海未「ほのスメルを増幅させるスイッチ?」

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海未-アイキャッチ1
1: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:17:55.45 ID:GCT3hz5+.net
 
真姫「そう。名前の通り、このスイッチを押す度に、ほのスメルが増幅するの」

海未「はぁ……」

真姫「この液晶画面に、『0』って出てるでしょ?」

海未「はい」

真姫「上ボタンを押すとほら、1に増えた」カチッ

真姫「これがほのスメル、『レベル1』の状態。で、下ボタンを押せばレベルが下がるってわけ」カチッ

真姫「ねっ、0に戻った」

海未「ふむ……」

真姫「使い方はこれだけよ。最大で、レベル5まであるらしいわ」

海未「なるほど……」

真姫「はい、あげる」

海未「えっ、いいんですか?」

真姫「うん。だってそもそもほのスメルが何なのか分からないから、使いようがないし」

海未「……」

元スレ: 海未「ほのスメルを増幅させるスイッチ?」

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4: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:19:57.53 ID:GCT3hz5+.net
    
――――――


海未「……ほのスメル、ですか」

海未(真姫は知らなかったようですが……しかし私には、分かります)

海未(ほのスメル……即ち、穂乃果の匂い)

海未(穂乃果の身体から溢れ出る、あの甘い匂いのことを、きっとそう呼ぶのでしょう)

海未(幼馴染ゆえに、彼女と接近する機会の多い私は、いつもあの匂いに惑わされてしまいます)

海未(頭が蕩けてしまいそうな、あの独特な匂い……それを、増幅させるスイッチ?)



海未「……最高じゃないですか」



この時の私は、知る由もありませんでした。

この夢のようなスイッチが、後に、あんな『悲劇』を引き起こすことになるなんて……。
7: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:21:35.96 ID:GCT3hz5+.net
    
――――


部室



絵里「みんな集まったようね。それじゃ、着替えて練習にいくわよ」

凛「今日も練習いっくにゃーっ!」

にこ「ラブライブももう近いんだから、気を抜かずに行くわよっ!」

花陽「はい、頑張りましょうっ!」

希「ふふっ、みんなやる気満々やなぁ」

真姫「もう、暑苦しいわね……」

穂乃果「ことりちゃん、今日は一緒にストレッチしようよっ!」

ことり「うん。いいよぉー」

海未「……」



海未(一応あのスイッチ、試してみましょうか)

海未(二人きりの時でもいいのですが、今ならみんなの反応も見れますし……)


海未「まずはレベル1、と……」カチッ
 
9: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:23:29.35 ID:GCT3hz5+.net
   
フワァ


海未(おお、かすかに良い香りが漂ってきました……)


穂乃果「えっと、カバンカバン……」

希「……あれ? 穂乃果ちゃん、香水つけてきたん?」

穂乃果「えっ、ううん……?」

希「そう……?」

ことり「あっ、穂乃果ちゃん、ついでに私のカバンから手鏡出してくれる?」

穂乃果「はーい」


海未(……近くにいた希が、変化に気づいた様子ですね)

海未(ことりは……反応なしですね。私と同じく穂乃果といつも一緒にいるので、この匂いには慣れているのでしょう)


にこ「ていうか真姫、新曲の方はどうなのよ?」

真姫「心配しなくても順調よ。A-RISEにだって負けない曲が、できそうだわ」

絵里「ふふっ、頼もしいわね」


海未(穂乃果から離れているメンバーは、気づいていないのか、気にしてないだけなのか……とにかく、反応なしです)

海未(……)

海未(しかし、これはすごいですね……)


スンスン


海未(ああ、穂乃果の匂いです……。レベル1で、これですか。この距離でも、穂乃果とすぐ近くにいるような錯覚を覚えます……)
  
10: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:25:49.65 ID:GCT3hz5+.net
     
海未(次は……レベル2です)


カチッ

フワッ


海未(……っ!)



にこ「……あれ?」

絵里「どうしたの?」

にこ「なんか、いい匂いしない?」

真姫「……えっ?」

凛「あ、そういえば……」スンスン

花陽「なんか、甘い香りが……」スンスン

海未(こ、これは……っ!)



海未「……」スゥ、ハァ




海未「はぁ~~っ////」


海未(すごいです……っ! ま、まるで穂乃果と抱き合っているかのように、はっきりと匂いが……っ!)
    
11: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:28:08.04 ID:GCT3hz5+.net
  
絵里「……ほんと。良い匂いだわ」クンクン

ことり「何だかこの匂い、知ってるような……」

穂乃果「え、匂い? 全然わかんないよー?」クンクン

海未(増幅させても、穂乃果自身にはわからないようですね)

海未(しかしレベル2で、部屋に充満するほど匂いが強くなるとは……。素晴らしすぎますよ、このスイッチ)



花陽「ふわぁ……。なんだか、気持ちよくなってきちゃいました」

凛「うん……。凛も、頭がボーっとしてきたにゃ……」

絵里「ちょっと、大丈夫?」

真姫「でも確かにこれ、ずっと嗅いでるとやばいかも……」

にこ「んー……どうも、そっちの方から漂ってくる気がするわね」スタスタ

穂乃果「えー、ほんとー?」

希「うーん。やっぱり、穂乃果ちゃんから……?」



海未「……さて」


海未(ワクワクが止まらないので、そろそろレベル3に行きましょうか)
13: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:32:35.48 ID:GCT3hz5+.net
   
ことり「あれ、海未ちゃん。それ、なに持ってるの?」

海未「わあぁぁっ!? な、なんでもないですっ!」ササッ

ことり「そ、そう?」

海未(と、後ろに回した手で……)


にこ「あー、すごい。癖になりそう……」クンクン

希「なんやろなぁ、ほんと……」クンクン

花陽「はぁ~……。この辺は、特にすごいです……」スンスン

穂乃果「えーっ!? 全然分からないよぉーっ!」

絵里「ちょっとみんな、早く着替えちゃわないと……」



海未(レベルアップっ!)


カチッ


ブワッ

 
16: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:35:16.83 ID:GCT3hz5+.net
     
「「――っ!!?」」



真姫「ちょっ……」

にこ「うっ……うわ、うわっ」

凛「こ、これ……」

穂乃果「えっ? ど、どうしたの?」

絵里「さ、さっきより匂いが、強まって……っ!?」


海未(こ、これは、まるで……)


海未(穂乃果を押し倒し、そのまま彼女の身体に思いきり顔を埋めているかのような……)

海未(いえもう、穂乃果のシャツの中に入り込んで、直接匂いを嗅いでるかのような……)



希「うわ、うわぁぁ……///」

花陽「ふわわぁぁ……///」

ことり「な、なにこれ、すごいよぉ……////」



海未(と、とにかくこれは……っ!)


海未「あぁ~////」
 
19: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:38:12.45 ID:GCT3hz5+.net
    
にこ「や、やばい……やばいわよ、この匂い……っ///」クンクン

真姫「うわぁあぁ、すごい……っ///」クンクン

ことり「はぁ~~ん///」スンスン

凛「うにゃ~///」スンスン

穂乃果「えっ、えっ? みんな、どうしちゃったのっ!?」

花陽「はぁ、はぁ……///」クンクン

絵里「身体が、熱い……////」スンスン

希「ふわぁあぁ……っ! これ、ほんまにあかんっ////」スンスン

海未「あ、あぁ、すごい、すごいですよ、穂乃果ぁ……っ!」スンスンスン

穂乃果「どういうことっ!? 海未ちゃん、みんなっ! しっかりしてぇっ!」



海未(あ、あぁ、頭がおかしくなりそうです……っ!)

海未(こんな強烈な、穂乃果の匂い……ほのスメルは、今まで嗅いだことがありません……っ!)

海未(こ、これは、もう、流石に……っ!)
  
21: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:41:17.85 ID:GCT3hz5+.net
   
カチッ


海未「はぁっ、はぁっ……!」


カチッ

カチッ


フッ


海未(レベル0に戻して……)


ガラッ


海未(窓を……。これで……)




にこ「はぁ、はぁ……あ、あれ?」

絵里「匂いが……消えた?」

真姫「……みたい、ね」

海未(レベル0に戻した途端、一瞬で匂いが消えました……)



花陽「はぁ……///」

凛「まだ頭がボーっとしてるにゃ……」

希「……ウチ、しばらくあの匂い、忘れられそうにないかも」

ことり「な、なんだろうね。良い匂いだったけど、なんだかすごく、なんていうか……」

海未「ええ……。なんだかすごく、エッチな気分になりましたね……」

ことり「えっ!?」

海未「あっ! いえ、なんでも……」

穂乃果「……??」
  
27: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:44:17.47 ID:GCT3hz5+.net
   
海未「……そ、それよりもっ!」パンパンッ

にこ「えっ?」

海未「これから練習なんですからっ! 早くみんな、着替えてくださいっ!」

真姫「あんただって、全然着替えてないじゃない……」

海未「うっ、分かってますよっ!」

ことり「あはは……あ、穂乃果ちゃん。手鏡ありがとうね」

穂乃果「う、うん……」

凛「よ、よーし、凛は、先に屋上行ってるよっ!」

花陽「あ、わ、私もっ!」

希「あー、熱い熱い。あはは……」パタパタ

絵里「ほんと、なんだったのかしら……」



海未「……」ブルッ

海未(……なんですかさっきのは。危うくμ'sが、崩壊しかけましたよ……)

海未(まさかここまでとは……。予想以上に恐ろしいスイッチですね……)

海未(……いえ。本当に恐ろしいのは、スイッチの方ではなく――)チラッ


穂乃果「んー、そんなに良い匂いだったんだ。穂乃果も嗅いでみたかったなぁ」

ことり「ほんとに何も匂わなかったの? 不思議だなぁ」


海未(人をここまで惑わす、ほのスメル……)

海未(そしてそれをその身に宿す、穂乃果自身……ですか)
   
34: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/21(金) 23:59:22.39 ID:GCT3hz5+.net
  
――――


数日後……




穂乃果「海未ちゃん、一緒にかえろーっ!」

海未「は、はい。ことりは?」

穂乃果「バイトがあるから、先に帰るって」

海未「そうですか。では、行きましょうか」

穂乃果「うんっ」

海未(……と、その前に)

カチッ

フワァ


海未(……はぁ、癒されます。この匂い……)

穂乃果「海未ちゃん?」

海未「あ、いえ……い、行きましょう」
 
36: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:02:08.68 ID:/s3oTNs7.net
  
スタスタ


穂乃果「でねー、にこちゃんがー」

海未「ふふっ。そうですか」



海未(……結局スイッチはあれ以来、レベル1までしか使っていません)

海未(レベル1までなら、すれ違った人がたまに振り返る程度で済みますし……そこまで刺激は強くないですからね)

海未(特にみんなの前でこれは、絶対押してはなりません。二度とあのようなことを、起こさないためにも……)


穂乃果「それでね、絵里ちゃんがー」

海未「……」


海未(あれが穂乃果の匂いだったということは、恐らく誰も気づいてないでしょう。ましてやこのスイッチで、操作してたことなど……)

海未(可能性があるとすれば、真姫ですが……。何も言ってこないので、多分気づいてないのでしょう)

海未(どちらにせよこのスイッチのことは、誰にも知られるわけにはいきません……)


穂乃果「海未ちゃん、聞いてるー?」

海未「あっ、は、はい」
 
37: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:04:55.63 ID:/s3oTNs7.net
  
スタスタ


穂乃果「~♪」

海未「……」スンスン


海未(……しかし)

海未(レベル1ではそろそろ、物足りなくなってきましたね)

海未(かといって、あまり無闇にスイッチを使うのも……)


海未「……」ススッ

穂乃果「わっ。どうしたの、海未ちゃん?」

海未「いえ……。こうしてくっついて歩くのも、いいじゃないですか」

穂乃果「あははっ、そうだね。いいかも……」

海未「……」スンスン

海未(んん……。近づいた分、先ほどよりは匂いが強まりましたが……もう少し刺激が欲しいところですね)

海未(……レベル2くらいまでなら、今使っても大丈夫ですかね……?)


穂乃果「えへへ。じゃあ海未ちゃん、腕組んじゃおっか?」

海未「へっ?」

穂乃果「えいっ♪」ギュッ

海未「っ!!」
 
40: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:08:55.38 ID:/s3oTNs7.net
 
海未(こ、これは……)

穂乃果「海未ちゃ~ん♪」スリスリ

海未「ど、どうしたんですか急に……」

穂乃果「だって海未ちゃんの方からくっついてきてくれたのが、嬉しかったんだもんっ」

海未「……」

穂乃果「海未ちゃん、大好きっ!」ギュッ

海未「……」

海未「かわいい……」ボソッ

穂乃果「えっ?」


海未(……何を怖気づいてるのですか、私は)

海未(こんなに可愛い穂乃果が、すぐそばにいるというのに……)

海未(この素晴らしいスイッチを、使わないでどうするんですかっ!)


海未「……穂乃果」

穂乃果「な、なに?」



海未「今から、私の部屋に来ませんか?」
 
47: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:13:47.67 ID:/s3oTNs7.net
  
――――

海未の部屋


バタン


海未(……さて、と)



海未「では、今日の宿題を終わらせてしまいましょうか」

穂乃果「えーっ!? 遊ぶんじゃないのぉーっ!?」

海未「宿題を終わらせてからです」

穂乃果「うぅ~、騙されたぁ……」

海未(まずは自分の宿題を、さっさと終わらせて……)




海未「私の方はもう終わりましたが、そちらはどうですか?」

穂乃果「えっ!? は、早い……」

海未「……全然できてないじゃないですか。これでは遊べませんよ」

穂乃果「そんなこと言われても……全然分かんないんだもん」

海未「仕方ないですね。私も手伝います」

穂乃果「ほんとっ? ありがとぉー」

海未(隣に移動して……)

カチッ
  
53: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:19:00.82 ID:/s3oTNs7.net
  
フワッ


海未(おおっ……っ!)


穂乃果「教えて教えてー」

海未「え、えっと、ですね……。ここをこうして、ですね……」

穂乃果「ふんふん……」


海未(し、至近距離での、レベル2……これは、す、すごいですね……)

海未「あぁ~」

穂乃果「……? 海未ちゃん?」

海未「はっ! ほ、穂乃果、何をボーっとしてるんですか。ちゃんと理解できたんですかっ!?」

穂乃果「えっ……。今ボーっとしてたのって、海未ちゃんの方じゃ」

海未「理解できたんですかと聞いてるんですっ!」

穂乃果「うっ……。ご、ごめん、もう一回教えて……」

海未「ま、全く、仕方ないですね……ですからここは、こうして……」



海未(あぁ……閉め切った部屋に、穂乃果のにおいが広がっていく……)

海未(しあわせです……)
 
54: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:22:03.72 ID:/s3oTNs7.net
  
穂乃果「できたーっ!」

海未「ふぅ……ようやく終わりましたね」

穂乃果「ありがと、海未ちゃんっ。これで今日はもう、ゆっくりできるよぉー」

海未「いえいえ……それにしても疲れましたね。私、ジュース持ってきます」

穂乃果「お、やったぁー。私、喉カラカラだよぉ」


バタン



海未(ふぅ……しかし、ほのスメルが充満した部屋に、これだけ長くいると……)

海未(……ムラムラ、してきますね)

海未(今、お母様は買い物に出かけていて、いない……。家には穂乃果と、二人きり……)

海未(周りを気にせず、スイッチを存分に使える……)

海未(……ということは)

海未(『あれ』を確かめる、絶好の機会……っ!)
 
56: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:26:58.71 ID:/s3oTNs7.net
  
バタン

海未「はい、どうぞ」

穂乃果「ありがとぉー」

海未「……」

海未(もう宿題は終わってしまいましたし、隣に座るのはおかしいですかね……)

海未(仕方ない、ここは正面に座るしかありませんね……。むぅ、一度席を立ってしまったばっかりに……)


穂乃果「んっ……ぷはぁ、おいしぃーっ!」

海未「そ、そうですか。それは良かったです」モジモジ

穂乃果「んー、それじゃ、何して遊ぼうか?」

海未「特に何もせず、ダラダラお喋りというのもいいんじゃないですか?」

穂乃果「それも、そうだね。ふぅー」

海未「……っ」モジモジ

穂乃果「……?」



海未(くっ……。匂いが、匂いが弱い……っ!)

海未(スメルがぁ……っ! スメルが足りないっ! し、しかし、彼女に近づく理由が……っ!)

海未(こ、こうなれば、仕方ありません……っ!)


スッ


海未(……大丈夫。今は二人きり、誰にも迷惑をかけることはありません……っ!)

海未(むしろこの機会を逃せば、次はいつになるか……)


海未(……今です。今いくしか、ありませんっ!)



カチッ


海未(あの日以来の、ほのスメル、レベル3……っ!!)
  
59: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:31:40.06 ID:/s3oTNs7.net
 
ブワッ

海未(……っ!!)

海未(き、きた、きた……っ!)

スゥゥ

海未(あの時の……レベル3の匂いですっ!)

海未(『穂乃果のシャツの中に入り込んで、直接匂いを嗅いでるかのような』感覚が、再びっ!)


穂乃果「はぁ~、やっぱり、海未ちゃんの部屋は落ち着くなぁ」

海未「うっ……」

穂乃果「そうだ。今度、昔みたいにお泊り会とかしない? ことりちゃんも呼んでさ」

海未「あぁ~」

穂乃果「きっと楽しいよっ! あ、その時は私、トランプとか持ってくるね」

海未「はぁ、はぁっ!」

穂乃果「……う、海未ちゃん?」

海未「はぁ……きょ、今日は、暑いですねっ!」

穂乃果「えっ、そうかな……」


海未(か、体が、熱いです……っ!)

海未(興奮が、抑えきれない……っ! 穂乃果の顔を、まともに見れませんっ! これは、この気持ちは、一体……っ!)

海未(う、うぁ……。レベル3は、やはり……っ! 刺激が強すぎます……っ!)


海未「あ、あぁ、あっ~///」カァァァ

穂乃果「う、海未ちゃん、顔赤いよ?」

海未「うっ、えっ……」

穂乃果「それに、息も荒いし……大丈夫?」

海未「だ、大丈夫、です。大丈夫、ですから……っ!」

穂乃果「……もしかして、熱でもあるんじゃ」

海未「だいじょ……へっ?」

ピト

海未「――っ!!?」
 
65: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:36:03.63 ID:/s3oTNs7.net
     
穂乃果「ん~……」

海未「あっ、あ……」


海未(穂乃果が、おでこを……。か、顔が、こんなに、近くに……っ!)

海未(レベル3を、こんなに近くで……っ!)

海未(に、においが、かおが、あ、あぁ……っ!)


穂乃果「……んん」

海未「あ、ほ、ほの、かぁ……」


海未(穂乃果のお顔……あぁ、なんて可愛らしい……っ!)

海未(穂乃果……ほのか、ほのか、ほのか……っ!)


穂乃果「……」

海未「ほ……」

穂乃果「……ごめん、分かんないや」テヘッ


ドンッ

穂乃果「きゃぁっ!?」

海未「ほのかぁっ!!」ガバッ
  
68: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:40:41.42 ID:/s3oTNs7.net
   
海未「はぁ、はぁ……」

穂乃果「う、海未ちゃん……?」


海未(……もう、限界です)

海未(レベル3を、こんな至近距離で嗅がされたら……)

海未(もう、確かめるしかないじゃないですか。『あれ』を……っ!)

海未(すなわち、『穂乃果のシャツの中に入り込んで、直接匂いを嗅いでるかのような』感覚を味わえる、レベル3を――)

海未(本当に『穂乃果のシャツの中に入り込んで、直接嗅いだら』……一体どんな感覚を、味わえるのかっ!)



海未「ふっ、ふふ……」

穂乃果「あ、あの……う、海未ちゃん、どいて? 重いよ……」

海未「大丈夫です、すぐに終わりますから……」

穂乃果「えっ……?」


海未(穂乃果の汗のしみついたシャツの、その向こう側……)

海未(そこは、この世界で最もほのスメルが集まる場所……っ! そこに今から、私は――)


海未「――イキますっ!!」
   
  
75: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:45:06.34 ID:/s3oTNs7.net
    
「うみさーんっ! 帰ってるのーっ?」


海未「――っ!?」ビックゥ!

穂乃果「……?」

海未(お、お母様……っ!?)


海未「は、はぁいっ!」


「お部屋にいるのーっ?」


海未「は、はい、穂乃果もいますっ!」

穂乃果「あ、お邪魔してまーすっ!」


「あら、そうなの。ゆっくりしていってくださいねーっ」


穂乃果「はーいっ」

海未「……っ!」ササッ

穂乃果「……」

海未「はぁ、はぁ……」

穂乃果「……海未ちゃん」

海未「はいっ!?」

穂乃果「あのさ……」

海未「は、はい……」


海未(終わった……)
 
79: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:49:49.01 ID:/s3oTNs7.net
   
穂乃果「……穂乃果、ちょっとドキドキしたよ」

海未「……はい?」

穂乃果「いやぁー、まさか海未ちゃんに、押し倒されるなんて思わなかったよぉー。あはは」

海未「……あの」

穂乃果「これ、あれだよね。流行りの、『壁ドン』ってやつだよね? 穂乃果、初めて体験したよぉ……あれ、壁?」

海未「ち、違いますよ。今のは、『床ドン』です。今の流行は、床に手をつく『床ドン』です」

穂乃果「そっかぁ。どっちにしろ、ドキドキしたよ。あはは、ビックリしたぁー」

海未「ふ、ふふ、ごめんなさい、急に……」

穂乃果「ううん、面白かったからいいよっ」

海未(た、助かりました……。壁ドンが流行っていてくれて、助かりました……っ! 流行に疎い私がたまたまそれを知っていたのも、奇跡です……っ!)

海未(それにあと数秒遅かったら、私は完全に穂乃果の服を、脱がせにかかっていました……。そしたら冗談では、済まなかったかもしれません……)

コソコソ

カチッ、カチッ、カチッ

フッ

海未(……レベル、リセットです)

海未(あぁ、私は一体、何てことを……穂乃果に一体、何てことをしようとしてたんでしょう……)

海未(あと一歩で、自分の欲望のままに、穂乃果を傷つけるところでした……)

海未(このスイッチは、やはり危険です……レベル1までの使用に、留めるべき……)

海未(……いえ、もう二度と、使うべきではないかもしれませんね)
  
81: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:55:20.89 ID:/s3oTNs7.net
  
――――


次の日


チュンチュン


ガバッ


海未「……」

海未「ゆ、夢ですか……」



海未(錯覚でしょうか……。かすかにまだ部屋に、昨日の穂乃果の匂いが残っているような……)

海未(そのせいか、変な夢を見てしまいました……いえ、もう深く内容は思い出せませんが、穂乃果とエッチなことをする夢だったのは確かです……)

海未(女の子同士なのに……これではまるで、変態です……)


海未「……まだ少し、早いですね」

海未「いえ、今日は早めに出て、一人で学校に行くとしましょうか……。今は穂乃果とまともに顔を合わせられる自信がありません」

海未「……」チラッ


海未(スイッチ……)
  
82: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 00:58:56.87 ID:/s3oTNs7.net
  
――――

教室


海未「この時間だと、あまり人はいませんね……」

海未「……」


海未(……やはり)

海未(スイッチはもう、使うべきではありません……周りどころか、穂乃果本人にさえ迷惑をかけてしまいます)

海未(しかし、このまま持っていれば……誘惑に負けて、いずれ使ってしまう可能性も……)

海未(……となるとやはり、真姫に返すべきでしょう)

海未(今日は練習がありますから……放課後に、集まった時……)

海未(……いえ、それでは遅いです。今の私なら、次に穂乃果と顔を合わせたその瞬間に、使ってしまいかねない)

海未(穂乃果と顔を合わせる前に……今すぐ一年生の教室に向かいましょう……)

海未(スイッチを持って……あれ?)

ゴソゴソ

海未(ポケットに入れといたはずの、スイッチが……)



海未(ない……?)
86: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 01:04:15.68 ID:/s3oTNs7.net
   
――――

ことり「おはよー、穂乃果ちゃん」

穂乃果「おはよっ! それじゃ、いこっかっ」

ことり「うん……。そういえば、どうしたんだろうね、海未ちゃん。今日は先行くってメール着てたけど」

穂乃果「早く起きすぎちゃったのかなぁ。メール着てた時間、私まだ寝てたし」

ことり「あはは……。穂乃果ちゃんも、たまには早く起きるようにすればいいのに」

穂乃果「えー、無理だよぉ」

ことり「諦めるの早いね……」

穂乃果「うーん、だって穂乃果、朝は本当に……あれ?」

ことり「どうしたの?」

穂乃果「なんだろ……何か落ちてる」

ことり「えっ?」

穂乃果「……?」


ヒョイ


穂乃果「……」


穂乃果「ボタンが付いてる……。なにこれ……?」
   
130: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:09:23.50 ID:/s3oTNs7.net
ことり「……? なにそれ?」

穂乃果「わかんない……。ここ、『0』ってなってるけど」

ことり「小っちゃいボタンが二つ付いてるね……」

穂乃果「よし、押してみよう」カチッ

ことり「あっ、あまりいじらない方が……」


フワァ


ことり(……あれ?)

穂乃果「あっ。『1』になったよ」

ことり「ほ、ほんとだ……」

穂乃果「もう一回押してみよう」

カチッ

フワッ

穂乃果「……あっ、やっぱり『2』になった」

ことり「……//」スンスン

穂乃果「ことりちゃん? どうかした?」

ことり「う、ううん、なんでも……」

スンスン

ことり(こ、これ……この、甘い香り……)

ことり(そうだ、前に部室でも嗅いだ……でも、これって……)

ことり(穂乃果ちゃんの匂い、だよね……?)

ことり(穂乃果ちゃんの匂いが、つ、強くなってる……? な、なんで……?)
131: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:17:31.18 ID:/s3oTNs7.net
  
カチッ

フワァ


穂乃果「あっ、『1』になった。こっちを押すと、数字が下がるんだ」

ことり「……っ」

ことり(あれ……。匂いが、弱まったような……?)

ことり(……)

ことり(……まさか)


穂乃果「うーん。でも、これだけかぁ」

ことり「き、きっと、あれだよ。何かを数えたりするときに、使う道具なんだよ」

穂乃果「なぁんだ、そっか……」カチッ

フワッ

ことり「あっ……」

スンスン

ことり(っ! ま、まただ……また強くなった……。や、やっぱり……っ!)

ことり(でも、なんで……? なんでこの匂いを、嗅ぐと……)

ことり(体が熱くなって……頭が蕩けそうに、なるの……?)


ことり「ほ、穂乃果ちゃん……も、もう……」

穂乃果「何かに使えないかな……あっ、そうだ」

ことり「えっ……?」

穂乃果「腹筋の回数を数えるのとかに、使えるかもっ? こうやって、さんっ、しっ……」


カチッ、カチッ


ブワァッ!
 
133: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:23:55.22 ID:/s3oTNs7.net
  
ことり「――っ!!?」


穂乃果「って、普通に口で数えた方が早いか……あれ、ことりちゃん?」

ことり「あっ、あぁ、あっ……」フラフラ

穂乃果「ことりちゃんっ!? どうしたのっ!?」

ことり「うわぁ、ふわぁあ……////」

ことり「あああぁあぁ、あぁあっ!!///」ビクンッ


ことり(あっ、うわ、うわぁあぁあ……っ!? なに、これ……っ!?)

ことり(からだが……あっ、あぁっ! あつい、あついよぉ……っ!)

ことり(あ、ああぁ、あたまが、ふわふわして……。と、とけちゃうぅぅ……っ/////)


フラッ


穂乃果「っ!? ことりちゃんっ!」ガシッ

ことり「あぁ、ほ、ほのか、ちゃ、ああぁっ……////」トロォン

穂乃果「ことりちゃんっ! し、しっかりしてっ!」

ことり「はぁ、ぁ……////」


ことり(……)

ことり(ボタン……スイッチ……すうじ……)

ことり(……『4』?)

ことり(おすと……においが……つよく……)


ことり「……っ!!」
 
134: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:28:31.32 ID:/s3oTNs7.net
  
ググッ……

ことり「ほ、ほの、かちゃん……そ、それ……」

穂乃果「えっ!? な、なに……?」

ことり「……うっ」グイッ

ことり(下ボタン……)


カチッ、カチッ、カチッ、


穂乃果「ことり、ちゃん……?」

ことり「あと……いっかい……」


カチッ……

フッ


ことり「は、ぁ……のか、ちゃん……」

穂乃果「ことりちゃんっ! ま、待っててっ! 今、救急車を」

ことり「それ……その、スイッチ……」

穂乃果「……えっ? な、なにっ!? 聞こえないよっ!」

ことり「だ、め……」

ことり「……」


ガクッ


穂乃果「ことりちゃんっ!? ことりちゃんっ! ことりちゃん――」
 
135: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:32:03.43 ID:/s3oTNs7.net
  
――――


――りちゃん……っ! 


ことりちゃん……っ! ことりちゃんっ!


穂乃果「ことりちゃぁんっ!」

ことり「……」

パチッ

ことり「……あれ?」

穂乃果「っ! ことりちゃんっ!」

ことり「ほのか、ちゃん……?」

海未「ことり……っ!」

真姫「ことりっ! よかった、目を覚ましたのね……っ!」

ことり「ここは……」


ことり(病院……?)

ことり(……そうだ、私――)
 
136: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:35:32.83 ID:/s3oTNs7.net
  
真姫「ここは、西木野病院よ。あなた、急に倒れたらしくて、ここに運ばれてきたのよ」

海未「それから半日ほど、あなたは眠ってたんです」

ことり「……そっか」

穂乃果「ことりちゃんっ!」ガバッ

ことり「わっ……」

穂乃果「良かったよぉ、目を覚ましてくれて……」グスッ

ことり「あ、あはは……心配させちゃって、ごめんね」

海未「でも何事もなさそうで、よかったです……」

真姫「そうね。検査してみたけど、どこにも異常はなかったわ。外傷もないし、入院する必要はなさそうね」

ことり「きっと、疲れてたのかも。練習やバイトで、忙しかったから……」

海未「くれぐれも、無理だけはしないようにしてくださいね……」

ことり「うん……」

穂乃果「ことりちゃぁん……」ギュゥ

ことり「……」


ことり(穂乃果ちゃん……)
 
138: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:38:14.41 ID:/s3oTNs7.net
  
ズキン

ことり「……っ」

ことり(頭、痛いな……)


ヴーヴー

真姫「……あっ、みんなも着いたみたい。ちょっと私、入り口まで迎えに行ってくるわ」

海未「私も、お手洗いに……。穂乃果、ことりをちゃんと見ててくださいね」

穂乃果「うん……」グスッ

ことり「……」



ガラッ


海未「……」


『穂乃果……? どうしたんですかっ!?」

『う、海未ちゃん……っ! ことりちゃんがぁっ!』


海未(……あの後、落としたスイッチを探しに、通学路を戻っていた私は……通学途中の穂乃果と、ことりを見つけました)

海未(ですが穂乃果は泣いていて、ことりは、意識を失っていました……)

海未(急いで救急車を呼んで、そのまま病院に……なのでスイッチは結局、見つけられませんでしたが)

海未(そんなことは、どうでもいいです……。ことりが無事で、よかった……)

海未(やはり疲労が、原因だったのでしょうか。これは過酷な練習メニューを組んだ、私の責任でもありますね……)

海未(あとでちゃんとことりには、謝罪しなくては……)
 
141: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 22:45:01.72 ID:/s3oTNs7.net
 
ことり「穂乃果ちゃん」

穂乃果「うっ、うっ……。えっ……?」

ことり「スイッチは?」

穂乃果「……えっ? す、スイッチ?」

ことり「ほら、今朝拾ったでしょ?」

穂乃果「あっ、えっと……。どうしたっけ……?」ゴソゴソ

ことり「……」

穂乃果「あ、あった……。ポケットにしまってたんだ」

ことり「貸して?」

穂乃果「えっ……い、いいけど。はい」

ことり「……」

カチッ

フワァ

ことり「……」スンスン

穂乃果「……あの、ことりちゃん?」

カチッ

フッ

ことり「……これ、私が貰ってもいいかな?」

穂乃果「えっ、別にいいけど。何に使うの?」

ことり「バイトでお皿数えるのに使おうかなーって」

穂乃果「あっ、なるほど……」

ことり「あと一応、他の人には内緒ね。ほら、拾った物を使ってるなんて、恥ずかしいし」

穂乃果「そうだね。分かったよっ」

ことり「……ふふっ」
 
150: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:11:45.73 ID:/s3oTNs7.net
    
――――

数日後……


海未(結局あれから通学路、学校中を探し回りましたが、スイッチは見つかりませんでした……)

海未(しかしそうなると、誰かに拾われた、という可能性が……)

海未(でも今のところ、私と一緒にいる限りでは、穂乃果の匂いが強まることはなかったですし……)

海未(何も知らない人が拾ったのなら、とりあえず一度は押してみるはず……)



ことり「ねえ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「なに?」

ことり「今日、私の家に来ない?」

穂乃果「えっ? でもことりちゃん病み上がりだし、ゆっくり休んだ方が……」

ことり「私はもう全然、平気だよ。それに私、穂乃果ちゃんといた方が、元気になれるし」

穂乃果「ほんと……? えへへ。じゃあさ、明日は学校休みだし、お泊り会しよっか」

ことり「お泊り……?」

穂乃果「この前、海未ちゃんと話してたんだー。あっ、でもことりちゃん家に、迷惑が……」

ことり「ううん、いいよ。お泊り会、しよっか」

穂乃果「ほんとっ? じゃあ海未ちゃんも、誘ってみるねっ」

ことり「……」



海未(いえ。そうとは限りませんか。拾った後で、どこか別の場所に捨てられた可能性も……)

海未(……あるいは)

海未(あのスイッチの仕組みを理解し、無闇に押すことの危険性を知っている、誰かが拾い……『押さずに持っている』という、ことも……?)

海未(……しかし、私以外にあのスイッチの意味を理解している者など……)
 
151: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:16:32.29 ID:/s3oTNs7.net
  
穂乃果「海未ちゃんっ!」

海未「……穂乃果ですか。どうしました?」

穂乃果「今日さ、ことりちゃん家でお泊り会するんだけど、海未ちゃんもどうかなっ?」

海未「今日、ですか……。ごめんなさい。実は明日、弓道部の方で大会があるんです。今日はその、練習が……」

穂乃果「あっ……。そういえば、言ってたね……」

海未「なのですいません、また今度、ということで……」

穂乃果「うん、わかったっ。じゃあ明日はことりちゃんと、応援にいくねっ」

海未「本当ですか? ありがとうございます」


海未(……穂乃果)

海未(一応、通学路は一緒ですし……拾っている可能性も……)

海未(……ダメもとで、聞いてみますか)


穂乃果「それじゃねっ」

海未「あの、穂乃果っ」

穂乃果「えっ?」

海未「これくらいの、小さなボタンがついてて、液晶画面がある、おもちゃのようなものを……どこかで、見ませんでしたか?」

穂乃果「あっー、それってもしかしてこの前、道で拾ったアレかな?」

海未「っ!?」
 
152: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:21:02.31 ID:/s3oTNs7.net
  
海未(ま、まさか……)

穂乃果「何か物を数える時に使う道具でしょ? ボタンを押したら、数字が増えるの」

海未「そ、そうっ! それですっ!」

海未(まさか『ほのスメル増幅スイッチ』を、穂乃果本人に拾われているなんて……っ!)

海未(でもスイッチの効果にまでは、気づいてない……?)

穂乃果「あっ、もしかしてアレって、海未ちゃんのだったの?」

海未「そっ……そうですっ。私のですっ! そうですか、あなたが拾ってくれてたんですね……っ!」

穂乃果「あれ結局、何に使う道具なの? ことりちゃんは、お皿を数える時に使うって言ってたけど……」

海未「腹筋の回数を数えるのに使うんですっ! それで、えっと……か、返してもらえますかっ?」

穂乃果「えっ、でもアレは、今は……あっ」

海未「はいっ!?」

穂乃果「……しまった。これ、内緒なんだった……」

海未「なにが内緒なんですっ!? あれは、私の物ですよっ!?」

穂乃果「あっ、そっか……じゃ、仕方ないよね。アレは、今……」

海未「今……?」

穂乃果「……ことりちゃんが、持ってるんだ」

海未「……ことり?」
 
154: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:25:10.99 ID:/s3oTNs7.net
    
穂乃果「バイトで使うらしくって、だからことりちゃんにあげたんだ」

穂乃果「ごめんね、海未ちゃんの物だなんて知らなかったから……。でもことりちゃんに言えば、きっと返してくれると思うよ」



海未「……あの、ことり?」

ことり「あっ、海未ちゃん。今日のお泊り会、楽しみだねえ」

海未「ごめんなさい。明日、弓道の大会があるので、私は……」

ことり「あぁ、そういえばそうだったね。忘れてたよ。残念だなぁ」

海未「……そんなことより、スイッチは、あなたが?」

ことり「スイッチ? なんのこと?」

海未「知らないんですか? 穂乃果があなたに渡したと、言ってるんですが……」

ことり「……」

ことり(穂乃果ちゃん……内緒って言ったのに……)


ことり「あぁ、あのスイッチ? 確かに私が、貰ったけど……」

海未「返して頂きたいのですが……。あれは、私が落とした物なんです」

ことり「……えっ」


ことり(海未ちゃんが、落とした……?)

ことり(穂乃果ちゃんの、匂いが強くなるスイッチ……。あれは、海未ちゃんの物だったの……?)
 
155: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:31:10.36 ID:/s3oTNs7.net
  
海未「ことり……?」

ことり「……あれ、もう捨てちゃったんだ」

海未「えっ!?」

ことり「バイトで使おうと思ったら、すぐに壊れちゃって。だから、捨てちゃった」

海未「なっ……」

ことり「ごめんね……。海未ちゃんのだとは、知らなかったから。弁償するよ、いくら?」

海未「い、いえ……。100円均一で買ったものですから、気にしないでください」

ことり「そう? ごめんね、本当に……」

海未「はは、大げさですって……。たかが100円で……」


海未(100円なわけないですっ! あれは、100万円払う価値のある代物ですっ!! ことり、なんてことを……っ!)

海未(うぅ、しかしこの前のこともありますし、ことりにはあまり強く言えません……っ!)

海未(いえ、そもそも……。私はもう二度とあれを使うつもりはなかったんですから……。真姫に返すつもりだったんですから、そんな悲しむこともないはずです……)

海未(むしろ壊れたのなら、好都合じゃないですか……。他の誰かの手に渡る前に、壊れたのなら……)

海未(……)

海未(……くぅ)


海未「そ、それでは。私はこれで……また今度、お泊り会しましょう」

ことり「うん。そうだね、楽しみにしてるよ」

海未「はい……」


スタスタ


ことり「……」
 
157: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:41:43.89 ID:/s3oTNs7.net
 
――――

ことりの部屋


ことり「はい、穂乃果ちゃん。マカロン、焼けたよぉ」

穂乃果「やったぁー。いっただきまぁすっ!」

ことり「どうぞー」

穂乃果「もぐもぐっ。おいしいぃっ! やっぱりことりちゃんの作ってくれるマカロンは、最高だよぉっ!」

ことり「あはは……。これ食べたらちゃんと、宿題やろうね?」

穂乃果「分かってるよっ! これ全部食べたらねっ! もぐもぐっ……」

ことり「……」


ことり(家には今、誰もいない……)

ことり(準備は、昨日のうちに全部済ませた……)

ことり(『縛り方』も、ちゃんと調べた……)

ことり(スイッチも、いつでも押せるように、ポケットに……)

ことり(……あとは――)


穂乃果「はぁー、おいしかったー」

ことり「よかったぁ。じゃ、宿題やろっか」

穂乃果「うん……。でもお腹いっぱいになったら、なんだか眠くなってきちゃったなぁ……」

ことり「えっ、でも宿題……」

穂乃果「うん、ちょっと眠ったら、すぐに……」

ことり「えー、穂乃果ちゃぁん……」




穂乃果「……」スゥスゥ

ことり「……」


カチッ

フワァ


ことり「……あはっ」
  
167: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/22(土) 23:56:46.91 ID:/s3oTNs7.net
   
――――


穂乃果「……」


穂乃果「……?」

穂乃果「……っ!?」

ことり「あっ、穂乃果ちゃん。起きた?」

穂乃果「んっ……。んぅっ!?」

ことり「今ね、ちょうど宿題が終わったとこだよ……。やっぱり良い香りに包まれてると、頭も冴えるねえ。勉強も捗るよ」

穂乃果「んっ……!?」

ことり「捗り過ぎて、穂乃果ちゃんの分までやっちゃったよ。これからは部屋の芳香剤捨てて、穂乃果ちゃんを置いとこうかな?」

穂乃果「っ! ふっ……っ!」

ことり「なーんて。あぁ、ビックリしたよね。ごめんね、いきなり」

ことり「でもね、理由があるんだよ。穂乃果ちゃんをこうして縛りつけて、口にタオルを巻いて、アイマスクを被せて、こーそくしてるのには、ちゃんとした理由があるんだ」

ことり「その理由はね……あ、その前に」

ことり「そろそろもう一つ、上げてみようか。『1』のままだと勉強は捗るけど、ちょっと物足りないしねえ――」


カチッ

フワッ


ことり「あはっ♪ すごぉい、穂乃果ちゃんの匂いだぁ……」スンスン

穂乃果「……っ!? ……っ!?」ガタガタ
   
168: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 00:08:45.81 ID:L/CNBsRl.net
  
ことり「あのね、穂乃果ちゃん……」スタスタ

ことり「……わっ。近づくと、もっとすごいや……。あぁー……」スンスン

穂乃果「っ! ん、んーっ!」

ことり「はぁはぁ、穂乃果ちゃん、すごいよ、いい匂いだよぉ……///」スンスン

ことり「大好きだよぉ、穂乃果ちゃん……」

ことり「かわいいなぁ、かわいいなぁ穂乃果ちゃん。匂い、匂いが可愛いよぉ……っ! あぁ、あぁー///」スンスンスン

穂乃果「んっ! んっ……!」

ことり「はぁ、はぁ……。あ、ご、ごめんね。いけない、いけない。ちゃんと、理由を説明しなきゃ」

穂乃果「ん……」

ことり「えーっとね。つまりこうやって、穂乃果ちゃんを縛り付けてる理由だけど……。実は私ね、これから穂乃果ちゃんに、すごくエッチなことをしようと思うの」

穂乃果「っ!?」

ことり「いきなり変なこと言って、ごめんね……。でも私がエッチなことをしようとしたら、穂乃果ちゃんきっと、抵抗すると思うの」

ことり「それが別に、私のことが嫌いだから抵抗するわけじゃないんだってことは、分かってるの。うん。女の子同士なのにいきなりそんなことを迫られたら、誰だって抵抗するよね」

ことり「でもね……最初はおかしなことだと思うかもしれないけど、本当はそれって、すごく素敵なことなんだよ」

ことり「っていっても、私も初めてだけど……。でもやってみたらきっと、すごく気持ち良いと思うよ」

穂乃果「ん、んっ……」フルフル

ことり「穂乃果ちゃんもきっと、気持ちよくなれるよ……。お互いが幸せになれることなのに、何も知らないからって抵抗するなんて、時間の無駄でしょ?」

ことり「だから……穂乃果ちゃんには抵抗するよりも前に、『知ってもらう』ことにしたんだぁ」

穂乃果「んーっ!? んーっ!」

ことり「大丈夫、穂乃果ちゃんに抵抗する気がなくなったら、縄を解いてあげるからね。その頃には穂乃果ちゃんも、理解してくれてると思うから……」
   
170: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 00:15:54.45 ID:L/CNBsRl.net
  
ことり「はぁ、はぁ……///」スンスン

穂乃果「んっ……! んーっ!」

ことり「穂乃果ちゃんの、首すじの匂い……っ! はぁ、はぁ……っ!」スゥハァ

穂乃果「んぁっ! ぁ……」ビクッ

ことり「いい匂いぃ……かわいいよぉ……。穂乃果ちゃん、私、やっと気づけたよ……っ!」

穂乃果「ん……っ!?」

ことり「私ね、あの日、倒れた時……っ! 夢の中で、穂乃果ちゃんと、き、キスしたんだ……っ!」

ことり「でね……? 目が覚めて、穂乃果ちゃんの顔を最初に見た時、気づいたんだ……っ!」

ことり「私はずっと、穂乃果ちゃんのことが、大好きだったんだっ! ってっ!」


ギュウゥ


穂乃果「っ!! ん、んんーっ!!」ジタバタ

ことり「は、はなさないっ! はなさないよぉっ! あぁ、嗅ぎたい、もっと嗅ぎたいっ! あぁーっ!」

ことり「穂乃果ちゃんの汗っ! あせ、はぁ、はぁっ!」スゥゥ

ことり「あーっ! ねえ穂乃果ちゃん、もっと汗かけないかなっ!? 全然足りないよ、匂いがっ!」

穂乃果「んっ! んぅっ!」

ことり「ちょっと、やる気あるのっ!? もっと積極的に、新陳代謝を繰り返してよっ!! 穂乃果ちゃんっ!!」

穂乃果「ふっ、んぅ……」グスッ
 
174: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 00:27:22.86 ID:L/CNBsRl.net
  
ことり「はぁ、はぁっ! もういいや、我慢できないっ!」

カチッ

ブワッ

ことり「あ、あ……///」スゥゥゥ……

ことり「あははははははっ! すごい、すごいよぉっ! なにこの匂いっ!? 穂乃果ちゃんの体、どうなってるのっ!?」

穂乃果「……ふっ、うっ」ポロッポロッ

ことり「頭がどうにかなっちゃいそうだよぉっ! あは、あはは、はぁ、はぁっ!」

ことり「よ、よし、この『3』の匂いにも、体が慣れたら……っ! つ、次は、いよいよ……っ!」

ことり「あの時の、『4』の匂いを、嗅ぐんだ……っ! 今度こそ最後まで、倒れずに……っ!」

ことり「あの時のリベンジだ……っ! こ、今度は負けないからね、穂乃果ちゃんっ!」

穂乃果「う、うぅ~……」グスッ

ことり「はぁ~っ! さぁ、まだまだ先は長いよ、穂乃果ちゃんっ!」

ことり「今日の『お泊り会』は、寝かせないんだからっ! あはははぁーっ!」


スンスンスン……
  
206: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 21:47:25.12 ID:L/CNBsRl.net
  
――――

弓道場


バシュン



海未「……」


海未(……本当にことりは、あのスイッチを捨てたのでしょうか?)

海未(いえ……。決してあのスイッチに未練があるわけでは、ないのですが……)

海未(……ことりはバイトで、スイッチを使うつもりだった)

海未(お皿の数を、数えるために……。だけど使う前に、スイッチは壊れてしまった……)

海未(ことりは、知っていた……。『あのスイッチのボタンを押したら、液晶画面の数字が増えること』を……)


バシュン


海未(拾ったのは、穂乃果……。では穂乃果がそのことを、教えた……? だとしたらスイッチを使ったのは、穂乃果……)

海未(穂乃果はスイッチを、『この前道で拾った』と言った……。『この前』、とは……?)

海未(私はスイッチを落とした日に、通学路をくまなく探しまわった……しかし、見つからなかった)

海未(だったら穂乃果が言っていた『この前』は、やはり、あの日なのでは……?)

海未(あの日……私がスイッチを落とした日……。つまり――)


バシュンッ!



海未(ことりが通学途中に、倒れた日……っ!)
  
209: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 21:54:40.88 ID:L/CNBsRl.net
 
部長「あれ、外したのっ? 珍しいー」

海未「すいません部長、今日は帰りますっ!」

部長「はっ!? 明日大会よっ!?」

海未「辞退しますっ! さよならっ!」

タッタッタッ……


海未(間違いありません……っ! 穂乃果がスイッチを拾ったのは、あの日の朝、通学途中……っ!)

海未(その時に、ことりも一緒だった……っ! だとすると、あの日ことりが倒れた原因は、疲労なんかじゃない……っ!)

海未(あのスイッチが、押されたことで……ほのスメルが強まり、それを至近距離で嗅いでしまったために、倒れたんですっ!)

海未(レベル3なら、意識を失ってもおかしくないほどの刺激です……っ! きっと、それで……っ!)

海未(だとしたら……意識を失う前にことりは、スイッチの仕組みに気づいていたのでしょうか?)

海未(もしも……)

海未(もしもあのスイッチの正体を知っていながら、それを隠し、私に嘘をついていたのだとしたら……)


ピタッ


海未(……いえ)

海未(ことりはそんなことをするような、人じゃ……)

海未(ましてや幼馴染を、疑うなんて……)


『……そんなことより、スイッチは、あなたが?』

『スイッチ? なんのこと?』

『知らないんですか? 穂乃果があなたに渡したと、言ってるんですが……』

『あぁ、あのスイッチ? 確かに私が、貰ったけど……』


海未(……)

海未(あの時ことりは、私と同じように、『スイッチ』という言葉を使った……)

海未(私に合わせて言ったにしては、あまりにも自然な言い方でした)

海未(本来なら『ボタンを押せば画面の数字が増える』だけの道具を、『スイッチ』と呼ぶのはおかしい……)

海未(あの言い方は、ボタンを押すことがきっかけで、数字が増える以外の何かが起きることを、知っていたからこその……)


タッタッタッ……
211: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 22:06:23.67 ID:L/CNBsRl.net
   
――――

ことりの家


ピンポーン


海未「……」

海未「……っ!」ガチャガチャッ

海未(鍵は開いていない……)

海未「ことりっ!? いますかっ!? 海未ですがっ!」 ドンドンッ!


シーン……


海未「……穂乃果っ!? いるんですかっ!? いるなら返事をしてくださいっ!」


……


海未「……くっ! 携帯も繋がらないですし、どうすれば……」

海未「……」

海未(あそこの窓……少し、開いている?)

海未(あそこからなら……しかし……)

海未「……いえ、緊急事態ですっ! 仕方ありませんっ!」

海未「穂乃果、ことりっ!」

ガラッ
 
213: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 22:10:49.44 ID:L/CNBsRl.net
  
――――

ことりの部屋


バンッ


海未「ほの――」


ブワッ


海未「っ!? こ、これは……」



ことり「あははははっ! あはははっ! あははははははっ!」スゥハァスゥハァ

穂乃果「ふっー、ふっー……」ポロポロッ

ことり「穂乃果ちゃんのシャツの中、さいっこぉーっ! あはぁ、ははははっ!」モゾモゾ

ことり「ねえ、どうしてっ!? どうして穂乃果ちゃんはこんなに、エッチな匂いがするのっ!? なんなのこの体っ!?」

穂乃果「ん、ぅ……ふっ……」

ことり「ぺろっぺろっ、おいしぃっ! 穂乃果ちゃんの汗、おいしいぃよぉっ! あ、あぁーっ!」

ことり「んんっ、んぐっ、ふぅ~っ! しかもこうして穂乃果ちゃんのおなかに、顔を押し付けると……ふ、ふひゃ~」

穂乃果「んんっ!? んぁっ、んっ!」ビクン

ことり「も、もう一生ここから出たくない……。あ、あぁ、もう、いいよね……」

ことり「もういっても、いいよね……。『4』に……。天国に……」

ことり「あ、あぁ、スイッチ、スイッチはどこ……。何も見えない……たしか、この辺に――」


グイッ


ことり「――へっ?」


ドタァンッ!


ことり「ったぁいっ!? な、なにーっ!?」

海未「あ、あなたは……」

海未「あなたはなにをやってるのですか、ことりっ!?」
  
214: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 22:18:48.63 ID:L/CNBsRl.net
   
ことり「う、海未ちゃん……? あっ、わ、私のスイッチ――」


カチカチカチッ!

フッ


ことり「あぁーっ!?」

海未「……っ」ガラッ!

ことり「あ、あぁっ! に、匂いが、窓から穂乃果ちゃんの匂いが、逃げてくよぉ~……」

ことり「ま、まって、いかないで……いかないでぇ~」

海未「ふざけないでくださいっ!」バシィン!

ことり「いったぁいっ!?」

海未「穂乃果に、こんなことをして……っ! 穂乃果、大丈夫ですかっ!? 今、縄を……もうほとんど解けてるようですが、とりあえず全部解きますっ!」

穂乃果「ふっ、うっ、うぅ……」グスッ

海未「目も、口も……。穂乃果、大丈夫ですかっ! しっかりしてくださいっ!」

穂乃果「ふ、ぁ、う、うみ、ひゃぁん……」

海未「っ!!」

海未(な、なんですか……。穂乃果の顔が、体中が、ベタベタです……っ! これは彼女の涙や汗だけじゃない……っ! 別の人の、別の何かがっ!)

ことり「う、うぅ~、痛いよぉ~……」ヒリヒリ

海未「……ことりぃっ!!」

ことり「ひっ!?」ビクッ
 
215: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 22:26:23.07 ID:L/CNBsRl.net
  
海未「い、嫌な予感は、していました……。同じ幼馴染です。あなたがもしスイッチを手に入れてしまったら、私と同じ過ちを起こしてしまうのではないかと……」

海未「し、しかし、ここまでやるとは……。あ、あなた、一体どれほど長い間この部屋で、レベル3を嗅ぎ続けてたんですか……っ!?」

ことり「だ、だって、だってぇ……」

海未「だってじゃありませんっ! 大丈夫ですか穂乃果、立てますかっ!?」

穂乃果「ふっ、うっ、うぅ……。うぁぁぁああ……」

海未「帰りましょう、家まで送っていきますから……」

ことり「はぁ、はぁ……。う、うぅ、ほっぺた、いたい~」グスッ

海未「……ことり。このスイッチは、私が預かります。いいですね」

ことり「うっ、ひぐっ、そ、そんなぁ~……」ポロポロッ

海未「このスイッチがどれだけ危険な物なのか、まだあなたには分からないのですかっ!?」

海未「レベル3で、これですよっ!? あなたがそんな風になってしまったのも全部、あの時レベル3を嗅いで、倒れた時からでしょうっ!?」

ことり「ふっ、うぅ……」グスッ

海未「このことは、内密にしておきます……ですから反省し、もう二度と馬鹿なことは、考えないでください」

ことり「うっ、ひぐっ、ふぅぅ……」

海未「……穂乃果、行きましょう」

穂乃果「う、ん……」

ことり「うっ、ふっ、ふぅ、ふふっ……」



ことり「ふふっ、ふふふっ、ふふふ……っ!」

海未「……っ?」
  
216: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 22:33:42.24 ID:L/CNBsRl.net
  
ことり「グスッ、えぐっ……。うっ、ふふっ、ふふふ……」

海未「……笑って、いるのですか?」

ことり「ふふっ、ふふっ、あはは、はぁ……」

海未「な、なにが、おかしいんですかっ!?」

ことり「ズズッ……。ふふっ、そ、っかぁ……。海未ちゃんはまだ、『知らないんだ』……」

海未「……なんですって?」

ことり「『3』までしか……『レベル3』までしか、知らないんだね……ふふっ」

海未「なにを言って……」

ことり「私はあの時、『レベル4』まで嗅いだんだよ……」

海未「……っ!?」

ことり「あはははっ、あの時はあまりに刺激が強くて、倒れちゃったけど……」

ことり「でもね、おかげで……グスッ……。はぁ……今は、すっごく良い気持ちだよぉ……」

海未「あ、あなた……」


ことり「――穂乃果ちゃんっ!!」


穂乃果「っ!?」ビクッ

海未「っ!」

ことり「ふふっ……えへへ……」グスッ

穂乃果「……え、えっ……?」

ことり「今日は、無理だったけど……」

ことり「……えへ」ズズッ





ことり「いつか必ず『お泊り会』、しようねっ」
 
220: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 22:42:08.90 ID:L/CNBsRl.net
  
海未「……っ」

穂乃果「ひっ……」ゾクッ


バタン


海未(……今のは一体、誰ですか?)

海未(ことり……あなたは一体、どうしてしまったのですか?)

海未(ただ一つ、分かるのは……)

ググッ

海未(……このスイッチが、全ての原因だということ……)

海未(『レベル3』を超える、『レベル4』ほのスメル……。それを嗅いでしまうと、人はあんな風に変わってしまうのですか?)

海未(なんて、恐ろしい……ほのスメル――)

海未(いえ……本当に恐ろしいのは、スメルをその身に宿す――)

チラッ


穂乃果「う、うみ、ちゃん……」ブルブル

海未「……穂乃果?」

穂乃果「わ、私、わからないよ……ことりちゃんが、何を言ってるのか……」

穂乃果「海未ちゃんが、何を言ってるのか……二人が何を言ってるのか、分からないよ……」

海未「……っ」

穂乃果「ことりちゃん、どうしちゃったの……? わ、わたし、こわいよ……ま、また、あんなこと、されたら……」

穂乃果「わ、わたし、わたし……っ!」ポロッポロッ

海未「……穂乃果っ!」


ギュッ
 
  
221: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 22:50:28.18 ID:L/CNBsRl.net
  
穂乃果「あっ……」

海未「大丈夫です……。もう二度と、あんなことは起こりません……っ!」

海未「私が、させませんから……っ! 私があなたを、守りますからっ!」

穂乃果「うみちゃん……」

海未「ですから、大丈夫です……っ! あなたは何も知らなくても、大丈夫ですからっ!」

穂乃果「う、うっ、うぁ、あぁああぁぁ……」

穂乃果「怖かったよぉ……っ! うみちゃぁんっ! うあぁあぁあぁあぁん……っ!!」

海未「……」


海未(違う……この穂乃果に、罪なんてあるわけない……)

海未(悪いのは……スイッチを使おうとする、心なんですから)

海未(しかしだとしたら、私も……)


『ふっ、ふふ……』

『大丈夫です、すぐに終わりますから……』


海未(……本当に、私に穂乃果を抱きしめる資格は、あるのでしょうか?)

海未(いえ……今は考えるのは、やめましょう)

海未(今は、ただ……)


穂乃果「うあぁあぁあぁ……」

海未「穂乃果……」


ギュウゥ……
 
231: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 23:27:26.13 ID:L/CNBsRl.net
 
――――――


月曜日……



海未(あの事件があってから土日を挟んで、初めての登校日ですが……)

海未(穂乃果は、大丈夫でしょうか……。ちゃんと学校には、来れるのでしょうか)

海未(心配です……)


海未「……あっ」

穂乃果「……おはよ、海未ちゃん」ニコッ

海未「お、おはようございます。もう、平気なんですか?」

穂乃果「うん……。しっかり休んだから、もう大丈夫」

海未「そ、そうですか……。では今日から、練習も再開できそうですか?」

穂乃果「うん、大丈夫だよ。リーダーがいつまでも落ち込んでる場合じゃ、ないもんね」

海未「ええ、まあ……」

海未(やはり、落ち込んでたんですね……。笑顔もどこか、ぎこちないような……)

海未(……いえ、穂乃果のことです。きっとそのうちあんなこと忘れて、いつもの明るい笑顔に戻ってくれるはず)


海未「それでは、行きましょうか」

穂乃果「うん……」


「おはよーっ! 二人ともっ!」


海未「っ! あっ……」

穂乃果「っ!!」ビクッ
 
232: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 23:35:37.80 ID:L/CNBsRl.net
 
ことり「ふえぇ、酷いよ二人ともっ! 今ことりのこと、置いてこうとしたでしょっ!?」 

海未「なっ、なっ……!」

穂乃果「あ、あぅ、あっ……」ガタガタ

海未「あ、あなた……っ! 一体どういうつもりですか……っ!?」

ことり「えっ、なにがっ?」

海未「あんなことがあった後で、一体どういうつもりで私たちの前に姿を現したのかと、聞いてるんですっ!!」

ことり「そんなこと言われても……私はいつものように待ち合わせ場所に、着ただけだよ?」

海未「ですから、それが……っ!」

ことり「あっ、穂乃果ちゃんっ!!」ズイッ

穂乃果「ひっ!?」ビクッ

ことり「今日も可愛いね……。ふふっ」

穂乃果「あっ、あぁ……」

海未「……っ! 穂乃果から、離れてください」ザッ

ことり「えぇー? どうして?」

海未「いいですからっ! あなたは先に行ってくださいっ!」

ことり「なんでことりを仲間外れにするの……? 一緒にいこうよー」

海未「ダメです……っ!」

ことり「……ダメなの? 穂乃果ちゃん」

穂乃果「……うっ」ビク

海未「っ!」
 
235: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 23:49:04.34 ID:L/CNBsRl.net
  
ことり「穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「……う、い、いいよ。一緒に、いこう……?」

海未(っ! 穂乃果……っ!)

ことり「やったっ! ありがと、穂乃果ちゃんっ」ニコッ

穂乃果「え、へへ……」

海未「……ならせめて、私が間に入ります。これでいいですね」

ことり「ええー。ま、いっか。それじゃいこっかっ!」

穂乃果「う、うん……」

ギュッ

海未(私の袖をつかんで……。明らかに無理をしていますね、穂乃果…)


スタスタ……



海未(……でも私だってことりを仲間外れになんて、したくありません)

海未(だけどせめて、二人が元に戻ってくれるまでは……。穂乃果は明るい穂乃果に、ことりは優しいことりに、戻ってくれるまでは……)

海未(私が、間に立たねば……)


ことり「……ねえ、海未ちゃん」ヒソヒソ

海未「……なんですか」

ことり「あのスイッチ、あれから使ったの?」

海未「はっ!?」
 
237: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/23(日) 23:56:47.41 ID:L/CNBsRl.net
  
穂乃果「……?」

海未「穂乃果もいる前で、あなたは何を言って……っ!」ヒソヒソ

ことり「大丈夫、穂乃果ちゃんには何のことか分からないよ」

海未「ですが……っ!」

ことり「で、使ったの?」

海未「使ってませんし、これから使うこともありませんっ!」

ことり「えー、もったいない。別に我慢しなくてもいいのにー」

海未「あなたと一緒にしないでください……っ!」

ことり「海未ちゃんが使わないなら、私が使いたいなぁ。ねえ、そういえばあれって結局、レベルいくつまであるの?」

海未「『5』ですよ……」

ことり「わぁ、やっぱりまだ上があったんだぁ……っ! 『4』で気絶しちゃうくらいだったのに、『5』だったらどうなっちゃうんだろぉ……っ///」

ことり「ね、ねえねえ、海未ちゃんっ。今日一日だけでいいから、貸して?」

海未「あ、あなたは何も反省してないのですね……っ!」

ことり「そうだね、反省しなきゃ。今度はちゃんと、部屋の鍵もかけておくようにするよ」

海未「あなたねえっ!」

ことり「ねえ、おねがぁい、海未ちゃん……」

海未「ダメですっ!」

ことり「けちー」

海未「それにスイッチは、もう……」

ことり「……?」

海未「……穂乃果っ! 今日、全部終わったら、帰りにクレープを食べに行きませんか?」

穂乃果「えっ……。う、うん、そうだね。いこう」

海未「ふふっ、約束ですよ」

ことり「クレープかぁ、久しぶりだなぁ。何味にしよっかなー」

海未「あなたは来ないでください」キッ

ことり「ひどいっ」ガーン



海未(そう……今日で『全部』、終わるんですから……)
 
240: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 00:10:36.46 ID:dsAOQXC9.net
  
――――


海未「いいですか。私がいない間、絶対に穂乃果とことりから、目を離さないでくださいね」

ヒデコ「い、いいけど……どうかしたの?」

海未「いえ……それでは、頼みましたよ」




真姫「なによ、話って?」

海未「これ、覚えてますか?」

真姫「……あぁ、この前私があげた、『ほのスメルを増幅させるスイッチ』じゃない。それがどうかしたの?」

海未「あなたに返します」

真姫「えっ……。い、いらないわよ」

海未「でしたらしかるべき方法で、処分して頂けますか。これが二度と、使えないように」

真姫「なんでよ? あんたが処分すればいいじゃない」

海未「それは無理です」

真姫「なんで……」

海未「無理に壊そうとして、万が一暴発してしまったら……例えばレベルが上がったまま元に戻らなくなってしまえば、大変なことになります」

真姫「……?? そうなの?」

海未「はい……これはとにかく、危険なスイッチだったんです。面白半分で、好奇心で、押していいものではありませんでした……」

真姫「ふーん……」

海未「ですので、ちゃんと正しい手順で、処分してください。作り方を知っているのなら、壊し方も知っているはずでしょう」

真姫「まあ、ママに頼めば、多分……」

海未「お願いします」スッ

真姫「……分かったわ。処分しとく」
 
243: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 00:20:06.27 ID:dsAOQXC9.net
 
海未「あ、一応言っておきますが……くれぐれもそのスイッチは、押さないように」

真姫「分かってるわよ……危険って言われて、押すわけないでしょ」

海未「ふふっ。それでは、確かに返しましたよ……」


海未(これで……これで、いいんです)

海未(確かにこのスイッチは、魅力的な物でした……レベル2くらいまでなら、使い続けても良いくらい……)

海未(ですがそれ以上にこのスイッチは、危険です。使用した人の人格を変えてしまうほどの、危険性があります……)

海未(それがいずれ、誰かを悲しませる結果を、生むくらいなら……その可能性が少しでもあるのなら、そんなスイッチは、存在しない方がいい)

海未(私はそのリスクを背負ってまで、私利私欲にこのスイッチを使いたくはありません)

海未(それに……私は穂乃果の幼馴染なんです)


海未(匂いを嗅ぎたいのなら、嗅ぐチャンスはいくらでもあるのですっ!)グッ

海未(もちろん嗅ぐときは、バレないように、こっそりと、ですが……ってこれじゃあまるで、変態みたいじゃないですか)

海未(嗅ぐなら堂々と、です……)

海未(……まあ、とにかく)



海未(これで『全部』、終わりです……)

海未(あとは穂乃果とことり、二人が戻るのを待つだけですが……)

海未(……それもスイッチがなくなってしまえば、時間の問題でしょう)

海未(だからこれで、全部終わり……)




真姫「……ねえ、一つ聞いていい?」

海未「はい?」
 
246: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/24(月) 00:27:46.66 ID:dsAOQXC9.net
 
真姫「このスイッチが危険だって分かるってことは……。つまりあんたには、『ほのスメル』がなんなのか、分かったってわけ?」

海未「えっ……」

海未(そういえば真姫は、何も知らないんでしたね……)

海未「は、はい。まあ……」

真姫「ふーん……」

海未「……」

真姫「……そう」

海未「気になりますか?」

真姫「別に……」

海未「……そうですか」

真姫「……」

海未「……」



真姫「……お、教えなさいよ」

海未「分かりました。誰にも言わないでくださいね」

真姫「ん……」

海未「いいですか……『ほのスメル』というのはですね……」

真姫「……」ゴク……

海未「……――――」





海未「――のことです」

真姫「なにそれ、意味わかんない」

 


第1部、完。
 

 
285: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 21:05:21.83 ID:mZS7Mjp/.net
    

――――第2部、『発症者』



 

凛「――えっ? 穂乃果ちゃんが、話があるって?」

凛「なんだろ……。部室? うん、分かったっ!」


タッタッタッ……



ガチャッ


凛「きたよー」

穂乃果「あっ、凛ちゃん」

凛「穂乃果ちゃん……昨日はその、大変だったね」

穂乃果「う、ううん、私は全然、平気だから」

凛「そっか……。それで穂乃果ちゃん、話ってなにかにゃ?」

穂乃果「えっ?」

凛「へっ?」

穂乃果「えっと……。話があるのって、凛ちゃんの方じゃ……?」

凛「えっ? 凛は、穂乃果ちゃんが話があるからって、言われてきたんだけど……」

穂乃果「えっ……。おかしいなぁ」
  
289: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 21:12:16.05 ID:mZS7Mjp/.net
 
 
「……」

「ふふっ……」




「さようなら……。ううん、『いってらっしゃい』、かな?」




カチッ、カチッ


カチッ 

 

 

  
  

カチッ

 
291: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 21:18:29.87 ID:mZS7Mjp/.net
  

ブワァッ!


凛「――っ!!?」


穂乃果「うーん、でもさっき、メールで……」

凛「あっ、あ、あぁ……」

穂乃果「……凛ちゃん?」

凛「う、うわ、な、なに、なにこれぇ……////」フラフラ

穂乃果「凛ちゃんっ!? ど、どうしたのっ!?」

凛「っ! あっ、だ、だめ、だめぇ……っ!」

凛「だめええええぇーっ!////」ビクンッ!

穂乃果「っ!?」

凛「わ、う、わ、ぁ……」

凛「ぁ……」


ドサッ


凛「……」ビクンビクン

穂乃果「……凛ちゃんっ!? しっかりしてっ! 凛ちゃぁん――っ!」
  
293: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 21:26:49.05 ID:mZS7Mjp/.net
   
――――


『事件』の前日……



ことり「ほのかちゃぁん……ふふっ」スリスリ

穂乃果「こ、ことりちゃん、あの……」

ことり「ん~良い匂いだなぁ、穂乃果ちゃんは……」スンスン

穂乃果「や、やめてよ、は、恥ずかしいよ……///」

ことり「えぇ~、そんなことないよぉ、うふふ。あ、穂乃果ちゃん、汗かいてるね。タオル持ってきてあげる」

穂乃果「あ、ありがと……」

ことり「ぺろっ」

穂乃果「ひゃぁっ!?」

ことり「あはっ♪ 穂乃果ちゃんの汗は、やっぱりおいしいなぁ」

穂乃果「う、うぅ……」ビクビク

ことり「じゃ、タオル持ってく――」


バチィン!


ことり「いったぁっ!?」

海未「穂乃果から離れなさい、ことりっ!!」

穂乃果「う、海未ちゃん……」
 
294: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 21:33:15.87 ID:mZS7Mjp/.net
   
海未「あなたは一体、何度注意されればわかるのですかっ!?」

ことり「う、うぅ、いたいよぉ、海未ちゃん……」ヒリヒリ

海未「ぶつほうも痛いんですっ!」

ことり「じゃあぶたないでよぉ……」

海未「言葉で注意してもやめないでしょうっ!?」

ことり「わ、分かったよぉ、ごめんってば……」

海未「謝るのならまず穂乃果に謝ってくださいっ!」

ことり「うぅ、怒鳴らないでよ海未ちゃん……。タオル、持ってくるね……」

海未「早くいきなさいっ!」

ことり「はぁ~い……」トボトボ

海未「まったく……っ!」

穂乃果「海未ちゃん。あ、ありがと……」

海未「穂乃果……大丈夫ですか? 怖くなかったですか?」

穂乃果「うん、平気……」ニヘ

海未「よかったです……」ホッ


海未(あれから1日が経ちましたが、ことりは相変わらずです……っ!)

海未(穂乃果は徐々に元気を取り戻してるようですが……しかしこのままでは、いつまた新たなトラウマを植え付けられてしまうことか……っ!)
 
295: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 21:38:55.33 ID:mZS7Mjp/.net
  
花陽「すごい……」

絵里「流石、海未ね……」

凛「ほんとにゃ。見事なビンタだったにゃ」

にこ「あれは私たちには真似できないわ……」

希「あ、あはは……」

海未「ちょっと、みんなもっ! どうして見てるだけなんですかっ!?」

真姫「いや、そうは言っても……」

海未「言いましたよねっ!? 私の見てないところで穂乃果に何かあったら、助けてあげてほしいとっ!」

希「そ、そうやけど……ウチらじゃ海未ちゃんみたいにうまく、怒れないし……」

絵里「え、ええ……。ましてや、ビンタなんて……」

海未「ビンタは私だってしたくないんですっ! そうじゃなくて、間に割って入るだけでも……っ!」

凛「でも……なんていうか、その……」

海未「な、なんですか……?」

凛「あんまり、その……関わり合いたくない、っていうか……」

にこ「ば、バカっ!」

海未「……はい?」
 
297: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 21:46:03.32 ID:mZS7Mjp/.net
 
凛「だってさ……。いや、ことりちゃんが穂乃果ちゃんのこと大好きなのは、前から分かってたことだけど……」

凛「でも流石に、汗を舐めるなんて……正直、ドン引きにゃ」

海未「で、ですから、それをやめさせるために……っ!」

凛「……凛、ことりちゃんがあんな人だなんて、思わなかったよ」

海未「……っ!」

真姫「確かに、そうだけど……何か事情があるんじゃないの?」

凛「それでも今のことりちゃんは、なんだか……怖いよ。関わり合いたくないにゃ」

にこ「ま、まあ……そうね。関わったら、私たちもなにかされそう、かも……」

海未「ことりが興味あるのは、穂乃果だけですっ! なにもされませんよっ!」

にこ「だから怖いのよ。変に邪魔したら、なにされるか……」

海未「……」

花陽「う、うーん……。本当にことりちゃん、どうしちゃったんだろ……」

凛「あれじゃ変態だよ……」

希「み、みんな、それくらいにせえへん? 流石にことりちゃんが可哀想や……」

絵里「そうね。でも、海未……。やっぱりことりには、昔から付き合いの長い、海未の注意が一番効くと思うわ」

絵里「私たちもできるだけ、協力したいけど……」

海未「……分かりました。ですが本当に危ない時には、助けてあげてくださいね……」

絵里「ええ……。それは、もちろんよ」



海未(甘かった……。スイッチさえなくなれば、すべて解決すると思っていたのに……)

海未(ことり一人のせいで、μ'sにまで、悪影響が出てしまうなんて……)

海未(こんな状態では、ラブライブどころではありません……早めに何とか、しなくては……)
 
298: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 21:53:57.77 ID:mZS7Mjp/.net
 
ことり「穂乃果ちゃん、タオル持ってきたよ~」

海未「私が渡します。貸してください」

ことり「えぇ~……」

海未「……何度も言っていますが、あまり穂乃果に近づき過ぎないでください。怯えていますので」

ことり「……ふぅん」

海未「……なんですか」

ことり「ううん、なんでもないよ。それより海未ちゃん、スイッチ貸して?」

海未「貸しません」

ことり「えーっ。昨日クレープ奢ってあげたのに~」

海未「べ、別に頼んでませんっ! あれはあなたが勝手に……」

ことり「もう、分かったよ。じゃあ穂乃果ちゃんのエッチな姿を写真に撮って送ってあげるから、それでいいでしょ?」

海未「……ことりっ!!」

ことり「怒らないでよぉ。じゃあさ、貸すのが嫌だったら、一緒に使おう?」

海未「……は?」

ことり「穂乃果ちゃんを海未ちゃんの部屋に呼んでさ。二人でスイッチを使おうよ」

海未「嫌ですよ……」

ことり「嘘ばっかり~。そういえば海未ちゃんはまだ、『レベル4』を体験したことがないんでしょ?」

海未「……っ!」

ことり「……ふふっ。海未ちゃんも嗅いでみたいでしょ? 『レベル4』の、穂乃果ちゃんの匂い。すごいよ、最高だよ。意識が飛んじゃうくらい、気持ち良いよ」

海未「……そんなこと」

ことり「我慢しなくていいんだよ。使っちゃおうよ。使いたいんでしょう? だって海未ちゃんは、私と同じ――」

海未「あのスイッチはっ!」

ことり「……」

海未「……もう、処分しました」

ことり「……へっ?」

海未「さぁ、休憩は終わりです。練習を再開しますよ」

ことり「えっ、えっ……?」
 
301: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 22:00:49.76 ID:mZS7Mjp/.net
 
――――――


練習後……


「「お疲れ様でしたーっ!」」



海未「ふぅ……」

ことり「海未ちゃん」

海未「……なんですか」

ことり「えっと……さっきの話なんだけど」

海未「はい?」

ことり「その……スイッチを処分したって、どういうこと?」

海未「……そのままの意味ですが?」

ことり「つ、つまり……。もうスイッチは、ないってこと?」

海未「そうです。貸すも貸さないも、ないんです。だってスイッチはもう、この世に存在しないんですから」

ことり「う、嘘だ……」

海未「嘘じゃありません。ですからもう、諦めてください」

ことり「嘘だよ……。あ、あはは、そんなわけないよ。そんなこと、できるわけない……」

海未「……は?」

ことり「海未ちゃんがあのスイッチを処分するなんて考えられない。海未ちゃんにそんなこと、できるわけない……」

海未「な、なにを言ってるんですか?」

ことり「海未ちゃんの、嘘つき……。海未ちゃんだって本当は、使いたいくせに……。本当は穂乃果ちゃんの匂いを、もっと嗅ぎたいくせに」

海未「ことり……っ! 私は――」

ことり「海未ちゃんだってどうしようもない、変態のくせにっ!!」
 
304: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 22:08:37.46 ID:mZS7Mjp/.net
 
ガシッ

海未「痛っ……ちょ、ことりっ!?」

ことり「どうしてそんな嘘つくのっ!? そんな嘘ついてまで……っ! 海未ちゃんは自分を、騙し続けるのっ!?」

海未「ことり、離してください……っ!」

ことり「海未ちゃん……っ! 海未ちゃんも、私と同じでしょうっ!?」

ググッ……

海未(な、なんですか、この力の強さはっ!? まるでことりとは、別人のような……)

絵里「ことりっ! な、なにしてるのっ!?」

真姫「は、離れなさいっ! ことりっ!」グイッ

ことり「海未ちゃん……っ!」

海未「う、ぐっ……」

希「う、海未ちゃん、大丈夫?」

海未「……穂乃果を」

希「えっ……?」

穂乃果「……っ」ガタガタ

にこ「……っ! 穂乃果っ!」サッ

絵里「だ、大丈夫よ、大丈夫だから……っ!」

穂乃果「……みんな」

花陽「あ、あの、私、穂乃果ちゃんと先に帰りますっ。穂乃果ちゃん、いこっ?」

穂乃果「うん……」

海未(みんな……。ありがとうございます……)
 
307: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 22:16:50.86 ID:mZS7Mjp/.net
 
ことり「海未ちゃん、本当のことを言って? スイッチ、まだ持ってるんでしょう……?」

海未「で、ですから……っ!」

絵里「ことり、あなた……。さっきからなに言ってるのよ? スイッチって、なんのことよ……っ!?」

真姫「……っ」

凛「ことりちゃん……一体、どうしちゃったの?」

ことり「なにが……?」

凛「昨日からことりちゃん、なにか変だよ……。もう見てられないよ……。穂乃果ちゃんに変なことばっかしてさ……」

凛「凛は前のことりちゃんが、好きだよ……。早く元に戻ってよ。今のことりちゃんは……変態みたいで、その、怖いにゃ……」

希「り、凛ちゃん……」

ことり「……私が穂乃果ちゃんにしてることが、そんなにおかしい?」

凛「おかしいよ……だって……」

ことり「いつも凛ちゃんが花陽ちゃんにしてることと、何が違うっていうの?」

凛「……」

海未「こ、ことり……っ!」

凛「り……」


凛「凛はかよちんの汗をペロペロしたことなんてないっ!!」


ガッシィ


にこ「凛っ!」

ことり「……っ! で、でも、したいとは思ってるんでしょ?」

凛「思ってたとしても、凛はそんなことしないっ! ことりちゃんと凛を、一緒にするなっ!」ググッ

ことり「一緒でしょっ!? 凛ちゃんだっていつも花陽ちゃんの匂いを嗅いで、興奮してるくせにっ!」

凛「匂いの話は今関係ないにゃっ!」

希「もうやめてっ!!」
 
312: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 22:23:54.87 ID:mZS7Mjp/.net
  
凛「……っ!」

にこ「の、希……」

希「凛ちゃんも、ことりちゃんも……。これ以上喧嘩しないで……」

ことり「……」

絵里「……そうよ。こんなことで喧嘩して、なんになるの? 穂乃果も花陽も、悲しむだけだわ……」

凛「……」

凛「そうだね……。ごめん」

ことり「……帰る」

海未「あっ、ことりっ!」

真姫「ちょ、ちょっと……」

凛「凛も帰る……。いこ、真姫ちゃん」

真姫「あ、うん……」

絵里「……私たちも、帰りましょう」

にこ「……」

希「……うん」




海未(どうして、どうしてこんなことに……)

海未(スイッチはもう、ないのに……。どうしてこんなにμ'sが、バラバラに……)
 
319: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 22:31:49.63 ID:mZS7Mjp/.net
 
――――――

帰り道


タッタッタッ……


ことり「……」

海未「ことり、待ってくださいっ!」

ことり「……海未ちゃん」

海未「……ことり、あなたは」

ことり「さっきはごめんね、海未ちゃん……痛かった?」

海未「えっ? わ、私は大丈夫ですが……」

ことり「酷いことも、言ったよね……本当に、ごめん」

海未「……」

海未「……ですから謝る相手が、違います。あなたが謝るのは、穂乃果でしょう?」

ことり「……なんで?」

海未「はい……?」

ことり「なんで私が穂乃果ちゃんに、謝るの……? 私、なにも悪いことしてないのに……」

海未「なっ……あ、あなたね、今まで自分が穂乃果に何をしてきたか、分かってて言ってるんですかっ!?」

ことり「……ねえ、海未ちゃん」

海未「なんですかっ!?」

ことり「本当にあのスイッチはもう、なくなっちゃったの……?」

海未「……」
 
320: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 22:36:55.76 ID:mZS7Mjp/.net
 
海未「真姫ですよ……」

ことり「……えっ?」

海未「あのスイッチは、真姫から貰ったものだったんです……。私の物ではありません」

ことり「そうだったんだ……」

海未「ですから昨日、彼女に返しました。『処分してほしい』と、そう言って、返しました」

ことり「……」

海未「真姫は処分を母親に頼むと言っていましたから……彼女ももう、持ってはいないでしょう」

海未「私の言葉が信じられないのなら、真姫に確認してください……。もちろんだからといって、彼女に強引に迫るのは、許しませんよ」

ことり「ううん、もう十分だよ。その言葉だけで……。海未ちゃんの言ってることが本当だって、分かったよ」

海未「……」

ことり「そっか……。海未ちゃんはちゃんと、自分の意志であのスイッチを、手放せたんだ……」

ことり「海未ちゃんは、私とは違う……。そうだよね、『レベル3』までしか、嗅いでないんだもんね……」

ことり「でも、私はもう……」

海未「……ことり?」

ことり「ごめん。あとはもう、一人で帰れるから……」フラッ

海未「あっ……」


海未(ことり……なんだか、寂しそうです……)

海未(……)
 
321: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 22:45:02.27 ID:mZS7Mjp/.net
 
海未(ことりさえ元に戻ってくれれば、μ'sも穂乃果も、元通りに……)

海未(私たち三人の関係も、元に戻って……また楽しく笑って過ごせる日が……)

海未(……)



海未「ことりっ!!」

ことり「……えっ?」

海未「わ、私が――」




海未「私が必ずあなたを、元に戻して見せますからっ!」




海未「そしたらまた、三人で……っ!」

ことり「……」




ことり「……」ニコッ


スタスタ……



海未(ことり……)
329: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 23:10:06.96 ID:mZS7Mjp/.net
――――


次の日……

教室



ことり「っはぁぁあぁああんっ! 穂乃果ちゃん穂乃果ちゃんほのかちゃんっ!」スリスリスリ

穂乃果「きゃぁああっ!?」

ことり「可愛いよぉ可愛いよぉいい匂いだよぉっ! あ~もう、絶対離さないんだからっ! あはははっ!」ギュゥゥ

穂乃果「い、こ、ことりちゃ、やっ」

ことり「んぅ~、なんだか女の子って感じだよね、穂乃果ちゃんの匂いっ! ん~っ! はぁ、はぁっ!」スゥハァ

ことり「髪の毛っ! 髪の毛の匂い嗅がせてっ! むっ、むぐっ、はぁあぁあぁっ!」

ことり「いいよぉ~、しゅごい~っ! いつまでも嗅いでたいっ/////」スンスンスン

穂乃果「あ、あぁ、やぁ……///」

ことり「はぁっ、はぁっ! で、でもやっぱりスイッチがないと、物足りないよぉ……っ!」

ことり「あ、あぁ、も、もっと嗅ぎたい、穂乃果ちゃんをもっと感じたいっ! あぁ~っ////」


バチィン!


