる…?」


ワイパーの速度を落として

彼女の言葉に、耳を傾ける


「…ウチな。」

「μ'sに入る事が出来て、これ以上無いってくらい、嬉しかった。」

「今まで、転校ばっかりして来たウチに出来た。」

「これ以上無いってくらい…最高の居場所。」


「ウチ一人じゃ、たどり着けないって思うくらい。」

「最高の仲間がいて、ともだちができて。」



「すごく…すっごく、楽しかった。」

「こんなウチでも…いて、いいんだって思えるくらい。」
203: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-bTf7) 2015/11/24(火) 12:41:22.34 ID:PlDo6AX50.net
「…」



「ウチな?みんなの事が、大好きなんよ。」



「いつも元気にみんなを引っ張っていく、穂乃果ちゃんが。」

「真面目だけど、ちょっぴり乙女な海未ちゃんが。」

「可愛い声で、笑顔でみんなを癒してくれることりちゃんが。」



「元気いっぱいで、でも誰よりも可愛い凛ちゃんが。」

「みんなの事を誰よりも考えてる、優しい花陽ちゃんが。」



「不器用だけど、いつも誰かの為に動くえりちが。」

「ちょっぴり馬鹿だけど、みんなと真剣に向き合える、にこっちが。」


「本当に…」

「出会えた日から、ずっと大好き。」



「そして…」



「…ううん。」

「この話は、やめよっか。」
204: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-bTf7) 2015/11/24(火) 12:41:53.09 ID:PlDo6AX50.net
「…そんな、みんなと仲良くなる事が出来て。」

「最高の思い出を作る事が出来た。」


「音ノ木坂を卒業しても。」

「出来た絆が綻びる事は無くって。」

「今でも…みんなと一緒にいられる。」


「それが…幸せ、だった。」



「…だった?」



「…」


「とっても、幸せで。」

「日が経つに連れて、みんな大人っぽくなって。」

「良い方向に、みんな変わってるのが見れた。」


「…ウチは、あの時のまま。」

「自分では、何も出来なくて…」

「誰かに、手を引っ張ってもらってばかり。」



「だから…似てるな、って。」
205: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-bTf7) 2015/11/24(火) 12:42:32.46 ID:PlDo6AX50.net
「自分ひとりじゃ、何も出来なかった。」

「楽しそうな人達を見てるだけで。」

「そこに、飛び込もうとすらしていなかった。」


「…そんなウチに、手を差し伸べてくれたみんながいた。」

「憧れるだけしか出来なかったウチに。」

「ここにいていいんだよ、って。」

「一緒に笑ってくれる仲間が出来た。」


「本当に…本当に、嬉しくて…」

「初めて、一人で寝るのが、寂しくなくなったんよ。」



「希…」


「自分じゃ何も出来なかったウチに手を差し伸べてくれた事。」

「いつだって笑顔になれるこの場所に入れてくれた事。」

「そのどれもが、ウチを幸せにしてくれた。」


「そんな、ウチに手を差し伸べてくれたみんなが眩しすぎて…」
206: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-bTf7) 2015/11/24(火) 12:43:07.43 ID:PlDo6AX50.net
「まるで、みんながウチを照らしてくれる。」

「あの、まあるいお月さんみたいに見えたんよ。」


「μ'sのみんなみたいに。」

「何かひとつでも輝く物があって。」

「個性があって、想いがあって。」

「…そんな人に、ウチは憧れてた。」


「でも、それは夢のお話で。」

「ウチには…何も、誇れるような物が無かった。」


「μ'sが結成してすぐに。」

「えりちと、にこっちと水族館に行く事があったんよ。」

「そこで、くらげさんを見て、思った。」



「自分の力じゃ、浮き上がる事も出来なくって。」

「誰かに力を貸してもらわんと、満足に泳ぐ事もできない。」

「そんな、儚いいのちに、シンパシーを感じてしまって。」


「…ウチと、似ているな、って。」
207: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-bTf7) 2015/11/24(火) 12:44:00.18 ID:PlDo6AX50.net
「自分には、何もない。」

