悲劇は、いつも突然に。(SS)

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にこ-アイキャッチ44
1: グリズ(プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 12:40:15.25 ID:vAD2ApHJ.net
ラブライブのSSです。
初めてスレを立てますし、物語自体初めて書きました。
なので、初めての投稿です。
よろしくお願いします(*≧艸≦)

元スレ: 悲劇は、いつも突然に。(SS)

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8: グリズ(プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 12:46:48.94 ID:vAD2ApHJ.net
~プロローグ~

 μ’sは3日後にニューヨークへ行くことが3年生組の卒業の日に決定し、そこへ行って日本のアイドルの魅力をよりよく伝えるために、今は練習が大事な時期になっている。
 しかし、その練習もみんながいないとできないわけで・・・穂乃果の生徒会の仕事が終わるまでの放課後の今、屋上でいつものように練習しているはずの穂乃果以外のメンバーは部室で待っているのである。
 絵里がさっき手伝いにいったから早めに終わると思うんだけどなぁ、などと長机に肘を置いて思っていたら凛が話しかけてきた。
「にこちゃ~ん、凛もニューヨーク行く前にアイドルのこと予習しておきたいから伝説のアイドル伝説DVD全巻ボックス貸してくれにゃ~」
 私はすぐに、ダメよ、と断る。
「え~、なんで~?にこちゃん観賞用、保存用、って2つ持っているんでしょ?」
「凛に貸したら返ってくるものも返ってこなくなるのよ!」
 実際に凛にはいくつか小さいものを貸して無くしている。
「うっ…それは、そうだけど…でも、こんな大きいものは流石の凛も無くさないにゃ~」
 凛はそう言ってパイプ椅子から立ち、両手を扇風機みたいに回しながら迫ってくる。
 私はその動きを見切ってすぐに立ち、空いている真ん中の頭に向かって『必殺にこチョップ』をお見舞いした。
 凛はその技をくらってすぐにどしん!と、その場で尻もちをついた。
「いたいにゃ~!」
 そう叫び、くらった所を両手で摩りながらえ~ん、え~ん、と泣きはじめた。
 そのやりとりを見かねた希が話に入ってきた。
「にこっち、凛ちゃんは凛ちゃんなりにニューヨークへ行った時に何もできずに困らないように、今自分にできることをやっておこうと思っただけやん?…それを突き飛ばすなんて、ちょっと酷すぎるやないか?」
 希の言った言葉にさすがの私も泣いている凛に対して悪いと感じて。
「…わかったわよ、謝ればいいんでしょ!謝れば」
 そう言って、くすん、と泣きやんでいるが、まだ涙目の凛に向かって謝る。
「ごめんにこ♡」
と言いながら両手でハートマークを作った。
 すると、尻もちついてた凛が勢いよく立ち、
「凛は真面目に話してるのににこちゃんはそうやってふざけるのかにゃ!?…もう、にこちゃんなんて知らないにゃ!」
と言い残し、バタン!タッタッタッタッ、と、部室から勢いよく出ていった。
「あっ、待って凛ちゃん!・・・もう、にこちゃん!そんな謝り方ダメだよ!」
「だって、凛にはいつもからかわれているからこれぐらいの仕返ししたっていいじゃない!」
 すると、花陽の隣に座ってる真姫が口を開く。
「だからって、その謝り方は無いんじゃない?」
 ぐっ、と私は言葉に詰まる。
 …さすがに自分が想っている真姫に言われたら何も言い返せない。などと思っていたら、いきなり後ろから耳元で囁かれた。
「にこっち~、早く凛ちゃん謝りに行かないと・・・ワシワシの刑やで!」
いつの間にか後ろにいた希に将来有望株の胸をガシッと両手で掴まれ、ヒッ、と小さな叫び声をあげた私は身の危険を感じて。
「わかったわよ~!」
と、希の手から逃れ、部室から出た。
 出てすぐに凛の行きそうな所を考えて、あそこしかないわね、と自分で結論づけ、すぐ近くにある東階段を勢いよく駆け上がった。



~屋上にて~

「はぁ~、にこちゃんと口喧嘩してしまったにゃ」
「もしかして、もうこのままにこちゃんとの仲が悪くなってμ’sを辞めるしかないかもしれないにゃ」
「・・・そんなの嫌だにゃ」
 凛は屋上で1人うずくまってそんなことを考えていると、目から勝手に自然に涙が溢れてきた。
 すると、後ろから誰かが来て、凛の名前を呼んだ。
 見ると、にこちゃんだった。
「凛、どうしたのよ?そんな今にも泣きそうな…っていうか泣いている顔して」
「この顔は!みんなを驚かせようと変顔の練習をしていただけにゃ!」
「まぁ、そこは突っ込まないでおいてあげるわ」
 それより、とにこちゃんは顔をいつもより真剣な顔になって凛の顔を見る。
「さっきのこと…ごめんなさい。にこが変なところでふざけたばっかりに、凛の心を傷つけたと思うの。」
「本当に…ごめんなさい。」
 そして、素直に謝った。
 凛はそんなしおらしいにこちゃんを見て。
「にこちゃん……。ううん、凛もにこちゃんが嫌がっているのに無理に話を押し通そうとしたにゃ」
「凛の方こそ、ごめんなさい。」
 お互いに謝った。
12: グリズ(プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 12:50:31.80 ID:vAD2ApHJ.net
~一方、部室にて~