ことり「ひゃあんっ!?」

海未「あなた、元に戻る気ないですよねっ!?」

ことり「ふええぇ……」



「南さんって、あんなだったっけ……?」ヒソヒソ

「い、意外な一面だね……」ヒソヒソ
332: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 23:19:45.21 ID:mZS7Mjp/.net
海未「何なんですかあなたはっ! 少しは自分でも、元に戻る努力をしてみたらどうなんですかっ!?」

ことり「し、知らないよぉ……。海未ちゃんが勝手に言ってるだけで、ことりは別に戻りたくなんてないもん……」

海未「昨日の意味深な台詞と笑顔はなんだったんですかっ!?」

ことり「ほっぺた痛いよぉ……」ヒリヒリ

海未「穂乃果、大丈夫ですかっ!? あぁ、服も髪も、こんなに乱れて……」ササッ

穂乃果「あ、ありがとう、海未ちゃん……」グス

海未「いいですよ、気にしないでください」ニコッ

ことり「海未ちゃぁん……」

海未「なんですか」ギロッ

ことり「え、えっと、教室の外に、真姫ちゃんが……」

海未「えっ? あ、あぁ……」

海未「そうでした、私が呼んだんでした。ちょっと行ってきます」

ことり「いってらっしゃ~い……。さてとっ」

海未「ヒデコ、フミコ。穂乃果をお願いできますか?」

ヒデコ「わ、分かった」

フミコ「穂乃果、こっちで話そっ?」

穂乃果「う、うん……」

ことり「隙がないなぁ……」
333: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 23:36:35.22 ID:mZS7Mjp/.net
  
――――


真姫「ことりは今日も、あんな感じなのね……」

海未「ええ、まあ……」

真姫「で、話って何よ?」

海未「その、ことりのことなんですが……。彼女、病院でもう一度検査して頂いた方が、良いのではないかと思いまして」

真姫「ことりが変になったのは、倒れた時からなんでしょう? あの日検査した時は、何も異常なかったじゃない」

海未「そうですが……」

真姫「そもそも再検査するかどうか決めるのは、彼女の意志よ。私たちじゃない」

海未「うっ……」

海未(今のことりが、自分から再検査を申し出るとは思えません……)

海未「し、しかし今の彼女は明らかに異常ですし、まともな精神状態ではないことは確かですっ!」

海未「それになにより、人的被害が出ていますっ……! もう彼女の意志など関係なく、強制的に病院に隔離するべきなのではっ!?」

真姫「被害……穂乃果のことを言ってるなら、あの子が直接それを訴えれば、可能かもね」

海未「……穂乃果が、ですか」

真姫「ええ……。例えば親とか、先生にでも話して、問題にしてもらうとか……」

海未(そんなこと……穂乃果には、無理です……)

海未(だって少し前まで二人は、仲良しの親友同士だったんですから……。いくらことりに嫌なことをされても、穂乃果はそこまで非情にはなれません……)

海未(だとすれば、やはり私が何とかするしか……)
 
334: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 23:44:07.15 ID:mZS7Mjp/.net
 
真姫「……確認だけど、ことりがあんな風になった原因はやっぱり、『ほのスメル』なのね?」

海未「ええ。恐らくあの日スイッチを拾った穂乃果が、何も知らずにレベル4まで押してしまい……。一緒にいたことりはそれを嗅いだことで、変わってしまったんです」

真姫「レベル4、か……」

海未「……レベル3までなら私も体験したことがありますが、それでも頭がおかしくなってしまいそうなほどでした」

海未「そのレベル3の感覚を、私は心の中で『穂乃果のシャツの中に入り込んで、直接匂いを嗅いでるかのよう』だと表現しましたが……」

真姫「えらく具体的に表現したのね……」

海未「逆に言えば表現できたということは、そこまでは私の想像の範囲内だったというわけです」

海未「ですがその先のレベル4以上は、私の想像をも超える……きっと誰も表現することのできない、あらゆる理解を超越した、『匂い』なのでしょう」

海未「嗅いだ人間を、あそこまで狂わせるほどの……」

真姫「ことり……あの子見てる限りだとやっぱり、『匂い』に異常に執着してるように見えるわね」

海未「そうですね。私に対しても、スイッチをやたらとせがんできますし……」

真姫「ほのスメル中毒ってとこかしら……。レベル4を吸ってしまったことで、彼女はもう普通の匂いじゃ満足できなくなった……」

真姫「更にスイッチを取り上げられたことで、禁断症状が……だとすると……」ブツブツ

海未「真姫……?」

真姫「……そうね。彼女のような状態のことを、ひとまず暫定的に、こう呼ぶことにしましょう」

海未「えっ……?」


真姫「『ほのスメル過剰吸引による中毒症状発症者』――」




真姫「略して、『ほのキチ』よ」
  
340: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 23:50:21.75 ID:mZS7Mjp/.net
  
海未「……」

真姫「……」

海未「……すいません、もう一度言っていただけますか」

真姫「だから、『ほの』スメル過剰『き』ゅう引による『ち』ゅう毒症状発症者、よ」

海未「な、なるほど……」

真姫「レベル4ほのスメルを吸ってしまうと、人は『ほのキチ』になってしまう。そうなると、精神に異常をきたし、正常な判断ができなくなり、常にほのスメルを求め続けるようになる」

真姫「そして……穂乃果に対して、異様なまでの劣情を持つようになる。ことりがしてるセクハラの数々を見れば、明らかね」

海未「確かにほのスメルには、人をいやらしい気分にさせる効果がありますからね……」

真姫「そ……そうなの?」

海未「ええ。それもレベル4ともなると、すさまじいのでしょう……。きっとそれに体や心が耐え切れず、人は『ほのキチ』となってしまうんです」

真姫「ほのスメル……穂乃果の匂い、か。あんたから最初に聞いた時は、冗談かと思ったけど……でも考えてみると、やっぱり恐ろしいわね」

真姫「いや、本当に恐ろしいのは、スメルをその身に宿す、穂乃果自身か……」

海未「違いますよ。本当に恐ろしいのは、あのスイッチです」

真姫「……」

海未「ですからあのスイッチが処分されて、本当に良かったです……」

海未「だってあのスイッチがなければ、これ以上『ほのキチ』が生まれることはないんですから」

真姫「……そう、ね」

海未「そろそろ休み時間が終わりますね。それではまた、放課後に」

真姫「うん、じゃあね……」
 
345: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/25(火) 23:58:41.89 ID:mZS7Mjp/.net
  
――――

教室



海未(……穂乃果が、いない?)


海未「あの……二人とも、穂乃果はどちらに?」

ヒデコ「あっ、海未ちゃん……。それがね、急にメールで凛ちゃんに、呼び出されたらしくて」

フミコ「部室、って言ってたかな……。ついさっき教室を、飛び出してったよ」

海未「そ、そうですか……」

海未(急な用事だったんでしょうか。まあことりから穂乃果を遠ざけられるのなら、なんでも……)

海未「……って」キョロキョロ

海未「こ、ことりもいないじゃないですかっ!?」

ヒデコ「えっ……あ、そういえば……」

フミコ「ご、ごめんっ! ことりちゃん、あれからずっと一人でおとなしくしてたから、全然気にしてなかった……」

海未「……っ! 二人を探してきますっ!」タタッ

ヒデコ「あっ! じゅ、授業始まっちゃうよっ!?」


海未(ことり……っ! まさか、部室に向かう穂乃果の後をつけて……っ!)

海未(凛と合流する前に、彼女をどこかに連れ込む気じゃ……っ! ま、まずいです、急がなくては……っ!)


ドンッ


海未「っ!?」

「わわっ!?」
 
346: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 00:02:57.02 ID:VGPE+ISh.net
  
海未「うっ……」

ことり「いたた……」

海未「ごめんなさ……って、こっ、ことり?」

ことり「あ、海未ちゃん。またどこかに行くの? もう授業始まっちゃうよ?」

海未「えっ……。あ、こ、ことりの方こそ、今までどこに?」

ことり「おトイレだよ?」

海未「……そう、ですか。いえ、ならいいのですが……」

ことり「教室入ろうよ。……って、あれ? 穂乃果ちゃんがいないね」

海未「……穂乃果は凛に呼び出されて、部室に向かいました」

ことり「ふぅん。そうなんだ、何かあったのかな」


海未(ことり……。穂乃果よりも先に、教室を出ていたのですか……)

海未(私の思い違いだったようですね……。今回ばかりはことりを疑ってしまったことを、反省しなくては……)


ことり「そっか。私がトイレで穂乃果ちゃんのことを想像しながら色々なことをしているうちに、そんなことが……」

海未「ことりぃっ!! あなたって人は――」



「海未っ!!」

 
349: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 00:10:53.39 ID:VGPE+ISh.net
  
海未「……えっ?」

ことり「あ、真姫ちゃんだ」

真姫「海未、大変よ……っ! 凛がっ!」

海未「り、凛……?」

真姫「凛が部室で、倒れたって……っ!」

海未「た、倒れた……?」

海未「『倒れた』、ですって……っ!?」

ことり「ええっ!? 大変っ!」

海未「ま、待ってください……。部室には、穂乃果もいるはず……」

真姫「穂乃果は無事よ……。凛は、保健室に運ばれたわ」

海未「で、では、すぐに向かいましょうっ!」

真姫「ええっ……」

ことり「急ごうっ!」



タッタッタッ……


海未(まさか……)

海未(に、似ている……。この状況は、『あの時』と……っ!)

海未(しかし、そんなはずは……っ! だって、だってあのスイッチは、もう……っ!)


真姫「ごめん、海未……」

海未「えっ……?」

真姫「私、あんたに話してないことがあるの……本当はすぐに話さなくちゃいけなかったんだけど、どうしても、言い出せなくて……」

海未「な、なんですか……?」

真姫「あんたから二日前に返してもらった、あのスイッチ……実は、処分できてなかったの……」

海未「はい……?」
 
356: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/26(水) 00:20:26.18 ID:VGPE+ISh.net
   
真姫「だってあんたから聞いた話が、あまりにも馬鹿らしかったから……。あの時の私には、スイッチがそんなに危険なものだとは到底信じられなかった……」

真姫「『匂い』なんて、って……。それにあの日はママも、忙しそうにしてたから……。だから処分を、頼めなかったの」

海未「っ! だ、だったら、次の日にでも……っ!」

真姫「そうよ。私は次の日、つまり昨日、学校から帰った後で、頼むつもりだった……。だからその日はカバンからスイッチを取り出して、とりあえず机の上に置いておいたの……」

真姫「でもね。昨日、練習が終わって、家に帰って、部屋に戻ったら……」

真姫「……なかったのよ」

海未「な、なかったって……」

真姫「机の上からスイッチが、なくなってたのよ……っ! パパとママに聞いても、知らないってっ!」

真姫「ごめん、海未……。もっと早く言うべきだったわ……っ! でもまさか、こんなことになるなんて……」

海未「す、スイッチが勝手になくなるわけないじゃないですか。ちゃんと探したんですか? きっと風でも吹いて、机の下に落ちたんですよ」

真姫「風……。そうね。部屋の窓は、開いてたもの」

海未「……」

海未「……まさか」

真姫「海未……。落ち着いて、聞いてね……」




真姫「あのスイッチは、誰かに『盗まれた』のよ……っ!」

海未「……っ!!」




ことり「……」



ニヤア……

 
428: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 21:08:56.03 ID:YbBfnzMO.net
   
――――――

病院



真姫「……検査では、今回も異常は見つからなかったわ」

海未「そうですか。『目を覚ました時』も、異常がなければ良いのですが……」

真姫「穂乃果が言っていたわ。凛は突然息を荒くしながら、震えだして……。そしたら顔がカーッと赤くなって、倒れた、って……」

海未「まだ、分かりません。まだそうと、決まったわけでは……」

真姫「でももしそうだったら、私のせいだわ。私が危機管理を、怠っていたせいで……」

海未「いえ、あなたにスイッチの危険性を伝えきれなかった、私にも非はあります……」

海未「しかし、もしまたあのスイッチが原因だったとすると……一体誰が、押したのでしょう……?」

真姫「決まってるでしょう。スイッチを盗んだ、『誰か』よ」

海未「まだ盗まれたと、決まったわけじゃ……」

真姫「他に考えられないわよ。私が学校に行ってる間、誰かが開いてた窓から部屋に侵入して、机の上に置いてあったスイッチを盗んだんだわ」

海未「真姫の部屋って、二階では……」

真姫「部屋の近くに大きな木があるの。きっとその木に登ってから、飛び移ったのよ」

海未「……確認ですけれど、他に何か盗まれたものはないんですね?」

真姫「なかったわ。そもそもあんな物、何に使うか分かってなきゃ、空き巣だって盗まないわよ」

海未「となると、スイッチを盗んだ『誰か』は、あのスイッチのことを知っている人物であると……」

真姫「そう……そしてそいつは学校で、穂乃果と凛が部室で二人きりになった時を狙って、スイッチを押した」

海未「一体、なんのために……」

真姫「……それは――」
 
430: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 21:12:42.12 ID:YbBfnzMO.net
   
「凛ちゃんっ!」

「よかった、凛ちゃん……っ!」


海未「……目を覚ましたみたいですね。私たちも中に入りましょう」

真姫「そうね。話の続きはまた後で……」


ガラッ


凛「……うぅん」

花陽「凛ちゃん、凛ちゃぁん……っ!」ギュッ

穂乃果「り、凛ちゃん、大丈夫……? 凛ちゃん、私と話してる最中に、急に倒れちゃったんだよ……っ?」

凛「そうなんだ……」

真姫「凛……」

海未「まさか、今度はあなたが倒れるなんて……意識ははっきりしてますか?」

凛「うん……大丈夫」

海未(一見、大丈夫そうですが……。しかしことりの時も、最初は……)

花陽「凛ちゃん……っ! 私、すっごく心配だったんだよっ!」ギュゥ

凛「かよちん……」

花陽「で、でも、本当に、よかった……っ! 目を覚ましてくれて、本当に……っ!」グスッ

凛「……」
 
433: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 21:17:59.78 ID:YbBfnzMO.net
   
花陽「うっ、うぅ……凛ちゃぁん……」

穂乃果「花陽ちゃん……」

凛「……ごめん、みんな。その……二人にしてほしい、にゃ」

穂乃果「えっ?」

海未「あっ……そ、そうですよね。ごめんなさい、気が利かなくて……」

真姫「じゃあ私たちロビーにいるから、何かあったら呼んでね」

穂乃果「えっと……それじゃ、花陽ちゃん。凛ちゃんをよろしくね……?」

花陽「グスッ……うん、分かった……」

海未(二人きりにしてほしいだなんて……。本当に凛は花陽のことが、大好きなんですね)

凛「えっ、あれ? ちょっと待ってよ」

花陽「……えっ?」

凛「なんで穂乃果ちゃんが部屋から出てくの? 凛は、穂乃果ちゃんと二人きりになりたいのに」

穂乃果「……へっ?」

海未「……」




海未「り、凛……。今、なんて……?」
 
435: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 21:23:52.50 ID:YbBfnzMO.net
  
花陽「えっ……凛ちゃん?」

凛「ごめんね、かよちん。ちょっと、離れてくれる?」

花陽「ど、どうして……?」

凛「うん。かよちんの『匂い』も、すごく良いんだけどね……。でも凛は今、穂乃果ちゃんの匂いが嗅ぎたいんだ」

凛「だからあまり、くっつかないでほしいにゃ。じゃないとほら……匂いが、混ざっちゃうからさ」

真姫「なっ……」

海未「そんな……凛っ!」

穂乃果「り、凛ちゃん? な、なに言ってるの?」

凛「穂乃果ちゃん……」ユラ

ダキッ

穂乃果「っ!? ど、どうしたの?」

凛「うわぁ……良い匂いだなぁ。ううん、ただ良い匂いなんじゃなくて、なんか、こう……」

凛「わ、わっかんないやぁ……。凛、バカだから……」

凛「あ、あぁ、でも、なんだろ……ずっとこうしてると……えへへ……」


スンスンスン……


穂乃果「ひっ……!?」

凛「凛、もっとバカになっちゃいそぉ……///」
 
436: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 21:30:00.98 ID:YbBfnzMO.net
 
穂乃果「う、あ、ぁ……」

花陽「り、凛ちゃん……?」

凛「あ、あぁ~……///」

花陽「凛ちゃん、どうしちゃったの……?」

凛「あぁ……。あれぇ……? なんだか、まだ別の匂いがするよぉ……」

凛「穂乃果ちゃん以外の、匂いが……。って、えっ? どうしてみんなまだ、部屋にいるの?」

海未「……はい?」

凛「早く出てってよっ! 凛は、穂乃果ちゃんの体から出る匂いしか嗅ぎたくないのっ!!」

真姫「は、はぁっ!?」

凛「なに、何なのこれ、何の匂いっ!? 出てけっ! 凛の鼻から出てけえっ!!」

花陽「……っ!!」


ガラッ!


海未「あっ、花陽っ!」

真姫「わ、私が行ってくるわっ!」

凛「出てけえっ! 出てくにゃあーっ!!」
 
441: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 21:38:45.98 ID:YbBfnzMO.net
海未「凛、あなた……」

穂乃果「り、凛ちゃん……?」ガタガタ

凛「さぁ穂乃果ちゃん、続きをするにゃ~♪ ん~」スンスン

凛「はぁ~//// 穂乃果ちゃぁん、凛、穂乃果ちゃんのことが大好きだよぉ……♪」スリスリ

穂乃果「え、えっと……」

凛「あれ……? 穂乃果ちゃん、汗が垂れてきてるにゃ」

穂乃果「えっ――」

凛「ぺろっ」

穂乃果「っ!!」ビクン

凛「はぁ~、穂乃果ちゃんの汗、おいしー♪」

穂乃果「……っ! ……っ!」ブルブル


海未(ま、間違いありません……。凛はほのスメルレベル4を嗅いで、『ほのキチ』に、なってしまった……っ!)

海未(ということは、つまり……っ!?)


『っはぁぁあぁああんっ! 穂乃果ちゃん穂乃果ちゃんほのかちゃんっ!』

『可愛いよぉ可愛いよぉいい匂いだよぉっ! あ~もう、絶対離さないんだからっ! あはははっ!』

『あ、あぁ、も、もっと嗅ぎたい、穂乃果ちゃんをもっと感じたいっ! あぁ~っ』



海未(あのただでさえ厄介なほのキチが、二人になってしまった、ということですか……っ!?)

海未(そんな、馬鹿なことが……ぜ、絶望的、過ぎます……)
448: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 22:37:35.02 ID:YbBfnzMO.net
 
――――


次の日……

教室



ことり「おはよう穂乃果ちゃ――」

海未「おはようございます、ことり」ガシッ

ことり「……おはよう、海未ちゃん。今朝からはとうとう、一緒に登校もしてくれなくなったね」

海未「あなたが元に戻るまでは、いつもと時間をずらして登校することにしました。少しでも穂乃果とあなたを、会わせないために」

ことり「もぉー。そんなことしたって、どうせ教室で会うんだからぁ」

海未「教室では、味方も多いですからね」

ヒフミ「「……」」ジーッ

ことり「はぁ……、海未ちゃん。私だって別に、何されても傷つかないってわけじゃないんだよ?」

海未「……今まで散々穂乃果を傷つけといて、よく言いますね」

ことり「海未ちゃん。ことりは悲しいです……」シュン

海未「あなたね……」

穂乃果「こ、ことりちゃん……。あのね、海未ちゃんはその、私のために……」

海未「ほ、穂乃果……?」

ことり「あはっ♪ 分かってるよぉ、穂乃果ちゃん。やだなぁ、私が本当に悲しんでると思って、心配してくれたんだ?」

穂乃果「えっ……?」

ことり「優しいなぁ、いじらしいなぁ、もぉ……っ! ほんっとに可愛いんだから穂乃果ちゃんはっ! あははっ!」

穂乃果「……」

海未「……っ! ことりっ! ちょっとこっちに来なさいっ!」グイッ

ことり「いたた、引っ張らないでよぉ~」
 
450: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 22:47:11.46 ID:YbBfnzMO.net
  
――――

廊下


海未「ことり……っ! あなたは、あなたはどうしてそうなのですかっ!?」

ことり「最近の海未ちゃんは、怒ってばかりだね。穂乃果ちゃんの次くらいに可愛い顔が、台無しだよぉ?」

海未「……っ! くっ、このような人が私たちの中にもう一人増えてしまったなんて、考えたくもありません……っ!」

ことり「それって凛ちゃんのこと? 昨日は私、病院までは行かなかったけど、やっぱり凛ちゃんも『なっちゃった』んだ?」

海未「そうですよ……っ! あなたと同じようにねっ!」

ことり「へえ~。ってことは凛ちゃんも、『レベル4』を嗅いだってことだよね。じゃあやっぱりあのスイッチは……」

海未「昨日真姫が言ってた通り、誰かに盗まれたんです……。スイッチのことを知っている、『誰か』に」

海未「その誰かが、穂乃果と凛が部室に二人きりになった瞬間を見計らい、スイッチを押したんです。恐らくそれが狙いで、スイッチを盗んだんでしょう……」

ことり「ん~……。なんのために?」

海未「凛を『ほのキチ』にするためですよ。それしかないでしょう」

ことり「『ほのキチ』?」

海未「あなたや凛みたいになってしまった人のことを、そう呼ぶそうです。真姫が名づけました」

ことり「ほのキチかぁ……。いいね、気に入ったよっ」グッ

海未「……とにかく、部室という密室でレベル4を真っ向から浴びせられてしまった凛は、精神を保てずほのキチになってしまいました」

ことり「羨ま……酷いね。それがその『誰か』の狙いだったの……?」

海未「ええ……。これは計画的犯行だったと考えられます」

海未「そしてその犯人は、この学校の中にいる……」
 
453: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 22:59:23.57 ID:YbBfnzMO.net
 
海未「スイッチを盗んで、無理やり凛をほのキチに変えようとした、人物が……この学校にいます」

ことり「サイテーだね、その人……。凛ちゃんが大好きなのは、花陽ちゃんなのに。そのことを知っててスイッチを押したんなら、本当にサイテーだよ」

海未「ええ……。昨日の凛は、見てられませんでしたよ。花陽のことなんて、見向きもしなくなってしまって……。花陽もとても、悲しそうにしていました」

ことり「許せない……。凛ちゃんとは一昨日喧嘩したばっかりだけれど、でもやっぱり、大切なお友達だもん。凛ちゃんをそんな風に変えちゃうなんて……」

ことり「それに花陽ちゃんまで悲しませて、絶対に、許せない……っ! 海未ちゃんっ! その犯人、絶対に捕まえようよっ!」

海未「……ええ」

ことり「私も、協力するよ……っ! だってスイッチをそんな風に使うなんて、間違ってるもんっ! そうだよね、海未ちゃんっ!?」

海未「私も、そう思います……」

ことり「私と海未ちゃんが協力すれば、必ず犯人を捕まえられるよ……っ! ねえ海未ちゃん、私さっそく、考えてみたんだけどっ!」

海未「なんですか?」

ことり「真姫ちゃん昨日、部屋の『窓が開いてた』って言ってたよね……? ってことは犯人は、そこから真姫ちゃんの部屋に入ったんだ……っ!」

ことり「真姫ちゃんの部屋は、二階だけど……。でも近くに確か、大きな木があったよね? 犯人はその木に登ってから、部屋に飛び移ったんだよっ!」

ことり「木を登ったり、窓に飛び移ったりできるほどの、運動神経があるのは……。この学校の中では、あの人たちしかいない……」

ことり「……『運動部』っ! 海未ちゃん、まずは『運動部』の人たちを当たってみようよっ!」

海未「……やりますね、ことり」

ことり「へへー、少しは見直してくれたかな?」エッヘン

海未「ええ。その推理に私の考えも合わせると、ある程度、犯人を絞り込めましたよ」

ことり「ほんとっ? 聞かせて聞かせてっ!」

海未「あなたが犯人です、ことり」

ことり「だいぶ絞ったねっ!?」
 
457: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 23:19:33.89 ID:YbBfnzMO.net
    
ことり「わ、私じゃないよっ! ていうか、なんで私なのーっ!?」プンプン

海未「いや、どう考えてもあなたが一番怪しいですし……。というか、あなたしかいないでしょう」

ことり「そんな……。い、いくら私がこんなんでも、何の根拠もなしに決めつけるのはよくないんじゃないかなーっ!?」

海未「根拠なんていくらでもありますよ……。いいですか、ことり。そもそも先ほど言った通り、犯人は『スイッチを知っている人物』にまで、既に絞られてるんです」

海未「いえ、スイッチは真姫の部屋から盗まれたんですから……正確には、『真姫がスイッチを持っていることを知っている人物』です」

海未「一昨日、練習終わりの帰り道で、私は『真姫にスイッチを返した』ことを、あなたに伝えましたよね? スイッチが盗まれたのも、一昨日です……」

ことり「あ、あの後すぐに私が真姫ちゃんの部屋に行って、盗んだって言うの……っ!?」

海未「ええ。あの時あなたは『一人で帰れる』と言って、私と別れました。あの後急いで移動すれば、真姫より早く彼女の家に辿り着けたかもしれません」

ことり「違うよ……っ! あの後はすぐに、家に帰ったもんっ!」

海未「家には誰かいましたか?」

ことり「い、いなかったけど……」

海未「では帰った時間を証言できる人物はいませんね。それで、先に真姫の家に着いたあなたは、彼女の部屋の窓が開いてることに気づき、そこから侵入したんです」

ことり「二階だよっ!?」

海未「知ってます。ですから先ほどあなた自身が言ったじゃないですか。木を登って窓から飛び移ったのではないかと……」

ことり「き、木を登ることなんて私、できないよ……」

海未「子供の頃、穂乃果とよく木登りしていたじゃないですか」

ことり「子供の頃の話でしょっ!? あの高さの木を登るなんて、今の私には怖くて無理だよ……っ!」

海未「……では、命綱があったらどうですか?」

ことり「い、命綱……? なにそれ。ロープみたいなものを、私がたまたま持ってたっていうの……?」

海未「たまたまではありません。だってあなたは、『いつもロープを持ち歩いてる』んですから」

ことり「……あ、あはは、おかしなことを言うなぁ。いつもロープを持ち歩いてる女子高生が、どこにいるの?」

海未「これはあなたのカバンの中に入っていたものです」タラッ

ことり「それは穂乃果ちゃんを縛るための縄だよっ!!」

海未「だからこれを命綱にして、木を登ったんでしょうっ!?」
 
460: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 23:37:27.90 ID:YbBfnzMO.net
 
ことり「くぅ~……っ! だ、大体なんで私がスイッチを使ってまで、凛ちゃんをほのキチにするのっ!?」

海未「動機の話ですか? そんなの簡単です」

海未「あなたはあの日、凛と派手に喧嘩をしてたじゃないですか。あの時あなたは自分を否定する凛に対して、『凛も自分とそう変わらない』というような主張をしていましたね」

海未「それに対し凛は『違う』と、『一緒にするな』と返しました……。その言葉に苛立ちを覚えた、あなたは――」

海未「スイッチを使って凛を、無理やり『自分と同じ』にすることを考えたんです。自分と同じ、ほのキチに……」

ことり「なっ……ち、違う、私はそんなこと、考えてない……」

海未「……」

ことり「お、おかしいよ……。だってほら、覚えてるでしょ? 私はおトイレに行ってたから、海未ちゃんに聞かされるまで、穂乃果ちゃんが部室で凛ちゃんと会ってるなんてこと、知らなかったんだよ……っ!?」

海未「……本当は、あなたが二人を部室に呼んだんでしょう?」

ことり「えっ……? な、なにを言ってるの? 穂乃果ちゃんはメールで、凛ちゃんに呼び出されたんでしょ?」

海未「そうです。『あなたが凛の携帯から打ったメール』で、ね」

ことり「っ!?」

海未「トイレに行っていたというのは嘘で、あなたはまず凛のところへ向かい、携帯を借りたんです……。理由はどうとでもなるでしょう。とにかく彼女の携帯を借りてメールを打ち、穂乃果を部室へと呼び出した……」

海未「同時に凛にも、『穂乃果ちゃんが部室で話をしたがってる』とでも言って、部室へ向かわせたんです。こうして凛と穂乃果が部室で二人きりになる状況を、作った……」

ことり「は、はは……。無理だよ、そんなの……。あんなに私を嫌がってた凛ちゃんが、携帯なんて貸してくれるわけないでしょ……?」

ことり「それに喧嘩したばかりで、まだ仲直りもしてなかったのに……」

海未「それぐらい、演技でどうとでもなるでしょう?」

ことり「……えっ?」

海未「必死に謝って、反省して、元のことりに戻った『フリ』をすれば……。心優しい凛なら、すぐに許してくれるでしょう」

海未「そんな、凛の優しさに……あなたはつけ込んだんでしょう? いつも穂乃果に、そうしてるように……」

ことり「……」



ことり「……どう、して」
 
465: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/27(木) 23:55:20.87 ID:YbBfnzMO.net
 
ことり「どうして……? どうして信じてくれないの……?」

海未「凛を、騙して……。穂乃果も、騙したんでしょう? あなたなら、やりかねません……」

ことり「違う……。違うもん……。私じゃないもん……」

ことり「そ、そうだ。凛ちゃんに聞いたら、すぐ分かるよ。私が凛ちゃんと話してないって……。凛ちゃんを部室に向かわせた人が他にいたら、その人が犯人だよ……」

海未「もちろん聞きましたよ。何度もね。最初はまともに取り合ってくれませんでしたが、何度も話しているうちに、彼女が『何も覚えていない』ことが分かりました」

ことり「お、覚えてない……?」

海未「そうです。事件前の記憶が、ごっそり抜けてしまってるんです。これも、ほのスメルの影響でしょうか……とにかく彼女からは、犯人の情報は全く得られませんでした」

ことり「じゃ、じゃあ花陽ちゃんだ……。凛ちゃんといつも一緒にいる花陽ちゃんなら、私が凛ちゃんのところに来てないことも……」

海未「花陽の話では、凛はあの時『一人で』、実験室に忘れ物を取りに行っていたそうです。しかしそれきり彼女は、帰ってこなかった……つまり、犯人が接触したのはその時です」

海未「ですから花陽からも、情報は得られませんでした。ここまで計算ずくだったのなら、犯人はかなりのやり手ですね……」

海未「……それで他に、ありますか? あなたがその犯人でないと、証明できそうな話は……」

ことり「……私じゃ、ない」

海未「……そうですか、残念です。では――」

海未「せめて最後に、自分の罪を認めてください。そして……ただちにスイッチを、返してください」

海未「それで凛が元に戻るわけではないですが……。現状を打破できるわけでもありませんが、それでも……」

海未「あなたが反省してくれるのなら、私は今回限りはあなたを許そうと思います……。真姫にも一緒に謝りに行きましょう。今回だけは……」

海未「本当に、今回限りです……。これで本当に、最後です……。本当に……ですから、ことり――」

ことり「私じゃないの、海未ちゃん……。お願い、信じて……」

海未「……」
 
470: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 00:08:35.91 ID:pI56AsQh.net
  
海未「……」

海未「……分かりました。では、話はもう終わりです」

ことり「う、海未ちゃん……?」

海未「……」スタスタ

ことり「ま、まって海未ちゃんっ! 違うの、本当に違うのぉっ!」ギュッ

ことり「信じて、信じてよぉっ! 私はやってないっ! スイッチも持ってないっ! 本当なのっ!」

ことり「本当、なのぉ……っ! うっ、うぅ……、し、信じて、海未ちゃぁん……っ!」グスッ

海未「……離してください」バッ

ことり「あっ……ま、まって、待ってよぉっ!」

ことり「海未ちゃん……っ! うっ、ぅ、お願い、待って、私の話を、きいてぇっ!」

海未「ことり……っ!」

ことり「海未ちゃん――」




海未「あなたなんて、大嫌いですっ!!」
 
473: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/28(金) 00:14:02.43 ID:pI56AsQh.net
  
ことり「――っ!!」

海未「……絶交です。さようなら」

ことり「ま、まってえっ!」

ことり「グスッ、まって、やだ、やだぁあっ! ぜっこう、やだぁ……っ!」ポロッポロッ

ことり「うみちゃん……っ! うみぢゃぁあん……っ! う、えぐっ……」

ことり「うええぇええん……っ! やだ、やだよぉぉ……っ!」

ことり「しんじでよぉ、ひぐっ、う、うみぢゃぁん……っ! ふえぇええぇん……っ!」


海未「……」


「な、なにあれ?」

「どうしたんだろ……? 喧嘩?」


ヒソヒソ ヒソヒソ


海未(……どうしてですか、ことり)

海未(どうして、認めないんですか? そこまで、あのスイッチが大事なんですか……?)

海未(私たちとの関係よりも……? だとしたら、あなたは本当に何もかも、元に戻らなくて良いと思っているのですか……?)

海未(……それとも本当に犯人は、他にいると?)

海未(いえ、そんなはずは……。何度考えてもことり以外に怪しい人物はいませんでしたし、ことりが犯人なら腑に落ちます……)

海未(だからあれもきっと演技で、嘘泣きなんでしょう……)
 
521: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 21:33:11.42 ID:EJ5XpgVn.net
 
――――

放課後……

屋上


凛「穂乃果ちゃぁん……。はぁん、落ち着くにゃぁ~///」スリスリ

穂乃果「り、凛ちゃん……。その、練習しなきゃ……」

凛「もうそんなことはどうでもいいのにゃ……。凛はずっとこうしてたいよ……///」スリスリ

穂乃果「で、でもぉ……」

凛「あ、でも練習終わりの穂乃果ちゃんの汗の匂いは、すっごく嗅ぎたいかも……? うぅ~ん」

穂乃果「……っ!?」ゾクッ



にこ「そろそろ止めた方がいいわね……」

絵里「ええ……。でも凛はことりに比べるとなんだか、ソフトな感じがするわね」

にこ「そうでもないわ。あいつの場合、無理やり止めようとすると、思いっきり逆ギレしてくんのよ……」

絵里「それは怖いわね……。花陽が相手なら少しはマシになりそうだけど」

にこ「まあ、無理でしょ。今の花陽じゃ……」



希「花陽ちゃん、一緒にストレッチしよか?」

花陽「はい……」

希「……元気出して、花陽ちゃん。きっと凛ちゃんもまだ、花陽ちゃんのこと……」

花陽「いいんです……。凛ちゃんはもう、私のことなんて嫌いなんです……」

希「花陽ちゃん……。そんなこと、ないよ……」

花陽「もういいです……。分からないんです……。私には凛ちゃんが、何を考えてるのか……」

希「……大丈夫や。二人はずっと、仲良しやったんやから。きっとすぐにまた、仲直りできるよ……」ナデナデ

花陽「うぅ……」
 
525: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 21:42:35.41 ID:EJ5XpgVn.net
  
真姫「……海未。ことりは?」

海未「帰りましたよ」

真姫「そう。珍しいわね、穂乃果がいるのに、ことりが練習にこないなんて」

海未「ええ。代わりに凛が穂乃果にくっついてしまっていますが……。しかしことりがいないだけで、随分楽ですよ」

真姫「このまま二度と来なければいいのに……」

海未「……」

真姫「……なんて馬鹿なこと、思ってないでしょうね?」

海未「まさか……。そこまでは流石に思ってませんよ。μ'sは、9人でμ'sです」

真姫「ならいいけど……」

海未「ただ……」

真姫「ただ?」

海未「……ラブライブで勝つことはもう、諦めるべきかもしれませんね」

真姫「……」

海未「メンバーがこんな状態では、練習も捗りませんし……。本番で力を出し切ることも、無理でしょう」

海未「私たちは、きっと……。本戦に出場することもなく、負けるんです」

真姫「……ねえ。やっぱり、ことりが犯人だったの?」

海未「……さあ」

真姫「さあ、って……。あんた、確かめたんじゃないの?」

海未「確かめましたよ……。どう考えても、犯人はことりです。ただ彼女は最後まで、それを認めませんでした……。それだけです」

真姫「そう……」

海未「……」

真姫「……言っとくけど、私は諦めないからね、ラブライブ」

海未「真姫、あなた……」

真姫「ふん……」
 
526: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 21:51:22.58 ID:EJ5XpgVn.net
 
――――

次の日……

教室



穂乃果「でね。お父さんが、新作のほむまんを開発中でねー」

海未「ほう……。それは是非、食べてみたいですね」

穂乃果「私も手伝ってるんだっ。できたら一番に海未ちゃんに、食べさせてあげるね?」

海未「ふふっ。楽しみにしています」

海未(少しずつですが、穂乃果に元気が戻ってきてるようです……。よかった……)

海未「……」チラッ


ことり「……」ブツブツ……


海未(……しかし今日のことりは、どうしたのでしょうか? いつもなら教室に入るなり、真っ先に私たちのところに来るのに、今日は一人で席に座ったまま……)

海未(それに、よく聞こえませんが、なにか独り言のようなことを……?)


スクッ


海未(……っ! 席を立ちました。あっ、こちらを見て……。やはり、来ますか……っ!?)バッ


ことり「……」

ことり「……っ」クルッ


ストン

ブツブツ……


海未(振り返って席に戻り、また座って独り言を……。さっきからこれの繰り返しです……っ!)

海未(何か様子が、おかしい……。やはり昨日のことを、気にして……?)

海未(……いえ、ことりのことです。私と絶交したことなんて、気にも留めてなさそうですね……)
 
528: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 21:59:50.19 ID:EJ5XpgVn.net
 
ことり「……」ブツブツ……


ヒソヒソ ヒソヒソ


「ねえ……。最近の南さん、やっぱおかしいよね?」

「穂乃果ちゃんに変なことばっかしてるよね……。前は絶対、あんな子じゃなかったのに……」

「今日もなんか、様子がおかしいし……」

「ちょ、ちょっと。私今、南さんの近くにいて、独り言聞いちゃったんだけど……」

「えっ。な。なんて言ってたの?」

「ずっと『穂乃果ちゃん』って、言ってた……」

「は……?」

「『穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん』って、何度も……」

「うわっ……」

「なにそれ、こわっ……」

「正直……気持ち悪い、かも」



ことり「……のかちゃん」ボソッ



ことり(ほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃんほのかちゃん――)
 
531: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:05:47.28 ID:EJ5XpgVn.net
 
――――

放課後……

部室



穂乃果「今日も練習頑張ろうね、海未ちゃん」

海未「そうですね」

海未(……ことりはまだ教室に残っていましたが、今日も練習には参加しないつもりなのでしょうか?)

穂乃果「あっ……」ゴソゴソ

海未「どうかしました?」

穂乃果「練習着、教室のロッカーに入れっぱなしだった……。取りに行かなきゃ」

海未「あぁ……」

海未(教室には、ことりが……)

海未「私が取りに行きましょう。穂乃果はここで待っててください」

穂乃果「えっ、でも……」

凛「穂乃果ちゃぁん、今日、凛と一緒にストレッチしよぉ?」

穂乃果「えっ? あ、えっと」

にこ「ダメよ凛、穂乃果はにことするんだから」

凛「はぁ~? 凛の穂乃果ちゃんを、横取りしないでほしいにゃ」

にこ「いつからあんたのになったのよっ!」

海未(ここには凛がいますが、今はみんなが穂乃果を守ってくれます。大丈夫でしょう……)
 
532: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:10:27.68 ID:EJ5XpgVn.net
 
――――

教室


海未(もうほとんど生徒は残っていませんね……)


バチィンッ!


海未「――っ!?」


ドサッ


女子A「あんたさ……。ほんと、なにやってんの?」

女子B「いい加減穂乃果ちゃんの気持ち、考えなよ」

ことり「……っ」

海未(な、なんですか……? 今、ことりが叩かれたんですか……?)

海未「ど、どうしたんですか? なにがあったんですか?」

女子A「あっ、園田さん……。見てよ、その子が手に持ってる袋」

海未「……穂乃果の、練習着?」

女子B「南さん、穂乃果ちゃんの練習着を、盗もうとしてたんだよ」

海未「なっ……!?」

ことり「……」

女子A「園田さんがいないからって、そんなことするなんて……。あんた、サイテーね」

女子B「でも安心して、園田さん。私たちが代わりに南さんを、こらしめといてあげたから」

海未「……っ!」

女子A「ねえ、南さん。流石に、キモすぎるよ」

女子B「練習着なんて盗んで、なにするつもりだったの? 南さんって、変態だったんだ?」

ことり「……」

女子A「何とか言ったらどうなのっ!?」

海未「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
 
533: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:14:52.36 ID:EJ5XpgVn.net
 
女子A「えっ……?」

海未「あ、ありがとうございます。ここからはもう、大丈夫です。私がきつく、言っておきますから」

女子B「そ、そう?」

海未「ええ。バッグを持っているところを見ると、お二人はもう、帰るところだったのでしょう?」

女子A「そうだけど……。じゃあ、あとは園田さんに任せるね」

女子B「もう二度と南さんに、こんなことさせないでよ。穂乃果ちゃんが悲しむ顔なんて、私たち、見たくないから」

海未「はい、私もです……」


スタスタ……


海未「……大丈夫、ですか?」

ことり「うん、平気……。海未ちゃんのビンタに比べたら、あんなの全然へっちゃらだよ」

海未「それならよかったです……。では、どういうことか説明して頂きましょうか」

ことり「……」

海未「……ことりっ!! あなたはスイッチだけじゃなく、穂乃果の練習着まで――」

ことり「……はい、海未ちゃん」スッ

海未「えっ?」

ことり「私、今日も練習休むから……。それ、穂乃果ちゃんに届けてあげて?」

海未「……」

ことり「それじゃ……」

海未「待ってください」

ことり「……」

海未「あなた、もしかして……。これを穂乃果が忘れていることに気づき、届けようとしていただけなんじゃ……?」

ことり「……」


スタスタ……


海未(ことり……?)
534: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:20:55.33 ID:EJ5XpgVn.net
 
――――

下駄箱



真姫「ことり」

ことり「……」

真姫「今日も練習、サボるつもり?」

ことり「……真姫ちゃん。どうして、ここに?」

真姫「ここで待ってれば、あんたに会えるかと思っただけ。それより、私の質問に答えて」

ことり「うん。サボるつもり」

真姫「あっそ。次からはちゃんと、出なさいよ。ラブライブまで、時間ないんだから」

ことり「ラブライブか……ふふっ」

真姫「なにがおかしいのよ」

ことり「今の今まで忘れてたよ、ラブライブなんて……。そういえばそのために、私たちは頑張ってるんだったね」

真姫「あんたね……」

ことり「分かったよ。サボるのはこれで最後にする……。ところで、私も一つ、聞いていい?」

真姫「なによ?」

ことり「真姫ちゃんも私のこと、疑ってるの?」
 
535: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:28:27.48 ID:EJ5XpgVn.net
真姫「……まあ、ね」

ことり「そっか……」

真姫「だって『スイッチ』のことと『ほのキチ』のことを知ってるのは、私とあんたと、海未だけだもの」

真姫「……どう考えても、あんたが一番怪しいわよ」

ことり「……」

真姫「でもね、ことり……。私は別に、誰が犯人だろうが、どうだっていいの」

ことり「……えっ?」

真姫「例えあんたが犯人でも……。あんたが私の部屋に忍び込んで、あのスイッチを盗んだんだとしても……私は別にあんたを責めるつもりはないわ」

真姫「それが違う、誰かでもね……。だってスイッチなんて本当は私、どうでもいいんだから」

ことり「……」

真姫「あんたや海未は、えらくアレにこだわってるみたいだけど……。匂いがどうとか、私には正直馬鹿らしくて、ついていけないって感じ」

真姫「だから別に、スイッチとかどうでもいい……。なんなら返さなくったって、いいわよ」

真姫「ただ……。使うなら『レベル2』か、せいぜい『3』までにして。凛みたいなことに他の誰かがなるのは、二度とごめんだから」

真姫「ま、あんたが持ってるならの話だけど」

ことり「……えっ、と?」

真姫「ん……。つまりね、だから、その……。私に対しては、あまり気を遣わなくていいわよ、ってこと」

ことり「……??」

真姫「だからっ! 困ってることがあるなら、私にいつでも相談しなさいってことっ! いつまでも暗い顔してんじゃないわよ、バカっ!」

ことり「……」

ことり「……ふふっ、ありがと、真姫ちゃん」

真姫「んっ!」
537: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:33:56.90 ID:EJ5XpgVn.net
――――

帰り道


スタスタ……


穂乃果「今日も練習、疲れたねー」

海未「今日からは少し練習メニューを増やしましたからね……」

穂乃果「でもそれだけみんなも、頑張ってたよね。これならきっと私たち、ラブライブでも勝てるよねっ」

海未「……そう、ですね」

海未(いえ、ラブライブはそんなに甘くありません。チームがバラバラの今の状態では、とても勝つことなんて……)

海未(……って、穂乃果が諦めてないのに、私が諦めてどうするんですか。もうやめましょう、こんなことを考えるのは……)

穂乃果「ねえ、海未ちゃん。お腹すいたし、どこか寄ってかない?」

海未「……そんなに食べてばかりいると、太りますよ。ダメです」

穂乃果「えー。ちょっとぐらい、いいじゃん」

海未「ダメです」

穂乃果「海未ちゃんの、おにー」

海未「誰が鬼ですか……」

海未(……あれ? なんだか穂乃果との会話の調子が、前のように戻ってきているような……)

穂乃果「ふふっ……。海未ちゃん。手、繋いでもいい?」

海未「えっ!?」

穂乃果「えへへー」ギュッ

海未「……っ!!」ドキッ


海未(そ、そういえば……。ここ最近は色々あったので、すっかり忘れていました……)

海未(ですが改めて今こうして、普通に彼女と接してみて、はっきりと思い出しましたよ……)

海未(穂乃果が可愛すぎるという事実を……っ!)
 
539: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:43:27.69 ID:EJ5XpgVn.net
  
海未「ほ、穂乃果……」

穂乃果「えー?」ニコニコ

海未「い、いえ……」

海未(可愛い……。どうしましょう、可愛いです……。い、意識してしまったら、急に胸がドキドキしてきました……)

海未「手を繋ぎたい、なんて……。穂乃果は本当、甘えたがりですね……」

穂乃果「えー、そうかなぁ? きっと、海未ちゃんだからだよ」

海未「そ、そうですか、わたしだからですか……」

穂乃果「うんっ」ギュッ

海未(あぁ、穂乃果から、良い匂いがします……。これだけ近づくと流石に、スイッチ無しでも彼女の匂いが鼻に届きますね……)

海未(久しく忘れていました……。これこそ私が幼少の頃から嗅いできた、増幅されていない穂乃果のいつもの匂い……)

海未(素材本来の香り、ほのスメル『レベル0』……っ! な、なるほど、今になって改めて嗅いでみると、これはこれで……)


穂乃果「……ふふっ」

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「あぁ~」スンスン



穂乃果「いつも穂乃果を守ってくれて、ありがとうね……」ボソッ



海未「あぁ……。あ、今何か言いましたか、穂乃果?」

穂乃果「えっ? う、ううん、何でも――」

穂乃果「……」ピタッ

海未「……? どうしました?」

穂乃果「……」




穂乃果「ことりちゃん……?」

ことり「……」
 
540: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:48:56.82 ID:EJ5XpgVn.net
  
海未「っ!! ことりっ!?」

バッ

海未「あなた……。帰ったはずじゃなかったんですかっ!?」

ことり「……」

海未「ま、まさか……。私たちをここで、待ち伏せしてたんですか……っ!?」

ことり「……穂乃果ちゃん」スタスタ

穂乃果「……っ! あっ……」ビク

海未「っ! 離れてください、ことりっ! これ以上私たちに近づいてくるのなら――」


ペコ


ことり「……」

海未「……」

穂乃果「えっ……?」

海未「ことり……あなた、何をして……」

海未(ことりが、私たちに……。いえ、穂乃果に……)


海未(……頭を、下げた?)


ことり「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「こ、ことりちゃん……?」


海未(頭を下げた……ということは、まさか――)


ことり「穂乃果ちゃん……。お願い、します……」





 

ことり「匂いを、嗅がせてください……っ!」
  
544: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 22:54:55.96 ID:EJ5XpgVn.net
  
海未「……は?」

穂乃果「……えっ」

ことり「お願い……。今すぐ穂乃果ちゃんの匂いを、嗅がせてほしいの……」

ことり「20秒……ううん、15秒だけでいいから、嗅がせて……。嗅がせて、くださいっ!」

ことり「お願い……っ! お願い、します、穂乃果ちゃん……っ!」

海未「あなた、なに言ってるんですかっ!?」

ことり「……」

海未「あ、あなたね、穂乃果に頭を下げて言うことが、それですかっ!? ば、馬鹿なんじゃないですかっ!?」

海未「それよりもまず、謝罪でしょうっ!? 私はてっきり、ようやくあなたが穂乃果に謝る気になったのかと……そう思ったのにっ!」

海未「ことり……っ! あなたは頭を下げてまで、穂乃果の匂いを嗅ぎたいんですかっ!?」

ことり「……穂乃果ちゃん。私たち、幼馴染、だよね……?」

穂乃果「……う、うん」

ことり「じゃあさ、ことりを、助けてよ……。ちょっと匂いを嗅がせてくれるだけで、いいの……」

ことり「それだけで、ことりは救われるの……。だから、お願い……」

海未「ことりっ! あなたはまたそうやって、穂乃果を騙そうと――」

穂乃果「いい、よ……?」

海未「っ!? 穂乃果……っ!?」

穂乃果「大丈夫だよ、海未ちゃん。なんかことりちゃん、いつもと違う感じだし……。ちょっとだけなら私、我慢できるから」

海未「なっ……」

ことり「……ありがとう、穂乃果ちゃん」
 
547: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 23:00:28.29 ID:EJ5XpgVn.net
 
……


ことり「……じゃあ、するね」

穂乃果「う、うん……」

海未「……15秒ですからね。それ以上は、穂乃果が許しても私が許しません」

ことり「分かってるよ……」ギュッ

穂乃果「……」

海未(……確かにいつもとは様子が、違います。いつものことりなら、匂いを嗅ぐのにわざわざ頼みを入れたりしません)

海未(ことり……一体、何を考えて……?)

ことり「……穂乃果ちゃん」

穂乃果「うん……」

ことり「……」スンスン

穂乃果「んっ……」

ことり「……」スゥゥ

穂乃果「……//」

ことり「……んん」ギュゥ

穂乃果「あっ……。ぅ……//」

ことり「穂乃果ちゃん……」クンクン

穂乃果「こ、ことりちゃん……//」


スンスンスンスン……


海未(な、なんですかこの状況は……。なんで私は幼馴染が幼馴染の体を貪るように嗅いでいる光景を、黙って見ているのですか……っ!?)
 
548: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 23:09:18.49 ID:EJ5XpgVn.net
  
ことり「……」ギュウゥ

穂乃果「うっ、うぁ……」

ことり「んっ……。むぐっ……」ムギュ

スゥゥゥッ


海未(な、なんだかことりの嗅ぎ方が、激しくなってきているような……)

穂乃果「ひゃ……。あ、やぁ……///」

ことり「はぁ、はぁ……」スンスン

穂乃果「あっ、あぁ……」

ことり「はぁ……。んぅ……」スゥゥゥ

海未(二人とも、顔が真っ赤です……。息も荒くなってきているような……)

海未(な、なんだかよく分かりませんが、すごく、ハレンチです……。なんですかこれ……なんですか、これ……っ!?)

海未(知りませんよ……っ! こんな、こんな感覚は……っ!)



穂乃果「はぁ、ぁ……」

ことり「んん、ん……」スゥスゥ

穂乃果「う、ぁ……」

ことり「ん~……」ギュゥ

穂乃果「あっ、あぁ……」

ことり「はぁ、はぁ……。穂乃果ちゃん――」スンスン

海未「というか、いつまで嗅いでるんですかっ!? もう1分は経ちましたよっ!?」
 
549: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/29(土) 23:17:53.77 ID:EJ5XpgVn.net
  
ことり「ん~っ……!」ムギュ

穂乃果「……っ//」

ことり「……」スゥゥ

ことり「ぷはぁっ……!」フラッ

ドサッ


海未「や、やっと離れた……っ!」

穂乃果「はぁ、はぁ……」

海未「穂乃果、平気ですか……?」

穂乃果「う、うん。ちょっと怖かったけど、平気だよ……」

ことり「ふぅ~……。あはっ。あははっ」

海未「……ことりっ! なにがそんなにおかしいのですかっ!?」

ことり「穂乃果ちゃん、ありがとうね」

穂乃果「……えっ?」

ことり「ふふっ……やっぱり穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぐと、頭が冴えるなぁ。おかげでやっと、分かったよ」

海未「今までずっとですけど、何を言ってるんですかあなたは……」

海未「というかそんなところにいつまでも座ってると、スカートが汚れますよ。立ってください」スッ

ことり「ありがと、海未ちゃん」ギュ

グイッ

海未「まったく、あなたは……。いいですか。こんなことは、もう二度と――」

ことり「ねえ、海未ちゃんっ」

海未「……なんですか」

ことり「犯人は、真姫ちゃんだよ」
  
606: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 22:09:35.86 ID:q8I7KpUa.net
  
――――


ことり「そもそもね。よく考えたら、一番怪しいのは私なんかじゃなくて、真姫ちゃんだったんだよ」

ことり「だって、そうでしょ? 最後にあのスイッチを持ってたのは、真姫ちゃんなんだから」

ことり「だから……一度は疑ってみるべきだったんだよ。確かにほのキチでもない真姫ちゃんを疑うことなんて、優しい海未ちゃんには難しかったかもしれないけど」

ことり「それでも一度は疑うべきだったんだ。真姫ちゃんが『嘘をついてるんじゃないか』、ってね」

ことり「確かにスイッチが『本当に盗まれた』んだとしたら、犯人は私以外に考えられないかもしれない……。でも、そうじゃなかったんだ」

ことり「スイッチは、盗まれてなんかいない。全部私に罪を被せるための、真姫ちゃんの嘘だったんだ」

ことり「でも……だとしたら今も真姫ちゃんは、スイッチを持ってるのかな?」

ことり「つまり凛ちゃんと穂乃果ちゃんを部室に誘き出したのも真姫ちゃんで、スイッチを押して凛ちゃんをほのキチにしたのも、真姫ちゃんなのかな……?」

ことり「うん、違うよね。だって真姫ちゃんはあの時、廊下で海未ちゃんと話をしてたんだもんね。そんなこと、できるわけない」

ことり「スイッチを4回押すぐらいなら、海未ちゃんの目を盗んでできたかもしれないけど……。押すタイミングが分からなきゃ、押せないもんね」

ことり「だからあの時の真姫ちゃんの役目は、ただ海未ちゃんを穂乃果ちゃんから引き離すことだけだったんだ」

ことり「つまり真姫ちゃんは、『実行犯』じゃない……。ここまで言えば、頭の良い海未ちゃんなら分かるよね?」

ことり「そう……。犯人は、『二人』いる」

ことり「一人は、真姫ちゃん。でも今スイッチを持っているのは、真姫ちゃんじゃない……」

ことり「持っているのは、『もう一人』の方。真姫ちゃんは私たちに、スイッチは『盗まれた』なんて言ってたけど……。本当はその人に、スイッチを『渡してた』んだ――」
 
612: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 22:23:49.12 ID:q8I7KpUa.net
 
――――


次の日(土曜日)……


神田明神



真姫「正解よ」

海未「……」

真姫「スイッチを盗まれたっていうのは、嘘。本当はスイッチは、『ある人』に渡していたの。『スイッチを貸してほしい』って、頼まれてね……」

海未(頼まれた……? ということは、私やことりの他にもスイッチのことを知る人物が……?)

海未「……『ある人』とは、誰ですか?」

真姫「言えるわけないでしょ」

海未「では、どうして貸したのですか? 私はあれほどあのスイッチは危険であると、言っておいたはずですが」

真姫「『その人』の目的に、ある程度共感できたから、かしらね。少なくとも私はあのスイッチは、そうやって使うべきだと思ったわ」

海未「人を無理やりほのキチに変えることが、あのスイッチの正しい使い方だと言うのですか……?」

真姫「まあ……。本質はそこじゃないけどね」

海未「……そういえば『ほのキチ』という呼称も、あなたが付けたものでしたね……。しかし今思い返してみれば、あの時のあなたは何か変でした」

海未「あの時点ではまだ、ほのキチはことり一人だけだったんです。なのにあなたはわざわざ、彼女にそんな呼び名をつけた……」

海未「まるでこれから、ことり以外にもほのキチが生まれることを、知っていたかのように……っ!」

真姫「……」

海未「真姫……っ! あなたと、あなたがスイッチを渡した『ある人』の目的とは、『凛をほのキチに変えること』ですかっ!? だとしたらそれに一体、何の意味が……っ!」

真姫「……バカね。凛だけを変えても、意味なんてないわよ」

海未「は……?」

真姫「特別に教えてあげる。『私たち』の目的は――」



真姫「『μ'sのメンバー全員をほのキチに変えること』、よ」
  
617: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 22:31:52.30 ID:q8I7KpUa.net
  
海未「なっ……」

真姫「……」

海未「なにを、言ってるんですか……? あなたは一体、何を考えてるんですか……?」

真姫「……まあ、理解できないでしょうね。あんたには」

海未「わ、分かりませんよ……。ですからそんなことをして、一体何の意味があるっていうんですか……?」

真姫「言う必要はないわ」

海未「……っ! あなた、分かってるんですかっ!? μ'sが全員ほのキチになるなんて……。それが一体、どれだけ恐ろしいことなのか、分かってて言ってるんですかっ!?」

海未「まさか、ほのキチになった凛の姿を見てもまだあなたは、あのスイッチの危険性を理解してないのですか……っ!?」

真姫「危険……? ええ。確かに使う人によっては、あのスイッチは危険なものになり得るかもしれない」

真姫「特にことりや海未、あんたたちみたいな人の手に渡れば、ね……」

海未「は……? どうしてそこで私の名前が……?」

真姫「でも『あの人』は違う。『あの人』ならスイッチを、正しく使ってくれる……」

海未「……真姫。あなた、言いましたよね。『私はラブライブを諦めない』、と……」

真姫「……」

海未「μ'sのメンバー全員の『ほのキチ化』などといった事態になれば、それどころじゃなくなりますよ……っ!? それでも、いいんですかっ!?」

海未「それともまさかあの言葉すら、嘘だったのですか……っ!?」

真姫「……はぁ」

海未(どうして真姫が、このようなことを……。一体彼女に、何があったのですか……っ!?)
 
618: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 22:38:55.54 ID:q8I7KpUa.net
   
「おーいっ! 二人ともーっ!」


タッタッタッ……


海未「っ!? あれは……穂乃果? どうしてここに……」

真姫「あぁ、やっときた。私が呼んだのよ。『今日は海未も呼んで、神社で三人で練習しないか』、って」

海未「……えっ? れ、練習?」

真姫「そうよ。休みの日だって練習しなくちゃ。ラブライブはもう、近いんだし」

海未「……」

海未(……おかしい。真姫を呼んだのは私の方なのに、どうして真姫が、穂乃果を……?)

海未(いえ、それよりどうして彼女はこんなにもあっさり、自分が犯人であることを認めて……)

真姫「ねえ、海未……」

海未「……はい?」

真姫「あんたの目にはさ……私たちのしてることは、どう映ってる?」

海未「……そんなの、決まっています」

海未「あなたたちのしていることは、最低な行為です。人の気持ちを無理やり捻じ曲げることなんて、許されるわけがない……それで穂乃果が悲しむことになるのなら、なおさらです」

真姫「……まあ、そうよね」

海未「なにが言いたいんですか……?」

真姫「いや、あんたも迂闊ね……って思っただけよ。だってスイッチはまだ、『こっち側』にあるのに」

海未「……っ!」

海未(まさか……っ!)



海未「穂乃果っ! こちらに来ては――」

真姫「これ以上邪魔されると面倒だわ。あんたもここで、『ほのキチ』になっちゃいなさい」
 
 
620: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 22:49:50.00 ID:q8I7KpUa.net
    
「……ありがとう、真姫ちゃん」

「先に『あっち』で、待っててね……」

「これであと、『4人』――」



「……?」

「あれは……」




タッタッタッ……



穂乃果「お待たせ、二人とも――えっ?」

真姫「なっ!?」


グイッ!


海未「っ!?」

ことり「わーっ! 海未ちゃん、こんなとこにいたんだぁっ! 探したよー?」

海未「こ、ことりっ!? あなたまで、なぜここに……っ! というか、どこからっ!」

ことり「もぉー。今日はことりのバイトを手伝ってくれる約束でしょー?」

海未「ええっ!? ま、またあのような恰好を……?」

ことり「よーし、れっつごーっ!」

海未「わぁっ!? ちょ、ちょっと――」


グイグイ……



真姫「……」

穂乃果「……あ、あれ?」
 
622: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 22:55:53.56 ID:q8I7KpUa.net
 

タッタッタッ……



ことり「ふぅ~。ここまでくれば大丈夫かな?」

海未「はぁ、はぁ……。こ、ことり、あなた……」

ことり「あはは。危なかったねー、海未ちゃん。もう少しで、『私みたいに』なるところだったねえ」

海未「……ずっと、見ていたんですか?」

ことり「うんっ。海未ちゃんの後をつけてて、大体行き先が分かったから、先回りして神社の境内に隠れてたの」

海未「ど、どうして私の後をつけてたんですか……」

ことり「昨日、言ってたでしょ? 『明日、真姫に直接真実を確かめてくる』、って」

ことり「でもそうなったら、真姫ちゃん側も何か仕掛けてくると思ったから……。だから今日一日はずっと、海未ちゃんを見守っておくことにしたんだぁ」

海未「……」

ことり「おかげでバイトはサボりになっちゃったけど……。あ、気にしないで。海未ちゃんのためなら、バイトの一日くらい――」

海未「……ことりっ!!」


バッ


ことり「……えっ?」

海未「本当に……本当に、ごめんなさいっ!!」

海未「あなたを疑ってしまって、ごめんなさいっ! 私が、間違っていました……っ!」

海未「あなたは犯人ではありませんでした……。なのに私は、あなたを疑って……。酷いことも、たくさん言って……」

海未「ごめんなさい、ことり……」

ことり「……」
  
628: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 23:03:25.68 ID:q8I7KpUa.net
  
ことり「……顔を上げて、海未ちゃん」

海未「こ、ことり……?」

ことり「謝ることないよ。ことりが怪しかったのは、事実だもんね。犯人だって思われても、仕方がないよ……」

海未「そ、そんな……。私は、最低です……っ! 大切な幼馴染を、疑って……」

ことり「えっ。まだ私のこと、幼馴染だって思ってくれるの?」

海未「あ、当たり前じゃないですかっ!」

ことり「……それじゃ絶交も、取消し?」

海未「えっ? あっ……。は、はい、取り消しです。あの話は、なかったことにしてください……」

ことり「ほんとっ? よかったぁーっ! えへへっ」パァ

海未(……もしかして、本当にあのことを気にしていたのですか? ここ最近、様子がおかしかったのも……)

海未「ことり……。本当にごめんなさい……」

ことり「ふふっ。もういいってばー」

海未「私はあなたを、誤解していたのかもしれません……」

ことり「……?」

海未「あなたの人格が歪んでしまったことで私は、その変化を受け入れきれず、一方的にあなたを悪い人だと決めつけていました……」

海未「でも……そうじゃなかった。いえ、穂乃果に対するセクハラ行為は困ったものですが、それでも……」

海未「それでもやっぱりあなたは、ちゃんと『ことり』だったんですね。あなたはやっぱり私のよく知る、大切な幼馴染でした……」

海未「それが分かったいま私は、あなたが無理に元に戻る必要はないのではないかとさえ思います。今のあなたを否定する意味は、もうないのだから……」

ことり「……」
 
629: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 23:12:40.49 ID:q8I7KpUa.net
  
ことり「……海未ちゃん、私ね」

海未「……?」

ことり「私ね。実は最近、ちょっとだけだけど、元のことりに戻ってみてもいいかなって、思うときがあるの」

海未「っ!? それは、本当ですか……?」

ことり「うん……。なんだかたまにね、頭のここら辺が、ズキってする時があるの……」

海未「……? それは一体……」

ことり「分かんない……。分かんないんだけど、でもね、海未ちゃん……。私、なんだかね――」



ことり「ほのキチになったあの日から、なにか大切なことを、忘れてる気がするの……」



海未「……」

海未「それは『常識』とか、『理性』とかじゃないですか?」

ことり「ううん。きっと、それよりも大切なことだよ……」

海未「そ、それよりも大切なことがあるんですか……。それはともかく、まさかあなたが自分から『元に戻りたい』という日がくるとは……」

ことり「うん……。海未ちゃん、協力してくれる?」

海未「……ふふっ。何を言ってるんですか」


スッ


海未「あなたが『協力して』と言うのなら、私は何でも協力しますよ。幼馴染でしょう?」

ことり「……海未ちゃん」
  
631: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 23:19:53.94 ID:q8I7KpUa.net
ガシッ

ことり「ありがとう。私も海未ちゃんに、最後まで協力するよ」

海未「……そうですね。まだ、終わってませんもんね」

ことり「うん……。真姫ちゃんたちのやろうとしていることを、なんとしてでも止めよう」

ことり「これ以上……私や凛ちゃんみたいな人たちを、増やさないためにも」

海未「ええ……そうですね」


海未(真姫……。ほのキチでもないあなたが、一体なぜあのようなことを……?)

海未(それに、ことりに罪を被せようとするなんて……。いくらことりがほのキチだからって、あの真姫がそんなことするなんて……)

海未(やはり彼女が言っていた、『あの人』というのが気になります。『あの人』なる人物が、真姫を変えてしまったとしか思えない……)

海未(一体、何者なんですか……? 私たちは一体、何と戦っているのですか……?)



『つまりね、だから、その……。私に対しては、あまり気を遣わなくていいわよ、ってこと』

『困ってることがあるなら、私にいつでも相談しなさいってことっ! いつまでも暗い顔してんじゃないわよ、バカっ!』


ことり(……)

ことり(真姫ちゃん……。真姫ちゃんは自分が疑われないために、ことりのことを利用しようとしていたの……?)

ことり(だとしたら、あの時ことりにかけてくれた言葉も……全部、嘘だったの?)

ことり(……真姫ちゃん――)
639: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 23:48:07.85 ID:q8I7KpUa.net
 
――――


真姫「……はぁ」

真姫(まさか、ここでことりが出てくるなんて、ね……)

真姫(二人で示し合せてたのかしら……? いやでも、海未の反応を見た限りだと、あれはことりの独断専行か……)

穂乃果「海未ちゃんが、連れてかれちゃった……。バイトって言ってたけど、真姫ちゃん、なにか聞いてた?」

真姫「……」チラッ

真姫(それでも早くスイッチを押しちゃえば、まだ何とかなったのに……。なにやってんのよ、あいつは……)

穂乃果「真姫ちゃん……?」

真姫(まだ覚悟を決めきれてないのかしら……。まったく、話を持ちかけてきたのは、あんたの方でしょ……?)

真姫(とにかく、作戦は失敗か……。はぁ。貴重な休日を、無駄にしたわ……)

穂乃果「真姫ちゃんっ!」

真姫「えっ?」

穂乃果「ど、どうしたの? さっきからずっと、怖い顔をしてるけど……」

真姫「……は? 私が、怖い顔?」

穂乃果「うん……。もしかして海未ちゃんのこと、怒ってる?」

真姫「えっ、いや……」

穂乃果「あのね、最近海未ちゃんずっと忙しそうだから、つい予定を忘れちゃったんだと思うの。だから、許してあげて……?」

真姫「……」


真姫(穂乃果……。あんた目の前のヤツに、利用されてるのよ? 自分の置かれた状況も知らないで、なに言ってんだか……)

真姫(ほんっと、バカなんだから……)

真姫(……それにしても)

真姫(怖い顔、ね……。いつの間にか私、そんなに余裕がなくなっちゃってたんだ……)
  
641: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/31(月) 23:58:17.58 ID:q8I7KpUa.net
 
穂乃果「それにしても……どうしよっか。海未ちゃんいなくなっちゃったし、二人で練習する?」

真姫「……穂乃果」

穂乃果「なに?」

真姫「こうして二人でいると……。あの時を思い出すわね」

穂乃果「あの時って……?」

真姫「初めてあんたと出会った時よ。あの時も、私とあんたは二人きりで……」

穂乃果「えっ……。でもあの時は音楽室だったけど、今はお外だよ……?」

真姫「……あの時のあんたには、驚かされたわ。いきなり、『アイドルやってみたいと思わない?』とか……ほんと、意味わかんない」

穂乃果「わぁっ! そんな前の話、今更言わないでよぉ~……」

真姫「でも……最近になってようやく、気づけたわ。あの時あんたは私に、大事な『意味』をくれた――」

真姫「そしてそのおかげでいま私はこうして、ここにいるんだ、って」

穂乃果「……えっと、どうしたの、真姫ちゃん? 急に……」

真姫「穂乃果っ」

穂乃果「な、なにかな……?」

真姫「もう多分、きっと……『今の私』はあんたとはもう、二度と会えないから」

真姫「だから最後に、言わせて」

穂乃果「えっ……?」

真姫「あの時……」


 



真姫「あの時『アイドルみたいに可愛い』って言ってくれて、嬉しかった」

真姫「私をμ'sに誘ってくれて、ありがとうっ。穂乃果――」
 
643: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/01(火) 00:05:47.37 ID:Bq6PNAWf.net
 

ダキッ

穂乃果「っ! えっ!? ま、真姫ちゃんっ!?」

真姫(あぁー、恥ずかしい……。なにしてんのよ、私)

真姫(でも、ここまですれば分かるでしょ? 『あんた』が次に、なにをすべきか……)

真姫(……これで、私の役目は終わり。あとは、あんたの仕事よ)

真姫(正直、あんただけでこの先やってけるか、不安だけど……。でもまあ、大丈夫でしょ)

真姫(あんたにはあのスイッチと、ほのキチがついてるから――)

穂乃果「ま、真姫ちゃん、本当に、どうしちゃったの? なんか、変だよ……?」

真姫「穂乃果……ごめんね」

真姫「今までずっと、ごめん……。そして、これからも……」

穂乃果「えっ……?」

真姫「私はこれからおかしくなって、私が私じゃなくなって、それで……。あんたに酷いことをいっぱいするかもしれないし、変なこともたくさんするかもしれない」

真姫「それでも……どうか私を、受け入れて……。『私たち』を、受け入れて……。そうすれば、きっと……」

穂乃果「真姫、ちゃん……?」

真姫「μ'sは……。μ'sは、きっと――」


ブワァッ!


