【SS】海未「ミュンヒハウゼン」

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1: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:41:22.91 ID:+pNTs3sM.net
【ほらふきミュンヒハウゼンの冒険♯1】

幼いころ、私はとても臆病だった。
知らないところに行くのが怖かった。
知らないひとと話すのは、もっと怖かった。
だから母に公園に連れて行かれても、木の陰に隠れてじっとしていた。
しゃがみこんで夕陽を見ていると、この広い世界の中でひとりぼっちになった気がした。
お母さん、早く迎えにきてくれないかな。
私はそっと啜り泣きをはじめた。
だめだ、声を出したら知らないひとが来ちゃう。
それでも我慢できずに、泣き声が漏れそうになった、そのとき――

穂乃果「なぜないているんだい、おじょうちゃん」

知らない子が私の手を引っぱって、起こしてくれた。
私は、啜り泣きを止められないまま、たどたどしく言葉をつないだ。

海未 「だって、さびしくて、おかあさんに、あいたく、て」

穂乃果「だいじょーぶだよー。
    みんなであそんだら、さびしくないよ」

海未 「ところで、あなたは、どちらさまですか?」

穂乃果「よくぞきいてくれました。
    わたくしこそは、なく子もわらう大ぼうけん家」

海未 「なんていうお名まえなんですか?」

穂乃果「ミュンヒハウゼン」

元スレ: 【SS】海未「ミュンヒハウゼン」

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2: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:44:09.00 ID:+pNTs3sM.net
※ 映画とは似ても似つかない内容ですが、まだ観ていない方は読まないほうがよいかもしれません。
3: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:46:57.65 ID:+pNTs3sM.net
海未 「みゅんひはうぜん?」

穂乃果「そうだよ。
    きのうのよる、ねるまえに、おかあさんがおはなししてくれたの」

海未 「みゅんひはうぜんは、大ぼうけん家なのですか?」

穂乃果「そうだよ。
    せかいじゅうの陸と海を、ぼうけんするの。
    すごいひとなんだよ」

海未 「うみはわたしですが」

穂乃果「へー、あなた、うみちゃんっていうんだ!
    よろしくね!」

海未 「はあ」
4: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:47:36.42 ID:+pNTs3sM.net
こうして私は、ミュンヒハウゼンと出会った。
ミュンヒハウゼン、別名ほらふき男爵。
どうやら当時の穂乃果は、ミュンヒハウゼンの愉快な冒険譚がお気に入りだったようだ。
毎晩おばさまからお話を読み聞かせてもらって、それをすっかり覚えてしまうほどに。
しかし幼い彼女には、「ほらふき」の意味がよく分かっていなかったらしい。
5: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:48:04.91 ID:+pNTs3sM.net
穂乃果「ミュンヒハウゼンだんしゃくは、すごいんだよ!」

海未 「どんなふうに、すごいのですか?」

穂乃果「お馬にのって、沼をとびこえるんだよ!」

海未 「そんなの、あぶないですよ。
    沼にはまったら、どうするんですか」

穂乃果「よくぞ、きいてくれました。
    沼にはまったミュンヒハウゼンだんしゃくは、どうしたとおもう?」

海未 「だれかに引っぱりあげてもらったのですか」

穂乃果「はずれー。
    せいかいは、じぶんでじぶんを引っぱりあげた、でした!」

海未 「へんてこなことを言ったら、だめですよ。
    そんなこと、できるわけないでしょ」

穂乃果「できるもん!
    ミュンヒハウゼンには、できないことはないんだもん!」
6: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:48:35.05 ID:+pNTs3sM.net
海未 「そんなこと、だれが言ってたんですか」

穂乃果「ミュンヒハウゼンが、じぶんで言ってたもん!」

海未 「それなら、ミュンヒハウゼンが、うそをついてるんです」

穂乃果「ミュンヒハウゼンは、うそつきなんかじゃないよ!」

海未 「それなら、なにものなんですか?」

穂乃果「ほらふきだよ!」

海未 「ほらふきも、うそつきも、おんなじですよ」

穂乃果「ちがうもん!
    ミュンヒハウゼンは、うそつきなんかじゃない!
    ほらふきっていうのは……よくわかんないけど……なんでもできるひとだよ!」
7: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:49:03.24 ID:+pNTs3sM.net
穂乃果は、ミュンヒハウゼンの物語を、ぜんぶ真実だと信じこんでいたらしい。
だから彼女は、「法螺吹き」のことを「何でもできる人」と取り違えたのだ。
とはいえ当時の私も、やはり法螺吹きの意味をよく理解していなかった。
私は、「法螺吹き」と「嘘つき」を取り違えていたのだ。
今の私には、法螺吹きが嘘つきではないことはよく分かる。
当時の穂乃果も、少なくともそのことは理解していたようだ。
だから彼女は、嘘つき呼ばわりされて、我慢がならなかったのだと思う。
8: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:49:31.51 ID:+pNTs3sM.net
穂乃果「よーし、そこまで言うなら、やってみせてあげる。
    ミュンヒハウゼンがうそつきでないことを、しょうめいしてやる!」

海未 「どうするのですか?」

穂乃果「ちょっとまっててね、ことりちゃんもよんでくるから」

海未 「ことりちゃん?」

穂乃果「わたしのたいせつなお友だちだよ。
    きっとうみちゃんとも、お友だちになれるとおもうな」

海未 「あ、ちょっと……」
9: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:50:10.61 ID:+pNTs3sM.net
私が引き止める間もなく、穂乃果は一目散に駆けていって、ことりを連れてきた。
おそらく、ことりにも、ほらふき男爵の勇姿を見せたかったのだろう。