ピンポンパンポーン⤴
『校内にいる皆さん、今屋上には絶対に近づかないで下さい!
…くり返します、校内にいる皆さん、今屋上には絶対に近づかないで下さい!』
ピンポンパンポーン⤵

「…何?今の穂乃果の放送、なんか妙に慌ただしかったわね」
 私は隣のパイプ椅子に座っている花陽に話しかけた。
「何かあったのかな?」
 すると突然、部室のドアが勢いよく開けられた。
バァァァン!「「「「「!?」」」」」
 そこには絵里が立っていた。
「えりち!?もう、びっくりするやん~。いきなりドア開けんとい--」
「みんなここにいる!?屋上に誰も行ってない!?」
 希の言葉を遮り、絵里が慌てたように叫ぶ。
 ことりと話していた海未がパイプ椅子から立ち上がり冷静にその質問に答える。
「いいえ、穂乃果と凛とにこがいません」
「穂乃果は私と一緒に生徒会の活動しているわ。それより、凛とにこはどこ行ったかわかる?」
「はい、凛とにこはさっき少しケンカをして部室から出ていきましたが、多分…屋上へ行きました」
「大変だわ…すぐに行かなくちゃ!」
 絵里は体の向きを変え、屋上に向かおうとしたところを私はパイプ椅子から立ち上がりちょっとちょっと、と呼び止めた。
「さっきからなんなの?穂乃果の校内放送といい、絵里の慌てっぷりといい、いったい何が起きてるの?」
 すると、絵里はハッとなって、くるりとみんなに体を向きなおして事情を説明し始める。
「そうだった!みんなにも協力してほしいから説明するわね。
さっき穂乃果と一緒に生徒会の仕事の1つ--1ヶ月に1回のペースで行う意見箱の中身の確認をしたの。
すると異常な数の手紙が入ってて、その紙全部に『屋上を囲っている塀のある一か所が錆びてしまって今にも取れそう』と書かれていたの。
穂乃果と一緒に考えて、これは非常事態と判断した私たちは急いで校内放送や屋上確認を急いだのよ。
ここへ来たのは屋上へ向かう道のりにあったから協力してほしいことを頼みにきたの。」
 私を含め、みんなが驚いた。
 なぜなら、いつも練習している場所が危険な場所だなんて思いもしなかったからだ。
・・・今はたまたま穂乃果たちの生徒会の仕事が終わるまでみんなで部室で待っていたのだが、先に屋上へ行ってはしゃいで誰かが落ちてもおかしくはなかった。
・・・ってにこちゃんと凛が今屋上にいるかもしれないじゃない!私はそう思い、急に心配になってきた。
 でも、と海未が素朴な質問を絵里にする。
「どうして直接生徒会に言わなかったのでしょうか?」
 絵里は少し考えて答えた。
「…多分、とても内気な子だと思うの」
「わかりますっ!!」
 ガタッといきなり音を立てて立ち上がった花陽が大声で共感する。
「私も最初は絵里ちゃんのことμ’sの中で1番苦手で・・・。話したくても絵里ちゃんからにじみ出るオーラで内気な子はみんな気圧されて何も言えなくなっちゃうんです!」
「そ、そうなの?それは直さないといけないわね」
「それは直せるの?・・・って、そんなことよりっ!今は深刻な状況じゃない!絵里、私たちに協力してほしいことって?」
 そう言うと、絵里はまたハッとして説明する。
「そうだったわ!それでみんなに協力してほしいことは、校内放送じゃ届かない所に残っている生徒や部活中の生徒や先生にこのことを伝えてほしいの!今ちょうど理事長が出張でいないからみんなに頼るしかないの!もう既に穂乃果はみんなに言って回ってるわ」
「ヨシ!そうときたらみんなで手分けして言って回ろうやん!」
「では、私は弓道部の方へ行きますね」
「じゃあ、私はハノケちゃんの所に--」
「ダメです」
「ふぇぇぇん」
「ア………アルパカ」
 みんな一斉にどこを回るかすぐに話し合ってそれぞれ行動に移した。
 しかし、絵里はみんながいつもよりテンションが一段階高いことに気づき、私に聞いてきた。
「なんでいつもよりこんなにテンションが高いの?」
 その原因を絵里に確認するように伝える。
「絵里、忘れたの?3日後にニューヨークへ行くじゃない」
「あぁ~、なるほどね」
 絵里は思い出し、納得した。
 卒業式が終わり、3年生組が涙の卒業・・・かと思いきや、思いもよらない朗報。
 なんと、μ’sがニューヨークへ3日後に行くことになったのだ。海外へ行くのが初めてのみんなは昨日からテンションが高いのだ(不安でいっぱいの海未を除いて)。
14: グリズ(プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 12:51:20.71 ID:vAD2ApHJ.net
 私たちはみんなと違い、海外旅行経験があるので、テンションは相変わらずなのだ。
 じゃあ、と絵里が部室から出ていこうとするみんなに向かって言う。
「私は凛とにこを屋上へ迎えに行くわね」
と、言って走り出そうとしたのを私は待って絵里、とまた呼び止めた。さすがの絵里も何?と少し怪訝そうな顔をして聞き返す。
 私は力強く答えた。
「私も行く」
15: グリズ(プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 12:51:59.01 ID:vAD2ApHJ.net
~一方、屋上にて~

