花陽「論理的天国」

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花陽-アイキャッチ6
1: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/02(月) 19:40:24.80 ID:sREs4IDB.net
SS4作目、頑張ります!
色々と拙いと思いますが、よろしくお願いします。
注意
・地の文多いです
・独自解釈あり、かも
・書き溜めがあんまりないのでちまちま更新します
・予定では性描写なしです

ではちょっぴり投下します。

※ 前作記事へのリンクです(管理人)

凛「恋の信号」

元スレ: 花陽「論理的天国」

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2: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/02(月) 19:41:28.91 ID:sREs4IDB.net
あらゆる事象を論理的に考えると、花陽は同性愛者なんです。

それも冗談ではなくって、本気で。

ちっちゃな頃から男の子には興味はなくって、いつもいつも凛ちゃんの事を想い続けてきた。

たまたま好きになった子が女の子だっただけ?

まあ、そう取ることも出来るかもしれないです。

でもあくまでも花陽は女の子が大好きで。
3: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/02(月) 19:44:05.68 ID:sREs4IDB.net
穂乃果ちゃんを見ては興奮し、ことりちゃんを見ては発情し、海未ちゃんを見ると切なくなり……とまあ、こんな具合。

はっきり言って、花陽はいい子じゃない。

凛ちゃんというものがありながら(そもそも凛ちゃんは花陽のものではないのだけれど)、他の女の子になびいているんだもん。

でも、そこは花陽。

ちゃんと愛すべき凛ちゃんを最優先に考えてるんだよ?
4: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/02(月) 19:49:42.88 ID:sREs4IDB.net
でもこの間、それが揺らぐ事件が起こっちゃったの!

μ's大量失恋事件と勝手に名付けたそれは、穂乃果ちゃんに恋をしていた数名が(μ'sはユリの迷路だったみたい)、穂乃果ちゃんと希ちゃんがくっついた影響で一斉に失恋してしまったの。

もちろん、そこに直接の影響はないの。

凛ちゃんは穂乃果ちゃんに恋をしていたわけではなく、絵里ちゃんに恋をしていたから(実に悔しい話ではあるけど)。

でも、絵里ちゃんの方が穂乃果ちゃんに恋をしていたんだ。

これが問題で、絵里ちゃんが失恋した結果、恐らく自分のことを愛してくれる凛ちゃんに心の天秤が傾くはずなの。

凛ちゃんに告白されて、気持ちが揺らがない人なんてなかなかいないと思うから。

凛ちゃんは天使だから仕方ないけれど、これは非常にまずいんです!
7: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/02(月) 19:55:14.84 ID:sREs4IDB.net
絵里ちゃんには確実に敵わない。

何せ昔から、絵里ちゃんという女の子は、賢く、可愛く、そしてたまに見せるポンコツぶりがたまらなく可愛い、そんな女の子だから。

花陽も何度お世話になったことか……色々な意味で。

どんな意味かは、ひみつひみつ♪

凛ちゃんへの想いは片思いでいいの、なんて思っていたけれど、実際凛ちゃんが誰かのものになりそうになると怖くなる。

考えただけでも五臓六腑を引きちぎられた挙句田んぼに撒かれる気分だもん。

おいしいごはんは食べたいけれど、そのための肥料にはなりたくない。

あくまで食べる側の花陽なのでした。
8: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/02(月) 19:58:38.08 ID:sREs4IDB.net
肥料云々はさておいて。

凛ちゃんにも、絵里ちゃんにも、花陽の恋を消さないで~、なんてワガママ、言えないよ。

消されたくなければ自分で消せばいい。

間接的ではあるけれど凛ちゃんはそう教えてくれた。

「諦めるんなら好きって言ってからじゃなきゃダメなんだからね!」

絵里ちゃんに向けていった言葉だったけれど、花陽の心にもこれが突き刺さったよ。
10: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/02(月) 20:05:04.38 ID:sREs4IDB.net
そうだよね!

花陽は凛ちゃんのことを愛してるんだもん。
この想いを伝えなければ何も始まらないもん。

振られてからでないと、そのまま突き進むことも、諦めて別の恋を探すこともできないままじゃない!
しっかりなきゃね、花陽!

「凛ちゃん、覚悟してて! 花陽の想いをぶつけちゃうんだから!」

なんて、気合を一つ。

あんまり花陽らしくないけど、アイドルにかける思いと同じで、凛ちゃんへの想いはとっても熱いんだもん!

ぐぅーっ。

気合を入れたところで、お腹が減ってきました。
だって、朝ごはんまだなんだもん。
しかたないよね? エヘヘ♡
29: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/04(水) 02:01:12.68 ID:IG2zGyVn.net
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「凛ちゃん、おはよ!」

今日は、もう少しで夏休みっていう月曜日。
いつもみたいに凛ちゃんが迎えに来てくれました。

花陽は、今まさに4杯目のごはんをお茶碗によそっているところです。
朝はやっぱり白いごはん!

……まあ、花陽の場合、朝もお昼も、夜だって白いごはんなんだけどね。エヘヘ♪

「どれどれ、今朝は……あっ! 美味しそうなお味噌汁っ!
……それで、ごはんは何杯目?」

凛ちゃんが花陽の朝ごはんを覗き込む。

そう! 今朝はとうふのお味噌汁と、ごはんです!

いつもなら何杯目かなんて数えてない花陽だけど、最近はどうしても気になるっていう凛ちゃんの為に、数えることにしています。

「ん……4杯目だよぉ♡」

「相変わらずよく食べるニャア。
そんなら、そのごはんを食べ終わったら支度して出発ね!」
30: 名無しで叶える物語(ふく)@\(^o^)/ 2015/02/04(水) 02:06:43.84 ID:IG2zGyVn.net
そう言うと凛ちゃんは、すとん。花陽の隣の椅子に座ります。

ここは、凛ちゃんの指定席なんだ!

もともとはお兄ちゃんの席なんだけど、お兄ちゃんは一人暮らしで、たまぁにしか帰ってこられないからね。

花陽は、さっきよそったごはんをもぐもぐ食べながら、お兄ちゃんのことを思い出します。

お兄ちゃんは、優しくって、頭が良くって、花陽とおんなじにびびりんぼなんだよ!

でもね、花陽が近所の犬に吠えられて泣いちゃったとき、「怖くない、怖くない」って抱きしめてくれて……いざってときには花陽のことを守ってくれる、素敵なお兄ちゃんです♪

「かーよちんっ♪ 食べ終わったなら早く学校行こっ!
凛、今日提出のプリントまだ終わってないんだよ~」

はっ、花陽としたことが!
凛ちゃんが隣に座っているのに全然違うことを考えていたなんて!

……まあ、お兄ちゃんの事だって凛ちゃんと同じに大事だから、たまにはね♪
31: 名無しで叶える物語(ふく)@\(^o^)/ 2015/02/04(水) 02:30:19.09 ID:IG2zGyVn.net
「よし、それじゃ、早めに学校に行こっか!
それと凛ちゃん、宿題は自分でやらなくちゃダメだからね……?
真姫ちゃんに怒られるよ?」

「うわぁ、怒られたくないニャ……そしたら凛、真姫ちゃんが来る前にかよちんに見せてもらっちゃお☆」

その言葉に、花陽は首を横に振ります。

いくら凛ちゃんの頼みだからって、宿題は見せられないよ!

