にこ「赤い靴」

シェアする

にこ-アイキャッチ37
1: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:09:41.72 ID:ZA642Qfv.net
真っ赤で綺麗な赤い靴

履くのはだあれ?



1
「ねえ、にこちゃんはどうしてアイドルになろうと思ったの?」

放課後の夕日が照りつける部室で穂乃果は椅子に座りながら世間話のようにそう話しかけた。

今日は他の何人かのメンバーが用事があり練習はないはずなのだが穂乃果は知らなかったようで部室に来てしまったみたいだ。

そして、私矢澤にこも同じように来てしまい、二人でだらだらとしているところだった。

元スレ: にこ「赤い靴」

スポンサーリンク
2: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:11:24.14 ID:ZA642Qfv.net
「そんなの、私が宇宙1のスーパーアイドルにこにーだからに決まってるじゃない」

そういって胸を張って私は答える

・・・・・・そこ、胸の前に「小さい」を入れるんじゃないわよ

「んー、けどそういうのって何かきっかけとかない?アイドルのライブを見に行ったとかさ」

確かに、野球少年がプロ野球の試合を見てプロの選手にあこがれて野球選手を目指すっていうのはよく聞くわね。
4: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:17:17.69 ID:ZA642Qfv.net
うーん・・・



「ちょっと考えたけど本当に思いつかないわ」

好きなアイドルはたくさんいるけど、そのアイドルを見て目指そう何て思った記憶は私にはなかった。

そっかあ、とあまり反応を示さない穂乃果。どうやらただの話題造りだったみたいだ。

「けど、まあ確かに・・・私がアイドルを目指したきっかけというなら・・・ぱ、父親の影響が大きいのかも」

「にこちゃんのお父さん?」

「そっ」
5: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:22:08.81 ID:ZA642Qfv.net
パパはいつも私をほめていた。
特に、

「にこは笑顔が一番だな!」

が口癖で私が笑うといつもほめてくれていた。
そのことを穂乃果に話すと、

「へえ、とっても優しいお父さんなんだね!」

とはにかんだ。私の笑顔も負けるつもりはないけど穂乃果の笑顔はパワフルでこちらの気持ちも明るくなってくる。

「にこちゃんのお父さん、私も会ってみたいなあ」

「・・・・」

「にこちゃん?」
6: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:26:36.32 ID:ZA642Qfv.net
ちょっとした静寂が部室の空間を支配する。

「ごめんね、私の父親単身赴任でめったに会えないのよ」

「えっ、そうなんだ。残念・・・」

穂乃果は残念そうに言った。

「そういえば、穂乃果のお父さんは和菓子職人なんでしょ、どんな人なの?」

「えっ、私のお父さん?私のお父さんは普段無口なんだけどね・・・」

そういって、今度は穂乃果のお父さんの話を聞く。
7: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:36:45.90 ID:ZA642Qfv.net
-------------------------

「あっ、もうこんな時間だ」

「あっ、本当ね」
気付けば長い時間話し込んでいたようでだいぶ陽も落ちていた。

「じゃあ、私海未ちゃんのところに行くね」

なるほど、穂乃果は海未の部活が終わるのを待ってたのね
「それじゃあ、また明日」

「また明日、ばいばい!」

夕暮れ、ひとりでいる部室はやけに広く感じる。
9: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:54:44.28 ID:ZA642Qfv.net
昔はそんなこと思いもしなかったなと、昔を思い出す。



ごめんね、私の父親単身赴任でめったに会えないのよ



なぜ、あんな嘘をついたのだろうか

「めったにでも会えればいいのにな・・・」



だって、パパはもうこの世にいないから・・・
11: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 20:31:49.12 ID:ZA642Qfv.net
1.5
眼を瞑ると底には公園が広がっていた

なんで、眼を瞑っているのに公園が見えるかというとこれは夢の中だからだ。

今日、部室で穂乃果とあんな話をしたからだろうか、この公園は昔よく遊んだ公園だった。


「にこ」


私の名前を呼ぶ声がする。

とても、懐かしい声。けど、何年経っても忘れはしない声。
14: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 20:37:45.75 ID:ZA642Qfv.net
「にこ、突然ぼーっとしちゃってどうしたんだい?」

私のパパ

見た目から優しい人だってひと目でわかるような人。
見た目だけじゃなく性格も優しくてママが大好きな人。

「ううん、何でもないよパパ」

久しぶりに会うパパは夢の中でもやっぱり嬉しい。
16: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 20:42:19.64 ID:ZA642Qfv.net
「うーん、けど心配だなあ・・・よし、こんなときには魔法の呪文だ!」