ことり「穂乃果ちゃん、いま、おままごとしてたとこでしょ。
    わたし、はやく、おようふく作りのつづきをしないと……」

穂乃果「まあまあ、ことりちゃん。
    じつはさっき、あたらしいお友だちができたんだよ!
    ほら、うみちゃん!」

ことり「わー、やった!
    あたらしいお友だちだ!
    よろしくね、うみちゃん!」

海未 「よ、よろしくおねがいします」
10: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:50:38.24 ID:+pNTs3sM.net
穂乃果「さて、そんなわけで、わたしはこれから、この水たまりをとびこしまーす。
    ふたりとも、よーくみててね」

ことり「ほのかちゃん、いきなりどうしたの?」

穂乃果「だいじょーぶだいじょーぶ。
    ころびそうになったら、じぶんでじぶんを引っぱればいいんだよ」

海未 「あぶないから、やめましょうよ」

穂乃果「だいじょーぶだいじょーぶ。
    ほらふきだんしゃくには、できないことなんて、なにもないんだよ」

ことり「ほのかちゃん、ころんだらたいへんだよ。
    やっぱりやめようよ」

穂乃果「あんしんしたまえ、うみちゃん、ことりちゃん。
    よーし、いくぞー!」
11: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:51:12.27 ID:+pNTs3sM.net
それから穂乃果は、十回ほど水たまりに尻もちをついた。
尻もちをつく前に自分の手を引っぱる動作をしたけれど、それも甲斐のないことだった。

穂乃果 「いてて」

私は、さっきまで寂しがっていたことも忘れて、すっかり焦っていた。
どうしよう、私が変なことを言ったせいで、大変なことになってしまった。
私が何とかしないと、この子はずっと尻もちをつき続けるんじゃないだろうか。
私が、私が何とかしてあげないと。
今にして思えば、私の穂乃果に対する心配性は、このときに芽生えたのだと思う。
12: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:51:39.76 ID:+pNTs3sM.net
しかし、私が心配するまでもなかった。
穂乃果は、物理法則に反することはさすがに出来ないけれど、やはり自分で水たまりを跳び越せるほど逞しかったのだ。
このころから……そしてきっと、今も。

穂乃果「できた!」

当時まだ私の与り知らなかった不思議な力のおかげで、穂乃果はついに水たまりを跳び越すことができた。
とはいえ、跳び越したあとに気がぬけたようで、穂乃果はその場でよろめいた。
ことりと私は、あわてて穂乃果のところに駆け寄って、彼女の手を引っぱりあげた。
もう私たちの目のまえで、彼女が転ぶことのないように。
13: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:52:24.19 ID:+pNTs3sM.net
ことり「ほのかちゃん、すごいね!」

海未 「ミュンヒハウゼンは、うそつきじゃないことが、よくわかりました」

穂乃果「えへへ、ちゃんと見ててくれて、うれしいよ。
    ねえ、二人とも、これからもずーっと、わたしのこと見ててくれる?」

ことり「うん、見てるよ」

海未 「はい、見てますよ」

穂乃果「えへへ、よかった」

ことり「ふふふ、ほのかちゃん、泥だらけだ」

海未 「ふふふ、ほんとですね」

穂乃果「あ、よかった。
    うみちゃんがわらってくれた」

海未 「あ」

私の啜り泣きは、いつのまにか止んでいた。

穂乃果「ほらね。
    みんなであそんでたら、さびしい気もち、わすれちゃったでしょ」
14: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:53:19.52 ID:+pNTs3sM.net
こうして私たち三人は、たいせつな友達になった。
何でもできる法螺吹きと、彼女の活躍を見守る二人の従者として。
それから十年余の月日が経ち、いつのまにか私たちは高校生になった。
とはいえ、幼い頃から、私たち三人の関係は少しも変わることがなかった。
ただひとつ変わったことがあるとすれば、傍目には私の泣き虫が治ったように見えたこと。
そして私じしん、じぶんの啜り泣きの声を、もう長いこと聞いていなかった。
15: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:53:49.41 ID:+pNTs3sM.net
【ほらふきミュンヒハウゼンの冒険♯2】

スクールアイドルになって廃校を止める。
はじめて穂乃果の思いつきを聞いたとき、私は、彼女が大法螺を吹いているのだと思った。
しかし部員を九人に増やし、夏休みを迎えた頃、私は彼女がただの法螺吹きではなかったことを知った。
私は、彼女が法螺を実現する日々に居合わせることができたことを、とても嬉しく思う。
しかしこのときの私は、すでに気づいていた。
私がミュンヒハウゼンの従者を務められる時間は、残りわずかだということを。
私じしんが、近いうちに、ミュンヒハウゼンにならねばならないということを。
そんな思いをひそかに抱きつつ、当時の私が何をしていたかというと……
16: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:54:20.59 ID:+pNTs3sM.net
穂乃果「うわーん、にこちゃーん!」