凛ちゃんのためにならないし、記述式の問題がまるまる同じだったら先生に怒られちゃうもんね。

そのことを伝えると、凛ちゃんはしゅーんってしてました。
まるで、ごはんをお預けされたネコちゃんみたいで可愛いなぁ。

……やっぱり、お手伝いくらいはしてあげよっかな。
なんてーーくすくす♡
36: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/05(木) 20:59:45.96 ID:jICgt3JU.net
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凛ちゃんが学校に着くなり宿題のプリントを取り出すと、先に席についていた真姫ちゃんは呆れてため息をつきます。

「凛、まさかとは思うけれど、そのプリント今からやるって言うんじゃないでしょうね?」

凛ちゃんは慌てて言いました。

「流石に真っ白ってわけじゃないよ? 四分の三くらい真っ白だけど……」

「はぁっ!? それほとんど終わってないって言ってるようなもんじゃない! ちょっと見せて!」

そう言うと真姫ちゃんは、凛ちゃんのプリントをまじまじと見つめて顔を顰めます。

「最初の計算問題は解けてると思うんだけど……どうかニャ?」

「ーー本当に最初しか解いてないじゃない! せめて半分までは解きなさいよ……ここ、この間やったばかりじゃないの」

「あはは……そこは、ほら。寝てたから……」

真姫ちゃんは、はぁー、ともう一度ため息をついて、凛ちゃんのほっぺをつねり、一言。

「こんな簡単な宿題、終わらないなんてありえないでしょ!」

怒った風に、というよりは、やっぱり呆れてる感じなんですけどーーくすくす♡
37: 名無しで叶える物語(ふく)@\(^o^)/ 2015/02/05(木) 21:01:59.76 ID:jICgt3JU.net
でも、簡単、なんて真姫ちゃんは言うけど、花陽はちょっぴり苦戦しちゃって……。

と言うのも、問5がどこかの難関大学の入試問題だったらしくって。
そこは解けてるかどうか全く自信ないんだ。

あとで上級生のみんなか真姫ちゃんに教えてもらおうと思ってたくらいだもん。

だから、花陽も教えるのに手間取っちゃって、凛ちゃんが問5を解くのを手伝ってる間に先生が来ちゃったんだ。

そこで、朝のホームルームが始まる時間になってることに気が付いたんです。

プリントは、ホームルームの時に回収されることになってたの。だからーー結局、凛ちゃんの宿題は終わらなかった。

でもいつものことなので、先生も半ば諦めちゃってて……あはは。

それでも、ある程度まではなんとか終わらせてたから、先生も許してくれたみたい!

手伝った甲斐があったなぁー。よかったよかった!
42: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/09(月) 00:51:02.16 ID:qkyspP3g.net
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お昼休み。待ちに待ったお弁当の時間ですっ!

実は花陽は、他の休憩時間にもお弁当を食べちゃってるから、二回目のお弁当の時間なんだけど……。

お昼にはまたお腹が空いてるから、やっぱり待ちに待った時間なんです!

さぁーて、今日のご飯は……おにぎりっ!

ーーまあ、いっつもおにぎりなんですけどね。エヘヘ。

今日のは、おこぶのおにぎりと、梅のおにぎり、それからそれから、たらこのおにぎりなんだよ!

おこぶはほんのすこし濃いめのおしょうゆで炊いたんだ。

梅干しはもちろんおばあちゃん特製のとーっても酸っぱい梅干しだよ!

ーーそういえばこの間、絵里ちゃんにおばあちゃんの梅干しのことを話したら、アイドルがしちゃいけないような顔になったっけ。

絵里ちゃんって確か、梅干し苦手なんですよね。

花陽はとっても好きなんだけどなぁ。すっぱーい梅干しって。

だって、白いご飯が進むじゃないですか!

え? この話、前もどこかでしましたか? まあまあ、気にしないでください。
43: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/09(月) 00:55:34.28 ID:qkyspP3g.net
「かよちーん! 凛、今日も絵里ちゃんと一緒にお昼してくるから、真姫ちゃんにも言っておいて欲しいニャ!」

いつもは一緒にお昼を食べている凛ちゃんだけど、あの日から絵里ちゃんの教室に行って食べてるんだ。

ここまでくると、絵里ちゃんが凛ちゃんに傾くのだって……いやいや、それは考えないことにしよう。

「うん、わかった! 真姫ちゃんに言っとくね!
あっ、あと……これ!」

花陽は、凛ちゃんにアルミホイルで包んだこぶし大のものを差し出します。

「はっ! こ、これはラーメンの匂い!
……お腹減ったニャ……」

「じゃあーん! 花陽特製、ラーメンおにぎりだよっ!
それと、これ。絵里ちゃんと……あと、希ちゃんの分! 中身はそれぞれペリメニの餡とお肉だよ!」

「それは本当に美味しいのかニャ……?
まあ、かよちんが作ったものならなんでも美味しいんだけどねっ!
っと、そろそろ絵里ちゃんとこに行かなきゃ。またあとでっ!」

凛ちゃんは、同世代の現役陸上選手も真っ青な走りで教室を出て行きました。

よっぽど絵里ちゃんに早く会いたいんだろうなぁ……。羨ましいなぁ、絵里ちゃん!

そうそう! 実は昨日試食してみたんだけど、案外ペリメニおにぎりは美味しかったですよ♪

皆さんも今度、試してみてはいかかでしょう?

なんちゃって。エヘヘ♡
53: ◆n0J2IfBFxY (わたあめ)@\(^o^)/ 2015/02/15(日) 19:58:13.59 ID:MPRW+yvx.net
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お昼休みが終わって、次は数学の時間。
実は、今日の課題のプリントは、この時間にある小テストの予習用だったんです。

小テストは、実際の成績には何も関係がないらしいんだけど、そこから定期試験の問題が作られたりするから、しっかりやってたらテストはいい点が取れるんです!

こういうテスト対策みたいなの、どこの高校でもありますよね?

特に、花陽たちオトノキの生徒はあんまり頭が良くないから……テスト対策を一ヶ月以上前からしてくれるのはとってもありがたいの。

あ、でも。今日の分は夏休みも明けて2学期の中間試験の内容になるんだっけ……そう考えると、どうやって解いたか忘れそうだなぁ。

忘れないうちに復習して、休みが開ける前にもう一回解き直しかな?

「よーし、問題用紙は行き渡ったかな?」

先生の確認に、みんながそれぞれ返事をしていたら、

「センセー!」

と、凛ちゃん。
もしかして、凛ちゃんのところ問題用紙が足りなかったのかな?

「なにかな、星空さん?」

「り……私、答えを書くのとは別に、計算用紙が欲しいです!」

ざわざわ。

みんながびっくりして、凛ちゃんの方を見る。勿論、花陽も。
54: ◆n0J2IfBFxY (わたあめ)@\(^o^)/ 2015/02/15(日) 20:00:59.34 ID:MPRW+yvx.net
「お、星空さん。もしかして自信あり?
そういうことなら他の人にも計算用紙配ったほうがいいかな。

今回、先に言っちゃうと、問5も出しちゃってるからね!
問題用紙に特には狭すぎる人もいるかもしれないし……。

ちょっと取ってくるわね!
その間に復習しておいていいわよ」

そう言うと、先生は職員室に戻っていった。

復習しようにも、プリントは提出しちゃってるからなぁ……。

みんなは復習をするために、ノートに問題を解いてたり、プリントのコピーをとっていたりするのかな?
……と思ったけど、みんな私語を始めました。

あはは。やっぱり、復習するほど真面目な子はそんなにいないんですよね。

例えばそうーー真姫ちゃんみたいにいかにも頭いい! って感じの子とかは復習を始めてるけれど、そんな人は全部で2、3人くらいかな?
55: ◆n0J2IfBFxY (わたあめ)@\(^o^)/ 2015/02/15(日) 20:06:01.96 ID:MPRW+yvx.net
凛ちゃんの方をふと見ると、ノートを取り出してなにやら書いています。

「凛ちゃん、何書いてるのー?」

「えっとねぇ、さっきの問5を、絵里ちゃんに聞いてきたの! 凛ってば、よくプリントなくしちゃうから、コピー取ってたんだぁ。ソウヲコウシタ、ってやつ?」

「……それを言うなら、功を奏した、でしょ?
それにしても……凛ちゃんってやっぱり頑張り屋さんだね!
プリント間に合わなかった時に諦めたのかと思ったけど、お昼に絵里ちゃんに教えてもらってたんだ。
……どう? 解けた?」

「んー、さっぱりちんぷんかんぷんニャ。
ーーでもでも、解き方はわかったよ! 絵里ちゃん教え方うまいんだぁ。最近、絵里ちゃんのおかげでちょびーっとお勉強するのが楽しくなってきたの!」

これはいい傾向です!