「ぷっ…」
「ぷぷぷっ…」
「「あははははははは」」
 私は凛と一緒に盛大に笑いあった。
 だって、私たちには全然似合わない空気になったから。
「はぁ~あ、なんか緊張が解けたらお腹すいちゃったにゃ~」
「そうね~。練習終わったらどこか寄ってなにか食べましょ」
「え~、今すぐがいいにゃ~」
「ダメよ。スクールアイドルたる者。練習をそんな軽々しく休んじゃA-RISEに先を越されてしまうわ!それに、ニューヨークにも行くしね。でも、頑張った分だけ、帰りの道草は美味しいものなのよ!」
「にこちゃん、帰りに道草食べるの!?」
「言ってる意味が違うわよ!」にこチョップ
「っ!?いたっ~~!…くないにゃ?」
「さっきの反省を踏まえて、少し軽くしてみたわ」
「!、にこちゃん………」
「そんなうるうるした目で見られると恥ずかしいわよ!」
 私は照れて自分の頬がどんどん熱くなっていくのがわかった。
「ありがとう!にこちゃん!」
「フンッ、当然よ!」
「じゃあ、なに食べに行くかにゃ~?」
「とりあえず帰る時にならないと思いつかないわね」
 そう言った瞬間、別のことを思いついた。
「・・・帰りにチーズバーガーもぐもぐ?」
 すると、凛も私が言った意図を察したのか、続きを歌う。
「それよりラーメンつるつる?」
 そして2人合わせて続きを歌う。
「「◎△$♪×¥●&%#?!」 」
「「どーしよどーしよ迷うよね、ハイ!!」」
「あっはははははは!ハッ、ヒィー!」
 私は腹を抱えて笑った。凛もそれは同じだった。
「わっははははっ!にこちゃんっ、全然言えてないにゃ~」
 言われた私はすかさず言葉を返す。
「凛もでしょー?」
「っていうか、ここの部分…くくっ、かよちんっ全然言えてないにゃ~」
「本人が言えてなかったら真似するにこたちは言えるはずないもんね~」
「それはあるにゃ~」
 私たちはさっきの重たい空気が嘘だったかのように笑いあった。
・・・・・・
「ヘクシュン!」
 …風邪かな?アルパカさんたちにうつさないように気をつけなくっちゃ。
 私はそう思いながらアルパカたちの水替えをした。すると、
「メェー!」
 返事をするように白いアルパカが高々に吠えた。
・・・・・・
16: グリズ(プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 12:53:36.18 ID:vAD2ApHJ.net
~一方、3階の西階段前にて~

「これは・・・まさか!?」
「なんてこと!!」
 私たちは驚愕した。
 屋上に続く4階の階段は西階段にしかないから3階の西階段に着き、一気に屋上まで駆け上がろうと考え、3階にある部室から近い東階段を無視して少し遠い所にある西階段まで来たが・・・
卒業シーズンが近いせいか3階から4階へ続く階段はワックスがけされていた。階段の手前に置かれてある看板には赤字で大きく『立ち入り禁止』と書かれていた。
「・・・東階段を使って向かうしかなさそうね」
 呆然と立っていた絵里が淡々と屋上へ行く手段を選択する。
「だいぶ時間をロスしたわ!絵里、少し走りましょ!なにか胸騒ぎがする」
 私はなぜか何かが絶対に起こると予感していた。
19: グリズ(プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 12:55:19.89 ID:vAD2ApHJ.net
~一方、左奥の屋上にて~

「あっ、じゃあ!帰りに全部食べようよ!チーズバーガーもラーメンも◎△$♪×¥も!」
「いいけど、そんなにいっぱい回れないでしょう」
 私がやれやれと溜息をついていると凛は大丈夫!、と言葉をつなぐ。
「街を見渡せるここから帰り道のルートを決めればいいんだにゃ」
 そう言って凛が屋上を囲んである落下防止用の鉄でできた網の塀の上に両手を置いて身を乗り出し、体重をかけた瞬間--。
ガシャン!と金属と金属が擦れる音がして凛が身を乗り出した塀が外れた。
 凛は前に倒れる格好にながらも私に向かって左手を思いっきり伸ばす。
 そして、5階の屋上から下へ落ちていくところをスローモーションで私の目に映った瞬間--思考が停止した。
21: グリズ(庭)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 12:59:48.22 ID:kV6gcc3x.net
 気づいた時には5階の屋上からうつ伏せるように上半身を乗り出し凛の左手を右手で握っている状態だった。
 私はすぐに声をかけた。
「っ、凛っ、大丈…夫?」
 凛は5階の屋上から宙ぶらりんになっている。絶対に怖いはずだ。
「っ、にごっ、ぢゃん……ぐずっ、っつ、ごわいよぉ~」
 凛は自分の置かれた状況を理解し、私を見上げるなり泣き出してしまった。私は落ち着かせるように話しかける。
「凛、落ち着いて。…いい?絶対に下を見ちゃダメよ。ずっと上を向いてなさい。ずっとにこを見ていなさい!」
 凛は目からいっぱいの涙を流しながらも静かに頷く。私はいい子ね、と子供をあやすように言った。
 凛の奥の下にある地面を見る。さっき外れた塀は無く、私と凛が手をつないでいるところに反対向きの状態であった。
・・・どうやら、上の接着部分が外れたが、下の接着部分はまだ外れてはいないようだった。
しかし、塀は完全に外れて落ちたほうが良かった。落ちた音で地上にいる人がこの非常事態に気づくかもしれなかったからだ。
22: グリズ(庭)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:00:46.40 ID:kV6gcc3x.net
 正直、この状況はまずい。
情けない話だが、凛より2歳も年上なのに凛を引っ張りあげることが出来ず、右手で凛の手を、左手で屋上から身を乗り出す支えという今の状況を維持することしかできない力しかないということ。
そして、凛が落ちそうになっている所は屋上の中でも特に目立たない場所。さっき凛は屋上に着いた瞬間…泣いてしまった。
だから、泣いているところを他の人に見られたくないため、屋上の中でもあまり目立たない場所でうずくまって泣いてしまったのだ。しかも、私も凛と2人きりで話したかったため、ここの屋上に入る時に扉に鍵をかけてきてしまったのだ。
ただでさえ屋上によく来るのはμ’sのメンバーだけなのに。したがって、大声をあげても万に一つない 限りは誰も来ないだろう。
26: グリズ(庭)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:02:54.92 ID:kV6gcc3x.net
 屋上からの助けを求めるのは絶望的だった。