にこ 「あら穂乃果、どうしたの?」

穂乃果「部室に変態が出たの!」

にこ 「ええ? それって大変なことじゃない!
    とにかくまずは警察に連絡しましょう。
    あわてず、ますはその変態の特徴を教えて」

穂乃果「私を見ると追いかけてくるの」

にこ 「まごうかたなき変態だわ」

穂乃果「追いかけながら、私の履いてるパンツの色を訊いてくるの」

にこ 「許すべからざる変態だわ」

穂乃果「私が答えずにいると、こんどはパンツの色を当てようとしてくるの」

にこ 「手の施しようもない変態だわ。
    いま110番するから、安心しなさい。
    そのおぞましい不審者の見た目を教えてくれる?」

穂乃果「サラサラストレートの黒髪、美しい金色の瞳、青のよく似合う清楚な雰囲気……」

にこ 「あれ、すごく身近なところに、よく似た奴がいるような……」

海未 「ハアハア……今日は薄桃色ですね?」

にこ 「お前かよ!」
17: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:55:18.59 ID:+pNTs3sM.net
穂乃果とにこに両脇を掴まれ、私は部室へと連行された。
やがて部室にμ’sのメンバー全員が集められ、緊急会議が始まった。

にこ 「えーと、そういうわけでして。
    本日、みなさまにお集まりいただいたのは、ほかでもありません。
    部室で高坂さんに、とう……ねえねえ、書記の東條さん、これ何て読むんでしたっけ」

希  「トウサクやね」

にこ 「オホン、倒錯的変態行為を園田さんの処遇について、
    緊急に部内裁判を開く必要があると判断したためです。
    裁判長は、えーと……何じゃこのゴチャゴチャした漢字は」

希  「センエツやね」

にこ 「ありがとね、希。
    えーと……オホン、裁判長は、僭越ながら、部長であるわたくし矢澤にこが務めさせていただきます」
18: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:55:57.93 ID:+pNTs3sM.net
海未 「裁判長、ちょっと高坂さんに確認したいことがあります」

にこ 「発言を認めます。
    ただし公序良俗に反せず、節度を守り……」

海未 「あなたのパンツの色、あらためて思い描いてみました。
    もしかしたら橙色ですか?」

にこ 「おいこら!」

穂乃果「私が素直に答えるとでも思ったか、この変態!」

海未 「もしや純白では……」

穂乃果「やかましいわエロティックポエマー!」

希  (だいぶ紛糾しとるやん)
19: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:58:06.61 ID:+pNTs3sM.net
にこ 「はい静粛に、エロティックポエマー……じゃなかった、園田さん。
    高坂さんも、気もちは分かりますが、ちょっと落ち着いてください。
    傍聴席の二人が怯えてるじゃない……大丈夫? 花陽、凛」

花陽 「はい、とっても生々しい社会勉強になります」

凛  「はい、人間関係の泥沼を垣間見てる気がします」

にこ 「よろしい。
    とにかく海未、穂乃果、ちょっと落ち着いて、まずは席につきなさい。
    あんたたちがギャーギャー喧嘩しても埒があかないから、弁護士と検察官を呼ぶことにしたわ。
    ほれ、入ってきなさい」

ことり「よろしくおねがいしまーす」

絵里 「よろしくおねがいしまーす」

にこ 「えーと……どっちがどっちだっけ?」
20: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:58:32.16 ID:+pNTs3sM.net
ことり「わたしは、海未ちゃんを弁護しまーす」

海未 「ことりいい、助けてくださああい」

ことり「キャー、裁判に負けそうな海未ちゃんもステキだよー」

花陽 (幼馴染みのかたちって、いろいろあるんだなあ)

凛  (ときどき二年生の三人の屈折した友情が分からなくなるよね)
21: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 09:59:11.05 ID:+pNTs3sM.net
絵里 「そして私が、検察よ!」

穂乃果「ぅえりちゃーん!」

絵里 「ほのかぁー!
    あなたとあなたのパンツは、この正義の検察官が守ってみせるわ!
    だから今日から私のこと、ジャスティス絢瀬って呼んでいいのよ!」

穂乃果「ジャスティス絢瀬さまぁー!」

絵里 「あ、にこ、そのコツコツってやるの、私もやってみたいわぁ!
    『コツコツ、セーシュクに』ってやるのよね!
    私、将来は裁判官を目ざしてみようかしら?」

希  「絵里ち、そんな安易な理由で進路を決めたらあかんよ」

にこ 「コツコツ、絢瀬ちょっと静かにしろ」

花陽 (絵里ちゃん、そこはかとなくかしこくない雰囲気を醸し出してるけど、大丈夫かなあ)

凛  (こういうドロドロした事件の場合、カラッと明るいポンコツが一筋の光明になるものだよね)
22: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:01:00.39 ID:+pNTs3sM.net
にこ 「それでは南さん、弁護を始めてください」

ことり「はーい。
    えっとねー、海未ちゃんは、こんなふうにちょっと変態なとこもあるけど、
    私はそういう海未ちゃんのことも、カッコいいって思うんです」

にこ 「かくも救いがたき変態の、どこがカッコいいのですか?」

ことり「わたしには、ちゃーんと分かってるんだよ」

にこ 「もう少し具体的にお願いできますか」

ことり「うーん、うまく説明できません、ごめんなさい。
    こう、ふわーっと、雰囲気で感じてほしいですね。
    ほら、何ていうか海未ちゃんって、こう、シュッとしてるでしょ?」

海未 「ことり、あなた弁護してくれるんじゃないんですか?」

にこ 「分かりました。
    弁護人、発言は以上でよいですか?」

ことり「はい。ことりから言えるのは、こんなとこです」
23: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:01:42.09 ID:+pNTs3sM.net
海未 「ちょっとちょっと!」

にこ 「どうしましたか、エロティックポエマー……じゃなかった、園田さん」

海未 「私から少し弁明させてください。
    さっきから変態呼ばわりされてますけど、私は現実に穂乃果のパンツを実際にどうこうしたことは一度もありません」

にこ 「では、何をしたのですか」

海未 「この目で現実のパンツを見たわけではありません。
    心の瞳で、心のパンツを見たのです」

穂乃果「心のパンツって何なの!
    初めて聞いたよ、そんな変態の妄言!」

海未 「まあ言うなれば、恋のボタンみたいなものです。
    押してポチリー、なんつって」

穂乃果「ぜんぜん違うわボケエ!
    もう許しちゃおけねえ、あいつの濁りきった純愛レンズを消毒してやる!」

希  (このエロティックポエムと罵詈雑言、ぜんぶ筆記せなあかんのかな?)