あっ、懐かしい

「ようし、行くぞ~」

せーの



「「にっこにっこにー!!」」



「ほら、笑顔になった!!」
17: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 20:48:02.96 ID:ZA642Qfv.net
パパとにこの魔法の呪文

笑顔になれる素敵な魔法

にっこにこにー

私も笑う

パパも笑う


にっ、っと笑うとパパの欠けた歯が見える

「パパが笑うときにね、転んでなっちゃったっていう欠けた歯が見えるの。それがとってもチャーミングなの」

昔、ママがそう言っていたなあ。娘にのろけ話を聞かせてどうするのよ

けど、娘の私もパパの笑顔は大好きだ。






けど、パパの笑顔はもう見ることができない。
19: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 20:55:02.94 ID:ZA642Qfv.net
2
「どうして矢澤はアイドルになりたいんだ?」


・・・まさか二日連続で同じことを聴かれるとは思わなかった。

練習に向かう前、担任の先生に呼び止められた。まさか、卒業の危機とも思ったが進路の話らしい。

「えっと・・・どういうことですか?」

思わず聞き返してしまう。
20: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 20:59:50.74 ID:ZA642Qfv.net
「これだよ、これ」

そうして、先生は一枚のプリントを見せる

『進路希望表』
矢澤にこ
第一希望
アイドル
第二希望

第三希望



「うっ・・・これはですね・・・」
21: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 21:11:24.83 ID:ZA642Qfv.net
確かにこれはふざけていると思われても仕方がない・・・
それに音ノ木坂は進学校、アイドルなんて・・・

「別にアイドルになることを否定しているわけではないんだ」

えっ?

「別に先生の教え子でも声優になりたいって言って専門行ったやつもいるし、芸人になりたいっていって吉本にいったやつもいるしな」

「先生いろんな生徒見てるんですね、さすが年季がちが」

ぴきっ

「何か言ったか?」

「いいえ、何も?」

今、机が変な落としたわね・・・
23: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 21:17:00.84 ID:ZA642Qfv.net
「まあ、話を戻すと・・・アイドルを目指すのはいいが保険とかは作らないのかって話だ」

「保険・・・?」

「そうだ、別に大学を行っていてもアイドル活動はできるしフリーターをやりながらもできるだろ?私が聞きたいのはそういうことだ」

「・・・一応、バイトをしながら事務所に入って活動をするつもりです」

「大学に行く気はないのか?別に有名大学じゃなくても高卒と大卒じゃ全然違うぞ」

「・・・親にあまり負担はかけたくはないので」

「奨学金を使うという手もある・・・まあ、強制はしないがな」

「・・・・・・」
24: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 21:24:37.64 ID:ZA642Qfv.net
「別にアイドルになることを否定しない、そうやって夢を追い続けてかなえているやつも知ってるからな。ただ、同時に失敗してるやつもたくさん見てる。そういうときのために保険がないと心配でな。」

私は・・・


「なあ、矢澤。昔からの夢だからってずっと思い続けるのはいいことだとは思う。けど、そのせいで視野が狭くなって足りはしないか?


矢澤は本当にアイドルになりたいのか?」









「・・・・・・すいません、少し考えさせてください」
25: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 21:33:40.41 ID:ZA642Qfv.net
何でさっき、即答できなかったのか。

「心配してくれてありがとうございます。でも、私は本当にアイドルになりたいのでこのままで行きたいと思います」

とスパッと言ってしまえばよかったのだ。そのせいで少し先生も心配してたじゃないか。


さっきの発言を悔やみながら屋上へのドアが開く。
26: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 21:49:44.58 ID:ZA642Qfv.net
「あっ、にこちゃん来たわね」
と気付いたのは真姫だ。

「先生に呼び出されたみたいだけど何かあったの?」
と聞いたのは花陽。

「どうせ、テストのことで怒られてたんだにゃ~」
と話すのは凛。

「失礼ね、進路のことでちょっと話してきただけよ」

まあ、私も進級のことかと思ってたんだけど・・・

「まあ、にこちゃんはアイドル一直線だもんね!」
と私の代わりに元気よく答えるのは穂乃果だ。

「・・・・・・ええ、そうね」

さっきの会話のせいか、少し言葉が濁ってしまう。
27: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 22:06:19.81 ID:ZA642Qfv.net
「?」