絵里ちゃんのおかげで凛ちゃんがお勉強してくれると、定期試験前の花陽の負担が少し減るかも?

あ、でもーー少し寂しくなっちゃうかな?
テストの前のお泊まりがなくなっちゃうかもだもんね?

あ、だめだ。これ以上そのことは考えないようにしなきゃ。危うくテストの前に泣いちゃうところだった。

「ごめんなさい、遅くなっちゃった……ってあなたたち! 絶対復習してないでしょ!
よっぽど自信があるのね?」

にっこり。先生がとっても怖い顔で笑います。
ーーあわわ。満点取れなかったら後が怖いなぁ……。

でも、問5はわからないなりに三回も解いたんだし、きっと大丈夫だよね?

「それじゃ、始めていいわよ!」

先生の合図とともに、花陽にしては珍しく自信を持って、小テストの問題用紙をペラリーーと裏返しました。
59: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/18(水) 01:00:34.59 ID:+wjUOLbw.net
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「問5もちゃんと解けたニャ! あってるかはわかんないけど……」

小テストが終わって、とても満足そうな表情の凛ちゃんが言いました。

花陽、感激です! 凛ちゃんがあの難問を解くなんて……!

花陽は、なんとか間に合った! って感じで……見直す時間がなかったから、やっぱり自信がないなぁ。

テストが始まる前の自信はどこにいっちゃったのかな……?

「どうしたの、かよちん?
ーーあっ、当ててあげよっか!
かよちんのことだから、また自信ないなぁーって思ってるんでしょ!」

図星……。凛ちゃんってば昔から、妙に鋭いことがたまにあるの。

「いや、さすがに今のは、私でもわかったわよ……。花陽、いつも自信なさそうにしてるんだもん。今回のは……私も自信、ないけど」

「真姫ちゃんにも自信ない事ってあるんだ。意外……」

「もう、花陽ってば。私だって人の子なんだから自信ない事だってあるわよ!
いくら知性溢れる真姫ちゃんでも、できないことの一つや二つ……三つ、四つ……あるわよ」

真姫ちゃんが唇を尖らせながら言う。
でもね、真姫ちゃん。
人の子なんだから、っていう表現がすでに全体的な自信の表れだと思うよ、花陽は。
60: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/18(水) 01:04:49.31 ID:+wjUOLbw.net
まあ確かに、真姫ちゃんは運動が苦手で体もかたいし、何より人付き合いがあんまり得意じゃないもんね!

あとは……自転車、乗れないんだっけ?

「そういえば真姫ちゃん、自転車は乗れるようになった?」

花陽は真姫ちゃんに尋ねました。不意に気になってしまったの。

真姫ちゃんはそれに対して、自信満々に言いました。

「当然! ……希とニコちゃんに手伝ってもらったから、案外すぐに乗れるようになったわ。
ニコちゃんなんて、『乗れるようになったら、ニコニーを後ろに乗せてほしいなっ!』なんて言うんだから!
道路交通法違反になっちゃうのにね」

くすくすーー♡
花陽も真姫ちゃんも、そして凛ちゃんも。思わず笑顔になりました!

「ニコちゃんらしいニャ。
でも、凛もちょっと乗ってみたいかも?
きっと、漕がなくても進むし、真姫ちゃんに抱きつけるし、乗り心地最高だって!」

「な、何言ってんのよ! 意味わかんない!
だいたい凛、あなたエリーが好きなんでしょう!?
なんで私なのよっ!!」

「あっそっかぁ。絵里ちゃんの後ろに乗れば絵里ちゃんに抱きつき放題だね! めいあん、めいあんー!」

私も、凛ちゃんの後ろに乗りたいなぁ。

なんて、口に出せず。

どこまでもびびりんぼな花陽なのでした。
ーーエヘヘ。
64: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/19(木) 19:53:48.86 ID:vukKYK10.net
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時間は進んで、練習終わりの帰り道。

花陽と凛ちゃんは、嫌がる真姫ちゃんを引っ張って、ホームセンターまで来ました。何故かって……。

「痛い痛い! 別に荷台なんてわざわざ買わなくたっていいじゃない!
そんなに私と二人乗りがしたいの!? ねぇ凛ってば!
ちょ、花陽、助けーーきゃっ!」

ーーつまり凛ちゃんはすっかり真姫ちゃんと二人乗りをする気になっちゃったんだよねぇ。

真姫ちゃんのお家のお庭なら、私有地だから大丈夫かな、って提案したのが間違いだったのかも。ごめんね? 真姫ちゃんーーお願いだから花陽のことを許してね?


「真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃ~ん!
早くお家に帰って、二人乗りしようよぉ~!
それとも、凛と乗るの、いや……?」

うぅ、いいなあ。凛ちゃん、それ、花陽にも言ってくれないかなぁ……?
真姫ちゃんは、照れてしまったのか、誤魔化すように言いました。

「べ、別にそういうんじゃ……。ただ、私の初めての二人乗りは、やっぱり好きな人と……あっ! な、なんでもないわっ!」

ーーえ? 好きな人?
65: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/19(木) 19:59:46.97 ID:vukKYK10.net
「真姫ちゃんの好きな人?
それって、穂乃果ちゃんのこと……?
それとも別の人?」

花陽は、気になって質問してしまいました。
まだ穂乃果ちゃんのことを想い続けているのか、はたまた別の想いがあるのか。

どっちにしても、大事なお友達である真姫ちゃんのことを、次も応援してあげなきゃね!

「うぇっ!? そ、そんなの誰だっていいじゃない!!
……でも、穂乃果じゃあ、ないわ。穂乃果には、この間振られてきたしね。
そのあとすっぱり諦めて、別の恋に生きることにしたわ。
……まだ、相手が誰なのかは、内緒で」

そう言うと真姫ちゃんは、にっこりと微笑んだ。

なんだか切なくて、大人びていて、魅力的な笑顔だったなぁーーエヘヘ♡

その後、なんだかんだあってから。

真姫ちゃんが凛ちゃんの熱意にとうとう折れて、荷台をレジに持って行く途中のことでした。


「あら、あなたたち……もしかしてμ'sの?」


そんな声が聞こえたのです。

ハキハキとした、綺麗でかっこいい声で、不思議と初めて聴いた感じではなかったの。

最近、μ'sもちょこっと知られるようになってきたし、ファンの子かな? そう思って振り返ると、そこには見慣れた顔がありました。





「つ、ツバサ……!? さん!!」
69: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/21(土) 15:23:12.37 ID:0Zyax/GY.net
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「いやだわ、もっと親しみを込めてツバサって呼んでくれても構わないのに。
それとも、私が年上だからって気を使っているのかしら?」

ツバサさんはそう言うと、花陽の方に視線を投げたの。

花陽は、突然のことに口をあんぐりと開けたまま、意味もなく高速でまばたきをしてみました。そうすることで、少しだけ落ち着く気がしませんか?