にこ 「はい静粛に、園田さん……じゃなかった、エロティックポエマー。
    高坂さんも、気もちは分かりますが、裁判所での乱闘は控えてください。
    何かもう疲れてきたけど、一応検察の意見も聞きましょうか。
    ジャスティス絢瀬さん、よろしく」
24: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:02:28.55 ID:+pNTs3sM.net
絵里 「エッチなのは、いけないと思いまーす」

穂乃果「そーだそーだ!」

絵里 「パンツの色を教えろ、とか、もー信じらんないです。
    そういう心ない言葉に、女の子はすごく傷つくんです」

穂乃果「そーだそーだ!」

海未 「すみません、その点についても弁明させてください」

絵里 「あら海未、何か言いたいことがあるの?」
25: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:03:03.89 ID:+pNTs3sM.net
海未 「私、『パンツの色を教えろ』なんてひどいこと言った覚えはありません。
    私にだって、ちゃんとデリカシーはあるんです」

ことり「スーパーに売ってる洋風のお惣菜のことだね」

海未 「それはデリカッテッセンです」

ことり「あ、そうか。
    それならデリカシーって何だっけ」

海未 「細やかな心づかいのことです」

ことり「えー、うっそー!
    海未ちゃん、そういうことできるの?
    でもデリカシーがある人は、そもそもパンツの話をしたりしないよねー」

海未 「あなた私を弁護してくれるんですよね?」
26: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:03:36.89 ID:+pNTs3sM.net
にこ 「四面楚歌ね。
    まあ海未、とりあえず言い分があるなら、存分に言ったらいいわ」

海未 「ありがとうございます、裁判長。
    私はあのとき、『パンツの色を教えろ』とは言わずに、こう言ったのです。
    『勇気で未来を見せて』と」

穂乃果「けっきょく同じことだろアホンダラ!
    何が勇気だ、そんなことに使う勇気のreasonがあるなら言ってみろ!
    放せ、あのNo reason girl(理性なき女)に人の心を取り戻させてやる!」

希  (えらいことになってるやん)
27: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:04:54.18 ID:+pNTs3sM.net
海未 「落ち着いてください、穂乃果。
    私たちは皆、未来の花なのです。
    それを皆に見せるのが恥ずかしいのなら、私にだけこっそりその色を……」

穂乃果「教えてたまるかコノヤロー!
    未来がパンツなら、未来の花って一体何なんだ、理性的な解答があるなら言ってみろ!
    放せ、奴の破廉恥語録のWonderful Rushを止めなければ、私は心の平穏を得られないんだ!」

絵里 「まあまあ穂乃果、抑えて抑えて」

花陽 (これが花も恥じらう女子高生の口ゲンカか、勉強になるなあ)

凛  (あの絵里ちゃんがボケ役から宥め役に回ってる……これはすごいにゃ)

にこ 「はいはい静粛に、海未……じゃなかった、ワンダフルエロティックノーリーズンポエマー。
    それから穂乃果、あんたも一旦クールダウンしなさい。
    ところで絵里、あんたのほうから一応、海未に対する処罰を提案してほしいんだけど」
28: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:05:28.13 ID:+pNTs3sM.net
絵里 「もー信じらんない、海未ったらサイテー!」

穂乃果「サイテー!」

絵里 「もう穂乃果にヘンなこと言わないって約束してよ!」

穂乃果「約束してよ!」

ことり「ちょっと待ってほしいな、絵里ちゃん、穂乃果ちゃん」

にこ 「あらどうしたの、ことり?」

ことり「海未ちゃん、昔はこんなふうじゃなかったんだよ。
    とっても内気で、けなげな女の子だったの」
29: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:06:51.32 ID:+pNTs3sM.net
絵里 「そりゃそうかもしれないけど、今はこんな状態じゃない」

穂乃果「海未ちゃん、お願いだよ……
    少しでもあのころの海色天使時代を思いだして」

海未 「穂乃果、まあ落ち着いて聞いてください。
    ある詩人が、こんなふうに言ってます。
    永遠とは、太陽に溶ける海なのだ、と」

穂乃果「……そのこころは?」

海未 「太陽は貴方、海は私です、ということは……」

穂乃果「あ、だいたい分かったから、もう言わなくても……」

海未 「育みましょう、ベッドの上で、永遠の愛を」

穂乃果「みなまで言うな!
    もう破廉恥語録のページを増やすな、海エロ堕天使!
    理性が溶けたあとに、煩悩だけが残っちゃったのか!」

海未 「理屈じゃない、ひたむきな気もち……なんちゃって」

穂乃果「自由と勇気のルール持ってる? 失くしちゃってるよね?
    タガの外れた放縦な状態だよね?」

海未 「大丈夫ですよ、ラブとピースと貴方がいれば」

穂乃果「ふざけるな、てめえの頭はハッピー・メイカーか!
    もう我慢ならねえ、放せ、あいつのユメノトビラに年齢制限を設けないと音ノ木坂がマジで廃校になるぞ!」
30: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:08:29.35 ID:+pNTs3sM.net
ことり「まあまあ穂乃果ちゃん、抑えて、抑えて。
    海未ちゃんがどうしてこうなってしまったのか、ちょっと医学的見地から考えてみようよ」