真姫「――っ!!」


フラッ


穂乃果「ま、真姫ちゃんっ!?」

真姫(あぁ……そっか……)

穂乃果「真姫ちゃん、どうしたのっ!? 真姫ちゃんっ!」

真姫(これが……『ほのスメル』、なんだ……。この、におい……このかんかくが……)

真姫(うん、わるくない、わ……。やっと……わたしにも、わかっ……)



ドサッ……
 
 
648: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/01(火) 00:32:54.36 ID:Bq6PNAWf.net
  
――――――


二日後(月曜日)……



海未「真姫が言っていた、『あの人』……」

海未「『あの人』などいう他人行儀な呼び方をしていたのは、正体を悟られないようにわざとでしょう」

海未「実際は、かなり親しい間柄の人間に違いありません。あの真姫が手を組もうとする相手なんて、限られていますから」

ことり「……となると、やっぱり」

海未「考えたくはありませんが……。μ'sの誰か、でしょうね」

海未「そして私の考えでは、その人物は……。これからはその人物を、『犯人』と呼ぶことにしますが……」


海未「犯人は既に、『ほのキチになっている』可能性が高いです」


ことり「……うん、そうだね。私もそう思う」

海未「この一連の事件の犯人は、ほのキチです。これは、ほのキチがほのキチを生み出すために起こされた、事件だったんです」

海未「真姫は言っていました。『μ'sのメンバー全員をほのキチにする』のが目的だと。最初はそれにどんな意味があるのか、理解できませんでしたが……」

海未「犯人がμ'sのメンバーであり、さらにほのキチであると仮定すれば、納得がいきます。きっと犯人は、『μ'sのみんなでほのキチになりたかった』のだと」

海未「μ'sというグループの中で、ほのキチという少数派でいることが、寂しくて……犯人はみんなも一緒に、巻き込もうとしたのでしょう」

海未「そして――」


海未「知ってのとおり、先日、真姫までもがほのキチになってしまいました」
  
649: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/01(火) 00:41:29.70 ID:Bq6PNAWf.net
    
ことり「でも真姫ちゃんは、犯人の目的に共感してたんだよね?」

海未「ええ。ですからきっと真姫は、最初からほのキチになる気だったのでしょう。犯人の計画に協力しようと、決めた段階で……」

海未「『みんなも一緒に自分と同じほのキチになってほしい』。そんな寂しそうな犯人の、訴えを聞いて……真姫は犯人に、協力したのでしょう」

海未「自分もほのキチになることを、受け入れた上で……」

ことり「あのね、海未ちゃん」

海未「はい?」

ことり「私なりにね、犯人の気持ちを考えてみたんだけど……」

海未「……聞かせてください」

ことり「犯人が、みんなをほのキチにしようとしたのは……確かに寂しかったっていうのも、あるかもしれないけど」

ことり「ほのキチってね。なってみると分かるんだけど、すごく幸せな気分になれるんだよ」

海未「……」

ことり「もちろん、普通の人には理解できないだろうけど……。だから犯人のほのキチは、みんなにその感覚を理解してもらいたかったんじゃないかな?」

ことり「頭ごなしに、否定するんじゃなくて……実際に『なってみて』、みんなに理解してほしかったんじゃないかな」

ことり「犯人はみんなにも、ほのキチになるっていう『幸せ』を、知ってもらいたかったんだと思うの……だから、こんなことを……」

海未「……なるほど。そういった見方もあるんですね……」
  
650: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/01(火) 00:44:05.36 ID:Bq6PNAWf.net
  
海未「ありがとうございます、参考になりました。やはりほのキチが味方にいると、心強いですね」

ことり「ひ、久しぶりに、海未ちゃんに褒められた……っ!」キラキラ

海未「……問題は、誰が犯人のほのキチなのか、ですが」

ことり「……あれ? でもそういえば、スイッチを持ってたことがあるのって、犯人に渡る前は、海未ちゃんか私か真姫ちゃんだけだよね?」

海未「そうですね」

ことり「でも犯人は、事件の計画を思いついた時には……スイッチを真姫ちゃんから借りた時には、もうほのキチになってたんだよね?」

海未「……はい」

ことり「じゃあ、犯人はいつ、ほのキチになったの……?」

海未「……私の考えが正しければ、犯人はことりよりも先に、ほのキチになっていた可能性があります」

ことり「……っ!? えっ、そんな前から……?」

海未「はい……。犯人は、末恐ろしいほのキチです。そんな前から、異変に気づかれないように、ほのキチであることを隠しきっていたというのですから……」

ことり「まさか穂乃果ちゃんと一緒にいて、理性を保ち続けられるなんて……そんなほのキチが、いるなんて……」

海未「やはりほのキチ側から見ても、異常ですか……」

ことり「うん……。そういえば私、凛ちゃんと真姫ちゃんとも、話したんだ。何かヒントがもらえるかと思って……」

海未「ほんとですかっ!? なるほど、ほのキチ同士なら、彼女たちも心を許して、話をしてくれるわけですね……っ!」

ことり「といっても、凛ちゃんはやっぱり、犯人のことは覚えてなかったし……。真姫ちゃんも計画のことまでは、話してくれなかったけど……」

ことり「それでも結構、良い話ができたよ。例えばね――」
 
652: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/01(火) 00:53:21.74 ID:Bq6PNAWf.net
    
ことり「――……。こんなところ、かな」

海未「すごいです……。やはりことり、あなたが味方で、本当に良かった……っ!」

ことり「えっ……? え、えへへ、まさかそんなに、喜んでもらえるなんて……」テレッ

海未「お手柄ですよ、ことり。そうなると……」

海未「『μ'sのメンバー全員をほのキチにする』といっても、穂乃果だけはほのキチにすることができない――」

海未「そしてなぜ犯人は、『メンバー全員のほのキチ化』が目的であるにもかかわらず、『全員を一斉にほのキチ化』しようとはしなかったのか――」

海未「――この二点が疑問でしたが……今、解決しました。そしてこれまでの考えを、まとめると……」

海未「……」ブツブツ

ことり「……」

海未「……私の考えを聞いていただいても、よろしいですか?」

ことり「うん、聞かせて?」

海未「……――――」

ことり「……そっか。だとすると――」

海未「――――」

ことり「――――」



……



海未「……なるほど」

ことり「そうなると、やっぱり……」

海未「ええ。犯人は――」
  
653: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/01(火) 00:59:54.17 ID:Bq6PNAWf.net
  
……



ピピッ



海未「……ん、時間ですね」

ことり「あ、ほんとだ」

海未「それでは、手筈通りに……」

ことり「うん、分かった。それじゃあ……」

海未「ええ……」




海未「部室に、向かいましょう」




海未(『ほのスメル増幅スイッチ』に纏わる、この一連の事件は……)


海未(今日中に、私たちが終わらせます――)




そして、数分後……


アイドル研究部部室に、穂乃果、凛、真姫を除く……




μ'sのメンバー『6人』が、集結した。


 
714: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 20:54:26.60 ID:Y8nf6A+N.net
  
――――

部室


にこ「昼休みだってのに急に呼び出して、何なのよー?」

絵里「大事な話って、メールでは言ってたけど……」

花陽「……もしかして、凛ちゃんや真姫ちゃんのこと?」

希「っ! 真姫ちゃんまで倒れちゃった時は、流石におかしいと思ったけど……」

希「……あの二人のこと、何か分かったん?」

ことり「……」

海未「ええ……。今日呼び出したのは、そのことについてみんなにお話するためです」

にこ「どういうこと? ことりもだけど……。三人が急に倒れた原因が、分かったっていうの?」

海未「その前に4人には、ある『スイッチ』のことをお話ししなければなりません」

絵里「スイッチ……? 確かことりも前に、そんなことを……」

海未「ええ。そのスイッチは、押すとほのスメル、すなわち穂乃果の体の匂いを増幅させることができるんです」

にこ「……は??」

花陽「……えっと」

海未「スイッチはボタンを押すごとに、5段階までスメルを増幅させることができます。『レベル2』までで十分な効果が得られ、『レベル3』までいくと常人にはやや刺激の強い匂いとなります」

海未「そして、『レベル4』に達すると……常識を遥かに超えた、ほのスメルとなります。嗅いだ人間の意識を、失わせるほどの……」

絵里「ちょ、ちょっと……」

希「まさか……」

海未「そして意識を取り戻したとき、その者はほのスメルのことしか考えられない、中毒症状発症者――『ほのキチ』になってしまいます」

海未「私たちμ'sに起きた、一連の失神事件の……これが、真相です」
  
718: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 21:02:00.83 ID:Y8nf6A+N.net
  

「「……」」


にこ「……ちょっと、アホらしすぎてついていけないわね」

絵里「え、ええ、悪いけれど……。ていうか、穂乃果の匂いって……ねえ」

花陽「う、うん……///」

希「えっと……つまりことりちゃんも凛ちゃんも真姫ちゃんも、穂乃果ちゃんの匂いを嗅いだから、倒れちゃったってことなん?」

ことり「そうだよ。私の場合は事故だったんだけど。通学途中に穂乃果ちゃんがスイッチを拾って、うっかり4回押しちゃったんだ」

にこ「拾ったって……」

海未「私が落としたんです。元々は真姫の物だったんですが、私が貰って……。でも最終的には、真姫に返したんです」

海未「……しかしその真姫が、何者かに協力し、スイッチを渡したんです」

海未「そしてその何者かが、スイッチを使って無理やり凛をほのキチに変え、真姫さえもほのキチに変えてしまいました」

絵里「何者か……?」

花陽「あ、あの、ほのキチって、その……」

海未「……最近のことりたちは様子がおかしかったでしょう? あの状態が、ほのキチです。レベル4を嗅ぐと、人はほのキチになってしまうんです」

絵里「ま、まって、整理させて……。意味が全然分からないわ。あなた一体、何を言ってるの?」

海未「落ち着いてください……。そしてできれば、信じてください」

にこ「信じろって言ったって……。じゃあそのスイッチとやらを、出しなさいよ」

ことり「それは、できないんだ……。私たちはそのスイッチを、持ってないから」

にこ「じゃあ、誰が……」

海未「言ったでしょう? スイッチは真姫が、何者かに渡しました。そしてその何者かが、凛や真姫をほのキチに変えた、『犯人』なんです」

希「……犯人?」

海未「ええ……そして――」



海未「犯人は、この中にいます」
 
723: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 21:16:03.95 ID:Y8nf6A+N.net
  
にこ「は……? なに、それ……」

海未「……」

にこ「なによ、それ……。つまりあんたは、仲間を疑ってるって言うの……?」

海未「……ええ。そういうことになります」

にこ「ふざけんじゃないわよっ! 頭おかしいんじゃないのっ!? そんな変な話をいきなりされて、疑われるこっちの身にもなりなさいよっ!」

希「に、にこっち……」

ことり「にこちゃん、海未ちゃんの話を、信じてあげて?」

にこ「信じられるわけないって言ってんのっ! ことり、あんただって――」

ことり「うん、実際に倒れてほのキチになった私が言ってるんだよ? それでも信じられない?」

にこ「……っ!」

絵里「……待って。匂い……? そういえばことりも、凛も……」

海未「ええ。今までの二人の様子を思い返してみれば、分かりますよね?」

絵里「確かに二人とも、『匂い』に異常に固執していたような……」

花陽「ま、まさか、本当に……」

にこ「……」

海未「……話を戻します。この中に、凛と真姫をほのキチに変えた人物がいる……」

海未「そして……私の推測ではその人物もまた、ほのキチです」
 
 
725: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 21:29:20.66 ID:Y8nf6A+N.net
  
希「……えっ?」

海未「犯人は、ほのキチです……。その目的は、『μ's全員を自分と同じほのキチにすること』だったんです」

絵里「えっ……。ちょっと待って。ほのキチって、ことりがそうなんでしょう?」

海未「ことりは、犯人ではありません。これは私が、保証します」

絵里「でも他にこの中で、穂乃果の匂いに固執してるような人なんて……」

海未「それは……尻尾を出していないだけです。犯人は、その事実を今日まで隠し続けながら、ここにいるんです」

花陽「……そんなことが」

ことり「できるはずないん、だけどね……。だけど、その犯人が『ほのキチになった状況』を思い返すと……。もしかしたら、って海未ちゃんは考えたんだ」

にこ「……言ってみなさいよ。そいつはいつ、ほのキチとかいうのになったの?」

海未「……犯人は、計画を思いつき、真姫にスイッチを借りる時には既に、ほのキチになっていた……」

海未「だとしたらその前に、スイッチが押された時です……。穂乃果がいて、犯人も近くにいるという状況で、スイッチが押された時……」

海未「そんな状況に、私は心当たりがあります。それはことりがほのキチになるよりも、もっと前……」

海未「私が真姫からスイッチを貰ってすぐに、部室でスイッチの『試し押し』を行った時です」

にこ「……なんですって?」

希「……そ、それって、いつぐらいの話なん?」

海未「二週間ほど前、です」

希「二週間前……?」

花陽「部室……? 匂い……?」

絵里「……あっ!?」



『や、やばい……やばいわよ、この匂い……っ///』

『はぁ、はぁ……///』

『身体が、熱い……////』

『ふわぁあぁ……っ! これ、ほんまにあかんっ////』


ガタンッ!


にこ、絵里、花陽、希「「あの時かぁーっ!!」」
 
726: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 21:38:58.33 ID:Y8nf6A+N.net
  
にこ「う、うわ、思い出した、そうよ、そうだわっ! 『匂い』よっ!」

絵里「なるほど……。あ、あれは、穂乃果の匂いだったのねっ!?」

花陽「う、わ、わわ……っ///」カァァァ

希「そ、そっか、そうやったんや。あ、はは……。あれがつまり、スイッチで増幅されたっていう……」

海未「『ほのスメル』です。ようやく、信じてもらえましたか」

ことり「そう。実はみんな、もう……。ほのスメルを一度、嗅いでたんだよ」

にこ「な、なんで隠してたのよっ! あの場で言いなさいよっ!」

花陽「そ、そうだよっ! あの匂いが気になって私、夜も眠れなかったんだよぉっ!?」

海未「言えるわけないでしょうっ!? あんなスイッチ使ってるなんて知られたら、変態だと勘違いされるじゃないですかっ!」

にこ「ちょっとっ! その言い方だと、あの後も使ってたように聞こえるわよっ!?」

海未「えっ!? そ、それは……」

希「海未ちゃん、『試し押し』って言ってたけど……。その後は、どんな風に使ってたん……?」

海未「べ、別に大したことには使ってませんよっ! 通学途中に『レベル1』を押して、優雅な朝を堪能したりだとか……っ!」

希「あ、うん……」

海未「穂乃果を部屋に連れ込んで、『レベル2』を部屋に充満させて楽しんだりとかっ!」

にこ「うわぁ……」

海未「彼女を押し倒して、『レベル3』をTシャツの中で嗅ごうとしたりとかっ! せいぜいその程度ですっ!」

ことり(やってること、私とほとんど変わらないような……)
 
729: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 21:50:24.97 ID:Y8nf6A+N.net
  
にこ「分かったっ!」

海未「えっ?」

にこ「あんたが犯人でしょ」

海未「違いますよっ! 私は探偵役ですっ!」

絵里「でもあなた自分で、『犯人はほのキチだ』って言ったじゃない」

海未「私はほのキチでもありませんっ!」

花陽「えっ!? 違うのっ!?」

希「違うんや……。よう分からんなぁ」

ことり「み、みんな、聞いて? 海未ちゃんは変態さんだけど、犯人ではないよ?」

海未「変態でもありませんっ! とにかくあの時ほのスメルを嗅いで、ほのキチになってしまった人がこの中にいるはずなんです……っ!」

絵里「……でもあの時は、誰も倒れた人なんていなかったわよ?」

花陽「そういえば……」

にこ「そうよ。そもそもあんたはあの時、その……『レベル』、だっけ? いくつまで上げてたのよ?」

海未「『3』ですよ」

にこ「ならおかしいじゃない。『レベル4』ってのが特にヤバくて、それを嗅いだらほのキチになっちゃうんでしょ?」

海未「私も最初は、そう思っていましたよ。ほのキチになる条件は、『レベル4』以上を嗅ぐことだと……」

海未「だけどよく考えてみたら、そうとは限らないんです。例えば私やことりは、『レベル3』を嗅いでもほのキチにはなりませんでしたが……」

海未「それは私たちが穂乃果との付き合いが長い分、ほのスメルに『耐性』があったからだとも考えられます」

海未「つまり耐性のない人なら、『レベル3』でもほのキチになってしまう可能性だって、十分に考えられるんです……」
 
730: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 21:58:49.74 ID:Y8nf6A+N.net
 
にこ「……なによそれ。じゃあ結局、私たち4人全員が怪しいってこと?」

海未「いえ、そうとは限りませんよ。あの時みんなが同じ条件下で、『レベル3』を嗅いだわけではありませんから」

花陽「と、いうと……?」

海未「そうですね。例えば……距離」

希「……っ!」

海未「距離が近ければ、それだけ匂いも強く感じられ、ほのキチに至る可能性も高まる……。と、いうわけで――」

海未「あの場で最も穂乃果から距離が遠かった、絵里は容疑から外しても良いでしょう」

絵里「えっ? あっ……。や、やったっ!」

にこ「ちょ、ちょっと待ってよ……。じゃあ、私たちは?」

海未「……三人は特にあの時、穂乃果の近くで匂いを嗅いでいましたよね」

にこ「うえっ!?」

花陽「っ!!」

希「そ、そんな……」

海未「あなたたち三人の誰かが、ほのキチです……」

にこ「……」

にこ「……なるほど、分かったわ」

花陽「えっ……?」

にこ「花陽、あんたが犯人ね」

花陽「えぇーっ!?」
 
740: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 22:08:35.53 ID:Y8nf6A+N.net
  
花陽「どうして、にこちゃんっ!?」

にこ「理由は簡単よ。あんたさっき、『あの匂いが気になって夜も眠れなかった』とか言ってたじゃない」

にこ「私は別にそこまでじゃなかったわ。はい、きゅーいーでぃー」

花陽「待ってくださいっ! 私が凛ちゃんを、スイッチで無理やりほのキチにしたって言うんですかっ!?」

にこ「あんたはほのキチなんだから、親友の凛のことをほのキチ側に引き込もうとしても、おかしくはないわ」

花陽「うっ……、で、でも、にこちゃんの方こそ怪しいよっ!」

にこ「はぁっ? なに言ってんのよ。私は別に穂乃果の匂いなんて、興味ないし」

花陽「さ、最近のにこちゃんは、妙に穂乃果ちゃんと一緒にいる機会が多い気がしますっ! 練習前のストレッチとか、いつも穂乃果ちゃんと一緒だよねっ!?」

にこ「な、なに言ってんのよっ! あれは穂乃果をほのキチ共から守るためにねえっ!」

花陽「そうだ、思い出したっ! 例の部室の時も、にこちゃんだけ明らかに匂いへの興味が強かったように思いますっ!」

にこ「そんなことないわよっ! 二週間も前の話だからって、適当なこと言ってんじゃないわよっ!」

花陽「ううん、はっきり覚えてるよっ! 部室中を歩き回って、匂いの元を探ってましたっ!」

にこ「ぬっ、ぐぐ……」

希「ふ、二人とも、一回落ち着こ? まずは海未ちゃんの話を聞いて――」

にこ「あんただって怪しいのよ、希っ!」

希「ウチもっ!?」
 
742: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 22:17:09.91 ID:Y8nf6A+N.net
  
にこ「思い出したわっ! あの時一番穂乃果の近くにいたのは、あんただったわっ!」

希「えっ? そ、そうやったっけ……」

花陽「あ、そういえば、そうだった気も……」

にこ「そして匂いを嗅いで一番蕩けた顔してたのも、あんただったっ!」

希「なっ!? そ、それは言い過ぎやってっ!」

花陽「うーん。確かに、そうだったような……」

希「に、にこっちなんか顔真っ赤にして、鼻息フーフーいわせてたやんっ!」

にこ「し、失礼ねっ! スーパーアイドルにこにーが、鼻息なんて吹かすわけないでしょっ!?」

花陽「うぅーん……」

にこ「鼻息で言えば絶対、花陽がダントツだったわよっ!」

花陽「ええっ!? わ、私っ!?」

希「じゃあ鼻息ランキングは花陽ちゃんがトップやなっ! なんならトロ顔ランキングも、花陽ちゃんかなっ!?」

花陽「どっちも私じゃないですっ! 特に鼻息のトップは、絶対私じゃありませんっ!」

にこ「うっさいわねっ! 鼻息は花陽、トロ顔は希で決まりでしょっ!?」

絵里(はやくかえりたいな……)ボーッ

にこ「言っとくけど、あんたも怪しいんだからね、絵里っ!!」

絵里「はっ!? 私は容疑から外れてるでしょっ!?」

海未「あの……」
 
743: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 22:26:45.49 ID:Y8nf6A+N.net
  
海未「とりあえず、話を続けてもいいですか?」

にこ「ていうかあんたには犯人が誰なのか、もう分かってんでしょっ!? もったいぶらずにさっさと言いなさいよっ!」

海未「順序というものがあるんですっ! いいですか、私の考えでは、ほのキチにも色々あるんですっ!」

花陽「どういうこと?」

海未「例えば凛と比べると、ことりにはまだ、理性が残っています。今はこうして、私に協力してくれますしね」

ことり「……うん」

海未「二人は同じ『レベル4』を嗅いだのに、この違いはなんでしょうか?」

海未「それは先ほども言った、ほのスメルに対する『耐性』にあると考えられます」

絵里「凛は耐性がなくて『重度のほのキチ』になってしまったけど、ことりには耐性があるから、凛よりも軽度で済んだ、ということね……?」

海未「はい。つまり同じほのキチでも、症状の度合いはそれぞれ違うんです」

海未「そして、『レベル4』よりも刺激の少ない『レベル3』でほのキチになった犯人は……より理性が残っていると、思われます」

希「だから犯人は今まで、ほのキチであることを、隠してこれた?」

海未「そういうことです。いわば犯人は、『不完全なほのキチ』なんです」
 
745: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 22:46:50.55 ID:Y8nf6A+N.net
 
希「……本当にじゃあ、ウチら三人の中に?」

にこ「全部を知った上で、まだ事実を隠してるヤツが、いるってことなの?」

花陽「……信じたくないよ、そんなの」

海未「犯人の目的は、『μ'sのメンバー全員のほのキチ化』です……」

海未「……だけどきっと犯人には、悪意なんてないんです」

にこ「……」

海未「間違っても犯人は、ほのキチ化によりμ'sを崩壊させようなどとは、思ってないはず……。私たちはそういう結論に、達しました」

花陽「……」

海未「あの時、部室でたまたまほのキチになってしまった、犯人は……。仲間であるμ'sのみんなにも、自分と同じほのキチになってほしくて、計画を考えたんです」

希「……」

海未「理由は、寂しかったから……。あるいは、理解してもらいたかったから。どちらにせよ――」

海未「犯人は、μ'sが好きだからこそ、こんなことをしたんです」

ことり「……」

海未「犯人をほのキチにしてしまった責任は、私にあります。ですから私が犯人の正体を、暴きます」

海未「その鍵となるのは……。これまでスイッチによるほのキチ化のターゲットに選ばれた、『二人』です」

花陽「……えっ?」

希「それって……」
 
746: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 22:53:35.33 ID:Y8nf6A+N.net
 
絵里「『二人』……」

絵里「……そういえば、どうして犯人はこれまで、μ'sのメンバーを『一人ずつ』ほのキチ化してきたの?」

にこ「そういえば、そうね。全員をほのキチ化したいなら、練習中とかみんなが集まってる時に、やっちゃえばいいのに」

海未「犯人は一斉にメンバー全員をほのキチ化するんじゃなくて、ゆっくり時間をかけて、徐々にほのキチ化を進めていくつもりだったんです」

にこ「だから、どうしてそんな回りくどいこと……」

海未「……穂乃果ですよ」

花陽「穂乃果ちゃん……?」

海未「μ'sのメンバー全員とは言っても、穂乃果だけは、ほのキチ化することはできない――」

海未「ということは、犯人の計画が達成されたとき……。μ'sは穂乃果1人と、ほのキチ8人になってしまいます」

にこ「た、確かに……。でもそんなの、あまりにも穂乃果が……」

絵里「……犯人は結局、ほのキチのことしか考えてないの? 穂乃果はどうなっても、いいって言うの?」

絵里「もしそうなら……いくら悪意がなくたって、許せないわ」

ことり「……ほのキチの考え方はね、普通の人にはきっと、理解できないと思う」

絵里「えっ……?」

ことり「私たちほのキチには一個だけ、穂乃果ちゃんに対する共通の想いがあるんだ……。凛ちゃんや真姫ちゃんにも確認したから、間違いないよ」

希「共通の想い……?」

ことり「『ほのキチは、絶対に穂乃果ちゃんに謝らない』。何でか分かる?」

海未「……」

ことり「それはね、穂乃果ちゃんがいつか私たちの好意を受け入れてくれるって、信じてるからなんだ」

ことり「穂乃果ちゃん自身が、いつか必ず私たちの行為は正しいって証明してくれる。私たちは常にそう思いながら、穂乃果ちゃんにエッチなことをしてるんだ」
 
748: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 22:59:22.08 ID:Y8nf6A+N.net
 
希「……っ!」

にこ「く、狂ってるわ……」

絵里「流石に理解、できない……。穂乃果があなたたちのしてるセクハラ行為を受け入れ、許す日が来るとでも言うの……?」

ことり「……」

海未「……ことりが味方で本当に良かったです。ほのキチのこの独特な考え方を知らなければ、犯人の計画の全容を暴くことはできなかったでしょうから……」

海未「これで分かったでしょう? メンバーを一気にほのキチ化してしまえば、きっと穂乃果は驚き、戸惑い、恐怖するでしょう」

海未「だから犯人は、周りを徐々にほのキチ化していくことで……。メンバーを一人一人丁寧に、ほのキチに変えていくことで……」

海未「穂乃果に恐怖を与えず、優しく……ゆっくりと時間をかけて、『ほのキチ』を理解させようとしたんです」

にこ「……」ゾッ

絵里「……分かったわ。それじゃあ、聞かせて。さっきあなたは、『ターゲットに選ばれた二人が鍵』だと言ったわ」

絵里「その、答えを……聞かせて」

海未「……私が犯人なら、まず自分に近しい人から順に、ほのキチ化していきます」

希「えっ……?」

海未「まず『こちら側』に引き込むなら、一緒にいる機会が多くて、仲の良い人をターゲットに選びます……。その方が後々、動きやすいでしょうからね」

にこ「……」

絵里「『ターゲットに選ばれた二人』、って……」





絵里「凛と真姫、よね……?」
 
750: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/04(金) 23:15:55.70 ID:Y8nf6A+N.net
  
絵里「……まさか」

にこ「あんたなの、花陽……?」

花陽「……えっ」

にこ「花陽……本当にあんたが、凛を……」

花陽「えっ!? あ、あの、私じゃ――」

海未「花陽ではありません」

絵里「えっ?」

海未「ほのキチ化のターゲットに選ばれた二人は……『凛』と、そして『私』です。真姫は自分の意志で、ほのキチになったんです」

海未「私は、狙われはしたものの……ことりのおかげで、ほのキチ化を免れました」

にこ「……」

絵里「狙われたのは、凛と、海未……? じゃあ二人と特に、近しい人物っていうと……」

海未「……『lily_white』は、みんな仲良しです」

にこ「っ!!」

ことり「……」

花陽「……そんな」

絵里「うそ、でしょ……?」

海未「……そう。今思い返せば、部室で試し押しをしたあの時、『あなた』だけが――」


『……あれ? 穂乃果ちゃん、香水つけてきたん?』

『うーん。やっぱり、穂乃果ちゃんから……?』


海未「あれが『穂乃果の匂い』であることに、気がついていた」

海未「匂いの正体を、理解していたからこそ……あなたはあの時レベル3で、ほのキチに至ったんです――」


 




 
 

海未「――希、あなたが犯人ですね?」

希「んー……」
 
809: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 21:23:42.13 ID:ybKz+AiX.net
 
希「ハズレ、やな」ニコッ

海未「……ハズレ、ですか」

希「うん。だってウチ、別にほのキチになってへんもん」

海未「……なんですって?」

希「それに最初に狙ったメンバーが『lily_white』の二人だったのも、ただの偶然や。凛ちゃんはともかく、海未ちゃんに関しては、真姫ちゃんが急に決めたことやもん」

海未「そ、そうだったんですか……?」

希「本当は凛ちゃんの次は、花陽ちゃんを『あっち』に送ってあげる予定だったんよ。だって可哀想で、見てられんかったんやもん」

希「凛ちゃんだけ、先に『あっち』に行っちゃって……。花陽ちゃん、すごく寂しそうやったもんな」

花陽「……え、えっ?」

希「とにかく……。残念やったね、海未ちゃん。しっかり考えてくれてたみたいやけど、海未ちゃんの推理は概ねハズレや」

海未「……ですが」

希「この時間は結構楽しかったけどね。あはは、たまにはこういうのもええなー」

ことり「……」

希「でもまあ、一つだけ海未ちゃんの推理で、当たってるところがあるとすれば……」



希「……ウチが犯人だ、って部分かな? そこだけは正解だよ、海未ちゃん」

海未「……希っ!」

ことり「希ちゃん……っ!」
 
812: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 21:36:17.31 ID:ybKz+AiX.net
  
希「あはは。いやぁ、まさかこんな形でバレちゃうなんてなぁ」

希「うん……。ことりちゃんを味方につけたのはファインプレーやったね、海未ちゃん」

海未「……」

絵里「の、希、そんな……」

にこ「……あんたが犯人だったのね、希。確かに悪戯好きのあんたなら、納得だわ」

にこ「でも今回は流石に、悪ふざけが過ぎるんじゃないの……? あんた、自分が何をしたか、分かってんの……っ!?」

花陽「希ちゃん……。本当に希ちゃんが、凛ちゃんをあんな風にしたの……?」

希「……せやで、花陽ちゃん。ウチが凛ちゃんを、スイッチでほのキチに変えたんや」

花陽「っ!!」

希「凛ちゃんから携帯を借りて、メールで穂乃果ちゃんを部室に呼び出して……。凛ちゃんも部室に向かわせて、二人を二人きりにさせたんや」

希「そしてウチは部室の外で、スイッチを4回押して……凛ちゃんを、『あっち』に送ってあげたんよ」

花陽「どう、して……」

海未「……希。凛を最初のターゲットに選んだのは、偶然ではありませんよね?」

希「……」

海未「やはり例の屋上での出来事が、理由ですか? 凛にほのキチを、否定されたから……」

希「せやね……。凛ちゃんを最初にした理由は、それで合っとるよ……」

希「でもさっきも言ったけど、ウチは『まだ』ほのキチじゃないんよ。だから凛ちゃんが言ってたことも正しいって、普通に思うで」

海未「……あなたがほのキチじゃないなら、一体どうしてこんなことを」

希「ウチはただ、μ'sがバラバラになっていくことに、耐えられなくなっただけや……」

ことり「……」
813: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 21:47:51.28 ID:ybKz+AiX.net
 
ことり「……もしかして」

海未「ことり……?」

ことり「私のためだったの、希ちゃん……?」

希「……」

にこ「ことりのため……?」

ことり「私が……私がμ'sで孤立しかけてたから、希ちゃんは……」

絵里「……っ!!」

花陽「あっ……」


『今のことりちゃんは、なんだか……怖いよ。関わり合いたくないにゃ』

『ま、まあ……そうね。関わったら、私たちもなにかされそう、かも……』

『う、うーん……。本当にことりちゃん、どうしちゃったんだろ……』


『み、みんな、それくらいにせえへん? 流石にことりちゃんが可哀想や……』


絵里「ま、まさか、希……。そういう、ことだったの……?」

ことり「希ちゃんは……ずっと私のことを、心配してくれてたんでしょ? それで、こんなことを……」

希「……だって、おかしいやん。ことりちゃんは、仲間なんだよ?」

希「いくら前のことりちゃんから、変わっちゃっても……ことりちゃんは、ことりちゃんやもん……」

希「なのにあの時は、みんながことりちゃんを冷たい目で見てた……。ウチ、怖かったんよ。あの時の、みんなが……」

希「……こんなの、ウチが望んでたμ'sの形やない。こんなにバラバラなμ'sはもう、見ていたくなかった……」


希「だからスイッチを使って、みんなをことりちゃんと同じ『ほのキチ』にしようとしたんや」

希「みんなでほのキチになれたら、そしたらもう一度μ'sは一つになれるかなって、ウチは思ったんや……」
 
815: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 22:01:21.26 ID:ybKz+AiX.net
 
絵里「……」

海未「……希。そもそもあなたはどうやって、スイッチのことを知ったのですか?」

希「海未ちゃんが真姫ちゃんにスイッチを返すところを、たまたま見ちゃって……。その時に二人がしていた話も、こっそり聞いてたんよ」

海未「あ、あの時ですか……。しかしよくあんな話を、すぐに信じられましたね」

希「部室でのことがあったからね。それでもあの時は半信半疑やったし、別にスイッチが欲しいとも、思わんかったよ」

希「だけど次の日……。あの屋上で、μ'sがバラバラになっていくのを感じた、ウチは……。計画を、思いついたんや」

希「スイッチを使って、『μ'sを変える』計画を……」

海未「……」

希「帰りに真姫ちゃんを呼び出して、すぐにその計画を話した……」

希「そしたら真姫ちゃんは、『協力する』って言ってくれた。すぐに話してよかったよ。真姫ちゃんは帰ったらスイッチを処分するつもりやったらしいけど、ギリギリ間に合ったんや」

希「真姫ちゃんからスイッチを借りたウチはまず、ことりちゃんと喧嘩してた凛ちゃんをほのキチにした……」

希「次に花陽ちゃん……の予定やったんやけど、真姫ちゃんの提案で、次のターゲットは海未ちゃんになった」

希「真姫ちゃんはその時に、海未ちゃんと一緒にほのキチになるつもりやったんよ。真姫ちゃん、早くほのキチになりたがってたから……」

にこ「ほのキチになりたがってた……? 真姫が?」

希「うん。『早くことりの気持ちを理解できるようになりたい』、って言ってたで」

ことり「……」

希「でも結局、その時ほのキチになったのは、真姫ちゃんだけだった……」

希「これはウチの、失敗……。ことりちゃんが海未ちゃんを助けようとしているのを見たら、なぜかスイッチが押せなくなっちゃったんや……」
 
821: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 22:22:42.66 ID:ybKz+AiX.net
 
ことり「……希ちゃん。真姫ちゃんが嘘をついていたのは、やっぱり私に罪を被せようとしてたから、なの?」

希「……それは、仕方なかったんよ。海未ちゃんに疑われないようにするためには、どうしても真姫ちゃんは、嘘をつく必要があった……」

希「でも真姫ちゃんは、やっぱりそこまで非情にはなれんかった。ことりちゃんに罪を被せる形になってしまったことを、すごく後悔してた……」

希「だから真姫ちゃんは、予定を変更して、早めに海未ちゃんをほのキチにしようとしたんやね……」

ことり(……じゃあやっぱり、真姫ちゃんがあの時かけてくれた言葉は、私を心配して……)

ことり(それどころか、真姫ちゃんは自分からほのキチになって、私のことを理解しようとしてくれてた――)

希「そんな真姫ちゃんの意志をついで、今度こそ、ウチは海未ちゃんをほのキチに変える予定やった」

希「その次には、花陽ちゃんも……。でもやっぱり、関係ない人を巻き込まないようにほのキチ化させるのって、難しいんよね。なかなかチャンスがなくて、今日までなにもできんかったよ」

希「で、二人をほのキチに変えられたら、最後に――」

希「にこっちとえりちに、計画の全てを話す予定だったんや」

にこ「……は?」

絵里「な、なんですって……?」
 
822: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 22:23:24.77 ID:ybKz+AiX.net
  
希「二人ならきっと、ウチのやろうとしていることを、分かってくれると思ったから……」

希「……そしたら今度は三人で、穂乃果ちゃんを説得するつもりだったんや」

希「戸惑ってる穂乃果ちゃんに、『ほのキチは怖くないんだよ』ってことを、『ただ穂乃果ちゃんが好きなだけなんだよ』ってことを、知ってもらうつもりやった……」

海未「な、なんですか、その考え方は……。あなたやはり、ほのキチになっているんじゃ……」

希「……そうやね。ウチも海未ちゃんと同じこと、考えてたよ。あの時部室でほのスメルを嗅いだとき、ウチはほのキチになったんじゃないか、って……」

希「でも多分それは、違う……。ことりちゃんたちを見てれば、自分がそうじゃないことくらいすぐに分かる――」


希「だって結局、心の奥底ではウチも、ことりちゃんが穂乃果ちゃんにしてることは変だって、思ってた……」

希「結局ウチはまだ、『こっち側』だったんや。口ではことりちゃんを庇ってても、気持ちではことりちゃんを否定してた……」

希「だからウチは、ほのキチの『成り損ない』……。ほのキチを理解しようとして、ほのキチの真似事をしていただけなんよ」
 
823: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 22:29:56.59 ID:ybKz+AiX.net
  
希「みんながほのキチになっても……穂乃果ちゃんはそれを受け入れてくれるはずやって、信じてた」

希「穂乃果ちゃんを説得して、納得してもらえたら……。その場でスイッチを押して、ウチとにこっちとえりちの三人で、ほのキチになる予定やった」

希「そしたらやっと……μ'sはもう一度、一つになれる――」

希「――はず、やったんやけどね……」

にこ「……あ、あんた、馬鹿じゃないの?」

絵里「ごめん、希……。私たちを信じてくれてたことは、嬉しい、けど……でも……」

絵里「私はそんな話をされても、多分あなたに協力しようとなんて、しなかったと思う……」

希「……そっか」

海未「希……。やはりあなたは私が試し押しをした時に、近距離でレベル3を嗅いだことで……ほのキチにはなってなかったとしても、少なからず影響が出ているようですね」

ことり「うん……。普通のままで、そこまで私たちの立場に立って、考えられるなんて……。やっぱり希ちゃんは、ほのキチに近いところまで来てると思う」

希「あはは。ことりちゃんが言うなら……本当に、そうなんかもな」

海未「ですが……手遅れではありません。あなたはまだ、元に戻れる位置にいる……」

希「……」

海未「……希。みんなに謝罪し、そして、スイッチを返してください。それでこの件は、終わりにしましょう」
 
827: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 23:00:52.68 ID:ybKz+AiX.net
  
海未「さぁ、希……」

希「……あはは、ダメだよ」

海未「はい……?」

希「手遅れや、もう。ウチはもう、元には戻れんよ……」

海未「な、なにを言ってるんですか。あなたはまだ、ほのキチにはなってないでしょう?」

希「ううん、違うんよ。違うんや……」

海未「希……?」

希「分かってるんよ、全部。ウチはみんなに、取り返しのつかないことをしてしまった……」

希「本当は自分でも、おかしいと思ってるんよ。だってどう考えても、変だもん。こんなことするなんて、普通やない……」

希「おかしいよね……変だよね? ウチ……」

絵里「……ちょ、ちょっと?」

花陽「の、希ちゃん……」

にこ「落ち着きなさいよ、希……。どうしたの?」

希「でももう、ここまで来ちゃったら、先に進むしかないんや……。先に進めば、きっと……報われるから」

ことり「……」

海未「……希っ!」

希「だって、『今』はおかしいと思ってても……ほのキチになれたらきっと、それがおかしなことやなくて、『正しいこと』なんやって、思えるようになるはずだから――」



ガラッ!



穂乃果「希ちゃん、話って――」

希「――みんなも、ねっ!!」バッ


カチッ――

 
833: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 23:12:53.82 ID:ybKz+AiX.net
 

ドカァァァンッ!


希「っ!? えっ……」ビクッ

ポロッ

花陽「わわっ!?」ビクッ

穂乃果「ひゃっ!?」ビクッ

絵里「うわあぁっ! な、なに? なに?」オロオロ

にこ「ば、ばくはつ……っ!?」

海未「希。あなたが予め穂乃果を部室に呼んでおき、切り札としてスイッチを使ってくることは読めていました……」

海未「ですからあなたが持っていたスイッチは、事前に私がすり替えておきました――ことりっ!」

ことり「うんっ!」タタッ

ヒョイッ

希「あっ!?」

海未「学校に仕掛けておいた『爆弾』のスイッチと、ね……」

希「……は?」

ことり「やったぁーっ! スイッチだぁーっ!」ピョンピョン

海未「……というのはもちろん冗談で、私が持っているこのリモコンを押すと、あなたの真後ろにあるスピーカーから爆発音が鳴る仕組みです」

カチッ

ドカァァァンッ!

希「ひぅっ! あっ……な、なにこれっ!?」

にこ「そ、そういえば、見慣れないスピーカーが置いてあると思ったら……」

海未「目には目を、スイッチには、スイッチを……。これが私たちの『スイッチ』です。そして……」

海未「……『ほのスメル増幅スイッチ』の方は、返してもらいましたよっ! 希っ!!」

ことり「えへへー、スイッチが戻ってきたぁ~」スリスリ

希「……っ!!」
 
845: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 23:26:17.45 ID:ybKz+AiX.net
   
希(いつも部室でウチが座る席の真後ろに、予めスピーカーを置いて……)

希(ウチがポケットのスイッチに手を伸ばした瞬間に、爆発音を鳴らす……)

希(ビックリして落としたスイッチを、『すり替えた』なんて嘘をついて、ウチに拾うことをためらわせた……っ!)


希「く、ぅ……っ!」

にこ「や、やるじゃない、あんたたちっ!」

絵里「全部、作戦のうちだったのね……っ!」

海未「さぁ、スイッチは『こちら側』に渡りましたっ! 希、観念して――」

ことり「それじゃ穂乃果ちゃん、いこっかっ!」グイッ

穂乃果「えっ?」ビクッ

ことり「れっつごーっ!」


ガラッ!

タッタッタッ……


海未「――くださいっ! あなたの計画は、もはや崩、れ……?」

希「うぅっ、そんな……あ、あれ?」

花陽「あっ……ことりちゃん?」

にこ「……ん? あいつ、どこ行ったの?」

絵里「さ、さぁ……」

海未「……」
 
856: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/07(月) 23:38:16.21 ID:ybKz+AiX.net
  
希「……?」

花陽「えっと……」

にこ「ちょっと海未。あいつ、スイッチ持ってどこ行ったのよ?」

絵里「これも作戦よね? あなたことりに、なんて指示したの?」

海未「……」

絵里「……海未?」

にこ「ちょっと……」




海未「……」





海未「……っ」ギリギリ


  


  


海未「あの大バカ者を追いますっ!! 今すぐにっ!!」

にこ、花陽、絵里、希「「やっぱりっ!?」」
 
 
906: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 21:12:27.76 ID:7et5RTkg.net
 
――――

廊下


タッタッタ……


ことり「はぁ、はぁ……あはっ、あはは……っ!」

ことり「やった……っ! やっと、私のスイッチが戻ってきた……っ!」

ことり「長かった……。でも、我慢してきた甲斐があったよ……っ! あはっ!」


『あのスイッチは、誰かに盗まれたのよ……っ!』

『……』


ことり「あの時は、嬉しかったなぁ……。思わずニヤけちゃったよ。まさかスイッチが処分されてなくて、誰かが持ってるなんて……っ!」

ことり「海未ちゃんについていれば、いつかスイッチに近づけるチャンスがあると思ってたけど……希ちゃんが持ってたんだねえ……っ!」

ことり「とにかく、これで……っ!」

穂乃果「こ、ことりちゃん……どこいくの?」ビクビク

ことり「あはは、そんなに怖がらなくていいよぉ、穂乃果ちゃん。私たちはこれから、『天国』にいくんだよっ」

穂乃果「っ!? て、天国って……」

ことり「そして今私たちが向かってる場所は、『天国に一番近い場所』。だいじょーぶ、穂乃果ちゃんもよく知っているところだからっ!」

穂乃果「……うぅ」ブルブル

ことり「いくんだ、天国に……。今度は『レベル4』なんかじゃない……っ! その先のステージに、ことりは……っ!」

ことり「あははっ! もう誰も、ことりを止められないんだからぁっ!」


穂乃果「たす、けて……。うみ、ちゃん……」
 
911: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 21:23:04.77 ID:7et5RTkg.net
 
――――


タッタッタッ……


海未「くっ、速い……っ! みんな、見失わないようにっ!」

絵里「廊下は走っちゃいけないのに、もう……っ!」

にこ「っとに、なんでにこがこんなことに付き合わなきゃなんないのよーっ!」

花陽「はぁ、はぁ……っ! こ、ことりちゃんは、一体何がしたいんだろう……?」

海未「決まってるでしょうっ! またあのスイッチを使って、ハレンチなことをしようとしてるんです……っ!」

海未「ことりは、ずっと狙ってたんです……っ! 自分がスイッチを手にする機会を、私に協力するフリをしながら、虎視眈々と……っ!」

海未「やはりほのキチなんて、信用するんじゃありませんでした……っ! また、騙されましたっ!!」ガーッ

にこ(こりゃ相当キてるわね……)

希「はぁ、はぁ……。ことりちゃん、どうして……」

海未「希っ! そもそもあなたがスイッチを簡単にとられるからいけないんですっ!」

希「えぇーっ!? う、ウチのせいなん……?」

海未「責任もって取り返してくださいっ!!」

希「はい……」シュン

絵里(さっきまで黒幕的な扱いだったのに、希……)

にこ(これが、『ことりのおやつにされる』ってことなのね……)

花陽(なんか希ちゃんが、可哀想になってきました……)
 
913: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 21:29:24.18 ID:7et5RTkg.net
 
――――

中庭


海未「待ちなさいっ! ことりっ!」

絵里「やっと追いついた……」

ことり「もー、しつこいなぁ」ピタッ

穂乃果「海未ちゃん……っ!」

海未「穂乃果……待っててください。今、助けますから……っ!」

希「ことりちゃんっ!」

ことり「あっ、希ちゃんも来たんだ」

希「どうして……? どうしてウチから、スイッチをっ!? ウチは、ことりちゃんのために……っ!」

希「ことりちゃんも、穂乃果ちゃんも、みんなも、全員が幸せになれる、μ'sにしたくて……っ! ウチはっ!」

希「ねえ、ことりちゃん……っ! ウチのしてきたことは、間違いだったんっ!?」

ことり「……あははっ、優しいね、希ちゃんは。でも……やっぱり、何もわかってない」

希「……えっ?」

ことり「なにもしなくてよかったんだよ、希ちゃんは。ことりは別に、穂乃果ちゃん以外の人のことなんてどうでもよかったんだ……」

ことり「だからことりのために、って言うなら……。希ちゃんはただスイッチを、ことりに渡してくれればよかったんだよ」

希「……っ!」

ことり「それだけでことりは、嬉しかったのに。それだけでことりは、幸せになれたのに……」

ことり「……でもそれが分からなかったなら、大丈夫。安心していいよ。希ちゃんはやっぱり、『ほのキチなんかじゃない』」

希「っ! そ、そん、な……」ガクッ

ことり「あははっ! でも最後にはスイッチを貰えたから、ことりは嬉しいよっ! ありがとう、希ちゃんっ!」

海未「……っ! ことりぃっ!!」 
 
914: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 21:35:18.77 ID:7et5RTkg.net
 
希「……ウチ、は」

絵里「……希、諦めなさい。あれが、『ほのキチ』よ」

にこ「あいつとあんたの考え方は、根本的に違うの。これで、分かったでしょ?」

希「う、うぅ……」

海未「……ことり、あなたはまたそのスイッチを使って、『レベル4』を嗅ぐつもりですか?」

ことり「えっ? あはは、やだなぁ。そんなレベルの低いステージに、もう興味ないよー」

海未「っ! では、やはり……」

ことり「そう。今日中に、ことりは……『レベル5』を嗅ぐ。うふふっ」

ことり「ことり、一体どうなっちゃうんだろぉ……楽しみだなぁ。うふふふふ……」

海未(……レベル5を嗅いだらどうなるかなんて、分かるわけありません。まだ誰も、嗅いだことがないのだから……)

海未(ただ……あれほど危険だと感じたレベル4よりも、更に恐ろしいことになるのは、間違いありません)

海未(なんとしてでも、止めなくては……っ!)


ことり「ふふっ……」

穂乃果「海未ちゃん……海未ちゃぁんっ!」

海未「穂乃果……っ!」


海未(ことりを逃がすわけにはいきません……)

海未(こちらは5人。この距離なら……全員で掴み掛れば、穂乃果もスイッチも、取り返せるはずっ!)

海未(……やるなら、今――)


「まてーっ!」
 
 
915: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 21:44:17.72 ID:7et5RTkg.net
 

ヒュゥ……

スタッ!


海未「……っ!?」

絵里「えっ……?」

ことり「あ、きたきたぁー」

花陽「……」



花陽「凛、ちゃん……?」

凛「いたた……。やっぱ無茶だったかな……よーしっ!」

凛「ふふ……っ! 穂乃果ちゃんとことりちゃんには、指一本触れさせないにゃぁー」

にこ「あ、あんた今、上から降ってこなかった……?」

ことり「……あはぁ」

海未「……凛、ですって? ことり、あなたまさか――」


スタスタ……


「はぁ……。ここにいたのね」


希「っ!? ま……」



希「真姫、ちゃん……?」

真姫「なによ、海未たちもいるじゃない……。ていうか……」

真姫「見てたわよ、凛。あんたバカじゃないの?」

凛「えへへ、『しょーとかっと』だよ。一回試してみたかったにゃ」

真姫「だとしてもやりすぎよ。二階から飛び降りるなんて……」
 
920: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 22:07:22.77 ID:7et5RTkg.net
 
にこ「は……。二階? なに言ってんの?」

ことり「さてと。それじゃ、始めよっか」スッ

凛「っ! そ、それが……例のスイッチか、にゃ?」

真姫「手に入ったのね……。ふふっ、楽しみだわ」

海未「っ!? みんな、鼻を塞いで、息を止めてくださいっ!!」

にこ「っ!」バッ

花陽「……っ!?」

絵里「うっ……!」

希「……っ!」


カチカチカチカチッ!

ブワァッ!


凛「っ!! はあぁぁぁぁ~っ//// いいいいいぃぃぃよぉ~っ!////」スンスン

真姫「っ! ふ、ふふっ、悪く、ないわ……///」スンスン

ことり「はぁ~、久しぶりの『レベル4』っ!! 穂乃果ちゃぁん~っ////」スンスン

穂乃果「ひっ!?」ビクッ

海未「っ! や、やめ……っ!」

海未(『レベル4』、ですって……っ!? なぜいきなり……っ! し、しかし――)

海未「みんな、気を付けてくださいっ! この匂いを少しでも嗅いでしまったら、ほのキチになりますっ!!」

にこ「っ! も、もうほんとに、なんなのよ~っ!?」

花陽「うわ、わ……っ!」
 
923: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 22:16:10.02 ID:7et5RTkg.net
 
海未(どういうことですか……っ!? 彼女たちもまさか、私たちのほのキチ化を企んでるんですか……っ!?)

海未(だとしたらまずい……っ? い、いえしかし、あの様子だと……)

ことり「はぁ~///」

凛「にゃぁ~///」

真姫「ん……///」

海未(なんだか、ただ『楽しんでる』だけ、という風にも見えます……)


カチカチカチカチッ

フッ


ことり「……ふぅ」

凛「あっ……。えーっ!? もう終わりーっ!?」

真姫「ふん……。続きはまた後で、ってわけ?」

ことり「うん。楽しみは、あとにとっておかなきゃね」


にこ「……っ! ぷはぁっ!」

花陽「も、もう平気みたい……」

絵里「レベルをリセットすれば、匂いが一瞬で消えるの? 一体どういう仕組みなのかしら……」

希「……」

希(今息を止めなければ、ほのキチになれたのに……。どうして、ウチは……)
 
924: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 22:25:54.11 ID:7et5RTkg.net
 
凛「ちぇー。ことりちゃん、約束だからねっ!?」

ことり「分かってるよ。ちゃんと二人にもあとで、『レベル5』を体験させてあげるから……」

真姫「……分かってるなら、いいのよ」

凛「へへー。よしっ! それじゃあ凛、頑張っちゃうよっ!」

真姫「ここは私たちに任して、先行ってなさい」

ことり「ありがとっ! それじゃ、いこっか穂乃果ちゃんっ!」グイッ

穂乃果「う、海未ちゃん、みんな……っ!」

海未「穂乃果っ! ことり、待ちなさいっ!」ダッ

凛「ここは通さないよーっ!」バッ

海未「くっ……」

海未(まさかほのキチ同士で、手を組むなんて……っ!)


『そういえば私、凛ちゃんと真姫ちゃんとも、話したんだ。何かヒントがもらえるかと――』


海未(最初から二人と、示し合せてたんですね……っ! ことり、あなたは……)

海未「……ことりぃっ!!」

ことり「……」

海未「あなた、言ってたじゃないですかっ! 『元に戻りたい』から、私に協力してほしいとっ!」

海未「『何か大事なことを忘れてる』って……っ! あの言葉はやはり、嘘だったんですかっ!? 私を騙してたんですかっ!?」

にこ「海未、今更なに言ってんのよっ! そんなの分かりきってることでしょっ!?」

海未「ことり……っ! 待って……っ!」


タッタッタッタ……
 
 
925: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 22:41:23.62 ID:7et5RTkg.net
 
海未「……くっ」

凛「さぁ、凛たちが相手だにゃー」

にこ「……とりあえず、私たちが二人を引き付けるわ。その隙に海未は、ことりを追って」

絵里「そうね。彼女の行き先が分からない以上、ここで見失えば、最悪よ……」

海未「……いえ、そうでもありません。行先は大体、分かってますから」

絵里「えっ……?」

花陽「凛ちゃんっ!!」

凛「えっ、なに?」

花陽「ど、どうして、どうしてこんなこと、するの……?」

凛「どうして、って……。凛は穂乃果ちゃんの匂いを、嗅ぎたいだけだよ」

花陽「っ! そ、そんなのおかしいよ。変だよ、凛ちゃん……」

真姫「なにを言っても無駄よ、花陽。凛にはもう、あなたの言葉は届かない」

花陽「そんな……。凛ちゃんっ!!」

凛「えーっと、はなよ、ちゃん?」

花陽「……えっ?」

凛「変だって言うなら、はなよちゃんも穂乃果ちゃんの匂いを嗅がせてもらうといいにゃ。きっと、凛の気持ちが分かるよぉ」

花陽「……」




花陽「『はなよちゃん』……?」
 
 
931: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 22:56:11.94 ID:7et5RTkg.net
 
凛「そうだ、はなよちゃんもさ、あとで一緒に来る? ことりちゃんに頼めば、きっと……」

にこ「凛? あんた……」

花陽「や、やめてよ、凛ちゃん……。何でそんな呼び方、するの……?」

凛「えっ……?」

凛「……」

凛「……あの子、『はなよ』ちゃんじゃないのかにゃ?」ヒソヒソ

真姫「名前は花陽で合ってるわ。でもあの子、あだ名があるのよ」

凛「あ、なんだぁー。早く言ってよぉ。なんてあだ名?」

真姫「『かよ』って呼ばれてるわ」

凛「かよ……? なんで『はなよ』なのに、『かよ』なんだろ……。ま、いっか」

凛「おーい、ごめんごめん、『かよちゃん』。かよちゃんもよかったら、一緒に――」

真姫「この通り、凛は記憶障害が進行して、あなたたちのことも忘れてしまったわ」

絵里「っ!!」

にこ「う、うそ、でしょ……っ!?」

花陽「……そん、な」

真姫「同じほのキチでも、人によって症状は違う……」

真姫「凛は、とくに重症でね。脳が『穂乃果』と『ほのスメル』以外の余計な情報を、常に消去し続けているようなのよ」

真姫「放っておくと……。私やことりのことまで、忘れちゃうかもしれないわね」
 
932: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 23:05:01.51 ID:7et5RTkg.net
  
花陽「う、うわぁ、あぁぁ……」ガクッ

花陽「あああぁぁあぁ……っ!!」

にこ「花陽……」

希「なに、これ……」

希「これが、ほのキチ……? こんなんが……ウチの、望んでた……」

真姫「……そういえば、希。あんた結局、失敗しちゃったのね」

希「っ!? 真姫ちゃん、覚えて……?」

真姫「ああ、私は別に、記憶障害とかはないわよ。言ったでしょ、人によって症状は違うって……」

真姫「……ねえ、希。安心していいわよ。あんたの計画は、まだ終わってないから」

希「えっ……?」

真姫「凛、うしろ」クイッ

凛「えっ? あーっ!」

にこ「っ! しまった、気づかれたっ!」

絵里「い、いえ、大丈夫よ、あれだけ距離が離れてれば……っ!」

凛「いつのまにあんなところにーっ! 逃がさないにゃぁーっ!」


タッタッタッ……

海未「はぁ、はぁ……っ! みんな、ありがとうございます……っ!」

海未「ことりは……いた、あそこに……っ!」
 
933: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/09(水) 23:14:57.06 ID:7et5RTkg.net
  
凛「ほっ」


グルン


にこ「っ!? バク転っ!?」

凛「よっ、はっ」


ピョンッ、グルングルン、シュタッ


絵里「なっ……空中で回転して、向きを変えて着地……」

凛「いっくよーっ! ん~……にゃっ!!」


タッタッタッ……ドヒュンッ!!


にこ、絵里「「走っ……速っ!?」」



海未「はぁ、はぁ……えっ――?」

ガシッ

ドサァァ

海未「痛っ……なっ、凛っ!?」

凛「捕まえたにゃぁー♪」



絵里「か、簡単に追いつかれた……。あれだけの距離があったのに……」

にこ「なんなのよ、今の……」

真姫「……ほのスメルは、凛の脳と体に重大な影響を与えた。それにより凛は、記憶障害という『リスク』を背負い――」

真姫「同時に『桁違いの運動神経』という、『リターン』を得たの。あれは凛の中に元々あった、潜在能力……。それがほのキチ化により、限界まで引き起こされた」

真姫「言わばほのスメルによる、『覚醒』。はっきり言って今の凛は、あなたたち5人程度じゃ日が暮れても突破できないわ」
 
4: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/13(日) 00:17:40.85 ID:avnveVLw.net
――――――



ことり「はぁ、はぁ……。もうすぐ着くよー、穂乃果ちゃん」

穂乃果(……この道、やっぱりことりちゃんが向かってるところって……)

バッ

ことり「っ! どうしたの、穂乃果ちゃん。手、離しちゃダメだよ」

穂乃果「もう、やめて……」

ことり「えっ、なに?」

穂乃果「もう、やめてよぉ……っ! ことりちゃんは穂乃果を、どうするつもりなの……っ!?」

ことり「あ、聞きたい? あのねー、まずは前みたいに、こーそくしてねー」

穂乃果「やめて……やめてよぉ……」グスッ

ことり「えっ……。泣いてるの? 穂乃果ちゃん」

穂乃果「うっ、うぅ……。どうして? どうしてこんなことするの……?」

穂乃果「やだよ……。ことりちゃん、怖いよぉ……っ! もう、やめてよぉっ!」

穂乃果「うっ、えぐっ……。怖い、怖いよぉっ! やだよ、もう……っ!」

ことり「あはは、怖いってそんな、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「どうして穂乃果に、酷いことするのぉ……? ことりちゃん、ひどいよぉ……っ!」ポロッポロッ 

ことり「……酷い? ふふっ、私が?」

穂乃果「うっ、うぅ……。うみ、ちゃん……」

ことり「あはは……。穂乃果ちゃん」

穂乃果「うっ、ひぐっ……たすけてぇ、うみちゃぁん……っ!」

ことり「いい加減にしてよ」

※ ここから2スレ目です(管理人)

元スレ: 海未「ほのスメルを増幅させるスイッチ?」Part2

6: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/13(日) 00:27:47.27 ID:avnveVLw.net
穂乃果「ふっ、うぅ……えっ?」

ことり「あぁ、ううん。そうじゃないの、そうじゃなくて……」

ことり「……うーん、だからさ。穂乃果ちゃんはいつまで、『そんな感じ』でいるつもりなのかな、って」

穂乃果「えっ……えっ?」

ことり「いや、あのさ……。ほら、私そんなに、酷いことしてるかな?」

穂乃果「うっ……だ、だって」

ことり「してるって言うなら、謝るよ。ことりが酷いことをして、それで穂乃果ちゃんが傷ついてるっていうなら……今までしたこと、全部謝るよ」

穂乃果「……」グスッ

ことり「でも私はね、今までずっと穂乃果ちゃんにしてきたことを、『悪いこと』だなんて思ってない……。穂乃果ちゃんはいつか絶対私を受け入れてくれるって、信じてたから」

ことり「だから本当は、謝るつもりもなかったんだ……。でもそれが私の勘違いだったなら、やっぱり謝る。どんなことをしてでも、償うよ」

穂乃果「う、うっ……」

ことり「……ねえ、穂乃果ちゃん」ズイッ

穂乃果「ひっ!」ビクッ

ことり「今日はね、『楽しい道具』をいっぱい持ってきたの……。この前よりも楽しいことが、いっぱいできるよ」

穂乃果「うっ、うぅ……」ブルブル

ことり「あはは、走ってきたから穂乃果ちゃん、汗ビッショリだね。いい匂い……」スンスン

穂乃果「や、やめて、こないで……。やだ、やだぁ……」

ことり「……」



ことり「……やっぱり、穂乃果ちゃん――」

穂乃果「……えっ?」









ことり「『悦んでる』、よね……?」

穂乃果「――っ!!」ビクッ
8: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/13(日) 00:41:26.81 ID:avnveVLw.net
ことり「やっぱりそうだったんだね、穂乃果ちゃん……」

ことり「『穂乃果ちゃんはいつか絶対私を受け入れてくれる』んじゃなくて……とっくのとうに、受け入れてくれてたんだね?」

ことり「ずっと、もしかして、って思ってたんだ……。そう、だから、『あの時』も――」


『穂乃果ちゃんに抵抗する気がなくなったら、縄を解いてあげるからね。その頃には穂乃果ちゃんも、理解してくれてると思うから……』

『穂乃果、大丈夫ですかっ!? 今、縄を……もうほとんど解けてるようですが――』


ことり「私は縄を、すぐに緩めたんだ……」

穂乃果「……グスッ。よろこん、で……よろこんでなんか、ないよぉ……」

穂乃果「こんなことされてよろこぶ人なんか、いないよぉ……っ!」

ことり「……ぺろっ」

穂乃果「ひゃぁっ!?」

ことり「ん~……」スンスン

穂乃果「あっ、やぁ……///」

ことり「……」

ことり「……あはっ、本当に可愛いなぁ、穂乃果ちゃんは」

穂乃果「はぁ、はぁ……えっ……?///」

ことり「我慢してるんだね……。穂乃果ちゃんはそれを『いけないこと』だって思ってるから、必死に我慢してるんだ……」

ことり「体はこんなに、悦んでるのに……っ!」

穂乃果「はぁ、はぁ……やだ、はぁ、うぅ、やだぁ……///」

ことり「『やだ』……? ねえ、穂乃果ちゃん、なにが嫌なの?」

穂乃果「はっ、はぁ……」

ことり「なにが嫌なの? 私のしてることの、なにが酷いの?」

ことり「穂乃果ちゃん、悦んでるじゃんっ! 気持ちいいんでしょっ!? 穂乃果ちゃんはこんなに気持ちよくなってるのに、私のしてることの何が酷いのっ!?」

穂乃果「ちがっ、きもちよくなんてっ……」

ことり「気持ちいいんでしょっ!? 汗を舐められて、匂いを嗅がれて、抱きつかれて、縛られて、髪に顔を埋められて、シャツの中に入られることが、気持ちいいんだよねっ!?」

穂乃果「いや、いやぁ……っ!」
 
12: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/13(日) 00:58:04.30 ID:avnveVLw.net
ことり「言ってよっ! なにが嫌なのっ!?」

穂乃果「うっ、うぅ、やめて……」

ことり「ねえ、それは本当に、嫌がってるのっ!? そうだ、ずっと、何かおかしかったんだよ……っ!」

ことり「だって女の子が『可愛い』って言われて、『いい匂い』って言われて、嬉しくないわけないもんねえっ!?」

穂乃果「っ! そ、それは……」

ことり「そうでしょっ!? 穂乃果ちゃんは最初から、私のことを……本気で嫌がってなんかいなかったんだっ!」

穂乃果「いやぁっ! ちがっ、ちがうよぉ……っ!」

ことり「穂乃果ちゃん……っ! 私はこんなに穂乃果ちゃんを、悦ばせてるんだよっ!? 私のしてることは本当に、『悪いこと』なのっ!?」

穂乃果「こわい、こわいよ、やだよぉ……」ブルブル

ことり「怖い怖い、って……っ! 穂乃果ちゃんは一体あの日からずっと、何に怯えてるのっ!?」ガシッ

穂乃果「ひぅっ!」ビクッ

ことり「私っ!? それとも、私のしてることっ!? ううん、違う――」

ことり「穂乃果ちゃんは、『私のしてることに悦んでる、自分』に怯えてるんだっ!!」

穂乃果「っ!! う、うぅ~っ……」

ことり「穂乃果ちゃんが怖がってるのは……自分自身、なんだ」

ことり「私に何かされるたびに、自分の意志とは無関係に、体が反応しちゃって……それが、怖いんだね」

ことり「私がエッチなことをするたびに、自分が自分でなくなりそうで、頭がおかしくなっちゃいそうで、それが、怖いんだ」

穂乃果「うっ、うぅ、えぐっ……」

ダキッ

ことり「……大丈夫、穂乃果ちゃん。私も、だよ」

穂乃果「うっ、うあぁあ……」

ことり「私も、怖い……。だって『レベル5』を嗅いじゃったら、私、どうなっちゃうか分かんない……。それがたまらなく、怖いの」
 
15: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/13(日) 01:11:27.83 ID:avnveVLw.net
              
ことり「でも……それ以上に、ワクワクしてる」

穂乃果「う、うあぁぁあ、あぁ……」

ことり「だってさ、絶対気持ちいいよ。きっと頭じゃ理解できないくらい刺激が強くて、今までに感じたことのない体験ができるんだ」

ことり「どんな感覚なんだろうね……。すごく、ワクワクするよ」スッ

穂乃果「うぅ、ひぅ……」

カチカチカチッ!

ブワッ

ことり「……んぅぅぅ」ギュゥゥ

穂乃果「あっ……?」ビク

ことり「んんんぅぅぅぅ――」スゥゥゥゥ

穂乃果「あぁっ!? あっ! あ、ああぁっ////」ビクン!

ことり「ぺろ、ぺろっ! ちゅぱっ! んん、うぅぅぅぅっ! んぅっ!」スゥゥゥ

穂乃果「あっ! ああぁぁぁあぁっ! あぁあぁああぁっ/////」ビクンビクンッ!

ことり「ん、ふぅ、はぁ、はぁ……」

カチカチカチ

フッ

ことり「……今の百倍気持ち良いことを、後でしてあげる」

ことり「どう、怖い……? それとも――わっ」

穂乃果「はぁ、はぁ……や、らぁ……」トロォン

ことり「……ふふっ。すごくエッチな顔してるね、穂乃果ちゃん」
  
19: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/13(日) 01:20:11.50 ID:avnveVLw.net
 
――――


穂乃果の家、前



ことり「着いたよ、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「うっ、うっ、うえぇえぇん……」

ことり「『天国に一番近い場所』……。穂乃果ちゃんの、お部屋だよ」

穂乃果「ひっ、うっ、うぅ……」

ことり「お店、閉まってるね……。お父さんとお母さんは……?」

穂乃果「うぅ……。りょこう……にっ、いって……」

ことり「いないんだ……。雪穂ちゃんはこの時間はまだ、学校かな……」

ことり「……奇跡的に二人きりだね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「うっうぅ、ないっ、でぇ……」

ことり「えっ。なに……?」

穂乃果「わ、ないでっ……いわない、でぇ……っ!」

穂乃果「おねがい……っ! うみちゃんには、グスッ、いわないでぇ……っ!」

穂乃果「ほのかが、へんたいだって、こと……っ! ひぐっ、しられたく、ないよぉ……っ!」

ことり「……」

ことり(穂乃果ちゃん程度で変態なら、海未ちゃんは変態の女神様だよ……)

ことり「分かった、内緒にしとくよ。それじゃ、裏口から入ろうか」

穂乃果「う、うええぇえん……」


ズキン


ことり「……っ」

ことり(頭いたい……)

ことり(やっぱり私、何か大事なことを忘れてる……)

ことり(どうして穂乃果ちゃんを見てると、そう思うんだろう……)
 
41: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 20:20:00.69 ID:6PUGRPXz.net
   
――――


絵里「はぁ、はぁ……っ!」

にこ「うっ、く……っ!」

凛「あはは、そろそろ疲れてきたみたいだねー。えっと……」

凛「……えりちゃんと、にこちゃんっ!」

海未「……はぁっ!」ダッ

凛「あと、うみちゃんもね」ダンッ!


ガシッ、ドサァ……


海未「うぐっ……! は、離してくださいっ!」

凛「いいよー、はいっ」パッ

海未「はぁ、はぁ……っ」

海未(なんて身軽さと、速さ……。まるで本当の、猫みたいです……っ!)

真姫「……ことりはもうだいぶ、遠くへ行ったみたいね」

凛「うーん、凛たちもそろそろ行ってもいいんじゃないかにゃ?」

真姫「ダメよ。一応あっちから連絡があるまでは、時間を稼ぐ約束だから」

凛「そっかぁ。じゃあもう少し遊ぼうか、みんなっ」

海未「くっ……」

海未(武道を嗜む私、小さくて身軽なにこ、運動神経抜群の絵里を持ってしても、凛一人を抜くこともできないとは……)

海未(ほのキチにまさか、ここまでのパワーがあるなんて……一体『覚醒』とは、なんですか……?)
 
44: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 20:31:42.88 ID:6PUGRPXz.net
   
真姫「……ふふっ。やっぱりすごいわね、覚醒したほのキチは」

希「真姫ちゃん……」

真姫「なにかしら?」

希「さっき、計画はまだ終わってないって……。どういうことなん……?」

真姫「……ああ。だから、そのままの意味よ。私が後でことりからスイッチを借りて、あんたの代わりにまた、『μ'sのほのキチ化』を進めてあげる」

海未「なっ……!?」

希「真姫ちゃん……。でももう、ウチは……」

真姫「メンバー全員をほのキチ化することで、『μ'sを一つにする』……。素晴らしい考えだと思うわ。だから私はあんたに、協力したのよ」

希「でも……でも、こんな……っ! ここまで人を変えてしまうなら、やっぱりほのキチ化なんて、やめるべきや……っ!」

真姫「……は?」

希「ウチが、間違ってた……。やっぱりあのスイッチは、恐ろしいものやった……っ! ほのキチになんて、誰もなっちゃいかんかったんやっ!」

希「ごめん、ごめんなさい……っ! 凛ちゃん、真姫ちゃん……ことりちゃんっ! ウチは、こんなつもりじゃ……っ!」

絵里「の、希……」

にこ「馬鹿ね、あんた……」

真姫「ええ。ほんとに馬鹿だわ」

希「……えっ?」

真姫「分からないの? あのスイッチは、『ここまで人を変えてしまう』からこそ、素晴らしいものなんだってことが」

海未「……なんですって?」

真姫「凛、ジャンプ。思いっきり」

凛「おっけー」
 
45: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 20:46:39.63 ID:6PUGRPXz.net
   
ググッ……


海未「……?」


ダァンッ!


海未「――っ!?」

にこ「は……?」

絵里「なっ、うそ……!?」


グルンッ

……シュタッ


凛「お、っとと……へへー」フラ

にこ「ちょ、ちょっと……。今、3メートルは跳んだわよ……っ!?」

真姫「ほのスメルを嗅いだ直後なら、4メートル近く跳ぶわ」

にこ「えっ……」

海未「……」

真姫「あとは、そうね……。今の凛は、100メートルを5秒で走りきるわ。そりゃいくら走っても、簡単に追いつかれるわけよね」

絵里「っ! そ、そんなのもう、人間じゃ、ない……」

真姫「ふふっ。もしもこの異常なまでの運動神経を、μ'sのメンバー全員が持っていたとしたら……素敵だと、思わない?」

海未「……はい?」

真姫「つまり『μ'sのほのキチ化』により、メンバー全員を凛のように『覚醒』させるの。そしたら一体、どうなるか……」

真姫「どんな高度なダンスも軽々こなし、どんな過酷なライブだろうと、無尽蔵の体力で乗り切っていく……『最強のスクールアイドル』が、誕生するの」

希「真姫ちゃん……真姫ちゃんの考えって……」

真姫「あのA-RISEさえも、足元にも及ばない……。ラブライブの優勝だって、目じゃないわ」

海未「……そういう、ことですか」

真姫「言ったでしょう? 『私はラブライブを諦めない』、ってね……」

真姫「……まあ、お客さんの前で4メートルもジャンプしたら、ドン引きされるでしょうけど」
 
46: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 20:54:50.51 ID:6PUGRPXz.net
  
真姫「だから安心して、希。あんたの願いは私が叶えてあげる……あんただって、ほのキチにしてあげる」

希「ダメや、そんなん……。そんなことしたら、あかんよ……っ!」

希「真姫ちゃんは、そんなこと考えてなかったやん……っ! ウチに協力してくれてた時は、そんなこと言ってなかったやんっ!」

希「真姫ちゃんは……μ'sはもう一度一つになれるって、信じてたからっ! だから『ラブライブを諦めない』って、言ってたんやろっ!?」

真姫「そうね。これはほのキチになってから、思いついたことだし。やっぱりなってみないと分からないことって、あるわよね」

真姫「ほのキチになってから、色々なことを考えるようになった。目が覚めたように頭がスッキリして、曲作りも捗るようになった」

真姫「あんたも『なって』みればいい。『こっち側』にくればいい。そしたら、理解できるわ」

希「……っ!!」

海未「ダメですよ、希。あなたには、義務があります。自分の犯した罪を償う、義務が……」

海未「『あっち』に逃げることは、許しません。『こっち』であなたは、罪を償うんです。ほのキチになろうだなんて、二度と考えないでください」

希「……」

真姫「……だから、どっちみち全員ほのキチになるんだってば」

凛「あーもう、話長いよっ! 次は誰が凛に挑戦するのーっ!?」

海未「……」

凛「えりちゃんか、にこちゃんか……それともまだ一回も挑戦してない、のぞみちゃんか、かよちゃん、かにゃ?」

花陽「……」

希「……」

にこ「どうする、海未……。今の状態じゃあの二人は、無理よ」

絵里「けど私たちでももう、どうしようも……」

海未「……いえ。まだ希望は、あります」

絵里「……」

海未「最後の力を、振り絞って……いけますか、二人とも」

絵里「……分かったわ」コクン

にこ「ったく。仕方ないわねー……」
 
47: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 21:05:44.65 ID:6PUGRPXz.net
  

『ほのスメルを嗅いだ直後なら、4メートル近く跳ぶわ――』


ダダッ!


真姫「三人一気に、別方向に……。それはもう何度も、試したでしょ?」

凛「んー、どっちいこうかにゃー……。よしっ!」

ドヒュンッ!

ガシッ! ドサァッ!

絵里「きゃぁっ!」

凛「えりちゃん捕まえたーっと。そんでぇ――」

ギュンッ!

ガシッ! ドサァッ!

にこ「いっったいわねーっ!」

凛「にこちゃんも捕まえた。最後は……」

凛「……あっちか。遠いなぁ――」

ヒュン……ッ!


海未「はぁ、はぁ……っ!」タッタッタッ……

凛「まてーっ!」

海未「はぁ、はぁっ! ぜぇ、ぜぇっ!」

凛「まてまてーっ!」

海未「はぁっ! はぁーっ!」ダダッ!

凛「まっ……」

凛「……」



凛「……あれ? 追いつけない……」
 
50: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 21:11:27.54 ID:6PUGRPXz.net
 
真姫「凛っ! もういいわ、戻ってきなさいっ!」

凛「っ! はーいっ!」

ヒュン



絵里「……うまく、いったわね」

にこ「ええ……。海未の言う通りだったわ。やっぱり、凛のヤツ……」

にこ「もう、『燃料切れ』みたい」

絵里「彼女たちほのキチが最高のパフォーマンスを発揮できるのは、『ほのスメルを嗅いだ直後』だけ……。それから時間が経つにつれて、彼女たちの『燃料』は減っていく」

絵里「さっきことりがスイッチを押して、レベル4を三人で嗅いでたのは……燃料の、『補充』をしていたのね」

にこ「はぁ、つかれたぁ……。もうここからじゃ流石に追いつけないでしょ」

絵里「ええ。あっちが手遅れでなければいいのだけど……」

にこ「あとは海未に任せましょ。ほのキチやらほのスメルやら、もう頭がおかしくなりそう……」

絵里「そうね。頭も体も、とにかく疲れたわ……」

にこ「制服も泥だらけだし、最悪よ……。はぁ~、帰ったら洗わなきゃ……」

絵里「……」

にこ「どうしたのよ?」

絵里「……なにしてるの、あれ?」

にこ「……うん?」



スンスンスン……
 
 
51: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 21:17:32.13 ID:6PUGRPXz.net
   
真姫「……そのくらいにしておきなさい」

凛「うぅん、もうちょっと……///」スンスン

真姫「バカ。ほんとに追いつけなくなるわよ。いい? あいつの走った方向は遠回りだから、ここをまっすぐ行けば……」

凛「ん、おっけー……」

凛「……」

凛「……ちょっと本気出すから、掛け声お願いしていい?」

真姫「めんどくさいわね……」

真姫「……『いちについて』」

凛「……」ググッ

真姫「『よーい』――」



絵里「く、クラウチングスタートっ!?」

にこ「ちょっと待ってよっ! あいつはもう、燃料切れのはずじゃ――」



真姫「――『どん』っ!」

凛「……っ!!」


ドギュンッ!!

 
54: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 21:25:38.92 ID:6PUGRPXz.net
  
 
……

ドサッ……


海未「うっ……」

凛「ゲームオーバー、だね」

絵里「海未……」

にこ「そんな……」

海未「くっ、うぅ……」

海未(最後の賭け、だったのに……。これでも、ダメなんですか……っ!?)

海未(いえ、確かに一度は、撒いたはずです……。一体、何が……? まさか燃料切れどころか、ここにきて更にスピードを上げてくるなんて……)

絵里「……海未、アレよ。凛はアレを嗅いで、スピードを取り戻したんだわ」

海未「アレ……?」

真姫「……どうやらコレが気になるようね。いいわ、見せてあげる」バッ

海未「……『ほ』?」

真姫「穂乃果の練習着よ」

海未「――っ!!」

真姫「これにはほのスメルが、たっぷり詰まってる……。補充には十分なほどにね」

海未「ど、どうしてあなたが、それを……」

真姫「ことりから借りたのよ。なんで彼女が持ってたのかは、知らないけど……」

海未(け、結局盗んだんですかっ! ことり……っ!)
  
55: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 21:32:06.10 ID:6PUGRPXz.net
  
凛「さて。まだ、やるのかにゃー?」

絵里「う、海未……」

にこ「どうすんのよ……」

海未「はぁ、はぁ……」

真姫「凛はまだまだ余裕だけど、あなたたちの体力はもう限界のようね。ま、よく頑張った方だわ……」

海未「……」

海未(……万策、つきましたか)

海未(ごめんなさい、穂乃果……)

海未(私はあなたを、助けることが……)


ザッ


海未「……っ!」

真姫「……へえ」

凛「……あははっ。やっと、やる気になったんだ?」

  



凛「かよちゃん……っ!」ニヤァ

花陽「……」

花陽「凛ちゃん……」



花陽「……っ!!」


ダッ!

 
62: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 22:27:01.24 ID:6PUGRPXz.net
 
凛「……っ!? むっ!」


ドンッ!


花陽「……きゃっ!」ドテッ

凛「……ふーん」

花陽「……はぁっ!」ダダッ!

凛「そうくるんだ。意外だね。でも……」


ドンッ


花陽「あうっ……!」ズザ……


海未(花陽……。凛を抜こうとするのではなく……凛に、『向かって』いってる……?)

真姫(ふん。凛を直接『押さえつけて』、その隙に他の三人に抜かせようってわけ。だけど……)

絵里(ダメ……っ! 凛は、力も格段に上がってるっ! 無闇に向かっていっても、突き飛ばされるだけだわ……っ!)

にこ(む、無理よ花陽、あんたじゃ……っ!)


ドンッ!

ズザァッ!


花陽「ぅ……っ!」

凛「……うーん。ちょっと弱すぎるよ、かよちゃん」

凛「あっ、分かった。かよちゃんは『かよわい』から、『かよ』ちゃんなのかな?」

花陽「はぁ、はぁ……」
64: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 22:36:00.84 ID:6PUGRPXz.net
……

ドンッ……


花陽「うぁっ……!」ドサッ

凛「んー……」

真姫「……もう、無駄よ。あなたたちの狙いは分かってる」

海未「……」

真姫「花陽を囮にして、自分たちの体力の回復と、凛の疲弊を狙ってるんでしょう?」

真姫「そんなことしても、無駄。凛は疲れることなんてないし、ほのスメルは練習着でいくらでも補給できる」

真姫「あなたたちはもう……詰んでるのよ」

にこ「……」

絵里「……花陽」

花陽「はぁ、はぁ……っ!」ダッ!


海未(……花陽を囮になんて、誰も考えていませんよ)

絵里(私たちは花陽を、信じてるのよ……。この状況を突破できるのは、きっともう、彼女しかいない……)

にこ(なんとかしなさいよ、花陽……。凛はあんたの大切な、親友でしょ?)


花陽「……ああぁっ!!」

凛「……っ!」ドンッ!


ドサァ……ッ!

 
65: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 22:43:06.48 ID:6PUGRPXz.net
  
花陽「うっ……」

花陽「ふっ、うぅ……」グスッ

凛「……」

凛「……もう、やめなよ」

花陽「うっ、えうっ、うっ……!」ポロッポロッ

凛「泣くぐらいだったらもう、やめなよ。こんなの、いじめてるみたいで、全然楽しくないにゃ」

花陽「うっ、ひぐっ、うあぁあっ!」ダッ!

凛「……っ」ドンッ!

花陽「あぅ……っ!」ドサッ……!

海未「は、花陽……」

真姫「……あなたたち、止めてあげなさいよ。花陽、もうボロボロじゃない」

真姫「分かるでしょ? もう、あなたたちの負けなの。おとなしくしてれば、悪いようにはしないわ」

にこ「くっ……!」

絵里「仕方ないわ……。花陽にこれ以上、無理をさせるのは――」

花陽「まだですっ!!」

絵里「っ!?」

花陽「はぁ、はぁ……っ!」ググッ!

凛「……」

希「……花陽ちゃん」
 
66: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 22:53:22.19 ID:6PUGRPXz.net
   
凛「……ごめんね、かよちゃん。凛、勘違いしてたよ」

花陽「はぁ、うっ、うぅ……」

凛「弱いなんて言って、ごめん。そんなことなかったね、かよちゃんは……」

花陽「はぁ、はぁ……っ!」

凛「かよちゃんは、強いよ。それにすごく真剣で、まっすぐで……。こんなに根性がある人、凛、初めて見た」

凛「なんていうか……凛はそういう人、好きだな」

花陽「うっ、うっ、わ、わたし、は……っ!!」グッ……

凛「だから、その……。ねえ、かよちゃん……」

凛「……もし、よかったら、なんだけど」

花陽「うっ、ひぐっ、うぅ……っ!」

凛「これが全部、終わったらさ……。かよちゃん、凛と……」

花陽「わた、しは……っ!」ググッ



凛「おっ、お友達に、なって――」

花陽「私は、『かよちゃん』なんかじゃないっ!!」


凛「……えっ?」

花陽「私は……昔からいつだって、凛ちゃんの、一番の親友の――」




花陽「――『かよちん』だっ!!」



ダダッ!

 
69: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 23:02:07.76 ID:6PUGRPXz.net
  

ツルッ

ドテェンッ!


海未「っ!?」

にこ「あぁっ!?」

絵里「痛っ……っ!」

希「こ、転ん……」

真姫「……」


真姫「……終わったわね」



凛「……」

花陽「……」

凛「……あの」

花陽「……」

凛「だ、大丈夫? その……」

花陽「……」


ガバッ!


凛「――っ!?」

花陽「凛……ちゃんっ!」


ドタァンッ!


凛「っ!? うぐっ、うぅ……っ!?」

花陽「凛ちゃんっ!!」


ギュウゥ……

 
70: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 23:06:45.38 ID:6PUGRPXz.net
   
絵里「や、やったっ!」

にこ「あの凛を、押さえつけたわっ!」

真姫「……無駄よ。花陽の力じゃ、今の凛を押さえつけることなんて、無理……」

真姫「すぐに押し返されて、終わりだわ」

海未「……」


ギュゥ……ッ!