「ああ、いえっ!
気を使っているとかではないんです!
ただ、私たちみんなの憧れの存在であるA-RISEのリーダーってだけで恐れ多いというか……!」

隣で真姫ちゃんが「私はそうじゃないけどね!」という表情をしたけれど、見なかったことにしました。

「そんなにかしこまらなくてもいいのに。
スクールアイドルとしては確かに先輩かも知れないけれど、魅力ではあなたたちμ'sのみなさんも劣っていないもの」
70: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/21(土) 15:30:23.53 ID:0Zyax/GY.net
にっこりと笑いながら、ツバサさんはこう続けた。

「私達、あなたたちが初めて作ったPVを見てからというもの、すっかりファンになっちゃって……小泉花陽さん、私は花陽さん推しなの。
因みに、英玲奈は凛さん、あんじゅは真姫さん推しなのよ。
だから、その……あとでサイン、交換しない?」

ツバサさんもやっぱりアイドルオタクなのかな? そうじゃなきゃなかなか推しなんて言葉使わないし……。
まさかA-RISEに知られているどころかファンになってもらえているなんて! しかも、花陽推し、なんて言ってもらえて、花陽はとっても興奮です!

「……そういえば、サインなんて全然考えたことなかったニャ!
どうしよどうしよ……!」

凛ちゃんが慌てているけど、花陽もサインなんてあんまり考えてなかったかも。
こんなことならお母さんにサインのレクチャーを受けておくんでしたね。
あ、うちのお母さんってね、昔はアイドルの卵だったんだぁ。ニコちゃんに聞いたら知ってるかも?

「ま、まぁサインは構いませんけど、とりあえず先にお会計済ませてからでいいですか、綺羅ツバサさん?」

真姫ちゃんが荷台を恥ずかしそうに後手に隠しながらツバサさんに申し出ます。

「あ、そうだった。私も買い物の途中だったんだ……ちょっとついでにペンと色紙も買ってくるから、レジの向こうで待っていてくれないかしら?」

「はい! 勿論です!
……ところで、ツバサさんは何を買いに?」
71: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/21(土) 15:34:35.98 ID:0Zyax/GY.net
そもそも、スクールアイドルの頂点であるグループのリーダーであるツバサさんがホームセンターにいるのがすでに不思議な感じだもん。
何を買うかがとっても気になるのは仕方ないよね?

「え? あぁ……おにぎりを作る道具よ。あの、ご飯を入れてギュってしたらおにぎりになる……なんていうのかしら?」

「おっおにぎりっ! 好きなんですかっ!?」

思わず、口をついて出たのはそんな言葉。
花陽、おにぎりのことになるとどうしても自分を制御できないみたいーーエヘヘ♡

「え? ーーえぇ、好きなんだけど、自分で作ろうとするとどうにも形がいびつになっちゃって……花陽さんもおにぎり、好きなの?」

「かよちんはもうおにぎり好きとかそういうレベルじゃないニャ……暇があればアイドルかおにぎりに時間を費やしている感じだもん」

「そうなの? 意外な一面ね……(となるとあの胸はご飯の効果……?)」

「さすがにそれは大袈裟にしても……そうね、花陽はアイドルとご飯が大好きだもの。大体そんな感じよ。
……おっと、私、ささっとお会計済ませてくるわね」

「私もお会計済ませなきゃ……それじゃ、皆さん。また後でね!」

そう言うとツバサさんは、颯爽とキッチン用品コーナーに消えて行きました。

……花陽って、そこまで食いしん坊じゃないと思うんだけどなぁ。

あぁでもーー確かに暇があったらアイドルのことかごはんのことを考えてる節はあるかも。

いちばん考えてるのは、それでもやっぱり凛ちゃんの事なんだけどねーークスクス♡
76: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/25(水) 18:26:38.73 ID:gqA9Ss+Y.net
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ツバサさんがお買い物を終えて、花陽たちのところにとことこと駆けてきました。

「おまたせ。色紙とペン、買ってきたわ。
どこかの喫茶店にでも入りましょうか。お茶でもしない?」

「あ、それなら真姫ちゃんのお家がいいニャ!
お茶とお茶菓子くらいは出てくるだろうし……A-RISEってファンも多いから見つかったら大変でしょ?」

凛ちゃんが提案します。

でも凛ちゃん、自分のお家じゃないんだから勝手にそんなこと言っちゃダメだよぉ~!

「わ、私の家!?
まあ確かに……お茶とケーキくらいは出るけど……」

「いいじゃんいいじゃん!
どうせ凛とかよちんはもともと行く予定だったんだし、ね?」

そう言いながら、凛ちゃんは花陽の方にばっちりとウインクしてきました。

花陽はしばし我を忘れ、その場でのたうちまわろうかと思いましたが、憧れのツバサさんの前でそんな姿を晒すわけにもいかなかったのでグッと堪えました。

……と、そこで気づきます。今の、アイコンタクトなのかな?

花陽は、凛ちゃんに加勢することにしました。
77: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/25(水) 18:28:31.25 ID:gqA9Ss+Y.net
「真姫ちゃん、確かにツバサさんはかなりの有名人なんだから、誰かのお家がいちばん安心してお話しできると思うんだ。花陽のうちは……ちょっぴり狭いし、凛ちゃんのおうちは……」

「凛のお部屋、ちょっと真姫ちゃんには耐えられないかもしれないよ!
みかん栽培してるから!」

それは流石に冗談だってバレバレだよ……?

凛ちゃん、嘘をつくのが得意じゃないもんね、昔から。

花陽も……あんまり得意じゃないですけどーーエヘヘ♡

「ふぅん……冗談はさておいても、凛も花陽も最初からうちに来るつもりだったんだし、ツバサさんさえ良ければそりゃ、構わないですよ」

「あら、じゃあお邪魔しちゃおうかな。真姫さんのお家って一軒家なのかしら? 私、アパート暮らしだったから一軒家というものに憧れてて……」

「そうです、一軒家ですよ。そんなに大した家ではないですけれど……。
さ、じゃあうちに向かいましょっか……ちょっと車呼ぶわね」

「あ、はーい。じゃあ、花陽たちはこっちで待ってましょう。
ツバサさんも、こっちです!」
78: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/25(水) 18:33:31.76 ID:gqA9Ss+Y.net
真姫ちゃんが電話で車を呼んでいる間、花陽たちは真姫ちゃんのお家で何をするつもりだったのかをツバサさんに話しました。

「へぇ、真姫さんのお家って庭が広いのね。
二人乗りかぁ……私もしてみたいな。花陽さん、一緒に乗りましょ?」

「えっ! 花陽でいいんですかっ!?」

どうしよう! 憧れのツバサさんと二人乗り……!?

花陽は、慌ててカバンの中を探ります。

確か持ってきてたはずなんだけど……あっ、あった!

携帯用の小さな容器に移し替えた香水。
やっぱり、いい匂いがしたほうが、いいよね?

カバンのファスナーをじじぃーっと閉めていると、ちょうど真姫ちゃんが電話を終えて帰ってくるところが見えました。

「お待たせ。あと10分もすれば迎えが来ると思うわ」

「またあの長~い車に乗れるの? 凛、あの車好き!
なんだかお金持ちになった気分でどきどきしちゃうんだ!」

凛ちゃんが小躍りしそうなくらい弾んだ声で言うのも、なんだか納得です。

花陽も、最初の頃こそリムジンに乗るのは緊張したけど、今はーーもうすっかり、慣れちゃったんだ♡
81: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/27(金) 19:08:41.08 ID:oDBelnS0.net
「二人とも、案外お金の匂いがするものが好きよね……。ちょっぴり将来が心配だわ」

真姫ちゃんがいつもニコちゃんを見るときみたいに、半目で凛ちゃんと花陽を見つめる。

するとそれにツバサさんがクスクスと笑って、こう言いました。

「あなた達って本当に仲がいいのね! 昔の私たちを見てるみたいだわ……あっ、別にいま仲が悪いとかじゃないんだけどね?」

「あっあのっ! あとでA-RISEのお話たくさん聞きたいんですけど……構いませんか?」

花陽は、勇気を出してツバサさんにこう尋ねました。
貴重な話も聞けるかもしれないし、めったにない機会だもん♪
折角だから、と思って……えへへ。

もちろんツバサさんは「いいわよ!」と言ってくれました!