「そんな事は、自分がよく分かってる。」

「だからこそ、自分を持ってるみんなが羨ましくて。」

「まるで、お月さんみたいに、輝いて見えるんよ。」



「そんなみんなを下から眺めて憧れるだけのウチは。」

「自分じゃ何にも出来なくって。」

「ただ、憧れて月を模すだけの海月でしかない。」


「憧れて、手を伸ばそうとした事もあった。」

「でも、その手は届く事なんか無くって。」

「…もっと、みんなは輝きだした。」



「伸ばした手が届くのは、冷たい水面でしかなくて。」

「一生かかっても届く事の無い月に身を似せて。」

「ただ、今いる場所で藻掻くだけの存在で。」



「だから…ウチは、似てるんよ。」

「だから、きっと好きなんやと思う。」


「こんな事言ったら、くらげさんに失礼やけどね♪」






「ただの…一方的な想いだから。」
208: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-bTf7) 2015/11/24(火) 12:45:33.87 ID:PlDo6AX50.net
「のぞ…!」


後ろから、クラクションが鳴らされる

いつの間にか変わっていた信号に

私は、急いでアクセルに足を伸ばす



「そもそも…」

「こんな想いを抱く事が、烏滸がましいんよ…きっと。」



ぽつりと聞こえる、希の声

それは、好きな物に対してなのか

それとも好きな人に対してなのか


フロントガラスに降り立った雨粒が

風に流されて弧を描く



降り注ぐ雨音はいつの間にか消えて

車内に流れるBGMは

いつの日か私の家で聞いた事のある


聞きたくなかった雨音に変わっていた---
219: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:40:32.34 ID:00A3BfHB0.net
-----


車内に降る雨がやみ始めた頃

車は、人気の少ない道に入る


いつか、来ようと思っていた場所

私の頭に浮かぶ、『誰か』と



「…もうすぐよ。」


暗闇で覆われた路面を

私の車のヘッドライトが照らす


「…私ね。」

「希に、伝えていなかった…」


「…ううん。」

「隠していた事が、あるの。」


「隠してた事…?」
220: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:41:50.67 ID:00A3BfHB0.net
「…私の、好きな人の事。」


「…」



「私が好きな人は、エリー。」


「…!」

「そ、そっか、ウチてっきり、にこ…」



「この言い方だと、語弊があるわね。」

「私が…私の、好きな人は。」


「エリー…だったわ。」


「だった…?」


「…」


「…着いた。」


「ここって…」
221: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:42:14.44 ID:00A3BfHB0.net
-----



「こっちよ。」


「真姫ちゃん、ここって…」


「うちの、別荘よ。」

「もう…何年も来てなかったけどね。」


車を停めて、外に出る

傘は…無くても大丈夫


別荘をぐるりと一周して

裏手へと、廻る



「湖…?」


「小さいけどね。」


微かに聞こえる、せせらぎの音

音のする方へ、足を運ぶ
222: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:42:39.27 ID:00A3BfHB0.net
「…ねえ、希。」

「貴女の目に、今の私はどう映ってる?」


そっと、その場にしゃがみこんで

水面を、覗き込む


暗く漂うレンズには

曇った顔の、彼女がいた


「ウチは…もう、忘れるって決めたんよ。」


「全てを忘れて、リセットして。」

「また、歩き出そうって。」

「辛くても、悲しくても。」

「それでも…前に。」


「…」


「そう…決めたはずなのに。」



「…ずるいよ、真姫ちゃん。」



「…」
223: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:43:07.33 ID:00A3BfHB0.net
「ずっと…」

「ずっと、想い続けて来た。」


「会えない日が、続いたって。」

「何年経っても、変わらずに。」


「ずっと、好きだった。」



「届けられない気持ちを持って。」

「伝えられない想いを胸にして。」


「それでも耐えられなくなって。」


「だから、想いを伝えたんよ。」



「好きな人がいるって知っても。」

「諦められなかった。」

「可能性が無いと分かっても。」

「この想いは、変わらなかった。」
224: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:43:36.14 ID:00A3BfHB0.net
「ウチのこの気持ちが、重いのは知ってる!」