凛「むぐっ……! ど、どくにゃ……っ!」

花陽「凛ちゃん……っ! 凛ちゃんっ!」

凛「はなすにゃぁ……っ! う、うぐぐ……っ!」

花陽「はなさないっ! 絶対に、もう、二度と……っ!」ガシッ

凛「なっ、なんなのっ!? ちょ、やめ……っ!」

バフッ

花陽「お願い、凛ちゃん……っ! うっ、うぅ……っ!」ムギュゥ

凛「んぅっ!? ん、んぐ、む、むねが……」

花陽「目を、覚まして……っ! ひぐっ……。思い出してっ!」ポロッポロッ

花陽「私のこと、思い出してよぉっ! 凛ちゃぁんっ!!」

凛「――――っ!?」
 
72: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 23:16:55.88 ID:6PUGRPXz.net
  
フワァ……


りんちゃんっ! おはようっ!

りんちゃんっ! いっしょにかえろうっ!

わぁ、かわいいっ! りんちゃん、スカートすごいにあうよっ!


りんちゃんっ!


凛ちゃん……っ!



あ、あのね……。

わがまま、言ってもいい……?

もしね、私が……アイドルやるって、言ったら――


一緒に、やってくれる……?


花陽「凛ちゃん……っ!」ギュゥ

凛「……」


この、におい……

懐かしい感じがする……

それに、なんだか、すごく……

安心する……

……

あぁ、そっか……。

この『匂い』は……

凛の、大好きな――

  
   

  

凛「……かよ、ちん?」

花陽「……えっ?」
 
74: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 23:22:11.11 ID:6PUGRPXz.net
   
凛「あれ……? かよちん、だ……」

花陽「り、凛、ちゃん……?」

凛「どう、したの……? どうして、泣いてるの……?」

凛「どうしてそんな、泥だらけで……」

花陽「凛ちゃんっ!? わ、私のことが、分かるのっ!?」

凛「……あはは、なに言ってるの。かよちんは、かよちん、でしょ……?」

花陽「……っ!! あっ、あっ……」

花陽「凛ちゃん、凛ちゃぁん……っ! うっ、うあぁぁあ……っ!」ギュゥ

凛「あ、あはは、苦しいよ、かよちん……」


真姫「……」

海未「……?」

にこ「なにが、起きて……」

絵里「まさか……。いえ、でも、まだ……」

希「……っ! り、凛ちゃんっ!!」


花陽「えっ……?」

凛「……希ちゃん? あれ、みんなも……」

希「け、携帯――」



希「あの時は、携帯貸してくれて、ありがとうっ!」
 
75: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 23:29:32.45 ID:6PUGRPXz.net
   
凛「……」

凛「携帯……?」

希「凛ちゃん……」

凛「……あっ」


凛「そういえば……。あの時希ちゃん、結局何のメールを打ってたんだにゃ?」


希「……っ! はは、あははっ……」

花陽「……」

にこ「えっ……? ど、どういう、こと?」

絵里「ちょ、ちょっと、これって……」

海未「……ほのキチになった凛からは、どう頑張っても希の情報は、引き出せませんでした」

海未「記憶障害によって……。しかし今、その記憶が戻ったということは……」

真姫「……っ!」ギリッ

にこ「つ、ついに…」

絵里「凛が……」

海未「ええ。ほのキチから――」

花陽「うっ、うあぁああん……」ボロッボロッ





「「元に、戻ったぁーっ!!」」

  
76: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 23:34:40.08 ID:6PUGRPXz.net
 
絵里「やった……やったわっ!」

にこ「はぁー、もう。手間かけさせてくれたわねー」

海未「はは……」

花陽「凛ちゃん……っ! よかったよぉ、うあぁぁぁんっ!」ギュゥ

凛「えっ、なに? どういうこと……?」

希「ごめんね凛ちゃん、ウチのせいで……。本当に元に戻ってくれて、よかった……っ!」

凛「希ちゃん……? ていうか、メールは……」

希「……ん? んー。ないしょっ」



真姫「ど、どうして……っ! ほのキチから元に戻るなんて、一体どうやって……っ!?」

海未「……凛。あなた、今までのことを、覚えてますか?」

凛「んっ、んぅ……。思い出せない……。なんだかすごく長い、夢を見ていたような……」

海未(ほのキチの時の記憶は、覚えていないようですね……)

凛「覚えてるのは、夢の中に、かよちんがいて……。かよちんが凛を、抱きしめてくれて……。かよちんの匂いがして……」

花陽「え、ええっ?」

希「ちょっと、待って……『匂い』?」

絵里「なるほど。花陽の『匂い』を嗅いで、凛は元に戻ったのねっ!」

海未「ですが匂いを嗅ぐだけでいいなら、元に戻れるタイミングは今までも……」

にこ「きっとあんなに強く抱きしめてたんだから、匂いも強かったのよっ!」

花陽「っ!!」カァァァ

絵里「ハラショーっ! 『かよスメル』が『ほのスメル』に、打ち勝ったんだわっ!」
 
77: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/14(月) 23:40:55.01 ID:6PUGRPXz.net
  
花陽「うぅ……」

絵里「あっ、ごめんなさい、花陽……」

真姫「な、なによそれ……。そんな、馬鹿な話が……」

にこ「……ということは」

海未「ええ。真姫も、元に戻れる可能性が――」

真姫「……くっ!」

ダッ

にこ「あっ、逃げたっ!?」

海未「追いましょうっ!」

絵里「待ってっ! 真姫は私たちが追うわ。あなたは、ことりと穂乃果をっ!」

海未「……そうですね。では、お願いしてもいいですか?」

絵里「ええ……。私たちが必ず、真姫を元に戻して見せるわ」

にこ「花陽っ! あんたはボロボロだから、凛と保健室に行きなさいっ!」

花陽「う、うん……」

凛「うぅ~ん、なにがなんだか……」

海未「……花陽。ありがとうございます。あなたのおかげで、不可能と思われていた、ほのキチを元に戻す方法が分かりました」

花陽「う、ううん、私は何も……。さっきのは、偶然みたいなものだったし」

海未「いいえ、偶然なんかではありません。私たちが、凛をどうやって突破するか、考えている中で……。あなただけは必死に、凛を『元に戻す』ことを考えていた」

海未「あなたは凛から逃げることを考えず、立ち向かっていこうとした……。あなたの勇気が凛を、元に戻したんです」

花陽「……」

海未「……凛を頼みます、花陽」

花陽「……うんっ!」
 
113: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 22:10:28.64 ID:bLDC92YR.net
 

タッタッタッ……


真姫「……はぁ、はぁっ!」

真姫(くっ……! まさかほのキチから元に戻る方法が、存在するなんて……っ!)


スゥゥ、スゥゥ……

真姫「はぁ……っ!」

真姫(私は凛と違って、動けるタイプのほのキチじゃない……っ! 運動は苦手だし、足も遅い……っ!)

真姫(せめてこうして練習着でほのスメルを補給しながら、全力で逃げるしか……っ!)


ザッ!


真姫「っ!?」

絵里「見つけたわよ、真姫っ!」

真姫「くっ……!」クルッ

にこ「ぬあぁっ!」ガバッ!

真姫「きゃぁっ!?」ドサッ

真姫(い、いつの間に、後ろに……っ! はさみ打ちなんて……っ!)

にこ「捕まえたわよー、真姫ぃ」ガシッ

真姫「は、離せっ!」ジタバタ

にこ「ははっ。凛に比べたら全然チョロいわねー、あんた」

真姫「チョロいっていうなぁっ!」
 
116: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 22:20:10.43 ID:bLDC92YR.net
  
にこ「まあ、とにかく……」ズイッ

真姫「ひっ……!?」

にこ「……んっ」ギュゥ

真姫「むぐっ……」

にこ「μ'sで一番いい匂いがする、にこにーの匂いよ……。これであんたも、元に戻るはず……っ!」

真姫「うぐぅっ……」

にこ「お、思う存分、嗅ぐといいわ。大サービス、なんだからねっ。くっ、ふふっ……」ギュウギュウ

真姫「こ、こんなので……」

にこ「ふふっ……。ほら、どう? 穂乃果より、いい匂いでしょ?」

真姫「こんなの、でぇ……っ!」

にこ「ちょ、ちょっと、早く元に戻りなさいよっ! にこだって、恥ずかしいんだからねっ!?」

真姫「じゃあ早くどけばっ!?」ドンッ!

にこ「うわぁっ!?」ドタッ

絵里「にこっ!?」

真姫「はぁ、はぁ……っ!」フラ

真姫「ざ、残念だったわねっ! にこちゃんの匂いなんかじゃ、元には戻らないんだからっ! あははっ!」


タッタッタッ……


にこ「なっ……」
 
118: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 22:29:59.79 ID:bLDC92YR.net
  
絵里「そんな……『にこスメル』じゃ、ダメだって言うの?」

にこ「……」

絵里「くっ……。え、『えりスメル』なら、いけるかしら……? そうよね、私も、頑張らなきゃね……っ!」

絵里「にこっ! 追うわよ――って、にこ?」

にこ「……」フラッ

ガクッ

にこ「にこの匂いなんかじゃ、戻らないって……。『なんか』って……」

絵里「……えっと、にこ?」

にこ「絵里……。私そんなに、臭い?」

絵里「えっ!? そ、そんなこと……」

にこ「なんで、どうして……。ち、ちゃんと、お風呂入ってるのに……」

にこ「臭い……。私、臭いんだ……。なによ、臭いアイドルって……」

絵里「ちょ、ちょっと……」

にこ「こんなんじゃ、アイドル失格よぉぉ……っ!」ズーン

絵里「に、にこぉ……っ!」

絵里(ここにきて、にこの心が折れるなんて……)

絵里(どうしよう……。真姫を追わなきゃいけないけど、でもにこを、ここに置いてくわけには……)

絵里「……」

絵里「あっ、あれは……?」
 
119: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 22:41:34.25 ID:bLDC92YR.net
   
タッタッタッ……

真姫「はぁ、はぁ……っ! あれ? 追ってこない……っ!」

真姫「諦めたのかしら? ふふっ、やったっ! 勝ったわっ!」

真姫「見てなさい……。あとでスイッチで全員、ほのキチにしてやるわ……っ!」

真姫「あうっ!?」バフッ

希「……」

真姫「……の、希――」

ダキッ

真姫「――っ!? むぐっ……」

希「真姫ちゃん……」ムギュ

真姫「くっ……。ふっ、ふふっ……っ! 無駄よ、希……っ!」

希「……」

真姫「あ、あんたの匂いでも、私は戻らないっ! こんなの、なんでもないわっ!」

希「……」ムギュゥ……

真姫「んっ、んぅ……。む、むひゃっへいっへんの、わはんにゃいのっ!?」

真姫「……ぷはっ! ば、バカねっ! 凛が花陽の匂いで戻れたのは、奇跡みたいなものだったのよ!」

真姫「二人は親友同士だから……っ! 昔からの思い出とか、二人だけの大切な何かが絡み合って、だからこそ、戻れたのっ!」

希「……」

真姫「でも、私は……っ! 今まで誰ともそんな思い出、築いてこなかったっ! 本当の親友なんて、私には一人もいないのっ!」

真姫「だから、私は戻れないっ! 誰も私を戻すことなんて、できないっ!」

真姫「もう二度と、元の私には……っ! 戻れないのよぉっ!!」
  
121: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 22:55:43.01 ID:bLDC92YR.net
   
ムギュゥ

真姫「むぐぅ……っ!?」

希「……ほんとにそう思ってる? 真姫ちゃん」

真姫「な、なにがよ、はにゃしなさいよぉっ!」

希「真姫ちゃんには、あるやん……。ウチらと築いてきた、思い出が」

真姫「――っ!!」

希「短い時間だけど……。真姫ちゃんにとって、μ'sで過ごしてきた時間は、大切な思い出にはならなかったん?」

真姫「うっ、そ、そんなの……」

希「真姫ちゃん。ウチらは、真姫ちゃんの『本当の親友』には、なれなかったん……?」

真姫「……う、うぅ」

ギュゥ……

希「……違うよね」

希「真姫ちゃんは、μ'sが大好きなんやもんね……。だからウチに協力してくれたんやろ?」

真姫「……」

希「ありがとうな、真姫ちゃん。ウチの計画に、協力してくれて……」

真姫「の、のぞ、み……」

希「ウチを信じてくれて、ありがとう。μ'sのことを想ってくれて、ありがとう……」

希「計画は、失敗しちゃったけど……。ウチ、真姫ちゃんに相談して、本当によかったよ……っ!」
 
123: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 23:03:11.00 ID:bLDC92YR.net
 

フワァ……


真姫「……」

真姫(あたたかい……)

真姫(いい、におい……)


そうだ……。

私はμ'sが、大好きだったんだ……。

いつも口では冷めたことを、言ってるけど……

でも、本当は――


穂乃果「真姫ちゃんっ!」

海未「真姫っ!」

ことり「真姫ちゃぁんっ!」

凛「まーきちゃんっ!」

花陽「真姫ちゃん……っ!」

にこ「真姫っ」

絵里「真姫ーっ!」

希「……真姫ちゃんっ」


私はμ'sが、大好きだったんだ。

だってμ'sには、みんながいるから……。

私の大好きな、みんながいてくれるから……。

ずっと、『本当の親友』なんていなかった。

だけどいつの間にか私の周りには、たくさんの人がいて。

私の名前を呼んでくれる、みんながいて……。


いつの間にかμ'sは、私の大切な居場所になってたんだ――

 
127: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 23:09:21.39 ID:bLDC92YR.net
  
真姫「……」

希「……真姫ちゃん」

真姫「……離しなさいよ」

希「えっ……?」

真姫「はぁ……。頭がクラクラする……」

希「ま、真姫ちゃん……? もしかして」

真姫「……あー」スッ


真姫「この練習着、早く穂乃果に返してあげなきゃね……」

希「っ! も、元に、戻ったんやねっ!?」

真姫「まあ、そうね……」

希「よ、よかった……っ! よかったぁっ!」グスッ

真姫「な、なに泣いてんのよ、らしくないわね……」

希「だって、ウチのせいで、真姫ちゃんは……っ!」

真姫「バカ。私は自分の意志であんたに協力して、自分の意志でほのキチになったのよ」

希「……」

真姫「だって、私も……。その、あんたと同じで――」
 
128: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 23:12:57.85 ID:bLDC92YR.net
   

『……ごめんな、いきなりこんな話して』

『ほんとよ。急に呼び出すから、なにかと思ったら……。ほんと、意味わかんない』

『そ、そうだよね、変だよね、やっぱり……。ごめん、今した話、全部忘れて……?』

『……』

『あはは……。それじゃ、また明日、学校で……』

『待ちなさいよ』

『えっ……?』

『ついてきて。スイッチ、私の部屋にあるから』

『……真姫ちゃん?』

『あんたの計画に、協力してあげるって言ってんの。感謝しなさいよね』

『ど、どうして……?』

『……べつに』



『ただ……私も、あんたと同じで――』




真姫「――μ'sのことが、すっ、好き、だから……」

希「……真姫ちゃん」

希「えへへ、ありがとう。ウチなんかの匂いで、元に戻ってくれて……」グスッ

真姫「は、恥ずかしいからやめてよ、そんな言い方……」
 
131: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 23:26:18.45 ID:bLDC92YR.net
  
絵里「あっ! 真姫、元に戻ったのねっ!?」

真姫「……迷惑、かけたわね」

希「えりち……」

絵里「そう、『のぞスメル』で、戻ったのね……」

希「……えりち。改めて、ごめんなさい。ウチがしようとしてたことは、間違いやった……」

絵里「……いいの。あなたはあなたなりに、μ'sを想ってくれてたんでしょう?」

絵里「あなたがメンバーの誰よりもμ'sを愛してくれてるのは、みんな分かってるんだから」

絵里「そしてきっと、そんなあなたの匂いだからこそ……真姫も、元に戻れたんだわ」

希「うん……。ありがとう、えりち……」

にこ「ま、真姫……あんた、元に戻ったのっ!?」

絵里「あっ、にこっ! そうなのよ、『のぞスメル』で……」

真姫「……まあ、戻ったわ」

にこ「なっ……。の、希、ですってぇ……っ!?」

希「えっ、う、うん……」

にこ「……」ジロッ

真姫「な、なによ……?」

にこ「に、にこの匂いじゃ、戻らなかったくせに……っ!」イライラ

真姫「はぁ……?」
 
134: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 23:32:37.21 ID:bLDC92YR.net
 
にこ「なによ、そんなに希は、良い匂いだったわけぇ……?」

真姫「べ、別にいいじゃない、そんなこと……」

希「に、にこっち……?」

にこ「あー、そうっ! いいわよ、どうせ私は、く、く、臭いわよっ!」

真姫「はぁっ!? なに言ってんのよっ!」

にこ「ふんっ! 元に戻れてよかったわね、真姫っ! それじゃとっとと、学校に戻るわよっ!」

絵里「にこっ!?」

真姫「に、にこちゃん……。別ににこちゃんは、臭くなんか……」

にこ「真姫っ!」

真姫「っ! な、なによ……」

にこ「次にあんたがほのキチになるようなことがあったら、絶対、にこの匂いで戻ってもらうんだからっ!」

真姫「は……?」

にこ「むしろ今度は、にこの匂いで、メロメロになっちゃうといいわっ! 磨き上げられた、にこの匂いに、あんたは虜になっちゃうのよっ!」

真姫「だから、なに言ってんのよ……?」

にこ「きっと、そうなるわっ! その時は興奮して、にこを襲ったりしないでよねっ!? この変態っ!!」

真姫「だ、誰が変態よっ!」

にこ「行くわよ、絵里っ!」

絵里「え、ええ……」


スタスタ……


真姫「なんなのよ……?」

希「ふふっ……愛されとるなぁ、真姫ちゃんは」
 
136: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 23:38:10.43 ID:bLDC92YR.net
  
希「ウチらも、戻ろか。花陽ちゃんと凛ちゃんも、待っとるし」

真姫「……そうね」

希「……ねえ、真姫ちゃん」

真姫「なによ?」

希「きっと……ウチらには最初からスイッチなんか、必要なかったんやな」

希「だってμ'sは、いくらバラバラになっても……こうしてまた、『一つ』になろうとしてる」

希「ことりちゃんの言う通り、ウチらは何もする必要なかったんや……。μ'sはこんなにも、強いんやから」

希「そんな『μ'sの可能性』を、信じきれんかった……ウチらの、負けやな」

真姫「ん……」

真姫「……希」

希「うん?」

真姫「その、なんていうか……」

真姫「……これからも、よろしくね」

希「……あははっ。なにそれ?」

真姫「なんでもないわ……。とにかく、これでμ'sももうすぐ、元通りね」

希「うん……あとは……」

真姫「ええ……」



真姫「ことりが、元に戻れば……」

希「大丈夫。きっと海未ちゃんなら、やってくれるはずや……」
 
138: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/17(木) 23:46:20.35 ID:bLDC92YR.net
  
――――――


タッタッタッ……


海未「はぁ、はぁ……っ!」


海未(ことりの思考回路からして……。彼女が向かった場所は、一つっ!)

海未(穂乃果の部屋で、間違いありません……っ! なぜなら、あそこは……っ!)

海未(ほのスメルが常に漂う、この世で唯一の場所……っ! いわば、ほのスメルの『聖地』っ!)

海未(レベル5を今日中に、迎えるというのなら……。彼女も最高の場所を、選ぶはずです……っ!)


海未「はぁ……っ!」


海未(随分時間をロスしてしまいましたが、まだ最悪の事態にはなってないはず……っ!)

海未(ことりのやり方からして、いきなりレベル5へ挑戦することはない……。もっと下のレベルで、『耐性』をつけてから挑むはず)

海未(しかしそれでも、穂乃果は辛い思いをしてるかもしれない……っ!)

海未(急がなくては……っ!)


海未「……ことりぃっ!!」


海未(今度こそ、決着を着けます……っ!)

海未(この数日間の、スイッチに纏わる、全ての……決着をっ!)
 
208: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 20:44:16.40 ID:6teL6ujv.net
――――

穂乃果の部屋




ことり「……」

穂乃果「……」


ことり「……えっと、どうしようっか?」

穂乃果「……」グスッ

穂乃果「……。ことりちゃんに、任せるよ」

ことり「だよね。うーん……」

ことり(……やりたいことは、いっぱいあるんだけど)

ことり(でも……。いざ好き放題できるとなると、何から始めたらいいか迷うなぁ……)

ことり(前に私の部屋に連れ込んだときは、勢いでやっちゃったところもあるし……)

ことり(うーん……とりあえず)


カチカチッ!

ブワッ


ことり(まずは……『2』ぐらいでいっか。うわっ……)

ことり(す、すごい……。やっぱ私の部屋で感じた時とは、全然違うよぉ……///)

ことり(元々ほのスメルが充満してる、穂乃果ちゃんの部屋だもんなぁ……っ! レベル2でも、こんなに……///)

ことり「はぁ、はぁ……っ////」スンスン

穂乃果「……」

穂乃果「……ことりちゃん」

ことり「えっ、なに?///」


穂乃果「その、手に持ってるのって……」
211: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 20:48:01.89 ID:6teL6ujv.net
ことり「……」ササッ

ことり「なに、なんのことー? 別に、なんでもないよー?」

穂乃果「……そっか」

ことり「そうそう。穂乃果ちゃんはただ、ことりに身を任せてくれればいいんだよー」

ことり「そしたら……。ことりは穂乃果ちゃんをすっごく気持ちよくしてあげるから」

穂乃果「……」

穂乃果「ん……///」コクン

ことり「ふふっ……。やっぱり素直な穂乃果ちゃんが、一番可愛いよっ♪」

ことり(家の人はいないし、前の反省を生かして、部屋の鍵もかけてある……)

ことり(だから例え海未ちゃんたちが追いついてきたとしても、この部屋に入ることはできない)

ことり(それに……。今は穂乃果ちゃんも、抵抗しなくなったしねっ♪)

ことり(やっとだ……。やっと誰にも邪魔されず、穂乃果ちゃんを好き放題できるんだ……)

ことり「……じゃあ、はじめよっか。穂乃果ちゃん」

穂乃果「う、うん……」

ことり「……」ガバッ

穂乃果「あっ……//」

ドサッ……

ことり「……ふふっ。まずはこの縄で、また縛ってあげるねっ」ズイッ

穂乃果「こ、ことりちゃん……」

ことり「嬉しいでしょ……?」

穂乃果「……//」

ことり「あはっ……」


ことり「あははははっ!」



ことり(やっと――っ!)
213: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 20:57:35.01 ID:6teL6ujv.net
   

ガラッ!


ことり「えっ――」


「だぁああぁあぁっ!」


バフッ!


ことり「っ!? いったぁいっ!」


バフッ! バフッ!


ことり「ちょ、な、なにっ!? ざぶとんっ!?」

穂乃果「あっ……」

「おねえちゃんに……っ! 手を出すなああああっ!!」

ことり「はっ……!? うわっ!」

ドタァン!

「……っ! ちょうどいいところに縄がっ!」

グルングルン

ことり「え、ええーっ!?」

「……よしっ!」



雪穂「やったーっ! 悪者からお姉ちゃんを、守ったぞーっ!」

穂乃果「ゆ、雪穂……?」
  
215: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 21:04:20.33 ID:6teL6ujv.net
   
ことり「なっ……」ギシギシ

ことり(し、縛られちゃった……)

ことり「なんで、雪穂ちゃんが……」

ことり「なんで雪穂ちゃんが、『部屋の中』にいるのっ!?」

雪穂「押し入れに隠れてたの。お姉ちゃん、大丈夫?」

穂乃果「う、うん……」

ことり「か、隠れてた……っ!? 一体いつから……っ! ていうか、学校はっ!?」

雪穂「今日は風邪でお休みしたんだ。もう治ったけど。それよりも……」

雪穂「……ことりちゃんだったんだね。お姉ちゃんを悲しませてたのは」

ことり「えっ……?」

穂乃果「……っ!」

ことり「……な、なんのこと?」

雪穂「とぼけても無駄だよっ! 二週間くらい前、お姉ちゃんが、泣きながら家に帰ってきた日があった……」

雪穂「海未ちゃんに連れられて……。何があったのか聞いても、二人は何も教えてくれなかった……っ!」

雪穂「それから最近まで、お姉ちゃんはずっと元気がなくて……っ! ずっと、心配だったっ!」

雪穂「でも……無理やり事情を聞いたら、お姉ちゃんは教えてくれた。『友達が変になっちゃった』って……」

雪穂「それでさっきたまたま、窓から見ちゃったの。家の前でお姉ちゃんが、泣いてるのを……」

雪穂「……隣でことりちゃんが、笑ってるのをっ!」

ことり「……っ!」

雪穂「だから私は押し入れに隠れて、確かめようとしたんだっ! ことりちゃんがどんな風に、『変わっちゃった』のかを――」

雪穂「そしたら……。あ、あなたはお姉ちゃんに、なんてことをしようとしてるのっ!?」

ことり「うっ……」
  
216: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 21:09:35.32 ID:6teL6ujv.net
  
雪穂「最低だ、あなたはっ! お姉ちゃん、もう大丈夫だからねっ!」

穂乃果「雪穂……」

ことり「……違うんだよ、雪穂ちゃん」

雪穂「……なにが?」

ことり「私はね、ただ、穂乃果ちゃんを悦ばせてあげたかっただけなんだ。別に何も悪いことなんて、するつもりはなかったんだよ」

雪穂「よ、喜ばせるって……。あ、あなたはお姉ちゃんに、エッチなことをしようとしてただけでしょっ!?」

ことり「だからぁ……。それが穂乃果ちゃんの、望んでたことなんだよ」

穂乃果「っ!!」

雪穂「は? なに言って……」

穂乃果「ち、ちがう……」

雪穂「ほら、お姉ちゃんも違うって……」

ことり「……穂乃果ちゃん、また嘘つくの?」

穂乃果「っ!」ビクッ

ことり「違わないよね、穂乃果ちゃん……? 穂乃果ちゃんは、期待してたんだもんね? エッチなことを……」

穂乃果「うっ……」

雪穂「でたらめ言わないでっ! お姉ちゃんが、そんなこと……」

ことり「穂乃果ちゃん……。穂乃果ちゃんはまたそんな嘘をついて、ことりを悪者扱いするの……?」

ことり「ことりは、悲しいよ……。ことりは素直で正直な穂乃果ちゃんの方が、好きだよ……」

穂乃果「あ、あっ……」

雪穂「……お姉ちゃん?」
 
217: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 21:16:56.77 ID:6teL6ujv.net
   
ことり「お願い、穂乃果ちゃん……。ことりを、助けて?」

ことり「『本当のこと』を、雪穂ちゃんに教えてあげて……? 『同意の上』だって……。ことりは何も、悪いことなんてしてないんだって……」

穂乃果「うっ、うぁ……」

ことり「穂乃果ちゃんは……『悦んで』くれてたんだよね? だったらことりは、なにも悪くないよね?」

雪穂「あ、あなたね……っ!!」

穂乃果「こ、ことりちゃんは……悪く、ないよ……」

雪穂「っ!? えっ……」

ことり「うん……そうだね。それは、どうして?」

穂乃果「うっ、うぅ、そ、それは……」

穂乃果「い、言えない、よぉ……っ!」

ことり「穂乃果ちゃん。このまま私が縛られたままじゃ……気持ち良いこと、できないよ?」

穂乃果「……ぅ」

ことり「素直になって、穂乃果ちゃん。ほら……言ってごらん?」

ことり「『穂乃果はエッチなことが大好きな女の子です』って……。今の穂乃果ちゃんなら、言えるよね」


グイッ!


ことり「っ!」

雪穂「いい加減にしてよ、ことりちゃん……っ! お、驚いたな、まさかそこまで、変わっちゃってたなんて……っ!」

雪穂「な、なにがあったかは、知らないけどさぁ……っ! とにかくこれ以上、お姉ちゃんに変なことをするなら――」

穂乃果「や、やめて、雪穂っ!」

雪穂「……えっ?」

ことり「……」ニヤリ

穂乃果「違うの、ことりちゃんは、悪く、ないのぉ……っ!」

穂乃果「ことりちゃんは、穂乃果のために……っ! だって、穂乃果は……」

穂乃果「え、エッチなことが……だ、大好き、だからぁ……」
  
218: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 21:23:53.62 ID:6teL6ujv.net
     
雪穂「……なっ」

穂乃果「う、う、うぅぅ……」

雪穂「なに言ってるの、お姉ちゃん……?」

ことり「あ、あはは……っ!」ゴロン

ことり(ダメだよ、雪穂ちゃん。手足を縛ったくらいで、安心しちゃ……)

ことり(ほのキチを止めたいなら、まずは『口』を塞がなきゃ……なんて、雪穂ちゃんは元々ほのキチのことなんて、知らないか)

ことり(よかった……。家に入る前に、済ませておいて……)

ことり(早めに穂乃果ちゃんを『目覚めさせて』おいて……本当に、よかった)


『穂乃果ちゃん自身が、いつか必ず私たちの行為は正しいって証明してくれる――』


ことり(これで私の、勝ち……)

ことり(タイムアップだよ、海未ちゃん――)


ことり「あっはははははははぁ――っ!」



穂乃果「うっ、うぅ、ごめん、ごめんね、雪穂……っ!」

穂乃果「お姉ちゃんがへんたいで、ごめんねえ……っ!」

雪穂「へ、変態、って、そんな……」

穂乃果「わ、私は……っ! 私は匂いを嗅がれて喜ぶ、へんたいだったのぉ……っ!」

雪穂「に、におい……?」

ことり「あはは、あはっ……!」
   
220: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 21:29:59.14 ID:6teL6ujv.net
  
ことり「あははっ、あはっ。はぁ、はぁ……」

穂乃果「う、うぅ……」

雪穂「……お姉ちゃん」

穂乃果「ごめん、ごめんね……。嫌いに、なったよね?」

雪穂「よ、よく分かんないけど、大丈夫だよ。私別に、そんなことでお姉ちゃんのこと、嫌いになったりはしないから」

穂乃果「ほ、ほんと……?」

雪穂「うん……。それに、えっ、エッチなことされて喜ぶのは、そんな恥ずかしいことでもないんじゃない……かな?」

雪穂「わ、私にはまだ、よく分かんない、けどさ……」

穂乃果「雪穂……」

ことり(……やっぱり、たいしたことないや。雪穂ちゃんまだ、中学生だもんねえ)

ことり「ふふ……っ。ねえ、雪穂ちゃん」

雪穂「な、なに……?」

ことり「そろそろ縄、解いてくれないかな? ほら私、穂乃果ちゃんに『続き』をしてあげなきゃいけないからさぁ……」

雪穂「えっ。でも……」

ことり「『でも』、なに? もう分かったでしょ? 穂乃果ちゃんが、それを望んでるの」

ことり「穂乃果ちゃんは、私とエッチなことをしたいって、思ってるの。だから早く、解いて?」

雪穂「く、うぅ……」

ことり「いいよ、気にしないで。雪穂ちゃんが私のことを悪い人だと『勘違い』して、叩いたり縛ったりしたこと、別に怒ってないから」

雪穂「……っ!! う、わ、分かったよ……」

雪穂「ご、ごめんなさい、私の早とちりで、余計なことをして……」

ことり(……本当に、さっさと口を塞いじゃうべきだったね、雪穂ちゃん)
 
222: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 21:35:35.61 ID:6teL6ujv.net
   
雪穂「じゃあ……」

ことり「うんっ、お願いっ♪」

ことり(さて……。縄が解けて雪穂ちゃんが部屋を出ていったら、ゆっくり穂乃果ちゃんを堪能しよう……)

ことり(色々なことをしよう。今日のために妄想してきた色々なことを、現実にしよう)

ことり(穂乃果ちゃんもきっと、悦んでくれる……。きっとさっきみたいな、エッチな顔をしてくれる……っ!)

ことり(徐々にスイッチのレベルも上げて、レベル4を、部屋に充満させて……)

ことり(体が慣れてきたら……。とうとう、『レベル5』だ……っ!)

ことり(楽しみだなぁ……。一緒に天国に行こうね、穂乃果ちゃん……)


穂乃果「……うっ」ズズッ

穂乃果「ふっ、う……」ゴシゴシ

穂乃果「……雪穂」

雪穂「な、なに……?」

穂乃果「その……。雪穂は、どうしたらいいと、思う?」

雪穂「わ、わたしは……」

雪穂「……正直ことりちゃんのことは、信用できない。このまま縛っておいた方が、いいと思う……」

穂乃果「……」

雪穂「でも……それよりも私は、お姉ちゃんの気持ちを優先したい、かな……」

穂乃果「……ありがとう、雪穂」ニコッ


ことり(……? なに話してるんだろ?)

ことり(ま、いっか……。別にもう、私が口出しすることもないし……)


穂乃果「……ことりちゃん」

ことり「あ、どうしたの? 穂乃果ちゃんが私の縄を、解いてくれるの?」

穂乃果「ごめんね。もうちょっと、このままで……我慢、してくれる?」

ことり「うんっ、もちろんだよっ。もうちょっと、このままで……」


ことり「……この、まま?」

穂乃果「このまま、海未ちゃんが来るのを待とう……?」
 
226: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 21:45:26.35 ID:6teL6ujv.net
  
ことり「は……?」

雪穂「おっ……お姉ちゃんっ!?」

ことり「えっ、なになに、海未ちゃん? なに言ってるの?」

穂乃果「私、もう分かんなくなっちゃったの……。何が、正しいのか……」

ことり「だから、何を言ってるのっ!? 何が正しいのかなんて、そんなの……っ!」

穂乃果「ことりちゃんは悪くないし、正しいと、思う。だけど……。私、馬鹿だから、自分の判断が信じられないの」

穂乃果「だから、海未ちゃんの意見も、聞きたい……。海未ちゃんだったら何て言うのか、知りたい」

穂乃果「昔から、分からないことがあったら……。私は『二人』に相談するのが、いつものことだったから……」

ことり「はぁ……っ!?」

雪穂「は、はは……」

ことり「ちょ、ちょっと待ってよ……。私は『穂乃果ちゃんと』、エッチなことがしたいんだよっ!?」

ことり「それで、穂乃果ちゃんも私にエッチなことをされて、『気持ちよくなりたい』ん、だよねっ!?」

穂乃果「それは……」

ことり「私たち二人の気持ちは、通じ合ってるんだよっ! 今ここでエッチなことをすることで、私たち二人とも、幸せになれるんだよっ!?」

ことり「私たちは、『同意の上』なんだっ! この世でそれ以上に正しいことなんて、ないんだよっ!」

穂乃果「で、でも私はその、海未ちゃんの意見が……」

ことり「海未ちゃんは今、関係ないでしょっ!? どうして友達同士でエッチなことをするのに、他の友達の意見が必要なのっ!?」

穂乃果「か、関係なくないよ……。だって、海未ちゃんは……」

ことり「幼馴染だとしても、今は関係ないよ……っ! だってこれは、私と穂乃果ちゃんの――」

穂乃果「海未ちゃんが好きなのぉっ!!」

ことり「――っ!!?」




ことり「今、なんて……?」

穂乃果「わっ、私、海未ちゃんのことが、好き……なの……」

穂乃果「だから、関係なく、ないよ……」
   
227: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 21:53:07.10 ID:6teL6ujv.net
       
ことり「す、好き、って……」

雪穂「……うそ」

穂乃果「……私とことりちゃんの気持ちは、通じ合ってなんかない。だって、私は……」

穂乃果「その、エッチなことは……好きな人としかしちゃいけないって、思ってるから」

ことり「――っ!!」

穂乃果「でも、ことりちゃんの言ってることも、正しいって思うよ」

穂乃果「だってことりちゃんは、私のために……。私を喜ばせようと、してくれてるんでしょ?」

穂乃果「それが、悪いことなわけないもん……。だから……」

穂乃果「私とことりちゃんの意見、どっちが正しいのか、分からないから……。海未ちゃんの意見も、聞きたいんだ」

ことり「あ、あはは、なに言ってるの、穂乃果ちゃん」

ことり「さっき言ってたじゃん……。自分が変態だって海未ちゃんに、知られたくないって……。海未ちゃんの意見も聞くなら、そのことも説明しなきゃいけないよ?」

穂乃果「えっ? あっ……」

ことり「気づいてなかった、の……? ほんっとうに、バカなんだから……」

穂乃果「……えへへ。でも、仕方ないよね。説明しなきゃ、いけないなら……」

ことり「っ! 仕方ない、って……」

雪穂「……無駄だよ、もう。お姉ちゃんの性格は、あなたが一番よく知ってるでしょう?」

ことり「……っ!」

穂乃果「あっ! でも、海未ちゃんのことが好きだっていうのは……そ、そっちはまだ、内緒にしておいてねっ!?」

ことり「……」

ことり(穂乃果ちゃんは海未ちゃんのことが、好き……)


ズキン


ことり(はぁ……)
   
239: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:10:55.25 ID:6teL6ujv.net
        
ことり(あたま、いたい……)

ことり(……)


ことり「わかったよ……」

穂乃果「ありがとう……。ゆ、雪穂もだからねっ!?」

雪穂「分かってるって。いやー、にしても、海未ちゃんかぁ」ニヤニヤ

穂乃果「に、ニヤニヤしないでよぉー……」

ことり「……」


ことり(……まだだ)

ことり(まだ、終わってない……。穂乃果ちゃんと二人きりにさえなれれば、まだいくらでも……)

ことり(そうだ。この状況をひっくり返す方法が、まだ……)


ことり「……」チラッ

雪穂「あははっ、これは大ニュースだぞー。早く来ないかなー、海未ちゃん……」

穂乃果「だ、だから、内緒だってばぁっ!」ポカポカ


ことり(『右ポケット』……)

ことり(……できる、かな)

ことり(ううん、できる。ことりなら……)


ことり(やれる……。私なら……っ!)


ことり「海未ちゃんは、来ないよ」

穂乃果、雪穂「「えっ?」」
  
240: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:16:58.11 ID:6teL6ujv.net
   
穂乃果「え、っと……」

雪穂「来ない……? どういうこと?」

ことり「私のスカートの『右ポケット』に入った、携帯電話がね……今、震えたの」

ことり「それが、合図なんだ……。『全部終わった』っていう、合図」

雪穂「終わったって、なにが……。ていうか、誰からの合図?」

ことり「実は真姫ちゃんと凛ちゃんも、『こっち側』でね……。二人はたった今まで、海未ちゃんやみんなを足止めしてたの」

雪穂「……はぁ」

穂乃果「あっ、そ、そういえば二人共さっき、『ここは任せて』って……」

雪穂「ふぅん、一応本当なんだ。それで……?」

ことり「合図がきたってことは……。『みんなとの戦いを終えて、二人ともこっちに向かってる』って、ことだよ」

雪穂「っ!?」

穂乃果「えっ……」

ことり「終えたっていうのはもちろん、『こっち側』の勝ちで、ってこと……。だから海未ちゃんたちは今頃私みたいに、縛られちゃってるんじゃないかなぁ?」

穂乃果「そんな……」

ことり「で、私みたいなのが今からもう二人、ここに来るわけだけど……。どうしよう、大ピンチだねえ?」

雪穂「……」

ことり(……大丈夫。雪穂ちゃんなら必ず、気づく……)
   
241: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:23:11.78 ID:6teL6ujv.net
    
雪穂「……ピンチ? なにが?」

ことり「……えっ?」

雪穂「よく分かんないけど……。そんなの、あなたの携帯からメールでも打って、二人を止めればいいだけでしょ?」

ことり「……」

雪穂「『こっちには来なくていいよ』……ついでに、『必要なくなったからみんなの縄も解いちゃっていいや』。こんな感じで打てば、なんとかなるでしょ」

ことり「……なるほど。雪穂ちゃん、頭いいね。その手が、あったか」

雪穂「お姉ちゃんよりは、頭良いつもりですよー、っと」スタスタ

穂乃果「ひ、酷い……」

雪穂「ではポケットの方、失礼しまーす……」ゴソゴソ

ことり「……」

雪穂「……って、あれ? これ、携帯じゃ――」


ドンッ!


雪穂「っ!? けふっ……」

ポロッ 

穂乃果「えっ……ゆ、雪穂っ!?」


コロン


ことり「っ!」ドタァン



ことり(やった……)

ことり(スイッチが、落ちたっ!)
   
242: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:27:29.37 ID:6teL6ujv.net
       
ことり「はぁ、はぁ……っ!」モゾモゾ

ことり(早く、スイッチのところへ……っ!)


雪穂「いっ!」ドテッ

穂乃果「雪穂……っ!」タタッ

雪穂「ったぁ……」

ことり(ことりの渾身のタックルで、雪穂ちゃんは壁まで吹っ飛んだ……。この距離なら、間に合わないっ!)

ことり(穂乃果ちゃんは……よし、思った通りっ!)

ことり「はぁ……っ!」モゾモゾ


雪穂「いたた……。や、やられたぁ、くっそぉ……」

穂乃果「ゆ、雪穂、大丈夫……っ!?」

雪穂「うん、大丈夫……」

穂乃果「ケガとかは……っ!」ササッ


ことり(ふふっ……。ダメだよ、穂乃果ちゃん……。そんなに雪穂ちゃんに、『近づいちゃ』……)

ことり(いつも、そうだ……。穂乃果ちゃんは優しいから、いつもそうやって心配して、真っ先にこっちに駆け寄ってくる……)

ことり(でもそれじゃ、ダメなんだよ……。穂乃果ちゃんが近づけば近づくほど、『匂い』は強く感じちゃうんだから)

ことり(私の時も、そうだった……。きっと凛ちゃんや真姫ちゃんの時も、そうだったんでしょう?)

ことり(私たちほのキチは、そんな穂乃果ちゃんの優しさから、生まれたんだよ――)


コロン


ことり「あはは……っ!」

ことり(スイッチ――っ!)
    
248: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:36:17.35 ID:6teL6ujv.net
    
ことり(レベルはさっき『2』まで上げてあるから、2回、押すだけでいい……)

ことり(大丈夫。手足が縛られてても……。うつ伏せになれば、スイッチを押すことはできるっ!)


ことり「はぁ、はぁ……っ! えいっ!」ググッ


カチッ!


ことり(『アゴ』で――)


カチッ!


ことり(やったっ!)

ことり(くらえ、雪穂ちゃんっ! 超至近距離での――)


穂乃果「ほ、ほんとに大丈夫? 雪穂……」

雪穂「大丈夫だってばー。それより、ことりちゃんを……」チラッ

雪穂「……? なに、やって――」


ことり(――レベル4、ほのスメルっ!!)



ブワァッ!
  

   
253: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:43:16.89 ID:6teL6ujv.net
      
ことり「あっははははは……っ!」

雪穂「……ん、しょ」スクッ

穂乃果「あ、雪穂……」

雪穂「はぁー、もう……」

ことり「あははははははっ!! す、すごぉいっ!」

雪穂「この期に及んで、まだ何か企んでたなんて……」

ことり「すごい、すごいよっ! なにこれっ!? 全然違うっ! あははっ///」スゥゥゥ

雪穂「ったく、年下相手にやってくれたね、ことりちゃん……」

ことり「すごいすごいすごぉいっ! 穂乃果ちゃんの部屋で嗅ぐレベル4は……っ! レベルが、違うっ///」ゴロンゴロン

ことり「はぁ~……/// やばい、やばいよぉ……っ! こ、これ、やばい……っ! また気絶、しちゃうかも……///」ビクビク

雪穂「……さ、さっきから、どうしたの? キモいよ?」

ことり「はぁ~、わっかんないのぉ? こ、この、においのよさが……っ///」ゴロンゴロン

雪穂「におい……? なんの匂い?」

ことり「だからぁ、においだよぉ、ほのかちゃんの……ふぁ……」ゴロン

雪穂「お姉ちゃんの……? いや、ちょっとよく意味が……」

ことり「……」

ことり「……な」





ことり「なんで、平気なの……?」

雪穂「は……?」
   
260: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:50:22.45 ID:6teL6ujv.net
     
ことり「うっ……はぁ、はぁ……ど、どうして……」

雪穂「……??」

ことり「どうして、効かないの……? ほのスメルが……」

雪穂「ほのすめる……?」

ことり「ま、まさか……」


ことり(『妹』、だから……?)

ことり(生まれたときからずっとほのスメルが、身近にあったから……?)

ことり(レベル4にも気づかないくらいの、とんでもない『耐性』が……雪穂ちゃんには、あるってことっ!?)


雪穂「……なに言ってんだか」

雪穂「ていうか……これ、なに? 携帯の代わりに出てきたけど……」ヒョイ

穂乃果「あっ……や、やっぱりこれ、見たことある……」

雪穂「えっ?」

ことり「あ、あは、あはははっ!」

雪穂「っ! こ、今度はなにさ……」

ことり(レベル2で何も反応がなかった時点で、おかしいと思ってたけど……)

ことり(まさか穂乃果ちゃん以外に、ほのスメルを『嗅げない』人が、この世にいたなんて……)

ことり「はぁ、はぁ……。あはは……っ!」ゴロン





ことり「私の負け、かな……」
 
262: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:55:38.73 ID:6teL6ujv.net
    
雪穂「えっ……? 今、なんて……」

穂乃果「……あっ、そうだ。『腹筋の回数を数える道具』だ。ことりちゃん、海未ちゃんに返してなかったんだ?」

ことり「……腹筋なんて、口で数えればいいでしょ」

穂乃果「あっ、そうだよね。じゃあ……」

ことり「お皿を数える道具でもないよ。それは……」

ことり「……穂乃果ちゃんの匂い、『ほのスメル』を、強くさせるスイッチだよ」

穂乃果「……へっ?」

雪穂「なんだそりゃ……」

ことり「嘘だと、思う? ふふっ……。別に、信じなくてもいいよ。どうせ二人には、分からないんだし……」

ことり「ただ、一つ言っておくよ……。穂乃果ちゃん」

穂乃果「えっ……」

ことり「はぁ、はぁ……」スゥ

ことり「穂乃果ちゃんの匂いは……。もう良い匂いだとか、そんな言葉じゃ言い表せないくらい、すごいんだよ……」

ことり「人を、ここまで狂わせちゃうくらいの……。そんな、この世のものとは思えない、とてつもなく刺激的な匂いなんだ」

ことり「気絶しちゃいそうなくらい、頭が溶けちゃいそうなくらい、気持ちがいいんだ……」

ことり「すごく体が、熱くなるんだ……すごく、エッチな気分になるんだ……」

ことり「穂乃果ちゃんのにおいを、かいでる……と、ね……」

穂乃果「……」
  
263: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/22(火) 23:59:16.99 ID:6teL6ujv.net
      
雪穂「ちょっと……。あなた本当、なに言って……」ゾッ

雪穂「びょ、病院……。病院、行ったほうが……」

ことり「ふ、ふふっ……」


ことり(気持ちいい……)

ことり(なんだか眠たく、なってきちゃった……)

ことり(このまま眠ったら……起きた時には頭の痛みも、消えてるのかな……)

ことり(そうだったら、いい、な……)

ことり(あぁ……)

ことり(なんて……なんて気持ち良いんだろう……)

ことり(そっか……)

ことり(ここが、『天国』だったんだ……)

ことり(ここが……今、この場所が……)

ことり(……しあわせ、だなぁ)

ことり(ことりは、いま……。とても、しあわせ、です……)




ことり「でも……」


ことり「やっぱり、かいでみたかったなぁ……」



ことり「レベル、5……」
  
  
264: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 00:07:58.13 ID:oR87IQZt.net
    
雪穂「……ことりちゃんっ?」

雪穂「ちょ、ちょっと、寝ちゃったのっ!? ことりちゃんっ!」

穂乃果「……」

雪穂「も、もぉー、なんなの、ほんとに……」


ピンポーン


雪穂「っ!?」ビクッ


ピンポーンピンポーン


雪穂「……海未ちゃん来たみたいだね。私、ちょっと行ってくるよ」

穂乃果「……」

雪穂「お姉ちゃん?」

穂乃果「えっ? あ、うん……」

雪穂「もう大丈夫だと思うけど、一応ことりちゃん見ておいてね」

穂乃果「うん……」

雪穂「じゃあ、すぐ戻るから」


バタン
 
265: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 00:10:07.16 ID:oR87IQZt.net
   
ことり「……」スゥスゥ

穂乃果「……」


ドクン



『なにそれ?』『小っちゃいボタンが二つ付いてるね……』


『あああぁ、あぁあっ///』『あぁ、ほ、ほのか、ちゃぁん……////』『それ……その、スイッチ……だ、め……』

『はぁはぁ、穂乃果ちゃん、すごいよ、いい匂いだよぉ……』『これから穂乃果ちゃんに、すごくエッチなことをしようと思うの』

『あなたはなにをやってるのですか、ことりっ!?』『このスイッチがどれだけ危険な物なのか、まだあなたには分からないのですかっ!?』

『私はあの時、レベル4まで嗅いだんだよ……』『いつか必ずお泊り会、しようねっ』

『どうしてそんな嘘つくのっ!? そんな嘘ついてまで……っ! 海未ちゃんは自分を、騙し続けるのっ!?』

『な、なに、なにこれぇ……////』『あっ、だ、だめ、だめぇ……っ!』『だめええええぇーっ!////』

『どうしてみんなまだ、部屋にいるの?』『早く出てってよっ! 凛は、穂乃果ちゃんの体から出る匂いしか嗅ぎたくないのっ!!』

『私をμ'sに誘ってくれて、ありがとうっ』『穂乃果……ごめんね』『今までずっと、ごめん……。そして、これからも……』

『私はこれからおかしくなって、私が私じゃなくなって、それで……』『あんたに酷いことをいっぱいするかもしれないし、変なこともたくさんするかもしれない』

『どうして……? どうしてウチから、スイッチをっ!?』『ウチのしてきたことは、間違いだったんっ!?』

『ことりちゃんも、穂乃果ちゃんも、みんなも、全員が幸せになれる、μ'sにしたくて……ウチは……っ!』


『みんな、気を付けてくださいっ! この匂いを嗅いでしまったら、ほのキチになりますっ!!』



穂乃果「……」


穂乃果「ぜんぶ……」


 

  
  

穂乃果「私のせい、だったんだ……」


   
266: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 00:21:46.89 ID:oR87IQZt.net
  
――――


ピンポーンピンポーン

ドンドンッ!


「――っ!!」

雪穂「あー、はいはいっ。今開けますからーっ!」

ガチャッ

雪穂「こんにちは、海未ちゃん」

海未「っ!? ゆ、雪穂……? どうしてここにっ!?」

雪穂「いや、私の家なんだけど……」

海未「穂乃果はっ!?」

雪穂「部屋にいるよ」

海未「えっ……。あの、ことりも一緒ではありませんでしたか?」

雪穂「うん、ことりちゃんも部屋だよ」

海未「っ! や、やはりですかっ! あの、実はことりなんですが――」

雪穂「ことりちゃんならもう大丈夫。私が、縛っておいたから」

海未「……えっ?」

雪穂「ふふっ。さっ、上がって上がってー」

海未「は、はぁ」

雪穂「いやぁー、よかった、海未ちゃん来てくれて。私たちだけじゃ、どうしたらいいか分からなくてさぁ」

海未「……??」
267: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 00:26:05.43 ID:oR87IQZt.net
タン、タン

雪穂「とりあえず部屋入ったら、ことりちゃんを何とかしてよ、海未ちゃん」

海未「えっと……。今は、縛った状態なんですよね?」

雪穂「そうなんだけど、それでも大変だったんだよ。今はもう寝ちゃったから、大丈夫だと思うけど……」

海未「……あの、確認ですけど、穂乃果は無事なんですね?」

雪穂「もちろんっ」

海未「い、一体私が来るまでの間に、なにが……?」

雪穂「後でちゃんと説明するよ。その代わり、そっちも色々説明してよね?」

海未「……はい」

海未(雪穂は一体、どこまで知ってるんでしょうか……?)

海未(いえ、今は、穂乃果の無事を確認することが先決です……)

タン


雪穂「お姉ちゃーんっ」


ガチャッ……


雪穂「海未ちゃん、きたよー」

穂乃果「……」


穂乃果「……海未、ちゃん?」

海未「あっ……」

 


海未「ほのか――」
268: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 00:28:51.64 ID:oR87IQZt.net
 
   
――『それ』は、決して回避できなかったわけではない。


例えばことりが、気絶する前に二人にちゃんと、『指示』を出せていれば。

例えば穂乃果が、考え事をするよりも先に、まず『スイッチ』に意識を向けていれば。

例えば雪穂が、『ことりが気絶した原因』について、もう少し深く考えていれば。

例えば海未が、『もう少し早く』この部屋に辿り着いていれば。



この事件の結末は、大きく変わっていたことだろう。


だけど『それ』は、起こってしまった。

回避できるはずだった、『それ』は。



雪穂がその扉を、開けてしまったことで――


ブワァッ!


海未「――っ!!?」



起きてしまった。


すなわち……


『ほのスメルレベル4が充満した部屋』に、『海未が入室してしまう』という、最悪の事態が。




海未「あ、あぁ……///」





海未「ああぁぁああぁああぁーっ!?//////」ビクンビクンビクンッ!

   
274: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/09/23(水) 00:36:04.44 ID:oR87IQZt.net
海未「あぁ、あぁああぁあ……///」


あるいは、必然だったのかもしれない。


そもそも意識があったとしても、ほのキチであることりが『スイッチのレベルを下げる』旨の指示を二人に出せていたかどうかは、分からない。

ほのスメルを認識できない穂乃果が、すぐに『スイッチの下ボタンを押す』という行動に移れなかったのは、無理もないだろう。

ましてやスメルを認識できない上、何も事情を知らない雪穂が、この事態を想定できるはずもない。


穂乃果「海未ちゃんっ!?」

雪穂「ど、どうしたのっ!?」


海未が何の対策もせずに部屋に足を踏み入れてしまったことは、彼女の危機意識の甘さが招いた、致命的なミスだったと言えるが――

それも雪穂の言葉に安心しきってしまったからこそ起きたミスなのだと考えれば、仕方がなかったのかもしれない。


海未「あ、あぁ、ぁ……」


ドサッ


雪穂「海未ちゃんっ! しっかりしてっ!」

穂乃果「海未ちゃん……うみちゃぁんっ!!」



偶然か、必然か。

今ここに、ことり、凛、真姫に続く……





『第4のほのキチ』、園田海未が誕生したのであった。





第2部、『発症者』、完。

第3部、『レベル5』に続く。

   
371: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 21:01:07.91 ID:dIy7IXgs.net
――――第3部、『レベル5』




チュンチュン


ことり「……」

ことり「ん、んぅ……」


ムクッ


ことり「ふあぁ……」

ことり「……」ゴシゴシ

ことり(……朝だ)

ことり(あ、もうこんな時間……?)

ことり(学校、行かなきゃ……)



ことり「……」

ことり「……べつに、いっか。ゆっくり行けば……」

ことり「どうせ今日も、一人なんだし……」


ズキン


ことり「……はぁ」

ことり(やっぱり治らないなぁ、この痛み……)
376: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 21:09:58.37 ID:dIy7IXgs.net
   
――――


ことり「……」


スタスタ


ことり(……なんか、一人で登校するのにも慣れてきちゃったな)

ことり(別に、いいけど……)

ことり(……)

ことり(昨日あれから、どうしたんだっけ……)

ことり(確か穂乃果ちゃんの部屋で、寝ちゃって……)

ことり(目が覚めた時にはもう、夕方で……)

ことり(穂乃果ちゃんと雪穂ちゃんと……あと、海未ちゃんがいて……)

ことり(それで……えっと、ボーっとしたまま、家に帰って……)

ことり(お母さんに、学校サボったこと、怒られて……)

ことり(バッグはにこちゃんと絵里ちゃんが、届けてくれてて……)

ことり(ご飯食べて……お風呂入って……歯磨きして……)

ことり(……)



穂乃果「あっ、きたきた。おーいっ!」

ことり「……」

海未「遅刻してしまいますよ、ことりっ! 急いでくださいっ!」

ことり「……」



ことり「……えっ?」




穂乃果「おはよう、ことりちゃんっ!」

海未「おはようございます、ことりっ」
 
377: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 21:19:18.96 ID:dIy7IXgs.net
    
――――


スタスタ……


穂乃果「なんかこうやって、三人で学校に行くのも、久しぶりだねえ」

海未「ふふっ、そうですね」

ことり「……」

穂乃果「ことりちゃん?」

ことり「……二人とも。どうして、待っててくれたの?」

穂乃果「えっ? あぁー」

穂乃果「……ことりちゃんと久しぶりに、学校行きたいなー、って思って」

ことり「えっ……」

海未「私は少し、心配だったのですが……。穂乃果がどうしても、と言うので」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん……。私と一緒でも、いいの?」

穂乃果「うん……。これからはまた、前みたいに三人で、学校にいこっ?」

ことり「……どうして?」

穂乃果「えっ?」

ことり「だって私、今まで、穂乃果ちゃんに……。き、昨日だって……」

穂乃果「……」
  
379: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 21:26:11.36 ID:dIy7IXgs.net
  
穂乃果「……言ったでしょ? ことりちゃんは、なにも悪くないって」

ことり「……でも」

穂乃果「むしろ悪いのは、私の方だよ……」

ことり「えっ……?」

穂乃果「私、反省してるんだ……。何も知らないで、ことりちゃんのこと、避けてたこと……」

穂乃果「……私のせい、だったんでしょ? 全部……」

ことり「っ!?」

穂乃果「ことりちゃんが、おかしくなっちゃったのも……。私の、その……」

穂乃果「に、匂いが、原因なんでしょう……?」

海未「……穂乃果。無理しないでください」

穂乃果「ううん、ダメだよ……。私、ことりちゃんに、謝らなきゃ……」

ことり「あ、謝るって……」

穂乃果「ごめんなさい、ことりちゃん……。私のせいで……。ごめんね……」

ことり「……」

海未「穂乃果……」


ことり(なにこれ……?)

ことり(なんで穂乃果ちゃんが私に、謝ってるの……?)
   
380: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 21:32:23.81 ID:dIy7IXgs.net
  
ことり「う、海未ちゃんは……?」

海未「はい……?」

ことり「海未ちゃんは私のこと、怒ってるでしょう……?」

ことり「だって私、また海未ちゃんを騙して、裏切って……」

海未「……そうですね。私はまだあなたを、完全に信用しきれてはいませんが」

海未「でも……。穂乃果があなたを許したのなら、私もあなたを許そうと思います」

ことり「えっ……」

海未「少なくとも一緒にこうして、登校するぐらいには……あなたを信用するということです」

海未「……それと」

海未「私も、ごめんなさい。何度もビンタをしてしまって……痛かったでしょう?」

ことり「……」

ことり「うん、痛かった……」

穂乃果「あははっ、分かるよ。私も前にされたときは、痛かったなぁ」

海未「思い出させないでください……」


ことり(海未ちゃんまで、謝るなんて……)

ことり(……そういえばいま私、穂乃果ちゃんの隣、歩いてる)

ことり(いつもなら、海未ちゃんが間に入ってくるはずなのに……)

ことり(そこまで私のこと、信用してくれてるってこと……?)
  
381: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 21:38:20.39 ID:dIy7IXgs.net
   
穂乃果「とにかくこれで、私たち三人とも、仲直りだねっ!」

ことり「……仲直り?」

海未「そうですね」

穂乃果「ふふっ、海未ちゃん、ことりちゃぁんっ」ギュッ

ことり「わっ……」

海未「っとと……いきなりくっつかないでくださいよ」

穂乃果「へへー、いいじゃんっ。ね、ことりちゃん?」


ことり「……っ!!」

フワ……


ことり(穂乃果ちゃんの、匂いがする……)

ことり(あぁ……やっぱり、良い匂いだなぁ……)

ことり(頭が蕩けそうな……甘い、匂い……)


ことり「はぁ、はぁ……///」スンスン

穂乃果「……ことりちゃん?」

ことり「ほ、穂乃果、ちゃん……」

穂乃果「ど、どうしたの?」


ことり(あぁ……ダメだ。やっぱりこれには、逆らえないよ……)

ことり(ほんと私って、ダメだなぁ。せっかく二人に、許してもらえたのに……)

ことり(どこまでいっても、私は……『ほのキチ』、なんだ……)
 
383: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 21:57:54.48 ID:dIy7IXgs.net
   
――――

教室


女子A「ごめんなさいっ! 南さんっ!」

ことり「……えっ?」

女子B「この前は酷いことして、本当にごめんなさい……っ!」

ことり「ど、どうしたの、急に……」

女子A「南さん……。あの時練習着を盗もうとしてたんじゃなくて、穂乃果ちゃんに届けようとしてたんでしょ?」

ことり「え、あっ……」

女子B「園田さんから、聞いたよ。ごめんね、私たちの、勘違いだったんだよね……」

女子A「な、なのに私、南さんのこと、叩いちゃった……。最低なのは、私の方だよね……」

ことり「ううん、そんな……気にしないで?」

女子B「で、でも……」

女子A「そうだっ! 南さん、私のこと引っ叩いていいよっ!?」

ことり「ええっ!?」

女子B「あ、わ、私もお願いっ! 思いっきりやっていいからっ!」

ことり「ええー……」


ことり(……)

ことり(また、謝られちゃった……)
   
384: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 21:59:32.09 ID:dIy7IXgs.net
   
――――

放課後……



凛「ことりちゃん……」

ことり「あっ……。どうしたの、凛ちゃん?」

凛「その、この前のこと、ことりちゃんに謝りたくて……」

ことり「……この前って、屋上でのこと?」

凛「うん……。凛、ことりちゃんに、酷いこと言っちゃったよね……」

凛「ごめんね……。ことりちゃんの気持ちも知らないで、凛は……」

ことり「い、いいよ、そんな……」

凛「ことりちゃんは、変態なんかじゃない……。ただ穂乃果ちゃんのことが、大好きなだけなんだよね?」

ことり「う、うん……」

凛「そ、その……。汗を舐めたくなる気持ち、凛も、分かるよ。うんっ」

ことり「えっ!?」

凛「あ、ご、ごめんっ。今のナシっ! え、えっと、えっと……」

凛「……こ、ことりちゃんのそういう積極的なところ、凛も見習ってみるよっ!」

ことり「……それって、花陽ちゃんの汗を舐め――」

凛「違うってばぁっ! うぅ~///」

ことり「あはは、冗談だよ。こっちこそごめんね、あの時は喧嘩腰になっちゃって」

凛「う、ううんっ。気にしてないにゃっ!」


ことり(また謝られた……)

ことり(……)

ことり(そっか……)

ことり(凛ちゃんは元に、戻れたんだね……)
   
385: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 22:06:09.88 ID:dIy7IXgs.net
   
――――



真姫「そう……。結局あなたは、元に戻れなかったのね」

ことり「うん……」

希「ことりちゃん……」

ことり「……真姫ちゃんは、どうやって元に戻ったの?」

真姫「わ、私は……」チラッ

希「あっ、ウチの匂いを嗅いでもらって、それで……」

ことり「……そっか」

希「こ、ことりちゃんも、きっと戻れるよっ! 例えばほら、海未ちゃんの匂いなら……」

ことり「……」

真姫「……ことり。そもそもあなた、元に戻りたいって言う気持ちはあるの?」

ことり「……えっ?」

真姫「元に戻れる方法は、まだちゃんと分かってるわけじゃないけど……。きっとなにより大事なのは、本人の『意志』なんだと思う」

真姫「少なくとも、私はあの時……『このままじゃいけない』って、『元に戻りたい』って、強く思ったの。そうしたら……戻れたわ」

ことり(元に戻りたいっていう、意志……)

ことり「私、は……」

希「ことりちゃんが戻りたいって言うなら、ウチ、何でも協力するよ?」

真姫「……前にも言ったけど、困ってることがあるなら、なんでも相談しなさいよね」

ことり「……ありがとう」

真姫「それと……ごめん」

ことり「えっ?」

真姫「あんたに罪を被せたこと……。謝るわ。本当に、ごめんなさい」

ことり「……」


ことり(また……)
  
386: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 22:09:00.02 ID:dIy7IXgs.net
    
――――



にこ「あんた、今日はあんまり穂乃果にセクハラしないのね」

ことり「……にこちゃん、絵里ちゃん」

絵里「元に戻ったわけじゃ……ない、のよね?」

ことり「うん……。正直今すぐにでも穂乃果ちゃんに、飛びかかりたいよ……」

にこ「あぁ、なんも変わってない……」

絵里「ま、まあまあ。我慢できてるだけ、進歩じゃない?」

ことり「我慢……」

ことり(そういえば、なんで私、我慢してるんだろう……?)

にこ「……ま、あんたもあんたなりに、変わろうと努力してるってことよね」

絵里「ごめんなさい、ことり。あなたを今まで、邪険にして」

ことり「……」

絵里「希の話を聞いて、ハッとしたわ……。もちろん希はやり過ぎだったけど、仲間を受け入れられなかった私たちにも、責任の一端はあると思うから」

にこ「そう、ね……。あんただって、悪意があってやってるわけじゃないもんね……」

にこ「その……ごめん。あんたの気持ち、考えてあげられなくて……」

ことり「……そんな、二人が謝ることないよ」

にこ「……私の気が済まないのよ」

絵里「ことり。元に戻っても、戻らなくても……あなたは私たちの、大事な仲間よ」

にこ「ただし、また穂乃果に変なことしたら、その時はおしおきだからねっ!?」

ことり「……うん、分かった」



ことり(……)
   
387: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 22:12:17.45 ID:dIy7IXgs.net
   
――――



ことり「ユニットごとの練習だけど……穂乃果ちゃんは?」

花陽「あ、タオル持ってくるって……」

ことり「そっか。じゃ、二人で練習始めてよっか」

花陽「あっ……あの、ことりちゃんっ」

ことり「え、なぁに?」

花陽「その……。ごめんね、今まで」

ことり「……なにが?」

花陽「私、実は最近ずっと、ことりちゃんのこと、怖いって思ってて……」

花陽「おかしいよね、友達なのに……。ごめんなさいっ、本当に」

ことり「あはは、そんなこといいよ、気にしないで」

花陽「……怖いなんて、私の勘違いでした。ことりちゃんはやっぱり、優しいね……っ!」

ことり「……そう、かな。でも私、今までみんなに色々迷惑かけちゃったし……」

花陽「た、確かに色々、大変なこともあったけど……でもそんなトラブルを乗り越えたことで、私たちはもっと強くなれたと思うの」

ことり「えっ……?」

花陽「みんなの絆も、より深まったと思うし……それに、えっと……」

花陽「り、凛ちゃんとも、もっと仲良くなれた気がするし……//」

ことり「……あはは」

花陽「な、なのでっ! 私は逆に良かったと、思いますっ!」

ことり「そっか……」

花陽「うん……っ! それに大変なのは昨日までで終わりっ! 今日からはまた、いつもの楽しい日常が続いていくんだからっ!」

花陽「って、練習は大変だけどね……。えへへ……」

ことり「……」


ことり(昨日までで終わり……。今日からはまた、いつもの楽しい日常が……)
   
389: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 22:39:27.00 ID:dIy7IXgs.net
  
――――


穂乃果「ふぅー、休憩にしよっか」

花陽「私、飲み物買ってくるねっ! 二人は、何がいい?」

穂乃果「スポーツドリンクで、お願いっ」

ことり「私は、お水でいいよー」

花陽「分かった、行ってくるっ!」

  

ソヨソヨ


穂乃果「はぁ……」

ことり(穂乃果ちゃん、汗ビッショリだ……)

ことり(どうしよう、舐めたい……。ああ、ペロペロしたいよぉ……っ!)

穂乃果「ここら辺、風が気持ちいいよぉ。ことりちゃん」

ことり「そ、そう?」

穂乃果「うん……ほら、こっちこっち」

ことり「えっ……じゃ、じゃあ、私も……」

ことり(って、ちょ、ちょっと待って私、こんなに近づいたら……)

ことり(ふわぁあぁ、穂乃果ちゃんの匂いが、においがぁ……///)スンスン


ソヨソヨ スンスン


穂乃果「ふふっ、気持ちいいねえ……」

ことり「き、気持ちいい~……///」
  
391: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 22:46:08.14 ID:dIy7IXgs.net
    
穂乃果「……ことりちゃんとこうして二人で話すのも、久しぶりだね」

ことり「ふあぁぁ~/// えっ、何言ってるの? 昨日だって二人で話したじゃんっ」

穂乃果「えっ? あ、そうじゃなくって……。みんながいる屋上で、普通に話すのがさ」

ことり「あー、そういうこと? 確かに……」

ことり「……」

ことり(そうだ……)

ことり(そういえばどうしてみんな、私と穂乃果ちゃんを、二人きりにさせてるの?)

ことり(いつもならもっと警戒してるのに……。どうして……)

ことり(……)


ことり(……私のことを、信じてる、から?)

ことり(友達、だから……? 仲間だから……。もう私が穂乃果ちゃんになにもしないって、信じてるから?)

ことり(今日からはまた楽しい日常が戻ってくるって、信じてるから……)


穂乃果「……ことりちゃん。あのね」

ことり「……?」

穂乃果「私……。昨日、海未ちゃんのことが好きって、言ったけど……」

穂乃果「す、好きって言うのは、その……あの」

ことり「分かってる。穂乃果ちゃんは海未ちゃんと、恋人同士になりたいんでしょ?」

穂乃果「っ!! あ、えっと、うぅ……///」

ことり「……ふふっ。それで、それがどうかしたの?」

穂乃果「あっ……あのね、その、昨日はちゃんと言えなかったけど……」

穂乃果「私、ことりちゃんのことも、大好きだよ」

ことり「……」

穂乃果「ことりちゃんは、私の一番の親友だから……そう思ってるから。だから――」


穂乃果「これからもよろしくね、ことりちゃんっ」
   
392: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 22:50:42.24 ID:dIy7IXgs.net
   
スクッ


穂乃果「……ことりちゃん?」

ことり「……やめてよ」

穂乃果「えっ……」

ことり「そんな顔で……そんな匂いで、そんなこと言わないでよ……」

ことり「もう、無理だよ……。我慢、できないよ……」

穂乃果「……」

ことり「私のこと、もう分かってるでしょう? なのにどうしてそんなこと、するの……?」

ことり「も、もう、ダメ……。は、早く、逃げるなら、今のうちだよ」

穂乃果「ことりちゃん……」

ことり「はぁ、はぁ、あっ、あぁ、なにしてるの、早く……」


ことり(あぁ、だめ……。嗅ぎたい。嗅ぎたい、かぎたい、かぎたい……)

ことり(ぐっちゃぐちゃになるまで穂乃果ちゃんを、嗅ぎ貪りたい……っ!)


ことり「穂乃果ちゃん……っ!!」ガシッ

穂乃果「……っ!」

ことり「いいんだねっ!? 逃げないってことは、『いい』ってことだよねっ!?」

ことり「穂乃果ちゃんっ! 穂乃果ちゃん、穂乃果ちゃん、ほのかちゃん――」

穂乃果「……ことりちゃん。私もう、怖くないよ」

ことり「穂乃果ちゃんっ!!」

穂乃果「……」ニコッ

ことり「……っ!」



ことり(穂乃果ちゃんの肩、震えてる……)
  
393: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 22:56:15.62 ID:dIy7IXgs.net
  
ことり「穂乃果、ちゃん……?」

穂乃果「……えへへ」


ことり(そっか……。穂乃果ちゃんも私のことを『信じてる』から、抵抗しないんだ……)

ことり(私のことを、『親友』だと思ってくれてるから……。私と『仲直り』できたって、信じてるから……)


ことり「……っ!!」ダッ

穂乃果「あっ、ことりちゃん……っ!」


ガチャッ

バタンッ!


ことり「はぁ、はぁ、はぁっ!」タッタッタッ

ことり「あ、あぁ、あぁ……」


ことり(どうして……?)

ことり(どうしてみんな、私なんかのことを信じてくれるの……?)

ことり(どうしてみんな、私なんかに優しくしてくれるの……?)

ことり(……どうしてみんな、私なんかに謝るの?)



ことり(謝らなきゃいけないのは、私の方なのに……っ!)



ことり「あぁああぁああぁあっ!!」
   
395: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 22:58:50.03 ID:dIy7IXgs.net
  
――――――

部室


ガラッ


ことり「うわあぁああぁあっ!!」


ガシッ

ことり(穂乃果ちゃんの、バッグ……っ!!)

バッ 

ドサドサ

ことり(穂乃果ちゃんの、制服、シャツ……っ!)

ガッシィ

ことり「はぁ、はぁ、あぁ、あぁああぁっ!」ガバッ

ことり「んん、むぐっ、んんん……っ!」スゥゥゥ

ことり「んんっ! ぷは、んん、んんんっ!!」スゥスゥ

ことり「ぷはぁっ! う、うぅ、んんん……っ!」ギュウゥゥ

ことり「あぁ、あぁ、んん、むぐっ、うぅぅ……っ!」

ことり「はぁ、はぁ……っ! うっ、うぅ~……」ガクッ

ことり「うっ、うっ、うあぁあ……」

ことり「うっ、ひぐっ、あぁ、あぁ、あああぁ……」

ことり「うあぁああぁあん……っ! あああぁあぁん……っ!」
  
396: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 23:07:05.40 ID:dIy7IXgs.net
  
ガラッ


海未「……何をしてるんですか、ことり」

ことり「うっ、えぅ、うみ、ちゃん……?」

海未「あなたが急に屋上を飛び出していったので、追って来てみれば……。それは、穂乃果の服ですか?」

ことり「うぅ、うみちゃん、わたし、わたしぃ……っ!」

海未「……とりあえず、これで涙を拭いてください」スッ

ことり「ふっ、うっ、うぅ……」ゴシゴシ

海未「立てますか?」グイッ

ことり「あ、ありがと、う……」スクッ

ことり「うっ、うぅ……」

海未「……どうしたのですか、一体」

ことり「海未ちゃん……私もう、ほのキチじゃいられないかも……」

海未「はい……?」

ことり「おかしいな……。前はこんなんじゃなかったのに。周りのことなんか気にしないで、堂々と穂乃果ちゃんの匂いを嗅げたのに」

ことり「みんなに避けられても、海未ちゃんに叩かれても、穂乃果ちゃんに怖がられても、なによりもまず、自分の欲望を優先できたのに」

ことり「今は……それが、できなくなっちゃった」

海未「……」



ことり「私も……。そろそろ元に戻らなきゃいけない時が、来たのかな……」

  
397: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 23:11:48.95 ID:dIy7IXgs.net
  
海未「ことり、あなた……」

ことり「はぁ……」

ことり「……なんかもう、どうでもよくなっちゃったな」

ことり「もう……元のことりに戻っちゃおうかな」

海未「……」

ことり「私さえ戻れば……。今度こそμ'sは元通りになって、またいつもの日々が戻ってくるんだし」

ことり「それにスイッチももう、雪穂ちゃんにとられちゃったし……。私一人が頑張ったところでもう、取り返せる自信もないし」

ことり「頭も痛いし……もう、いいや」

ことり「さっさと元に戻って……。みんなや穂乃果ちゃんに、謝ろう……」

海未「……随分、変わりましたね。ことり」

ことり「変わったのはみんなの方だよ。あんなに優しくされたんじゃ、やり辛くて仕方ないや……」

海未「一連の事件を通して、みんなのほのキチに対する考え方が、変わったのでしょう。きっと……」

ことり「そうみたいだね……。はぁ、なんだか、こんな気持ちになる日が来るなんて、思ってもみなかったな……」

ことり「……ねえ、海未ちゃん」

海未「なんですか?」

ことり「匂い、嗅がせて? 海未ちゃんの匂いだったら私、元に戻れるかもしれないから……」

海未「……」

海未「……分かりました」

ことり「ありがとう……」

海未「ですがその前に一つ、お聞きしたいのですが」

ことり「うん? なぁに……?」

海未「……ことり」

  


 
海未「『レベル5』を嗅ぎたいとは、思いませんか?」
   
400: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 23:20:00.89 ID:dIy7IXgs.net
  
ことり「……」

ことり「……えっ?」

海未「私と一緒に、スイッチを使って、ほのスメルレベル5を嗅ぎませんか?」

海未「未知の世界へ……『新世界』へ、行ってみたいとは思いませんか」

ことり「えっ……海未、ちゃん……?」

海未「……ふふっ」

ことり「ま、まさか……海未ちゃん……」

海未「ええ、そうです。私もあなたと同じ、『ほのキチ』になったんです」

ことり「っ!!」

海未「ようやく私も『知る』ことができました。あなたの言った通りでしたよ。レベル4は、意識が飛んでしまうくらい刺激的でした……」

ことり「……い、いつ? いつ、レベル4なんて……」

海未「昨日です。あなたを追って、穂乃果の部屋に辿り着いた私は……扉を開けた瞬間に、レベル4を体験することになったんです」

ことり「……それって」

ことり(そうだ……。思い出した……)

ことり(確かにあの時、私は……雪穂ちゃんを倒すために、スイッチを押して、レベル4を部屋に充満させた……)

ことり(結局雪穂ちゃんには効かなかったし、私は耐えられずに気絶しちゃったけど……。あの後すぐ部屋に、海未ちゃんも来たんだ……)

ことり(雪穂ちゃんはスイッチの仕組みを知らなくて、レベルを下げなかった……。だから海未ちゃんは、レベル4を嗅いじゃったんだ……)

ことり(……あれ? でも……)

ことり「私が起きた時には海未ちゃん、先にもう起きてた、よね?」

海未「そうですね」

ことり「……えっと、海未ちゃんは、どれくらいで起きたの?」

海未「はぁ、どうでしょう……」

海未「……2、3分くらいじゃないですか?」

ことり「……」

ことり(2、3分……っ!?)
  
402: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 23:28:07.25 ID:dIy7IXgs.net
   
ことり「ちょ、ちょっと待って……私、どれくらい眠ってたっけ……」

海未「3時間ほどでしょうか。穂乃果と雪穂は心配そうにしていたので、彼女たちには『ただ眠っているだけだ』と説明しておきました」


ことり(……前に私や凛ちゃん、真姫ちゃんがレベル4を嗅いで倒れた時は、病院に運ばれて、半日ぐらいは眠ってたのに)

ことり(そんな短い時間で海未ちゃんは、ほのキチに変わったっていうの……?)

ことり(そ、それに……)


海未「スイッチのレベルも、私が下げておきました。あの場では、とりあえずことりを起こすことが、先決だったので」

海未「スイッチのことについては……雪穂に説明を求められたので、ある程度は話しました。穂乃果は既にその危険性に、気づき始めていたようですが……」

海未「……もちろん、『レベル4を嗅ぐとほのキチに至る』という点は伏せました。それにすぐ起きたこともあって、二人は私のことは特に心配していなかったようです」

海未「なので、私がほのキチになったことは……あなた以外、誰も知りません」


ことり(朝会った時も、教室で話してた時も、練習中も……今日一日中ずっと、海未ちゃんは『いつもの海未ちゃん』だった……)

ことり(今この瞬間に、いきなりほのキチに変わったんじゃないかって思うくらい、今日の海未ちゃんは、全然ほのキチらしくなかった……)

ことり(こんなの、誰も気づくわけない……。ここまでほのキチだってことを、隠し通せるものなの……?)

ことり(おかしい……。海未ちゃんは私たちとは、何か違う……)

ことり(まるで今の海未ちゃんは、希ちゃんがなれなかった、『不完全なほのキチ』――)


海未「スイッチの方は、事情があって今は雪穂が持っています」

海未「まあ、でも……結局最後には私の手に、堕ちることになるのですが」


ことり(――海未ちゃんは、ほのキチなのに、理性を保って、感情をコントロールして、社会に溶け込める能力があるんだ……)

ことり(それは私たちの誰にも、できなかったこと……)

ことり(……『不完全』なんかじゃない。海未ちゃんは――)


ことり(『完全なほのキチ』に、なったんだ……っ!)
    