何を聞こうかなぁ、なんて考えながら、迎えにきたリムジンに乗り込みました。

いよいよ、真姫ちゃんのお家に向けて出発です!
82: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/02/27(金) 19:10:32.18 ID:oDBelnS0.net
「そういえば、さっきツバサさんがおにぎりをつくる道具みたいなの買ってましたけど、あれを見ておにぎり食べたくなっちゃったわ。花陽、あとで作ってくれない?」

「それは構わないけど……真姫ちゃんのお家に材料あるかな?
ごはんはいいとして、具材……あっ、塩むすびにしちゃえば具材なくても作れるかぁ」

塩むすび、花陽はとっても好きなんだよ!

具材がなくっても作れるところもいいけど、なによりごはんそのものの味が味わえるんだ♡

「じゃあみんなで作ろっ! 凛もおにぎり作りたいニャ!
……ツバサさんも、作るよねっ?」

凛ちゃんの提案に、ツバサさんは驚きつつもゆっくりと頷いた。

「そうね、道具を試してみたいし、それに花陽さんたちと一緒に何かをするなんて夢のようだもん。是非、作りたいわ!」

こうして、真姫ちゃんのお家でおにぎりを作ることが決まったのでした。

お腹も空いてたし、ちょうど良かったです♡

ーーエヘヘ。
85: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/02(月) 03:07:59.66 ID:jZ4F1GN7.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


「ちょ、わ、わ、待って待って待ってまっ……あ」

「あっ」

ガシャン!

ものすごい音です。花陽は思わず目をつぶります。痛そうだなぁ……大丈夫かな、凛ちゃんと真姫ちゃん。

隣にいるツバサさんと顔を見合わせる。

「痛ぁ……凛、大丈夫?」

「へーきへーき! 真姫ちゃんは怪我ない?」

「んー……ちょっとすりむいたけどたいしたことないわ。しかし二人乗りって案外難しいのね……」

「そりゃそうだニャ~。って言うか、真姫ちゃん自転車乗れるようになったの最近でしょ? それで二人乗りするのが簡単なわけないよ」

「はい、真姫ちゃん。絆創膏だよ! 花陽が貼ってあげるね」

こうなるだろうなぁと思って、実はさっきのホームセンターで絆創膏を買っておいたんです。

まぁ……真姫ちゃんのお家に絆創膏くらい当然のようにあるだろうけどーーこれはちょっと特別な絆創膏なんだ♪
86: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/02(月) 03:09:45.42 ID:jZ4F1GN7.net
「花陽さん、優しいのね。……あら? この絆創膏……」

「ありがと……ってちょっと花陽! これ! 恥ずかしいんだけど!?」

「あっ、気付いちゃった?
エヘヘ、花陽の好きなキャラクターの絆創膏なんだぁ♡
可愛いでしょ?」

ちょっぴり舌を出して、悪戯っぽくウインクしてみます。
イメージは……ニコちゃんかなぁ。ニコちゃんのお茶目なところって、なんだか憧れちゃって。真似っこしてみました。

「ま、まぁ……可愛いけど。明日までに普通のに張り替えなきゃ絶対ニコちゃんにからかわれるわね……」

んー、確かにそうかも知れません。ニコちゃん、真姫ちゃんのこと大好きだからいっつもからかって遊んでるもんねぇ。

「あっ、マッキーが可愛い絆創膏貼ってる♡ イメチェンかな?
マッキーカ・ワ・イ・イ♡
でもでもぉ~、ニコニーの方がもーっと可愛いニコ☆」

んー、大体こんな感じかな?
頑張って声も似せてみたんだけど、モノマネって難しいんですね……。

「花陽ってば、ニコちゃんのモノマネ完璧じゃない。いつ練習したの……?」

真姫ちゃんが半分呆れ顔で花陽を見つめてきました。
87: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/02(月) 03:11:19.67 ID:jZ4F1GN7.net
思ったより完成度が高かったかのかも。これからは無茶振りされたらニコちゃんのモノマネでやり過ごすことに決めました!

「かよちん、それニコちゃんを知らない人が見たらかよちんが寒い子みたいだニャ」

「それ言っちゃダメだよ凛ちゃん、ニコちゃん泣いちゃうからね」

ツバサさんが微笑みながら(すごく魅力的な微笑みでした)こう言いました。

「大丈夫よ、真姫さん。お風呂はいったあとに張り替えることになると思うから、その時に普通のを……ぷっ、くく……もう一度同じ種類のを貼ってもいいんだけどね……ふふっ……」

「わ、笑わない~っ!
ツバサさんも貼りますかぁ!?」

真姫ちゃんってば、恥ずかしいのか沈んでいく夕日の色みたいに真っ赤です!
可愛いなぁ……。

一方のツバサさんは、笑いすぎて目から涙まで流していました。
88: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/02(月) 03:13:53.61 ID:jZ4F1GN7.net
ーーこうしてみると、トップのスクールアイドルも女子高生なんだなぁ、としみじみ思います。花陽たちと変わらない、いろんなことで笑ったり泣いたりする、女の子なんだなぁって。

でも、普段はツバサさんのこんな表情見られないし、そもそも一緒にお話ができるなんて絶対にありえないもん。今日はなんてついているんだろう♪

そんなことを考えていると、不意に。

ピーッ、ピーッ。高い音が鳴り響きました。

むむ、この音は……!

「ご飯炊けたよぉ~っ!」

花陽は、自分でもびっくりするくらい嬉しそうな声でこう叫びました!

ツバサさんも驚いて……そしてにっこり笑いました。

「じゃあ、花陽さん……いえ、花陽先生! 私たちの二人乗りの前に、おにぎり作りましょうか!
お腹、空いてそうだしね」

ぐぅー。

返事は、花陽のお腹の音でした。

恥ずかしいんだけど……お腹が空いてるのは本当だから、音がなっちゃうのも仕方ない、よね?
92: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 02:02:27.53 ID:qyi5yfb4.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


花陽たちは、ついさっき美味しそうに炊けたご飯を少し冷まして、おにぎりを作り始めました!

「いいですか? 基本的には握る時に力を加えず、優しく握るんですよ?
……そうそう、真姫ちゃんいい感じ! 」

真姫ちゃんは不器用なイメージだったけど、案外上手におにぎりを握っています!

ピアノをやっているだけあって、手先の感覚が優れているのかもしれないですね♡

「……こんな感じかニャ?」

「んー。凛ちゃん、右手にちょっぴり力入ってるかなぁ。
右手は添えるだけ、くらいの気持ちでやってみて!」

そう言うと、凛ちゃんはさっきより慎重に、真剣な目で手元を見ながら握り始めました。

はぁ……。凛ちゃんは今日もとっても可愛いです!

「あぁ、やっぱりうまくできないな。なんでかしら……」

ツバサさんは……。

うん。これは手取り足取りの指導が必要です!

あまりにも形が、その。
不器用なツバサさんもなかなかかわいいんだけど、ね?
93: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 02:05:34.58 ID:qyi5yfb4.net
「ちょっと失礼しますね……えっと、左手はこうして、右手はこう……うん、とってもいい感じです!

えっとですね、おにぎりは、お寿司のシャリなんかと一緒なんですけど、空気が入ってお口の中でほろほろくずれる感じに握るととっても美味しいんです♪

知ってましたか?
おにぎりは、ちょっと工夫するだけで本当に美味しくなるんですよ♡

練習中に手軽に食べられるものと言ったらやっぱりおにぎりだと花陽は思うんです!

ツバサさん達みたいに忙しい人達にも簡単に作れて、エネルギー補給にもぴったりな上に、とっても美味しいですから……!

おにぎりを是非作れるようになって、あんじゅさんや英玲奈さんにも食べさせてあげてくださいっ!