 さらに、屋上も人気(ひとけ)のない場所だったら同じ位置にある場所の地上も例外ではなく、…地上も人気のない所だった。

 なので、凛が落ちてしまう地面の近くにクッションとなるかもしれない池も木も無い。

…誰も気にかけない運動場の隅の地面が広がっているだけだ。

まだ落ちそうになっている所が正面だったら運動場で練習している運動部の子に気づいてもらえたかもしれない。
31: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:11:40.72 ID:ZWhcKhqZ.net
 しかし、今私たちがいる所は学校に向かって左奥の側面の所にいるのだ。

しかも、5階の屋上から大声で助けを呼んだとして声が届くかどうかもわからない。

スクールアイドルだとしても、人間が発する声量には限界があるものだ。

 あとは何かないかと地面を5階の高さからずっと見下ろし続けたため、目眩がしたが、それでも探す。
32: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:12:13.08 ID:ZWhcKhqZ.net
学校に注目すると落ちたところは隅の運動場だが、そのすぐ横にはどこかのクラスのベランダがある。多分2階、3階、4階もどこかのクラスのベランダなのだろう。

もしかしたら、落ちている時にプラスティックでできたベランダの塀を掴んで落下を阻止することができるかもしれない・・・という考えがら一瞬頭をよぎったが、絶対に掴むことは不可能だろう。

 各クラスに1つは必ずあるので構造はわかるが、どこを掴んだら助かるかなんてわかるはずがないし、1番近い4階のベランダも屋上からの高さの高低差はかなりあるからだ。
33: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:13:39.42 ID:ZWhcKhqZ.net
 すると突然、凛の体が5階の横からピュュュー、と吹く冷たい横風に揺らされる。
・・・それは凛の身体の体重も一緒に動くのは必然なわけで。
「ううっ…う!」
 右手に力を入れ、それを踏ん張る。
「ううっ、…にご…ちゃん!ぐすっ、大、丈夫…?」
 私は間髪入れずに答える。
「へっ平気よ!これくらい!!…それよりあんたは自分の心配をしなさい!」
「ぐすっ、うっ……ん。わがっ…た…」
 凛の不安に満ちた表情を前に、助けを待つだけの力しかない自分の無力さを呪った。
35: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:20:53.27 ID:ZWhcKhqZ.net
そして、1番最悪の条件なのが--自分の握力に限界があるってこと。

人間にはやっぱりどうしても限界があるもので、こうしていていつかは私の握力がなくなって凛を離してしまうのか、それとも凛と一緒に落ちるのか。
・・・今は凛も掴んできてくれて幾分か楽になっているが、その選択をいつかはしなきゃいけない時が来る。

今まで生きてきた自分の人生の中で嫌な選択をしなきゃいけない場面はいっぱいあったけれど、これまでの場面とはわけが違う、本当に大事な、絶対に選ばないといけない場面だった。

「…すんっ、にこちゃ…ん」

すると、少し落ち着きを取り戻して泣き止んだ凛が囁くように話しかけてくる。

「どうしたの?凛?」

「にこちゃん、もう…、凛のこと離していいよ。」

「なっ!?何バカなこと言ってんのよ!?」

「このままだと、にこちゃんも一緒に落ちちゃうよ!」
36: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:24:54.26 ID:ZWhcKhqZ.net
「この手を離すくらいなら一緒に落ちたほうがマシね!」

凛は私が断言したこの言葉に目が少し揺らいだが、全然引かない。

「にこちゃん…にこちゃんは将来、宇宙No.1アイドルになるんでしょ!?」

その言葉に今度は私の心が揺らいだ。
・・・確かに宇宙No.1アイドルになるのは私の夢。
これは絶対に誰にも譲れない。なれなかったら死んだほうがマシという気持ちさえ、出てくるくらい。

でも、凛の命と天秤にかけるとしたら……ううん、かけなくてもわかってる。絶対に凛の命。
・・・あれ?でも、凛の命を選択しても凛は助からないよね?
・・・むしろ、自分の命まで失うことになる。ってことは、この選択は間違い?

いや、でもなれなかったら死んだほうがマシと思っているし、なれなかったから死んでしまったで本望じゃない?
…あれ?でも凛の手を離すことを選択したら夢の実現への可能性が出てくる。…いや、でも…あれ?アレ?