「それでも、真姫ちゃんは受け入れてくれた!」

「決して拒んだりしなかった!」



「…その優しさにつけ込んだのが、ウチ。」

「一緒にいれて、幸せやった。」

「手を繋いだら、あたたかかった。」

「抱きしめたら、切なくなった。」



「…だから、終わりにしなきゃと思った。」

「真姫ちゃんに、迷惑かけるだけだから。」

「そんな自分を、見たくなかったんよ。」


「だから、あのデートで終わりにしようと思った!」

「大好きだからこそ…憧れたからこそ!」

「そんな真姫ちゃんをこれ以上見たくなかった!」



「なのに…なのに!!」




「ずるいよ…」
225: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:44:07.00 ID:00A3BfHB0.net
「…私ね。」

「ずっと…エリーの事、目で追ってたの。」


「自分の気持ちに気付いたときから、ずっと。」

「ずっと…目で、追っているうちに。」

「いつのまにか、憧れてる自分がいた。」


「…大好きなエリーが、大好きな希に。」



「え…?」



「いつだって、悩んだときはそばにいて。」

「答えをくれなくても、陰で支えて。」

「いつも、どんなときでも、誰かの為に。」


「そんな貴女が、羨ましかった。」

「そんな貴女が、妬ましかった。」



「…だって。」

「そんな貴女だから、エリーは好きになったの。」



「貴女に…敵うはずなんてなかった。」
226: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:44:42.84 ID:00A3BfHB0.net
「真姫ちゃん…?」



「私は…月なんて、大層な物じゃないわ。」

「自分をそんな風に思った事なんて一度も無いし。」

「でも…そうね。」


「希が、自分の事を海月だと言うのなら。」

「私は、月で良いのかもしれない。」


「太陽みたいな穂乃果が、私を照らしてくれたから。」

「そばで一緒に輝いてくれる、みんながいたから。」

「そして…」


「そんな私に憧れてくれた、希がいたから。」



「月も、一人じゃ決して輝けないの。」

「照らしてくれる存在がいて。」

「輝いてくれる存在がいて。」

「見上げてくれる存在がいないと…ただの、空に浮かぶ大きな岩。」
227: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ b0a6-Gn63) 2015/12/03(木) 12:47:33.75 ID:00A3BfHB0.net
「だから…きっと、月も憧れたの。」

「自分じゃ、見下ろす事しか出来ないから。」


「憧れられたって、決して届く事の無い存在だから。」


「…羨ましいのよ。」

「水面に浮かぶ、自分と同じ姿をした存在が。」

「憧れてるの。」

「手を伸ばせば、届く存在に。」


そっと伸ばした右手に

雲の切れ間から光が差す


あの…頭上に浮かぶ存在が照らす

「…こうして雲が切れないと、見る事も出来ないのにね。」


「…」

「希の目に映る私が、まだ月として輝いているなら。」

「私は今日、貴女に伝えなくちゃいけない事がある。」


「だから…教えて?希。」

「貴女の瞳に、私はどう映ってるの?」


そっと、後ろを振り返る

立ち上がって、目の前に


「教えて?小さなクラゲさん。」


「ウチは…」
237: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 01:58:01.46 ID:XtLqdl2a0.net
月明かりが、私の顔を照らす

眩しいとさえ、感じる程に

希の顔は…見えない


「…」


雲が、だんだんと途切れて

降り注ぐ光が、彼女の顔を照らした時


「…希?」


その顔に、一筋の光が見えた



「ほんとに…ずるいよ、真姫ちゃん。」


その涙は、悲しみからなのか

その上がった口角は、何を表すのか


「…分かってるくせに。」


そう言って、空を見る希


「…」


向き合った瞳に、私の顔が、映る



「…大好きだよ、真姫ちゃん。」
238: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 01:58:28.94 ID:XtLqdl2a0.net
「…」


ああ、やっぱり希は希なんだ


「ずっと、想い続けて来たんだもん。」

「真姫ちゃんと出会って、好きになって。」

「どれだけの月日が、流れても…」



「ウチの目に映るのは、真姫ちゃんだけ。」

「忘れようと思っても、浮かんで来て。」

「空を見る度に、月を見る度に。」

「…その笑顔が、浮かぶんよ。」



「例え真姫ちゃんがそう思わなくても…」

「ウチにとっての真姫ちゃんは、眩しいお月さんなんよ。」


「ずっと…ずっと、想ってた。」

「やっと、向き合う事ができた。」




「…大好き。」
239: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 01:58:55.09 ID:XtLqdl2a0.net
「…ふふっ。」