あっそうそう、具材のアドバイスなんですけれど、梅干しを入れるとクエン酸が含まれているから疲労回復にも……」
94: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 02:09:50.44 ID:qyi5yfb4.net
「は、花陽……?
これってアイドルモードならぬおにぎりモードってやつかしら……?」

「凛はこっちのかよちんも好きニャ☆」

……あっ。一気にしゃべりすぎちゃったかも……!
真姫ちゃんと凛ちゃんの言葉を聞いて慌てて口を閉じました。
ツバサさんに変な子だと思われちゃったかなぁ。

「……びっくりしたわ。花陽さんって、実はとってもおしゃべりなのね? ーークスクス♡
それと……あ、あったかいのね」

あったかい……?

そういえば、花陽はツバサさんのぎこちない手を包み込むようにして自分の手を重ねているんだったなぁ……と、ふと思い出して。

瞬間、顔が一気に真っ赤になったのがわかったの。

慌てて自分の手をよけて、こう言いました。

「あ、その、えぇと……ごめんなさいっ!
ツバサさんの白魚のようなその指に触れてしまったことはなんと重い罪なのでしょうか……!
かように重き罪、花陽に償えるのでしょうか……っ!」

「(かよちん、中学校の時のアレが出てるよっ!
ま、凛はこっちのかよちんも好きだけどねっ)」

凛ちゃんにそっと耳打ちされ、またも我に帰ります。

あ……あぁっ……!

忌々しき過去を、忘却の彼方に追いやった記憶を!

花陽は少し目をつぶり、当時の記憶を消す作業に入りました……。
100: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/14(土) 18:07:38.15 ID:wZCuQam1.net
「重い罪ってそんな大げさな……私の手に触れるくらいで罪に問われたりしないわ。
ま、まぁ、あれよ。カリオストロ的重罪では、あるのだけれど……なんてねっ! 冗談よ?」

ツバサさんはそう言うと、出来上がったおにぎりをラップで包み始めました。

顔が真っ赤だけど、どうしちゃったんだろう……。

それに、カリオストロ的重罪ってなんだろう?

そんなかっこいい単語、中学生の頃の花陽の感性に響かないはずないんだけど……ってそれは置いておいて!

花陽が考えていると、真姫ちゃんが花陽とツバサさんを交互に見ながら独り言をボソボソとつぶやきました。

何て言ったのか気になるけれど、独り言の内容を聞かれるのがどれだけ致命的か、花陽にはわかります。

だから、聞かないことにしましょう……んー、でも気になっちゃうなぁ、なんて。

……ううん、ダメダメ!
プライバシーってものがあるんだもんね!

独り言を言いながらも、真姫ちゃんの手は休むことなく動いてて、どんどんおにぎりが作られていって……。
花陽にとっては天国のような空間が目の前に広がりました!

わあぁ……真姫ちゃん、今度から得意料理はおにぎりって言えるね!

真姫ちゃんがお嫁さんになったら、花陽、とっても幸せになれる気がするなぁ……なんて。

こっそり思っちゃう花陽なのでした♡
101: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/14(土) 18:09:05.34 ID:wZCuQam1.net
「ねえかよちん、そろそろお腹減ったニャ!
おにぎり食べようよ~っ!」

凛ちゃんの言葉で我に帰った花陽は、慌ててさっきの考えを頭から追い出します。

花陽には、凛ちゃんという想い人がいるのに。

でもやっぱり、他の女の子のことも魅力的に見えちゃうんだよね……それもこれも、μ'sのみんなが魅力的なのがいけないと思うんですっ!

中学生の頃までは、あんなに一途だったのに……想いが重いと自覚までしてたのに。

「かーよーちんっ! おぉーい! お腹すいたってばぁ!」

わっ、いけない! また自分の考えに浸っていました。
普段はあんまり考え込むことも人前ではしない方なんだけど……。

ぐぅぅーっ。

また、花陽のお腹が代わりにお返事をしてしまいました。
あぁ、まただぁ……。

やっぱり、クスクスとツバサさんに笑われちゃって、ちょっぴりくすぐったい夕暮れ時です。
104: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 02:30:02.96 ID:/N54d0Wb.net
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しゅっ、しゅっ。

花陽は、手首にちょっぴりと香水を吹き付け、ついでに前髪をチェックしました。

ここは、真姫ちゃんのお家のお手洗い……の、はずなんだけれど、どっちかというと化粧室って感じかも。

あくまでイメージの問題で、どっちも意味は変わらないんだろうけど……。

とにかく、お手洗いにしてはちょっぴり大きい印象を受けました。

パシパシと自分のほっぺを叩いて、一人頷きます。

あんまり自信はありませんが、少なくとも変じゃないはずです。
妙に気合を入れてるわけでもないし、かといって気を抜きすぎているわけでもない。

緊張はしているけど、でもきっと……大丈夫、だよね?

目の前の鏡に映った、自分の見慣れた顔に微笑みかけてみた。……うん、花陽は可愛いはず!

最後にもう一度前髪をチェックしたあと、花陽は中庭で待っているツバサさんのもとに向かいました。
105: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 02:34:26.40 ID:/N54d0Wb.net
「ごめんなさい、お待たせしましたっ!」

「とんでもないわ、待ってなんて。
……それに、私の方にも色々と準備があったし、ね?」

そういうとツバサさんは花陽に向かってパチリとウインクをしたの。

ああっ……今の、最高に可愛かったですっ!

目の前で起きていることが本当のことだなんて、何度人差し指に親指の爪を突き立てても信じられないくらい。

あのツバサが、A-RISEのリーダーが、花陽のためだけにウインクしてくれるだなんて、まるで夢みたいで……。

夢心地のまま、ふわふわと真姫ちゃんの自転車にまたがる。

真姫ちゃんは結構身長が高いから、サドルの高さを調整しないと危ないかなぁ……。

ツバサさんに怪我をさせたら、大変なことになっちゃうもんね。
106: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/16(月) 02:37:05.60 ID:/N54d0Wb.net
「よっ……と。あら、思ったより乗りやすいかもしれない。
……花陽さん? 大丈夫かしら、ちょっとぼーっとしてるけど……」

「え? あぁ、えっと……大丈夫ですっ! そ、それよりツバサさんっ!
花陽にしっかりとつかまってくださいね?
落ちたりしたら危ないですから!」

花陽がそう言うと、ツバサさんが後ろからしっかりと手を回してきます。
その手が微かに震えているのがわかって、ハンドルを握る手にも力が入りました。

「さ、花陽さん。私の方は準備できたわよ。
……いつでも出発していいわ!」

「了解です!
それじゃ、行きますよ……!」

ペダルに載せていた右足に、ぐっ、と力を込める。

いつも自転車に乗るときのようには、さすがにいかないかな。
重さが分散されてバランスが悪い。

「ツバサさん、もっとしっかりくっついてください!」

「こうかしらっ!」

ツバサさんが思い切り花陽に抱きついてくる感触がしてーー。





2秒後には花陽たちは地面に投げ出されていました。
109: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 01:58:47.18 ID:B2PJzSOr.net
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「かよちん! ツバサさん!
大丈夫!?」

凛ちゃんが心配して駆け寄ってきました。

「……いたたた……うん、大丈夫だよ、凛ちゃん!
ツバサさんは大丈夫ですか……?」

花陽は地面にぶつかる前に閉じた目を開こうとします。
あれ……?
どうも視界が悪いけど、ひょっとしてコンタクト外れちゃったかなぁ。
念のためにメガネを持ち歩くようにしておいてよかったです。

「私は大丈夫……ちょっと苦しいけど」

ひどく近くから声が聞こえて、花陽はようやく、自分がツバサさんの上に半分のしかかっているのに気づきました!

大変! 早く上からどかないと!

花陽は起き上がるため、取り敢えず地面に触れようと手を動かします。と、なんだか柔らかい感触が手のひらを押し返しました。

も、もしかしてこれって……!