穂乃果「ぐぬぬ……」

ことり「それでは弁護側の証人の西木野先生、よろしくお願いします」

真姫 「言っとくけど、私は医者じゃないわよ……」
    まあいずれにせよ、穂乃果」

穂乃果「何かな?」

真姫 「とっておきの薬を用意したから、これを海未に服用させてあげて。
    そして、静かなところで海未と一緒に話をしてくるといいわ」

穂乃果「……うん、わかった」
31: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:09:03.66 ID:+pNTs3sM.net
にこ 「海未と二人っきりにして大丈夫なの?」

真姫 「大丈夫なのよ。
    あなたもそう思うわよね、穂乃果」

穂乃果「……うん。
    それじゃ行こうか、海未ちゃん」

海未 「ちょっと穂乃果?
    私のこと嫌いになったんじゃないんですか?
    ほらほら、もっと怖がって逃げてください」

穂乃果「いーから!」

海未 「わわわ」
32: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:09:54.87 ID:+pNTs3sM.net
こうして私は穂乃果に手を引かれ、別室に連れて行かれた。
以下では部室の様子と別室の様子が交互に書かれるが、部室での会話は、書記を務めていた希が書き残してくれたものだ。
別室での会話は、私が記憶を頼りに書き起こしてみた。
書き綴っていると、あの夏の日の少し蒸し暑い空気を、今でもつい昨日のことのように思いだす。
33: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:10:19.89 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

凛  「……ふたりとも、行っちゃったね。
    でも穂乃果ちゃんは、どうして海未ちゃんを連れて行ったの?」

真姫 「その訳はたぶん、ことりが教えてくれるわ」

ことり「……」

真姫 「もう二人は別の部屋に行ったから、教えてくれるわよね、ことり」

ことり「……うん」

花陽 「どういうことかな?」

ことり「海未ちゃんは、何だかんだ言ってもやっぱりカッコいいってことだよ」
34: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:10:46.29 ID:+pNTs3sM.net
――別室――

穂乃果「はい、海未ちゃん。
    これお薬……っていうか、うちのお饅頭だよ。
    よかったら、食べてね」

海未 「ありがとうございます。
    これ、私が世界でいちばん好きな食べ物なんですよ。
    いただきます」

穂乃果「ふふふ、そう言ってもらえると、私も嬉しいな。
    ……ねえ、海未ちゃん」

海未 「何でしょう」

穂乃果「どうして変態さんのふりして、私から嫌われようとするの?」
36: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:12:48.26 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

絵里 「変態のふり?」

ことり「そうだよ。
    みんなも薄々気づいてると思うけど、ほんとに海未ちゃんがあんなことやこんなこと、しようとするわけないでしょ。
    あれは、ぜーんぶお芝居だよ」

にこ 「どうしてわざわざ、そんなことしようとするの?」

ことり「自分が穂乃果ちゃんのことを好きでいるって伝えたまま、穂乃果ちゃんに自分のことを嫌ってほしいからだよ」

希  「でも、そんなことで穂乃果ちゃんは海未ちゃんのこと嫌いになったりしないやろ」

ことり「そうかもね。
    でも……泣いてるところを見せるよりは、ずっと心配をかけずに済むんじゃないかな」
37: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:13:39.64 ID:+pNTs3sM.net
――別室――

穂乃果「お饅頭、おいしい?」

海未 「はい、とってもおいしいです」

穂乃果「ねえ、海未ちゃん」

海未 「何でしょう」

穂乃果「私が海未ちゃんのこと、嫌いになったりするわけないでしょ」

海未 「……」

穂乃果「私が海未ちゃんのこと、心配にならないわけないでしょ」

海未 「……」

穂乃果「私、分かってるんだよ」

海未 「……」

穂乃果「小さいころから、海未ちゃんが、ずっと泣き虫のままだってこと」
38: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:14:44.19 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

凛  「泣く? 
    海未ちゃんが泣いてるところは、あんまり想像できないけど」

ことり「そうかもね。
    最近の海未ちゃん、いつもキリッとしてるから、想像がつかないよね」

花陽 「小さいころは、違ったの?」

ことり「そうだよ。
    怖がりで、恥ずかしがり屋さんだったんだよ。
    穂乃果ちゃんが手をつないでいてくれなかったら、すぐに啜り泣きを始めるくらい」

真姫 「意外な話ね。
    今ではすっかり、海未が穂乃果を支えてるように見えるけど」

ことり「そうだね。
    でももしかしたら、海未ちゃんは、ずっと気づいていたのかもしれない」
39: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:15:30.54 ID:+pNTs3sM.net
――別室――

海未 「そうです、私、泣き虫でした。
    小さいころから、ずっと」

穂乃果「私が手を放したら、すぐに啜り泣きを始めるくらいにね」

海未 「だから私、強くなりたかったんです。
    穂乃果が私の手を引っぱってくれたのと同じように、私も穂乃果の手を引っぱれるようになりたかったんです」

穂乃果「ふふふ、おかげで今では、すっかり立場が逆転したね。
    宿題を手伝ってくれるのは、海未ちゃん。
    私が迷子になったら迎えにきてくれるのも、海未ちゃん。
    私がスクールアイドルを始めたばかりのとき、優しく手を差し伸べてくれたのも、海未ちゃん」