「真姫ちゃん?」


意思に反して、笑顔が溢れた

鏡があるなら、見せてあげたい


私の目に映るその笑顔は

頭上にあるそれの、何倍も…輝いて見えたから



「…ありがとう、希。」


きっと、変わる事は無いのだろう

ならば、私の答えはひとつ


あの時、分かった

そして、気付いたから


ちゃんと、口に出そう

ぐちゃぐちゃでもいい

まとまってなくてもいい

頭にある想いを、束ねて、声にして


ただ、ただ、目の前の貴女に
240: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 01:59:22.28 ID:XtLqdl2a0.net
「私は、その想いに応えられない。」


何かが、壊れる音が聞こえた


「っ…そ、そうやんね。」

「ずっと…言われてたもんね。」


目の前の月は、輝きを失う


「…ありがとう、真姫ちゃん。」

「ちゃんと…答えてくれて。」


小刻みに震えるその両手と

瞼に溢れ出す---雨



「私は…エリーが、好きだった。」

「告白して、ふられて。」

「自分の想いを、整理しようとした。」



「上手く…いかないものね。」


その想いを忘れようとする度に

よみがえる、笑顔



「大好き…だったのよ。」


本当に…大好き---だった
241: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 01:59:49.59 ID:XtLqdl2a0.net
「そんな届かない想いを。」

「一時だけ…忘れる事が、出来たの。」


「その一途な想いが…」

「私の想いを、溶かしたの。」


そっと、その手を取る


「…あたたかい。」


そのあたたかさは…ずっと

変わる事無く、ここにあったから


「…あの日、繋いだ右手のあたたかさで。」

「ずっと降ってた雨が、止んだの。」


「あの日、離れた左手を見て。」

「また…雨は、降りだした。」




…そして、その手に勇気をもらったから
242: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:00:14.79 ID:XtLqdl2a0.net
「貴女の想いに、応える事は出来ない。」



「…まだ、今は。」


重ねた手を、強く握る



ありえないくらい、都合がよくて

ありえないくらい、面倒くさくて


それでも、あの時確かに感じた



「…やっと、届いたから。」


心の何処かで、憧れていた存在に



「…教えて?希。」

「私の、本当の気持ちを知る為に。」


教えて?

「貴女の想いに、応える為に。」


教えて?



「…貴女を、好きになると言う事を。」
243: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:11:41.41 ID:XtLqdl2a0.net
「真姫ちゃ…?」




「最初は、面倒だと思った。」

「次に、申し訳ないと思った。」


貴女の気持ちの、上辺だけを知って


「心が、弾んだの。」

…あの日、貴女に手を取られて


「応えたいと、思ったの。」

…すぐに離れた、その手を見て


「また…手を、繋ぎたいと思った。」

あの、心に残るあたたかさを感じたくて



「都合がいいのは分かってる。」

「面倒くさいのも分かってる。」


「でも…もう嫌なの!」

「希の泣き顔を見るのは!」

「希の辛い顔を見るのは!」




「希の事…好きになりたいの…!」
244: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:12:17.30 ID:XtLqdl2a0.net
頬に流れる、あたたかな雨

止んだと思ったそれは

まだ…降り続いて


「…っ。」


不意に香る、お日様の香りと

少しの、お酒のにおい


「真姫ちゃんの…ばか。」

「ずっと…ずっと、大好きなんだから。」



「のぞ、み…」



「後悔しても…知らんよ?」

「ウチがいないと駄目なくらい。」

「ウチの事…好きになってもらうから。」



「…」



「いつか…いつか、聞きたいから。」

「真姫ちゃんの、『大好き』って言葉。」



「大好き、真姫ちゃん。」



「うん…っ。」
245: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:12:42.94 ID:XtLqdl2a0.net
-----




「…電話?」


「ええ…」


「誰から?」


「…」



「…はい。」


『もしもし…エリー?』


「ええ。」


『その…』


「…希の事、よろしくね。」


『えっ?』


「何となく…そんな気が、したから。」


『…そう。』


「もう…泣かせたら、許さないから。」


『…うん。』
246: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:13:42.16 ID:XtLqdl2a0.net
「ちゃんと、家まで送ってあげてね?」