404: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 23:33:20.68 ID:dIy7IXgs.net
   
ことり「す、すごい……」

海未「……」

ことり「すごいよ、海未ちゃん……。こんな穏やかなほのキチ、見たことない……」

ことり「や、やっぱり海未ちゃんには、素質があったんだ……。私ずっと、信じてたんだ……っ!」

ことり「だって海未ちゃんは、私と同じ……ううん、私以上の、変態だもの……っ!」

海未「私は変態ではありません」

ことり「……」

海未「それで、どうするんです? このまま元に戻るのか、それとも……」

海未「私と共に、『新世界』へと旅立つのか……」

ことり「……そんなの、決まってるよ」




ことり「私、レベル5を嗅ぎたい……」

ことり「もう全部、どうでもいい……。私はただ、欲望のままに、穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぎ尽くしたいっ!」

ことり「だから私を連れてって、海未ちゃん……新しい世界へっ!」

海未「……良い顔になりましたね、ことり。それでこそ、ほのキチです」

海未「最高の体験をしましょう、一緒に……」

ことり「うん……っ!」


ことり(いつもの楽しい日常なんて、もういらない……)

ことり(海未ちゃんがくれる、刺激的な『非日常』を……っ! 私は全力で楽しむんだっ!)
   
429: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 21:10:01.19 ID:7/KAkGZQ.net
   
――――


海未「では、計画の流れを説明します」

海未「この後練習終わりに私が穂乃果に、『穂乃果の部屋に久しぶりに三人で集まらないか』と、提案します」

海未「穂乃果の家についたら、私が雪穂から、スイッチを返してもらいます。私の言葉なら、彼女は間違いなく信用しますから」

ことり「分かった……。あれ、でもどうして、昨日のうちに返してもらわなかったの?」

海未「私がスイッチを持っていることが知れれば、真姫に返さなくてはいけなくなるでしょう?」

ことり「うん」

海未「ですから昨日私は自分の携帯を使って、雪穂に、真姫への電話をかけさせました」

ことり「電話……? 真姫ちゃんに?」

海未「雪穂には、こう説明しました。『真姫ならスイッチを処分できますが、今の彼女はほのキチになってしまい信用できないので、あなたにスイッチを預かってもらいたい』と」

海未「雪穂もそれで納得しました。そして電話で、真姫にその旨を伝えさせました」

海未「実際にほのキチになっていたのは事実なのですから、真姫は負い目を感じたのでしょう。彼女は電話越しにそれを、承諾しました」

海未「これでしばらくの間、真姫や他のみんなは、スイッチは雪穂が持っていると思い込む……」

海未「あとは普通に雪穂からスイッチを返してもらえばいい……。昨日のうちでは流石に不自然なので、今日、です」

海未「理由は、『今日学校で確認したら、真姫が元に戻っていた。もう信用できるから、彼女に返したい』、とでも言っておけば良いでしょう」

ことり「なるほどー。うん、確かに雪穂ちゃんなら信じると思うよ。雪穂ちゃん、海未ちゃんのことはすごく信頼してるみたいだし……」

ことり「でも、どうしてそこまでするの? ことりならそんな回りくどいことせずに、昨日のうちに返してもらっちゃうけどなぁ」

海未「私はただ、平穏に暮らしたいだけなんです。前のあなたみたいにみんなに追い回されたりだとかは、御免です」

ことり「平穏に……?」

海未「ええ。ほのキチだとバレることもなく、のんびりと……。普段通りの日常を、みんなと過ごしながら……」

海未「たまに刺激を求めて、レベル5を嗅ぐ。そんな生活を、私は送りたいんです」

ことり「……あはは、やっぱりすごいや。海未ちゃんは」

ことり(……なんかことりが思ってた方向とは少し違うけど、ま、いっか)

ことり(海未ちゃんについていれば、レベル5を嗅げるのは確かなんだし……)
  
430: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 21:12:30.57 ID:7/KAkGZQ.net
   
海未「それで、私が雪穂のところへ行っている間ですが……」

ことり「ことりが穂乃果ちゃんを縛っておけばいいんだねっ!?」

海未「違います」

ことり「ええーっ? じゃあ睡眠薬入りマカロンで、眠らせたりとかっ!?」

海未「違います。あなたの性癖は野蛮すぎます。いいですか、ことり」

海未「あなたは、何もしなくて結構です」

ことり「えっ……」

海未「穂乃果と談笑でもして、私がスイッチを持ち帰るのを待っていてください」

ことり「えぇー。でもそれじゃ穂乃果ちゃんに、抵抗されちゃうかもしれないよ?」

海未「いきなりやり過ぎるからいけないのです。彼女を怖がらせるから、抵抗されるのです」

海未「優しく、丁寧に……。少しずつ、快感を与えていくのです。そうすればきっと、彼女も私たちを受け入れてくれるはずです」

ことり「そっか。私は我慢できなくて、いきなり激しくし過ぎちゃったから……」

海未「そういうことです。とにかく、私のやり方を見ていてください。必ず穂乃果を、『こちら側』に引き込んでみせますから」

ことり「……ねえ、海未ちゃん」

海未「はい?」

ことり「どうして私を誘ってくれたの? 別に私がいなくても、海未ちゃんの目的は果たせるはずだよね?」

海未「何を言ってるのですか。先に誘ってくれたのは、あなたの方でしょう?」

ことり「へっ……?」


『……ことりっ!!』

『怒らないでよぉ。じゃあさ、貸すのが嫌だったら、一緒に使おう?』


海未「『二人でスイッチを使おう』、とね……」

ことり「……あっ」

海未「ふっ、それではそろそろ、屋上に戻りましょうか」

ことり「海未ちゃん……」

海未「ことり。私たち幼馴染の関係は今夜、より深まることになるでしょう。楽しみですね……」

ことり「……あはっ。そうだね」

ことり(これがほのキチになった、海未ちゃんの考え方……)

ことり(無理やり穂乃果ちゃんを快楽に目覚めさせるんじゃなくて……。ゆっくり時間をかけて、優しく堕落させていく……)

ことり(普通のほのキチじゃ、絶対できないやり方だなぁ……)
431: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 21:15:46.34 ID:7/KAkGZQ.net
    
――――――

屋上



穂乃果「あ、海未ちゃん、ことりちゃん。遅かったね」

ことり「ごめんね、いきなり飛び出して……。ちょっと、気分悪くなっちゃって」

海未「ことりはしばらく隅っこのほうで、休憩していてください……」

海未「……っと、穂乃果」

穂乃果「うん?」

海未「今日もご両親は、旅行から帰らないんですよね?」

穂乃果「うん。明日までは、雪穂と二人きりだよ」

海未「では練習が終わったら、ことりと二人で、あなたの部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか」

穂乃果「えっ?」

海未「ほら、私たちせっかくこうして、仲直りできたんですし……」

穂乃果「あっ、そっかっ! じゃあ幼馴染の仲直りの記念として、今夜はパーティだねっ!」

海未「いいですね、パーティ。今日は夜まで、遊びましょう」

穂乃果「うんっ!」

ことり(まあ確かにある意味、今夜はパーティだけど……。能天気だなぁ、穂乃果ちゃん。さっき私に襲われかけた、ばかりなのに)

ことり(可愛いなぁ、可愛いなぁ……あぁー)

ことり(なーんか海未ちゃんのおかげで、やる気が出てきちゃったなぁ……。よし、決めたっ)

ことり(海未ちゃんが雪穂ちゃんのところに行ってる間に、一足先に穂乃果ちゃんを襲っちゃおう)

ことり(海未ちゃんには、何もするなって言われてるけど……。私は海未ちゃんみたいに我慢なんてできないし、仕方ないよねっ)


穂乃果「楽しみだねーっ」

ことり「ふふっ、そうだね……」

海未「ええ、楽しみです……」
  
434: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 21:41:20.62 ID:7/KAkGZQ.net
  
――――――


穂乃果の部屋



穂乃果「ふぅ、今日も疲れたぁー」バフッ

ことり「ご飯、どうしよっか?」

海未「作るなら、雪穂も入れて四人分の食材を、買に行かなくてはなりませんね」

穂乃果「私もう、外出たくないー。そうだ、出前とろうよ出前っ!」

ことり「いいかもっ。せっかくのパーティだし、豪華にしよっか」

穂乃果「そうしようっ!」

海未「では出前は、後で頼むとして……。パーティと言ったらまず、これですよね」スッ

穂乃果「えっ……と、トランプ?」

ことり「海未ちゃん、まさか……」

海未「今度は負けませんよ、二人とも……っ!」ゴゴゴ

穂乃果「そ、それこそ後で、いいんじゃ……。私、お腹すいたよぉ」

ことり「あ、あはは……私も、かな」

海未「……仕方ありませんね。ではこれは食後の楽しみにとっておきましょう」

穂乃果「それより、なに頼むっ!? 私、お寿司が良いなぁー」

海未「お寿司ですか……ことりは何か、希望は?」

ことり「私は、みんなが食べたいものでいいよぉ」

海未「私も特に希望はありませんが……雪穂にも聞いてきますね」

穂乃果「うんっ、お願い」

海未「……それでは」


バタン


ことり「……」チラッ

穂乃果「お寿司、お寿司ー♪」
 
435: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 21:42:31.64 ID:7/KAkGZQ.net
   
――――

コンコン


「……? どうぞー」


ガチャッ


雪穂「あっ……」

海未「こんにちは、雪穂。お邪魔しています」ニコッ

雪穂「いらっしゃい、海未ちゃん。今日は、どうしたの?」

海未「今日は久しぶりに穂乃果とことり、三人で、遊ぼうかと思いまして」

雪穂「えっ……。その、ことりちゃんも……?」

海未「はい。今は、穂乃果の部屋にいます」

雪穂「ええっ……。お、お姉ちゃんと二人きりにさせておいても、大丈夫なの?」

海未「心配し過ぎですよ、雪穂。ことりはもう、大丈夫です」

雪穂「そ、そうなの……?」

海未「ええ。だから安心してください。私たち幼馴染は……ようやく、仲直りできたんです」

雪穂「そっか……。海未ちゃんがそう言うなら、大丈夫か……」

海未「……」ニコッ

雪穂「えっと、それで……」

海未「今夜の夕食は、出前をとろうという話になったのですが……。雪穂、なにか希望はありますか?」

雪穂「出前か……どうせお姉ちゃんが、我儘言ったんでしょ?」

海未「ええ、まあ……」

雪穂「私は何でもいいや。そっちに任せるよ」

海未「分かりました。では……。あっ、そうそう」

雪穂「えっ?」

海未「あのスイッチ、どうしました?」
  
436: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 21:52:03.18 ID:7/KAkGZQ.net
  
雪穂「……」

雪穂「あ、ああ……。スイッチ?」

海未「はい。昨日あなたに預けましたよね?」

雪穂「えっと、しまってあるよ。一応、鍵もかけてあるけど」

海未「厳重に保管して頂いて、ありがたいのですが……。今そのスイッチ、出せますか?」

雪穂「……どうして?」

海未「返して頂きたいのです。スイッチの処分の目途が、立ったので」

雪穂「ほ、ほんとに?」

海未「はい。今日学校で、真姫と会ったのですが……。彼女、正常に戻っていたんです」

雪穂「えっと、じゃあ……真姫さんはもう、信用できるんだね?」

海未「私が保証します」

雪穂「分かった。じゃあ今、出すね。ちょっと待ってて……」ゴソゴソ

海未「……」

雪穂「……」ガチャッ

海未「……取り出せました?」

雪穂「うん……。あの、海未ちゃん」

海未「なんです?」

雪穂「その……本当に、ありがとう。お姉ちゃんのこと……」

海未「……はい?」

雪穂「聞いたよ。ずっとお姉ちゃんのこと、守ってくれてたんだよね……?」

雪穂「その、なんだっけ……。ほのキチ、っていうのから」

海未「……ええ、まあ」
437: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 21:55:15.84 ID:7/KAkGZQ.net
  
雪穂「私、何も知らなくて……何もできなかった。本当に海未ちゃんがいてくれて、よかったよ」

海未「いいですよ、そんなの……。私だって穂乃果のことが、大事なんですから」

雪穂「……それに比べてことりちゃんときたら、最悪だよ。お姉ちゃんに変なことばっかりしてたんでしょう?」

海未「……」

雪穂「私、あの人のこと、もう……信用できない」

海未「……そんなこと言わないでください。ことりだって、反省してるみたいですし」

海未「それに、そのスイッチさえ処分できれば……。もう同じことは、二度と起きないんですから」

雪穂「……そう、だよね」

海未「ですから、雪穂……」

雪穂「『レベル5』って、言ってた気がするの」

海未「……なんです?」

雪穂「ことりちゃん、昨日、眠る前に……。『レベル5を嗅いでみたかった』って、言ってた気がするんだ」

雪穂「私の聞き間違いじゃ、なければだけど……」

海未「それが、どうかしましたか?」

雪穂「このスイッチは、お姉ちゃんの匂いを強くするスイッチなんだよね……?」

海未「そうですが?」

雪穂「レベルっていうのが、匂いの強さのことを表してるんだとして……。『レベル5を嗅いでみたかった』っていうのはつまり、ことりちゃんは『レベル4までしか嗅いだことがない』ってことだよね」

雪穂「つまり、ことりちゃんは……。レベル4までの匂いで、あんな風に変わっちゃったってことになる、よね?」

海未「……それが?」

雪穂「この液晶画面の数字が、そのレベルを示しているんだとしたら……。今は『0』に、なってるけど……」

雪穂「……昨日、海未ちゃんが部屋に入った後、急に倒れちゃったでしょ? すぐに起きたけど……」

雪穂「確かあの時、数字は……『4』になってた、気がするの」

海未「……」
439: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 22:00:34.56 ID:7/KAkGZQ.net
雪穂「大丈夫、だよね……?」

海未「……当たり前じゃないですか」

雪穂「信用しても、いいんだよね……? 海未ちゃんを……」

海未「安心してください、私はほのキチになどなっていません。私は穂乃果の幼馴染ゆえ、ほのスメルには耐性がありますから」

雪穂「同じ幼馴染のことりちゃんよりも……?」

海未「同じ幼馴染のことりよりもです。なんなら穂乃果に確認してみてください。今日一日の、私の行動を……」

海未「私は決して穂乃果に、変なことをしたりはしていませんから」

雪穂「そう、だよね……。海未ちゃんは、私の代わりにお姉ちゃんを、守ってくれてたんだもんね……」

海未「ええ……」

雪穂「それにどう見たって、今の海未ちゃんは、いつもの海未ちゃんだし……」

海未「ええ……っ!」

雪穂「だから信用するべきなのは、ことりちゃんじゃなくて、海未ちゃん……」コロコロ

海未「その通りです……っ! ですから、雪穂……っ!」

海未「早くその、スイッチをっ!」

雪穂「……」

雪穂「……ごめんなさい」

海未「……はい?」

雪穂「もう少し、私が預かっててもいいかな。このスイッチ……」

海未「……」



海未「……残念です、雪穂」
440: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 22:07:56.91 ID:7/KAkGZQ.net
  
ガシッ


雪穂「っ!?」

海未「力ずくで奪うことは、したくなかったんですがね……」

雪穂「……は、ははっ」

雪穂「やっぱ、そうだったんじゃん……。この、嘘つき……っ!」

海未「……っ!」ググッ


ドタァン!


雪穂「うっ、痛……っ!」

ガバッ

海未「……あまり年上をからかうものではありませんよ、雪穂」

雪穂「っ! ふ、ふふっ……。結局海未ちゃんも、そうなんだ。残念は、こっちの台詞だよ……」

雪穂「海未ちゃんには本当に、感謝していたのに……っ! まさかあなたまで、変態だったなんてっ!」

海未「私は変態ではありませんっ!」ググッ

雪穂「変態でしょうがっ! こんなスイッチを、欲しがるなんて……っ!」

海未「スイッチを、渡しなさい……っ!」

雪穂「嫌だ……っ!」

海未「あなたの力で、私に勝てると思ってるんですかっ!? ケガをする前に、渡したほうが身のためですよっ!」

雪穂「嫌だっ! 絶対に、渡さない……っ! ケガしたって、渡すもんかっ!」

雪穂「お姉ちゃんは、私が守るんだ……っ! 例えあなたが敵になっても、私だけはお姉ちゃんを、守り続けるんだっ!」

雪穂「お姉ちゃんを、泣かせる奴は……私が絶対に、許さないんだからぁっ!!」

海未「……っ!」
  
442: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 22:15:00.11 ID:7/KAkGZQ.net
  
雪穂「わあぁあぁっ!」ジタバタ

海未「くっ……暴れないでくださいっ!」

雪穂「力で勝てるなんて、思ってないよ……っ! でもこのスイッチさえ離さなければ、私の勝ちだっ!」

海未「……」

海未「……ならば仕方ありませんね」ガシィ

雪穂「っ!? な、なに……?」

海未「……」ギュウゥ

雪穂(っ! なんでこんな、体をくっつけて……。そんなことしても、スイッチは……っ!)

海未「今からあなたに、とてもハレンチなことをします」ボソッ

雪穂「っ!?」ビクッ

海未「それが嫌なら、おとなしくスイッチを渡してください。5秒待ちます」

海未「『5』……」

雪穂「は、なに、それ……? そんなの、脅しになってないよっ!」

海未「『4』……」

雪穂「私、知ってるんだからねっ! あなたたちほのキチは、お姉ちゃんにしか興味ないんでしょうっ!?」

海未「『3』……」

雪穂「お姉ちゃんから聞いてるんだからっ! 凛さんがほのキチになった時に、あんなに仲良しだった花陽さんに、全く興味を示さなくなったってっ!」

海未「『2』……」

雪穂「そうだ……。そのことも気にしてたんだ、お姉ちゃんはっ! 『私のせいだ』って、何度も、何度も……っ!」

雪穂「お姉ちゃんは、なにも悪くないのにっ! 悪いのは全部、あんたたちほのキチなのにっ!!」

海未「『1』……」

雪穂「やれるものならやってみろ、この変態っ! 妹の私なんかで、コーフンできるんならねっ!!」 


ペロッ……


雪穂「――っ!!?」
  
446: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 22:27:26.09 ID:7/KAkGZQ.net
 
海未「……ふふっ」

雪穂「あっ、えっ……? 今、なにを……」

海未「汗を舐められた経験は初めてですか、雪穂?」

雪穂「えっ……」

ペロッペロッ

雪穂「ひゃあっ!? な、なにをして……」

海未「ふふっ……」ガバッ

雪穂「っ!」

雪穂(ま、また、くっついて……)

海未「……んん」

海未「んんん~……っ!!」スゥゥゥ

雪穂「あ……っ!?」

雪穂(なに……? なにしてんの……?)

海未「んんん、んんっ! ふぐっ、うむっ」スゥスゥ

雪穂「あっ、あぁ、あっ……?」

海未「んんんんっ! んんん、むぐっ、うぅぅっ!」スゥゥゥゥ

雪穂「あ、ああぁっ!? あぁ、や、あ、ああぁあ……っ!」

海未「ぷはぁっ! ふ、ふふっ、んっ、んんんんっ!」ギュゥ

雪穂「ああああぁああぁっ!?」ビクンッ!

雪穂(な、なに、これぇ……)
 
  
447: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 22:30:46.66 ID:7/KAkGZQ.net
  
海未「うっ、ぷはぁっ! ふぅ、ふふっ……!」

雪穂「はぁ、はぁ、あっ、あぁ……」

海未「ふふふ……。やはり『似て』いますね……流石、姉妹と言ったところでしょうか。実に、良い匂いです」

雪穂「な、なに、言って……」

海未「ただ、違う……。ほのスメルとは、根本的に違う。あなたの匂いは、『良い匂い』止まりです」

雪穂「に、におい、って……。はぁ、ぁ、私のにおい、嗅いでたの……?」

海未「どうしました? 顔が真っ赤ですよ? さっきまでの威勢は、どこにいったのでしょうか」

雪穂「なんで……。なんでこんなこと、するの……」

海未「あなたの考えは正しいです。妹だからといって、あなたは穂乃果の代わりにはなり得ません。他のほのキチでは、きっとあなたに興味など示さないでしょう」

海未「ですが、残念……私はほのキチの中でも特別でしてね。他と違い、あらゆる感情をコントロールできるんです」

海未「ですから匂いの似ているあなたを、『穂乃果だと思い込む』ことで、自分の気持ちを奮い立たせたんです。言ってる意味、分かりますかね?」

雪穂「あ、ぅ、や、やめて……におい、かがないで……」

海未「……スイッチ、渡してくれます?」

雪穂「っ! い、いや、だ……」

海未「そうですか。では……」グイッ

雪穂「っ!? いやっ、なっ、なにしてんのっ!?」

海未「いえ、今度はシャツの中の匂いを、嗅がせて頂こうかと思いまして」

雪穂「ひっ! や、やだ、なに考えてんのっ!? ばかぁっ!!///」

海未「バカ? バカはあなたでしょう、『穂乃果』……」

雪穂「……っ」ガタガタ
  
451: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 22:38:18.46 ID:7/KAkGZQ.net
  
海未「……んんっ!」ガバッ

雪穂「あっ、だめ、だめえっ! やだぁっ///」

海未「んんんんんぅぅぅぅぅっ!!」スゥゥゥゥゥ

雪穂「ああ、あぁああ、あぁああぁ……っ!///」

海未「ぅぅぅぅ、ぷはっ、ふふっ、ふふふっ! い、いいじゃないですか、雪穂っ!」

雪穂「あ、ああぁ、あ……////」

海未「あなたの汗の匂い、なかなか良いですよっ! 穂乃果とは違った味わいがあって、実によかったですっ! ふ、ふふっ……!」

雪穂「もう、やだぁ……」グスッ

海未「スイッチ、どうです?」

雪穂「グスッ、うっ……」フルフル

海未「そうですかっ! では次は、脇の方とかいってみましょうかっ!?」ワクワク

雪穂「っ!? もうやだぁっ! そんなところ、嗅がないでよぉっ!!」

海未「雪穂、仕方がないんです。これは、罰なんですよ。いいえ、『教育』といっておきましょうか」

海未「女子中学生が女子高生に逆らうということが、どういうことなのか……。身を持って、知りなさい」

雪穂「……っ」ゾッ

海未「……ふふっ。薄着で部屋にいたことが災いしましたね、雪穂……」

雪穂「ふっ、う、うぅ~……」ポロッポロッ

雪穂「うっ、うぅ、やだよぉ、う、うええぇん…っ!」

海未「……んっ、んんー」スゥゥ

雪穂「あ、あぁ、うぅ、たす、けてぇ……っ!」

雪穂「ひぐっ、うええぇぇん……。たすけて、おねえちゃぁん……っ!」
  
453: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:01:07.40 ID:7/KAkGZQ.net
   
ガチャッ



海未「……?」クルン

雪穂「うっ、うぅ……」



ことり「……海未ちゃん?」

海未「おお、ことりっ! ちょうどいいところに、来ましたねっ」

ことり「遅いから、こっちの様子を見に来てみたんだけど……。どうして雪穂ちゃんに、馬乗りになってるの?」

海未「それがですね、聞いてくださいよ。雪穂の匂いがですね、思ったよりも良いんですよっ!」

雪穂「……う、うぅ」

ことり「……ほんとっ? それは、すごい発見だねっ!」

海未「どうですっ!? ことりも一緒にっ!」

雪穂「っ!? い、いやぁ……」

ことり「ん~、でもやっぱりことりは、穂乃果ちゃんの方がいいかなぁ」

海未「そうですか……。ところでことり、汗ビッショリですけど、どうかしたんですか?」

ことり「えっ? あっ、あはは、何でもないよっ」アセアセ

海未「そうですか……」

ことり「それより、スイッチはっ?」

海未「……それがですね、雪穂が頑なに離さないんですよ」

ことり「ええー。雪穂ちゃん、すごいなぁ。根性あるねえ」

海未「……それで、雪穂。二対一になっちゃいましたけど……。まだスイッチ、渡す気になりません?」

雪穂「うあぁ、あぁ……」

海未「では今度こそ、脇の匂いを……」

ことり「……あれ?」
 
454: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:05:57.03 ID:7/KAkGZQ.net
  
海未「どうしました?」

ことり「……」ググッ

雪穂「……っ」

ことり「とれたぁ」ヒョイ

海未「あっ……」

ことり「雪穂ちゃん、だいぶ力が弱ってたみたい。簡単にスイッチ、取れたよ」

海未「でかしました、ことりっ! ようやくスイッチが、戻りましたね……っ!」

雪穂「ふっ、う、ぅ……」グスッ

ことり「ふふっ。じゃあことりは、穂乃果ちゃんのところに戻ってるけど……。海未ちゃんは、どうする?」

海未「私はもう少し、雪穂を堪能することにしますっ!」

雪穂「っ! な、なん、で……」

海未「ごめんなさい、こんなはずじゃなかったんです……。でも、あなたが悪いんですよ? あなたが思ったより私好みの匂いをしていたのが、いけないんです」

雪穂「や、ぁ……」

海未「ふふっ……では、失礼しますよ。脇の方を……」

ことり「海未ちゃん」

海未「……はい? ことり、まだいたので――」
 

ガバッ!

 
海未「――っ!?」

ことり「……海未ちゃん」

海未「む、ぐっ……っ!?」



海未(こ、ことり……? なぜ私に、抱きついて――)



ことり「お願い、海未ちゃん……っ!」



ギュゥゥ……




ことり「元に、戻ってぇっ!!」
   
455: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:07:24.86 ID:7/KAkGZQ.net
   

フワァ……


海未「ふぁ、あ、ぁあ……」

ことり「海未ちゃん、海未ちゃぁん……っ!」ギュゥ

海未(これは……この、匂いは……っ!)

海未(ま、まずい、このまま、では……っ!)

ことり「海未ちゃん――」

海未「うっ、ぐっ、あぁああっ!」ドンッ!

ことり「きゃあっ!?」ドテッ

海未「はぁ、はぁ、あ、あぁ……」フラ

海未「……あ、あなた、ことりっ! 一体、なぜ……っ!」

ことり「うっ、海未、ちゃん……」

海未「なぜ私を、元に戻そうなどと……っ!? 一体、どういうつもりですかっ!?」

ことり「はぁ、はぁ……っ!」

海未「……」

ことり「海未ちゃん、もうやめよう……? こんなこと……」

海未「ことり……。あなた、まさか……」

ことり「もう全部、終わりにしよう……っ!? そうしたらまた、三人で……っ!」

海未「そんな……。学校にいた時はまだ確かに、『ほのキチだった』はずなのにっ!!」

ことり「海未ちゃんっ!」

海未「ことりっ! あなた――」



 



海未「――いつの間に、元に戻ったんですかっ!?」

ことり「……っ!」
  
458: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:16:29.23 ID:7/KAkGZQ.net
  
ことり「……」

海未「い、一体、いつ……。誰の匂いを嗅いで、元に戻ったんですか……っ!?」

ことり「そんなの……海未ちゃんしか、いないよ」

海未「私、ですって……っ!? 私の匂いを嗅ぐタイミングなんて、今まで一度も……っ!」

ことり「ありがとう、海未ちゃん。約束、守ってくれて……」

海未「やく、そく……?」

ことり「『いつか必ずあなたを元に戻して見せる』って……。前に、言ってくれたよね」

ことり「私、海未ちゃんのおかげで、元に戻れたよ……」スッ

海未「……っ! それは……」

ことり「……これ、返すね」

海未「まさかそんな物で、元に戻ったとでも言うのですか……っ!?」

ことり「うん。気づかなかった? 部室で海未ちゃんと、話をした後……。屋上に戻ってから、私は暇さえあれば『これ』を嗅ぎ続けていたんだよ」


『うぅ、うみちゃん、わたし、わたしぃ……っ!』

『……とりあえず、これで涙を拭いてください』


ことり「あの時海未ちゃんが貸してくれた、ハンカチ……」

海未「……」
  
460: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:21:20.47 ID:7/KAkGZQ.net
  
海未「……ほのキチから元に戻る方法は、まだ詳しく分かっているわけではありません」

海未「しかし、ハンカチに付着した程度の匂いで……そんな間接的な方法で元に戻れるとは、予想外でした」

ことり「……」

海未「ずっと、演技をしていたんですね……。私が『ほのキチでない』ことを装っていたように、あなたは『ほのキチである』ことを装っていた……」

海未「……私を元に戻すための、一瞬の隙をつくために」

ことり「……海未ちゃん、もう戻ろう? お願いだから……」

ことり「それとも……。私なんかの匂いで戻るのは、嫌……?」

海未「……」

海未「……ことり」スタスタ

ことり「う、海未ちゃん……?」

海未「右手に持っているそのハンカチ、返さなくても、結構ですよ?」

ことり「えっ……」

海未「その代り、私は……」


海未「……左手に持っているスイッチの方を、返して頂きますからっ!!」バッ

ことり「っ!!」


ガシィッ!
  
463: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:28:21.16 ID:7/KAkGZQ.net
  
海未「……っ!?」

雪穂「ことりちゃん、早くっ!」ググッ……

ことり「ゆ、雪穂ちゃん……っ!」

雪穂「私が押さえているうちに、早く海未ちゃんを戻してっ!!」

海未「雪穂っ!? あ、あなた……っ!」

ことり「……っ!」バッ

海未「くっ……!」

海未(こんなところで、戻るわけには……っ!)

海未(私には、使命がある……っ! レベル5を嗅ぐという、使命がっ!!)

海未「……ああぁあっ!!」ググッ

雪穂「……えっ!?」グルン

ドタァンッ!!

雪穂「っ! あぅ……っ!」

ことり「雪穂ちゃんっ!?」

雪穂(あの体勢から、投げられるなんて……。なんて、力……)

海未「……ことりぃっ!!」ガシッ

ことり「うわぁっ!?」

ブンッ

ドタァッ!!

ことり「っ!! う、ぅ……」

ポロッ

ことり(っ! スイッチが……っ!)
   
464: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:31:04.45 ID:7/KAkGZQ.net
   
雪穂「こ、ことり、ちゃん……スイッチ……」

海未「はぁ、はぁ……」

ことり「う、うぅ、いっ、たぁ……」

雪穂「はやく、スイッチが……」

ことり「っ! う、うぅ……」

ことり「うあぁあぁっ!」バッ


ことり(海未ちゃんよりも先に、スイッチを……っ!)


海未「……く、あぁあっ!」ガバッ


海未(ことりよりも早く、スイッチに……っ!)


雪穂(二人とも、飛び込んだ……っ! どっちが先に……っ!?)


ドサァッ!



ガシッ




雪穂「――っ!!」

海未「はぁ、はぁ……」

ことり「うっ、ぅ……」

海未「はぁ……。くっ、ふふっ……」



 
海未「……スイッチは、頂きました」ニヤァ

雪穂「っ! くっそぉ……っ!」

海未「ふふっ、あとは……っ!」

ダッ
  
466: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:36:10.80 ID:7/KAkGZQ.net
   
雪穂(っ!? 扉の方に……っ! 逃げる気だっ!)

雪穂「はぁ、はぁ、まてぇっ!」ダッ

ことり「はぁっ! う、海未ちゃん……っ!」ダッ

ガチャッ バァンッ!

ドタドタッ!


海未(穂乃果の部屋に……っ!)


ガチャッ! バァンッ!



海未「穂乃果っ!!」

穂乃果「えっ……?」ビク

海未「穂乃果……っ! 私についてきてくださいっ!」

穂乃果「え、えっと、あの……。海未ちゃん、さっきの音って――」

海未「今は時間がありませんっ! とにかく私を信じて、こちらにっ!」

穂乃果「ど、どうしたの、海未ちゃん……?」

海未「いいから、早くっ!」



雪穂「だめえっ! お姉ちゃんっ!!」
 
467: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:37:43.13 ID:7/KAkGZQ.net
  
穂乃果「ゆ、雪穂……?」

雪穂「お姉ちゃんっ!! そいつの言うことを、信じちゃダメっ!!」

海未「……っ! くっ!」

ことり「穂乃果ちゃん……っ!」

穂乃果「……こ、ことり、ちゃん」

ことり「さっき言ったことを思い出して、穂乃果ちゃんっ! 海未ちゃんは、もう……っ!」

穂乃果「……っ!」

雪穂「お姉ちゃんっ!!」

海未「……穂乃果っ!」グイッ

穂乃果「っ!?」

ことり「う、海未ちゃんっ!? 待って……っ!」

海未「私があなたを守りますっ! ですから……私を、信じてくださいっ!!」ガシッ

穂乃果「う、海未ちゃん……? うわぁっ!?」

雪穂「な、なにを……っ! そっちは、窓――」


ガラッ


海未「しっかり掴まっていてください、穂乃果――っ!」

雪穂「っ!? ま、まさかっ!」

ことり「待ってっ、ダメっ! 海未ちゃん――」


バッ……!
 
470: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:44:42.32 ID:7/KAkGZQ.net
 
ダンッ!


穂乃果「っ!」

海未「う、ぐっ……」

海未(凛を見習ってやってみましたが……。案外できるものですね)

海未「さぁ、行きましょう、穂乃果……。立てますか?」

穂乃果「う、海未ちゃん……私、どうすれば……」

海未「……とにかく、走りましょう。二人に追いつかれる、前に」

海未「事情は後で説明します。ですから、今は……私についてきてください」

穂乃果「……」

穂乃果「……わ、わかった」コクン

海未「ありがとうございます、穂乃果。それでは、手を……」

穂乃果「うん……」


ギュッ

タッタッタッ……



雪穂(まさか、お姉ちゃんを抱えながら、二階から飛び降りるなんて……)

雪穂「……」

雪穂「スイッチも、とられて……お姉ちゃんも、連れてかれちゃった……」


ガクッ


雪穂「私、お姉ちゃんを、守れなかった……」

雪穂「うっ、う、うぅ……」
472: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 23:49:21.25 ID:7/KAkGZQ.net
 
ことり「……」

ことり「雪穂ちゃん、ごめんね……」

雪穂「うっ、うぅ、うあぁあ……っ!」

ことり「ごめんなさい……っ! 雪穂ちゃんまで、巻き込んで……っ!」

ことり「まさか海未ちゃんがあそこまでするなんて、思わなかったの……っ! 怖かったよね、雪穂ちゃん、ごめんね……っ!」

雪穂「私のことなんて、どうでもいいっ!!」グイッ

ことり「っ!! うっ……」

雪穂「グスッ……。どうすんのっ!? お姉ちゃん、連れてかれちゃったよっ!?」

雪穂「スイッチだって、とられちゃったじゃんっ! ねえ、どうすんのさっ!!」ググッ

ことり「……っ」

雪穂「あなたにさっき電話で言われたことを、信じたから……っ! 私は海未ちゃんに、スイッチを渡さなかったんだよっ!?」

雪穂「なのに……っ! あなたがスイッチをとられて、どうするのっ!? ねえっ!!」

ことり「ごめん……、ごめんなさい……」

雪穂「私には分かるよ、ことりちゃん……っ! さっき、距離的には有利だったはずなのに、どうしてあなたが先にスイッチを、とれなかったのか……っ!」

雪穂「あなたには……海未ちゃんと敵対する覚悟が、欠けてるんだっ! だから、スイッチをとられちゃったんだよっ!」

ことり「……っ!!」

雪穂「甘いんだよ、ことりちゃんは……っ! うっ、うぅ、どうするのぉ……っ!?」

雪穂「あんな人に、スイッチを渡しちゃって……。お姉ちゃんは、どうなっちゃうの……っ! うっ、うぅ……」

ことり「……ごめん、なさい」

ことり「ごめんなさい……」


    
ことり(……やっぱりことりは、ダメな子だ)

ことり(いつまでたっても、穂乃果ちゃんと海未ちゃんの後についてくだけの、ダメな女の子――)
 
514: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:00:17.63 ID:P/Rj4SMO.net
   
――――――――
――――――
――――
――


数十分前……


ことり「――それでね。海未ちゃんは、ほのキチになっちゃったの。しかも、すごく理性的な……」

『ほのキチって……』

ことり「スイッチで強くなった穂乃果ちゃんの匂いを嗅いで、頭が変になっちゃった人のことだよ」

『……はぁ』

ことり「でね。この後私と海未ちゃんで、そっちに向かう予定なんだけど……。海未ちゃんが、雪穂ちゃんの部屋に来ると思う」

『えっ?』

ことり「……その時に海未ちゃん、雪穂ちゃんが持ってるスイッチを欲しがると思うから、絶対に渡さないでほしいの」

『……』

ことり「それでできるだけ、時間を稼いでほしいの。私は穂乃果ちゃんの部屋で、やることがあるから……」

『……そっか』

ことり「お願い……できる、かな?」

『あのさ……』

ことり「うん?」

『私があなたのことを、信用すると思う?』

ことり「……」

『お姉ちゃんに昨日、あんなことをしておいて……よくそんなことが言えたよね』

『あなたを信用するくらいなら、当然、海未ちゃんの方を信用するよ。ずっとお姉ちゃんを守ってくれてた、海未ちゃんを』

ことり「……だよね。じゃあ、一つだけ」

『……なに?』

ことり「スイッチ、渡してもいいけど、すぐには渡さないで……目の前に出して、海未ちゃんの反応を、よく見てみて」

ことり「いくら理性的でも、スイッチを目の前に焦らされたら、ほのキチであることを隠し切れないはずだから――」
 
516: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:03:51.06 ID:P/Rj4SMO.net
  
――――――――
――――――
――――
――


海未「……それでは」


バタン


ことり「……」チラッ

穂乃果「お寿司、お寿司ー♪」

ことり「……穂乃果ちゃん」

穂乃果「あっ、でもお寿司なんて頼んだことバレたら、お母さんに怒られるかな……。ま、バレなきゃいっか」

ことり「穂乃果ちゃん、聞いて?」

穂乃果「えっ、な、なに?」

ことり「私ね、元に戻ったんだ」

穂乃果「……へっ?」

ことり「今までのことりはずっと、なにか変だったでしょ? それは、『ほのキチ』っていう状態なんだけど……」

ことり「……それからさっき、戻ったの」

穂乃果「ほ、ほんと……?」

ことり「うん……」

穂乃果「じゃ、じゃあ、ことりちゃんはもう……」

ことり「……ごめんなさい」

穂乃果「えっ……」

ことり「ず、ずっと、穂乃果ちゃんに、へっ、変なことして……っ! ごめんなさいっ!」

穂乃果「……」

穂乃果「……ううん、いいよ」

ことり「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「よかったね、ことりちゃん。元に戻れたんだ……」

穂乃果「やっと、いつものことりちゃんに、戻ってくれたんだね……っ! よかった、よかったよぉ……っ!」

ことり「……ふふっ」


ことり(やっと、謝れた……)
 
518: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:07:18.41 ID:P/Rj4SMO.net
  
ことり「……それでね、もう一つ、大事なことを伝えなきゃいけないんだ」

穂乃果「えっ、なに?」

ことり「私の代わりに、ね……。今度は海未ちゃんが、おかしくなっちゃったんだ」

穂乃果「……えっ」

ことり「前の私みたいにね、なっちゃったんだ……。だから私、これから海未ちゃんを元に戻そうと――」

穂乃果「ま、まって、ことりちゃん」

ことり「えっ?」

穂乃果「海未ちゃんは、おかしくなんてなってないよ? だって今日も全然、普通だったもん」

ことり「……それはね」

穂乃果「昨日海未ちゃん、言ってたもん。海未ちゃんはね、えっと……匂いに、耐性があるんだって」

穂乃果「確かに倒れちゃっても、すぐに起きたし……。海未ちゃん、普段から鍛えてるから、そういうのに強いのかもねっ」

穂乃果「だから全然平気だって、心配いらないって、言ってたよっ」

ことり「違うの、穂乃果ちゃん。聞いて?」

穂乃果「な、なに?」

ことり「それは全部、嘘なの。海未ちゃんは自分がおかしくなったことを、隠そうとしてるの」

穂乃果「……」

ことり「今日一日普通に見えたのも、そういうことなんだよ。海未ちゃんは……まともな『フリ』をしてたんだ」

穂乃果「そんな……」
 
519: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:11:44.56 ID:P/Rj4SMO.net
 
穂乃果「それって私やみんなを、海未ちゃんが騙してた、ってこと?」

ことり「……そう、なるね」

穂乃果「あ、あはは……。考え過ぎだよ。海未ちゃんはそんなこと、しないもん……」

ことり「違うの。穂乃果ちゃん……海未ちゃんはもう、いつもの海未ちゃんじゃないの」

穂乃果「……っ!」

ことり「だから、その……。今は海未ちゃんいないから、今のうちに……」

ことり「……なるべく遠くへ逃げてくれるかな、穂乃果ちゃん」

穂乃果「っ! な、なんで……?」

ことり「私、これから海未ちゃんを元に戻すために、戦わなきゃいけないんだ……。でも……」

ことり「もしもの時に私、穂乃果ちゃんを守りきれる自信ない。私は海未ちゃんみたいに、強くないから……」

ことり「だから、お願い、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「……」

穂乃果「や、やだ……」

ことり「えっ……」

穂乃果「どうして……? どうして私が海未ちゃんから、にげるの……?」

ことり「……だ、だから、それは」

穂乃果「海未ちゃんは……ずっと私を、守ってくれてたんだよ……?」

穂乃果「なのに、なのにどうして、そんな海未ちゃんから、逃げなきゃいけないの……っ!?」

ことり「穂乃果ちゃん……っ!」
 
520: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:18:00.98 ID:P/Rj4SMO.net
 
穂乃果「嘘だよ……。海未ちゃんが、おかしくなったなんて……」

ことり「嘘じゃない、よ……」

穂乃果「言ってたもんっ! 海未ちゃん、『大丈夫』って、言ってたもんっ!!」

ことり「っ! だ、だから、それは、嘘で……」

穂乃果「違うよっ! どうしてそんなこと、言うのっ!? 酷いよ……っ!」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「やめてよ、そんなこと言わないでよ、ことりちゃん……」

ことり「穂乃果ちゃん、どうして私のことは、信じてくれないの……?」

穂乃果「っ!!」

ことり「わ、私よりも、海未ちゃんの方が、好きだから……?」

穂乃果「……うぅ」

ことり「私のこと、親友だと思ってくれてるなら……お願い。信じて、穂乃果ちゃん……っ!」

穂乃果「うぅ、ぅ……っ!」

穂乃果「なん、で……」

ことり「えっ……?」

穂乃果「なんで……? ことりちゃんが元に戻って……。それでもう、終わりじゃないの……?」

穂乃果「私たち、仲直りできたんじゃないの……? またいつもの私たちに、戻れたんじゃないの……っ!?」

ことり「穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「なんで、今度は海未ちゃんが……? もう、やだ、もうやだよぉ……っ!」
 
522: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:23:48.69 ID:P/Rj4SMO.net
  
ことり「お、落ち着いて、穂乃果ちゃん?」

穂乃果「また、なの? また私の、せいなの……?」

ことり「っ! えっ……」

穂乃果「私のせいで……っ! 今度は海未ちゃんまで、おかしくなっちゃったの……っ!?」

穂乃果「また、だ……っ! また私のせいで……っ!」

ことり「ち、違うよ、穂乃果ちゃんのせいじゃ……っ」

穂乃果「うああ、あぁあぁぁ……っ!」

穂乃果「もうやだ、もうやだぁ……っ! なんなの、私……っ!」

穂乃果「なんなの、私の匂いって……。もうやだよ、こんな体……っ!」

ことり「……っ!」

穂乃果「ごめん、ごめんなさい、海未ちゃん、ことりちゃん、みんなぁ……っ!!」

穂乃果「穂乃果がこんな体だから、こんな匂いだからぁっ! ごめんなさぁい……っ!!」

ことり「ほ、穂乃果ちゃんは、なにも悪くないよっ! 悪いのは、あのスイッチで……っ!」

穂乃果「うあぁ、ああぁあぁぁっ!」

ことり「あ、あぅ、穂乃果ちゃぁん……」オロオロ

ことり(そっか、穂乃果ちゃん、ずっと無理して……。本当はこんなに、思い詰めてたんだ……)

ことり(ど、どうしよう、なんて言ってあげれば……)

ことり(分かんない、分かんないよぉ……っ! こんな時、海未ちゃんなら……)
523: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:25:43.21 ID:P/Rj4SMO.net
   
ことり「あ、あの、穂乃果ちゃん……っ」

穂乃果「うっ、うぅ、あぁあぁ……っ!」

ことり「だ、大丈夫だからっ! ことりが、必ず全部、元通りにして見せるからっ!」

穂乃果「うぅ、ことりちゃぁん……」

ことり「海未ちゃんも、私が戻して見せるからっ! だから、私を信じてっ!」

穂乃果「う、ぅ……」

ことり「……穂乃果ちゃん」

穂乃果「……」グスッ

ことり「ごめん、私、もういくね……」

穂乃果「……どうしたら、いいの?」

ことり「えっ?」

穂乃果「わ、わたし、どうしたら、いいの……? おしえてよ、ことりちゃん……」

ことり「……」

ことり「……大丈夫、何も心配しなくていいよ」ニコッ

穂乃果「……っ」

ことり「穂乃果ちゃんは、ただここで……。私と海未ちゃんが戻ってくるのを、待っててくれればいいから」

ことり「すぐに、終わらせるから……。そしたらまた、三人で、遊ぼう?」

穂乃果「……」

穂乃果「……うん」コクン

ことり「ありがとう、穂乃果ちゃん……」


バタン
 
525: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:45:04.08 ID:P/Rj4SMO.net
  
――――――――
――――――
――――
――


そして、現在……



トボトボ


ことり「……」

ことり(もうお外は、真っ暗だな……)


『どうすんのっ!? お姉ちゃん、連れてかれちゃったよっ!?』


ことり(……どうして)

ことり(どうして穂乃果ちゃんは海未ちゃんに、ついていったんだろう)

ことり(どうして私じゃなくて、海未ちゃんを、信じたんだろう……)

ことり(……当たり前か。穂乃果ちゃんは、海未ちゃんのことが好きなんだから……)

ことり(ううん。それ以前に、今までずっと味方だった海未ちゃんと、敵だった私とじゃ……どっちのことを信じるかなんて、分かりきったようなものだよね)


ことり「……はぁ」

ことり「二人とも、いなくなっちゃった……」


『あなたには……海未ちゃんと敵対する覚悟が、欠けてるんだっ!』


ことり「覚悟……。してなかったわけじゃ、ないのに」

ことり「どうして私は、こんなに、ダメなんだろ……」


ことり(いつも、そう……)

ことり(いつも私は、穂乃果ちゃんと海未ちゃんに、甘えてばかりで……)

ことり(二人に頼ってばかりで……。一人じゃなにも、できなくて……)

ことり(私は……)
526: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:52:27.26 ID:P/Rj4SMO.net
  
ことり「……」

ことり(だけどもうここには、二人はいない)

ことり(もう頼れる人は、どこにもいない……)


ことり「じゃあ私は一体、誰に頼ればいいの……?」


ことり(……違う)

ことり(誰かに頼ることばっかり、考えちゃダメだ……)

ことり(私だって、一人で――)

にこ「あんたバカなの?」

 



ことり「……えっ?」

にこ「私たちに頼ればいいじゃない」

ことり「にこちゃん……?」

絵里「そうよ。私たち、仲間でしょう?」

希「せやで、ことりちゃんっ」

ことり「絵里ちゃん、希ちゃん……」

真姫「こんなところにいたのね、まったく……」

凛「あ、いたっ! かよちん、こっちこっちっ!」

花陽「ことりちゃんっ! も、元に、戻ったんだねっ!?」

ことり「み、みんな……どうして……?」
527: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 22:54:36.24 ID:P/Rj4SMO.net
 
絵里「亜里抄の携帯を通して、雪穂ちゃんから私に連絡があったのよ」

ことり「ゆ、雪穂ちゃん……?」

絵里「事情は全部聞いたわ……。海未が、ほのキチになったのね?」

ことり「……っ!」

にこ「しかもスイッチを奪った上に、穂乃果も連れて逃げるなんて……」

真姫「状況は最悪ね。前から思ってたのよ、海未にスイッチを持たせたら、危険だって……」

真姫「……海未って、ほのキチになる前から、ほのキチみたいな子だったしね」

花陽「で、でも、まだそんなに遠くには行ってないはずだよっ!」

凛「みんなで協力して、海未ちゃんを探そうっ!」

希「せやね。まずは手分けして……」

ことり「み、みんな、あの……」

絵里「どうしたの?」

ことり「……い」

ことり「今まで、ごめんなさい……っ!」

にこ「……なによ、急に」

ことり「わ、私、ずっとみんなに、迷惑をかけて……っ! 謝るのは私の方だったのに、ずっと謝れなくてっ!」

花陽「ことりちゃん……」

ことり「本当に、ごめんなさいっ!」

凛「いいよいいよっ。そんなことより……」

希「……うん、元に戻れて本当に良かったなぁ、ことりちゃんっ」

ことり「……みんな」
 
528: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 23:04:06.34 ID:P/Rj4SMO.net
  
真姫「ことり。そういえば、あなたはどうやって戻れたの?」

絵里「そうね、参考までに聞いておきたいわ。多分、海未……いえ、『うみスメル』で戻ったのよね?」

希(その言い回し気に入っとるんかなぁ、えりち)

ことり「うん……これで、戻ったの」スッ

真姫「……? これ、ハンカチ?」

にこ「まさか、海未の……? ちょ、こんなもので、戻れるもんなの?」

ことり「これを練習の合間に、ずっと嗅いでたら……いつの間にか、戻れてたんだ」

絵里「『ずっと』、か……。ハンカチにそこまで海未の匂いが染みついてるとは思えないけど、嗅いでた時間が関係してるのかしら」

真姫「待って。私の考えだと、匂いはきっかけに過ぎなくて、強さや時間は、そこまで重要じゃない……。大事なのは、本人の気持ちなんじゃないかって、思うの」

花陽「本人の気持ち……?」

真姫「『元に戻りたい』という、意志よ。ことり、あなたやっぱり心の中では元に戻りたいって、思ってたのね?」

ことり「……」

ことり「……わかんない」

真姫「えっ?」

ことり「お、思い出せない……。元に戻る前の私が、どんなことを考えてたのか……」

絵里「思い出せない……?」

希「ほのキチの時の記憶がないの? 凛ちゃんみたいに……」
 
529: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 23:12:35.79 ID:P/Rj4SMO.net
  
凛「でもさっきことりちゃん、謝ってくれたにゃ。ってことは……少しくらいは、覚えてるんじゃないのかにゃ?」

ことり「……っ!」

真姫「そうね……。例えば凛は、ほのキチでいた時の記憶は全く、覚えてないのよね?」

凛「うん……。でももちろん、穂乃果ちゃんにはちゃんと謝ったよ。悪いことしてたのは、確かだと思うから……」

真姫「私の場合は、概ね覚えてるわ。どうしても思い出せないことが、一つだけあるけど……」

希「うーん。ことりちゃんは、どこまでほのキチの時のこと覚えてるん?」

ことり「ご、ごめん、何にも覚えてない……」

花陽「何にも……? 本当に?」

ことり「うん……。もう全然分かんない……」

絵里「あっ、そうだわ。さっき雪穂ちゃんから聞いたんだけど、あなた、海未の前でほのキチのフリをしていたんですってね?」

ことり「っ!?」

絵里「それで隙をついて、海未を元に戻そうとしたとか……」

にこ「へえーっ、すごいじゃないっ!」

ことり「あはは、でもそれは、失敗しちゃって……」

希「あれ? でもほのキチの時のことを覚えてなきゃ、フリなんてできんよね?」

ことり「……」

にこ「……ちょっと。ことり、どっちなのよ? あんた結局、覚えてるの?」

ことり「わ、ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセーン……」

にこ「懐かしいごまかし方してんじゃないわよっ!」
 
530: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 23:22:22.70 ID:P/Rj4SMO.net
 
ことり「う、うーん……」

真姫「ことり、本当に覚えてないの? 穂乃果の匂いを、嗅いでたこととか……」

ことり「っ!」

凛「穂乃果ちゃんの汗を、舐めてたこととか……」

ことり「っ!!」

花陽「れ、練習着を、盗んだこととか……」

ことり「っ!?」

にこ「『はぁ~、久しぶりのレベル4っ!! 穂乃果ちゃぁん~っ////』って台詞とかも、ホントに覚えてないのね?」

ことり「あ、あぁ……」

絵里「どうやら覚えてなさそうね……。残念だわ。ことりの記憶が、海未を元に戻すための重要な手掛かりになるかと思ったのだけど……」

希「まあまあ、仕方ないやん。ことりちゃんだって思い出したくても、思い出せないんやし……」

ことり「思い出したくないんだよぉ……」

希「……へっ?」

ことり「う、わぁ、なんで、思い出させるのぉ……? みんな、酷いよぉ……っ!」

ことり「必死に忘れようと、してたのにぃ……っ! あ、あぁ、だめ、だめええ……っ!」

にこ「こ、ことり?」

ことり「うあぁあ、わ、私、なんてことを……。や、やめて、きえてぇっ! いやぁあぁっ」

ことり「あぁあぁ~っ! ちがっ、ちがうのぉっ! こんなの、ことりじゃないぃぃっ……!」ガクッ


真姫(頭抱えて、うずくまっちゃった……)

絵里(み、耳まで真っ赤だわ……。そういえば、そうだった……)

花陽(ずっとほのキチのことりちゃんばかり見てきたから、忘れてました……)

凛(ことりちゃんが……)


ことり「いや、いやぁぁっ! うぐ、きえて、きえてぇ……っ! うぐ、うぅ~……////」



((μ'sで一番、ピュアな女の子だってことを……)
  
533: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 23:28:36.03 ID:P/Rj4SMO.net
  
にこ「あぁ……悪かったわ、ことり。顔上げなさいよ」ポン

ことり「うぅ、もうやだぁ……。しんじゃいたいぃ……」

希(ほのキチの時とのギャップがすごいわ……。何でこんな子が、あんな風になっちゃうんやろ)

絵里(きっとフリの方も、相当無理してやったのね……)

花陽(ある意味ことりちゃんが、一番のスイッチの被害者かも……)

ことり「う、ぅ……で、でも、ことりの記憶が、手掛かりになるなら……」

真姫「いいわよ、無理に思い出そうとしなくて……。それより早く、海未を追うわよ」

凛「うーん、でも、行先に心当たりはあるのかにゃ?」

絵里「一番可能性が高いのは、海未の家かしら……」

真姫「じゃあ海未の家には私とことり、凛の三人でいくわ」

にこ「いいけど……。元ほのキチで固まってるのは、理由があるの?」

真姫「もちろん。万が一の時のために、少しでもほのスメルに耐性があるメンバーの方がいいでしょ?」

花陽「なるほど。三人は一度、レベル4まで嗅いでるから……それだけ耐性も強いんだね」

絵里「じゃあ残りの4人は、手当たり次第秋葉原を捜索よ」

にこ「もう夜だし、早く見つけ出さないと、色々な意味で危ないわね」

真姫「それじゃ、何かあったら携帯で連絡を取り合いましょう」

凛「急ごうっ!」

ことり「うんっ……」


タッタッタッ……

 
557: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:02:58.05 ID:gJpQcdSQ.net
 
――――

繁華街


スタスタ



海未「大丈夫ですか、疲れてませんか、穂乃果?」

穂乃果「う、うん……。大丈夫だよ」

海未「靴をあなたの家に置きっぱなしにしてしまったので、私の家から持ってくることになってしまいましたが……歩き辛くはありませんか?」

穂乃果「ううん、平気だよ。海未ちゃんの靴、ピッタリだよ」

海未「それならよかったです」

海未(……さて)

スッ

海未(一度手放した、この『ほのスメル増幅スイッチ』……。その後色々な人の手に渡りましたが、最後にはやはり、私のところに戻ってきてくれました)

穂乃果「あっ、そのスイッチ……」

海未「はい、先ほど雪穂から、返してもらったんです。なので今はもう、私の物です」

穂乃果「そ、そうなんだ……」

カチッ

フワァ

穂乃果「あっ……」

海未「……」スンスン

海未(そう、確か穂乃果と歩くときはいつもこうして、レベル1を漂わせて楽しんでいたんでしたね……)

海未(以前の私は、どうかしていました。こんな素晴らしいスイッチを、手放そうとするなんて……)

穂乃果「あの……海未ちゃん」

海未「はい?」

穂乃果「今、その……。押した、よね……?」

海未「はい、押しましたが?」

穂乃果「えっと、じゃあいま私の匂い、つ、強くなってるの……?」

海未「ええ、とてもいい香りですよ。それがどうかしましたか?」

穂乃果「そ、そっか、うん、なんでもない……///」カァァ
 
559: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:16:14.21 ID:gJpQcdSQ.net
 
ガヤガヤ


穂乃果「……」

海未「どうかしましたか?」

穂乃果「あ、うん……。こうして夜に海未ちゃんと二人きりで、街を歩くことなんて、滅多にないなぁと思って」

海未「確かにそうですね」

穂乃果「……え、えっとさ。私たち今、どこに向かってるの?」

海未「それは……ごめんなさい、まだ内緒です」

穂乃果「……」

海未「ありがとうございます、穂乃果」

穂乃果「えっ?」

海未「私のことを、信じてくれて……。こうしてついてきてくれて、ありがとうございます」

穂乃果「そ、それは……海未ちゃんが手を、引いてくれるから……」

海未「じゃあ私が今この手を離したら……あなたは私から、離れていきますか?」

穂乃果「……」

穂乃果「分かんないよ……」

海未「……分かりませんか」

穂乃果「うん……もう何も、分かんない……」

穂乃果「なんで海未ちゃんについてきたのかも……なんで雪穂やことりちゃんの言うことを聞かなかったのかも、分かんない」

穂乃果「誰を信じたいのかも、これからどうしたいのかも、分かんない。穂乃果は自分のことが、分からないよ……」

海未「……」

穂乃果「ねえ、海未ちゃん……?」

海未「はい?」

穂乃果「今の海未ちゃんは……いつもの海未ちゃんじゃ、ないの……?」
 
560: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:18:05.88 ID:gJpQcdSQ.net
   
海未「……」

穂乃果「海未ちゃんも、なっちゃったの……? 私の匂いを嗅いで、その……」

穂乃果「前のことりちゃんみたいに、おかしくなっちゃったの……?」

海未「……今の私は、そんな風に見えますか? いつもの私には、見えませんか?」

穂乃果「ううん、おかしくなっちゃった風には、見えない……」

海未「そうでしょう?」

穂乃果「でも……いつもの海未ちゃんにも、見えないよ」

海未「……」

穂乃果「本当は、どっちなの……? ことりちゃんが言ってたことが、嘘なの? それとも……」

穂乃果「海未ちゃんが私を、騙してるの? 私はどっちを、信じればいいの……」

海未「……その答えを出すのは誰でもありません。どちらを信じるか、決めるのはあなた自身です」

穂乃果「……」

海未「ですから私の言葉を聞いて、よく考えてください」

穂乃果「えっ……?」

海未「今の私は、ほのキチです」

穂乃果「っ!! そう、なんだ。やっぱり、海未ちゃんも……」

穂乃果「海未ちゃんも、私のせいで……っ!」

海未「自分を責めないでください、穂乃果。あなたはなにも悪くないんですから」

穂乃果「でも……」

海未「それにあなたが思っているほど、ほのキチになるということは悪いことでもないんですよ」

穂乃果「えっ、そうなの……?」

海未「ええ。確かに以前は私も、ほのキチを否定していましたが……実際になってみて、分かりました」

海未「ほのキチになるというのは、こんなに幸せな気持ちになれるものなのだと……」

穂乃果「幸せ、なの? 海未ちゃんは、今……」

海未「ええ。ですからむしろ私は、あなたに感謝したいくらいなんです。あなたのおかげで私はほのキチになり、幸せになれました」

穂乃果「……」
 
563: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:30:54.55 ID:gJpQcdSQ.net
  
海未「ですから後は、あなた次第なんです」

穂乃果「私、次第……?」

海未「つまり、私がほのキチであるということを、知った上で……。どういった選択を、するのか」

海未「今の私を受け入れ、このままついてくるのか……。それとも、ことりたちのところへ戻るのか」

穂乃果「そ、そんな、そんなの……」

海未「ことりはきっと、私を今度こそ元に戻そうと考えています。もし彼女の目論見が成功すれば、今度こそ、全ては元通りです」

穂乃果「っ!」

海未「この手を離せば……。またいつもの日常が、戻ってくるかもしれない。それをあなたは、望みますか?」

穂乃果「わ、私は……」

海未「……それとも――」


「あっ、ちょっと待って、そこのお二人さんっ」


穂乃果「……えっ?」ビクッ

海未「……?」クル


男A「おっ……。ほ、ほら、見てみっ!?」

男B「うわ、やっべーっ! マジだ、超可愛いっ!」

男C「すげー、大当たりじゃん。やるなぁ」

男A「なっ、言ったろっ。やっぱ可愛い子は、匂いも違うんだよっ!」


穂乃果「えっ……な、なに、この人たち……?」

海未「……」
 
567: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:35:48.29 ID:gJpQcdSQ.net
 
男A「すれ違った時に、良い匂いがしたのよ。女の子の香りっていうかさぁ」

男B「よくやったっ! いやぁ君たち、可愛いねえ。二人でこれからどこ行くのー?」

男C「もしよかったらさぁ、お兄さんたちと一緒に、遊ばない?」

穂乃果「……え、あっ」

海未「……」

カチッ

フッ

海未(……迂闊でした。夜の街中でスイッチを使うなんて、こんな輩が現れることは、想定できたはずなのに……)


男A「あれ、ていうかその制服って確か、音ノ木坂じゃね?」

男B「あー、確か今流行りの、スクールアイドルで話題になってる学校だよな」

男C「でもこの子たちも、アイドル並に可愛いぜ。もしかして、そのスクールアイドルなんじゃね?」

男A「やべー、だったら超興奮するわーっ!」

穂乃果「ど、どうしよう、海未ちゃん……」

海未「……ごめんなさい、急いでるので、そこどいてもらえますか?」

男B「えっ、急いでんの? なんか予定ある感じ?」

男C「ちょっとだけでいいからさぁ、遊ぼうよー。いいでしょー?」

男A「そっちの彼女はどう? ちょっとくらいなら大丈夫っしょ?」

穂乃果「っ! あっ、そ、その……」ビクッ

ギュッ

海未(穂乃果……握る手が、強くなって……)

海未(こうなったのも私の責任。私が何とかしなくては……)

海未(しかし、男性が三人も相手では……せめて穂乃果だけでも、先に……)
 
 
568: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:39:50.48 ID:gJpQcdSQ.net
 
海未「……穂乃果、先に」

男B「あぁ、そんな怯えなくても大丈夫だよ。お兄さんたち、優しいから」

男C「手なんか繋いじゃって、仲良しなんだねえ、君たち」

男A「ていうかさ、さっきめっちゃ良い匂いしたんだけど。香水とかつけてるん?」

男B「ははっ、いつまで言ってんだよ。そんなに良かったのか」

男C「んー、もうちょい近づかねえと分かんねえなー」ズイッ

穂乃果「ひっ!?」ビクッ

男C「あ、ごめーん、別に怖がらせる気は」

海未「……いい加減にしてもらえます?」

男C「……あ?」

海未「それ以上しつこくするなら、大声出しますよ」

穂乃果「う、海未ちゃん……」

男C「へえー、君、うみちゃんって言うんだ。可愛い名前だねえー」

男B「うみちゃん、全然動じないんだね。すげー。俺、うみちゃん好きだわ」

男A「俺はそっちの彼女かなぁ。ねえ、君は何て名前なの?」

海未「……行きましょう、穂乃果」グイッ

穂乃果「あっ……」

男C「待てったらっ!」ガシッ!

穂乃果「っ!? いたっ……」


海未「……っ!!」


ザワッ……

 
569: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:42:50.28 ID:gJpQcdSQ.net
  
海未(……なんです、この感覚は?)


男C「いいだろー、ちょっとくらい。ねえ、えっと……ほのかちゃん?」ググッ

穂乃果「ひっ、ぁ……」

男A「あー、結局強引に連れてくパターンね」

男B「まあ仕方ないっしょ。こんな可愛い子、滅多に出会えないだろうし」


海未(全身の血が熱く煮えたぎるような、この感覚は……)


男C「ねえ、ほのかちゃん。君のお堅いお友達をさぁ、説得してやってよ」

穂乃果「……うぅ」

男C「ねえねえー……。あれ、うみちゃん、どうかした?」

ガシッ 

男C「なに、腕なんか掴んで。やめろってこと? やだよー」

男A「ははっ、こいつタチわりぃー」

ググッ

男C「……? ん……」


海未(心の奥底から湧き上がる、この黒い感情は……)


ググ、ギ……

男C「……っ!? あっ……!」

男B「……? おい、どうした?」


海未(体の内から溢れ出る、この力は、一体――)


ミシ……ッ!

 
571: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:46:50.62 ID:gJpQcdSQ.net
    
男C「っ!? あぁあぁぁっ!!?」

男A「おいっ!? どうしたっ!」


ミシ、ミシ……


男C「いてえっ! あ、あがっ、や、やめ、いぎゃあぁあぁっ!」

男B「おいおい、マジかよっ!? 女の子だぞっ!?」

男C「あぁあぁっ! わ、悪かった、いっ、は、離してくれぇっ!」

海未「汚い手で、二度と穂乃果に触らないでください」

男C「わ、分かったっ! 分かったからぁっ!」

パッ

男C「うっ、うぐ、ぅ~……」

男A「嘘だろ、おい……」

男B「そ、そんなに強えのかよ……?」

海未「あなた方も試してみますか?」

男A「っ! い、いやぁ、いいですっ!」

男B「すんませんっしたぁっ! おい、行くぞっ!」

男C「い、いてぇよぉ……、うええぇ……」

タッタッタッ……


海未「……」


グッ

海未(……なるほど。これが、『覚醒』というヤツですか)

海未(理解できました。これだけの力があれば……もはや、誰にも負ける気がしません)
 
572: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 21:55:33.38 ID:gJpQcdSQ.net
  
ザワザワ


「すげー、見た? 今の……」

「女の子が大人の男を、泣かせてたよ……」


海未「……穂乃果、大丈夫でしたか?」

穂乃果「……」

海未「穂乃果?」

穂乃果「えっ、あっ、うん……」

海未「……少し目立ちすぎてしまったようです。先を急ぎましょう」

穂乃果「う、うん……」

海未「手を……」スッ

穂乃果「……」

ギュッ

海未「……」

海未(穂乃果の手、震えています……)


スタスタ……


海未「……怖い思いをさせてしまって、ごめんなさい。私のせいです」

穂乃果「そ、そんな、海未ちゃんは、悪くないよ……」

海未「……穂乃果」

穂乃果「えっ……?」

海未「もしかして、ですけど……」

穂乃果「……」


『いてえっ! あ、あがっ、や、やめ、いぎゃあぁあぁっ!』

『おいおい、マジかよっ!? 女の子だぞっ!?』


海未「穂乃果が怖がっているのは……私、ですか?」
 
573: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:01:59.85 ID:gJpQcdSQ.net
  
ピタッ

海未「……? 穂乃果?」

穂乃果「怖いわけ、ないよ……」

海未「……えっ」

穂乃果「だって海未ちゃんは、私を守ってくれたんだよ……? そんな海未ちゃんを、怖がるわけないじゃん……」

海未「穂乃果……」

穂乃果「助けてくれてありがとう、海未ちゃん……。海未ちゃんが助けてくれなかったら、私、わたし……っ!」

穂乃果「怖かったよぉ……。グスッ、ありがとう、海未ちゃん……」

穂乃果「うっ、うぅ、ひぐっ、うわぁあぁん……っ!」

海未「……」

ダキッ

穂乃果「っ!! う、うみ、ちゃん……?」

海未「私についてきてください、穂乃果」

穂乃果「えっ……?」


海未「私があなたを、守り続けます」

海未「必ずあなたを、幸せにして見せます」


海未「ですから、どうか私を『選んで』ください、穂乃果……」

ギュゥ

穂乃果「……っ!」

穂乃果「あ、あぁ、ぁ……」
 
574: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:03:11.17 ID:gJpQcdSQ.net
 
フワァ……


穂乃果(海未ちゃんの、匂いだ……)

穂乃果(昔からいつも一緒にいて、何度も嗅いできた、匂い……)

穂乃果(でも、どうして……? どうして今は、こんなに……)

トクン

穂乃果「……///」

海未「……穂乃果」

穂乃果「うみ、ちゃぁん……」

海未「はい……?」

穂乃果「わ、わたし、海未ちゃんに、ついてく……」

海未「ほんとですか?」

穂乃果「うん……」

海未「ありがとうございます。穂乃果……」

ギュゥ……

穂乃果「あ、ぅ……」

海未「……穂乃果」

穂乃果「う、ん……?」

海未「大好きですよ」

穂乃果「――っ!!」
 
575: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:04:21.41 ID:gJpQcdSQ.net
 
海未「大好きです、穂乃果……」

穂乃果「わ、ぁ、うあぁ~……////」シュー

海未「穂乃果……?」

穂乃果「わ、ひゃひ、もぉ……」

海未「えっ、はい?」

穂乃果「っ! わっ、私、も……」

海未「……そうですか。嬉しいです」ニコッ

穂乃果「……ぁ、ぅ」

穂乃果(か、顔が、熱いよぉ……//)


ドキ ドキ


穂乃果(海未ちゃん……)

穂乃果(いつも私を守ってくれる、海未ちゃん……)

穂乃果(私……一体いつの間に、こんなに……)

穂乃果(海未ちゃんのこと、好きになっちゃってたんだろ……)
576: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:07:45.42 ID:gJpQcdSQ.net
 
スタスタ……


海未「……」

穂乃果「……//」ドキドキ

穂乃果(夜の街に、海未ちゃんと二人きり……)

穂乃果(なんか、デートしてるみたい……)

海未「あっ……。穂乃果、お腹すいたでしょう?」

穂乃果「えっ?」



モグモグ……

海未「この辺にもクレープ屋さん、あったんですね」

穂乃果「う、うん……。あの、ありがとう。奢ってもらっちゃって……」

海未「いいですよ、このくらい。おいしいですね、クレープ」

穂乃果「うん……」



スタスタ……

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「はい?」

穂乃果「海未ちゃんは今、幸せなんだよね……?」

海未「はい、幸せですよ」

穂乃果「私も、幸せ……」

海未「……ほんとですか?」

穂乃果「うん……すっごく……///」

ギュッ

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「……穂乃果」


スタスタ……
 
578: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:33:31.52 ID:gJpQcdSQ.net
 
――――

廃墟


ギィ……


海未「こっちです、穂乃果」

穂乃果「……ここ、なに?」

海未「私たちだけの、秘密の場所です」

穂乃果「ひみつの……」

海未「とりあえず、座りましょうか」

穂乃果「あれ……? どうしてこんなところに、クッションが……」

海未「昨日のうちに、準備しておいたのです。ふぅ……」

海未「……ライトも一応用意しておいたのですが、今夜は月が出ているので、十分明るいですね」

穂乃果「……」

海未「……ここなら、誰も来ることはありません。二人きりです」

穂乃果「ふ、二人きり……」

海未「ええ……。このスイッチを使って、思う存分、あなたの匂いを嗅げます」スッ

穂乃果「海未ちゃんは……わ、私の匂い、嗅ぎたいの?」

海未「はい。特に『レベル5』は、私もまだ嗅いだことないので……。非常に、楽しみです」

穂乃果「レベル、5……?」

海未「このスイッチの、最大レベルです。まだ誰も嗅いだことのない、最も強いあなたの匂いです」

穂乃果「そ、そう、なんだ……。海未ちゃんは、そこまで、私の匂いを……?」

海未「はい。私はあなたの匂いが、大好きなんです」

穂乃果「っ! あ、ありがとう。うれしい……///」
 
579: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:34:39.22 ID:gJpQcdSQ.net
  
海未「……穂乃果」

穂乃果「海未ちゃん……私なんだか、眠たくなってきちゃった……」

海未「歩き疲れてしまいましたか。昨日のうちにこの辺は軽く掃除しておいたので、寝ころんでも大丈夫だと思いますが……」

穂乃果「……じゃあ、ちょっとだけ、寝ちゃおっかな」ゴロン

海未「はい……」

穂乃果「海未ちゃん……。私が眠ってる間、その……」

穂乃果「……自由に、してくれていいから」

海未「ふふっ。ありがとうございます」

穂乃果「おやすみ、海未ちゃん……」

海未「おやすみなさい……」

海未「……」


海未(……昨日穂乃果の家から帰ったあとに、探し回って、見つけたこの場所……)

海未(本当は穂乃果の部屋で済ませるのが、最高だったのですが……。万が一計画が失敗した時にと、逃げ場所を用意しておいてよかったです)

海未(しかし雪穂ならともかく、ことりに邪魔されるとは……まさか彼女が元に戻るとは、想定外でした)

海未(まあ、今のことりでは……何の手がかりもなくこの場所に辿り着くことは、不可能でしょうが)

海未(誰にも邪魔されない、この場所で……私は、今夜……)


カチ、カチ、カチ、カチ――


ブワァッ!


海未「……っ!! ふふっ……」

海未(レベル4……っ! 頭がおかしくなってしまいそうな、この刺激的な匂い……っ!)

海未(しかし、レベル5をなるべく長く嗅ぎ続けるためには……。このレベル4にすら耐えられるほどの、強い『耐性』をつけておく必要がある……っ!)

海未(まずは、30分……いえ、1時間は、このままで……)

海未(そして、1時間後には……いよいよ、レベル5です……っ!)
 
580: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:37:32.24 ID:gJpQcdSQ.net
  
――――――


花陽「はぁ、はぁ……」

絵里「そっちはどうだった……?」

凛「ううん、ダメにゃ……。全然見つからないよ……」

にこ「くっ……。あいつら一体、どこいったのよ……っ!」

希「真姫ちゃんたち、海未ちゃんの家には行ってみたん?」

真姫「一度、家には戻ってたみたいだけど……。すぐにまた、どこかへ行ってしまったみたいなのよね」

希「うぅーん……」

にこ「どうすんのよ……。何の手がかりもないんじゃ、キリがないわよ」

真姫「……スイッチを使って穂乃果の匂いを楽しむのが目的なら、二人きりになれる個室とかに入ってる可能性が高いわよね」

にこ「なにそれ……。カラオケとか、漫画喫茶とか?」

希「もしかしたらホテルって可能性も……」

花陽「ほ、ホテル……//」

真姫「分かんないけど、とにかくそういう場所を探してくしかないでしょ」

絵里「聞き込みも重要ね。何かと目立つ二人だし、もしかしたら見た人もいるかも……」

ことり「……」

絵里「ことり?」

ことり「……えっ?」

絵里「あなたも、何か手がかりになりそうなことを思い出せたら、言ってね?」

にこ「そうね。ほのキチの時の自分を思い出したくない気持ちは分かるけど、でも……」

ことり「違うの……。ずっと、思い出そうとしてるの……」

にこ「えっ?」

ことり「だけど、思い出せないの……。ほのキチの時に見たこととか、聞いたこととかは、思い出せるんだけど……」

ことり「ほのキチだった『ことり自身』が、何を考えていたか……。そのことだけは、どうしても思い出せないの……っ!」

にこ「ど、どういうこと……?」

希「……」
 
582: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:40:03.61 ID:gJpQcdSQ.net
  
希「そういえば、ことりちゃん……。ほのキチだった時のことで、思い出せないこともあるかもやけど……」

希「『ほのキチから戻ったことで、思い出した』こともあるんやない?」

ことり「……っ!」

絵里「そういえば、海未が言ってたわね。あなたほのキチの時に、『何か大切なことを忘れてる気がする』って、言ってたらしいじゃない」

にこ「あぁ、言ってたっけ、そんなこと。なんか、思い出せたの?」

ことり「……うん、一応」

にこ「へえ……?」

ことり「でもね、思い出してみたら、全然たいしたことじゃなかったんだ」

花陽「そ、そうなの?」

ことり「うん……。少なくとも、海未ちゃんを探す手掛かりには、ならないかな……」

絵里「そう……」

ことり「ごめんね、役に立たなくて……」

真姫「謝ることはないわよ。それじゃ、また手分けして探しましょう」

にこ「ま、そうするしかないわね」

凛「凛、頑張るよーっ!」

ことり「……」


ことり(分からない……。ほのキチだったことりが、何を考えてたのか……)

ことり(なんで……? なんで何も、思い出せないの……?)

ことり(どうしてことりは、こんなにダメなの……)


ヴーヴー
 
583: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:42:10.28 ID:gJpQcdSQ.net
  
ことり「……?」

ことり(メール……? 誰から――)

ことり「っ!!」


にこ「私たちは、こっちを探すわ」

絵里「それじゃ、私たちはこっちを――」

ことり「待ってっ!」

にこ「っ! なによ……?」

希「どうしたん、ことりちゃん?」

ことり「み、みんな、ありがとう……」

凛「えっ……? な、なに?」

ことり「手伝ってくれて、ありがとう……。ここからは、私一人でいいから……」

花陽「えっ!?」

真姫「な、なに言ってるのよ、あんた一人じゃ……」

ことり「わ、私なら、大丈夫。この中で一番ほのスメルを嗅いできたのは、私だし……。きっと私が一番、耐性があると思うから」

真姫「違うわよっ! あんた一人で、どうやって海未を見つけ出すのかって聞いてるのっ!」

ことり「……場所、分かったの」

真姫「……は?」

にこ「分かった、って……」

花陽「ほ、本当、なの……?」

ことり「うん。だからここからはもう、ことり一人で大丈夫……。後は私に、任せて」

ことり「私が必ず海未ちゃんを、元に戻して見せるから」
 
584: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:45:08.27 ID:gJpQcdSQ.net
 
絵里「でも、一人でなんて……。確かに海未はスイッチを持ってるし、みんなで乗り込むのは、危険かもしれないけど……」

凛「じゃあせめて、凛と真姫ちゃんがついてくよ。それなら……」

ことり「ううん、二人だって、もう一度レベル4を嗅いだら、ほのキチにならないって保証はないでしょ?」

にこ「それを言ったら、あんただって……」

真姫「そうよ。それに、次に海未がスイッチを押したとき、それがレベル4とは限らない」

真姫「いえ、間違いなく、彼女は今度こそ『レベル5』を押す気だわ。そうしたら、流石にあんたでも無理よ……」

ことり「万が一そうなっても、ほのキチになるのはことり一人だけで済むし……。被害は、少なくて済むよ」

にこ「ま、まあ、そうだけど……」

にこ(正直、ほのキチになった時に一番厄介なのが、ことりなのよね……)

絵里(一人だけで済むとは言っても、ことりだけは絶対に二度とほのキチになってほしくないんだけど……でも……)

絵里「……あなたがそこまで言うなら、あなたに任せるわ、ことり」

にこ「そうね……。やっぱり海未を元に戻せるのは、あんただけだろうし」

希「でも、危なくなったらすぐ、連絡してな……? ウチら、すぐ駆けつけるから」

花陽「うんっ。ことりちゃん、頑張って……っ!」

凛「海未ちゃんを元に戻して、今度こそμ's復活にゃーっ!」

ことり「みんな、ありがとう……」

真姫「はぁ、仕方ないわね……。それじゃ、私たちは帰るけど……」

真姫「……その前に、あんたに伝えておくわ」

ことり「えっ……?」

真姫「『ほのキチから元に戻る方法』。その、私が導き出した結論を――」
585: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:49:40.32 ID:gJpQcdSQ.net
  
――――――


タッタッタッ……


ことり「はぁ、はぁ……っ! 海未ちゃん……っ!」

ことり(急がなきゃ……っ!)

ことり(レベル5……。それを嗅いじゃったら、海未ちゃんはもう、元には戻れないかもしれない……っ!)

ことり(それだけは、絶対ダメ……っ! 穂乃果ちゃんだって、そんなの望んでないっ!)

ことり(私が……私が二人を、助けるんだ……っ!)

ことり(いつも二人に助けられてきた、私が……っ! 今度は、私がっ!)