海未 「ふふふ、あらためてそんなふうに言われると、何だかくすぐったいですね。
    でも私、ずっと気づいてたんですよ」

穂乃果「何に?」

海未 「私が手を離しても、きっと穂乃果は、大丈夫だってこと」
40: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:16:43.40 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

希  「海未ちゃんが手を離す日が来ても、穂乃果ちゃんはきっと大丈夫だということ?」

ことり「そうなの。
    今はもちろんピッタリくっついてるけど、いつかは手を離す日がくるよね。
    でもたぶん、そのあとも穂乃果ちゃんは、どこまでも元気に駆けて行ける。
    海未ちゃんが傍で見守っていないと、転ぶこともあるかもしれない。
    でも海未ちゃんは、ちゃんと知ってるの。
    転んでもまた起きあがれるほど、穂乃果ちゃんが強い人だってこと」

絵里 「でも、海未はそれでいいの?」

ことり「うーん、どうなんだろう。
    でも海未ちゃんは、穂乃果ちゃんには、後ろを振り向かずに駆けて行ってほしいと思ってるんじゃないかな」

にこ 「啜り泣きをしてるのが気づかれないように?」

ことり「そうかもね。
    だから別れ際には、こう言ってほしかったんじゃないかな。
    『海未ちゃん、泣かないで』じゃなくて、
    『ふざけるな、てめえの頭はハッピー・メイカーか!」って」
41: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:17:30.51 ID:+pNTs3sM.net
――別室――

穂乃果「海未ちゃん、泣かないで」

海未 「何を言ってるんですか、穂乃果」

穂乃果「小さい海未ちゃんは、泣き止んだわけじゃなかったんだね。
    いつも海未ちゃんの心の中で、啜り泣きを続けてたんだね。
    静かな部屋で耳を澄ませれば、聞こえるくらいの大きさで」

海未 「心配しなくても大丈夫ですよ。
    かわいい泣き虫の私は、レベルアップして、かわいくない変態の私になりましたよ」

穂乃果「強がらなくてもいいよ」

海未 「……強がってなんかいませんよ」

穂乃果「ふふふ、そっか」

海未 「だから、教えてください、穂乃果」

穂乃果「何を?」

海未 「どんなパンツはいてるんですか?」

穂乃果「えーと、それはね……って、素直に教えるとでも思ったか!
    ふざけるな、てめえの頭はハッピー・メイカーか!」
42: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:17:59.27 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

花陽 「でも、今の話を聞くと、心配になるんだけど……」

凛  「うん、そうだよ。だって……」

ことり「だって?」

真姫 「もしかしたら穂乃果が旅立つんじゃないかってことでしょ」

ことり「うん、実は……」
43: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:18:23.60 ID:+pNTs3sM.net
――別室――

海未 「道中、お気をつけて」

穂乃果「うん」

海未 「常備薬と日用品、用意しましたから、よければ持っていってください」

穂乃果「ありがとう」

海未 「海の向こうでも、どうかご無事で」

穂乃果「うん、でもね海未ちゃん……」
44: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:18:52.45 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

希  「ちょっと、どういうことなん?
    穂乃果ちゃん、遠くに行っちゃうの?」

絵里 「そんな、穂乃果が……」

にこ 「夏休みに入って早々、急すぎるわよ!
    ぜんぜんそんな素振り、見せなかったじゃない!」

ことり「でも、けっこう前から決めてたことみたいだよ」
45: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:19:29.13 ID:+pNTs3sM.net
――別室――

穂乃果「二泊三日で、四国の親戚の家に遊びに行くだけなんだけどなあ」

海未 「でも私、心配で……」
46: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:20:00.01 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

凛  「ズコー」

花陽 「ズコー」

希  「ズコー」

絵里 「ズコー」

にこ 「ズコー」
47: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:20:49.62 ID:+pNTs3sM.net
――別室――

穂乃果「もー海未ちゃん、毎年の夏休みの恒例なんだから、そろそろ慣れてよ!」

海未 「だって……」

穂乃果「そりゃ確かに、心配してくれるのは嬉しいよ?
    でも毎年、あの手この手を尽くして私を心配させずに旅行に行かせようとするのは大変でしょ?
    まさか今年は変態のふりをするとは思わなかったよ!
    最初は海未ちゃんがホントの変態さんになったかと思って、びっくりしちゃったよ!」

海未 「私が穂乃果にきちんと好意を伝えて、かつ、穂乃果に私への未練を断ち切らせる。
    そのためには、もはやこの方法しか無いと思ったのです」

穂乃果「まあ、ありがたいとは思うよ。
    でも海未ちゃん、今ごろ部内ではすっかり変態扱いだよ?
    もしかしたら、ことりちゃんと真姫ちゃんが説明してくれてるかもしれないけど……」

海未 「あれ、真姫も知っているのですか」

穂乃果「さっき音楽室で、たまたま旅行のことについて話したの」

海未 「なるほど、そうだったのですか。
    ところで私、これだけ皆に迷惑をかけてしまったのですから、どんな罰でも受けますよ」

穂乃果「えーと、そのことなんだけど……」
48: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:21:47.08 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

真姫 「私も、最初は海未の暴走を見て、何事かと思ったわよ。
    でも、穂乃果が旅行に行くっていう話を思いだして、気づいたの。
    これは海未なりの穂乃果へのお別れの練習なんだって」