少しみんなが違和感を感じてるような顔をしてると

「さあ、全員集まりましたし練習再開しますよ」

いいタイミングで海未が練習を再開を知らせる。少し助かった気分。

「日曜のライブまで後もう少し、頑張って行きましょう」

そう、日曜にはライブもある。
他校のスクールアイドルに声をかけ、音ノ木坂の講堂を使いライブをすることになっている。
そして、講堂を使わせてもらえたからとμ’sはトリを勤めることになった。

A-RIZEはいないけど、それでも有名なグループも数組いる。そんな中でトリの私たちが無様な真似を見せるわけには行かない。頑張らなくっちゃ。
28: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 22:24:47.10 ID:ZA642Qfv.net
残り日数も少ないので曲をかけて海未以外でのリハーサル、海未に見てもらいフォーメーションやステップが乱れてないか確認してもらう。次に海未が入り絵里に見てもらい、その後全員でカメラで撮りながら・・・と確認していく。

「ワンツーワンツー・・・ストップ!・・・・にこ」

絵里が曲を止める

「あれ、私ミスなかったと思うんだけど・・・」

まあ、気付かないところを見てもらうための練習だけど上手く言ったときはなんとなく判るものなのだ

「ええ、フォーメーションはステップは問題ないわ。
けど・・・・笑顔忘れてるわよ、にこ」
29: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 22:29:57.69 ID:ZA642Qfv.net
えっ・・・・・?

思わず顔を触ってしまう。

「にこちゃんが笑顔忘れるなんて珍しいね」

「ダメやで、アイドルが笑顔忘れてるなんて」

「そ、そうね・・・あはは」





何か妙な違和感を感じながら、その日の練習は終わるのだった。
30: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 22:34:54.09 ID:ZA642Qfv.net
2,5
眼を瞑るとまた同じ公園だった。

夢というものは日を跨いで続きを見ることがあるらしいがそれがそうなのだろうか

「にこは将来何になりたいんだ?」

「にこはね、アイドルになるの!!」

ああ、こんなに小さいときから私はアイドルを目指していたのか

「ようし、じゃあ練習だ!!自己紹介してください!!」

「はい!!矢澤にこ、ろくさいです!!将来の夢はアイドルになることです!!」

「よく言えました!!」

そう言って私の頭をなでてくれた

「えへへ」

パパの手はとても暖かくて嬉しくなってくる。
31: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 22:37:11.85 ID:ZA642Qfv.net
「それじゃあ、そろそろ帰ろうか」

「うん!」

時刻は夕方、もう変える時間になって私は遊んでいたボールを拾い・・・・・










ボール?
32: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 22:38:24.56 ID:ZA642Qfv.net
公園?







夕方?







六歳?





まさかこの夢って・・・・
33: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 22:41:40.75 ID:ZA642Qfv.net
「あっ」

急な風で子供用のボールはいとも簡単に転がっていく。

私はそのボールを追いかけて駆け出す。


その先は道路だった。




「にこ!!!」




パパの声が聞こえたので振り向くと目の前に車が見えた。






















そして、目の前が真っ暗になった。 👀
41: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 18:26:56.35 ID:5W38dakw.net
3
「う~ん、ここじゃないのかしら・・・」

次の日、私は自分の部屋で探し物をしていた。

練習中、靴紐が切れてしまい家に帰った後こうして部屋で替えの紐を捜している。

「え~、ここじゃないの?」

整理整頓はしているほうなので小物でも探すのは簡単だと思っていたけれど、普段使わないものとなるとなかなか見つからない。
42: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 21:58:26.94 ID:5W38dakw.net
飛び出した私を庇って、パパは車に引かれてしまった。


私はそのときのことをあまり覚えていない。
ショックで曖昧になっているのだろう。

けど、必ず憶えている。


だって、夢で見たから。


あの夢は事故が起きた日を再現した夢だ。

目の前が真っ暗になったのはパパが目の前に現れて庇ってくれったから

あの後、パパに何かを言われたはずだった。

私にはそれが思い出せない。
43: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 22:03:15.70 ID:5W38dakw.net
ふいに写真の一枚がアルバムから出てしまい、落ちていく。