私は頭の中がこんがらがってきた。
…それに気づいた凛が畳み掛けてくる。

「それに、凛知ってるよ。こういう場合は、事故になるんだって。しょうがないことなんだって。前テレビでやってたよ。」
38: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:27:21.06 ID:ZWhcKhqZ.net
凛の言うことは私も聞いたことがある。

こういう場合は自分の命を大事にする、仕方のないことだと法的に手を離した人は罪に問われない。

…いや、離せざるをえなかった人と呼ばないと失礼だろう。

「だから、にこちゃんがこの手を離してもなにも負い目を感じる必要はないんだよッ!」

凛は力強くそう言って、顔を引きつらせながらも精一杯の満面の笑顔を見せた。

・・・そろそろ右手に痛みが走り、痺れてきて限界だった。

ずっと力を入れている状態が長いせいか、息も切れてきて体力も無くなってきた。

もう、ダメだ。私はそう感じて。ついに--

「凛・・・、さっき言った言葉は取り消しね」

静かに言った。
40: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:33:55.13 ID:ZWhcKhqZ.net
~一方、屋上の扉の前にて~

「絵里!急いで!」

「わかってる!」

私は叫ぶようにして絵里に催促する。
絵里が急いでいるのはわかっているけど、叫ばずにはいられなかった。

走ってここまで来たのはいいが、鍵が開いてなかった。
多分、にこちゃんが凛と2人きりで話したいと思い、部外者を入れないために閉めたんだと、私はすぐに理解した。
41: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:35:32.22 ID:ZWhcKhqZ.net
一瞬絶望を感じたのだが、それを見越してか、
たまたまか、絵里が理事長からマスターキーを借りていた。

私は希望が満ちた顔にすぐになった。

しかし、そのマスターキーは、いくつもの種類の鍵が鉄のリングに纏められている、
ジャラジャラしてる方のマスターキーだった(家には鍵1本で家中すべての扉が開くマスターキーがある)。…そして、今屋上の扉の鍵穴に1個ずつ鍵を絵里が試していっている。

「早く!」

「もう少し!」

私は扉に付いている窓を覗く。

窓から見えている範囲には少なからずいないようだ。

ジャラジャラと、マスターキーがたてる激しい音で、絵里がどんなに焦っているかわかる。・・・わかるが。

「急いで!!」

やっぱり催促せずにはいられなかった。
42: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:37:36.37 ID:ZWhcKhqZ.net
~一方、屋上の左奥の側面にて~

「うん、わかったよ。しょうがないにゃ~」

凛はいつもの調子で笑顔で答えた。

私は今どんな顔をしているだろうか。

自分の顔が想像できない。
…ただし、これだけは、言える。今自分がしているその顔は--間違いなく人間の底辺のクズの顔だろう、と。

そう思った瞬間、私の目から涙が溢れ出てきた。どうしても、絶対に止まらない、大粒の、大量の涙が。

そして私を見上げている笑顔の顔の凛の頬に私の涙がポタポタッ、とかかる。
--これじゃあ、どっちが年上かわかんないじゃない。

私は凛は本当に強い子だと思う。こんな状況なのに、あんなに顔をピクピク引きつらせているのに・・・。
それでも満面の屈託のない、いい笑顔を崩さない。

それだけで、私はこの先も生きていていいんだ。何も負い目を感じなくていいんだという自分の中の弱い自分が肯定されていくようで、
・・・随分と心が楽になる。
43: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:41:36.20 ID:ZWhcKhqZ.net
でも、やっぱり涙は止まらない。

しかし、ビキビキと痛みが走る右手の握力が限界に達する時間は待ってくれなくて…。

決断を実行に移す時が来た。

凛は最後に笑顔で遺言を残す。

「・・・にこちゃん、みんなに伝えてほしい言葉があるの--」

「--------------!」

そして、私は最後に満面の笑みを浮かべて静かに手を振ってバイバイ、とそれだけ言い、凛の手を離した。





「にこちゃああああああああああん!!!!」
44: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:43:23.00 ID:ZWhcKhqZ.net
~一方、屋上の扉の前にて~

ガチャリ

「開いた!」
と、絵里が言ったと同時に私はドアノブを回し。勢いよく屋上へ飛び出した。

そして、にこちゃんと凛の姿を血なまこになって探す。

そして、屋上を囲む鉄の網の塀が左奥のほうで一つ欠けていることを確認する。

そして、そこには---------



誰もいなかった。

私と絵里は不思議に思いながらもそこへ駆け寄ろうとしたその時。

欠けている塀の奥から思わず耳を塞ぎこみたくなるような叫び声が聞こえた。

「にこちゃああああああああああん!!!!」と、その声はよく聞いたことのある声だった。
凛?と思いながら私は、すぐに欠けている塀の所でしゃがみ込み、頭だけ出し、屋上から地面へと覗き込んで見下ろした。

見えたのは、3階のどこかのクラスのベランダから凛がひょこっと頭を覗かせて奥を見て大声で泣いていた。

何故あんなところに?と思いながらも、私は凛の後頭部からピントを外し、ぼやけていた奥へと目線を移す。
45: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:45:06.62 ID:ZWhcKhqZ.net
そこには--



--にこちゃんが仰向けの状態で倒れていた。

それも血だらけで。目が見開き、手が変な方向に曲がってて。足もありえない方向を向いて。
にこちゃんを中心にじわ…っと、血だまりができていく。

私は制服の上着の間から見えるピンク色のカーディガンが濃ゆい血の色にだんだん染まっていくのを見ながら--。

私の思考は一瞬停止した。

そして、どれだけ時間が経ったかわからないまま思考が回ってきた時、今まで自分が出したことのないような金切り声をあげていた。

「にこちゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!」

私も吸い込まれそうになった。…というか、吸い込まれるように屋上から当然のように身を乗り出した。

すると、絵里に後ろからぐっ、っと抱きしめられた。

「ダメよ、真姫!!絶対にダメ!!にこもそんなこと絶対に望んでないわ!!」

それを聞いて最後、私は絵里の体の中で気を失った。
46: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:47:21.38 ID:ZWhcKhqZ.net
~今から3分前、屋上の左奥の側面にて~