ことり「そんなわけで、弁護側の主張を受け入れてくれるかな。
    変態さんの海未ちゃんには、海未ちゃんなりの思慮があったってことで」

絵里 「まあ、納得よ。
    ジャスティス絢瀬として、海未なりの倒錯した愛情を認めるわ」

花陽 「ふふふ、海未ちゃん、お固そうに見えて、実はけっこうお茶目なとこあるよね」

凛  「凛、知ってるよ。海未ちゃんは穂乃果ちゃんのことが、だーいすきだってこと」

希  「でもこれ、海未ちゃんの名誉のためには書面に記録しないほうがいいんと違うかな……」

ことり「でもまあ、裁判記録として、一応書き残しておいてもらえると嬉しいな。
    こんなアホな裁判の様子でも、いつか懐かしく読み返すことがあるかもしれないし」

希  「うん、わかった。
    ことりちゃんがそう言うなら、書き留めておくね」

にこ 「それでは、判決を言い渡します」
49: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:22:31.56 ID:+pNTs3sM.net
――別室――

穂乃果「ま、ここは無罪放免ということで」

海未 「許してくれるのですか?」

穂乃果「当たり前でしょ。
    きっとみんなも、同じこと思ってるよ」

海未 「穂乃果……」

穂乃果「ふふふ、おみやげ買ってくるから、楽しみに待っててね。
    さて、それじゃあ私たちも部室に戻ろっか」

海未 「はい……あ」

穂乃果「ん? いま海未ちゃんの袖口から布切れが落ちたような」
50: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:23:35.15 ID:+pNTs3sM.net
――部室――

にこ 「ま、ここは無罪放免ということで」

花陽 「実際に、パンツをどうこうしたわけじゃないもんね」

凛  「あーよかった、海未ちゃんが本当の変態だったらどうしようかと思った」

真姫 「ふふふ、そんなことになったら、今度こそ部内裁判を開かないとね。
    あ、穂乃果と海未がこっちに戻って来たわ」

ことり「おーい、穂乃果ちゃーん、海未ちゃーん……
    あれ? 何か様子がおかしいような」

穂乃果「あーもう!
    海未ちゃんの変態、変態、ド変態!
    実際にパンツをどうこうしたわけじゃないとか言いながら、ちゃっかり袖の下に着服してたなんて!」

絵里 「あちゃー」
51: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:24:47.17 ID:+pNTs3sM.net
海未 「いやちょっと待ってください、誤解です!
    私はただ、本当の変態になるというのはどういう気もちかを追体験しようと……」

穂乃果「それがすなわち、本当の変態であるということだよ!」

海未 「ときに、穂乃果」

穂乃果「おう何だラブアロー・エロス!
    言いたいことがあるなら言ってみろ!」

海未 「やっぱり薄桃色でしたね」

穂乃果「てやんでえ、何誇らしげに園田式ハレンチ語録に新たな一ページを刻んでるんだこのスカポンタン!
    ふざけやがって、てめえの頭はキラキラセンセーションか!
    もう勘弁ならねえ、あいつの中には秘密があるとして、それを私はすべて法廷に引きずり出してやる!
    こうなったらsoldier gameだ、いざ神妙にかかってきやがれ!」

にこ 「はい静粛に、海未……じゃなかった、ラブアロー・エロス。
    それに穂乃果も落ち着きなさい。
    そんなに興奮して、何と戦うっていうのよ」

海未 「あなたがいつかは戦うべき相手、それは私の理性かもしれませんね」

穂乃果「てめえの理性は、もうてめえの煩悩に負けてるだろ!
    放せ、あいつの欲望のWonder Zoneに18禁のシールを張らないと、おちおち旅にも出られやしない!」

希  (これはひどい)

ことり「まあまあ穂乃果ちゃん、この変態は私たちがちゃんと更生させるから。
    だから安心して旅行をエンジョイしてきてね」
52: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:28:42.97 ID:+pNTs3sM.net
被告人席に引っ立てられながら、私は穂乃果にウインクして囁いた。

海未 「ミュンヒハウゼン」

穂乃果「何かな?」

海未 「道中に幸多からんことを」

穂乃果「ありがとう」

海未 「あなたが転んでも起きあがれることは知ってますけど……
    なるべく、転ばないようにしてくださいね」

穂乃果「大丈夫だよ。
    転びそうになったら、自分で自分の手を引っぱるよ」

海未 「嘘でしょ?」

穂乃果「嘘じゃないよ、法螺だよ」

海未 「ふふふ、同じようなものでしょ」

当時の私は、まだ嘘と法螺の違いがよく分かっていなかった。
実際に穂乃果が私たちの夢を叶えてくれるのを見とどけるまで、私は法螺吹きが嘘つきでないということを、心の底から信じてはいなかったのかもしれない。
μ’sが最後のライブを終えたとき、私はそのことを信じた。
心の底から信じた。
53: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:29:11.60 ID:+pNTs3sM.net
【ほらふきミュンヒハウゼンの冒険♯3】