「えっ!?・・・・あっちゃあ・・・」

不幸なことに壁側のベッドの下に落ちてしまった。

私のベッドは下側が箪笥の代わりになっているので服の分とても重い。

「はぁ、これで大丈夫かしら」

何とかして少しだけずらす。後は何か棒状のもので掴んで・・・

「あれ・・・・もしかして靴紐?」

予備の靴紐がこんなところで見つかるなんて・・・・
44: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 22:08:24.90 ID:5W38dakw.net
けど、おかしい。

ベッドの箪笥は床に設置しているので隙間なんてないはずなのに靴紐や写真はベッドの下に見える。
けど、思えば箪笥が思っていたよりスペースが狭いなと思っていた記憶が・・・

「まさか・・・」

ベッドの下にある箪笥を全て引き出す。

引き出しはベッドの幅ほど大きくなく、引き出しを取り出すと後ろに空間が見えた。

「何年間も過ごしてきて気付かなかったわ・・・」

ベッドの下に空間あったのね・・・箪笥でなくなってると思ってたわ。
だったらこっちから取ったほうが楽・・・・



「何あの箱・・・」
45: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 22:16:07.17 ID:5W38dakw.net
ベッドの下に空いたの空間にぽつんと箱が置かれていた。全く記憶がないんだけど・・・

「よいしょ・・・っと」

何とかして、写真と靴紐、そして箱を取り出した。

「これ・・・靴箱?」

ほこりをかぶっているその箱は靴箱に見える。
しかし、箱はとても小さく、自分が小さいときに履いてきた靴の靴箱に見られた。
46: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 22:22:06.51 ID:5W38dakw.net
「全く、宝物でも隠してたのかしら・・・よっと」

私はその靴箱を開ける。












「・・・・・・・・・・・・・え?」



中に入っていたのは赤い赤い靴だった。
47: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 22:25:11.72 ID:5W38dakw.net
ただし、その赤は綺麗な赤とはとても言えなくて























血に塗れたまま何年も経ち寂れているどす黒い赤色だった。




そのショッキングな映像に私は意識を手放した。 👀
50: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 00:25:28.90 ID:CIJsYK+Q.net
3.5
どん


と大きな音がした。

小さな私はわけも判らず立ち尽くす。

目の前にはパパが倒れていた。

「パパ!!」

私はパパの元へ一目散に駆けつける。

「パパ!!パパ!!ねえ、返事してよ!!」

必死にパパを呼びかける。
51: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 00:40:07.86 ID:CIJsYK+Q.net
「に、にこか・・・・ぶ、無事で何よりだ・・・・」

「ダメ、パパ、死んじゃ嫌だよ!!!」

私は泣きじゃくりながら必死に呼びかける。


そして


「にこ」












ぬちゃり
52: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 00:44:11.03 ID:CIJsYK+Q.net
ぬめついた音がした


それは、パパの血塗れな手だと認識するのはパパが私の顔に触れた時だった。


ぐちょり







ねちょり





グロテスクな音が響く


パパは切り裂いたであろう傷口で顔を血で染め、私を見つめた
53: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 00:46:47.70 ID:CIJsYK+Q.net
ぬちゃ


口を開いた



「にこ・・・・」










「笑って」







ぐちゃ


パパが崩れ落ちた
60: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 15:43:46.16 ID:CIJsYK+Q.net
笑わなきゃ









笑わなきゃ・・・いけない



「はい、そこで合ってます、大至急お願いします!!す、すいません、大丈夫ですか!!?」

病院へ電話していたであろう運転手がこちらへ駆けてくる。

「くそっ・・・意識が・・・・君!!君は大丈夫か?名前はいえるか!!?」
61: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 15:56:45.96 ID:CIJsYK+Q.net
そうだ、アイドルになるんだ




だから





自己紹介をしなきゃ








「矢澤にこ、ろくさいです。将来の夢はアイドルになることです。」



私は笑顔でそう言った。




パパの血が広がって、私の靴を赤く染めた。
62: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 16:04:05.62 ID:CIJsYK+Q.net
赤い靴を履いた女の子はね一生踊り続けるの


そういう「呪い」にかけられたの

4
その日から、私は上手く笑えなくなった。


というより、無理やり作り笑いを作ることしかできなくなっていた。

メンバーに悟られないよう、風邪気味でみんなに移したくないからとマスクで口元を隠して練習をした。
63: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 16:16:19.34 ID:CIJsYK+Q.net
そして、とうとうライブの日になってしまった。


私はトイレでうずくまっている


ふと、指で顔に触れる


ぬちょり


「っ!!」


何年も昔のことなのに鮮明にその感触を思い出す
64: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 16:26:08.35 ID:CIJsYK+Q.net
「う、う”えええぇぇ、げほっけほっ」