・・・凛は、もうにこちゃんの悲しむ姿を見たくなかったにゃ。

もちろん、できることなら2人で生きて普通にμ’sのみんなのもとへ戻って、普通にまたみんなでおしゃべりをし始めて笑いあって、
しばらくしたら穂乃果ちゃんと絵里ちゃんが部室に戻ってきて、またおしゃべりをし始めて笑いあって、海未ちゃんに今日、練習しないんですか?って、ものすごい恐い顔で怒られて。
みんなで急いで練習着に着替えて、屋上は立ち入り禁止だから神田明神で…今日は基礎練になるかにゃ?そこへランニングで行って、
またおしゃべりをし始めてまた海未ちゃんに怒られて。
・・・なんか怒られてばっかりだにゃ~。

でも、その、μ’sのこの9人みんながいてあたりまえの日々のくり返しが…凛にとっては、とっても幸せで。

あぁ~あ、ずぅっとこの今が続いたらなぁ~。…なんて思ったりして。

それをにこちゃんに伝えて共感してもらって、にこちゃんが絵里ちゃんにさすがにこね。って呆れられて笑いあって。

そして、放課後にはかよちんも誘って、にこちゃんと屋上で約束した仲直りの印に道草をして、
そしてまた凛がにこちゃんが道草を食べることをいじって笑いあって、笑いあって、笑いあって………。

そうして、ずっと笑いあう日々が本当に大切だった。
47: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:51:38.12 ID:ZWhcKhqZ.net
でも、この今の状況。

仕方ないよ。

これも運命で決まっていたんだと思う。

最初は、凛も落ちることへの恐怖で頭がいっぱいだったけれど、にこちゃんの顔を見ていて気がついたにゃ。
…にこちゃんの立場のほうが辛いって。

だから、にこちゃん…。

もうそんな悲しい顔を見せないでほしい。

もう…耐えられないよ。

にこちゃんが凛の手を握りしめている力が少しずつ弱くなっていくたびに、にこちゃんの顔が少しずつくしゃくしゃになっていくところを
…もう凛は見たくないにゃ。

…だからね、凛はね。もういいんだにゃ。

決して諦めではないけれど、本当にもういいんだにゃ。

なんていうのかな、にこちゃんが凛を助けようとするその精一杯の努力でもう凛は、お腹いっぱいだにゃ。

これから先の人生をにこちゃんと…μ’sのみんなと共に歩めないのは本当に惜しいと思うけれど、にこちゃんと最後に笑いあえただけで、もう大満足にゃ。

だから--、最期も笑顔で迎えたいから。笑顔で伝えるね。

「にこちゃん、みんなに伝えてほしい言葉があるの--」

「待って」

にこちゃんは左手を動かし、目の周りに流れていた涙を器用に拭くと何かの意を決したような顔になった。

にこちゃん?何をする気?
48: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:56:59.90 ID:ZWhcKhqZ.net
~凛が落ちるはずのその1分前~

「私のほうこそ、今まで素敵な時間をありがとね!!
μ’sのメンバーにはもちろん、特に真姫ちゃんに伝えてね!!!
家族にも、にこを今まで支えてくれてありがとうって伝えてね!!」

そして、にこちゃんはもう限界に達しているはずの右手を前、後ろ、前、後ろと、手を振り始めた。

凛の身体は必然的に前、後ろと揺らされる。

「凛、壁にぶつかる時は空いている手で反動をつけて!」

言われるがまま、凛は身体が壁にぶつかりそうになったので空いている右手で壁とのぶつかる衝撃を吸収してそのまま押し出す。

「っつぅっ!!い、いいわよ!!」

ものすごくビリッとくる激痛が私の右手から右肩まで襲う。
チラッと自分の右手を見ると手の甲の色は薄い紫色になっていて、もう血が通っていないようだった。…しかし、だからなんだ。ここで凛の手を絶対に離すわけにはいかない。

「にこちゃん!?どうしてこんなことを?」

凛は私のとった行動に疑問を抱く。もっともな疑問だと思う。

凛からしたら、遺言を途中で待ったさせられていきなり意味のわからない行動をとるのだ。頭がおかしくなったとしか思えない。

でも、私を信じてほしい…凛。

そして、私は凛の体が前に行くタイミングを見計らってはっきりとした声で凛に私の思惑を伝える。

「それはね、凛。あんたが落ちる人じゃないからよ!」
51: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 13:58:59.34 ID:ZWhcKhqZ.net
私はそう叫んで、今まで落ちないように踏ん張っていた左手と両足の力を一気に全部抜いた。

と、同時に2人は手を繋いだまま、地面へと吸い込まれた。

--が、落ちているほんの一瞬に凛の身体が前から後ろに来た勢いを利用すると同時にバイバイ、と言って凛の手を離した。

すると、綺麗に3階のベランダへと凛の身体は吸い込まれていった。
--4階のベランダでは短すぎて入れられなく、2階のベランダでは長すぎて落下の勢いを殺せない。3階のベランダしかちょうどいい空間はなかったのだ。
・・・しかし、それも一か八か。成功するのは奇跡だ。