「あの、花陽さんっ! 非常に言いにくいんだけど、胸、触ってる……!」

「ひゃあっ!? や、やっぱりぃ!
ごめんなさいっ! すぐにどけますからっ!」

慌てて柔らかさから手を避けると、今度こそ地面の感触が伝わってきました。

しっかりとその感触を捕まえると、花陽は急いで立ち上がります。

その時、ツバサさんも起き上がろうとしたんですが、どうもタイミングがうまく合わなかったようで、花陽とツバサさんはもつれるようにして転がってしまいました。
110: ◆n0J2IfBFxY (ふく)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 02:07:24.41 ID:B2PJzSOr.net
「……あなた達、何やってるの……?」

真姫ちゃんが呆れたように手を差し出してくれて、今度こそは二人とも起き上がりました。

「ごめんなさい、大丈夫だった……?
きっと抱きつくときにくすぐったいところとか触っちゃったからバランス崩したのよね?」

ツバサさんがウルウルとした目で花陽を見上げて謝ってきました。

別に、くすぐったかったから転んだんじゃあ、ないんですけど……でも、ツバサさんにギュって抱きつかれて、ただ花陽は緊張して、心臓がばくばくって暴れて……それで。

なんだか、凛ちゃんといるときみたいに胸がざわついたんだ。

きっと、慣れない二人乗りを憧れのアイドルとしているからなんだろうなって思ったんだけど、どうも違うみたい。

だってそれならーー最初から転んじゃうと思うんだ。多分。
だからきっとこれは……うん、これ以上はやめておこうかな。

「大丈夫ですよ、ツバサさん。くすぐったかったのは確かですけど……転んだ原因はそれじゃないですから!
ツバサさんは、何も悪くないですよ! 悪いのは転がっていた石ころなんです!
さぁ、もう一度挑戦ですっ!」

花陽は、ありもしない石ころに責任を押し付けてしまいました。これなら誰も悪くないことになるからです。
……本当は、花陽が悪いのかもしれないですけどね?

今度こそは、とツバサさんがつぶやいて、もう一度二人で自転車に乗ります。
花陽はハンドルをしっかりと握り、次は転ばないように、慎重に自転車をこぎだしました。

それにしても、さっきはお互いに大した怪我はなくて、ちょっぴりすりむいたくらいで済んだから良かったなぁ。

怪我をしない、させないが大事ですからね!

……ってあれ? これはライブの話、だっけ?
112: ◆n0J2IfBFxY (わたあめ)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 11:27:43.17 ID:v9qbySTn.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


そろそろ遅いから、ということで、花陽たちはおうちに帰ることにしました。

「凛、花陽、また明日ね!
ツバサさんは、またいつか。今度、ライブに招待します!」

そう言いながら、真姫ちゃんは見えなくなるまで手を振ってくれました。最近の真姫ちゃんはだんだん素直になってきて、ツバサさんともすっかり打ち解けたみたいでした!

でも、ツバサさんをライブに招待するなんて、緊張するなぁ。
まだμ'sはできてそんなに時間が経ってるわけでもないし、A-RISEにはやっぱりどうやってもかなわないもん。

でも……見に来てくれた時は、「A-RISEのツバサ」じゃなくって、「μ'sのファンのツバサさん」として、ツバサさんのことを精一杯楽しませなきゃ、だよね!

ワクワクした気持ちで辺りを見ると、街は夕暮れのオレンジに染まっていて、空には一番星も輝いています!

星が好きな真姫ちゃんなら、あれがなんの星かわかるのかな?

ふと横を見ると、ツバサさんも空を眺めていました。

綺麗な横顔だなぁ、なんて思っていると、ツバサさんは切なそうに花陽の方を見ました。

「あのね、花陽さん……このあと少し時間ある?」

「え? ありますけど……どうかしましたか?」

ちょっと声が裏返る。今日はなんだか、恥ずかしいところばっかりツバサさんに見せている気がするなぁ……全部緊張のせいです。

「ええと……話がしたいの。二人きりで」
113: ◆n0J2IfBFxY (わたあめ)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 11:36:02.67 ID:v9qbySTn.net
「えっと、二人きりで、ですか?
もちろん、花陽は構わないですよ!
あっ、でも……凛ちゃんが」

花陽は、凛ちゃんの方を振り返ります。

凛ちゃんは花陽の視線に気づくと、親指を立てながらウインクしてきました。

「いいよ、かよちん! 凛一人でも帰れるからー!
お話しておいで!」

気を使ってくれたのか、凛ちゃんがそう答えます。それを聞いて、花陽はツバサさんの方に向き直ります。

「大丈夫みたいです!
あの、ところでお話って……」

そこまで言ったところで、ツバサさんの人差し指が花陽の唇に当てられました。

「本題はまた後、ね?
二人きりになったときに話すから、その時まで内緒っ!」

いたずらっぽい笑顔でそう言われて、花陽の心臓がまたドキドキと暴れだします。

抑えられないこのときめきは、憧れなのか恋なのか。
はっきりわからない、曖昧な感情だけど、きっと花陽の心の奥深くでは答えが出ているんです。

でもそんなことって、許されるんでしょうか?

ねぇ神様。

想いに順番をつけることは、いいことなんでしょうか?

花陽には、順番をつけられない想いがあるかもしれないのです。
こんなことって、赦されるのでしょうか?

ああーー神様、助けてください!

みんなのことを愛して、みんなに愛される。それじゃあだめなんですか?
花陽の望む天国は、決して赦されないのですか?
116: ◆n0J2IfBFxY (中国地方)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 20:41:41.54 ID:zUfgeJCX.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


ツバサさんに連れられ、たどり着いた先は古いアパートでした。

「えっと……ここは?
適当に選んだ場所、ではないですよね?」

なんだか、昔のドラマでお金のない男の人が一人暮らしをしていたアパートに似ている気がします。

寂れた、切なさを感じるような、ここだけが色あせた写真のような、そんな場所。

だから人気(ひとけ)のないところという点では、二人きりの内緒話をするにはピッタリかもしれないです。

「……ここはね、私のうちなの。うちはね、他のUTXの生徒と違って、別にお金持ちだったりするわけじゃなかったのよ。
逆に言うと、別に貧乏というわけでもない……まあ、世間一般的で平凡な暮らしをしてきたわ。
ある時、オトノキに進学しようとしていた私は、たまたまパンフレットをもらったUTXのオープンスクールに行ったのよ。
……びっくりしたわよ、こんなにすごい学校があるのか、って」

ツバサさんはひとつ、ため息を漏らすと、再び口を開きます。

「私、私ね? アイドルなんて柄じゃない、なんて最初は思ってたけど……わかったの。
今やらなきゃ絶対に後悔する、って。ここでしかできないこと、今しかできないこと、やらなきゃって。
ーー今思えば馬鹿よね、私ってば。
別にスクールアイドルなんてプロでもないんだから、やろうと思えばオトノキでだって出来たんだもの。あなた達みたいに。
それでも私は、ここで一番になろうって思った。
……結果が、これよ。
勘当だって。ありえないでしょ? ほんの15かそこらの一人娘と縁を切っちゃうの。笑えてくるわよ本当に……」
117: ◆n0J2IfBFxY (中国地方)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 20:44:48.21 ID:zUfgeJCX.net
ツバサさんは、静かに、声を殺して泣いていました。

花陽には、どうすることもできません。

ただ、花陽もなんだか悲しくなってきて、自然と涙が落ちて。

いつからか降り出した雨とともに、花陽の頬を濡らします。

「あっ、ごめんなさいね! 別にそんな重い話をしたつもりじゃあなかったの。なんでかな……花陽さんになら、話せると思ったんだ、私。
ーーこの話、英玲奈とあんじゅしか知らないんだからね?」

無理に微笑んだような顔で、ツバサさんがこちらを見る。花陽は……目を合わせることができなかった。

「じゃあ、ツバサさんは今、ここで一人暮らしを……?
そうだ、学費……授業料とかはどうしているんですか?
私立の学校だから、そういうの高いんじゃ……」

やっと絞り出した声で、自分でもひどいなぁ、と思うような質問を投げかけてしまいます。

「授業料については、心配ないわ。これでも私、才能あったみたいで。
……まあ、一応今はトップスクールアイドルグループのリーダーやってるんだし、ないわけじゃあないと思うけど。それは今だから言えることか。
とにかく、その才能があった私は、特待生制度によって学費は全免除になっているわ。家賃があるから、アルバイトはしてるけどね」

「そう、ですか……」
118: ◆n0J2IfBFxY (中国地方)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 20:47:55.40 ID:zUfgeJCX.net
UTXの特待生制度、確か来年度から制度が少し変わるんだっけ?