幼いころ、私はとても臆病だった。
知らないところに行くのが怖かった。
知らないひとと話すのは、もっと怖かった。
しかし、ある法螺吹きと出会ったことで、私の世界は開けた。
遠くに連れて行ってもらえたし、たくさんの友達にも会わせてもらえた。
分かれ道でみんなと歩みを別にしたあとも、ぜんぶ、たいせつな思い出だ。
54: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:29:36.79 ID:+pNTs3sM.net
ちなみに練習の甲斐あって、私たちは過度にしんみりすることなくお別れできた。
別れ際の言葉はもちろん「ふざけるな、てめえの頭はハッピー・メイカーか!」だ。
56: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:40:05.43 ID:+pNTs3sM.net
今ごろミュンヒハウゼンは、四国よりももっと遠くを旅しているに違いない。
野を越え山を越え海を越え、月に届くほど遠くまで。
穂乃果も、ことりも、μ’sのみんなも、それぞれの世界をそれぞれの仕方で広げている。
世界を広げる仕方は違っても、行きつく先は同じだと信じて、今ではもっぱら一人で歩く。
57: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:40:41.47 ID:+pNTs3sM.net
歩くのに疲れて、駅の柱にもたれて夕陽を見ると、この広い世界の中で再びひとりぼっちになった気がする。
そんな折には、九人で賑やかにしていたころには気づかなかった、幼い私の啜り泣きの声が聞こえる。
ミュンヒハウゼンに出会ったころから長らく聞いていなかったけど、やっぱり私は私のままみたいだ。
もうミュンヒハウゼンは傍にいないので、そんなときは、私がミュンヒハウゼンにならねばならない。
58: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:42:12.46 ID:+pNTs3sM.net
「なぜ泣いているんだい、お嬢ちゃん」

「だって、寂しくて、みんなに、会いたく、て」

「大丈夫だよ。
 みんなといた時のこと思いだしたら、寂しくないよ」

「ところで、あなたは、どちらさまですか?」

「よくぞ訊いてくれました。
 わたくしこそは、泣く子も笑う大冒険家」

「何ていうお名前なんですか?」

「ミュンヒハウゼン」

「ミュンヒハウゼン?」

「そうだよ。
 小さいころ、公園で、はじめての友達がお話してくれたの」

こうして私は、ミュンヒハウゼンになった。
そういえば、あのとき初めて私の目の前に現れたミュンヒハウゼンは、どんな冒険譚を聴かせてくれたんだっけ。
59: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:42:42.69 ID:+pNTs3sM.net
―――――――

穂乃果「ミュンヒハウゼンだんしゃくは、すごいんだよ」

海未 「どんなふうに、すごいのですか?」

穂乃果「お馬にのって、沼をとびこえるんだよ!」

海未 「そんなの、あぶないですよ。
    沼にはまったら、どうするんですか」

穂乃果「よくぞ、きいてくれました。
    沼にはまったミュンヒハウゼンだんしゃくは、どうしたとおもう?」

海未 「だれかに引っぱりあげてもらったのですか」

穂乃果「はずれー。
    せいかいは、じぶんでじぶんを引っぱりあげた、でした!」

海未 「へんてこなことを言ったら、だめですよ。
    そんなこと、できるわけないでしょ」

穂乃果「できるもん!
    ミュンヒハウゼンには、できないことはないんだもん!」

――――――――

そうそう、お馬で沼を跳び越えたんだった。
でもあの頃の私は、そのことが信じられなかったんだっけ。
60: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:43:18.07 ID:+pNTs3sM.net
―――――――――

海未 「そんなこと、だれが言ってたんですか」

穂乃果「ミュンヒハウゼンが、じぶんで言ってたもん!」

海未 「それなら、ミュンヒハウゼンが、うそをついてるんです」

穂乃果「ミュンヒハウゼンは、うそつきなんかじゃないよ!」

海未 「それなら、なにものなんですか?」

穂乃果「ほらふきだよ!」

海未 「ほらふきも、うそつきも、おんなじですよ」

穂乃果「ちがうもん!
    ミュンヒハウゼンは、うそつきなんかじゃない!
    ほらふきっていうのは……よくわかんないけど……なんでもできるひとだよ!」

―――――――――

そうそう、ミュンヒハウゼンは嘘つきではないのだ。
でもあの頃の私は、嘘つきと法螺吹きの違いが分からなかったんだっけ。
61: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:44:05.85 ID:+pNTs3sM.net
今の私には、法螺吹きが嘘つきではないことはよく分かる。
法螺吹きというのは、みんなの夢を叶えてくれる人のことなのだ。
みんなの夢をかなえてくれる様子を、私は傍で見せてもらった。
今ではもう、傍で彼女の冒険を見せてもらうことはできないけど……

―――――――――

穂乃果「ねえ、二人とも、これからもずーっと、わたしのこと見ててくれる?」

ことり「うん、見てるよ」

海未 「はい、見てますよ」

――――――――――

今でも、目を閉じれば、ちゃんと彼女の笑顔が見える。
子供のころと同じように、今もやっぱり、笑っているのが見える。
62: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:45:30.25 ID:+pNTs3sM.net
そのことを確認して安心したので、私は先に進むことにした。
どうすれば先に進むことができるかは、あの日ミュンヒハウゼンから教わった。

「じぶんでじぶんを引っぱればいいんだよ」

みんなの夢を叶えてくれる人には、じぶんの手をじぶんで引っぱることもできる。
おそらくあの日、水たまりを跳び越えた穂乃果には、私たちがいつか唄うことになる歌が、ひとあしさきに聞こえていたのだ。
だから、今の私にも、きっと……

「さて、そろそろ行きましょうか。
 穂乃果、ことり、真姫、凛、花陽、にこ、希、絵里」

じぶんの手をじぶんで引っぱると、みんなの歌声が聞こえてくる。
63: 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/22(月) 10:47:12.97 ID:+pNTs3sM.net
※おわりです。
 読んでくれた方、ありがとうございました。
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『【SS】海未「ミュンヒハウゼン」』へのコメント

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