でも、凛だけは絶対に助けると決めていた。自分のことはどうなろうと。

そして奇跡が起きた。

凛は完全に助かったのだ。

自分の身体が5階の高さから落ちていくというのになぜか安心していた。

すると、自分の今までの記憶がフラッシュバックする。これが走馬灯と理解するのに時間はいらなかった。
52: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:02:35.51 ID:ZWhcKhqZ.net
思えば素直になれない人生だった。
・・・まぁ、私より素直になれない子がμ’sの中にいるbッどね。

もし、生きてたらもう一度だけあの子に会いたいなぁ。

でも、無理だろうな、と思う。
なぜなら、凛を助けた反動で自分の身体は落ちていきながら、どこが上かどこが下か全然わからないくらい空中で激しく回っていたからだ。

だから、必ず地面と頭は激突するのだ。

綺麗にまっすぐに足から落ちたんだったら、足の複雑骨折で済んだかもしれないが、こんなに回転していたら足から落ちても必ず頭も地面と激突する。
どう足掻いても抜け出せない絶対に免れない死。それはしょうがない。今更後悔なんてものはない。

・・・でも、やっぱり、あの子と…μ’sのみんなともっとおしゃべりしていたかったな…。
53: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:04:00.97 ID:ZWhcKhqZ.net
…まさか、3年生になってあんな奇跡のようなことが起きるなんて。

私からしたらあの時から奇跡はもうすでに起こっていたのね。

今なら素直になれる。

すごく楽しかった。

みんなでずっとバカやってた。

もっと、その素敵な時間をみんなと共有していたかった。

本当に死にたくない。
…でも、その時がやってくる--

--誰かがいつもいる部室に戻るのは、とっても素敵なこと。

自分にいてもいい居場所があるのは、奇跡的なこと。

誰かに大切に愛されるのは、本当に幸せなこと。

・・・真姫ちゃん、本当に好きだった。

凛、強くしっかり…生きてね。

みんな、みんな、みんな……私のこと、ずっと、忘れないでね!!!!!



地面がにこの頭を砕いた。
54: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:06:30.44 ID:ZWhcKhqZ.net
~エピローグ~

--あれから5年後。私たちは大人になった。

成人式をあげた後、元1年生組でにこちゃんへ報告がてら墓参りに行こうっていう話になって。

運転は私、助手席に小泉さん、後ろに西木野さを乗せて黄色い軽自動車で音乃木坂への懐かしいスクールゾーンを走っていた。

--あれから私たちは強く、しっかり生きた。
あの悲劇をあとから部室で知ったみんなは…思いっきり泣いた。
もう、それは目と口が痛くなるくらい、声がもう出なくなるくらいみんなで泣いた。本当に…本当に、大切な友達だったから。

そして、みんな泣き疲れた後、今後のことについて話し合った。

もちろん、3日後に控えたニューヨーク行きはキャンセル。
そしてμ’sも解散することになった。
…そのまま続けよう、というにこちゃんに対する想いもみんなの心のどこかにあったけれど、にこちゃんがいない限り、今まで通りのパフォーマンスができるとは、到底…誰も思わなかった。

だから、みんなの最終的な想いは一緒だった。この9人揃ってμ’sなのだと。
55: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:08:29.31 ID:ZWhcKhqZ.net
西木野さんは、目覚めた後ものすごく自分を追いつめた。

もう何もかもすべてがどうでもよくなって。
引きこもって自分の部屋をメチャクチャに荒らして、家族にも暴行を加えたりした。
…自殺をしようとしたことも何度もあるという。

元μ’sのみんなは何度も西木野さんの家に訪ねて、にこが亡くなったのはあなたのせいじゃないってみんな言ってくれた。

私が行った時は、生気を失った凄い怖い目で睨まれて、いきなり左肩を思いっきり噛みつかれた。
…すごく痛かったし、今もその噛まれた傷跡は痛々しく残っている。

それでも、私はにこちゃんが最後にみんなに向けて伝えたかったこと。にこちゃんに助けられた命を絶対に大切にすること。西木野のことを特別に想っていたこと。全部話した。
西木野さんは目の焦点が合わず、ぼーっとしながら、しかし、ちゃんと話を聞いてくれているようだった。

そして、あの悲劇から3年後。

ようやく、西木野さんは人とのコミュニケーションを少しできるくらいまで回復した。

それから、順調に西木野さんは回復していき、5年後の今はもう小泉さんと普通の会話ができるようになっている。
・・・だが、高校生の時のような素直になれない性格にはまだ戻れず、暗くて深い不安定な部分がまだある。…今日のにこちゃんへの墓参りも、もしかしたらにこちゃんが亡くなったことを自覚し、回復していた精神がおかしくなり、また心が壊れるかもしれない。
という心配も正直ある。

…でも、大人になった今だからこそ。
ここから先の人生を生きていく者にとって、にこちゃんの墓参りは必要なんだと思
56: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:10:48.56 ID:ZWhcKhqZ.net
にこちゃんのお墓は国立音乃木坂学院の近くにある墓地に埋葬されている。
…音乃木坂学院は私たちが卒業して3年経った今でも廃校になっていない。μ’sのおかげで。