たまらず、吐いてしまった。

わかってる。


パパは私を安心させるためにああしたことを


けど、あの血の感触と場面がフラッシュバックする


「笑って」


その言葉に強烈な脅迫にも似た強い想いを感じてしまい上手く笑えない。


私の心は磨耗しきっていた。
65: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 16:35:05.84 ID:CIJsYK+Q.net
そろそろ衣装に着替えないと・・・・

「ことりちゃん、し、締めすぎ・・・」

「ご、ごめん穂乃果ちゃ~ん」

あれ?そっか・・・今回衣装がギリギリで合わせてないんだっけ?

夢のことで全く気が回らなかったわ・・・

「次最後、にこちゃん!!」

「ええ、よろしく」
66: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 16:42:49.38 ID:CIJsYK+Q.net
「よし、採寸はぴったりみたい・・・・あとははい!!靴は合うかな?」

「・・・・・・・・・・・えっ」

思わず声に出してしまった。

だって






そこにあったのは綺麗に真っ赤に染まった靴だったから
67: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 16:46:55.79 ID:CIJsYK+Q.net
「えへへ、似合うと思ったんだけどどうかな?」

「え、ええ・・・サイズもぴったり・・・」


「すごーい、赤い靴だ!!」

「あ、そういえば『赤い靴』なんて童話がありましたよね」

「え~、かよちんそれなあに?」

「赤い靴という話はカーレンという少女が赤い靴に心奪われてしまい、華美なものを禁止とする教会にまで履いてきたり、遂にはその靴を履いて老婦人の世話もせず舞踏会に出かけてしまうのです」

「親不孝な女の子だにゃ」

「すると、足が勝手に踊りだしてしまい、脱ぐことも踊りをやめることもできなくなってしまうのです」

「えー、それじゃあどうするの?」



「・・・足を切断するんです」
68: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 16:53:19.70 ID:CIJsYK+Q.net
「ええ!?そんな子供が読むものでショッキングな・・・」

「本当やで、童話って意外とえげつない話が多いんや」

「うわ~、凛、鳥肌立って来たにゃ」

「それ、赤い靴履いてるにこちゃんの前で話すものではないでしょうが・・・」


「さあ、話はそこらへんにしてそろそろ私たちの番よ、みんな用意して」

「うん!」「ええ!」


みんなが元気よく返事をする・・・・私以外は
70: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 17:03:57.46 ID:CIJsYK+Q.net
そうだ・・・・踊り続けなきゃ






笑わなきゃ






アイドルになって笑顔でいて・・・それで・・・・
71: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 17:08:49.12 ID:CIJsYK+Q.net
-------------------

ライブが始まった

日ごろの練習の成果を出して精一杯に踊る。わたしの作り笑いも今のところも大丈夫なようだ。


けど、私の頭の中ではある想いが駆け巡っていた。

笑顔でいなきゃ








笑顔でいるんだ











笑顔じゃないと












アイドルは笑顔でいなきゃ
72: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 17:11:27.17 ID:CIJsYK+Q.net
何で?








だって、私はアイドルになりたいんだから







アイドルになるのが私の夢だから







本当に?







それはパパの願いじゃないの?










じゃあ、私は?
73: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 17:14:39.94 ID:CIJsYK+Q.net
私の動きが








止まった。



その瞬間、おもいっきり誰かに手を引っ張られた。
80: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 23:36:10.37 ID:CIJsYK+Q.net
赤い靴を履いた少女は足を切断することで呪いから逃れたね

じゃあ

あなたは?

5
「にこっち!!」

私の手を引っ張ったのは希だった。

「と、東條先輩!!」

「フミコちゃんやね、予定通りセトリ変更するから連絡お願い!!」

「はい!!・・・・ヒデコ?予定通り・・・うん・・・お願い!」
81: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 23:40:15.97 ID:CIJsYK+Q.net
「ど、どういうこと・・・?」

わけがわからない

「にこっち最近おかしかったから何かあったら私が舞台袖に引っ張るって打ち合わせしてたんよ」

「衣装替えの時間に思わせるってことです、それで今回ことりも時間かかって・・・・これ着てください、簡単にでも着替えましょう」

「え、えと・・・そうね・・・」

「ただ、問題があるんや。うちらが次に必ずデュエットで出なきゃあかんってこと」

「そうなると・・・乙女式」

「そうや・・・覚えてる、歌詞と振り?」

「え、ええ、大丈夫だと思うわ」

「本当に?」

「え?」



「にこっち・・・・何があったか知らんけど、本当に大丈夫なの?」
82: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 23:55:57.03 ID:CIJsYK+Q.net
「っ・・・・・」