「それにしてもさっきの、ほんとにすごかったよねー」

「ねー。あんな可愛い子が、男の人を片手でやっつけちゃうなんてさー」

「かっこよかったなぁー。あんな人に守られたら、絶対好きになっちゃうよー」

「あー、分かる。まあ、女の子だけどね……」


ことり「はぁ……。はぁ……」


「でもなんかさ、遠くだからよく見えなかったけど……。誰かに似てなかった?」

「えっ……? あー、そういえば……」

「そうだ、えーっと、μ'sの……。海未ちゃん?」

「そうそう、そんで隣にいたのが、穂乃果ちゃん――」


ことり「ま、待ってっ!?」

「「えっ?」」
  
586: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 22:52:17.47 ID:gJpQcdSQ.net
  
女A「あっ……」

女B「あれ……? μ'sの……こ、ことりちゃん?」

女A「わぁ、本物だぁー。可愛いーっ!」

ことり「あ、あはは、ありがとうございますっ。それで、えっと……」

ことり「い、今の話……ほんと、ですか?」

女B「えっ? う、うん……」

女A「でも、ほんとに海未ちゃんたちだったかどうかは……」

ことり「二人はどっちへっ!?」

女B「えっ……。あ、あっち、かな……」

ことり「ありがとうございますっ!」


タッタッタッ……


女A「どうしたんだろ?」

女B「さぁ……」



ことり(そっか……海未ちゃんは……)

ことり(ほのキチになった海未ちゃんは、今でもちゃんと穂乃果ちゃんのことを、守ってあげてるんだね……)

ことり(すごいな……。やっぱり海未ちゃんは、すごいよ……。いつだって海未ちゃんは、強くて、かっこよくて……)

ことり(優しい……)


ことり(ほんとに、なんで忘れちゃってたんだろ……)

ことり(こんな、当たり前なこと……。私にとっては当たり前すぎて、全然たいしたことじゃないけれど……)

ことり(でも絶対に、忘れちゃいけない気持ちだった……)



ことり(そうだ……。私は昔からずっと、海未ちゃんのことが、好きだったんだ――)
  
649: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 21:39:01.19 ID:rkpA3g6l.net
『そ、そのだうみです……よ、よろしくおねがいしますっ』

『あっ……。みなみことりですっ。よろしくねっ、えっと……』


『……う、うみちゃんっ』


私の一番の親友の穂乃果ちゃんが、かくれんぼの最中に連れてきた女の子……それが、海未ちゃん。

最初は仲良くなれるか、不安だった。ことりはいつも積極的な穂乃果ちゃんとは、違うから……。

海未ちゃんはとっても恥ずかしがり屋さんで、いつも下を向いてるような女の子だった。

……不安だった。正直、すごく不安だった。

だけど――


『うえぇえぇん……ふえぇえぇん……』

『あ、あの、こと……み、みなみさんっ、だいじょうぶですかっ?」

『うわぁああぁんっ! あああぁあん……っ!』

『こ、ころんじゃったんですか……? え、えっと、あの……』

『あぁぁあぁん……いたいよぉ……』

『……こ、このハンカチ、つかってくださいっ。なかないで、みなみさん……っ』


それ以上に海未ちゃんは、優しい女の子だった。

いつの間にか、私と海未ちゃんは、仲良しになってた。

いつの間にか、私と穂乃果ちゃんと海未ちゃんの、三人でいることが多くなってた。

穂乃果ちゃんと、海未ちゃん……二人といると、なんだかすごく安心するようになってた。

一番の親友で、ずっと仲良しで、大好きだった穂乃果ちゃんと……。

……海未ちゃんと。

月日が流れて……いつの間にか、海未ちゃんは下を向かなくなってた。

いつの間にか、海未ちゃんは強くてかっこよくて、凛々しい女の子になってた。

いつの間にか、海未ちゃんはみんなの憧れになってた。

いつの間にか、私は。


海未ちゃんのことばかり、見るようになってた。
650: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 21:42:55.84 ID:rkpA3g6l.net
  
『海未ちゃんが好きなのぉっ!!』


そして私は、一番大好きな親友の、そんな気持ちを知ってしまった。

ううん、本当はずっと前から、分かってたんだ。

いつかきっと穂乃果ちゃんは、海未ちゃんのことを好きになるって……。


そして海未ちゃんの方も、そんな穂乃果ちゃんのことが、昔からずっと好きなんだってことも。


私は海未ちゃんのことばかり見てたけど……海未ちゃんはずっと、穂乃果ちゃんのことばかり見てたんだってことも。


気づいてた。

だから……私は決めたんだ。


ことり(もしも二人が、『恋』をすることになったら……。私はそれを、全力で応援するって)

ことり(私の初めての友達と、私が初めて恋をした女の子……)

ことり(私の大好きな二人が、幸せになれるなら……。ことりもそれだけで、幸せだから――)



ことり「だから、止めるんだ……。こんな、間違ったこと……」

ことり「二人に幸せに、なってほしいから……。海未ちゃんを、元に戻すんだ」

ことり「全部元通りに、なって……。海未ちゃんと穂乃果ちゃんが、一緒になれたら……」

ことり「その時やっと、私は……」


やっと私は、自分の恋を諦められるんだ。
 
651: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 21:48:36.81 ID:rkpA3g6l.net
   
ことり「はぁ、はぁ……」

ことり「……っ!!」


タッタッタッ……


ことり(だからこの気持ちを私が海未ちゃんに伝えることは、きっとない……)

ことり(でも、それでいいんだ……。私は二人の恋を応援するって、決めたんだから……)


ことり(……なんてそんなの、ただの言い訳だ)

ことり(本当はただ私に、海未ちゃんに告白する勇気が、ないだけ……)

ことり(……)

ことり(……でも)

ことり(もしもほのキチの時の、私なら……)

ことり(あの時くらい、積極的なことりになれたら……)


『はぁはぁ、穂乃果ちゃん、すごいよ、いい匂いだよぉ……//』

『気づいたんだ……っ! 私はずっと、穂乃果ちゃんのことが、大好きだったんだっ! ってっ!』

『ぺろっぺろっ、おいしぃっ! 穂乃果ちゃんの汗、おいしいぃよぉっ!』


ことり「っ!! だ、だめだめっ!////」ブンブン

ことり「な、なんでこんなこと考えてるの……。あ、あんなの、ことりじゃないもん……っ!」

ことり「ことりは二度とほのキチになんか、ならないんだから……っ! はぁ、はぁ……っ!」



ことり「はぁっ……。あれ……?」

ピタッ

ことり「……」

ことり「このメール、まだ、続きが――」
 
652: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 21:53:28.38 ID:rkpA3g6l.net
    
――――――


穂乃果「……」スゥ

海未「……」

スンスン

海未(どれくらい時間が経ったのでしょう……。レベル4にも、もうだいぶ慣れてきました)

海未(……どれ、少し近づいてみましょう)

海未「……」ズイッ

穂乃果「……」

海未「……穂乃果」

スゥゥゥ

海未「……っ」

海未(なんて、すごい……。至近距離での、レベル4……)

海未(……)

ポチポチ

穂乃果「ん、ぅ……」

海未(シャツのボタンを、少し開けて……首元に、鼻をくっつけて……)

スン……

海未「……っ!!」

海未(ゼロ距離での、レベル4……。恐らくことりですらまだ、試したことのない匂い……)

海未(気絶しそうなほどの、刺激的な匂い……でも……)

海未(今の私なら、耐えられる……っ!)
 
653: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 21:55:43.08 ID:rkpA3g6l.net
  
海未(あぁ、穂乃果……あなたは……)

海未(あなたはどうして、こんなにも良い匂いがするのですか?)

海未(昔から、ずっとそうです……。私は子供の頃からずっと、あなたの匂いに惑わされてきました)

海未(ほのキチになる前から……。スイッチのことなど、知る前から――)

海未(私はいつだって、あなたの匂いを嗅いで、満たされてきました……)

スッ

海未(……もう、十分でしょう)

海未(準備は、整いました……。あとはもう一度、もう一度だけ、スイッチを押すだけ……)

海未(それだけで……私はまだ誰も見たことのない、『新世界』へと辿り着けるのです)

海未(ほのスメル、レベル5……。正真正銘、最上級の、穂乃果の匂い……)

海未(……もはやこの世界に、何の未練もありません)

海未(一緒に旅立ちましょう、穂乃果……)


ザッ


海未「……」


海未「……まさかここまで来るとは、思いませんでしたよ」






海未「ことり……」

ことり「……海未ちゃん」
 
657: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 22:03:43.09 ID:rkpA3g6l.net
  
海未「よく分かりましたね、ここが……」

ことり「……うん」

海未「どうして、ここだと……?」

ことり「『メール』で、教えてもらったの」

海未「メール……? 誰からのですか?」

ことり「それは、ごめん……。言えない、かな」

海未(……どういうことですか? 昨日たまたま見つけたばかりのこの場所を、特定できる人物などいるはずが……)

ことり「はぁ、はぁ……」

海未「……お疲れのようですね。随分、探し回ったのではないですか?」

ことり「そ、そう、だね……。はぁ……」

海未「お一人ですか? てっきり凛や真姫ぐらいは、連れて来るかと思いましたが」

ことり「みんなには途中まで協力してもらってたけど……。今は、一人だよ……」

海未「……まあ、いいでしょう。それで、なにかご用ですか?」

ことり「海未ちゃんと、穂乃果ちゃんを……迎えに来たの」

海未「迎え……ですって?」

ことり「うん……。一緒に、帰ろう? こんな暗い場所に、いつまでもいないで」

ことり「みんな、心配してるよ? だから、帰ろうよ、海未ちゃん……」

海未「お断りします」

ことり「っ! う、海未ちゃん……」

海未「帰るなら、お一人でどうぞ。私はまだしばらく、ここにいます」

ことり「……そんな」

海未「それとも……」

海未「……やはりあなたも体験していきます? 『レベル5』を……」スッ

ことり「っ!? ま、まってっ!」
 
658: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 22:10:31.53 ID:rkpA3g6l.net
 
海未「……『まって』?」

ことり「はぁ、はぁ……っ!」

海未「いいでしょう、待ちますよ。別に私は、そこまで急いでるわけではありませんので」

海未「でも……。あなたは、そうじゃないでしょう?」

ことり「はぁ……」

海未「今この場所には、レベル4が充満している……。あなたもそれを分かってるからこそ、そうやって、『対策』をしているのでしょうが」

ことり「……っ」グッ

海未「息を止めつつ、私のハンカチで、鼻を覆うことで……。だけど、分かっているはずです」

海未「そんな対策が、いつまでも続けられるわけではないことくらい……。長時間この場所にいれば、いずれあなたはまた、レベル4を嗅ぐことになる」

海未「そうしたら再びあなたは、ほのスメルを貪る、ほのキチとなるのです」

ことり「……な、ならないもん」

海未「はい?」

ことり「も、もう私は、ほのキチになんて……ならないもん」

海未「ほう。では、どうするんですか? ここにいる限り、あなたがほのキチになる危険性は常に付きまといますよ?」

海未「それとも……力づくで私から、スイッチを奪ってみますか?」

ことり「そ、そんなこと、できっこないよ……」

海未「分かってるじゃないですか。今のあなたでは、覚醒した私に勝つことなど不可能です」

海未「と、なると……。もう諦めるしかないように、思えますが」

ことり「ううん、そんなことないよ……。まだ方法は、あるもん。この部屋からほのスメルを、一瞬で消す方法が……」

海未「……それは、一体どういった方法ですか?」

ことり「簡単だよ……。海未ちゃんが元に戻ればいいんだ。そしたら戻った海未ちゃんが、スイッチのレベルをリセットしてくれるもん……」

海未「……」
 
659: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 22:15:25.75 ID:rkpA3g6l.net
   
海未「ふふっ」

海未「ふふっ、ふっ、ふふふっ……っ!」

海未「そうですよね……。あなたの目的は最初から、私を元に戻すことですものね」

ことり「……」

海未「ですが……残念ながら現時点において、私には元に戻りたいなどという意志は一切ございません」

海未「そんな私を、あなたは本当に、元に戻すことができるんですか?」

ことり「うん……やって、みるよ」

海未「……ほう」

ことり「だから、海未ちゃん。私と、『勝負』してくれないかな?」

海未「勝負……?」

ことり「うん。これから私が海未ちゃんを、元に戻して見せるから……」

ことり「……海未ちゃんが元に戻ったら、私の勝ち」

海未「……」

ことり「それまでに私がギブアップするか、レベル4に耐えられなくて、ほのキチになっちゃったら……海未ちゃんの、勝ち」

ことり「それと勝負中に、スイッチを使うのは、ナシ……。っていうルールで、どうかな」

海未「……その勝負を受けることによって、私にどんなメリットがあるのですか?」

ことり「特に、ないけど……」

海未「ならばどうしてそんな勝負を、私が受けると思うのですか?」

ことり「えっ。受けて、くれないの……?」

海未「……」
 
660: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 22:21:42.35 ID:rkpA3g6l.net
   
海未「はぁ……」

海未「……いいでしょう。今回は、あなたの思惑に嵌ってあげます」

海未「その勝負、受けて立ちますよ。戻せるものなら戻してみてください、ことり」

ことり「ありがとう……」

ことり(やっぱりだ……。こうやって勝負形式にしちゃえば、海未ちゃんの性格なら絶対に断らない……)

ことり(や、やった。これでレベル5を少しだけ、先延ばしにできた……)

ことり(このチャンスを逃しちゃ、だめだ……。これが海未ちゃんを元に戻す、最後の機会かもしれない……。頑張らなきゃ……っ!)

ことり「ぷはっ、はぁ、はぁ……」スゥゥ

海未(……息継ぎのタイミングで、私のハンカチを思い切り吸って、ほのスメルをごまかしているようですね)

海未(今はそれで何とかなっているようですが……時間の問題でしょう)


ことり「じゃ、じゃあ、勝負開始ってことで……」

海未「はい。どんな方法を使っても、構いません。私を元に戻してみてください」

ことり「……」

スタスタ……


穂乃果「……」スヤスヤ


ことり(穂乃果ちゃん……待っててね。すぐに、終わらせるから……)

ことり(そうしたら、三人で……。また仲良く一緒に、帰ろうね)


ザッ


海未「……」

ことり「じゃあ、いくよ……?」

海未「ええ、いつでもどうぞ」

ことり「……」


ガバッ
 
662: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 22:26:50.75 ID:rkpA3g6l.net
    
――――――――
――――――
――――
――



真姫「まず、ほのキチから元に戻る条件として、今分かっていることは二つ」

真姫「一つは、穂乃果以外の、誰かの『匂い』を嗅ぐこと。これは多分、必須条件ね」

絵里「でも、誰の匂いでもいいわけではないわよね?」

凛「きっとそうだよ。だって凛は、大好きなかよちんの匂いだったからこそ、戻れたんだもんっ」

花陽「り、凛ちゃん……//」

真姫「でもね。実は凛はほのキチになった直後、病院で起きた時に、一度花陽の匂いを嗅いでいるのよ」

凛「えっ、そうなの?」

真姫「ええ。でもその時は、『匂いが混ざっちゃうから』とか意味わかんないこと言って、花陽を追い出したのよね」

凛「ええっ!? うそだっ、凛はかよちんにそんなことしないよっ!」

花陽「……」ズーン

凛「わぁっ! 違うの、かよちんっ! これは何かの間違いにゃあっ!」

ことり「つまり、その時は大好きな花陽ちゃんの匂いでも、凛ちゃんは戻らなかったってこと……?」

希「そういえば、真姫ちゃんもにこっちの匂いじゃ、戻らなかったんよね。真姫ちゃんはにこっちのこと、大好きやのに」

真姫「は、はぁっ!? べ、別に好きなんかじゃっ」

にこ「真姫が戻らなかった理由なんて、分かりきってるわよ」

真姫「えっ?」

にこ「にこが、く、臭かったからでしょ……。ふん……」

真姫「そんなわけないでしょっ! にこちゃんは、ちゃんと良い匂いだったわよっ!」

にこ「えっ……? そ、そうなの?」

真姫「そうよ。あ、当たり前でしょ……」

にこ「……//」

希(にこっちって、ほんまに照れてる時は黙るんやな)

絵里(ていうか、よっぽど気にしてたのね……)
 
663: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 22:44:09.80 ID:rkpA3g6l.net
  
真姫「ちなみに私の場合は誰が好きとかないから、きっとμ'sの誰の匂いでも良かったのよ。希でもにこちゃんでも、他の誰でもね」

希(誰が好きっていうか、μ'sの全員のことが好きやからな、真姫ちゃんは……)

ことり「え、えっと、つまりただ匂いを嗅ぐだけじゃ、ダメだってことだよね……?」

真姫「そう。凛は花陽の匂いで戻れたはずなのに、私はにこちゃんの匂いで戻れたはずなのに、その時は戻れなかった」

真姫「そこで……。ほのキチに戻るための、『もう一つの条件』。問題は、こっちよ」

希「もう一つの条件って?」

真姫「私の推測だけど……。それは、『気持ちの変化』よ」

にこ「よく分かんないんわね……」

真姫「本当は『元に戻りたい』って意志が重要だと思うんだけど。でも基本ほのキチは、自分から元に戻りたいなんて思わないのよね」

絵里「今までのほのキチを見てると、そうね。特に海未は、手強そうだわ」

真姫「だから、まずは……なんでもいい。とにかく『気持ちを変化させること』が、大事なのよ」

真姫「ほのキチは、基本的に穂乃果と、ほのスメルのことしか考えてない。そんなどうしようもないほのキチを、正気に戻す方法は――」

真姫「まず他の誰かの匂いで、ほのスメルから気を逸らすこと。その隙に、ほのスメルに固執する強固な気持ちを、柔らかく溶かして、正常な形に『変化』させること」

真姫「これが私の考える、『ほのキチから元に戻るプロセス』よ」

ことり「……」
 
664: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 22:44:53.80 ID:rkpA3g6l.net
       
真姫「ことり。まずはあなたの匂いを、海未に嗅いでもらうの。抱きついたりできれば、確実だけど……。もしかしたら、近づくだけでもいいかもしれない」

真姫「大事なのは、その後……。海未の気持ちを、どう揺さぶるか」

真姫「私や凛のケースから考えると、彼女の気持ちを揺さぶる、確かな武器になり得るのは――」


『目を、覚まして……っ! ひぐっ……。思い出してっ!』

『私のこと思い出してよぉっ! 凛ちゃぁんっ!』


『ウチを信じてくれて、ありがとう。μ'sのことを想ってくれて、ありがとう……』

『計画は、失敗しちゃったけど……。ウチ、真姫ちゃんに相談して、本当によかったよ……っ!』



真姫「――あんたの、『言葉』よ」
   
665: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/15(木) 22:45:41.85 ID:rkpA3g6l.net
   
――――――――
――――――
――――
――


ギュゥゥ


海未「……」


ことり(よ、よし、とりあえず海未ちゃんに、抱きつけた……。これなら海未ちゃんの匂いを私も嗅げるし、ほのスメルの対策にもなる……)

ことり(とにかく海未ちゃんを元に戻すためには、私の匂いを嗅いでもらわなきゃ。真姫ちゃんも、これは必須条件だって言ってたし)

ことり(でもこれだけじゃ多分、ダメなんだ。問題は、ここからどうするか……。なんだけど)

ことり(……『言葉』、か――)


グイッ


ことり「――へっ?」


グルン

ドタァンッ!


ことり「っ!!?」

海未「……」

ことり「いっっ――」


ことり「――ったぁあぁいっ!!?」

海未「……ごめんなさい。投げる時に、力が入り過ぎてしまったみたいです」

ことり「ぁあ……っ! いた、ぁい……」

ことり「ど、どう、してぇ……ひどいよ、うみちゃぁん……」

海未「酷いって……。私は元に戻りたくなんてないのですから、抵抗するのは当然でしょう」

ことり「っ!! そ、そんなぁ……う、うぅ~……」グスッ

ことり「ふえぇぇんん……。お、おしり、いたいよぉ……っ!!」

海未「……あの、もしかしてこれ、『勝負アリ』というヤツなのでは?」

ことり「うえぇえぇん……っ!」
  
680: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:03:25.87 ID:HbNGDs2c.net
  
海未「……あっ?」

ことり「あ、あぁ、うわぁあぁ、ぁ……」

ことり「っ!! あっ、あぁ……///」

海未「……あぁ、『吸ってしまった』ようですね。床にたたきつけられた衝撃で、対策が崩れましたか……」

海未「このハンカチは、返してもらいますね」スッ

ことり「あっ……! うっ、ひぐっ、うぅ~……」

海未「しかし短時間とはいえ、あなたはこれまでに三度、レベル4を嗅いでいます。ある程度の耐性は、できてるようですね」

海未「なのですぐには、ほのキチ化には至らないでしょう……。そのまま息を止め続けられるのなら、ですが」

ことり「うっ、はぁ、あ、あぁ。はぁっ、はぁっ……」

ことり(いたい……っ! いたいよぉ、苦しいよぉ……)

ことり(でも、それ以上に……あ、あぁっ///)

ことり(頭が、蕩けちゃうぅ……。だめ、だめえ……っ////)

ことり(今、意識を失ったら……また、ほのキチになっちゃう……っ!)

ことり「はぁ、はぁっ! うっ、うぅ、えぐっ……」

海未「……それで、どうします? もう、やめておきますか?」

ことり「うっ、や、やめないもん……っ! ま、まだ、ことりは、立てるもん……っ!」ググッ

海未「そうですか。力の調整が難しいので、次もあまり手加減できる自信はないのですが……」

ことり「っ!? あぅ、海未ちゃん、やっぱり痛いのも、ナシにしよ……?」

海未「……善処します」
 
682: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:13:01.63 ID:HbNGDs2c.net
 
ドタァンッ!


ことり「ひゃぁあんっ!」

海未「ごめんなさい、痛かったですか? 先ほどよりは力を抜いたつもりですが……」

ことり「いったぁい……っ! ふえええぇん……っ!」グスッ

ことり「っ! うっ、あ、あぁあぁ……。はぁ、はぁ……///」

海未「またいくらか吸ってしまったようですね。このままではそう遠くないうちに、あなたは再びほのキチになるでしょう」

海未「いっそ、『なってみる』というのもいいんじゃないですか? 今のあなたのままじゃ、間違いなく私には勝てないんですから」

海未「ほのキチ化したあなたなら、いい勝負ができるかもしれませんよ。『彼女』の厄介さは、私が一番よく知ってますから……」

ことり「だ、ダメ、だよ……。ほのキチになったら、また、忘れちゃう……」

海未「忘れる……?」

ことり「もう忘れたく、ない……。だから私はもう、二度とほのキチには、ならない……っ!」ググッ

海未「……ことり。もう、やめにしません? 痛いのはもう、嫌でしょう?」

ことり「い、嫌、だけど……。ここで諦めるのは、もっと嫌だよ……っ!」

海未「……」
 
683: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:13:39.09 ID:HbNGDs2c.net
 
海未「……花陽は」

ことり「えっ……?」

海未「花陽は、諦めませんでした。本当に、最後まで……。痛い思いをしてもボロボロになっても、凛が元に戻るまで、決して彼女は諦めなかった」

海未「そして、奇跡が起きました……。彼女の勇気が、奇跡を起こし……凛は元に戻ることが、できました」

海未「それは確かに、素晴らしいことです。そんな彼女を、私は尊敬しますし……感謝も、しています」

海未「ですが、それはたまたま結果がそうだったから、良かったというだけの話です」

ことり「……」

海未「『たまたま奇跡が起きたから』、良かったものの……。あのまま凛は元に戻らず、ただ花陽がケガをしただけで、終わっていた可能性だってあるんです」

海未「もしかしたら、もっと大きなケガをして……。『あの時すぐに諦めておけばよかった』と、後悔することになっていた場合だって、考えられるんです」

ことり「な、なに、言ってるの……? 海未ちゃん……」

海未「『諦めない』という選択は、必ずしも正しいとは限らない、という話です」
 
684: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:16:54.46 ID:HbNGDs2c.net
   
海未「あの時の花陽には、誰もが驚かされました。普段は弱気な彼女に、あそこまでの根性と、勇気があったなんて……」

海未「きっと凛という親友のためだからこそ、彼女はあそこまで頑張れたんでしょう。でも『普通は』あそこまで、人は頑張れない……」

海未「だから別にあの時花陽が諦めていたとしても、きっと誰も彼女を責めたりはしなかった。私の言っていることが、分かりますか、ことり?」

ことり「う、うぅ……」

海未「しかも今回は、あの時とはまた状況が違います。なにせ今度は私が、ほのキチになってしまったのですから」

海未「そうですね。凛が『速さ』に特化したほのキチだとしたら、私は『力強さ』に特化したほのキチとでも言っておきましょうか」ググッ

パキ、パキ

ことり「……っ!?」ビクッ

海未「とても女の子の手とは思えませんよね。怖がるのも、無理はありません」

海未「私は別に、あなたにケガをさせるつもりはありませんが……それでもこれ以上続ければ、どんなことになるかは想像がつくでしょう」


『あんな可愛い子が、男の人を片手でやっつけちゃうなんてさー』


ことり「ひっ、う……」ブルッ

海未「ここには眠っている穂乃果と、私と、あなただけ……。他に誰も助けてくれる人は、いません」

海未「そもそも、無茶だったんです。あなたみたいな人が、たった一人でこんな場所に、来るなんて……」

海未「あなたは、花陽とは違う。あなたは『諦めるべき』です」

ことり「や、やめて……。うっ、ぅ、言わないで、海未ちゃん……」

海未「あなたのことは、私が一番よく知っています……」

海未「あなたは可愛くて、おっとりしていて、お洒落で、服飾が得意で、秋葉原のメイドカフェでアルバイトをしていて、親友に誘われて、最近スクールアイドルを始めた――」


海未「――ただのか弱い、『普通の女子高生』です」
  
686: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:23:19.44 ID:HbNGDs2c.net
  
ことり「……っ」グスッ

海未「私に投げられた痛みと、息を止め続ける、苦しみ……。そして脳を刺激する、ほのスメルの快楽――」

海未「こんなの、普通の女子高生が耐えられるわけありません。本当は今すぐ、逃げ出したいはずでしょう?」

海未「いいんです、それで。あなたはこんなところにいるべきではありませんし、こんな時間に、こんなことをしている場合ではないんです」

海未「あなたは弱いんですから。でも、それでいいんです。女の子なんですから……。それが、『普通』なんですから」

ことり「うぅ、うっ……」

ことり(分かってる、そんなの……。私がダメなのは、弱いのは、私が一番よく知ってる……っ!)

ことり(そうだ……。私は二人と違って、『普通』だから……。何も持ってない、平凡な女の子だから……)

ことり(いつだって、『特別』だった二人の後ろに、ついてくだけだった……)

ことり(どんなことにも積極的で、いつも明るい笑顔でみんなを引っ張る、穂乃果ちゃんと……)

ことり(真面目で清楚で、凛とした姿がかっこよくて、いつだってみんなの憧れだった海未ちゃん……)

ことり(そんな二人の傍で、私はいつも、ニコニコ笑ってるだけで――)


ことり「うっ、ぅ……で、でも、でもぉ……っ!」

海未「……」

ことり「い、今だけは、諦めたく、ない……っ! 諦めたく、ないよぉ……っ!!」

ことり「だ、だって、こんなの、間違ってるもん……っ! だから、だからぁ……」

ことり(私は、二人のために……。二人の、幸せのために――)


ことり「海未ちゃん……っ!」

ガシッ


海未「……っ!」

ことり「海未ちゃん、お願いだからぁ……。目を、覚ましてよ……っ! 正気に、戻ってよぉっ!!」
 
687: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:31:18.74 ID:HbNGDs2c.net
  
海未「……ことり」

ことり「はぁーっ。はぁーっ……」

ことり(意識、が……。もう、だめ……)

ことり(頭も、体も……。もう、限界だよ……)

ことり(おねがい、海未ちゃん……。私の『言葉』、届いて――)



海未「……いい加減にしてください」

ことり「……えっ?」

ドンッ!

ことり「っ!? あっ……」フラッ

ドサッ

ことり「あ、ぅ……」

海未「これだけ言っても……まだ、分からないんですか?」

ことり「う、海未、ちゃん……」

海未「どうして、諦めないのですか? どうして、分かってくれないのですか……っ!?」

ことり「えっ……」

グイッ!

ことり「っ! うっ……」

海未「私は元に戻る気はありませんっ! ですからもう、諦めてくださいっ!」

ことり「ふっ、うぅっ、やだっ、やだぁ……っ!」

海未「っ! だったらはっきり、言いましょうか……っ!?」

ことり「ひぐっ、うっ、うぅ」

海未「『私たち』の邪魔をしないでください、ことりっ!!」

ことり「――っ!!」
 
688: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:36:39.11 ID:HbNGDs2c.net
  
ことり(じゃま……?)


海未「ことり……あなたは一体なんのために、ここまでするんですか?」

ことり「……っ! わ、私は……」

海未「あなたは先ほど、『こんなの間違ってる』と言いましたね……。なにも、知らないくせに」

海未「もしかしてあなたは、『私のため』だとか……あるいは『穂乃果のため』だとか、そんな理由で、ここまで来たんじゃないんですか?」

ことり「っ!!」

海未「そうだとしたら……。勘違いも甚だしいです」

ことり「……」

海未「いいですか、ことり……」

海未「……私と穂乃果は、先ほど、『幸せ』を誓い合ったんです」

ことり「……えっ」

海未「レベル5を迎えることで……。今夜、私と穂乃果は、幸せになれるんです」

海未「それをどうしてあなたは、邪魔するのですか?」

ことり「そ、それは……」

海未「やめてくださいよ、お願いですから……。あなた一体、どういうつもりなんですか?」

海未「ことり……。あなたは私たちの幸せを、願ってはくれないのですか……?」

ことり「……」


ことり(私は……二人のことを、邪魔していただけ……?)
 
690: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:41:53.09 ID:HbNGDs2c.net
  
ことり(私は……何をしてるんだろう?)

ことり(昔からずっと……。自分の幸せなんか、どうでもよくて……。ただ二人が幸せなら、それでよかった――)

ことり(だってそれが、『ことりの幸せ』だから……。二人が幸せそうなのが、嬉しくて……。だから私はいつも、ニコニコ笑ってたんじゃないの……?)

ことり(なのにどうして私は今、二人の幸せを、邪魔して……)

ことり(全部、勘違いだったんだ……。ことりが勝手に、『海未ちゃんが元に戻ることが二人の幸せにつながる』って、思い込んでただけで――)


ことり「ごめん、なさい……」

海未「ことり……?」

ことり「ごめんなさい、海未ちゃん……。私、どうか、してた……」

ことり「わ、私、ずっと、二人に幸せになってほしかったの……。それが、ことりの幸せなのに……」

ことり「うっ、うぅ、ごめんなさい、ごめんなさぁい……」

海未「……選んでください、ことり」

ことり「……えっ?」

海未「もう一度、ほのキチになりたくないのなら……。『こちら側』に来たくないのなら、今すぐ帰ってください。レベル5は、あなたがこの場所から離れたのを確認してから押します」

海未「ですが……。もしもあなたにまだ、『その意志』があるのなら――」

海未「このまま一緒に、レベル5を迎えましょう」

ことり「……私、も?」

ことり「私もここにいて、いいの……?」

海未「当然です。あなたは私たちの、幼馴染なんですから」

ことり「……」


ことり「……ありがとう、海未ちゃん」



ことり(こんな時なのに……。やっぱり海未ちゃんは、優しいな……)

ことり(……ごめんね、みんな。私、無理だったよ)

ことり(私には……二人の幸せを邪魔することなんて、できなかったよ……)
 
691: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:46:47.57 ID:HbNGDs2c.net
  
ゴロン

ことり「……海未ちゃん?」

穂乃果「……」スヤスヤ

海未「どうせですから、こうして三人で寝ころびながら、レベル5を迎えましょう」

ことり「そう、だね……」

海未「……勝負の方は、私の勝ちですね」

ことり「えっ? あ、うん……」

海未「ふふっ……」

ことり「……あはは」

ことり(……これで、いいんだ)

ことり(海未ちゃんが、笑顔でいてくれるなら……。穂乃果ちゃんが安心して眠れるなら、それでいいんだ)

ことり(そして、そんな二人の近くに、私もいられるなら……こんなに幸せなことは、ないよ)

ことり「ねえ、海未ちゃん……」

海未「はい……?」

ことり「海未ちゃんは、その……」


ことり「……穂乃果ちゃんのこと、好き?」

海未「ええ。もちろんです」

ことり「それは、例えば……世界で一番とか、そのくらい?」

海未「そうですね……そう言っても、過言ではありません」

ことり「……ふふっ、そっか」

海未「……?」


ことり(よかった……。二人はやっぱり、両想いだったんだ)

ことり(昔から思ってたんだ……。二人は、お似合いだって。私なんて、入れる隙間もないくらい……)

ことり(でも海未ちゃんは、私も『ここにいていい』って、言ってくれた……)

ことり(うれしい、な……)



ことり(……)
  
692: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 21:52:42.15 ID:HbNGDs2c.net
  
海未「……では」スッ

ことり「……」



ことり「……海未ちゃん、私ね」

海未「はい?」

ことり「ほのキチだった時に、忘れてたことがあるの……。今はもう、思い出せたんだけど」

海未「……あぁ。そういえば、前に言ってましたね。何か大切なことを、忘れてる気がすると……結局、なんだったんです?」

ことり「それがね、思い出してみたら、そんなに大したことじゃなかったんだ」

海未「ふっ、そうですか。よくあることですね」

ことり「うん……。だから、言わないでおくね」

海未「なんですか……気になるじゃないですか」

ことり「あはは。でもね、実は……」


ことり「……『もう一つ』、あるの」

海未「もう一つ……?」

ことり「これはまだ誰にも言ってないけど、実は私、『もう一つ』思い出したことがあって……。それで……」

ことり「……本当に大切なのは、そっちの方だったんだ。本当に忘れちゃいけなかったのは、そっちの方だった……」

海未「……」

ことり「もう一度ほのキチになったら、また忘れちゃうかもしれないから……。だからレベル5の前に、確認しておいてもいいかな?」

海未「構いませんが……。確認、とは?」

ことり「うん……。あれはね。確か、高校に入ってすぐの時……。ちょうどμ'sが始まる、一年くらい前、だったかな」

海未「一年前……?」

ことり「海未ちゃん、私ね……」


ことり「私、見ちゃったんだ……」



ことり「誰もいない教室で……海未ちゃんが、一人で――」





ことり「体操着の匂いを、顔を真っ赤にして、必死に嗅いでる姿を……」
  
704: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:02:46.46 ID:HbNGDs2c.net
   
海未「……」

海未「……見間違い、では?」

ことり「ううん。あれは確かに海未ちゃんだったし、体操着だったよ……」

海未「……そう、ですか」

ことり「海未ちゃん……。海未ちゃんは……」

海未「……」ムクッ

海未「いえ、やっぱり見間違いのはずです。私はそんなこと、した覚えは――」

ことり「海未ちゃん……私、知ってるんだ」

海未「は……?」

ことり「ごめんね、今まで黙ってて……。でも実は私、結構前から気づいてたの。穂乃果ちゃんは、気づいてなかったみたいだけど……」

海未「な、なにをですか……?」

ことり「……」ムクッ

ことり「いつも海未ちゃんが、穂乃果ちゃんの匂いを、こっそり嗅いでたこと」

海未「……」
 
705: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:04:08.12 ID:HbNGDs2c.net
  
ことり「スイッチとか、関係なくて……。海未ちゃんは、ずっと昔から、子供の頃から、穂乃果ちゃんの匂いを嗅いでたんだよね」

ことり「いつも穂乃果ちゃんのことばかり、見ていた海未ちゃんは……。いつも穂乃果ちゃんの匂いばかり、嗅いでたんだよね」

ことり「私、いつも二人の近くにいるから、気づいてたんだ……。海未ちゃんが穂乃果ちゃんの傍にいるときは、いつも鼻をスンスンさせてたこと……」

海未「な、なにを言ってるんですか……。そんなこと、ほのキチになった今ならともかく、普段の私がするわけないじゃないですか」

海未「しかも、子供の頃からなんて。そんな前からこっそり幼馴染の匂いを嗅いでたなんて、まるで変態みたいじゃないですか」

ことり「……そう、だね」

海未「嗅ぐなら堂々と、です。なぜなら私は、変態ではありませんから」

ことり「海未ちゃんは最近、口癖みたいに言うようになったよね……。『私は変態じゃない』、って」

海未「だって、仕方ないじゃないですか。私は変態では、ないんですから……」

ことり「……でもね、私、思うの」

海未「なんですか?」

ことり「堂々と嗅ごうがこっそり嗅ごうが、同じことなんじゃないのかな、って」

海未「……」



ことり「海未ちゃんは、変態だよ」
  
710: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:11:53.27 ID:HbNGDs2c.net
  
海未「違います」

ことり「……」

海未「なにを言い出すかと思えば……そんなことで私を、揺さぶろうとしていたのですか」

海未「くだらない……。私はスイッチを手に入れるまで、穂乃果の匂いを意識的に嗅いだことなんてありません」

ことり「……じゃあ」

ことり「海未ちゃんは……どうして最初にスイッチを使おうと、思ったの?」

海未「っ!? は、はぁ……?」

ことり「真姫ちゃんから最初に、貰って……。それで、どうして使おうと思ったの?」

海未「……っ」

ことり「私みたいに、ほのキチだったわけでもないし……。希ちゃんみたいに、ちゃんとした目的があったわけでもないのに……」

ことり「穂乃果ちゃんの匂いを強くするスイッチなんて使って、どうするつもりだったの?」

海未「うっ……」

ことり「色んな人がスイッチを、使ってきたけど……。一番最初にそれを使い始めたのは、海未ちゃんだったんだ」

ことり「どうして……? そんな変なスイッチ、普通の人だったら使ったりしないよ……?」

海未「く、ぅ……っ!」ギリ
 
714: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:13:45.87 ID:HbNGDs2c.net
  
ことり「ねえ、海未ちゃん……。私、ビックリしたんだよ。最初に、海未ちゃんが穂乃果ちゃんの匂いをこそこそ嗅いでることに、気づいた時……」

ことり「普段は真面目でしっかり者の海未ちゃんが、どうしてこんな変なことしてるんだろう、って」

海未「なっ……」

ことり「最初は、分からなかった。どっちが本当の、海未ちゃんなのか……」

ことり「……でもやっぱり真面目な方が、本当の海未ちゃんなんだよね。だから、変なことをしてる方の自分が、自分で許せなかったんじゃないの?」

ことり「だから海未ちゃんは、頑なに、自分が変態だってことを、認めようとしなかったんでしょう……?」

海未「なにが、いけないのですかっ!?」

ことり「えっ……?」

海未「好きな人の匂いを嗅ぐことの、何が変なのですかっ!? 私は何も、変なことなんてしませんっ!」

海未「だって私は、穂乃果の『全部』が、好きなんですからっ! その『匂い』も、含めて……っ!」
 
734: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:38:31.11 ID:HbNGDs2c.net
 
海未「ええ、認めますよっ! 私は昔から、穂乃果の匂いをこっそり嗅ぎ続けてきましたっ!」

海未「そんな私がスイッチを使う理由なんて、一つです……もっと穂乃果の匂いを、嗅ぎたいっ! それだけですっ!」

海未「でも、それの何が変なのですかっ!? 好きな人の匂いを嗅ぎたいと思うのは、当然じゃないですかっ!?」

ことり「好きな人……。そっか、そうだよね……」

海未「……最後の足掻きとしては、なかなかでしたよ。まさかこんな話を、持ち出してくるとは……」

海未「大方、『スイッチを渡さないとこの話を穂乃果にバラす』とでも言って、私を脅すつもりだったのでしょう?」

海未「確かにほのキチである私を、穂乃果は受け入れてくれましたが……。流石に子供の頃から匂いを嗅いでいたなんてことが知れれば、彼女も私を拒絶したでしょう」

ことり「……どうかな。だって海未ちゃんが穂乃果ちゃんの匂いを嗅いでたのは、それだけ好きだったからなんでしょう?」

海未「ええ、そうですが……」

ことり「だったら多分穂乃果ちゃんは、それも受け入れてくれるよ。穂乃果ちゃんも海未ちゃんのことが、大好きなんだから」

海未「……ではあなたは結局、なにがしたかったのですか?」

ことり「私はただ、確かめたかっただけだよ。あの日教室で見たことの、真相を……」

海未「……体操着の件ですか。この際ですから、それも認めますよ」

海未「穂乃果のことが好き過ぎて、ついやってしまったんです。まさか見られてたとは思いませんでした……流石に少し、恥ずかしいですね」

ことり「……」
735: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:39:50.41 ID:HbNGDs2c.net
  
ことり「あ、あは、は……」

海未「……どう、しました?」

海未「ことり……どうして、笑って……」

海未「……? いえ、泣いて……いるん、ですか?」

ことり「うっ、ぅ、あは、ははは……」グスッ

ことり「違うよ……。海未ちゃんは、勘違いしてるよ……」

海未「……はい?」

ことり「うん……。私もあの時教室で、『最初に見た時』は、そう思ったよ? だって、気づいてたから……。海未ちゃんのそういう『趣味』を、私は知ってたから」

ことり「だから、見た時にすぐ思った。『あっ、海未ちゃんが穂乃果ちゃんの体操着の匂いを、嗅いでる』って――」

ことり「でも……でも、ね……? よく見たら、ちが、ったんだ……」

ことり「ちがったの……。だって、あそこは……」

海未「……」

海未「ま、まさ、か……」

ことり「うっ、えぐっ、よく、見たら、ね……? あ、あそこは……」


ことり「『穂乃果ちゃんの席』じゃ、なくて……」






ことり「『私の席』、だったんだ……」





海未「……あ、あぁ」

ことり「あの時、海未ちゃんが、嗅いでたのは……。穂乃果ちゃんの体操着じゃなくて――」




ことり「私の体操着、だったんだよ……」
 
742: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:46:01.22 ID:HbNGDs2c.net
  
海未「うわあぁああぁああああ――っ!!?」

 
ことり「ね、ねえ、海未ちゃん……?」

海未「ああ、あああぁあ、あああぁっ!!」

ことり「グスッ、ねえ、海未ちゃん。『確認』、しておきたいんだけど……」

海未「あぁああぁっ! う、うあぁあぁあ……っ!」

ことり「海未ちゃんが穂乃果ちゃんの匂いをこっそり、嗅いでたこと……。私は気づいてたけど、でも穂乃果ちゃん本人は、気づいてなかったんだよね……?」

海未「あ、ああぁあ、だめ、だめです、ちがっ」

ことり「でももしもそれが、穂乃果ちゃんがただ鈍感だったから、『気づかなかった』んじゃなくて……」

ことり「海未ちゃんが、いくら周りに気づかれても『絶対に本人にだけは気づかれないように』気をつけながら、嗅いでたんだとしたら……」

ことり「そのせいで穂乃果ちゃんが、匂いを嗅がれてたことに、『気づけなかった』んだとしたら――」

海未「だめ、だめですっ、ことり、いやぁああぁあっ!」

ことり「私の場合も、そうだよね……?」

海未「あ、あっ、うわあぁあぁあっ!」

ことり「私が海未ちゃんに、『ずっと匂いを嗅がれてたとしても』……それに『気づけなくても』、おかしくないよね……?」

海未「あっ、あぁ……」

ことり「う、海未ちゃんは……。私の匂いも、穂乃果ちゃんと同じように……」

ことり「昔からずっと、こっそり……。私にバレないように、嗅いでたの……?」

海未「う、うぐぅ~……」ガクッ

海未「ば、バレてしまいましたぁ……っ! ついに、バレてしまいましたあぁあぁぁ……っ!」

ことり「海未ちゃん……」
 
749: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:54:42.49 ID:HbNGDs2c.net
  
海未「うっ、うぐっ、だって、仕方ないじゃないですかぁ……」

ことり「えっ……?」

海未「あなたたち二人は私にとって、魅力的過ぎたんです……」

ことり「……え、ええっ?」

海未「だって……だってっ! 昔の私は、臆病で、恥ずかしがり屋で、友達なんて一人もいなくて……っ!」

海未「そんな時、初めて出会えたんです……っ! 私の下の名前を呼んでくれる、『友達』にっ!」

ことり「……っ!」

海未「一緒にいて、こんなに楽しいと思える人、今までいなかったんです……っ! 『あなたたち二人』は、私の最初の友達で、最高の友達だったんですっ!!」

ことり「う、海未ちゃん……」

海未「あなたたちは、私に色々なことを教えてくれました……。毎日がすごく新鮮で、幸せでした……」

海未「でもある時、ふと気がついてしまったんです……」

海未「ある日、私たちは三人で並んで、いつも通りお喋りをしていました……私が真ん中で、隣にあなたと、穂乃果――」

海未「そんな時、初めて意識したんです。二人から漂ってくる、その『匂い』を……」

海未「すごく安心する、匂いでした……。幸せな気持ちで、いっぱいになりました……」

海未「全人類の中で……今この場所で、この匂いを嗅いでる私が、一番幸せなのではないかと……本気で、そう思いました」

海未「いつまでも嗅いでたいと、思いました。この幸せな匂いを、いつまでも……」

海未「……それからです。二人の匂いを、こっそり嗅ぐようになったのは」

海未「大好きな、『二人の匂い』を……っ!」

ことり「……」
 
751: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 22:56:53.47 ID:HbNGDs2c.net
 
ことり「そ、そっか、それで……」

海未「うっ、うぅ、私は……っ!」

海未「私は……私はぁっ! う、うぅ~っ」ポロッポロッ

ことり「う、海未ちゃんっ、どうしたのっ!?」

海未「私は最低ですっ! グスッ、最低、ですぅ……っ!」

ことり「さ、最低、って……」

海未「あなたの言う通りです……っ! 私は、へ、変態なんです、うぅ……っ!」

ことり「……っ!」

海未「穂乃果を抱きしめる資格なんて、私にはないんです……っ!」

海未「あなたを叩いたり、偉そうに説教できるような立場の人間じゃ、なかったんですぅ~……っ!」

海未「ずっと私は、自分のことを棚に上げて……っ! でも本当は、どのほのキチよりも、私の方が変態なんですっ!!」

海未「ごめんなさい……っ! ごめんなさいっ!」

ことり「あ、あの、海未ちゃん……?」

海未「ごめんなさい、ことり……っ! ごめんなさぁいっ! うあぁああぁっ!」

海未「ずっとあなたの匂いを、嗅いでたんですっ! ずっとずっとずっと、ずっとだったんですぅっ!」

海未「穂乃果だけじゃなかったんですっ! 私はあなたの匂いまで、こっそり嗅いでたんですぅ……っ! あ、ああぁ~っ!」

ことり「……」

海未「あぁあ、ぁ、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃぃ……っ!!」

海未「私は、変態です……っ! どうしようもない、変態なんですよぉ~っ!! うあぁああぁあぁ……」ボロッボロッ

ことり「海未、ちゃん……」
 
757: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 23:03:03.39 ID:HbNGDs2c.net
 
海未「大好きだったんですぅ……っ! ごめんなさいぃ……っ!」

ことり「……っ」

海未「好き過ぎて、我慢できなかったんです……。あ、あぁあっ、あの時もぉ……っ!」

海未「体育の授業で、汗を流しながら走ることりを見て、つい興奮してしまって……っ! やってしまったんですぅっ!!」

ことり「っ!!」

海未「誰もいないと思って、教室であなたの体操着の匂いを、思う存分堪能してたんですぅ……っ!」

ことり「ど、どうだった、の……?」

海未「ことりの汗の匂いがしましたぁ~っ!!」

ことり「そっか……」

海未「最高でしたぁっ!! うわぁあぁあぁぁあん……っ!」

ことり「そっ、そっか……。うん、うん……」
 
758: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 23:04:09.94 ID:HbNGDs2c.net
  
ことり「海未ちゃん、泣かないで……。私のハンカチ、使って……?」

海未「あなただって、泣いてるじゃないですかぁっ!!」

ことり「っ! グスッ、う、うん、そうだね……」

海未「ごめんなさい……っ! 気持ち悪いですよね、最悪ですよね、こんなの……っ!!」

海未「こんな思い、させたくなかった……。あなたを泣かせたく、なかった……っ!」

海未「自分の幼馴染が変態だなんて、知らせたくなかったっ! ごめんなさい、ことりぃ……っ!」

ことり「う、ぅぅ……ひぐっ、ちがう、ちがうの、海未ちゃん……」

海未「ち、ちがう、って……」

ことり「いいの、きもちわるくなんて、ないの……。ことりはね……」

ことり「ことりは、うれしいの……。うれしいんだよ、うみちゃん……っ!」

海未「っ! な、なに言って……なんでこんなことされて、嬉しいんですかっ!?」

ことり「だって、だって……」


ことり(海未ちゃんは昔からずっと、穂乃果ちゃんのことばかり、見てたんだと思ってた……)

ことり(よかった、最後に確かめられて……。そうだったんだね、海未ちゃん……)

ことり(海未ちゃんは、ちゃんとことりのことも、見ててくれてたんだね……っ!)


ことり「ふっ、うぅ、よかった、うれしいよぉ……っ! うみちゃぁん……っ!」ポロッポロッ

海未「うあぁああぁんっ! わ、わけわかんないですよ、あなたぁ……っ!」ポロッポロッ
 
766: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 23:11:06.92 ID:HbNGDs2c.net
 
海未「ふ、っ、うぅ……」ズズッ

ことり「……う、ぅ」

海未「お、お願いします、ことり……」

ことり「グスッ……えっ……?」

海未「穂乃果には、言わないでくれませんか……? 私が変態だということ、知られたくありません……」

ことり「……」

ことり「……ふふっ。最初から言うつもりなんて、ないよっ」

海未「……ことり」

ことり「ありがとう、海未ちゃん……もう、いいよ」

海未「えっ……?」

ことり「もう私は、満足……。あとは海未ちゃんの、好きにして?」

海未「……」

ことり「スイッチ、押していいよ。もう我慢できないでしょ?」

ことり「ごめんね、こんな話して……。恥ずかしい思い、させちゃって」

海未「い、いえ……」

ことり「レベル5……私も、一緒に嗅ぐよ。そうしたら、海未ちゃんの知られたくないことも……。私また、全部忘られるから」

ことり「私さえ忘れちゃえば、そうしたらもう、他の人に知られることもなくなるでしょう?」

海未「……もしかしてあなた、それで一人でここに……?」

ことり「……」

海未「……分かりました。それでは」

ことり「……うん」



海未「……押しますね、ことり」

ことり「どうぞ、海未ちゃん……」



ことり(さようなら、海未ちゃん……)

ことり(……穂乃果ちゃんと、お幸せにね――)

 

カチッ

 
773: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 23:18:59.31 ID:HbNGDs2c.net
 
ブワッ……


ことり「……」

ことり(……これが、レベル5、かぁ)

ことり(すごい……。いい匂いだなぁ……あははっ)

ことり(あぁ、なんだか……)

ことり(なんだか……)

ことり(……)


 
ことり(なんだか、たいしたことないな……)

ことり(私の感覚が、おかしいのかな……。正直レベル4の方が、すごかったような……)

ことり(うぅーん……)

ことり(……あれ?)


ことり「……う、海未ちゃん?」

海未「……」

ことり「それ……。画面……」

ことり「『3』って、なってるけど……もしかして……」

ことり「今押したのって、『下ボタン』――」


カチカチカチッ!


ことり「っ!?」

フッ

ことり(に、匂いが、消えた……。海未ちゃんが、レベルを、リセットした……)

ことり(どうして――)


海未「ありがとうございます、ことり」


海未「あなたのおかげで……。元に、戻れました」
   
774: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 23:22:26.88 ID:HbNGDs2c.net
   
ことり「えっ……? 海未ちゃん、も、元に、戻ったの……?」

海未「はい、戻りました」

ことり「ほんと、に……?」

海未「私は今、先ほどあなたが言った通り、自分でスイッチのレベルをリセットしました……。これがその証明には、なりませんか?」

ことり「……」

海未「……と言っても、元に戻ったところで、私が変態であることに変わりはありませんが」

海未「元々私自身、ほのキチとの境界が曖昧な人間だったんです……。私がどうしようもなく罪深い人間であることは、変わりません……」

ことり「大丈夫だよ、海未ちゃん」ギュッ

海未「……」

ことり「海未ちゃんは、自分でスイッチのレベルを『0』にした……。海未ちゃんはスイッチを、否定できたんだよ」

ことり「だから……もう、大丈夫」

海未「……ことり」
 
775: 名無しで叶える物語@10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 23:23:45.39 ID:HbNGDs2c.net
  
ことり「それに……。変態なのは、海未ちゃんだけじゃないよ」

海未「えっ……?」

ことり「私だって、匂いを嗅がれて嬉しがるような、変態だよ。海未ちゃんと、同じだよ……」

海未「お、同じじゃありませんよ……。嗅がれる方より嗅ぐ方が、変態に決まってます……」

ことり「あはは、そうかな……」

海未「そうです……」

ことり(……でもね、海未ちゃん)

ことり(穂乃果ちゃんも、そうだったんだよ……。これは内緒だって約束したから、言わないけど……)

ことり(穂乃果ちゃんも、同じ……。匂いを嗅がれてよろこぶ、変態だったんだ……)

ことり(だから私たち幼馴染は、三人とも、変態だったんだよ……)

ことり(おかしな話だけど……。三人一緒なら、なんだか心強い気がしない? 海未ちゃん――)


ことり「……帰ろう、海未ちゃん」

ことり「私たちの……いつもの、日常に」

海未「……」


海未「……はいっ」
 
7: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:16:34.97 ID:HDVTnWU5M.net
 
――――


スタスタ


ことり「……ねえ、海未ちゃん?」

海未「はい?」

ことり「どうして、元に戻れたの……? いつの間に、私の匂いを嗅いでたの? 別に抱きついたりとかも、してなかったのに……」

海未「別にその必要はありません。私はあなたや穂乃果の匂いを嗅ぐのに、いちいち抱きついたりなどしてませんでしたから」

海未「それに『いつの間に』というのなら、『いつでも』です。私はあなたや穂乃果に気づかれないように、『いつでも』匂いを、嗅ぎ続けてきたんですから」

ことり「……そ、そっか。分からないわけだね」

海未「……ごめんなさい、ことり。今回の件で、あなたには特に、たくさんの迷惑をかけてしまいました」

海未「私、どうやってあなたに償えばいいか……」

ことり「そ、そんな、私の方こそほのキチになってた時は、海未ちゃんにすっごく迷惑かけちゃって……」

海未「……ふっ、そうですね。あなたには随分、苦労させられましたよ」

ことり「ごめん……」

海未「ですが……。もうこれで本当に、終わりです。スイッチはもう、誰の手にも渡らぬよう……。今度こそ真姫に、処分してもらいましょう」

ことり「そうだね……。でも、海未ちゃん」

海未「えっ?」

ことり「結局レベル5は、嗅げなかったけど……。これで、よかったの?」 

海未「……当たり前じゃないですか。これで、よかったんです」

ことり「本当は嗅いでみたかったとか、思ったりしてない?」

海未「そんなこと……」

ことり「……」

海未「……ちょ、ちょっとだけしか、ありませんよ」

ことり「やっぱり……」

海未「うぅ、変態で、ごめんなさい……」

ことり「……ふふっ」


ことり(『気持ちの変化』、か……。海未ちゃんは、自分を変態だと認めることで、ほのキチから戻ったんだね)
 

※ ここから3スレ目です(管理人)

元スレ: 海未「ほのスメルを増幅させるスイッチ?」Part3

10: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:21:44.18 ID:HDVTnWU5M.net
  
穂乃果「ん、ぅ……?」

海未「……あっ、穂乃果、起きましたか?」

穂乃果「……あ、あれ?」

ことり「ふふっ、ぐっすり眠ってたね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「えっ、こ、ことりちゃん? あれ、ここどこ……?」

海未「全部終わって、今、帰るところですよ」

穂乃果「終わった……?」

海未「私、元に戻ることができたんです」

穂乃果「っ! えっ……? じゃあ……」

ことり「穂乃果ちゃん、もう、終わったんだよ。これでやっと、私たちは……」

穂乃果「……」

穂乃果「そ、っか……」

穂乃果「よかった……。ふふっ」

ことり「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「これでやっと、私たちは……いつもの私たちに、戻れたんだねっ」

海未「……ええっ」

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん……」

ことり「なあに?」

海未「なんですか、穂乃果?」

穂乃果「……だいすきっ」

海未「……ええ。私もです」

ことり「私もだよ、穂乃果ちゃんっ」
 
12: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:27:54.10 ID:HDVTnWU5M.net
 
海未「それでは、穂乃果。そろそろ、自分の足で歩いてもらえますか?」ピタッ

穂乃果「えっ?」

海未「それだけ寝たんですから……。もう十分でしょう?」

穂乃果「えー……」

海未「えー、じゃありません。さぁ」

穂乃果「わ、分かったよぉ。んしょ……」

ことり「あはは……」

海未「ふぅ……。では、ことり。次はあなたです」

ことり「……へっ?」

海未「あなたも、相当疲れてるはずでしょう? 乗ってください」

ことり「えっ、い、いいよっ! 私は、おんぶなんて……海未ちゃんだって、疲れてるでしょう?」

海未「私は平気です。体力には自信がありますので」

穂乃果「そうそう、遠慮しないでいいよー、ことりちゃんっ」

海未「あなたが言わないでください」

ことり「で、でもぉ……」

海未「いいですからっ」

ことり「……じゃあ、その、お言葉に甘えて」ガシ

海未「ふっ……」スクッ

ことり「お、重く、ない……?」

海未「全然です。では、行きましょうか」

穂乃果「うんっ」

ことり「……///」


ことり(海未ちゃん……)
 
13: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:38:39.56 ID:HDVTnWU5M.net
  
――――――


穂乃果の家


海未「本当に、申し訳ありませんでしたっ!」ドゲザ

雪穂「……」ツーン

海未「ゆ、雪穂……」

雪穂「海未ちゃん、さぁ……。私に一体なにしたか、分かってるの?」

海未「わ、分かってます。はっきり、覚えてます……。私はあなたに、とても酷いことをしました……」

雪穂「そうだよっ! あ、あんな、あんなことして……っ!」 

海未「ごめんなさいっ!!」

雪穂「トラウマものだよっ! ほんとに、怖かったんだからぁっ!!」

海未「ごめんなさいっ! どうしても、抑えきれなかったんです……っ!」

雪穂「抑えきれないって、なにっ!?」

海未「あ、あなたの匂いが、予想以上に良い匂いだったので……。抑えきれませんでしたぁ……っ!」

雪穂「……い、良い匂い? 私が?」

海未「それはもうとっても、良い匂いでした……。さすが穂乃果の妹だと、言わざるを得ませんでした……っ!」

雪穂「そ、そう……//」

海未「……雪穂?」

雪穂「あっ! そ、そんな風に褒められたところで、あなたを許すわけじゃないんだからねっ!!」

海未「は、はいっ! 私は絶対に、許されないことをしましたっ!」

雪穂「くぅ~っ!」ギリギリ

雪穂(もうっ、ほんとになんでお姉ちゃんは、こんな変態のことを好きになっちゃったの……っ!?)
 
14: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:43:48.67 ID:HDVTnWU5M.net
 
雪穂「もう、いいよっ!」

海未「えっ……?」

雪穂「海未ちゃんには一応、前にお姉ちゃんのことを守ってくれた恩があるし……。お姉ちゃんに免じて、今日のところは許すよ」

海未「そんな、雪穂……」

雪穂「……まさか、お姉ちゃんにまで変なこと、してないよね?」

海未「っ! そ、それは、大丈夫です。それは……」

雪穂「まあ、お姉ちゃんとことりちゃんも大丈夫だって言ってたから、いいけどさ……」

海未「ありがとうございます……」

海未(これは、昔から匂いを嗅いでたなんてことがバレたら、殺されますね……)

海未(はぁ……。普段私に怒られてる時の穂乃果も、こんな気持ちなのでしょうか……。今度からはもう少し、優しくしましょう)

雪穂「……で、スイッチは?」

海未「あ、はい……。ここに」スッ

雪穂「……」ヒョイ

海未「あぁっ!?」

雪穂「これ、私が預かるから。いいよね?」

海未「で、でもそれは明日、真姫に返して、処分してもらおうと……」

雪穂「そんな言葉、信用できるわけないでしょっ!? 私はあなたが本当に元に戻ったのかどうかも、半信半疑なんだからっ!」

海未「そ、そうですよね。では、あなたが持っていてください……」

雪穂「……私にしたことは、一応誰にも言わないどいてあげる。もう二度と、変なことするのはやめてよね」

海未「はい、もちろんです……」
 
15: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:53:55.95 ID:HDVTnWU5M.net
  
ことり「また明日、穂乃果ちゃんっ」

海未「それでは……」

穂乃果「うん、ばいばーいっ」



雪穂「お姉ちゃん、ほんとに大丈夫だった? 海未ちゃんに変なことされなかった……?」

穂乃果「あはは、大丈夫だよ……。心配し過ぎだよ、雪穂は」

雪穂「……そうかな」

穂乃果「うん。それに海未ちゃんになら、私……」

穂乃果「ちょ、ちょっとくらいなら、変なことされても……。いいかな、って……///」

雪穂「……」

雪穂(そっか……。そうだよね。お姉ちゃんは、そうだった……)

雪穂「……これ」スッ

穂乃果「えっ? こ、これって」

雪穂「さっき海未ちゃんから預かったの。これ……」

雪穂「お姉ちゃんに、あげる」

穂乃果「えっ。でも……」

雪穂「そもそも、お姉ちゃんの匂いを強くするスイッチなんて……他の人が持ってることが、おかしかったんだよ」

雪穂「これは、他の誰でもない、お姉ちゃん自身が持つべきなんだ。これは、そういうスイッチなんだよ……」

穂乃果「……」

雪穂「……それはもう、お姉ちゃんの物だから。あとはどうしようが、自由だよ」

雪穂「真姫さんに返して、処分してもらうのも……。海未ちゃんに、また渡すのも……自分で、使うのも」

雪穂「お姉ちゃんは、どう使う? そのスイッチ……」

穂乃果「……」


穂乃果「……私ね、ちょうど最近、欲しくなったものがあるの」

雪穂「へえ、なに?」
 
16: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:58:45.96 ID:HDVTnWU5M.net
  
『……あれ? 穂乃果ちゃん、香水つけてきたん?』

『えっ、ううん……?』



穂乃果「『香水』……」

雪穂「……」

雪穂「……ふふっ。まあ、代わりにはなるんじゃない?」

穂乃果「……うんっ」

雪穂「それじゃ、ご飯にしよっか。昨日の残り物だけど……」

穂乃果「えっー!? お寿司はーっ!?」

雪穂「やっぱりやめた。お母さんに怒られそうだし」

穂乃果「えぇー、そんなぁ~……」



――――


スタスタ……



ことり「……雪穂ちゃんに、こっぴどく叱られたみたいだね」

海未「はい……。完全に、嫌われました……」

ことり「そ、そっか……」

海未「スイッチも、とられてしまいましたし……。まあ、万が一にも雪穂なら、悪用することはないでしょうが」

ことり「うん、きっと大丈夫だよ」

海未「はぁ、でも……。手放す前にもう一度、レベル3くらいは嗅いでおきたかった……」

ことり「……海未ちゃん、本当に元に戻ったんだよね?」

海未「えっ!? じょ、冗談ですよっ!? 本気にしないでくださいよ……っ!」

ことり「そ、そうだよね、冗談だよね……」

海未「そうですよ。せいぜいレベル2くらいまでで十分です」

ことり「……」

ことり(……まあ、仕方ないか。海未ちゃんは元々、こういう人だったんだし……)
 
17: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 23:07:33.87 ID:HDVTnWU5M.net
  
海未「しかし、あれだけ長い間ほのスメルを嗅いでたのは、初めてですね……。まだあの匂いが頭から、離れません」

ことり「そうだね……」

海未「はっ! そういえば……」

ことり「なに?」

海未「あれだけ長く、スメルが充満した場所にいたんですっ! もしかして私たちの服などにも、ほのスメルが染みついてしまっているのではっ!?」

ことり「あぁ、うん……どうかな」

海未「確認してみましょう……っ!」スンスン

海未「……そんなことなかったです」ガクッ

ことり「だろうね……」


ことり(海未ちゃん……。昔は恥ずかしがり屋さんで、真面目な女の子だったのに……)

ことり(ほんと、一体どうしてこんな子に、なっちゃったんだろ……)

ことり(穂乃果ちゃんのせいだよ、もう。穂乃果ちゃんの匂いが、よ過ぎるから……)


ことり「……」

ことり「……ねえ、私のも、確認してみて?」

海未「えっ!?」

ことり「自分じゃ、よく分かんないから……。私の服にほのスメルが染みついてるか、海未ちゃんが確認して?」

海未「……い、いいんですか?」ハァハァ

ことり「……」

ことり「やっぱり、ダメ」

海未「えっー!?」


ことり(……そうだね。私のせいでも、あるんだったね)
 
18: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 23:15:33.15 ID:HDVTnWU5M.net
   
ことり(海未ちゃんは実は、昔から穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぐ、変態だった)

ことり(だけど本当は穂乃果ちゃんだけじゃなくて、私の匂いも、嗅いでた……)

ことり(……じゃあ、もしも――)


ことり「それじゃ、私はこっちだから」

海未「はい。では、また明日……」

ことり「……海未ちゃん。一つ、聞いていい?」

海未「はい?」

ことり「もしもあのスイッチが、穂乃果ちゃんじゃなくて……」



ことり「『ことりの匂いが強くなるスイッチ』だったら、海未ちゃんは、押してた?」



海未「押しまくってましたね」

ことり「即答なんだ……。しかも、押しまくるんだ……」

海未「というか、あぁ……。そうですか、そういえばその発想は、ありませんでした……」

ことり「えっ……?」

海未「い、いいですね、それ……。ちょっと待ってください、それは……」

海未「ことりの匂いが、ほのスメルのように、増幅していくわけでしょう? レベル1、レベル2と……」

海未「うわぁ、レベル3なんて、『ことりのシャツの中に入り込んで、直接匂いを嗅いでるかのような』感覚が味わえるわけでしょう……?」

海未「あ、あぁ、レベル4なんて押したら……っ! あぁあぁ~っ////」

ことり「……」

ことり(な、なんか海未ちゃんの、変なスイッチが入っちゃった……)
 
19: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 23:25:00.19 ID:HDVTnWU5M.net
  
ことり「海未ちゃん……」ジトッ

海未「あっ……あっ!? ごめんなさい、ことりっ! 私はことりの前で、一体何を……っ!?」

ことり「海未ちゃんは結局元に戻っても、あまり変わらないんだね。私の苦労は、なんだったのかな……」

海未「ご、ごめんなさい、ことりぃ……。き、嫌いにならないでくださいぃ……っ!」

ことり「な、ならないよ……。大丈夫だから」

海未「ほ、ほんとですか……?」

ことり「……うん」

海未「ことり……。これからもずっと一緒に、いてくれますか?」

ことり「もちろんだよ……。どうしたの、急に」

海未「わ、私はきっと、『ことスメル増幅スイッチ』があったら、レベル5まで押してしまいます……そんな、人間です」

海未「それでも……ですか?」

ことり「……」


ことり「もうほんとに、海未ちゃんは……」




ことり「どうしようも、ないなぁっ」




ことり(普段は真面目でしっかり者で、恥ずかしがり屋さんな、女の子なのに……)

ことり(強くてかっこよくて凛々しくて、優しくて……本当に素敵な女の子なのに)

ことり(『匂い』のことになると、どうしてこんなどうしようもない変態に、変わっちゃうんだろうなぁ……)

ことり(……)


ことり(だけど、それでも……)


  

ことり「それでも、私は――」



  


ことり「そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした」
 
  
45: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 21:40:02.37 ID:QRdCR9ZoM.net
   
――――――

次の日……


『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』
 
『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』
 
『そんな海未ちゃんのことが、ずっと――』


海未「あぁああぁっ~!!」

穂乃果「わぁっ!?」

海未「……あっ、ほ、穂乃果?」

穂乃果「お、おはよう、海未ちゃん……。どうしたの?」

海未「あ、い、いえ、何でもないです、はははっ……」

穂乃果「そう……?」

海未「……」ソワソワ

穂乃果「……海未ちゃん?」

海未「きょ、今日は暑いですねっ!」

穂乃果「えっ、割と涼しいと思うけど……」

海未「はぁ、はぁ……」

穂乃果「……?」

海未(なんですか……。なんですか、これ……?)

海未(なんですかこの気持ちは……。こんなの、おかしいです……っ!)


『ずっと、好きでした――』


海未(ことりのことが、頭から離れません……っ////)

海未(い、一体私は、どうしてしまったのでしょうか……////)
  
47: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 21:44:02.11 ID:QRdCR9ZoM.net
  
穂乃果「ね、ねえ、海未ちゃん……?」

海未「はぁ……。はっ、はい?」

穂乃果「あ、あのね、その……」モジモジ

海未「……? どうしました?」

穂乃果「うっ……。えっと――」


「おはようっ」


海未「っ!!」ビクッ

穂乃果「あっ、おはよーっ! ことりちゃんっ!」

ことり「ふふっ、おはよう、穂乃果ちゃん……」

ことり「……海未ちゃん」

海未「は、はい……おはようございます、ことり」プイッ

ことり「……」

穂乃果「海未ちゃん……?」

海未「い、行きましょう、二人とも。遅刻してしまいますよ」

ことり「そうだね、いこっか」

穂乃果「う、うん……」

海未「……っ」ドキドキ


海未(ことりの顔が、まともに見れない……っ! なんなんですか、この気持ちは……っ!?)
 
48: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 21:57:15.49 ID:QRdCR9ZoM.net
   
――――――

教室


ガラッ

ドタドタッ


花陽「海未ちゃんっ!」

にこ「う、海未っ! あんた、元に戻ったんですってっ!?」

凛「ほんとかにゃ、海未ちゃんっ!?」

穂乃果「あっ、花陽ちゃんとにこちゃんと、凛ちゃんだ」

ことり「ちょ、ちょっと三人ともっ!? 二年生の教室に入ってきちゃダメだよぉっ!」

にこ「今はいいでしょそんなことっ! それより、海未……っ!」

海未「え、ええ。戻りました……」

にこ「……花陽」

花陽「はいっ」ササッ

海未「……? ノートパソコンなんか開いて、なにを――」

花陽「動画再生っ!」カチッ


~♪

『私、あなたのことが好き……』

『俺もだ……。愛してるよ……』

ギュゥ……


海未「っ!!? あ、あぁ、あぁ……」

海未「いやぁああぁああっ! は、ハレンチです~っ!!////」ガタンッ

凛「っ! いつもの海未ちゃんだにゃぁ~っ!」

にこ「やったわっ! 『恋愛映画の予告編作戦』、大成功ねっ!」

花陽「うんっ!」

ことり(いやあ、その判別方法はどうなんだろ……)
 
49: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:03:20.41 ID:QRdCR9ZoM.net
   
ことり「でもみんなには昨日、海未ちゃんが元に戻ったことは、電話で伝えたはずだけど……」

にこ「やっぱ自分の目で確かめないと、安心できなくってね」

凛「よかったにゃあ~。これでやっと、みんな元通りだねっ!」

花陽「うんっ。ということは、今日からμ'sは……」

にこ「完全復活っ! よーし、さっそく他のみんなにも伝えに行くわよっ!」

花陽、凛「「おーっ!」」

ドタドタッ……

ガラッ


ことり(仲良しだなぁ……)

穂乃果「海未ちゃん、大丈夫……?」

海未「あ、あぁあ、ああぁあ~っ!」

穂乃果「も、もう平気だよ? 三人とも、行っちゃったし……」

海未「いやぁあぁ、だめです、ハレンチです、うわぁあぁ~っ////」

ことり「海未ちゃん……?」

穂乃果「こ、ことりちゃん、どうしよう。海未ちゃん、なんか変だよ……」

ことり「……っ!」

穂乃果「いつもなら、映像さえ止まれば平気なのに……。海未ちゃん、まだこんなに顔真っ赤だよ……?」

ことり「う、海未ちゃんっ、大丈夫っ!? 落ち着いてっ!」ガバッ

海未「っ!!」


フワ……


ことり「海未ちゃん――」

海未「だめええぇっ!!」

ドンッ

ことり「きゃあっ!?」
  
52: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:10:28.65 ID:QRdCR9ZoM.net
   
海未「はぁーっ。はぁーっ///」ググッ

ことり「う、海未ちゃん……?」

穂乃果「どうしたの? 鼻なんか抑えて……」

海未「ご、ごめんなさいっ。い、今は、だめなんですっ。ごめんなさいぃ……っ!」

穂乃果「あっ、海未ちゃんっ!?」

海未「あぁあぁあ~……っ!」


タッタッタッ……ガラッ


穂乃果「海未ちゃん……?」

ことり「……」

穂乃果「どうしちゃったんだろ、海未ちゃん……。ことりちゃん、なにか知ってる?」

ことり「えっ!? あ、えっと……」

穂乃果「……?」

ことり「その……」


『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』


ことり「……」

穂乃果「こ、ことりちゃんっ!?」

ことり「えっ、あっ……///」

穂乃果「なんでことりちゃんまで、赤くなっちゃうのっ!? ねえっ!」

ことり「っ! な、なんでだろ、おかしいね、あはは……///」


ことり(海未ちゃんは昨日のことを、気にしてるんだ……。昨日私が、海未ちゃんに……)

ことり(こっ、告白、したことを……////)

穂乃果「ことりちゃん……?」

ことり「あ、うぅ……//」


ことり(そうだ……。私、本当に、海未ちゃんに告白しちゃったんだ……)

 
54: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:19:16.04 ID:QRdCR9ZoM.net
  
――――

廊下


タッタッタッ……

海未「はぁ、はぁっ! あぁ、あぁあぁっ!」

海未(なんで、どうしてっ! こんなこと、今までなかったのに……っ!)

海未(当たり前のように嗅いでいた、ことりの『匂い』まで、まともに嗅げなくなってしまうなんて……っ!)


ドンッ

「きゃぁっ!?」

海未「あうっ! あ、ご、ごめんなさいっ!」

真姫「う、海未……?」

海未「あっ、ま、真姫……」

真姫「どうしたのよ、顔真っ赤だけど……」

海未「べっ、別になんでもないです……」

真姫「……ああ。そういえばさっき教室で、凛と花陽が妙なこと話してたわね。大体想像がつくわ」

海未「……」

真姫「海未。元に、戻ったのね?」

海未「……ええ。ことりのおかげで」

真姫「そう、よかったわ……」

海未「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした……」

真姫「そんなの、お互い様でしょ。とにかく、これでようやく今日からμ'sも、ちゃんとした活動ができそうね」

海未「……そうですね。ここ最近はずっと、落ち着かない日々が続いて……あっという間に時間が、過ぎてしまいましたが」

海未「もう、来週末にまで迫ってきているんですよね」

真姫「ええ。ラブライブ、最終予選……」

 
 
真姫「『A-RISE』との、対決の時が」
  
56: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:28:26.54 ID:QRdCR9ZoM.net
 
海未「……ええ」

真姫「ほんとあのスイッチに、えらく振り回されたものだわ……。おかげでラブライブの緊張なんて、どこかに飛んでいっちゃったかも」

海未「そ、それは……良かったの、でしょうか」

真姫「そう思うしかないでしょ……。って、そういえば、そのスイッチは?」

海未「あっ……」

真姫「今日、持ってきてる? なら今すぐにでも、私が預かっちゃうけど」

海未「ご、ごめんなさい。あのスイッチは雪穂に、取り上げられてしまって……」

真姫「えっ? あ、そうなの……」

海未「私のことは信用できないと、言われてしまいまして……。本当に、面目ないです」

真姫「い、いいわよ、別に」

真姫(……私も前に雪穂ちゃんに、同じこと言われてるし。これじゃスイッチは当分、返してもらえそうにないわ……)

真姫「分かった。しばらくはあのスイッチは、雪穂ちゃんに預けておきましょ。彼女ならスイッチを使うことも、ないでしょうし」

海未「そうですね……」

海未「……では、もう落ち着いてきたので、私は教室に戻ります」

真姫「あっ、待って」

海未「はい?」

真姫「実は私も、あなたに用があってね。そっちの教室に、向かうところだったのよ」

海未「……? 用とは、私が戻ったかどうかの、確認ではなくてですか?」

真姫「それもそうだけど、もう一つ……」
  
57: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:34:46.53 ID:QRdCR9ZoM.net
  
真姫「『これ』を、あんたに渡したくて」スッ

海未「えっ……? こ、これは……?」

真姫「昨日、家に帰って、部屋に戻ったらね……。私の机の上に、置いてあったの」

海未「……」

真姫「だけどね、私は『こんな物』、知らない。なんで机の上に置いてあったのかも、分からない」

真姫「正直、どうしたらいいのかも分からない……だから――」

真姫「あんたに、託すわ」

海未「わ、私に……?」

真姫「ええ。あんたなら『これ』をどうするべきか、分かるんじゃない?」

海未「……しかし」

真姫「どっちにしろ、私が持ち続けてても仕方ない物だし、渡すならあんたしかいないしね……」

真姫「もちろん『これ』をどうするかは、あんたの自由よ。責任は全部、私が負うわ」

海未「……」

海未「……分かりました。では私が、預かりましょう」スッ

真姫「そう言ってくれると思ったわ。それじゃっ」

タッタッタッ……


海未「あっ、真姫……」

海未「……まったく、ここにきて、『こんな物』を渡してくるなんて――」


『海未、ちょっといい?』

『なんです?』

『これね、ほのスメルを増幅させるスイッチ、なんだけど』

『ほのスメルを増幅させるスイッチ?』

『そう。名前の通り、このスイッチを押す度に、ほのスメルが――』


海未「――本当に、いつも唐突過ぎますよ、あなたは……」
  
60: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:45:03.73 ID:QRdCR9ZoM.net
 
――――

教室



ヒデコ「穂乃果ー。ラブライブ、もう来週だねー」

フミコ「私たち、絶対応援いくからねっ」

穂乃果「うんっ、ありがとー」

ミカ「あれ? 穂乃果、なんか今日……」

穂乃果「えっ、な、なに?」

ミカ「昨日せいかな、なんだか――もごっ!?」

穂乃果「しーっ! 海未ちゃん戻ってきたっ! これ、海未ちゃんには内緒なのっ!」

ミカ「むぐっ……ひょ、ひょうなの?」


スタスタ……

海未「……」

ことり「お、おかえり、海未ちゃん」

海未「っ! こ、ことり……」

ことり「大丈夫……?」

海未「はい……。ごめんなさい、さっきは突き飛ばしてしまって……」

ことり「あ、うん……。気にしないで、平気だから」

海未「……ごめんなさいっ!」

ことり「い、いいよ、そんな」

海未「……っ」プイッ

ことり「……海未ちゃん?」

海未「……きっ」

海未「昨日は、その……。ちゃんと返事できなくて、ごめんなさい……」
  
62: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:50:37.52 ID:QRdCR9ZoM.net
  
ことり「……えっ?」

海未「あ、あなたが、その……。せっかく勇気を出して、気持ちを伝えてくださったにも、関わらず……」

海未「何も言えなくて、ごめんなさい。私、こういったことが、初めてで……。ビックリ、してしまって」

海未「そ、その、返事、なのですが……」

ことり「……」

ことり「いいよ、海未ちゃん。返事、今すぐじゃなくても」

海未「えっ……」

ことり「ことり、待ってるから。いつまででも、待ってるから……」

ことり「……だからいつかことりに、海未ちゃんの本当の気持ちを、聞かせて?」

海未「ことり……」

穂乃果「海未ちゃんっ!」

海未「っ! 穂乃果……」

穂乃果「もう、大丈夫なの?」

海未「は、はい……。ご心配をおかけしました……」

穂乃果「ううんっ。そんなことより、大変だよっ!」

海未「どうしました?」


ことり(……)

ことり(穂乃果ちゃん、そういえば今日……)

ことり(……でも、自分から言わないってことは、そういうことなのかな)
 
65: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:59:03.35 ID:QRdCR9ZoM.net
  
穂乃果「昨日出された数学の宿題、全然やってないよぉっ!」

海未「あぁ、昨日は色々大変でしたから、全然やる暇ありませんでしたもんね……」

穂乃果「どうしよう、海未ちゃんっ!? このままじゃ、私たち……」

海未「仕方ありませんね。私のせいでもありますし、今回は私が見せてあげます」

穂乃果「やったぁー……って、なんで海未ちゃんは終わってるのっ!?」


ことり(ふふっ。海未ちゃんといると、本当に楽しそうだなぁ、穂乃果ちゃん……)

ことり(……)


ことり(……伝えなきゃ)

ことり(穂乃果ちゃんにも私の気持ち、伝えなきゃ。私も海未ちゃんのことが、好きだったんだって……)

ことり(だって私は、穂乃果ちゃんが海未ちゃんのことが好きなのを、知ってて……告白したんだから)

ことり(……穂乃果ちゃんは、なんて思うだろう?)