近くに車を止め、3人で歩いてにこちゃんのお墓を探し、見つけた。

すると、先客がいた。

にこちゃんの母親だった。

以前、3年生組の卒業式の日や、その後も何度か高坂さんと絢瀬さんと一緒ににこちゃんの家を訪ね、謝りにいって会ったことがあったからすぐにわかった。

謝りにいった時のにこちゃんの母親はとっても落ち込んでいた。

まだ自分の子どもを持ったことがないから、自分の子どもがいきなり亡くなる母親の気持ちはわからなかったが、私たちよりも数倍悲しいはずだ。

にこちゃんの母親もこっちに気づいたようで一礼をしてくる、私たち3人も一礼する。

少し老けてしまっていた。私たちはいったい、どんな顔をして会えばいいのか--

「久しぶりね~、みんなこんなに可愛く成長していて嬉しいわ~」

「「「・・・・・」」」

一瞬、その場の時が止まった。

「あっ、あれっ?もしかして私のこと覚えていないかぁ~?矢澤にこの--」

「いえ、知っています」

私は言葉を遮る。

「えっ?知っているのならなんで返事しないのよぉ~。…あっ、わかった。今流行りの冗談でしょ~」

正直、驚いた。

確かに、何度か謝りに行ってからもう約4年が経つが、凄い変わりようだったからだ。

「いや~、今の子の冗談はおばさんわかんないわぁ~」
などと呑気に冗談をいっている。
58: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:14:11.82 ID:ZWhcKhqZ.net
なんでそんなに明るいんですか?と、私が質問をする前に西木野さんが大きな声で叫ぶように聞いた。

「どうして!?あなたはどうして自分の娘が亡くなったというのにそんな風にできるんですか?5年も経ったし、今更気にしてもしょうがないってことなんですか!?」

私と小泉さんはゴクッと息を呑みながら返答を待った。

そして、しばらくして。

「ん~、なんでだろうね。やっぱり母親は娘のことをなんでもわかっちゃう生き物でさ。
にこちゃんは自分が帰らぬ人になっても、残されたみんなには悪いけど、ずっと笑っていてほしいって想っていると思うの。
…残された私たちは突然起きたあの悲劇を過去のことにはしちゃいけない。私たちはあの悲劇を忘れず、寄り添って共に生きていかないといけないの。
・・・特に、命を託された人はね」

にこちゃんの母親は私のほうをチラッと見る。私は力強く頷いた。

「ふふっ、よろしい。…だから、なんにも悲しむ必要はないの。これから歩んでいく自分の人生を、ずっと明るく幸せに生きてほしい。あの子を忘れない限りは…」

にこちゃんの母親はそう優しく言い、西木野さんの前で両の腕を大きく伸ばした。

しかし、西木野さんは目を泳がせて、

「いやっ、でも…私、にこちゃんに…」
と、ぶつぶつ言っていてもう一歩が踏み出せなかった。

--だから、
私と小泉さんでトンッと、西木野さんの背中を押してあげた。…かつて、西木野さんが私たちの背中を押してくれた時のように。

そして、西木野さんはにこちゃんの母親の前まで来るとにこちゃんの母親に抱きしめられた。

すると、今まで溜まっていたものが限界に達したのか、西木野さんは思いっきり声をあげて幼い子どものように泣いた。

にこちゃんの母親も目に涙を浮かべており、辛かったね、よく頑張ったよと、労いの言葉をかけていた。

私も小泉さんもみんな泣いてた。

そして、みんな泣き終えた後、私たち3人で1本ずつ持ってきたダリアの花を空いている花瓶に添えて静かにお焼香をあげて手を合わせた。
59: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:17:28.21 ID:ZWhcKhqZ.net
にこちゃんの母親とはお墓の前でお別れした。

そして3人を乗せた車は帰り道を安全に走っていたが、道草しよう!って助手席の小泉さんが言ってくれて、
その言葉ににこちゃんとの最後の会話を思い出し、感極まったがぐっ、と堪えて元気よく、任せて!と私はハンドルを乱暴に切った。

向かった先はみんなで大会が終わったらμ’sはおしまいにします、と誓った海だった。

あたりはもう夕暮れで夕日と海が最高にマッチしていて凄く綺麗に映っていた。

私たちはあの時みたいに並んでみせた。

すると、ふいに西木野さんが口を開いた。

「今日はありがとね。凛、花陽。…おかげでいろいろ吹っ切れたわ」
そう言って、頬を赤らめた西木野さんは右手で髪の毛先をクルクルと弄ぶ動作をした。
・・・私はその動作に懐かしさを覚えて。

「どういたしましてにゃ~」
と昔の口癖がつい出てしまった。すると、

「もう~、凛ちゃん!昔の口癖が戻っちゃってるよ~」

「かよちん!呼び方呼び方!」

「あっ!本当だっ!」

「あっ!凛もだっ!」

「なにそのやりとり、イミワカンナイ!!」
60: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:20:13.02 ID:ZWhcKhqZ.net
「「「・・・ぷっ、」」」

「「「あはははははは!!!」」」

私たちはここ数年間出来なかった笑いあうことを久しぶりにできた。

そして、西木野さんが空を見上げて呟く。

「これでいいんだよね?にこちゃん--」

・・・・・・

私は見上げた空に想う。

--空に漂う雲は夕日に照らされて、あの時μ’sのみんなで見たオレンジ色ではなく、…ましてや見下ろした時の濃ゆい血の色でもなく・・・、
めったに見られない薄いピンク色に染まっていて………私たちをいつまでも見守ってくれているような気がした。

・・・・・・
62: グリズ(泡盛)@\(^o^)/ 2016/04/03(日) 14:21:20.72 ID:ZWhcKhqZ.net
-The End-

※ 画像がありましたがリンク先がアップローダーではない為載せていません(管理人)
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『悲劇は、いつも突然に。(SS)』へのコメント

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