私は


「いざとなったら、今回は休んだほうが」

「そ、それはダメよ!!」

「にこっち?」

「ダメ・・・・そんなのじゃアイドル失格よ・・・私は、私はアイドルにならないと・・・」


にこ







笑って
83: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:08:47.03 ID:bPYh2uX9.net
「ね、ねえ、私今笑えてる?ねえ!?」


「ひぃっ!!」

穂乃果の友達が軽く叫んだ。希は目を丸くさせている。

「そ、そう、出来ていないのね、じゃあこれは!?この顔は!!?」

「にこっち!!」

ぎゅっと、希が私を抱きしめた。

「そんな・・・そんな辛い顔しないで!!ウチは・・・にこっちにそんな顔・・・」

そっか、私そんな酷い顔してるんだ・・・


けど、





「ごめん、希・・・・私、笑い方忘れちゃったみたい」
84: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:11:02.28 ID:bPYh2uX9.net
「にこっち・・・にこっちぃ・・・」



ああ、希が泣いてる。



何とかしないと。




笑わせてあげないと




けど、笑えない私に何が出来るのだろう



こんな時、魔法が使えれば・・・・
85: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:29:59.28 ID:bPYh2uX9.net
「くっそお・・・」

「あなた、にこがいる前で・・・」

「けど、こんなの、あまりに理不尽だ、どうすりゃいいんだこんなの!!」

「あなた!!」

ああ、パパが怒ってる

どうしよう



にこが笑顔だと、パパも笑顔になるんだ







そうだ


だったら・・・・
86: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:34:24.83 ID:bPYh2uX9.net
パパが言ってた





「私の名前を呼ぶと笑顔になる」って





「ねえ、パパ!!」



「にこ・・・・?」










「にっこにこにー」
87: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:35:30.08 ID:bPYh2uX9.net
「・・・・にこ?」

「にっこにこにー」

「希、あなたもほら・・・」

「えっ・・・うん・・・」





「にっこにこにー」
「に、にっこにこにー」


希の口を触る



「ほら、笑った・・・」
88: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:36:35.58 ID:bPYh2uX9.net
これは、笑顔の魔法


みんなが笑顔になれる魔法の呪文なんだ


「は、はは、何やそれ・・・」

涙も流しながらも希が笑う


その笑顔を見て、嬉しくて



造り笑顔じゃない



笑顔に私はなった
89: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:37:48.58 ID:bPYh2uX9.net
そうだ



みんなが笑顔になると、私が笑顔になるから



そしたら、みんな笑顔で嬉しいから



だから、私はアイドルになりたいんだ


パパに言われたからじゃない


私が




私自身が







そう思うからアイドルになりたいんだ
90: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:39:59.68 ID:bPYh2uX9.net
「希、頼みがあるの」

「何?」


「一緒に踊って、みんなを笑顔にしたいから」

「・・・・うん、わかった」


そうやって、希はまたはにかんだ
91: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:42:29.75 ID:bPYh2uX9.net
「このサビが終わったら入ってください!!」


「わかったわ」
「了解や」


キラキラしてるステージ


そこでみんなも私も笑顔になる


「・・・・・・あ」


「どうしたんや?」


「ちょっと待ってね・・・んしょ」
92: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:43:24.48 ID:bPYh2uX9.net
赤い靴を脱いで置いておく


「ごめんね、ことり・・・」


けど、もう呪いは解けたから脱がないと・・・・



「行くわよ、希!!」


「うん!!」
93: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:44:58.48 ID:bPYh2uX9.net
さあ、



みんなを




私を




笑顔にしよう!







「にっこにこにー!!!」


終わり
94: ◆AgaPh2S312 (こんにゃく)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 00:46:48.73 ID:bPYh2uX9.net
読んでいただきありがとうございました。

赤い靴要素はあまり入れられませんでしたね、精進します。
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

『にこ「赤い靴」』へのコメント

コメントの投稿には初回のみDisqusへのアカウント登録が必要です。Disqusの登録、利用方法を参考に登録をお願いします。
表示の不具合、カテゴリーに関する事等はSS!ラブライブ!Disqusチャンネルにてご報告下さい。