『…ええ。』


「…」


『ねえ、エリー。』


「何?」


『そこに…にこちゃん、いる?』


「…今、代わるわ。」



「はい、にこ。」


「ええっ!?なんでにこ…」


「いいから、ほら。」


「もう…」




「もしもし?」


『にこちゃん?』
247: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:14:18.43 ID:XtLqdl2a0.net
「アンタ、明日も仕事なんだから早く…」



『…ありがとう、にこちゃん。』


「…!」


『それと…ごめんなさい。』


「…」


『…にこちゃん?』


「何の事か分からないニコ♪」

「それじゃあ、絵里ちゃんに代わるね~☆」



「ちょっとにこ…!」



「…っ。」

「ごめん、ちょっと無理…」



「もう…」


「もしもし?真姫?」





『…えりち?』
248: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:14:53.14 ID:XtLqdl2a0.net
「希…」


『あの…あのな?』


「…よかったじゃない、希。」


『っ…えりち…』


「これで私も…」


『えりち、あのなっ!』


「…?」


『色々、謝りたいし、お礼も言いたいし、ごちゃごちゃだけど…』

『その…』


『えりちの気持ちに、応えられなくてごめんなさい。』

『でも…ウチにとってえりちは、今までで一番の親友なんよ。』


『だから…だから…っ。』

『これからも…親友でいても…いい?』





「っ…当たり前じゃない!」


「いつだってどんなときだって…」

「貴女は、私の最初で最高の親友なんだからっ!」



『ありがとう…えりち。』

『ウチは…』





「これからもよろしくね…希。」
249: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:15:41.28 ID:XtLqdl2a0.net
-----



「「はあ…」」



「何よ、ため息なんかついて。」


「にこだって…」



「せーっかく作った料理、無駄になっちゃったじゃない。」

「こんな事なら…っ!」


「ふふっ。」

「もう…にこったら…っ。」



「もう…アンタまで泣いてどうすんのよ!」


「だって…っ!」


「…」



「あの子…ちゃんと、知ってたんだ。」


「本当…最後に、やられたわね。」





「「…ありがとう、真姫。」」
250: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:16:06.70 ID:XtLqdl2a0.net
-----



「…伝えられた?」


「うん…きっと。」

「でも、伝わってなくても…」

「これから、いつでも話せるから。」


「…そう。」


「あの、真姫ちゃ…」


「行きましょ、希。」


そっと、その左手を取る


「…うん。」



「あ、そうだ…」

「はい、希。」


そう言って、鞄から白い包みを取り出す


「これって…」


「開けてみて?」
251: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:16:43.27 ID:XtLqdl2a0.net
「…綺麗。」

「月の…ピアス。」


「誕生日おめでとう、希。」


「真姫ちゃん…」



きっと、この先も雨は降るだろう

いつだって、何度でも

それでも、止まない雨は無いから


雨が上がったら、また顔を出して

貴女に、そっと手を伸ばそう

雨で見えなくなったとしても

…隣には、貴女がいる

手を伸ばせば、すぐそばに


「あ、でも、こんな高価な物…」


「…いいのよ。」

「私には…これがあるから。」


車のキーにつけた、いつかもらったキーホルダー


「あ…それ…」


「ありがとう、希。」
252: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:17:25.00 ID:XtLqdl2a0.net
そっと、きゅっと、手を繋いで

来た道を歩く、二つの影


頭上に浮かぶ、光に目をやる


「いつか…」

「いつか、そのときが来たら。」


私は、貴女に伝えられるだろうか


手を伸ばせば届く距離まで

近付く事ができた、貴女に


ちゃんと…応える事が出来るだろうか


「あのな…真姫ちゃん。」


その瞳を、ちゃんと見据えて

私が、受け取った気持ちを





「だーいすきっ。」




貴女を---愛するという事を






fin.
253: 名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/ (ワッチョイ 7440-wFTf) 2015/12/10(木) 02:21:38.10 ID:XtLqdl2a0.net
約一ヶ月続いたこの話も、ここで終わりです
考えてたエンディングをひとつに絞りきれずに
だらだらと続けてしまってごめんなさい

近日中に短編を一作、年内にもう一作上げる予定なので
また、見つけたら読んでみてください
最後まで読んで頂き、ありがとうございました
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『真姫「泡沫の雨。」』へのコメント

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