ことり(ショック、受けるかな……。でもきっと、穂乃果ちゃんなら――)

ことり(……)

ことり(ていうか、私も宿題終わってない……)



海未「どうぞ、ノートです」スッ

穂乃果「わーい、ありがとぉ~っ」

海未「……」

ことり「あ、あの、海未ちゃん。次、私にも見せてくれる?」

海未「は、はい、いいですよ……」

ことり「……ありがとう」ニコッ

海未「っ!」ドキッ


海未(ことり……)
  
66: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 23:03:59.11 ID:QRdCR9ZoM.net
  
『だからいつかことりに、海未ちゃんの本当の気持ちを、聞かせて?』


海未(私の、気持ち……)

海未(私はことりのことが、好きです。それは、間違いありません……)

海未(10年近く匂いを嗅ぎ続けるくらい、大好きです)

海未(でも……それは、お友達としての、はずで……)

海未(……ことりは)

海未(ことりはいつも可愛くて、おっとりしていて、お洒落で……。服飾が得意で、メイドカフェでアルバイトをしていて……)

海未(……私なんかより、ずっとアイドルみたいで)

海未(私が持ってないものを、ことりはたくさん持っている……)

海未(そして、ことりは――)


『い、今だけは、諦めたく、ない……っ! 諦めたく、ないよぉ……っ!!』

『海未ちゃん、お願いだからぁ……。目を、覚ましてよ……っ! 正気に、戻ってよぉっ!!』


海未(ほのキチだった私を元に戻すために、必死になってくれて……)


『海未ちゃんは、変態だよ』

『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』


海未(私が変態であることを受け入れた上で、私のことを好きになってくれた……)

海未(ことりは……ことりは――)


穂乃果「海未ちゃん?」
  
69: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 23:09:09.88 ID:QRdCR9ZoM.net
    
海未「っ! えっ、はい?」

穂乃果「あ、あのね……。ここの問題が、よく分かんないの。教えてくれる?」

海未「はい……いいですよ」

穂乃果「……」

海未「というか、あなたが問題のことで私に質問してくるなんて珍しいですね」

穂乃果「っ! そ、そうかな……?」

海未「だっていつもはただ、丸写しするだけじゃないですか……。どこですか?」ススッ

穂乃果「こっ、ここ……」

海未「そうですね、ここは……」

海未「……」

穂乃果「……///」モジモジ

海未(穂乃果、なんだか顔が赤いような……。気のせいですかね)

海未(……穂乃果)

海未(今日も可愛いですね、穂乃果は……)

海未(穂乃果……)



海未(ほのか……?)

海未(あれ……?)



海未(私は……。私は、穂乃果のことが、好きだったのでは……?)

海未(そう、私は穂乃果のことが、大好きで……。ずっと彼女の匂いを、嗅ぎ続けて……)

海未(……その『好き』は、友達として?)

海未(それとも……)
 
 
海未(いつもこの手で守り続けてきた、幼馴染と……)

海未(必死になって私を救おうとしてくれた、幼馴染……)

海未(……私は)





海未(私は穂乃果とことり、どっちが『好き』なのですか……?)
   
70: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 23:18:30.79 ID:QRdCR9ZoM.net
  
ズキン

海未「……」

穂乃果「海未ちゃん……」


海未(なんですか、この、頭の痛みは……?)

穂乃果「あのね、海未ちゃん……。今日、私ね……」

海未「……うっ」


『……けてくれてありが……海未ちゃ……海未ちゃんが助け……わた……』

『怖かっ……ありが……未ちゃん………………』


『……に……さい……乃果……』

『えっ……?』



『私が、あなたを――』



ズキンッ


海未「う、ぐぅ……」

穂乃果「……海未ちゃん?」


海未(なんですか、この感覚は……? 何か大事な記憶が、抜け落ちてしまっているかのような……)

海未(分からない……思い出せない。どうしても……)

海未(私は一体、何を、忘れて――)



この日、穂乃果、海未、ことり……三人の間で生まれた小さな『歪み』に、まだ誰も気がついてはいなかった。

しかしその歪みは、日が経つにつれ、徐々に広がっていき……。

そして、ラブライブ最終予選――その、前日。




『悲劇』は、起きた。

 
103: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:08:13.06 ID:9YrMYlDRM.net
――――――――
――――――
――――
――


穂乃果「きたよ。ことりちゃんっ」

ことり「ご、ごめんね、急に……」

穂乃果「ううんっ。それで、大事な話ってなに?」

ことり「あのね……」

ことり「……穂乃果ちゃんは海未ちゃんのこと、好きなんだよね?」

穂乃果「えっ? う、うん……」

ことり「恋人同士に……なりたいん、だよね?」

穂乃果「っ! うん……///」

ことり「……」

穂乃果「……や、やっぱり、変かな?」

ことり「えっ?」

穂乃果「お、女の子同士なのに、恋人になりたいなんて……変、かな」

ことり「……ふふっ。今更そんなこと、気にするの?」

穂乃果「だ、だって……」

ことり「変に決まってるよ、そんなの。普通じゃない」

穂乃果「っ! そ、そうだよね……」

ことり「……でも、相手が海未ちゃんなら、仕方がないんじゃないかな」

穂乃果「えっ……?」

ことり「例え女の子同士でも……海未ちゃんが相手なら、好きになっちゃう気持ち、分かるよ」

穂乃果「……ことりちゃん?」

ことり「うん……。私も海未ちゃんのこと、好きなんだ」

穂乃果「……」
105: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:12:54.98 ID:9YrMYlDRM.net
 
穂乃果「い、いつから……?」

ことり「……ずっと昔。子供の頃から、かな」

穂乃果「っ! そう、なんだ……」

ことり「うん……」

穂乃果「……あ、あはは、ことりちゃんは、すごいなぁ。そんな前から自分の気持ちに、気づけてたなんて」

穂乃果「私なんて……。つい最近、やっと、気づけたばかりだったのに」

ことり「……ううん、私は全然、すごくなんてないよ。穂乃果ちゃんや、海未ちゃんに比べたら……」

穂乃果「えっ……?」

ことり「二人は昔から本当に、すごい女の子だった。私なんかと、違って……」

穂乃果「そっ、そんなことないよっ! 私なんてほら、おバカだし、何の取り柄もないし……」

穂乃果「それに比べてことりちゃんは、素敵な衣装も作れるし、バイト先でも伝説になってるし、何より可愛いし……私より、全然すごいよっ!」

ことり「ううん、そうじゃないの。二人の『すごさ』っていうのは……もっと特別な、何かなんだ」

穂乃果「……どういう、こと?」

ことり「そうだね。例えば、二人は……お話の中だったら『主人公』になれちゃうような、そんな女の子なんだよ」

穂乃果「……??」

ことり「でも、私はそんな特別じゃない。私は特別な二人の傍にいつもいるだけの、『普通の女の子』……」

ことり「……だから海未ちゃんの恋人にふさわしいのは、私なんかじゃなくて、穂乃果ちゃんなんだ」

穂乃果「そんな……」

ことり「だから私は、自分の恋は諦めて……。二人の恋を、応援するつもりだったんだ」

穂乃果「そ、そんなの、おかしいよ。もしかしたら海未ちゃんは、ことりちゃんのことが好きかもしれないのに……」

ことり「……」

ことり「……応援、するつもりだったんだよ」

穂乃果「えっ……?」

ことり「穂乃果ちゃん……私ね、昨日――」


ことり「海未ちゃんに、告白したの」
  
106: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:21:01.83 ID:9YrMYlDRM.net
  
穂乃果「……え」

ことり「昨日穂乃果ちゃんと別れた後に、海未ちゃんに、『ずっと好きでした』って……。私の子供の頃からの気持ちを、伝えたの」

穂乃果「どう、して……」

ことり「海未ちゃんと、恋人同士になりたかったから」

ことり「例えそれで……穂乃果ちゃんのことを裏切ることに、なったとしても」

ことり「……私たち三人の日常が、崩れることになったとしても」

穂乃果「……っ!」

ことり「本当は……海未ちゃんが元に戻って、また私たちの関係も、元通りになって、それで……」

ことり「またいつも通りの楽しい日常が、続いてくはずだった」

ことり「穂乃果ちゃんは、それを望んでたんだよね……。だからあの時穂乃果ちゃんは、私に言ったんだよね」

ことり「『私が海未ちゃんのことが好きだっていうのは、内緒だからね』、って……」

ことり「自分の気持ちが海未ちゃんに知られちゃったら、また私たち三人の関係が変わっちゃうかもしれないって……そう思ったんでしょ?」

ことり「……今まで通りの関係を続けたいなら、このまま海未ちゃんへの気持ちを伝えずに、胸にしまっておいた方がよかったんだ」

ことり「穂乃果ちゃんも、私も……」

ことり「……でも、私は」

ことり「私は海未ちゃんのことが、好き、なの……っ!」

ことり「ずっとずっと、好きだったの……っ! 海未ちゃんの恋人に、私も、なりたいの……っ!」

ことり「本当は、諦めるつもりだった……でも、諦めきれなかったっ!」

ことり「私は『普通』だけど、でも――海未ちゃんの『特別』に、なりたいのっ!!」

穂乃果「ことり、ちゃん……」

ことり「……だから私は海未ちゃんに、告白したの」

ことり「穂乃果ちゃんの気持ちを、知った上で……私は……」
 
107: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:23:04.90 ID:9YrMYlDRM.net
 
穂乃果「……」

ことり「海未ちゃんからは、まだ返事はもらえてない。きっと今、海未ちゃんは、悩んでると思うんだ」

ことり「だから私は、海未ちゃんに、好きになってもらえるように……。精一杯、頑張るつもり」

穂乃果「……わ、私は」

穂乃果「私は、どうしたらいい、のかな……」

ことり「……私に相談するのはナシだよ。穂乃果ちゃん」

穂乃果「っ! でも、だってっ! 私はいつも、分からないことがあったら、『二人』に……っ!」

ことり「穂乃果ちゃん。これから、私たちは……『敵同士』に、なるんだよ」

穂乃果「っ!!」

ことり「分かるよね、穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「わ、分からないよ、そんなの……っ! 私たち、親友でしょっ!? どうして敵同士だなんて……」

穂乃果「どうしてそんなこと、言うのっ!? ことりちゃん、まさかまた変になっちゃったの……っ!?」

ことり「……私たちは親友だよ、穂乃果ちゃん。それだけは絶対に、この先も変わらない」

ことり「でも……。仕方がないんだよ」

穂乃果「ど、どうして……っ!」

ことり「だって私たちは、同じ人を、好きになっちゃったんだから」

穂乃果「……」

ことり「だから私は、穂乃果ちゃんと……戦うんだ」

ことり「もう、二人についていくだけの、私じゃない……。いつまでも『ダメな子』のままじゃ、いられないんだ」

ことり「私は絶対に、穂乃果ちゃんに、『勝つんだ』」

ことり「……う、う――」



ことり「海未ちゃんは、渡さないんだからぁ……っ!」
  
110: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:39:43.45 ID:9YrMYlDRM.net
   
――――――――
――――――
――――
――



9日後……

ラブライブ最終予選、前日(金曜日)

朝、屋上――



絵里「最終予選前、最後の朝練よ」

にこ「ふわあぁ……。いいけど、なんで今日は神社じゃなくて、屋上なのよ?」

希「始業時間ギリギリまで練習するためやって、昨日えりちが説明してたやろ~?」

花陽「A-RISEとの対決は、いよいよ明日ですっ! ちょっとでも、練習しておかないと……っ!」

真姫「そうね。ただでさえ私たちは、遅れを取ってるわけだし……」

凛「頑張らないとっ! ……ってそういえば結局、曲の方はどっちでいくのかにゃ?」

絵里「それは……穂乃果っ」

穂乃果「な、なに?」

絵里「最終的な判断はあなたに任せるって、言っておいたと思うけど。曲、どっちにするか決めた?」

穂乃果「……それは、その」

穂乃果「う、海未ちゃんは、どう思う……?」

海未「えっ……?」

絵里「……穂乃果?」

海未「私は、そうですね……」

海未「……やはり、最初に決めていた方にすべきだと思います。もう一つの方は、とても披露できる完成度に達しているとは思えませんので」

真姫「ま、そうよね、流石に……」

絵里「……分かったわ。じゃあ明日、私たちが躍るのは――」



絵里「――『Snow halation』で、決まりね」
 
111: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:48:45.97 ID:9YrMYlDRM.net
   
絵里「それじゃ、ストレッチから始めましょう。ペアを組んで」

にこ「ことりちゃんっ。にことペアを組んでほしいにこっ♪」ギュッ

ことり「えっ? うん……」

希「うーみちゃん。ウチとストレッチすると、胸が大きくなるって噂やでー?」

海未「ど、どこをストレッチする気ですか……」

絵里「じゃあ一年生は、三人仲良く組んでもらうとして……穂乃果っ!」

穂乃果「えっ……?」

絵里「私と、組みましょう?」ニコッ


……


にこ「このままじゃ私たち、負けるわよ」

ことり「……っ」

にこ「バレてないとでも思った? ここ一週間くらいずっと、あんたたち三人とも、様子おかしいわよね」

ことり「あはは……。意外とメンバーのことしっかり見てるよね、にこちゃんって」

にこ「意外は余計だし、私だけでもないわ。希と絵里も、気づいてる」

ことり「……こんな時、三人は先輩なんだなぁって、実感するよ」

にこ「いいから話してみなさいよ。何があったの?」

ことり「……」

にこ「……」


にこ(喧嘩とかじゃ、ないわよね。三人とも、普通に話したりしてるし……)

にこ(でも三人が、『いつも通り』じゃないのは確か……。話してる時もどこか、無理をしてるような気がする……)

にこ(なんだろ、この違和感。まるで、前にことりの留学の件で、色々あった時みたいな……)

にこ(あの時も屋上だった……。何か嫌な予感が、ずっとしてて……。そうしたら穂乃果が急に、μ'sを辞めるとか言い出して……)

にこ(……ううん、そんなわけない。もう私たちμ'sの間にあんなことは、二度と起きないんだから……)
  
112: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:54:02.70 ID:9YrMYlDRM.net
  
にこ「……話したく、ないの?」

ことり「ごめん……」

にこ「なら、無理に聞いたりはしないけど……。でもね、ことり。私が気になってるのわね……」

にこ「あんたが三人の中で一番、暗い顔をしてるように見えることなのよ」

ことり「っ! そ、そうかな……」

にこ「ええ。暗い顔、というか……疲れきったような顔、というか」

ことり「……そんなこと、ないよ」

にこ「……あんたたちの間に何があったのかは分からないし、あんたが一体何を隠してるのかも分かんないけどさ」

にこ「本番は、明日なのよ……? そんな調子であんた、本当に大丈夫なんでしょうね?」

ことり「……ありがとう、にこちゃん。心配してくれて」

ことり「大丈夫、だよ。今日中に……ちゃんと気持ちの整理は、つけるから」

にこ「……なら、いいけど」


にこ(いいわけない。今日中に解決できる問題なら、とっくに解決できてるはずよ……)

にこ(でも私じゃ、何もできない。私は三人の『仲間』だけど、『幼馴染』じゃないから……)

にこ(この三人の関係は、深すぎる……。他人の私じゃどうやったって、手出しできない――)


……


希「海未ちゃん、いい加減に話してくれんと、わしわしするで~?」

海未「の、希……。そうは言われましても、話せないものは話せないんです」

希「んー。そう言われちゃうとなぁ……。無理に聞き出すのも、悪い気がするし……」

海未「……わしわしではなく、普通にストレッチしましょう。さぁ、まずは私が……」

希「恋愛かな?」

海未「ぶっ!!」

希「あ、当たり?」

海未「ど、どど、どうして……」

希「カードがそう言ってるやん♪」ピラッ

海未「今初めて出しましたよねっ!?」
  
113: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:03:36.04 ID:9YrMYlDRM.net
  
希「ま、海未ちゃんは必死に何か、悩んでるみたいやったし。年頃の女の子が悩むことと言ったら、恋愛しかないやろ?」

海未「そ、それにしたって……」

希「スイッチのことやったら、そう言ってくれてもええはずやしな。ふぅん、そっかそっかー」

海未「希……。このことは、誰にも」

希「分かっとるよ。海未ちゃんは、恋愛なんて初めてやろ。悩むのも、無理はないと思うで」

希「大切なことや。じっくり悩んだ方がええ……。でも、分かっとるよね?」

海未「ええ、分かってます……。私たちμ'sにとって大事なのは、明日のラブライブです」

希「ふふっ。海未ちゃんは、大丈夫そうやな」


希(恋愛……海未ちゃんがなぁ。相手は誰やろ? 男の子の知り合いなんて、おったかなぁ……。それとも……)

希(むむー……。海未ちゃんだけじゃなくて、ことりちゃんや穂乃果ちゃんの様子までおかしいことを考えると……)

希(……これは、厄介なことになってそうやなぁ)

希(三人は傍から見てても羨ましくなるくらい、仲が良いけど……。それだけにこういう問題になると、なかなか解決しにくいんよなぁ――)


……


絵里「はっきり言って最近のあなたは、全然あなたらしくないわ」

穂乃果「……」

絵里「さっきだって、そう。あなたはμ'sのリーダーでしょう? なんで海未に判断を、投げたの?」

穂乃果「……だって私なんかより海未ちゃんの方が頭いいし、正しい判断をしてくれるかな、って」

絵里「だったら海未がリーダーをやるべきよね?」

穂乃果「……」

絵里「いい、穂乃果。別にあなたがμ'sの発起人だから、言いだしっぺだから、リーダーを任せてるわけじゃないのよ」

絵里「『あなただから』、リーダーを任せてるの。私たちは、『高坂穂乃果という女の子についていきたい』と思ったから、μ'sに入ったの」

絵里「誰の判断が正しいかなんて、関係ない。私たちはあなたの下した判断を、正しいと信じるしかないんだから」
  
114: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:08:04.15 ID:9YrMYlDRM.net
   
絵里「だからあなた自身が、自分の判断を正しいと信じられないのなら……リーダーなんて、やるべきじゃないわ」

絵里「ただ、これだけは忘れないで。あなたが自分を信じられなくても、私たちは全員あなたを、信じてるってことを」

穂乃果「絵里ちゃん……」

絵里「……あぁ、ごめんなさい。偉そうに、説教なんてしちゃって……。でも、ずっと思ってたことだから」

穂乃果「絵里ちゃん、ありがとう。こんな私のことを、信じてくれて……」

絵里「……こんな、って」

穂乃果「私なんかのことを信じてくれて、ありがとう……。そうだよね、私はμ'sの、リーダーなんだもんね……」

絵里「……」


絵里(やっぱりおかしい……。今は私に説教をされて、落ち込んじゃってるんだとしても……)

絵里(最近の穂乃果は、全然穂乃果らしくない。あの底抜けの明るさみたいなものが、今の彼女からは感じられない)

絵里(いつだってみんな、穂乃果の元気で積極的な姿に、惹かれてた……。でも、今は……)

絵里(その元気を支えてきた、『自信』みたいなものが……彼女から、消えてしまったかのような――)


絵里「……」

絵里「そういえば、今日もあなた……」

穂乃果「ねえ、絵里ちゃん。今から、私……」

絵里「えっ……?」

穂乃果「……」スッ

絵里「っ! わ、分かったわ。みんなにも、伝えておくから」

穂乃果「……ごめんね、ありがとう」


穂乃果「でも多分……これで、最後だから」
  
115: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:19:58.46 ID:9YrMYlDRM.net
   
――――

キーンコーンカーン



絵里「予鈴が鳴ったわね。朝練は、ここまでにしましょう」

にこ「ほ、ほんとにギリギリまでやらせたわね……っ!」

花陽「早く戻らないと、遅刻になっちゃうよぉ~……」

真姫「着替えもしなきゃいけないし、とにかく部室に戻りましょ」

海未「そうですね……」

穂乃果「……海未ちゃん」

海未「は、はい?」

穂乃果「ちょっと、いいかな。こっち……」

海未「……?」スタスタ


ことり「……」

ことり(ダメだ、私……。全然練習に、集中できてない……)

ことり(ラブライブはもう、明日なのに。このままじゃ、にこちゃんの言う通り……)

ことり(……やめよう)

ことり(悩むのはもう、やめよう……。せめて明日の最終予選が、終わるまでは……)

ことり(放課後の練習は、しっかりやらなきゃ。気持ちをちゃんと、落ち着けて……)


ことり「……あれ?」

ことり(海未ちゃんと穂乃果ちゃん、何か話してる……。戻らないのかな……?)
   
116: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:21:18.23 ID:9YrMYlDRM.net
   
穂乃果「海未ちゃん……」

海未「どうしました、穂乃果?」

穂乃果「……」

海未「……?」

穂乃果「海未ちゃんは、その……」゙

海未「……はい?」

穂乃果「こ、ことりちゃんのことが、好き、なの……?」

海未「えぇっ!?」ビクッ

穂乃果「……」

海未「すっ、好き、というのは……」

穂乃果「……私、聞いちゃったの。海未ちゃん、ことりちゃんに、告白されたんでしょ……?」

海未「っ!! あっ、そ、それは……」

穂乃果「海未ちゃんは……ことりちゃんのこと、好き?」

海未「うっ……」

海未「……わ、分からないんです」

穂乃果「分からない……?」

海未「この数日間はずっと、そのことばかり考えていました……。ずっと、考えて……でも……」

海未「答えは、出なかった……。私には自分の気持ちが、分からなかった……っ!」

海未「ことりのことを考えると、頭がフワフワして、胸がドキドキして……。こんな気持ち、初めてなんです……っ!」

穂乃果「……そっか」

穂乃果「そう、だよね……」

穂乃果「海未ちゃんはやっぱり、ことりちゃんのことが……」

海未「……穂乃果?」
  
117: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:30:37.75 ID:9YrMYlDRM.net
   
穂乃果「分かってた……」


『私は絶対に、穂乃果ちゃんに、勝つんだ』


穂乃果「私なんかがことりちゃんに、勝てるわけないって……」

穂乃果「親友だから分かるもん。ことりちゃんは……。私なんかよりずっと可愛くて、魅力的で、それで……」


『海未ちゃんに、ずっと好きでしたって……。私の子供の頃からの気持ちを、伝えたの』


穂乃果「私なんかよりずっと、『勇気』があった……」

穂乃果「ことりちゃんは、全然ダメな子なんかじゃない……。私なんかより、ずっとすごいんだ」

穂乃果「そんな……そんなことりちゃんと、戦ったって……。勝てるわけ、なかったんだ」

穂乃果「だって私には、何もないから……。本当にダメなのは、私の方なんだから……っ!」

海未「穂乃果……っ!?」

穂乃果「……でも」

穂乃果「でも、あった。一つだけ、私には、あったんだ……」

穂乃果「海未ちゃんに、振り向いてもらえる方法が、あったの……っ!」

海未「穂乃果、なにを、言って……」

穂乃果「これ……」スッ

海未「……」

海未「な、なぜ、それを、あなたが……?」


穂乃果「……におい――」


穂乃果「――私の、『匂い』。これなら私でも、ことりちゃんに勝てるかもって、思ったの……」

穂乃果「だって海未ちゃんは、私の匂いを嗅いで……喜んで、くれたから……」

穂乃果「『これ』を押して、『いい香り』だって……。私の匂い、大好きだって、言ってくれたから……っ!」

海未「っ! あっ、あれは、その……」

海未「……」



海未「えっ……?」
  
124: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:44:52.83 ID:9YrMYlDRM.net
 
海未「穂乃果……それ……」

穂乃果「……」

海未「そ、それ、スイッチ……。スイッチを、よく見せてください……っ!」ガシッ

穂乃果「……海未ちゃん」

海未「……っ!!」


海未(レベル、『2』……)


海未「……いつから、ですか?」

穂乃果「『2』にしたのは、朝練が始まる前だよ」

海未「っ! そんな……」

海未「……待ってください。『2にしたのは』……?」

海未「で、では、『1にしたのは』……っ!?」

穂乃果「……ずっと、だよ」

海未「ずっと……?」

穂乃果「ずっと……。『ずっと』、だよ。あの日からだから、えっと……。9日間くらい、かな……」

海未「なん、ですって……?」

穂乃果「最初は、軽い気持ちだったんだ。『1』くらいだったら、誰にも迷惑かけないかな、って……」

穂乃果「『香水』代わりに一回、試しにって……9日前のあの日、スイッチを押して、学校に行ったの」

穂乃果「海未ちゃんに、喜んでもらいたかった、から……」

海未「っ!!」

穂乃果「だけどその日ことりちゃんと、話をして……。私が海未ちゃんに振り向いてもらうには、『匂い』しかないって、思って……」

穂乃果「このスイッチは、もう少しそのままにしておくことにしたんだ……。でもね――」

穂乃果「本当はすぐに、やめるつもりだったんだよ……? 海未ちゃんにまた喜んでもらえたら、すぐに、やめるつもりだったんだよ……」

海未「穂乃果……」

穂乃果「でも……。あはは。結局今日までずっと、これを『0』にすることは、なかったよ……」

海未「ほ、穂乃果……。あなたは9日間もずっと、ほのスメルを……?」

穂乃果「……」

ニコッ……


穂乃果「だって海未ちゃん、全然気づいてくれないんだもん……」
  
136: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:56:37.57 ID:9YrMYlDRM.net
カチ、カチ

フッ

穂乃果「……他のみんなには、ね。こっそり話してたの。海未ちゃんに気づいてもらえるまで、みんなは協力してくれるって言ってくれた……」

穂乃果「でも『1』じゃ海未ちゃんは、もう気づいてくれなかった。だから……さっき、初めて『2』まで上げてみたの」

穂乃果「みたん、だけど……)

海未「……そう、ですか」

穂乃果「うん……」

海未(この練習中、彼女のほのスメルはずっと、レベル2だった……なのに)

海未(私はそれに、気づけなかった……)

海未(それどころか……。実に9日間もの間、彼女のほのスメルは、増幅されたままだった)

海未(なのに、それにすら全く、気づけないなんて……)

海未(ずっと考え事をしていたから……? ほのスメルを気にしている余裕なんて、なかったから……?)

海未(いえ……今までどんなときだって私は、ほのスメルのことを忘れたことなどありません)

海未(……もしかして――)

海未「穂乃果……もう一度、スイッチを」

穂乃果「……」


カチッ

――『1』

フワァ


海未「……」スンスン

海未「……もう一度」


カチッ

――『2』

フワッ


海未「……」スンスン

海未(……やはり、ですか)

海未(私はあの廃墟で、あまりにも長く、レベル4を嗅ぎ過ぎてしまった……)

海未(そのせいで私には、強い『耐性』ができてしまった……。レベル2程度の匂いではもう、変化に気づけないほどに……)
  
138: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:06:14.91 ID:9YrMYlDRM.net
 
海未「……ごめんなさい、気づけなくて」

穂乃果「……ううん、いいよ。私が勝手に、してたことだし」

海未「あなたが私のために、そんなことを考えてくれてたなんて……思いも、しませんでした」

穂乃果「海未ちゃん……?」

海未「嬉しいです。ありがとうございます、穂乃果」ニコッ

穂乃果「っ!! う、うっ……///」ドキ

穂乃果「や、やだ、よ……」

海未「えっ……?」

穂乃果「やだよ……。どうして、ことりちゃんなの……?」

海未「……穂乃果?」

穂乃果「う、海未ちゃん、言ってくれたよね……? あの時、言ってくれたよね……っ!?」

海未「あの時……?」

穂乃果「わ、私、今でもあの時のこと、思い出すんだよ……っ!? 海未ちゃんと二人で手を繋いで、夜の街を、歩いた時のこと……っ!」

穂乃果「あの夜ね……。私、すごく幸せだったんだよ……。あの時の光景が、今でもはっきり、思い出せるんだよ……っ!」

海未「……あの時、あの、夜――」


ズキン


海未「うっ……」

海未(また、この痛み……)

海未(何か大事な記憶が抜け落ちてしまったかのような感覚……)

海未(そう……。ほのキチになった私はあの日、穂乃果の手を引いて、夜の街を、歩いて……)

海未(それで、それで――)
 
141: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:10:22.02 ID:9YrMYlDRM.net
  
穂乃果「それでね、海未ちゃんが怖い男の人から私のことを守ってくれた時、すごくかっこよくて、頼もしくて……っ!」

海未「っ! う、ぅ……」

穂乃果「そ、それで……。その後海未ちゃんが言ってくれた言葉が、私、本当に嬉しくて……っ!」

穂乃果「あの時の海未ちゃんは、確かにいつもの海未ちゃんじゃなかったけど……でもっ!」

穂乃果「海未ちゃんがくれたあの時間は、わたしにとってかけがえのない、大切な思い出で……っ!」

海未「わ、私、は……」

穂乃果「ねえ海未ちゃん、あの時、言ってくれたよね……?」

穂乃果「お、覚えてるよね……っ!? あの時のこと……っ!」

海未「私は、あの時――」




『……穂乃果』

『えっ……?』


『私が、あなたを――』




海未「私はあの時、なんと、言ったのでしたっけ……?」

穂乃果「……」



にこ「ちょっとあんたたち、いつまで話してんのよーっ!?」

花陽「も、戻らないのぉーっ!?」

絵里「ふ、二人とも、急いでっ! 遅刻になっちゃうわっ!」アセアセ

希「えりち、そんなに焦るくらいなら、早めに切り上げといたらよかったやん……」
 
142: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:16:04.15 ID:9YrMYlDRM.net
 
カチッ

――『3』

ブワッ

海未「っ!? 穂乃果……?」

穂乃果「ごめん……ごめんね」

穂乃果「私にはもう、これしか、ないから……」

穂乃果「ことりちゃんみたいな魅力的な女の子に、勝つ方法は……」

穂乃果「海未ちゃんみたいな素敵な女の子に、振り向いてもらえる方法は……」

穂乃果「もう、これしかないの……。私には、『匂い』しか、ないから……っ!」

穂乃果「私なんかができることは、このスイッチで自分の匂いを、強くすることくらいしかないからっ!」

真姫「ちょ、ちょっと、大声出してどうしたのよ?」

凛「なにか、あったのかにゃ? ってあれ、この匂い……」

ことり「……穂乃果ちゃん?」


ことり「穂乃果ちゃんっ!? まさか――」

海未「っ!! みんな――」

カチッ

 
――『4』


ブワァッ!


「「――――っ!!?」


絵里「あ、ぁ……///」

にこ「あ、ああぁ、あぁあぁっ!?////」

凛「うっ、こ、これ、って……っ!///」

希「う、ぁあ、あぁあ……っ//」

真姫「れ、レベル4……っ!? うっ、ぁあぁ……///」

花陽「なん、で、穂乃果、ちゃん……っ!?///」

海未「みんな……っ!」

ことり「鼻を塞いでっ!!」
  
143: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:23:41.53 ID:9YrMYlDRM.net
  
海未「ことり……っ!?」

バッ

にこ「う、うぅ、ふぅ~……っ!!////」ガクッ

絵里「はぁーっ、はぁーっ///」フラ

花陽「あ、ぅ、うぅぅ……///」ガタガタ

希「うっ、あ……//」ビクン

海未(っ! ことりが咄嗟に指示を出してくれたおかげで、ギリギリまだみんな、意識を保てている……っ!)

海未(だけど、それでもまずい……っ! 特に今までレベル4を嗅いだことのなかった、あの4人は……っ!)

穂乃果「う、うみ、ちゃん……どう、かな。私の匂い……」

海未「穂乃果……っ! スイッチのレベルを、下げてくださいっ!」

穂乃果「っ! えっ……」

海未「『下ボタン』ですっ! 早くっ!!」

穂乃果「なんで……なんで海未ちゃん、鼻を塞いでるの……っ!?」

海未「はぁ……っ!?」

穂乃果「なんで……やだよ、嗅いでよ、わたしの匂い……」

ことり「穂乃果ちゃん……っ!?」

海未「うっ……はぁ……っ!」

海未(……仕方ありません。耐性のできた今の私なら、レベル4でも――)

海未「……」スゥゥ

穂乃果「っ! 海未ちゃん……どう? 私の匂い……」

海未「……ふ、ふふっ」

海未「とてもいい、香りですよ。穂乃果……」

穂乃果「ほ、ほんと……?」

海未「え、ええ……」

穂乃果「えへへ、じゃあ……」



穂乃果「もっと匂い、強くしてあげるね……」
 
149: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:32:30.91 ID:9YrMYlDRM.net
 
海未「……えっ」

ことり「っ! うっ、ぅ……」

真姫「もうダメ、息、限界……っ!」

凛「や、やだよ、凛、もうほのキチになんて、なりたくないよ……っ!」

海未「……穂乃果。ダメ、ですよ?」

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「ダメですよ……? それだけは、絶対に……」

穂乃果「……だ、め?」

海未「『レベル5』だけは、絶対にダメですっ! 穂乃果っ!」ガバッ

穂乃果「いやっ! う、うぅっ……! いやぁっ!!」バッ

海未「っ!? ほ、穂乃果……っ!」

穂乃果「なんで、なんでダメなのっ!? うっ、海未ちゃんは、喜んでくれてたんじゃないのっ!?」

穂乃果「海未ちゃん、言ってたよねっ!? 『レベル5はまだ嗅いだことがないから、楽しみだ』ってっ!」

海未「うっ……。で、でも、あの時はっ!」

穂乃果「やっぱり海未ちゃんは……元に戻って、ことりちゃんのことを好きになって、穂乃果のことなんてどうでもよくなっちゃったの……っ!?」

海未「何をバカなことを言ってるんですかっ! そんなわけ――」

穂乃果「そうでしょうっ!? だから穂乃果の匂いにも、気づいてくれなくなって……う、うぅ、ぅ……っ!」

穂乃果「どうして、どうして元に戻っちゃったの、海未ちゃん……?」

海未「えっ……」

穂乃果「私、幸せだったのに……っ! 海未ちゃんと、一緒なら……私はあのまま『いつもの日常』に帰れなくたって、よかったのにっ!」

穂乃果「なのに、どうしてっ! どうして『ほのキチ』じゃなくなっちゃったの、海未ちゃんっ!!」

海未「っ!!」

ことり「っ! ほ、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「お願い……。私を見て、海未ちゃん……」

穂乃果「もう一度私の手を取って……。私を抱きしめて、海未ちゃん……」

穂乃果「『あの時』の海未ちゃんに戻ってよ……『あの夜』のことを思い出してよ、ねえ……」

海未「穂乃果っ!!」

穂乃果「もう一度私のことを好きになってよっ!! 海未ちゃん――っ!!」

海未「っ!! まっ――」
 
151: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:35:15.12 ID:9YrMYlDRM.net
  
     
カチッ


 

――『5』


  
   
   
ゴォ……ッ!!


   
  
第3部、『レベル5』、完。

最終部、『恋のスメル』に続く。
 
353: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 20:47:04.84 ID:u7R336fbM.net
  
キーンコーンカーン


雪穂「1限終わり、っと……ふぅ」パタン

亜里沙「雪穂ーっ!」

雪穂「亜里沙。なに?」

亜里沙「明日、楽しみだねっ!」

雪穂「ふふっ。亜里沙、それさっきも聞いた」

亜里沙「だってだってっ! いよいよ明日はラブライブ、最終予選だよっ!?」

雪穂「分かってるって」

亜里沙「μ'sがA-RISEと、戦う日なんだよっ! すっごく、大事な日なんだよっ!」

雪穂「分かってるってばー」

亜里沙「うわあぁ~っ! し、しかも明日のμ'sのステージでは、待ちに待った新曲が披露されるんだよっ!」

雪穂「あぁー、そういえばお姉ちゃんも、そんなこと言ってたっけ」

亜里沙「楽しみだよぉ~っ! 楽しみ過ぎて、全然授業に集中できないよぉっ! どうしようっ!?」

雪穂「いや、授業はちゃんと受けようよ……」ピッ

雪穂「……あれ? なんかいっぱい電話来てるな……」

亜里沙「えっ? 誰から……」


ヴーヴー


雪穂「おっ、と思ったらまた……」

亜里沙「……? って、ええぇーっ!?」

亜里沙「ゆ、雪穂っ!? たいへんっ! 『変態』から電話が――」

雪穂「海未ちゃんか。なんだろ、ちょっと出てくるね」

亜里沙「海未さんっ!? なんで海未さんが、変態なのっ!?」

雪穂「あ、ああ、色々あったのよ、いろいろ」

亜里沙「海未さんは変態なんかじゃないっ! 今すぐ訂正して、雪穂っ!!」プンプン

雪穂「わ、分かったよ、ごめんってば……」

雪穂(ふざけて電話帳の名前、変えるんじゃなかったな……)
 
356: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 20:55:17.10 ID:u7R336fbM.net
  
ピッ

雪穂「もしもし、海未ちゃん?」

『……』

雪穂「海未ちゃん? もしもーし」

『あ、雪穂……。よかった、やっと、出てくれましたね……』

雪穂「そりゃ授業中に電話かけられても、出られないよ。ていうか、そっちも授業中のはずじゃ……」

『雪穂……あなたに、お願いが……』

雪穂「……? もしもーしっ! なに、聞こえないよーっ!」

『あなたに、お願いが……あるんです……』

雪穂「お願い? うーん、どうしよっかなー。海未ちゃんには色々と、恨みがあるしなぁー」

『助けて、ください……』

雪穂「えっ、なに……?」

『大変、な、ことに……』

雪穂「……ね、ねえ。もうちょっと大きな声で、喋れない? 聞き取り辛いんだけど」

『大変なことに、なってしまったんです……っ!』

雪穂「大変……?」

『レベル5、が……』

雪穂「……えっ?」

『レベル5が、押されてしまったんです……っ!!』

雪穂「……」
 
357: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:04:50.22 ID:u7R336fbM.net
  
雪穂「な、なん、で……?」

『穂乃果が……穂乃果がスイッチを、押してしまって……っ!』

雪穂「おねえ、ちゃん……?」

『で、でもそれは、私のせいなんです……っ! 私が穂乃果の気持ちに、気づいてあげられなかったから……っ!!』

雪穂「ちょ、何を言ってるのっ? 意味わかんないよ、海未ちゃん」

『ゆ、雪穂、もう、あなたしか……っ! あなたしか、いないんです……っ! あ、あぁぁ』

雪穂「落ち着いて、海未ちゃんっ! 海未ちゃんはレベル5を、嗅いじゃったの……っ!?」

『かっ、嗅いで、しまいました……』

雪穂「……っ! そ、それで……?」

海未『とんでもない匂いでした……。しばらく何も考えられなくなるくらい気持ちよくて、もうなんというか、天国って本当にあるんだな、って――』

雪穂「匂いの感想なんて聞いてないってのっ!! 私が聞きたいのは、海未ちゃんはまたほのキチになっちゃったのかってことっ!」

『わ、私は、大丈夫です……。前にレベル4を長時間嗅いだおかげで、耐性ができていたので……』

雪穂「まあ、ほのキチなら私に助けを求めてきたりしないか……。それで、その」

雪穂「海未ちゃん以外に、レベル5を嗅いじゃった人は……? 考えたくないけど、嗅いでほのキチになっちゃった人は、いるの……?」

『……』
 
359: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:12:44.33 ID:u7R336fbM.net
   
『全員、です……』

雪穂「えっ?」

『私以外の全員が、レベル5を嗅いで……。ほのキチに、なってしまいました。助かったのは、私だけです……』

雪穂「……」

雪穂「……はは」

ペタン

雪穂「うそ、でしょ……? じゃあ、なに……?」

雪穂「ことりちゃんも……凛さんも、真姫さんも、また……?」

『え、ええ……』

雪穂「絵里さんや、希さんや、にこさんや、花陽さんまで……?」

『は、い……。うっ、うぅ……っ!』

雪穂「……そん、な」

『みんな……みんなほのキチに、なってしまったんです……』

雪穂「う、海未ちゃん……?」

『……はい』

雪穂「悪いけど、私には何も、できそうにないよ……。だって私、今までほのキチ『1人』相手にだって、まともに戦えたことないんだよ……?」

雪穂「海未ちゃんやことりちゃんと違って、私は……」

『……』

雪穂「それが、今度は『7人』だなんて……。そんな人数、どうすればいいの……?」
  
360: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:20:42.59 ID:u7R336fbM.net
  
雪穂「本当にみんなは、元に戻せるの……? ねえ、海未ちゃん……っ!」

『雪穂……』

雪穂「ラブライブ、明日だよね……っ!? 亜里沙がね、すごく楽しみにしてるんだよ……っ!」

雪穂「ううん、亜里沙だけじゃない……。私だって、すごく、すっごく、楽しみにしてた……っ!」

雪穂「ねえ、μ'sは……。私たちの大好きなμ'sは、本当に元に戻れるの……っ!?」

雪穂「まさかこのまま解散なんてことに、ならないよねっ!? わ、私、やだよ、そんなの……っ!」

『……』


『……ごめんなさい、雪穂』

雪穂「えっ……?」

『言葉が足りませんでした……。そうじゃ、ないんです』

雪穂「そうじゃない、って……」

『7人じゃ、ないんです。ほのキチになったのは……』

雪穂「……えっ? だ、だって海未ちゃん、『全員』って……」

『違うんです。私以外全員というのは、そういう意味ではなくて――』



 
    
『――私以外の、音ノ木坂学院全校生徒が、ほのキチになってしまったんです』



 
  
雪穂「……は?」

『つまり……いいですか、雪穂。落ち着いて、聞いてくださいね……』

『μ'sの解散どころの話ではなく……。このままでは、あなたや亜里沙が来年、入学する前に――』

 


『音ノ木坂学院は、廃校になります』




――――最終部、『恋のスメル』

 
366: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:48:36.53 ID:u7R336fbM.net
  
――――――

『レベル5とは……。つまり超広範囲に拡散する、ほのスメルだったんです』

『その刺激は、レベル4以上。そんな強烈なスメルが、学院全体を覆ったんです』

『その結果、音ノ木坂の全生徒が、ほのスメルを嗅ぐことになってしまった……。厳密には、全ての生徒を確認したわけではありませんが』

『しかし私が見た限りでは、正常な生徒は一人もいませんでした』

『見た、というのはですね……。先ほどまで私は、穂乃果を探して、学校中を探し回ってたんです』

『ええ。穂乃果は……屋上でスイッチを押した後、そのままどこかへ、走り去ってしまったんです』

『μ'sのみんなは、レベル5が押された直後に、全員気を失ってしまいました。私も危なかったのですが、なんとか意識を保ちました』

『しかしあまりにも刺激が強すぎて、しばらく動けなくなってしまったんです。その間に、穂乃果は……』

『……彼女を探して学校中を走り回っている間、私が見た光景は、凄惨の一言でした』

『教室や廊下で気を失っている生徒が、半分ほど……。しかしレベル5ともなれば、ほのキチ化の進行速度も、レベル4とは段違いなのでしょう――』

『もう半分の生徒は、既にほのキチとして目を覚まし、学校中を彷徨っていました……。今はもしかしたら、もっと増えているかもしれません』

『……危険を感じた私は、ひとまず学院を脱出しました。学院の外までは、スメルは届いていないようでしたが、しかし――』

『今でも学院の中はきっと、レベル5が充満しています。あの場所には今はもう、誰も入ることができません』

『私と……あなた以外は』

『……ごめんなさい。本当に、勝手なお願いなのは、重々承知しています』

『しかしこんなことを頼めるのはもう、スメルの効かない、あなたしかいないんです……っ!』

『私と一緒に学院に戻って、穂乃果を……スイッチを、探してくれませんか……っ!?』

『お願いします、雪穂……っ! この使命を果たせるのは、もはや……この世界で、私とあなたしかいないんですっ!』
 
369: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:54:03.14 ID:u7R336fbM.net
  
――――――


タッタッタッ……

雪穂「はぁ、はぁ……っ!」

雪穂「もう、なんで、こんなことに……っ!」


『あなたしかいないんです……っ!』


雪穂「なんで、私が……っ! こんなこと……っ!」

雪穂「やめてよ、うっ、うぅ……っ!」


『これは、他の誰でもない、お姉ちゃん自身が持つべきなんだ。これは、そういうスイッチなんだよ』

『それはもう、お姉ちゃんの物だから。あとはどうしようが、自由だよ』


『穂乃果が……穂乃果がスイッチを、押してしまって……っ!』



雪穂「くっ、う、ぅ……っ!」

雪穂「私が……私がお姉ちゃんに、スイッチを渡さなければ……っ!」

雪穂「もう、やだ……っ! 私のせいじゃん、全部……」

雪穂「わ、私のせいで、みんなが……たくさんの、人が……っ!」

雪穂「……ふっ、うぅ」グスッ

雪穂「ううぅ……っ!!」

タッタッタッ……!
 
370: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:59:21.03 ID:u7R336fbM.net
  
「雪穂っ! こっちですっ!」


雪穂「うっ、海未ちゃん……。はぁ、はぁ……っ」

海未「ごめんなさい、無理を言って……。ここまで来てもらって」

雪穂「いいよ、緊急事態でしょ……。学校の方は、早退ってことにしてもらったから……」

海未「……雪穂。泣いて、いるのですか?」

雪穂「っ! な、泣いてなんかないっ!」ゴシゴシ

海未「そうですか……。では、急いで学院に戻ります」

雪穂「う、うん……」


タッタッタッ……


海未「……雪穂」

雪穂「なに……?」

海未「もしもあなたが穂乃果にスイッチを、渡していたんだとしたら――」

雪穂「っ! うっ、あ、ご、ごめんなさ」

海未「そうだとしても、あなたが責任を感じる必要は、一切ありませんからね」

雪穂「……えっ?」

海未「全ては私の責任です。あなたはただ、巻き込まれてしまっただけなんですから」

雪穂「……」

海未「年下のあなたをここまで巻き込んでしまうことになってしまったのは、 胸が詰まる思いです。ですが……」

海未「それ以上にあなたには、感謝します。よく、来てくれました……。あなたは私が知る中で、最も勇敢な女子中学生です」

雪穂「う、な、なにそれ……。そんなこと言われたって、私は……」

海未「……」

雪穂「……あり、がとう」

海未「……それはこちらの台詞ですよ、雪穂」

タッタッタッ……
 
371: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:05:48.16 ID:u7R336fbM.net
  
――――――

 
音ノ木坂学院

正門


ザザァ……



雪穂「……誰も、いない」

海未「ええ、とりあえず、外には……。やはりスメルも、ここまでは届いていないようです」

雪穂「静かだね……」

海未「はい……」

雪穂「ここから見る限りじゃ、いつも通りの音ノ木坂にしか見えないけど……」

海未「……そうですね。私もここにいると、さっきまでの出来事が嘘みたいに思えます」

雪穂「……」

海未「雪穂……。覚悟は、できてますか?」

雪穂「……ここまで来て、引き返すわけにはいかないでしょ」

海未「その通りです。では――」

海未「まずは、穂乃果を探します。彼女を見つけ出して、なんとしてでもスイッチのレベルをリセットします」

海未「それが、最優先です。レベル5が充満している今の状態では、例えほのキチを元に戻せたとしても、すぐにまた意識を失ってしまうかもしれませんから」

海未「そもそも全校生徒のほのキチを、どうやって元に戻すか、ですが……時間がありません。その方法は、後で考えます」

雪穂「……うん、分かった」

海未「それでは……手を」スッ

雪穂「えっ……なに?」

海未「繋いでいきましょう。その方が安心ですし、恐怖も紛れるでしょう」

雪穂「……別に私は、怖くなんてないし」

海未「……ふっ、そうですか」
 
372: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:07:14.69 ID:u7R336fbM.net
  
ギュッ


雪穂「っ! ちょ、話聞いてたっ!?」

海未「ごめんなさい。私が、安心したいんです」

雪穂「えっ……?」

海未「こうして、誰かと手を繋ぐと……。何があってもその人を守りたい、という気持ちになるんです」

海未「守るべき人がいる……。それだけで私は、安心できるんです」

雪穂「……なっ」

雪穂「なんで私が、変態の海未ちゃんなんかに守られなきゃいけないのさっ!」ムキーッ

海未「雪穂……?」

バッ

海未「あぁっ!?」

雪穂「自分の身くらい、自分で守るよっ! ほら、さっさと行くよっ!」

スタスタ……


海未(……姉妹なのに、穂乃果とは大違いですね)

海未(いえ、ただ私が雪穂に、嫌われているだけですか……)

海未「……って雪穂、そっちに行ってはいけませんっ! こっちですっ!」

雪穂「えっ? でも入口はこっち……」

海未「中庭に、私が脱出に使った窓があります。そこから、校舎の中に入ります」

雪穂「……いいけどさ。なんでわざわざ、そんなところから?」

海未「下駄箱には、『穂乃果の靴』がありますからね」

雪穂「はぁ……?」

海未「では、こっちから行きましょう」
 
374: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:16:36.06 ID:u7R336fbM.net
  
――――


1階、廊下


グイッ


雪穂「よっ……と」スタ

海未「……とりあえず、潜入成功です」

海未「うっ! やはり、スメルはまだ充満しているようです……。はぁ、うっ……///」

海未「レベル5は刺激が強すぎます……。なるべく吸ってしまわないようにしないと……。うぐっ……」ググッ

雪穂「……」クンクン

雪穂「……ほんとだ、すごいね。確かに、お姉ちゃんの匂いがする」

海未「……ふっ、レベル5を嗅いで、その程度の感想ですか。やはり私とは比べ物にならない耐性をお持ちですね、雪穂……」

雪穂「そんなことで褒められても嬉しくないし……ていうか」

雪穂「やっぱり誰もいないけど」キョロキョロ

海未「ほとんどの生徒は教室がある、反対側にいるはずです。朝のホームルームの時間帯でしたからね」

雪穂「海未ちゃんが探したのは、その教室がある方なの?」

海未「はい……。しかしそっちもまだ、くまなく探せたわけではないのですが」

雪穂「じゃあとりあえず、この辺から探そ。海未ちゃんあっち、私こっちね」

海未「待ってくださいっ! 単独行動は危険です、一緒に行きましょうっ!」

雪穂「はぁっ!? 何言ってんの、手分けして探した方がいいに決まってんじゃんっ!」

海未「そ、それはそうですが、しかし……っ!」

雪穂「急いでお姉ちゃんを探すんでしょっ!? 見つけたら、連絡するからっ!」タッタッタッ……

海未「あっ、雪穂……っ!」
 
375: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:21:28.20 ID:u7R336fbM.net
  
タッタッタッ……


雪穂「はぁ、はぁ……。お姉ちゃん……っ!」

雪穂(私がスイッチをお姉ちゃんに、渡したから……)

雪穂(危険だって、分かってたはずなのに……。あんなスイッチ、やっぱり早く処分してもらうべきだったんだ……っ!)

雪穂(お姉ちゃん……。お姉ちゃんは今、どこで、なにをしてるの……?)

雪穂(一体どんな気持ちで、いるの……?)

雪穂(ごめんね……。お姉ちゃん、どうか、自分を責めないで――)


ドンッ


雪穂「わっ!?」

「きゃっ!」

ドテッ


雪穂「い、たた……」

雪穂(曲がり角……)

雪穂(な、なにしてんの、私、もっと気をつけなきゃ……)


「いったぁ……」

雪穂「あっ、ご、ごめんなさ……」

雪穂「……」



ザワザワ……



雪穂「なに、これ……?」
  
376: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:26:58.48 ID:u7R336fbM.net
   
『私以外の、音ノ木坂学院全校生徒が、ほのキチになってしまったんです――』


 
「はぁ、はぁ……。穂乃果ちゃん、ほのかちゃぁん……///」

「はわわぁ~、すごい、すごいよぉ、穂乃果ちゃんの匂いが、いっぱいだよぉ……////」

「あぁ、高坂さん、あなたの匂いって、こんなに素晴らしいものだったのね……っ!////」

「あはははははっ! あっははははははぁぁっ!///」

「あぁん……。どこなのぉ……。どこにいるの、高坂さぁん……///」

「穂乃果さんっ! あなたの素敵な匂いを、是非ともこの私にっ!///」

「高坂さん高坂さん高坂さん高坂さん高坂さんこうさかさんこうさかさん」

「ほのかぁ……っ! あんたの匂い、もっと嗅がせてえ……////」

「ほのっちぃー、だぁいすきだよぉ……////」

「うひ、うひひひ、うへへへへへ……っ!///」



雪穂「……」ジリ

雪穂「……う、ぁ」

雪穂(なにこれ……。廊下に、こんなに、いっぱい……)

雪穂(あ、明らかにみんな、普通じゃない。まさかこの人たちみんな、ほのキチなの……?)

雪穂「あ、あぁ……」

女子A「う、うぅ~ん。いてて……」ムクッ

雪穂「あっ……?」

女子A「ごめんねー、前見てなかった……。大丈夫?」

雪穂「っ! あ、あなたは、平気なんですかっ!?」

女子A「……?」
  
377: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:36:31.46 ID:u7R336fbM.net
 
女子A「あなた……」

雪穂「えっ……?」

女子B「ちょっとー、大丈夫? あれ、その子……」

女子A「セーラー服だね。別の学校の子かな?」

女子B「なんか見たことある制服だなぁ……。もしかして、中学生じゃない?」

雪穂「あ、あの、その……」

雪穂(まともそうな人がいて、よかったけど……。し、知らない高校生二人と話すのって、ちょっと緊張するかも……)

女子A「にしても可愛いねー、あなた。あはは」

女子B「ほんとねー、食べちゃいたいくらい。うふふ」ナデナデ

雪穂「っ! うっ……///」

雪穂(あ、頭撫でられてる……。高校生って、こんな感じなんだ……)

女子A「それにしても……。似てるよね、この子」

女子B「あ、私も思った。そっくりだよねー」

雪穂「っ!! えっ、あの……」

雪穂(もしかしてこの人たち、お姉ちゃんの知り合い? 私がお姉ちゃんの妹だって、バレた……?)

雪穂(いや、別に隠さなくてもいいのか……。この人たちは、大丈夫そうだし)

雪穂「あ、あのっ!」

女子A「うん?」

雪穂「わ、私、お姉ちゃん……高坂穂乃果の妹の、高坂雪穂と申しますっ!」

雪穂「お二人はお姉ちゃんの、お友達の方でしょうかっ!? あの、もしよかったら、一緒にお姉ちゃんを探して――」

女子A「あーっ! 穂乃果ちゃんの、妹っ!?」

女子B「そっかーっ! 道理で似てると思ったよーっ!」





女子A、B「「匂いが」」
 
380: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:44:10.74 ID:u7R336fbM.net
 
雪穂「……えっ?」

女子A「穂乃果ちゃんの妹……ゆきほちゃんかぁ。可愛いなぁ……」

女子B「お姉ちゃんを探してるんだ? 実は私たちもさっきから探してるんだけどさ、見つからなくて」

女子A「ねえ、でもさ……。もうこの子で、よくない? 可愛いし、良い匂いだし……」

女子B「そ、そうだね、もう我慢できそうにないし……。うん、いいんじゃない……?」

雪穂「ひっ……!?」ビクッ

女子A「ね、ねえ、ゆきほちゃん、お姉さんたちと、いいことしない……?」ジリ

女子B「大丈夫、怖くないよ……。ちょっと匂いを、嗅がせてくれるだけでいいから……っ!」ジリ

雪穂「い、いやぁっ! こ、来ないで……」

女子A「はぁ、はぁ……っ////」スンスン

女子B「いい、いいよぉ。ゆきほちゃん、良い匂いだよぉ……っ!///」スンスン

雪穂「や、ぁ……」

雪穂(なんで……?)

雪穂(なんで私が、こんな目に……)

雪穂(誰か……)

雪穂(誰か、助けて……。だれか――)


ドンッ! ドンッ!


女子A「きゃあっ!?」ドサッ

女子B「うわっ……!?」ドテッ

雪穂「……」

雪穂「あっ……」


雪穂「う、海未ちゃん……?」

海未「まったく……」


海未「すぐに突っ走る癖は、お姉さんにそっくりですね。雪穂」
 
381: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:48:00.06 ID:u7R336fbM.net
  
女子A「いったぁ……。ひ、酷いよ園田さん、いきなり突き飛ばすなんて……」

女子B「私たちはただ、ゆきほちゃんの匂いを嗅ごうとしただけなのに……」

海未「あなたたち……」

海未「……っ!」

雪穂「あ……っ!?」


ゾロゾロ


女子C「はぁ、はぁ……/// あれ、園田さん……?」

女子D「はわわぁ~、海未ちゃんだぁ……。穂乃果ちゃんしらなぁ~い……?」

女子E「園田さん、今すぐ高坂さんの場所を教えなさい。さもないと……」

女子F「あははははははっ! あっはははははははぁっ!」

女子G「その子、高坂さんの妹なのぉ……? あぁん、可愛いわねぇ……」

女子H「ほ、穂乃果さんの妹ですってっ!? い、今すぐ匂いを嗅がせてくださいでありますっ!」

女子I「園田さん園田さん、高坂さん高坂さん高坂さん高坂さん」

女子J「穂乃果……穂乃果はどこなの、海未……。早く、教えてぇ……」

女子K「いいなぁ……ほのっちのいもうと、いいなぁ……」

女子L「うひひ、うへへ……っ! ゆきほのにおい、ほのかににてる……」


雪穂「……」ゾッ

海未「……雪穂、こっちですっ! 走りますよっ!」グイッ

雪穂「っ! う、うん……」


タッタッタッ……
 
385: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:55:03.96 ID:u7R336fbM.net
  
海未「はぁ、はぁ……っ!」

雪穂「はぁ……っ! う、海未ちゃん、あの人たちって……っ!」

海未「ええ……。全員、私たちのクラスメイトです」

雪穂「っ! そ、そんな……」

海未「彼女たちは、ほのスメルを求め教室を抜け出し、穂乃果を探しにこんなところまで来たんです……っ!」

海未「しかし私が確認したときは、彼女たちは教室で眠っていたはず……つまり彼女たちは、私が雪穂を呼びに行ってる間に、新たに目覚めたほのキチです」

海未「もう十分な時間が経っています。この分だと相当数の生徒が、既に目覚めて……となると、この辺りにも、大量のほのキチが……」

海未「……っ! やはり、ですかっ!」

雪穂「えっ、うわっ……!?」



「きゃははははーっ! 超ウケる、ウケるんですけどーっ!!////」

「マジやばいんだけどーっ!! あたし今、超しあわせーっ!!////」

「穂乃果ちゃんの匂い、サイッコーっ!! きゃっははははははははぁっ!!////」



雪穂「あ、あの人たちも、クラスメイトっ!?」

海未「い、いえ、隣のクラスの方々です……っ! 駆け抜けますよ、雪穂っ!!」

雪穂「うっ……、わ、わかった……っ!」


タッタッタッ……
  
386: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 23:04:05.42 ID:u7R336fbM.net
   
――――


海未「はぁ、はぁ……っ! とりあえずこの辺りは、大丈夫そうです……」

雪穂「……あの、海未ちゃん」

海未「はい……?」

雪穂「さっきはその、ありがとう。助けてくれて……」

雪穂「それと、ごめん……。勝手に一人で、突っ走っちゃって」

海未「……いいえ、謝るのはこちらの方です、雪穂」

海未「ほのキチが危険な存在であることは、十分に理解できていたつもりでした……」

海未「しかし、基本的にほのキチは、穂乃果以外の人物に興味を持ったりはしないはずだと……そう考えていたのですが……」

海未「……浅はかでした。これだけたくさんのほのキチがいれば、例外なんていくらでもあり得たんです。特に、妹のあなたに対しては……」

海未「ごめんなさい、雪穂……。こんな危険な場所に、あなたを連れてくることになってしまって……」

雪穂「だ、大丈夫、だよ。私は全然、怖くなんてなかったし……」

海未「……雪穂」


ギュッ……


雪穂「……あっ」

海未「絶対にこの手を離さないでくださいね、雪穂」

海未「私が何があっても、あなたを守りますから。どんなほのキチからも、どんな例外からも、あなたを守って見せます」

海未「ですから……」

雪穂「……」

雪穂「……ん」コク


スタスタ……


雪穂(……お姉ちゃんもこんな風に、海未ちゃんに手を引かれてたのかなぁ)

雪穂(まあ、確かにちょっと、安心はするかも……)
  
410: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:26:20.99 ID:CP8Bf93iM.net
 
――――


バタン


海未「……くっ、ここにもいませんでしたか。穂乃果は一体、どこへ行ってしまったのでしょうか……?」

雪穂「ま、まさか、もうこの学校の中にはいないんじゃ……?」

海未「それは大丈夫なはずです。校内にスメルが充満している以上……。外で匂いを感じなかった以上、彼女はこの中にいるはずなんです」

雪穂「……そ、そっか」

海未「ええ……」

海未(……いえ、本当はただ、そう思いたいだけなのかもしれません)

海未(レベル5を纏ったまま、穂乃果が外に出てしまった可能性を、考えたくないだけなのかもしれない)

海未(だってもしそんなことになっていれば、この事件は、音ノ木坂の中だけでは留まらなくなる……)

海未(下手をすれば、今度は秋葉原全体を巻き込む大事件に発展してしまうかもしれない……。そんな未来は、考えたくありません)

海未(しかし全ては、穂乃果次第です。彼女の、気持ち次第……)

海未「……」チラッ

雪穂「……」ギュ

海未(雪穂……今はもう、私のことを信じて、手を離さないでいてくれています……)

海未(だけど、ごめんなさい……。私はやっぱり、あなたに信頼されるような人間では、ないんです)

海未(私は、何もできない。穂乃果をこのまま見つけることができたとしても、私にはなにも……)

海未(むしろ、会わない方がいいくらいです……。今の私が穂乃果に会えば、また彼女を傷つけるだけ……)

海未(下手に刺激すれば、状況は悪化する……。私は穂乃果に対して、なにもしてあげられない……)

海未(だからあなたに頼るしかなかったんです、私は……。穂乃果を救えるのはもう、あなたしかいないのだから)

海未(今の私には精々、ほのキチからあなたを守ることくらいしか、できないのですから――)
 
412: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:37:12.30 ID:CP8Bf93iM.net
 
――――


タン、タン

雪穂「……さっきの階にはあまりほのキチ、いなかったね」

海未「ええ……ですが、この階は……」

雪穂「……あれ? なんか、声が聞こえる……」

海未「っ! この階は、後回しにしましょう……」

雪穂「えっ、どうして……?」

海未「『部室』が、あります……」

雪穂「……」

海未「では、もう一つ上の階に行きましょう……なるべく、静かに」

雪穂「わ、分かった……」

雪穂「……」


雪穂「……」チラッ


ドサッ……


雪穂「……えっ?」


「う、うぐぅ、むぐっ、はぁ、ふぅ~///」スンスン


雪穂「うっ……海未ちゃん?」

海未「……はい?」

雪穂「あ、あの人……。あそこで、寝っころがってる人……」

雪穂「あの人が、嗅いでるのって……。もしかして、お姉ちゃんの制服――」

海未「っ! 見てはいけません、雪穂っ!!」


 
「――捕らえなさいっ!!」
 
 
413: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:40:05.60 ID:CP8Bf93iM.net
  
ガシッ


「うっ!?」

「さぁ、おとなしくその制服を、渡してもらいましょうか」

「い、いやだ、これは私の物だっ! 絶対に渡すもんかっ!!」

「はっ、いい度胸ですのね。クラス委員長の私に、逆らう気かしら?」

「そんなの、今は関係ないっ! せ、せっかく手に入れたこの『宝物』を、手放したりなんて……っ!」

「ふぅん、ならいいですわ。あなたたち、やっておしまいっ!」

「「はい、委員長っ!!」」

「ひっ……!? いや、なにするのっ! あ、やめ……っ!」

「ふふっ……」

「いや、返してっ! 私の、私の宝物……っ! あ、あぁああぁあ……っ!」


「いやぁあぁあぁあああぁっ!!」



海未(あの方々は……制服のリボンの色からして、三年生ですか)

雪穂「な、なに、あれ……?」

海未「……先を急ぎます、雪穂」グイッ

雪穂「ま、まってよ、でも、あの人……っ!」

海未「今は放っておくしかありません。『やる方』も『やられる方』も、結局はほのキチなのですから……」

雪穂「そんな、うぅ……」

海未「……」


海未(部室の外で、あの様子では……。中は、もっと……)

海未(部室には、穂乃果のバッグがあります。あの中には、ほのスメルが染みついた様々な『宝物』が、納められている……)

海未(あれはほのキチからしてみれば、ほのスメルの宝箱……それを取り合う争いが、あの場所では繰り広げられています)

海未(そんな危険な場所に、穂乃果がいるとは考えられませんが……いざとなればあの中にも、飛び込む必要が……)
  
414: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:49:27.00 ID:CP8Bf93iM.net
  
……

ザワザワ……


「はぁ、あぁあ~、穂乃果ちゃぁんー///」

「うぅ~、どこぉ、どこなのぉ、高坂さぁんー///」


海未「……」スタスタ


「はぁ、はぁっ! ねえ、アイドル研究部の部室って、どこだっけっ!?」

「下の階だよぉ。でもあそこは三年生が占拠してて、もう入れそうにないよぉー……」


雪穂「う、うぅ……」スタスタ


「あ、園田さん。高坂さんってどこにいるか、知ってる?」

海未「……知りません。ごめんなさい」

「あれー? その子制服違うね。だれー?」

雪穂「っ!」ビクッ

海未「ただの迷子です。それでは私、先を急ぐので」

「うん、ごめんねー。引き留めちゃって」


「あぁー、どこにいるんだろ高坂さん。早く全身を舐めまわしたいなぁ……」



海未「……実験室。次はこの部屋です」

雪穂「う、うん……」


ガシャァンッ!!


「あぁぁああぁあっ!! 匂いが、匂いが足りないよぉぉっ!!」

「嗅ぎたいいぃぃっ!! 穂乃果のシャツの中に入って、匂いを嗅ぎたいいぃぃっ!!」



雪穂「ひっ!?」

海未「っ! ここは、後回しにしましょう……。次です」
  
416: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:58:09.48 ID:CP8Bf93iM.net
  
……

「あはっ、あはははっ、あはははは……」

「うふ、ふふふっ、うへ、えへへ、ふふふ……」

「うひ、ひひひ、ひゃっははははははははははぁっ!!」


雪穂「……はぁ、はぁ」

雪穂(もう何人、ほのキチを見てきたんだろう……)

雪穂(『こっち側』だけで多分、50人近く……でも全校生徒の数には、まだまだだ……)

雪穂(1クラス30人ちょっとだとしても、一年生が確か1クラスで、二年生が2クラス、三年生が3クラスで……)

雪穂(……う、うぅ、嘘でしょ……? まだ、そんなに……)


海未「雪穂……大丈夫ですか?」

雪穂「っ! う、うん……平気……」

海未「ですが、顔色が……」

雪穂「わ、私のことなんかいいから、早くお姉ちゃんを……」


「う、うっ、えぐっ、うぅ……」


雪穂「……えっ?」


「ひぅ、ああぁっ/// あ、あぁあぁ……」


雪穂「……」


「ふっ、うぇ、いやぁ、あ、うええぇえん……っ!」


雪穂「う、海未ちゃん……」

海未「……なんですか?」

雪穂「何であの人、泣いてるの……?」

海未「……」

雪穂「ここまで色んなほのキチを、見てきたけど……。『泣いてる』ほのキチなんて、一人もいなかったよね……?」


「グスッ、あっ、うわぁ、あぁ、あぁあぁ……///」
   
417: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:28:08.59 ID:CP8Bf93iM.net
  
海未「……彼女は、『辿り着けなかった者』です」

雪穂「……は?」

海未「当然ですが、生徒の中でも、穂乃果の匂いを直接嗅いだことのある人間など、そう多くはいません」

海未「精々、クラスメイトか……。同級生くらいのものです。それももちろん、全員ではないでしょうが」

海未「しかし一度でも穂乃果の匂いを嗅いだことがあれば、先ほど自分の意識を奪った刺激的な匂いが、いま学院内に充満している甘い匂いが、穂乃果の匂いであることに、気づくことは容易いでしょう」

海未「『穂乃果の匂いを知る人物が、ほのキチになる』……今までで言えば、私やことり、凛や真姫は、このパターンでした」

雪穂「……」

海未「ただ今回の場合においては、『例外』が存在します」

海未「なにせ、全校生徒ですから。むしろ例外の方が、圧倒的に多いくらいです」

海未「つまり、『穂乃果の匂いを知らない人物が、ほのキチになる』パターンです。穂乃果とそこまで関わりのない人物が、ほのキチになった場合……」

海未「……それでも同じように、これが穂乃果の匂いであることに気づくことはできます」

雪穂「えっ?」

海未「穂乃果には、『知名度』がありますから。スクールアイドルμ'sの、リーダーとして……。音ノ木坂学院生徒会長としての、知名度が」

海未「この学院で、彼女のことを知らない人物は、恐らく一人としていないでしょう……。つまり――」

海未「それぞれ自分の中にある『高坂穂乃果』という人物像から、彼女の匂いを『想像』し、自分の嗅いだレベル5の匂いと、結びつけることで……それが穂乃果の匂いであることに気づくことも、可能なんです」

海未「それまで穂乃果の匂いを知らずとも、ここで『気づく』ことさえできれば、あとは同じです」

海未「あとはほのキチとして、ほのスメルを求めて、穂乃果を追い求めるだけです。あるいは穂乃果の所有物などを、探ってみたりとか……」

海未「……それが、正しいほのキチの在り方なんです」

海未「そうしてほのキチとして、正しく振る舞うことができれば……。今まで見てきたほのキチのように、以前の私たちのように、『幸せ』になることができるんです」

海未「……しかし『そこの彼女』は、『気づくことができなかった』」

海未「最後まで『ほのスメル』の正体に、気づけなかった」

海未「『高坂穂乃果』と、自分が先ほど嗅いだ……今も嗅ぎ続けている、『ほのスメルレベル5』を、結びつけることができなかった」

海未「正しいほのキチに、なれなかった」

海未「『幸せ』に……あるいは、『天国』に。あるいは、『新世界』に――」


海未「『辿り着けなかった者』なんです」
 
419: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:38:48.84 ID:CP8Bf93iM.net
  
海未「その結果、どうなるか……」


「いや、やだ、いやぁあっ……っ!」


海未「理解不能な匂いに、脳を刺激され……」


「っ! あ、あぁぁあぁっ//// もう、いやぁあっ……///」ビクンッ!