UTX主催の大会で優勝したら無試験編入で特待生になれるとかなんとか。

それが、今花陽たちが目指している舞台、「ラブライブ!」。

単なるスクールアイドルの祭典っていうわけではなくて、これはもう戦争なんです。

制度が変わる前の、ツバサさんが入学する当時の特待生制度は「オーディション」と呼ばれていました。

面接、筆記、実技。三つの試験の総評上位三名は無条件でA-RISEに加入できるーーまたは、学費の全免除を受けられる。そういう制度でした。

学費の免除を申請すれば、一般の生徒と変わらない位置からのスタートになる。成功は約束されない。自力で這い上がるしかないんです。

つまりツバサさんは、実力でA-RISEに加入し、さらにリーダーに上り詰めたということになります。

ご両親に勘当されて、それでもなお夢を追い続けたツバサさんは、それはもう大変な努力をしたんだと思うの。
それを思うと、やっぱり自然に涙が溢れます。

花陽は、勿論ツバサさんに同情しているわけじゃないんだ。
でも、たくさん頑張ったツバサさんに、うまく言えないけれど、何かをしてあげたいと、思ったの。

だから、こう言いました。




「ねぇ、ツバサさん。
ーー花陽と結婚しませんか?」
121: ◆n0J2IfBFxY (わたあめ)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 07:17:39.65 ID:BVD675sL.net
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


「えっ? けっ、こん?
ちょっと花陽さん、突然何をーー」

突然結婚しようと言われて驚くなという方が無理な話だとは思います。

けれど、花陽にしてあげられることで、真っ先に浮かんだのはこれだったから。

「花陽と結婚すれば、ここに住まなくったっていいんです。うちで暮らせばいいんですよ!
家賃のためにバイトもしなくていいし、何よりーー独りじゃない!」

「それ、は……そうかもしれないけど。でもそんないきなり、だって私たちまだ高校生よ?それに、お互いに知っていたとはいえ初対面だし、それに……」

ツバサさんの話を遮るように、花陽は自分の思いを、想いを伝えます。

「花陽は本気です、ツバサさん!
綺羅ツバサさん。
花陽は、アイドルとしてのあなたが大好きでした。輝いているあなたのことが、誰よりも。
だけど今は違うの。アイドルとしてのあなただけじゃない。辛いことがあっても、人としての輝こうとしている、あなたが大好きですっ!」

動揺からか、ツバサさんが目に涙を溜めながら言いました。

「私だって、私だってあなたのことが好きよ!
ファンなんて嘘っ! 一目見たときからずっと好き! 愛してるのっ!
今日初めて花陽さんと会って、恋心が本物だってわかった……でも、でも……!」

涙をぬぐいながら、ツバサさんが続けます。

「わた、私たち、女の子じゃない……!
女の子同士なんて、そんな、無理よ……!」
122: ◆n0J2IfBFxY (わたあめ)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 07:19:23.22 ID:BVD675sL.net
「そんなの、関係ないです!
花陽はツバサさんと一緒に笑いたい。ツバサさんに辛いことがあったなら、少しでも元気にしてあげたい。
好きだから、ツバサさんが望むことならなんでもしてあげたい!
これからずっと、最期に笑ってお別れするまでっ!
ずっとずっと一緒にいたいんです!」

もう、花陽の心には迷いなんてありませんでした。

想いの順番とか、そんなのはないんだね。

確かに、凛ちゃんの事はこれからもずっとずっと好きなんだと思う。

でもね、花陽は、凛ちゃんと同じくらい大切な人を見つけたんだ。

この人を幸せにしたい、そう思える人なんだ。

だから、自分の頬を伝う涙を拭くことも忘れて、花陽はもう一度、繰り返しました。


「ねぇ、ツバサさん。
ーー花陽と結婚しませんか?」

「ーーええ、喜んで!」

そう言って笑ったツバサさんの顔は、誰よりも綺麗で、キラキラと光る一番星のように輝いていました。

この先、同性婚が認められるかはわからない。けれど、たとえ認められなくっても、構いません。そんなのは些末な問題なんだ。

どんなことがあっても、花陽は、ずっとこの人のそばで咲いていたい、そう思うから。

「誓いのキスを、しましょう」

それは、二人のうちどちらから言ったのか、わかりませんでした。

ツバサさんからだったかもしれないし、花陽からだったかもしれない。
二人ともが同時に言ったのかもしれないし、そもそも二人とも言っていないのかも。

それでも、どちらからともなく、花陽たちはお互いの唇に吸い寄せられるように。
それらを重ね合いました。

とても柔らかくて、あたたかで。いつまでもこうしていたいと思えるような、幸せな時間でした。
123: ◆n0J2IfBFxY (中国地方)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 07:40:19.26 ID:wM62ZllE.net
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花陽たちの誓いのキスが終わり、携帯電話で時間を確認したツバサさんが言いました。

「さて、花陽さん。今日はもう暗いし、名残惜しいけどお家に帰ったほうがいいわ。
ーーまた落ち着いたら、いつでも会いに来てね」

ツバサさんが少し寂しそうに、花陽に手を振ってきます。
それに花陽は、手を振り返したりはしません。

「何を言ってるんですか、ツバサさん! ツバサさんは花陽のお嫁さんなんですから、今日から花陽のうちで暮らすんですよ?」

「今日から!? そんな、引っ越しとかたくさん手続きすることもあるし、なにより花陽さんとご家族にご迷惑をかけることになるわ!」

「そんなこと、気にしないでください!
だって花陽たち、家族になるんですから。ね、ツバサさん♡
んー、でも確かに、いきなり引っ越しは無理だし……あ、じゃあとりあえず今晩は泊まっていってください! それから、落ち着いたらお引越ししましょう!」

「……そうね! 私たち、家族になるのよね……ご、ご両親に挨拶とかしなきゃ。緊張してきたわ……」

そういったやり取りの後、急に真剣な顔になったツバサさんに、思わず花陽はぷっと吹き出してしまいました。

「さ、早くお泊まりの準備してきちゃってください♪
花陽はお母さんに電話して事情を話しておきます!」

「ちょっと、今笑ったでしょっ! もう……支度してくるわね。連絡、お願いしますね、旦那さま♡」

旦那さま……なんて素敵な響きなんでしょう!

綺麗なウィンクを置いていったツバサさんにドキドキしながら、花陽はお母さんに電話をかけました。








「ーーあっ、もしもし、お母さん?
あのね、今日から家族が増えるから!」




おしまい
124: ◆n0J2IfBFxY (中国地方)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 07:44:58.88 ID:wM62ZllE.net
くぅ疲日和、です!

見てくれた方、ありがとうございました。
昨日投下しようとしたんですがいろいろ用事が出来てしまってできませんでした。すみません。

次回作は目処が立ち次第、こちらかSS速報の方にてはじめたいと思っております。
スレが残っておりましたらご報告させていただきます。よしなに~!


んだば、また。
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『花陽「論理的天国」』へのコメント

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