海未「正体不明の快楽に、身を捩じらせ……」


「うっ、ぅ、グスッ、やだよぉ……///」

「こわい、こわいよぉ……っ! たすけて、ままぁ……」ビクンッ……


海未「自分の体に何が起きているのかも分からず、ただ恐怖し、涙を流す……」

海未「……これが『間違ったほのキチ』の、末路です」

雪穂「……」

雪穂「たすけ、られない、の……?」

海未「方法はあります」

雪穂「っ! どんな……?」

海未「簡単なことです。彼女に教えて差し上げればいいんです。ほのスメルの、正体を」

海未「それだけで、彼女は……。正しいほのキチの在り方を、見つけることができるんですから」

雪穂「……はっ」

雪穂「なに言ってんのさ。そんなこと、できるわけないじゃん……」

雪穂「だって、そんなことしたら……。あの人もまたお姉ちゃんのこと、探し出そうとするんでしょ……? お姉ちゃんに変なこと、しようとするんでしょう……っ!?」

海未「……ええ、なるでしょう。それがほのキチとしての正しい行動で、それが彼女たちの幸せなのですから」

海未「彼女を助けたいのなら、穂乃果を犠牲にしなくてはなりません……あなたにそれが、できますか?」

雪穂「そっ……そんなの……」

海未「……できるわけありませんよね。私も、同じです」
 
420: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:45:02.30 ID:CP8Bf93iM.net
  
雪穂「……も、元に戻して、あげようよ」

海未「はい……?」

雪穂「た、確か他の人の匂いを嗅げば、元に戻れるんでしょっ!? だったらあの人のこと、元に戻してあげようよ……っ!」

海未「言ったでしょう、スメルが充満している今の状態では、元に戻してもまた意識を失うだけです」

海未「……いえ、そもそも、今の私たちでは彼女を元に戻すことは、難しいんです」

雪穂「なんでよっ!?」

海未「他の人の匂いとは言っても、誰のどんな匂いでもいいわけでは、ないのです」

海未「そして……ほのキチから元に戻るためには、『ほのスメル以外の匂い』と、『気持ちの変化』を促す、『言葉』が必要なんです」

海未「以前、真姫に聞いた話です……。言葉で気持ちを大きく揺さぶることが、ほのキチを元に戻す唯一の方法なのだと……」

海未「しかし、今までほのキチから元に戻すことに成功したのは、私たちにとって近しい人物だけです」

海未「ならば知り合いでもなければ、名前すら知らないような彼女のことを、元に戻すことなんて、私たちにできるのでしょうか?」

海未「……可能性は、限りなく低いです。なぜなら、見ず知らずの彼女の気持ちを揺さぶれるような、『匂い』も『言葉』も、私たちは持ち合わせてなどいないのですから」

雪穂「……でも」

雪穂「でも分かんないじゃん、そんなの……っ! 他に何か方法があるかもしれないし……っ! とにかく色々と、試してみようよっ!」

海未「そんな余裕はありません。私たちは一刻も早く、穂乃果を見つけなくてはならないのですから」

雪穂「うっ……、じゃああの人はこのまま、見捨てるの……?」

海未「……今はそうするしか、ありません」

雪穂「そんな……そんなの、ひどい……」

海未「雪穂。仮に時間をかけて、彼女一人を元に戻せたとしても……」

海未「この学院には、今や『200人』近くのほのキチがいるんですよ?」

雪穂「っ!!」
 
421: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:48:21.25 ID:CP8Bf93iM.net
  
雪穂「わっ……」

海未「……」

雪穂「分かってるよ、そんなの……。分かってる、けど……」

海未「……いいですか、雪穂」

海未「教室のある『反対側』にいるほのキチの、恐らく半分は、彼女と同じ『辿りつけなかった者』たちですよ?」

雪穂「っ!! えっ……」

海未「彼女たちには『穂乃果を探し回る』という目的がない以上、教室を出る理由はありませんからね……。きっと今も多くの生徒が、あちら側で苦しんでいます」

海未「……もしかしたら、周りのほのキチに合わせて穂乃果を探し始めている者や、当てもなく匂いの原因を探って、学校中を彷徨っている者もいるかもしれません」

海未「そこの彼女は、後者でしょう。ここまで彷徨ってきて、ここで力尽きたんです……」

雪穂「……」

海未「……分かりますか、雪穂。彼女一人を助けてる暇なんて、ないんです。あちら側に行けば、こんな場面は何度でも目の当たりにすることになるんですから」

雪穂「……うっ、うぅ」

海未「行きましょう、雪穂……。決して後ろを、振り向かないように……」

雪穂「うぅぅぅ……っ!」

グイッ

スタスタ……


「う、ぅぅ……ひうっ、たす、けてぇ……」


海未「……」




「たすけて……そのだ、さぁん……っ」



海未「――っ!!」
  
422: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:55:53.11 ID:CP8Bf93iM.net
  
雪穂「う、海未ちゃん……? 今、あの人……」

海未「走りますっ! 雪穂っ!!」

雪穂「っ!? ちょ、ちょっと……」

「……け、て……」


タッタッタッ……


海未(……そう、ですよね)

海未(穂乃果だけじゃない……。私のことを知ってくれてる人だって、この学院には、たくさんいるんですものね……)

海未(……)

ギリッ……



雪穂「ねえ、海未ちゃん……っ!?」

海未「……なん、ですか」

雪穂「レベル5をリセットしたらさ……。あの人のこと……」

雪穂「ううん……みんなのことだって、元に戻せるんだよねっ!?」

海未「……」

雪穂「μ'sの、みんなも……。音ノ木坂の、みんなもっ! 全部元通りに、なるんだよねっ!?」

雪穂「わ、私、もう、いやだよ……っ! こんな音ノ木坂、もう見ていたくないよ……っ!」

雪穂「だって、お姉ちゃんが大好きだった、音ノ木坂は……μ'sが守った音ノ木坂は、こんなんじゃないもんっ!」

海未「……」

雪穂「海未ちゃん……?」

雪穂「どうして、黙ってるの……? ねえ……」

雪穂「あるんだよねっ!? μ'sも、さっきみたいな人たちも、200人のほのキチだって……っ!」

雪穂「みんなみんな、ぜんぶ、元に戻す方法が……ちゃんと、あるんだよねっ!?」

海未「だから……さっき、言ったじゃないですか」

雪穂「えっ……?」

海未「それはスイッチをリセットしてから、『後で考える』と……」

雪穂「……」
  
426: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:06:37.18 ID:CP8Bf93iM.net
 
バッ


海未「……雪穂?」

雪穂「なに、それ……」

雪穂「結局、無理なんじゃん……。全部元に戻す方法なんて、ないんじゃん……」

海未「雪穂、手を……。先を、急ぎましょう」

雪穂「やだ……もう、やだぁ……」

海未「……」


ヘタッ

雪穂「うっ、ぅ、なんなの、これ……。なんで、なんでこんなことに……」

雪穂「うっ、えぐっ、うぅ……」ポロッポロッ

雪穂「おかしいよ、こんなの……。なんでこんなことに、なっちゃったのぉ……?」

雪穂「わたしたち、なんでこんなことしてるの……。もうやだ、おうちかえりたいよぉ……っ!」グスッ

海未「……雪穂」

雪穂「なんでさっ! ふぅ、うぅ……っ! な、なんでわたしたちがこんなこと、しなきゃなんないのぉ……っ!?」

雪穂「えうっ、ひぐっ……っ! もう帰ろうよ、うみちゃぁん……っ! こんなのもう、どうしようもないじゃん……っ!」

雪穂「私たちだけじゃ、むりだよぉ……っ! 大人の人に、まかせようよぉっ! そ、そうだ、けーさつ、よぼう……っ!?」

海未「……外部の人間に、任せるわけにはいきません」

雪穂「っ! なん、で……」

海未「この事件の原因について……。つまり、『ほのスメル』や『スイッチ』のことが、もしも公になった時……」

海未「……穂乃果は一体、どうなると思いますか?」

雪穂「っ!! う、うっ、うぅ~……」

海未「やるしかないんです。私たちだけで……」

雪穂「ふっ、ぅぅ、うえぇええん……っ!!」
  
427: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:14:33.29 ID:CP8Bf93iM.net
 
海未「……ですが、分かりました」

雪穂「う、うぅ……えっ?」グスッ

海未「あなたを巻き込んだのは、私の責任です……。今までごめんなさい、雪穂」

雪穂「海未ちゃん……?」

ダキッ

雪穂「――っ!!」

海未「怖がらせてしまって、ごめんなさい。重荷を背負わせてしまって、ごめんなさい……」

海未「無茶をさせてしまって、本当に、ごめんなさい……。やはりここで引き返しましょう、雪穂……」

雪穂「うっ、ぅぅ……」

雪穂「ごめん……ごめんね……っ! わたしが、弱いから……っ! 勇気がないから……っ!!」

海未「何を言ってるのですか。ここまで来れただけでも、たいしたものです」

雪穂「うぅ……っ!」

海未「……雪穂、約束してくれますか」

雪穂「な、なに……?」

海未「警察などに連絡を入れるのは、私からの合図を待ってからにして頂けませんか?」

雪穂「……へっ?」

海未「それは、最後の手段です……。私が『もうダメだ』と諦めた時だけ、携帯であなたに合図を出します」

海未「それまであなたは、安全な場所で、待機していてください」

雪穂「ちょ、ちょっと待ってよ……。おかしくない? その言い方だと、まるで……」

雪穂「海未ちゃんだけここに残る、みたいな……」

海未「……安心してください」ニコッ

海未「あなたが学院を脱出するまでは、引き続き私が全力でサポートしますので」

雪穂「……っ!!」
 
428: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:19:05.68 ID:CP8Bf93iM.net
  
雪穂「ば、バカじゃないのっ!?」

海未「……」

雪穂「な、なんで……? なんでこんなところにまた、一人で残るの……?」

雪穂「もう、いいじゃんっ! やめようよ……っ! 一緒に、帰ろうよっ!!」

海未「……雪穂、それは無理です」

雪穂「だから、なんでっ!」

海未「私はまだ、諦めてないからです」

雪穂「は……?」

海未「……まだ私は、『もうダメだ』なんて、思っていません。だから、ここに残ります」

雪穂「なに言ってんの……? お姉ちゃんの居場所も分からないし、みんなを元に戻す方法も、分かってないのに……?」

海未「そうですね……。いえ、みんなを元に戻す方法は、たった今思いつきました」

雪穂「っ! えっ……?」

海未「一人一人彼女たちを抱きしめながら、私が本で読んで感動した台詞のいくつかを、耳元で囁いていきます」

海未「彼女たちの心にそれが響けば、私の匂いと共に、元に戻ってくれるかもしれません……いかがでしょう」

雪穂「……200人だよ?」

海未「大変ですね……日が暮れてしまいそうです」

雪穂「日が暮れても終わらないよ……。そもそもそんな方法で元に戻るとは、思えないし……」

海未「……でも、やるしかないんです」

雪穂「なんで……? なんで海未ちゃんは、そんなに強いの……?」

雪穂「私なんて、なんの役にも立ってないし……。これじゃあ私、最初からいなくてもよかったじゃん……」

海未「それは違いますよ、雪穂。あなたにしかできないことだって、ちゃんとあるんです」

雪穂「私にしか、できないこと……?」

海未「ええ。私にはできなくて、あなたにしかできないことが……」
 
429: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:35:54.74 ID:CP8Bf93iM.net
 
海未「それに私は、強くなんてありません」

海未「本当は今すぐ、逃げ出したいです。全てを、投げ出したいです。こんな絶望的な状況は、生まれて初めてで……どうしたらいいかなんて、何もわかりません」

海未「仲の良いクラスメイトが、見知らぬ生徒が、ほのキチになってしまった姿を見るだけで……。胸が、張り裂けそうでした」

海未「それでもここまで来れたのは、あなたのおかげです、雪穂」

雪穂「私の、おかげ……?」

海未「あなたの手を握っていると、とても安心できました。ここまで本当に、ありがとうございました」

雪穂「……」

雪穂「……ずるいよ、海未ちゃん」

海未「はい?」

雪穂「そんなこと言われたら……引くに引けないじゃん」

海未「あっ……」

雪穂「……分かったよ。怖いけど、私も最後まで、海未ちゃんについていく」

海未「……本当ですか?」

雪穂「うん……役立たずの私にも、海未ちゃんの手を握って安心させるくらいのことは、できそうだしね」

雪穂「だからそっちも、ちゃんと……。私のこと、守ってよ?」

海未「ええ、もちろんです」

海未「そして必ず、元に戻して見せます。音ノ木坂も、μ'sも……私たち幼馴染の、関係も」

雪穂「……うん、頼りにしてる。私も三人が仲良く遊んでるところ、また見たいし」


雪穂(変態のくせに……私の匂いを嗅ぎまくった、どうしようもない、変態のくせに……)

雪穂(どうしてこんなに、かっこよく見えるんだろう、海未ちゃんは……)


海未「三人ではありませんよ、雪穂」

雪穂「へっ?」

海未「あなたも入れて、四人です」

雪穂「……」


雪穂「グスッ……あははっ、そうだね、海未ちゃんっ」


雪穂(ま、仕方ないか……。海未ちゃんは、どうしようもない変態の、前に……)

雪穂(昔からずっと、私の大好きな、『幼馴染』なんだから――)
  
430: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:44:08.23 ID:CP8Bf93iM.net
  
――――――

屋上


ガチャッ

ギィ……


ヒュゥ……


雪穂「……」

海未「……」

雪穂「……確かお姉ちゃんはここでスイッチを押して、そのままどこかへ行っちゃったんだよね?」

海未「はい。時間も経ってますし、もしかしたらここに戻ってきているかもしれないと、思っていたのですが……」

雪穂「……いない、ね」

海未「ええ、誰も……」

雪穂「流石にこんなところまでは、ほのキチも来てないんだね」

海未「……」

雪穂「……どうする? 戻って、教室側の方探してみる?」

海未「……誰も、いない」

雪穂「えっ、うん……」

海未「ここで倒れたはずの、μ'sのみんなが……誰も、いません」

雪穂「っ!!」

雪穂「ま、まさか……」

海未「そうですね……」

海未「どうやら『彼女たち』も、目を覚ましたようです。全員一人残らずほのキチとなって、そして……」

海未「この屋上から抜け出し、ほのスメルを求め、穂乃果を探しに行ったようです」

雪穂「……っ! で、でも、分かんないよ。もしかしたら無事だった人もいて、私たちみたいにスイッチをリセットするために、動いてる人もいるかも……」

雪穂「例えばほら、ことりちゃんとか、さ……」

海未「……」
431: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:53:45.24 ID:CP8Bf93iM.net
 
海未「その可能性はないと思っておいた方がいいです。今までほのスメルを嗅いで意識を失った人間が、正気で目を覚ましたことは、一度だってなかったんですから」

海未「そして、私や雪穂を除けば最も耐性が強いはずの、ことりもまた……。今回は確実に、意識を失っていました。ですから、彼女も……」

雪穂「……そんな」

海未「雪穂……ここから先はより一層、周りを警戒してください」

雪穂「えっ……?」

海未「この学院で、レベル5を最も至近距離で嗅いだのは、私たちμ'sのメンバーです……つまり――」

海未「ほのキチとなった今の彼女たちが有する『危険性』、及び『異常性』は、下の階にいたほのキチとは比べ物にならないでしょう」

雪穂「……っ」ゾッ

海未「これからまた、下の階で穂乃果を探すことになりますが……もしかしたら、彼女たちと鉢合わせる可能性もあります」

海未「彼女たちがどう変貌しているかにもよりますが、基本的に話は通じないと思っておくべきです。なので……」

海未「もし出会ってしまったら、全力で逃げます。もし彼女たちを見かけたら、すぐに私に知らせてください。雪穂――」


「その、『彼女たち』ってさぁ――」



ヒュゥ……

スタッ



海未「――えっ?」

雪穂「っ! あっ……」ビクッ


 

ニコッ


凛「もしかして、凛も入ってたりするのかにゃぁ?」
  
 
458: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 20:33:26.22 ID:+c+LMpA4M.net
  
――――


海未「り、凛……」

凛「うん、凛だよぉー」

海未(今、空から降って……。いえ、私たちが入ってきた入り口の上に、ずっといたのですか……)

雪穂「あ、ぁ……」ガタガタ

凛「……その子、だれ?」

海未「……雪穂です。知っているでしょう?」

凛「ゆきほ? 知らないにゃぁ」

海未(『記憶障害』……。予想はしていましたが、またしても……)

凛「ゆきほちゃん、そんなに怯えなくていいよ? 凛は全然、怖くないから」ニコッ

雪穂「ひっ!」

海未「っ! 雪穂、私の後ろにっ!」バッ

凛「……なにそれ、酷いなぁ。なーんかさっきも、凛のことをキケンだとか、イジョウだとか……」

凛「うみちゃん、勘違いしてるよ? 凛はただ、穂乃果ちゃんの匂いが嗅ぎたいだけなんだ」

海未「ほのキチはみんな、そう言うのですっ! 凛、私たちから離れ――」

海未「……」

海未「『うみちゃん』……? 凛、あなた、私のことは覚えているのですか……?」

凛「なっ! 馬鹿にしないでよ、うみちゃんっ! 凛は確かに物覚えは悪いけど、一度覚えた人の名前を忘れるなんて、そんな失礼なことはしたことないにゃっ!」

海未「い、いやでも、あなた……」

凛「はぁ、まあいいや。凛はね、うみちゃんを待ってたんだよ」

海未「私を、待ってた……?」

凛「うん。うみちゃんなら、知ってるかなって思ってさ――」


凛「――穂乃果ちゃんの、いばしょっ♪」
  
459: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 20:42:10.96 ID:+c+LMpA4M.net
  
雪穂「っ!」

海未「くっ……。やはりあなたも、穂乃果を探していましたか……」

凛「もちろんっ。凛は穂乃果ちゃんに膝枕してもらいながら、お昼寝するのが夢なのにゃー」

海未「随分可愛らしい夢ですね……」

凛「穂乃果ちゃんの太ももに顔を押し付けて、幸せな匂いを嗅ぎながら、凛はぐっすり眠るのにゃ……///」

海未「うつ伏せで眠る膝枕がありますかっ!」

凛「穂乃果ちゃん、どこー?」

海未「知っていたとしても、あなたには教えません」

凛「えー、困ったなぁ。どうしよう、いくら探しても見つからないし……」

海未「……あなたも学院中を、探し回っていたんですか?」

凛「うん。って言っても他の人たちみたいに、わざわざ歩き回ったりはしてないけどね」

海未「はっ? ならどうやって」

凛「なんか今は、学校中に匂いが広まってて、それはそれですごく良いんだけど……。つまりその中でも、匂いが一番強いところに行けば、穂乃果ちゃんに会えるわけでしょ?」

海未「確かにそうなりますが……」

凛「凛はね、結構鼻が利くんだ。だからここからでも、学校中の匂いを『探し回れる』んだよ」

海未「な、なんですって……?」

凛「すごいでしょー? へへー」

海未(……前の異常な運動神経といい、どうやら凛はほのキチになると、野生の動物のような能力に目覚めるようですね……)

凛「でもねー、見つからなかったんだよ」

海未「見つからなかった……?」

凛「学校中の匂いを探ってみても、穂乃果ちゃんがいそうな場所なんて、どこにもなかったんだ……」

海未「……」
  
462: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 20:51:02.53 ID:+c+LMpA4M.net
  
雪穂「そ、それって……」

海未(穂乃果はもうこの学院の中には、いない……? まさか、私たちの最も恐れていたことが、現実に……)

海未(いえ、ほのキチの言うことを、いちいち真に受けては……。し、しかし、わざわざ私に居場所を聞いてきたということは、本当に……)

凛「……」

凛「……でもね、探してる最中に、一つ気になることがあったのにゃ」

海未「……なんですか?」

凛「うん、なんだかね。穂乃果ちゃんとよく似た匂いが、チョロチョロ動き回ってるなー、って」

雪穂「っ!!」ビクッ

海未「……気のせいでしょう?」

凛「そうだねー、気のせいだと思ってたよ。さっきまでは……うみちゃんたちがここに、来るまでは」

凛「ふふっ、でもやっぱり、気のせいじゃなかった。この距離で嗅いでみると、とってもよく似てるのが分かるね……」

凛「……ゆきほちゃんっ」

雪穂「う、ぁ……」

凛「ねえ、ゆきほちゃんは、穂乃果ちゃんの何なの? もしかして、妹とか?」

凛「穂乃果ちゃん、見つからないし……。どうしようかなぁ、もうゆきほちゃんでも、いいかなぁ?」

海未「離れなさい、凛」

凛「……はぁ?」

海未「例え雪穂の匂いが、穂乃果の匂いと似ていたとしても……それが、どうしましたか? あなたが嗅ぎたいのは、『ほのスメル』でしょう?」

海未「雪穂の匂いは、ほのスメルではありません。『ただ穂乃果ちゃんの匂いが嗅ぎたいだけ』などと言っておきながら、関係ない人を巻き込まないでください」

凛「もー、その穂乃果ちゃんがいないんだから、しょうがないじゃんっ。だから、ゆきほちゃんで我慢してあげるって言ってるんだよ」

海未「ほ、本当にどうしようもありませんね、ほのキチというのは……っ!」

雪穂「り、凛さんっ!!」
 
463: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 20:57:53.77 ID:+c+LMpA4M.net
  
凛「えっ?」

雪穂「い、いいですよ、私の匂い、嗅いでもらっても……」

海未「なっ、雪穂っ!?」

凛「ほんとっ? ゆきほちゃん」

雪穂「はい……。そ、そのかわり……」

雪穂「わ、私の匂いで、元に戻ってくれませんか……?」

凛「……」

海未「雪穂……?」

雪穂「その……私、μ'sのことが、大好きで……」

凛「みゅーず……?」

雪穂「特に、凛さんは……私と一つしか違わないのに、ダンスとかすごく上手で、そ、尊敬してるんです……」

雪穂「それでその……実は今、音ノ木坂に入ったら私もμ'sに入りたいな、とか思ったりしてて……。そしたら先輩の凛さんに、色々と教えて頂けたら、とか……」

雪穂「だから、あの……。わ、私の匂いなんかじゃ、無理かもしれないですけど……。も、元に戻って、ほしいです。私の尊敬する、元の凛さんに……」

凛「……うぅーん」

凛「よく分かんないけど、ゆきほちゃんは石鹸が大好きなんだってことだけは、伝わってきたよっ!」

雪穂「っ! ち、ちがっ……」

海未「雪穂、やはり無理です……っ! ほのキチには、まともな会話なんて……っ!」

雪穂「凛さん、私、本当に大好きなんです……っ!」

凛「あぁ、うん。分かったってば。いいよもう、石鹸は」

雪穂「凛さん……。お願いですから、もう忘れないであげてくださいっ!」

凛「……なにが?」

雪穂「花陽さんのこと、もう忘れないで……っ! 私、いつも仲良しな、お二人のことが大好きなんですっ!」

雪穂「お互いのことを心から信頼し合ってる、お二人のことが……っ! 私と亜里沙もあんな風になれたらなって、ずっと思ってたんですっ!!」

凛「……」
  
465: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:05:41.37 ID:+c+LMpA4M.net
  
クルッ

海未「っ! 凛……?」

雪穂「あっ……」

凛「……もう、いいや」

海未「えっ?」

凛「ゆきほちゃん、なに言ってるか分からないし……。ていうかちょっと、怯えすぎにゃ」

雪穂「……っ!」

凛「やっぱりゆきほちゃんは、穂乃果ちゃんとは全然違うよ。確かに匂いは、似てるけど……」

凛「凛は穂乃果ちゃんの、怯えてるみたいで、ちょっと期待しちゃってるような、そんな表情が好きだったんだ」

凛「匂いを嗅がれてる時の穂乃果ちゃんは、凛を怖がってるみたいで……でもちょっとだけ、気持ちよさそうにしてた。そんな穂乃果ちゃんの顔が、凛は大好きだったんだ」

凛「そんな本気で怖がられちゃ、凛もやる気でないよ……」

雪穂「……ご、ごめんなさい」

海未「雪穂、あなたが謝ることでは……っ!」

凛「うみちゃん、実はもう一つ、聞きたいことがあるんだけど」

海未「なんですかっ!?」

凛「かよちゃんって、どこにいるか知ってる?」

海未「……はい?」

凛「はなよちゃんだよ。知らない?」

海未「し、知りませんが……。花陽のことも、その自慢の鼻で探したらいいのでは?」

凛「うーん、そうしたいんだけどね。かよちゃんの匂いを思い出そうとすると、なーんか嫌な予感がするんだよねえ」

凛「例えば今の凛が、凛じゃなくなっちゃうような……そんな気がしてさ」

海未「……」
  
466: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:14:02.42 ID:+c+LMpA4M.net
  
凛「ま、いいや……でさ」

凛「なんか、大変なことになってるみたいだけど……。もしかして学校の人たちみんな、凛みたいになっちゃったの?」

海未「……そうですよ。あなたと同じ、ほのキチにね。それが?」

凛「へえー。じゃあさ、かよちゃんも?」

海未「まだ確認はしていませんが、恐らく花陽も、です……」

凛「……あははっ、そっかっ!」


タン、タンッ


雪穂「えっ!?」

海未「っ!? 凛、なにを……っ!」

海未(落下防止の柵を、駆けあがって……登ったっ!?)

海未「あ、危ないですよ、凛っ! 今すぐ降りてくださいっ!」

凛「ふーん、そっかそっか。かよちゃんも凛と同じに、なったんだ」

凛「えへへ、なってくれたんだ。かよちゃん……約束、守ってくれたんだね」

凛「凛とお友達になってくれるって、約束……っ!」

海未「凛、あなた一体、何をする気ですかっ!?」

凛「だからぁ、穂乃果ちゃんとかよちゃんを、探しに行くんだよ」

凛「うみちゃんたちも、これから穂乃果ちゃんを探すんでしょ? ここを出てまた、上から順番に……」

凛「でもうみちゃんたちと一緒に行動するのは嫌だし、また会うのも気まずいから、凛は『下から』探すことにするよ」

海未「……ま、まさか、あなた――」


海未「ここから、飛び降りる気ですかっ!?」
  
467: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:21:27.47 ID:+c+LMpA4M.net
  
凛「えっ?」

海未「凛っ! いくらあなたでも、それは無茶ですっ!」

雪穂「凛さんっ、やめて、そんなこと……っ! 死んじゃうっ!」

凛「あはは、やだなぁ。そんな危ないこと、するわけないじゃん」

海未「……凛?」

凛「ふふっ……。ゆきほちゃんっ!」

雪穂「っ! えっ……?」

凛「ゆきほちゃんが一体何を言ってるのか、凛には全然分かんなかったけどさっ! でも一つだけ、分かったことがあるよっ!」

凛「凛とかよちゃんが、『いつも仲良し』だって言ってくれたことっ! それだけは、嬉しかったよっ!」

雪穂「……凛さん」

凛「ま、でもやっぱりゆきほちゃんの言うことは、よく分かんないけどね……っ!」

凛「だって凛とかよちゃんは、『これから』仲良くなっていくんだからっ! あははっ!」


バッ!


雪穂「っ!? いやぁっ!!」

海未「り、凛――」


タッタッタッ……



海未「――えっ?」

雪穂「……あっ」



「ばいばーい、二人ともっ!」
  
469: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:32:33.89 ID:+c+LMpA4M.net
  
……

海未「ま、まさか校舎の壁を走って、下に降りるとは……」

雪穂「し、心臓が、飛び出るかと思ったよ……。いや、人が壁を走ってる姿も、だいぶショッキングな映像だったけどさ……」

海未「学院中を探知できる嗅覚といい、やはり以前の凛とは、ほのキチとしての格が違うようです。前は、あんなことまでできなかったはず……」

海未(異常とは言いましたが、あれほどとは……。しかも結局、ここにきて、状況は何も好転していません)

海未(μ'sのみんながほのキチとなって、この学院中に散らばっていったことと……穂乃果がこの学院にいないかもしれないという事実が、判明しただけ)

海未(むしろ状況は、悪化しているとさえ……)

雪穂「……海未ちゃん」

海未「……はい?」

雪穂「やっぱりここからは、二手に分かれていこ?」

海未「……な、なにを言い出すんですか、雪穂」

雪穂「あはは、ごめんね。せっかくさっき、私のことを守るって言ってくれたのに」

海未「それに、単独行動は危険だとも言ったはずです。さぁ、一緒に……」

雪穂「……でも、状況は今、どんどん悪くなっていってる。モタモタしてる暇は、ないんだよ」

海未「分かってますが、しかし……っ!」

雪穂「これから二手に分かれて、まだ調べてないところを探そう。私が必ずお姉ちゃんを、見つけ出すから」

雪穂「だから海未ちゃんは……ことりちゃんを探すことに、専念して」

海未「……ことり、ですか」

雪穂「うん。さっき言ってたけど、私や海未ちゃん以外で一番耐性があるのは、ことりちゃんなんでしょ?」

雪穂「だとしたら、元に戻れる可能性が一番高いのも、ことりちゃんだ……。なによりことりちゃんは前に、海未ちゃんの匂いで戻ってるしね」

海未「……」

雪穂「今は少しでも、味方が欲しいし……。ことりちゃんを元に戻して味方につけることができれば、心強いよ」

海未「それは私も、考えていました。しかしやはり、あなたを一人で行動させるのは……」

雪穂「一人だって、大丈夫だよ。だって私は、海未ちゃんが認めた、勇敢な中学生だもん」

海未「……やっぱりあなた、穂乃果によく似ていますね」

雪穂「わ、分かってるよ。自分でも、無茶なことを言ってるのはさ……」

海未「いえ、そうではなくてですね……」

雪穂「……?」

海未(何かを決断した時の、そのまっすぐな瞳が、ですよ……)
  
470: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:36:54.27 ID:+c+LMpA4M.net
   
海未「……私がもしも、中学生だったら」

雪穂「……ん?」

海未「あなたに、恋をしてしまっていたかもしれません」

雪穂「はぁああぁあーっ!? ば、バカじゃないのっ!! 女子中学生相手に、なに言ってんのさっ!! しかも、こんな時にっ!! 今の状況分かってるっ!? 変態、この、変態っ!!」

海未「そ、そんなに怒りますか……」

雪穂「海未ちゃんは一体、何回私をガッカリさせれば気が済むのっ!?」

海未「ごめんなさい……」

雪穂「私、先行くからねっ! 必ずことりちゃんを見つけて、元に戻してよっ!」

海未「はい、もちろんです……。あっ、雪穂っ」

雪穂「なにっ!」

海未「先ほども言ったように、μ'sの誰かを見かけたら、特に気をつけてください……。身の危険を感じた時は、すぐに」

雪穂「分かってるよっ! 危なくなったら連絡するからっ! その時は、すぐに助けに来てよねっ! いいっ!?」

海未「えっ? あ、はい……」

雪穂「ふんっ! じゃあねっ!」

ガチャッ

バァンッ!

海未(一応最低限、信用はされているということでしょうか……)

海未「……」


海未(『かよちゃん』……。先ほど凛は確かに花陽のことを、そう呼んだ……)

海未(……『前回』と、同じように――)

海未(凛は、前回ほのキチになった時の記憶を全て忘れてしまったはずですが、まさか再びほのキチとなったことで、その記憶が戻ったのですか……?)

海未(……)


海未「……私も、急がなくては」

海未「ことり……あなたが再び、ほのキチになってしまったというのなら……私がもう一度、あなたを元に戻して見せます――」


ガチャ……

バタン
 
471: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:45:55.65 ID:+c+LMpA4M.net
 
――――――

廊下


スタスタ


(……なんで、こんなことになってるの?)


「ほのか~……」

「ほのかちゃぁん……」

「こうさかさん、どこぉ……?」


(な、なんでみんな、私の名前を呼んでるの……?)


「はぁはぁ、嗅ぎたい、穂乃果ちゃんの匂い、いっぱい嗅ぎたぁい……」

「匂いが、足りないよぉ……っ! 高坂さん、匂いを、もっとちょうだぁい……」


(ひっ……。に、におい? やめてよ、はずかしいよ……)

(どうして……? どうしてみんな、そんなに私の匂いを、嗅ぎたがるの……?)


「あはははは、あははははははぁっ!!」

「いひ、いひひひ、うひゃひゃひゃひゃっ!!」

「うわああぁあぁぁ! あぁぁああぁっ!!」


ガシャァン!!


(ひぃっ!! こわい、こわいよぉ、もう、やだよぉ……)

(だれか、たすけて……。こんなのもうやだ……。うみちゃん、ことりちゃぁん……)

(うぅ……)

(……あれ? あれって、もしかして――)
   
472: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:50:27.13 ID:+c+LMpA4M.net
  
タッタッタッ……

雪穂「はぁ、はぁ……っ!」

雪穂(全く本当に海未ちゃんは、好感度が上がったり下がったり忙しいなぁ……っ!)

雪穂(ていうかここ最近の私って、怒ってばかりな気がするな……。やだなぁ、そんな柄じゃないのに……)

雪穂(……いやいや、そんなことより、今はお姉ちゃんだ)

雪穂(凛さんの言ってたことが、気になるけど……。でもやっぱりお姉ちゃんは、この学院の中にいるはずなんだ……)

雪穂(お姉ちゃんは、誰よりも自分の匂いのことについて、悩んでた……。自分のせいで、みんなが、って……)

雪穂(そんなお姉ちゃんが、外に出て他の人たちまで巻き込もうとするなんて、考えられない)

雪穂(だとするとお姉ちゃんは、今……。どこか暗くて狭い場所に閉じこもって、一人で自分を責め続けているかもしれない)

雪穂(待っててねお姉ちゃん、すぐ行くからね……っ!)


「おーいっ! ゆーきほーっ!!」


雪穂「っ!?」ビクッ

雪穂(えっ! お姉ちゃん……っ!?)


タッタッタッ……

「はぁ、はぁ……よかったー、やっぱり雪穂だ」

雪穂「……あっ」

「なんでこんなところにいるの? あれ、学校は?」

雪穂「あ、学校は、その……」

「……ねえ、雪穂。これ今、どういう状況なの? 私、怖いよ……」

「みんなして穂乃果穂乃果って、私の名前を呼んでさ……に、匂いを嗅ぎたいとか、言ってさ」

雪穂「……」

「雪穂に会えて、ちょっと安心したけどね。それでさ、海未ちゃんとことりちゃんがどこにいるか、知らない?」

雪穂「え、えっと……」






   
雪穂「東條希さん……ですよね?」

希「……へっ?」
  
509: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:00:28.86 ID:8/6gTdwUM.net
  
――――――

音ノ木坂学院校舎、教室側

廊下


「穂乃果ちゃん、どこ、どこぉ……っ!」

「いない、そっちはっ!?」

「ダメ、こっちにもいない……っ!」

「きゃっ!?」ドンッ

海未「ご、ごめんなさいっ!」タッタッタッ

海未(廊下を走ることさえ、ままならない……。やはりこちら側の方が、ほのキチの量は圧倒的に多いようです……っ!)

海未(量が多いということは、それだけ多種多様なほのキチがいるということでもあります……。気をつけなくては……っ!)


ガタァンッ!

「あぁああぁあっ!! ほのかほのかほのかぁーっ!!」

「はぁ、はぁっ! もうダメ、我慢できないぃぃぃっ!!」


海未(ああいった過激派には、特にっ! 近づいたら、何をされるか分かりません……っ!!)

海未(くっ、それにしても、ことりは一体どこに……っ! やはり一番可能性が高いのは、私たちの教室ですか――)


「きゃあぁあっ!!」

海未「っ!?」

「いたい、やめて、やめてよぉっ!」

「うるさいっ! あんたがさっき部室から出てくるとこを、私見たんだからっ! 何を持ち出したんだっ!?」

「な、なにも持ってないよぉっ! たまたま高坂さんを探して、部室に寄っただけで……」

「嘘をつくなっ! バッグの中を漁って、なにか持ち出したんだろっ!?」

「ちがう、私は何も……っ!」


海未「や、やめなさいっ!!」
 
512: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:06:33.19 ID:8/6gTdwUM.net
  
「っ!? な、なによあんた……園田じゃない」

海未(っ! 弓道部部員の……っ! いつもはとても誠実な方なのに……っ!)

海未「ぼ、暴力なんて最低ですっ!」

「うるっさいわね……。そいつがいけないのよ。高坂さんの私物を、独り占めするから……」

「ち、違う、私は何も、持ってないもん……っ!」

「あぁっ!? いい加減にしなさいよ、あんたっ!」

「ひっ!」

海未「っ! こ、こっちですっ!」グイッ

タッタッタ……

「あっ、待ちなさいよこらぁっ!!」



海未「……はぁ、はぁ」

「はぁ、はぁ……」

海未「大丈夫ですか? ケガとかは……」

「う、うん。大丈夫だよ。服を引っ張られたくらいだから……」

海未「……ごめんなさい、普段はあんな人では、ないんです」

「わ、分かってる。けど、怖かった……。ありがとう、園田さん。助けてくれて……」

海未「いえ……では私、先を急ぐので……」

「あ、待ってっ! お、お礼させてっ!?」ゴソゴソ

海未「お、お礼なんて……」

「これ……」スッ

海未「……なんですか?」

「え、えへへ、穂乃果ちゃんのバッグに入ってた、ペットボトル……飲みかけだよ」

海未「……」

「ぶ、部室からこっそり持ってきちゃったんだ……。ちなみに私まだ、口つけてないから……」
  
515: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:10:36.19 ID:8/6gTdwUM.net
  
タッタッタッ……

海未「はぁ、はぁ……っ!」


「穂乃果ちゃぁん、どこ~……」

「あはは、見える、見えるよ、私には……高坂さんは、ここにいるんだ」

「あぁ、穂乃果ちゃんだ、穂乃果ちゃんが、笑ってる……」


海未(ほのキチほのキチほのキチ……こんなところにいては、こっちまで頭がおかしくなりそうです……っ!)

海未「んっ、んっ……」ゴクゴク


「高坂さん、はい、あーん。おいしい? 私の作った、お弁当♪」

「あ、あの、私、高坂さんじゃな……」

「うふふ、かわいいなぁ、高坂さんは」ナデナデ


海未「ぷはぁー……っ!」

海未(しかもずっと走りっぱなしで、のどが渇いて仕方がありませんっ!)

海未(全く、穂乃果の飲みかけとは残念ですっ! 量が少し減ってしまってるではありませんかっ!)

海未(これではすぐに空になってしまいます……っ! あぁ、非常に残念です、穂乃果の飲みかけでさえなければ……っ!)

海未「ん、んくっ……」ゴクッ

海未「ぷっはぁーっ!!」


タッタッタッ……
  
519: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:34:06.23 ID:8/6gTdwUM.net
  
――――


穂乃果たちの教室



「はぁ、はぁ、こ、ここが、穂乃果ちゃんがいつも座ってる、椅子……」

「ちょっと、どいてよっ! 高坂さんの席は、私が座るのっ!」

「汚い手で、穂乃果ちゃんの席に触らないでよっ!」

「はぁっ!? 言っとくけど、あんたなんかより私の方が、穂乃果と付き合い長いんだからねっ!」

「どうかしらね、高坂さんはあなたのことなんか、何とも思ってないかもしれないわよ?」

「あははっ、つくえ、つくえーっ! いつも穂乃果ちゃんがほっぺたくっつけて寝てる、つくえーっ!!」

「だからぁ、触んじゃねえよっ! 穂乃果ちゃんの涎がまだ、ついてるかもしれないのにさぁっ!!」


海未「な、なんですか、これは……」

海未(予想はしていましたが……ほのキチの量も、飛び交う罵声も、他の教室とは比べ物になりません……っ!)

海未(こ、こんな場所に、長くいるのは危険すぎます……。ことりも他のメンバーもいないようですし、ここは早々に――)


ゴロン

海未「っ!?」

「あ、あぁ……やだ、やだぁ……」

「たすけて、こわい、こわいよぉ……」

「グスッ、な、なんなのよ、これぇ……うっ、あぁっ////」ビクン

海未「……っ!」

海未(『辿り着けなかった者』たち……。ここにも、多くの……)

海未(し、しかし全員、クラスメイトの方たちです。どうして穂乃果と関わりがある、この方たちが……)


「う、海未ちゃん……」
  
520: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:39:38.98 ID:8/6gTdwUM.net
   
海未「っ! だ、大丈夫ですか……っ!?」

「ねえ、これ、どういうこと……? みんな、どうしちゃったの……?」

海未「そ、それは、その……」

「穂乃果ちゃんの、匂いがどうとかって……みんな、なに言ってるの……?」

海未「っ! あなたは、この匂いを……?」

「あ、あぁ、うん、なんだかずっと、すごく良い匂いがするよね……」

「あはは、確かにちょっと、穂乃果ちゃんの匂いに似てるかな……で、でも……」

「そんなわけ、ないよね? 穂乃果ちゃんの匂いなわけ、ないよね……? お、おかしいのは、みんなの方だよね……」

海未「……っ! それは……」

「穂乃果ちゃんは、なにも関係ないんだよね……? うっ、はぁ、はぁ……」

海未「……」

海未(穂乃果の匂いだと気づきつつも、それを認めようとしていない……)

海未(彼女を傷つけないように、必死に快楽に抗って、理性を保とうと……)

海未「……ええ、関係ありません」

「……っ!」

海未「これが穂乃果の匂いなわけ、ないじゃないですか。みんな、大変な勘違いをしているようですね」

「あ、あはは、やっぱり、そうだよね……海未ちゃんが、そう言うなら……」

海未「今、私は匂いの原因を探っているところです。万が一のこともありますので、なるべく嗅がないように」

「う、うん、分かった……。すごいね、海未ちゃんは。こんな状況でも、全然、動じてない……」

海未「……そんなこと、ありませんよ」


海未(どうか、許してください……。今の私では、あなたたちを救うことができません……)

海未(そして、ありがとうございます。ほのキチとしての欲望よりもまず、穂乃果のことを気遣ってくれて――)
  
521: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:45:42.96 ID:8/6gTdwUM.net
 
――――

海未(ことり……。私たちの教室にいないのなら、あとは部室くらいしか……。しかしあそこは、今……)

海未(……いえ、行くしかありません。可能性が少しでも、あるのなら……っ!)


「あぁあ、穂乃果ちゃんを、ぐちゃぐちゃにしたいぃ……」

「穂乃果ちゃん、どこー? おいしいパンがあるよー……」

「ごはん……食べたいなぁ……」


海未(……待ってください。今までのほのキチの常識を、ことりに当てはめてもいいものでしょうか?)

海未(ほのキチ状態のことりの厄介さは、随一です……。素直に部室にいてくれるとは、限らないのでは……?)

海未(しかし、他にことりがいそうな場所なんて……)


「舐めたい、ペロペロしたい、あぁ、あぁ~」

「食べたいよぉ……。ごはんが、食べたい……」

「穂乃果ちゃんと、一つになりたいぃぃっ!!」


海未(……私たちの教室には、いなかった。なら穂乃果とは関係のない他の教室を探しても、無駄でしょう――)


海未(――『あの教室』を、除いては)


海未(そう、あそこなら、もしかしたら……。しかし本当に『あの教室』に、ことりがいた場合は……)

海未(……恐らく、今までで最も厄介なことになるでしょうね)


「高坂さんのパンツが欲しいっ! 脱ぎたてだとなお良しっ!」

「えへへ、穂乃果ちゃんに罵倒されたい……」

「ごはん~……。ごはんが、食べたいですぅ……」


海未(……)

海未(というかさっきから一人だけ、周りと何か違う人が……)チラッ

海未「……えっ?」


  

海未「は、花陽……?」

花陽「……ごはん」
 
524: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:54:43.93 ID:8/6gTdwUM.net
 
海未「あ、あなた……こんなところに、いたのですかっ!?」

花陽「……? どなたですかぁ?」

海未「っ! わ、私のことが、分からないのですか……?」

花陽「……??」

海未(……そうですか。凛と同じく、『記憶障害』の症状が……)

海未「花陽……あとで必ずあなたも、元に戻してみせます。ですから今はここで、おとなしくしていてくれますか?」

花陽「ごはんがぁ、食べたいんですぅ……」

海未「……わ、分かりました。私が部室にあるあなたのバッグから、お弁当を持ってきます。ですから、ここで」

花陽「穂乃果ちゃんのが……食べたいん、ですぅ……」

海未「はい……?」

花陽「だーかーらぁ……」


花陽「穂乃果ちゃんの汗で炊いたごはんが、食べたいって言ってんですよぉぉっ!!!」

ガシィッ!

海未「っ!?」

花陽「教えてくださいよぉっ!! 穂乃果ちゃんは、どこにいるんですかぁぁっ!!?」

花陽「花陽はぁっ!! 一刻も早く穂乃果ちゃんの体液を、炊飯器に溜めなきゃいけないんですよぉぉぉっ!!!」

海未「うっ、うわあぁっ!!」ドンッ

花陽「きゃぁっ!?」

ドサッ

海未「ご、ごめんなさい花陽、またあとでっ!」タッタッタッ……

海未(バカですか私はっ! 雪穂にあれだけ注意しておいて、自分が……っ!)

海未(ひ、久しぶりに、心の底から恐怖を感じました……。豹変したことりを、初めて見た時以来です……っ!)
  
527: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 23:04:19.37 ID:8/6gTdwUM.net
  
――――――

1階、廊下


海未「はぁ、はぁ……」

海未(……花陽を突き飛ばした拍子に、彼女が肩にかけていたタオルを持ってきてしまいました)

海未(花陽には悪いですが、流石に汗が気持ち悪くなってきたので、使わせてもらいましょう……)

フキフキ

海未(……そういえば、私たちはちょうど朝練を終えたところだったんでしたね)

海未(あの時がまるで、遠い過去のように感じます……でもまだ、午前中なんですよね……)

海未(……本当に、どうしてこんなことに――)


「う、うぅー、おとうさん、おかぁさん……」

「うふふ、きもちいい、こんなきもちいいの、はじめて……」

「高坂先輩……。先輩はどうして、こんなに良い匂いがするんですかぁ……?」


海未(花陽たち、一年生の教室です。ここにも、多くの生徒が……)


「先輩……マジ、パネエっす……。先輩の匂い、超リスペクトっす……」

「私もμ'sに入りたいなぁ……。もし入ったら、穂乃果先輩の匂い、嗅ぎ放題……」

「う、うぅ、もうやだぁ……。こんなことになるならやっぱり、UTXに入ればよかったよぉ……」


海未(ごめんなさい……。必ず、元に戻してあげますから……)

海未(かならず……)


海未「……」


『ほのスメル……即ち、穂乃果の匂い――』
   
529: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 23:07:39.17 ID:8/6gTdwUM.net
  
『穂乃果の身体から溢れ出る、あの甘い匂いのことを、きっとそう呼ぶのでしょう』

『幼馴染ゆえに、彼女と接近する機会の多い私は、いつもあの匂いに惑わされてしまいます』

『頭が蕩けてしまいそうな、あの独特な匂い……それを、増幅させるスイッチ?』


『……最高じゃないですか』


あの時の私は、知る由もありませんでした。

あの夢のようなスイッチが、後に、こんな『悲劇』を引き起こすことになるなんて……。


だけど時間は、戻らない。

後悔したところで、何も変わらない。

迷っている暇なんて、どこにもない。

例え希望の光が見えなくとも、未来に絶望しか見えなくても。

私はただ、前へ進むしかないのだから。


だから私は、その扉を開ける。

音ノ木坂学院唯一の一年生、花陽たちのクラスの、教室――


――その『隣の教室』の、扉を。


今は空き教室となっているその教室の、扉を引き……私は後ろから、ゆっくり教室に入る。

前方を見据えると――そこに、彼女はいた。


誰もいない教室の、前方――普段は先生方が教鞭を執る、神聖な教卓の上に、彼女は座っていた。

宙に浮かせた両足を組み、退屈そうに、携帯をいじりながら。

なぜか練習着ではなく、制服姿で、そこにいた。

私が教室に入ってきたことに気づくと、彼女は、携帯から顔を上げ――



ことり「久しぶりだね、海未ちゃん。待ってたよ」
 
 

そう言って、不敵に微笑んだ。

その笑みにはもちろん、私が昔から良く知る、心優しいことりの面影は、どこにもなかった――
  
545: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:04:33.43 ID:aoDaHZ5cM.net
 
――――――


希「雪穂ーっ! ゆーきーほーっ!」

希「……もぉ~、雪穂ってば。離れないでって言ったのにー」

希「雪穂って普段はしっかり者だけど、やっぱりこういう時は、穂乃果が面倒みてあげなきゃだめだねえ」

希「あ、ねえねえ。セーラー服着た女の子見なかった? 私の妹なんだけどね……」



タッタッタッ……

雪穂「はぁ、はぁ……や、やっと、撒いたかな……」

雪穂「はぁ……」トサッ

雪穂(……な、なんだったの、あれ……? 最初は希さんのことだから、冗談で真似してるのかと思ったけど……)

雪穂(よく考えたら希さんがこんな時に、そんなことするはずない。あれは本気で自分のことを、お姉ちゃん……『穂乃果』だと、思い込んでるんだ)

雪穂(レベル5を嗅いで希さんは、そうなっちゃったんだ。あれも、ほのキチなんだ……)


雪穂「うっ……」ブルッ

雪穂(こわい……。こわいこわいこわい、こわい……っ!)

雪穂(海未ちゃんの、言った通りだった……っ! ほのキチになったμ'sのみんなは、他と比べても『異常』だ……っ!)

雪穂「……ぅ」ジワ

雪穂(っ! な、なにまた泣いてんの、私……っ!)ゴシゴシ

雪穂(自分で言い出したんでしょっ!? 『二手に別れよう』って、『一人で大丈夫だから』って……)

雪穂(これ以上、海未ちゃんの足手まといにならない様にって……っ! そうだ、泣いてる暇なんかないぞ、私っ!)

雪穂「はぁ、うっ……」ググッ

雪穂(まだ、大丈夫だ……。まだ私の手には、海未ちゃんの温もりが残ってる……)

雪穂(だったら私はまだ、大丈夫だ……っ!)
    
550: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:25:33.98 ID:aoDaHZ5cM.net
  
雪穂(……ここは――)


ザワザワ……


雪穂(っ! うわっ、ほのキチだ……いっぱいいる……っ!)

雪穂(ここは……)


「穂乃果ちゃんの靴っ! 靴のにおいいっ!!」スゥゥ

「つぎ、私っ! 私に嗅がせてっ!」


雪穂(『下駄箱』……。そっか、いつの間にか入口まで、戻ってきちゃってたんだ)

雪穂(引き返さなきゃ。こんなところにお姉ちゃん、いるわけないし……)

雪穂(でも、入り口……。ううん、『出口』か……)


『学校中の匂いを探ってみても、穂乃果ちゃんがいそうな場所なんて、どこにもなかったんだ……』


雪穂(もし本当に、お姉ちゃんはもうこの学院の中に、いないんだとしたら……。ここから出て、外を探すっていうのも……)

雪穂(ううん、きっとお姉ちゃんは、この学院の中に……。で、でも、もしも外を探すなら、急がないと……)

雪穂(……)

雪穂(鼻の利く凛さんが学院中の匂いを探しても、お姉ちゃんを見つけられなかった……)


雪穂(学院の、『中』にはいない……学院の、『外』?)


雪穂(まさか……でも、行ってみる価値は……)

雪穂(だとするとやっぱり、ここから外に出なきゃ……っ!)
   
551: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:33:49.07 ID:aoDaHZ5cM.net
  
「ふはあぁぁ、いいぃ……」

「もういいでしょ、次は私ねっ!」


雪穂(……っていやいや、外に出るなら別に、ここからじゃなくてもいいんだけど)

雪穂(普通に、海未ちゃんと入ってきた窓から出よう……あの集団の横を通り過ぎるのも、怖いし)


「ちょっとあんた、二回目じゃないっ!? まだ嗅いでない人もいるのよっ!」

「そうよそうよ、ちゃんと順番は守りなさいよっ!」


雪穂(っ! あんまり大声出さないでよ、ビックリするなぁ……)

雪穂(まあいいや、無視無視……)

雪穂(そういえば海未ちゃん、ことりちゃんに会えたかなぁ。大丈夫だよね、海未ちゃんならきっと……)


「さいっこぉー。これが穂乃果ちゃんの、足の匂い……////」

「あぁ~、踏まれたい。穂乃果ちゃんの足に、踏まれたいぃ……」


雪穂(……)

雪穂(もう……)


雪穂「もう、やめてよ……」


「っ! ふ、ふふ、いいわ。思ったより濃厚ね、すごくいい……っ!///」

「もう我慢できないっ! 早く貸してっ!」

「あ、返しなさいよっ! まだ私が――」



雪穂「もうやめてよっ!!」
   
552: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:42:41.24 ID:aoDaHZ5cM.net
  
クルッ


「「……?」」


雪穂「っ! うっ……」ビクッ

雪穂「……い、いい加減にしてくださいよ。さっきから何してんですか、あなたたち……」

「何って……」

雪穂「ひ、人の靴を、勝手に嗅いだりして……。最低ですよ、気持ち悪い……」

「そんなこと言われても……ねえ?」

「嗅ぎたいものは仕方ないでしょ? 別に靴くらい、嗅いだっていいじゃん」

雪穂「……嗅がれる方はどんな気持ちになるのか、考えてみてくださいよ」

「穂乃果ちゃんが……? うーん、どうかなぁ」

「案外、喜んでくれたりするんじゃない? だって良い匂いって言われて嬉しくない人なんて、いないでしょ?」

雪穂「……そうですね。お姉ちゃんは確かにそういう人です。でも……」

「お姉ちゃん……?」

「……あっ、セーラー服。もしかしてこの子、例の……」

雪穂「でもお姉ちゃんが、本当に匂いを嗅いでもらいたいと思ってるのは……あなたたちなんかじゃない」

「は……?」

雪穂「お姉ちゃんは、ちゃんと悩んで、『一人』に決めたんだ。こういうことは、『好きな人とだけ』って……」

雪穂「そんなお姉ちゃんの気持ちも知らないで、あなたたちは……っ!」

「なに言ってんの……?」

「ねえ、あなたってもしかして、穂乃果ちゃんの――」

雪穂「私は高坂穂乃果の妹の、高坂雪穂だっ!!」

「「っ!?」」

雪穂「お姉ちゃんの靴を……返せえっ!!」

ダッ!
  
553: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:51:06.32 ID:aoDaHZ5cM.net
   
ドンッ!


「うわっ!?」

雪穂「っ!」ドテンッ

雪穂(や、やった……取り返したっ!)

雪穂(あとは、外へ……っ!)ズリズリ

ガシッ

雪穂「うぐっ!?」

「待ちなよ、妹ちゃん」

「いくら穂乃果ちゃんの妹でも、それを渡すわけにはいかないなぁ~」

雪穂「……うっ」

雪穂「うわぁああぁあっ!」ジタバタ

「っ!? こ、こら、暴れるなっ!」

バッ

「あっ……」

雪穂(あの時の海未ちゃんに比べれば、こんな人たちなんかっ!)

雪穂「はぁ、はぁっ!」


バンッ

タッタッタッ……


「外に逃げたっ!」

「追うわよっ!」
  
554: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:59:04.08 ID:aoDaHZ5cM.net
   
タッタッタッ……


雪穂「はぁ、はぁ……っ!」

雪穂(取り返せたのは、いいけど……。あの人数のほのキチに追われるのは、キツイぞ……っ!)

雪穂「……」チラッ

雪穂「あれ、追ってこない……?」


「ちょっと、あんたが追いなさいよっ!」

「い、いやよ、私はここから出たくないものっ!」

「あ、あぁ~、穂乃果ちゃんの靴がぁ~……」


雪穂(……もしかして、匂いが充満してる学院の中から出るのが、嫌なの?)

雪穂(外に一人もほのキチがいないのは……そういうことだったの?)

雪穂(は、はは……なにそれ、変なの……)

雪穂「やった……やったぞ……」

雪穂「ほのキチに一矢、報いてやったっ! 靴一足だけだけど……あいつらから、取り返したぞっ!」

雪穂「見たか……っ! 見たか見たかっ! 私だって、やればできるんだっ!!」

雪穂「グスッ、あははっ、ははっ……」


雪穂(あとは『あそこ』に、向かうだけ……っ!)

雪穂「はぁ、はぁ……お姉ちゃん……っ!」

雪穂「お姉ちゃん……っ! お姉ちゃんっ!」ギュゥ……


タッタッタッ……
   
555: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 22:35:19.32 ID:aoDaHZ5cM.net
  
――――


アルパカ小屋


フェェ フェェ


「うっ、うぅ……」

雪穂「……」

「えうっ、うっ、うぅ~……」

雪穂「……はっ」



雪穂「は、ふぅ……」フラッ

トサッ


雪穂「お姉ちゃん……」

穂乃果「うえぇえん……」

雪穂「よかった……いてくれて……」

穂乃果「ゆ、ゆきほぉ……」グスン

雪穂「探したよ、もぉ……」


雪穂(お姉ちゃんは……学院の『外』だけど、『中』にいたんだ)

雪穂(凛さんが、『匂い』を頼りに探せないわけだ……。お姉ちゃんは、こんな動物の『臭い』がたっぷりの場所に、ずっといたんだから)


雪穂「お姉ちゃんは、自分の匂いをかき消すために、こんなところに隠れてたんだね……そうでしょ?」

穂乃果「う、うぅ、うあぁあぁ……」

雪穂「な、泣かないでよ。あっ、そうだ、見てよこれ、お姉ちゃんの靴……」

雪穂「私、頑張ったんだよ。ほのキチから頑張って、取り返したんだ。すごいでしょ?」

雪穂「ってお姉ちゃん、もう運動靴履いてるね。そっか、朝練してたんだもんね。あはは……」

穂乃果「う、うぁあぁん……」

雪穂「お、お姉ちゃん……」

穂乃果「ごめんなさい、ごめんなさいぃ……」

雪穂「……えっ?」
  
556: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 22:43:08.68 ID:aoDaHZ5cM.net
  
穂乃果「ひぐっ……ごめん、なさい……うわぁ、あぁぁ」

雪穂「……お姉ちゃん?」

穂乃果「私が、私の匂いで、みんなおかしくなって……っ!」

雪穂「……っ!」

穂乃果「す、スイッチ、私が、押しちゃったのぉ……っ! わ、私のせいで、みんなが、あぁぁ……っ!」

雪穂「お姉ちゃん……っ!」

雪穂(やっぱりお姉ちゃんは、自分を責めて……そりゃそうだよね、自分の匂いでこれだけ多くの人が、おかしくなっちゃったっていうんだもん……)

雪穂(きっと私なんかじゃ想像もつかないほどの、重圧だ……。お姉ちゃんはそれを、たった一人で、背負いこんで……っ!)


雪穂「お、落ち着いて、お姉ちゃんっ!」ダキッ

穂乃果「ゆ、雪穂ぉ……っ!」

雪穂「怖かったよね、うん、うん……っ! 平気だから、すぐに全部、元通りになるから……っ!」

穂乃果「う、うぅ、でも、でもぉ……っ!」

雪穂「大丈夫だから……海未ちゃんがきっと、全部元通りにしてくれるからっ!」

穂乃果「っ! うみ、ちゃん……?」

雪穂「う、うんっ、海未ちゃんが今、頑張ってくれてるんだ。だから……ねっ?」

穂乃果「……」
  
557: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 22:50:24.76 ID:aoDaHZ5cM.net
   
雪穂「そ、そうだっ! 会いにいこっか、海未ちゃんにっ!」

穂乃果「……えっ」

雪穂「海未ちゃん、ずっと心配してたんだよ……。顔、見せに行ってあげようよっ!」

雪穂(そうだ……。きっとお姉ちゃんも、大好きな海未ちゃんに会えば、泣き止んでくれるはず……っ!)

穂乃果「む、無理、だよ……」

雪穂「……えっ、む、無理って?」

穂乃果「あ、会えないよ……。私、海未ちゃんに、もう……っ!」

雪穂「な、なんで? そんなことないよ……?」

穂乃果「グスッ、もう、無理だよぉ……っ! こんなことして……っ! 私、どんな顔して海未ちゃんに、会えばいいのぉ……?」

穂乃果「必死に私を、止めようとしてくれてたのに……っ! 私は全然話も聞かないで、こんなことになっちゃって……っ!!」

穂乃果「嫌われた……。絶対に、嫌われちゃったよぉ……っ! 私もう、海未ちゃんと、みんなと、友達じゃいられないよ……っ!」

雪穂「そんなことないってばっ! あの海未ちゃんが、お姉ちゃんのこと嫌いになるはずないじゃんっ!」

穂乃果「う、うぅ……」

雪穂「スイッチのことなら私が一緒に、謝ったげるからっ! そもそもお姉ちゃんにあれを渡したのは、私なんだし……」

穂乃果「……雪穂」


雪穂(やっぱりお姉ちゃんには、海未ちゃんが必要だ……。海未ちゃんの、言葉が)

雪穂(今のお姉ちゃんを救えるのは……海未ちゃんしか、いないんだ)

雪穂(……だったらせめて、今の私が、やれることは――)


雪穂「……お姉ちゃん」

穂乃果「えっ……」

雪穂「スイッチは……?」
  
558: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 22:54:24.78 ID:aoDaHZ5cM.net
   
穂乃果「……」グスン

穂乃果「……そこ」

雪穂「えっ? あっ、あった……」ヒョイ

雪穂「……ねえ、お姉ちゃん。ほんと、安心していいよ。とりあえずこのスイッチのレベルさえ下げちゃえば、なんとかなるから」

穂乃果「……」

雪穂「ねっ」ニコッ

穂乃果「ゆきほぉ……」

雪穂(……ほんとはまだ全然、みんなを元に戻す方法とか、見つかってないんだけどね)

雪穂(ううん、海未ちゃんの言う通り、これでレベル5をリセットしちゃえば……まだいくらでも、方法は試せるもん)

雪穂(大丈夫、希望はある。スイッチの、レベルさえ……)

カチッ

雪穂(下げちゃえば……)


カチ、カチ、カチ……


雪穂(……)


カチ、カチ、カチ、カチ


雪穂「……なんで」

穂乃果「ごめんなさい、雪穂……だめ、だめなのぉ…っ!」

穂乃果「何度も、試したの……。何度も、何度も、『下ボタン』を……っ! でもぉっ!」

雪穂「なんでよ……っ! ここまできて、なんで――」



カチカチカチカチカチカチカチカチッ!



雪穂「――なんでレベルが、下がんないのっ!!?」

   
583: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 20:58:01.12 ID:itLZs9w1M.net
  
――――


1階、空き教室


海未「――『待ってた』という言葉は、あまり聞きたくありませんでしたね」

ことり「どうして?」

海未「何かを企んでいると、言っているようなものだからです」

ことり「あはは、別に何も企んでないってば。そんな警戒しないでよ」

海未「この場所に当たりをつけた時点で、なんとなく嫌な予感はしていましたが……。できれば普通に、部室とかにいてほしかったですよ」

ことり「あぁ、部室には一応寄ったよ。練習終わりで汗かいてたから、着替えちゃいたくて」

海未「……それで制服姿なのですか。しかし着替えのためだけに、あんな危険な場所に立ち入るとは……」

ことり「穂乃果ちゃんの私物に手を出そうとしなければ、割と安全だったよ。流石にあそこで海未ちゃんを待つわけには、いかなかったけどね」

海未「だからと言って、よりによってこの教室を選ぶとは……本当に厄介ですね、あなたは」

ことり「えー、ことり的には素敵なチョイスだと思ったんだけどなぁ。だってここは私たちの、思い出の教室でしょ?」

海未「……『一年生の時の、私たちの教室』――確かに思い出の教室と言えば、聞こえはいいですけれど」

ことり「そうそう。新しく入学してきた一年生が一クラス分の人数しかいなくて、今はこの教室は使われなくなっちゃったけど……」

ことり「ここは確かに一年前まで、『私たちの教室』だったんだ。確か、そこの席が穂乃果ちゃんの席で、そこが海未ちゃんで……」

ことり「で、海未ちゃんが立ってるそこが、ことりの席」

海未「……」

ことり「その席で海未ちゃんは、ことりの体操着の匂いを嗅いでたんだよねっ♪」

海未「ふざけないでください」

ことり「……うん?」

海未「人をからかうのも、いい加減にしてください。そんなことを言うために、私を待っていたわけではないのでしょう?」

ことり「いやぁ? こんなことを言うために海未ちゃんを待ってたんだよ。私はただ、海未ちゃんと楽しくお喋りがしたいだけなんだから」

海未「……」

ことり「そんな怖い顔しないで、ゆっくり話そうよ。海未ちゃん――」

ことり「久しぶりにこうしてまた、会えたんだから」
  
585: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:21:23.53 ID:itLZs9w1M.net
  
海未「……『久しぶり』、ですか。確かに『あなた』と会うのは、10日ぶりですが」

海未「しかしまさか再び、あなたと相対することになるとは思いませんでしたよ。まさかことりが、再びほのキチになる事態が訪れるなんて……」

ことり「そうかなぁ? 私はいつか絶対に、もう一度海未ちゃんと会える日が来るって、信じてたけどなー」

海未「……なんですって?」

ことり「ふふっ……。それにしても、すごいことになっちゃったねえ。目が覚めた時、ビックリしちゃったよ」

ことり「どこに行っても、ほのキチ、ほのキチ……」

ことり「穂乃果ちゃんを探すほのキチ、私物を漁るほのキチ、暴れるほのキチ、転がるほのキチ、悦ぶほのキチに、苦しむほのキチ……」

ことり「おまけに学院中に広がる、レベル5の匂い……ん~///」スンスン

ことり「すごいね、わくわくするね、海未ちゃん。これが海未ちゃんの言っていた、『新世界』ってヤツなのかな?」

海未「いいえ。こんなのはただの、『地獄』です」

ことり「……じごく、ねえ」

海未「ですが希望の光はまだ、途絶えていません。こんな地獄のような場所からでも、必ず元の音ノ木坂に帰ることはできるはずです」

ことり「これだけの人数のほのキチ……本当に元通りにできるの?」

海未「そうですね。絶望的な人数ですが……どれだけ時間がかかっても、一人ずつ元に戻して見せますよ」

ことり「ふぅん、大変そうだねえ。頑張って、海未ちゃん。ファイトだよっ」

海未「まずはあなたからです、ことり」

ことり「……」

海未「まず最初に、あなたをまた元に戻します。私はそのために、ここにやってきました」

ことり「……あはっ」

ことり「それはちょっと、困るかなー。せっかくここまで、『うまくいった』んだから」

海未「……っ。ことり、あなた……」
   
586: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:28:27.51 ID:itLZs9w1M.net
  
ことり「なぁに?」

海未「あなた一体、何なんですか……っ!?」

ことり「……何なのって言われてもぉ」

海未「私は元々、ほのスメルが大好きな人間です……。故にほのキチたちの考え方を理解することは、そう難しくありませんでした」

海未「ただ、あなたのことだけは、いつまで経っても分からない……あなたが何を考えてるのか、私は今でも理解できない……っ!」

ことり「あはは、ほのキチの考えることなんて、いつだって一つでしょ?」

海未「違う……。目的は共通していても、あなたは他のほのキチ達とは明らかに違う……っ!」

海未「匂いだけを純粋に求める他のほのキチとは違い、あなたからは何も見えてこない……っ! あなたは一体、何を考えてるんですかっ!?」

海未「どうして私と『もう一度会える』と確信できたんですかっ!? 『うまくいった』とは、どういう意味ですかっ!? あなたは、何を企んで――」

ことり「例えばさ、海未ちゃん」ピッピッ

海未「……っ!?」

ことり「携帯の調子がなんかおかしいなー、とか、『あれ、故障かな?』なんて思った時さ、海未ちゃんならどうする?」

海未「修理に出しますが、それがっ!?」

ことり「早いよ……。その前にまず、誰でも一度は試すことがあるでしょ?」

海未「……は?」

ことり「海未ちゃんみたいに機械に詳しくない人でも、なんとなくこうすれば直るんじゃないかなー、って……なんの根拠もなく、試すことがあるでしょ?」

海未「……」

ことり「『電源の入れ直し』……『再起動』。私たちが悩むような大抵の不具合って、意外とこれで直っちゃったりするんだよねー」

海未「……あ、あなた、何を言ってるんですか? そんな話に今、なんの関係が……」

ことり「だからさ、『不具合』があったんだよ、10日前の私には」

ことり「『頭が痛くて』、仕方がなかったんだよ……。もう、うんざりしてたんだ。こんなんじゃ、穂乃果ちゃんの匂いを思う存分楽しめない、ってね」

ことり「だからことりは、思いついたんだ」

ことり「電源を入れ直そうって、思ったんだよ」
 
588: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:37:07.18 ID:itLZs9w1M.net
 
ことり「それにあの時の私は、明らかに変だったもんね。匂いを嗅ぐのを我慢したり、みんなに謝ろうだとか考えちゃったり」

ことり「自分の欲望を優先できなくなってた……みんなの優しさに触れて、私まで優しくなっちゃってた。ほのキチとして、『故障』しちゃってたんだよ、私は」

ことり「……でもそんな時、海未ちゃんからの『レベル5』っていう魅力的な誘いを受けて、少しやる気が出たんだ」

海未「……」

ことり「やる気が出た私は、色々なことを考えてた……。海未ちゃんと一緒に嗅ぐこととか、海未ちゃんを裏切って嗅ぐこととか……」

海未「っ!! あ、あの状況からまたしても私を、裏切るつもりだったのですかっ!?」

ことり「あ、いやいや、ただちょっと一足先に、穂乃果ちゃんを独り占めしちゃおうかなぁって、考えてただけだよ」

海未「本当に、あなたは……っ!」

ことり「でもね、とりあえず私はそんな、目先のことは諦めて……。ひとまず、元に戻ることにしたんだ」

海未「……『元に戻ることにした』、ですって?」

ことり「うん。『故障』を直して、後で思う存分、穂乃果ちゃんの匂いを楽しむために……私は自分から、戻ることにしたんだよ」

海未「なっ……そ、そんなことが……」

ことり「真姫ちゃんから聞いてない? ほのキチから元に戻る上で何より重要なのは、『元に戻りたい』っていう意志なんだって」

ことり「不思議に思わなかった? どうして私が海未ちゃんのハンカチを嗅いだだけで、あっさり戻れたのか……」

海未「……」

ことり「それは『元に戻りたい』っていう意志が、あの時点で私にはあったから」

ことり「『ほのキチを元に戻す』ことは、難しいけれど……『ほのキチが自分から元に戻る』ことは、実はとっても簡単だったんだよ」

ことり「『他人の匂いを嗅ぎながら、元に戻りたいと強く願う』。たったそれだけで、いいんだから」

ことり「私は海未ちゃんのハンカチを嗅ぎながら、そうやって、『自分から元に戻った』んだ」

ことり「もう一度完璧なほのキチとして『再起動』するために、一旦電源を落としたんだよ」
  
589: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:38:21.77 ID:itLZs9w1M.net
 
海未「……そんな」

海未「そんな馬鹿な話がありますかっ! ほのキチに『なり直す』ために、自分から元に戻るなんて……っ!」

海未「大体、元に戻ったあなたが、もう一度ほのキチになれる保証なんて、どこにもないではないですかっ!」

ことり「そんなことないよ。言ったでしょ? 私は海未ちゃんといつかもう一度会えるって、信じてた」

海未「……ま、まさか、この状況ですらあなたは、見越していたというのですか……?」

ことり「あははっ、まさか。流石にこんなことになるなんて、私は夢にも思ってなかったよ」

ことり「……でもね、私がもう一度ほのキチになるためには、きっと『レベル5』を嗅がなきゃいけないな、とは思ってたんだ」

ことり「耐性ができちゃったせいで、レベル4じゃもうなれないかもしれないし……。なれたとしても、また不具合が起きちゃうかもしれないから」

ことり「……私は、確信してた。元に戻った私がレベル5を嗅ぐ時は、必ず訪れるって」

ことり「でもこの状況は、想定外。穂乃果ちゃんがスイッチを押すことになるなんて、私は微塵も思ってなかった。だって……」

ことり「私は海未ちゃんが押したスイッチで、またほのキチになる予定だったんだから」

海未「私がスイッチを、押して……?」

ことり「全部、教えてあげるよ。海未ちゃんが知りたがっていた、私の考えっていうのを……」

ことり「海未ちゃん。これが、『ほのキチ』だよ」
 
590: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:53:40.96 ID:itLZs9w1M.net
 
――――


ことり「まず元に戻る前に、私は自分の胸に、聞いてみたんだ」

ことり「もし元に戻ったら、『ことり』はまず何をしようとするかな、って」

ことり「答えはすぐに出た。海未ちゃんがほのキチになったことを知った、ことりなら……必ず海未ちゃんを、元に戻そうとする」

ことり「でもそれはすぐじゃない。わざわざ海未ちゃんにバレないように元に戻ったんだから、ことりはそれを利用するはず」

ことり「海未ちゃんが隙を見せるまでは……汗を流しながら無理をしてでも、ことりはほのキチのフリをする」

ことり「海未ちゃんが隙を見せるとしたら、穂乃果ちゃんの家に着いた時……。その時にことりは、行動を起こす」

ことり「だけどことりはきっと、失敗する」

ことり「ことりはダメな子だから」

ことり「というよりほのキチを元に戻す方法なんて、あの時はまだ詳しく知らなかったから……必ず、失敗する」

ことり「さて。ここまでは、元に戻った私がとる行動を、『元のことり』の気持ちになって、考えてみたけど……」

ことり「今度は、海未ちゃんの方。ほのキチになった海未ちゃんは、ことりに計画を邪魔されたその時、一体どうするかな?」

ことり「私はまず、『自分ならどうするか』って考えた。同じほのキチ同士として、ある程度考え方は共通していると思ったから」

ことり「私なら誰にも邪魔されないような場所に穂乃果ちゃんを連れて、逃げる。二人きりになれるような場所に移動して、穂乃果ちゃんを独り占めしようとする」

ことり「海未ちゃんが私と同じ行動をとるかどうかは、自信なかったけど……。でもその時、思い出したんだ」

ことり「その日の『前日』……。『昨日』のことを」
  
591: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:58:43.48 ID:itLZs9w1M.net
  
ことり「『昨日』。つまり海未ちゃんが、ほのキチになった日」

ことり「私は希ちゃんからスイッチを奪って、逃げて……。その後穂乃果ちゃんの部屋で色々あって、レベル4を嗅いで、寝ちゃって……」

ことり「目が覚めた時にはもう夕方で、穂乃果ちゃんと雪穂ちゃんと海未ちゃんがいて、ボーっとしたまま、家に帰って……」

ことり「お母さんに学校サボったこと怒られて、バッグはにこちゃんと絵里ちゃんが届けてくれてて……」

ことり「ご飯食べてお風呂入って歯磨きして、部屋に戻ったところで、なんとなくカーテンを開けて窓の外を眺めてたら――」

ことり「海未ちゃんが、外を歩いてるのが見えたんだ」

ことり「なんか荷物を持ってね……。まあ暗かったし、その時は海未ちゃんがほのキチになってたことなんて知らないから、普通に見間違いだと思ったけど」

ことり「でも思い返してみたら、きっと海未ちゃんはあの時、逃げ場所を予め探しに行ってたんでしょう?」

ことり「逃げ場所を用意したり周りを騙したり、縛り方を調べたりマカロンに睡眠薬を入れたり……『準備』を決して怠らないっていうのも、ほのキチの特徴の一つなのかもね」

ことり「とにかくその『昨日』のことを思い出して、私は確信したんだ」

ことり「ほのキチの考えることなんて、やっぱり一緒だな、って」

ことり「ことりに邪魔された海未ちゃんは、穂乃果ちゃんを連れて、用意してあった逃げ場所に逃げ込む」

ことり「穂乃果ちゃんは、海未ちゃんのことが好きだから、きっと海未ちゃんについていく」

ことり「ことりはもちろん、そんな二人を追おうとする」

ことり「逃げ場所で海未ちゃんは、スイッチを押して、今度こそレベル5を迎える」

ことり「そしてことりは、海未ちゃんたちに追いつく……けれど、一歩遅かった。そのままレベル5を嗅いじゃって、意識を失う」

ことり「形的には、海未ちゃんがほのキチになった状況と一緒だね」

ことり「ここまでが私の想定していた、元に戻ったことりがレベル5を嗅ぐまでの流れだよ」
 
592: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:10:10.45 ID:itLZs9w1M.net
  
ことり「これで『ことり』はもう一度、『私』になる。電源を入れ直して、不具合が解消されて、私は完璧なほのキチとして、復活する」

ことり「復活した後のことは、その時の気分次第だったかなー。海未ちゃんと一緒に、穂乃果ちゃんを堪能しようとしてたかもしれないし……」

ことり「もしかしたらまた海未ちゃんを騙して、スイッチを奪おうとしてたかもねっ♪」

ことり「あははっ、怒らないでよぉ。私がこんな感じなのは、今に始まったことじゃないでしょ?」

ことり「とにかくこれで、話は終わり。私の考えてたことが分かって、スッキリできたかな、海未ちゃん?」

ことり「……うん、できるわけないよね。まだ大事なこと、話してないもんね」

ことり「そうだね。そもそも『元のことりが海未ちゃんの逃げ場所に辿り着けなかったら』、意味ないよね」

ことり「ていうか本当なら、辿り着けるはずがなかったんだよね」

ことり「海未ちゃんの用意した『あの逃げ場所』って、秋葉原の中に限定したって、何の手がかりもなく見つけられる場所じゃないもん」

ことり「この教室と違ってあの場所には、何か思い出があるわけでもないし……。そもそも行ったこともなかったし」

ことり「海未ちゃんも秋葉原を適当に探し回って、なんとなくであそこを選んだんでしょ? 別にあそこじゃなくてもよかったし、他に候補はいくらでもあったんでしょう?」

ことり「だからいくら探したって、元のことりがあの場所に辿り着くことは、不可能だったんだ。あの場所は私たちにとって、何の意味も持たない場所だったんだから」

ことり「じゃああの時ことりは、どうやって海未ちゃんの居場所を知ったのかな?」

ことり「確かことりは、『メールで教えてもらった』って、言ってたっけ……誰からのメールなのかは、海未ちゃんには教えなかったみたいだけど」

ピッピッ

ことり「……あっ。文面の最後に、『私のことはナイショでお願い』って書いてあるよ。そっかそっか、だからことりは言わなかったんだ」

ことり「でももうこの際だから、教えちゃってもいいよね。えーっと、差出人の名前は――」


ことり「『ミナリンスキー』」
  
593: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:16:09.19 ID:itLZs9w1M.net
  
ことり「……まあこれはただ、なんとなく自分のメルアドを、その名前で電話帳に登録したってだけなんだけど」

ことり「そう。私は自分で自分に、メールを送ったんだ」

ことり「『予約送信』。知ってた? メールって、時間を指定して送ることもできるんだよ」

ことり「ちょうどことりが元に戻って、海未ちゃんを元に戻そうとして失敗して、逃げられて……いま探しているところだろうな、っていう時間を予測して、指定して――」

ことり「海未ちゃんの居場所を書いたメールを、送ったの。ほのキチのことりから、元に戻ったことり宛に、ね」

ことり「私は『未来の自分』に、メールを書いたんだよ」

ことり「……うん、そうだよ。『元のことり』じゃ無理でも……『ほのキチの私』には、海未ちゃんの逃げ場所が分かってたんだ」

ことり「どうして分かったって? ふふっ……さっき、言ったでしょ? 『ほのキチの考えることは一緒だ』って」

ことり「『自分ならどうするかって考えれば、すぐだった』。『私なら、誰にも邪魔されないような場所に穂乃果ちゃんを連れて、逃げる』、って」

ことり「海未ちゃん。私も、だったんだよ」
 
594: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:16:58.97 ID:itLZs9w1M.net
 
ことり「だから、あの日は海未ちゃんが穂乃果ちゃんを部屋に連れ込んだけど、その『前日』は、私が穂乃果ちゃんを部屋に連れ込んだでしょ?」

ことり「海未ちゃんを裏切って、希ちゃんからスイッチを奪って、みんなに追われながら……私は穂乃果ちゃんの部屋に、穂乃果ちゃんを連れ込んだ」

ことり「……海未ちゃんは計画を邪魔された時のために、その『前日』に、予め逃げ場所を用意していたんだよね?」

ことり「じゃあ、私は?」


ことり「私がもしも『更にその前日』に、海未ちゃんと同じことを考えていたとしても、おかしくないよね?」


ことり「だって私たちは同じ、ほのキチなんだから。ほのキチの考えることなんて、一緒なんだから。決して準備を怠らないのが、ほのキチなんだから――」

ことり「つまり私も失敗した時のために、用意してたんだよ、逃げ場所を。海未ちゃんと一日ずれた、『前日』にね」

ことり「秋葉原を適当に、探し回ってたんだ……。誰にも邪魔されず、穂乃果ちゃんと二人きりになれて、海未ちゃんたちにも絶対分からないような、そんな場所を……」

ことり「カラオケボックスや、漫画喫茶は店員さんがいるし……。ホテルだとなんか、緊張しちゃうし」

ことり「……そんな時、見つけたんだよね。『あの廃墟』を」

ことり「廃墟って言っても、まだ結構綺麗だったし……。怖い人とかもいなそうだったし、いいかなって」

ことり「あははっ、偶然とはいえ、用意した場所まで同じだったなんて、ビックリだよね。親友同士、やっぱり通じ合う部分があるのかな、私たち」

ことり「あの場所は、『元の私たち』にとっては、何の意味も持たない場所だけど……『ほのキチだった私たち』にとっては、特別な場所だったんだよ」
  
595: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:22:24.90 ID:itLZs9w1M.net
 
ことり「……なんて、流石にその時は、海未ちゃんが私と同じ場所を選んでたなんて、知らなかったけどね」

ことり「他に廃墟なんて、いくらでもあったし……別に廃墟じゃなくても、よかったし」

ことり「だからあの廃墟も含めたいくつかの候補を上げて、それをメールに書いたんだ。そうやって私はそれを『自分』に、教えてあげたんだよ」

ことり「元のことりじゃ、絶対にあの場所には辿り着けないから。元のことりはほのキチの考え方なんて、できないし」

ことり「そもそも私たちは同じ『ことり』なんだから、考えは共有できるはずなんだけど……。私の考えは全部、元のことりの頭の中にもあるはずなんだけど」

ことり「でも元のことりはきっと、私の考えを思い出せない。『私』を思い出そうとすることを、無意識のうちに頭の中で拒否するはず」

ことり「だって『ことり』はμ'sで一番、ピュアな女の子だもん」

ことり「それは『私』が一番よく知ってる。ほのキチの私が考えてたことを、元のことりは思い出せない……だから海未ちゃんにも、辿り着けない」

ことり「そんなピュアピュアでダメダメな元の自分が、ちゃんと海未ちゃんのところに辿り着けるように、私はメールを送ったんだ」

ことり「自分を海未ちゃんのところに向かわせて……そこでレベル5を、嗅がせるために」
 
596: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:23:34.22 ID:itLZs9w1M.net
  
ことり「そして指定した時間通りに、ことりはメールを受け取って、それを見て、海未ちゃんのところに辿り着いた」

ことり「ここまでは全部、私の狙い通り……計画は、順調だった」

ことり「でも結局、廃墟に充満してたのは、レベル4で……レベル5じゃなかった。海未ちゃんはまだ、レベル5を迎えてはいなかった」

ことり「予想はしてたよ。レベル5の前に下のレベルで耐性をつけようとするのは、私も同じだったからね」

ことり「だからその時間もちゃーんと計算に入れて、メールの時間を指定してたんだ。海未ちゃんがレベル5を押した『後』に、ことりが到着するように……」

ことり「私の送った候補の中から、元のことりが正解の場所を見つけるまでの時間も、全部計算に入れて、予約送信したはずなんだけど……」

ことり「……ちょっと、ずれちゃった。惜しいなぁ、あれさえなければなあ……」

ことり「うん? あぁ、それがね。ことりがメールを見て街を探し回ってる最中に、海未ちゃんたちを見たって人に会っちゃってね……」


『二人はどっちへっ!?』

『えっ……。あ、あっち、かな……』


ことり「そのせいで候補が、だいぶ絞られちゃったんだよねえ……。あーあ、ほんとあれさえなければ……」
  
597: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:24:08.37 ID:itLZs9w1M.net
   
ことり「それでも着いた後で、またことりが失敗して、海未ちゃんにレベル5を押されちゃうってこともありえたんだけどねー」

ことり「でも、まさか――」


『私、見ちゃったんだ……。誰もいない教室で……海未ちゃんが、一人で――』

『体操着の匂いを、顔を真っ赤にして、必死に嗅いでる姿を……』


ことり「あんな切り札があったなんて……。元のことりは別に海未ちゃんを元に戻すために、『あの話』をするつもりだったわけじゃないみたいだけど」

ことり「あれは流石に想定外だったよ。仕方ないんだけどね、元に戻るまで私は、あのことを忘れてたわけだし……」

ことり「……想定外が二つもあったせいで、私の狙いは外れちゃった。結局ことりはほのキチになれなくて、おまけに海未ちゃんまで、元に戻っちゃった」

ことり「全部元通りになって、私たちの間に平和が戻ってきて……。ほのキチの私はもう、二度と復活できなくなっちゃった」

ことり「電源を入れ直そうと思ったら、切ったまま電源が入らなくなっちゃった……なんて、笑えないよ」

ことり「……でも」

ことり「でも私はまたこうして、海未ちゃんと話してる」

ことり「ほのキチとして、ことりはまた、ここにいる」

ことり「んんー……。はぁ、はぁ……///」スンスン

ことり「レベル5を嗅いで、感じてる……っ!」

ことり「まさか、こんなことになるなんて。穂乃果ちゃんがスイッチを押すなんて……ほんと、何もかも想定外だよ……っ!」

ことり「……ふふっ、ふふふふ」

ことり「ふふっ、あははは……っ! あっはははははははぁっ……!!」

ことり「ははは……はぁ、はぁ……。ふぅ……」

ことり「ふふっ……。頭の痛みも治って、忘れてたことも思い出せて……スッキリした」

ことり「ことりは今、最高の気分だよ」

ことり「さぁ、海未ちゃん……。私の話は今度こそ、これで終わり」

ことり「何か質問は、あるかな?」
  
625: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 21:15:55.76 ID:74fBI7SrM.net
  
―――――


海未「なっ……」

ことり「……」

海未「なん、てことを、考えるのですか、あなたは……」

ことり「うん?」

海未「私とあなたが同じ、ですって……? あ、あなたと同じほのキチなんて、いるものですか……っ!」

海未「ここまでたくさんのほのキチを見てきましたが……。あなた以上に、凶悪で、不気味で、狡猾なほのキチはいませんでした……っ!」

ことり「……買い被り過ぎだよ。結局考え方は、私もみんなと変わらないもん」

ことり「だってこの計画も全部、穂乃果ちゃんの匂いを思う存分嗅ぐためだけに思いついたものなんだから」

海未「たったそれだけのために、あなたはここまでしたというのですか……っ!?」

ことり「そうだよ。いつだって私は、たったそれだけのために、動いてきたんだ」

海未「それだけのために、あなたはとうとう、『自分』まで騙したんですかっ!?」

ことり「……」

海未「やはり、理解できない……っ! あなたは一体、何者なんですか……っ!?」

海未「こんな計画を、考えつくなんて……自分が元に戻った後に起きることを、ここまで予測できるなんて、あり得ませんっ!」

海未「しかも途中まではほぼ、あなたの予測通りに事が進んでいる……っ! これではまるで、私たちみんな、あなたの手のひらの上で踊らされていたみたいではないですかっ!」

海未「あなたは練習の合間という短い時間の間で、こんな計画を考えついたというのですかっ!?」

ことり「……そうだね。短い時間だったからこそ、リスクも高い無謀な計画になっちゃったけど……」

ことり「でもそんなに、驚くことじゃないよ。前も言わなかったっけ? 穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぐと、頭が冴えるんだ」

海未「……っ!!」
  
627: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 21:28:59.28 ID:74fBI7SrM.net
  
『やっぱり穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぐと、頭が冴えるなぁ。おかげでやっと、分かったよ』