【ほのにこ】夕暮れに背を向けながら【SS】

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2: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:51:11.29 ID:FPySbEj/.net
「にこちゃんの事が、好きだよ」

夕日差し込む部室。

赤い頬。

風にそよぐカーテンと、サイドテール。

初めてされた告白は、そんな景色の中だった。

元スレ: 【ほのにこ】夕暮れに背を向けながら【SS】

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3: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:51:38.38 ID:FPySbEj/.net
自分のことは可愛いと思う。

事実、客観的に顔だけ見てもそこらの芸能人を凌駕するくらいには可愛い方だし、コンプレックスである体型もそれなりの需要はある。

かと言って誰かに言い寄られた事は人生で一度も無く、いわゆる「マスコット」のような扱いをされていた。

他人が自分に抱く好意とは、人形や動物を見たときのそれだけだった。

だからこそ、この状況は想定外だ。


にこ「……は?」


ようやく出たのは一言だけ、顔もまさにぽかーんといった表情になる。

目の前には、顔をうっすら赤くしながら微笑えむμ'sのリーダー。
4: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:52:05.15 ID:FPySbEj/.net
穂乃果「だから……好きだよ、にこちゃん」


もう一度、同じことを言われる。


にこ「えーっと……なんで?」


冷静になって聞き返す。


穂乃果「なんでと言われたら……二人きりになって、気持ちを伝えておきたいなーって」


ほら、だって基本みんな揃って行動してるじゃない?言い出せなくて……と穂乃果は続けた。
聞きたいことは、そういうことじゃないんだけど


穂乃果「うん、それだけ……じゃあ帰ろっか」


……は?
5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:52:50.22 ID:FPySbEj/.net
「ちょ、ちょちょちょっと待って」と、バッグを持ち始めた彼女を強引に引き止める。
穂乃果はとても驚いていた。


穂乃果「ん?どうしたの?」

にこ「いや……えっと……それだけ?」

穂乃果「それだけって?」

にこ「いや、あの……普通こういう時って」


付き合って欲しい、とかそういうことを聞きたいのではないの?

しかし彼女は目の前でキョトンとした顔をしてこちらを見つめている。
6: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:53:25.40 ID:FPySbEj/.net
穂乃果「んー、でも今返事聞いてもにこちゃんからOK貰えるとは思ってないから」

にこ「そ、それは……」

穂乃果「でも好きだって事は伝えたかったんだ」


そう言いながら穂乃果はまたはにかみ、こちらに背を向ける

意味が、分からない

私は呆然と、その背中を眺めることしかできなかった
8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:53:51.67 ID:FPySbEj/.net
……………

そんな事があって、昨日は一睡も出来なかった。

弁当作りのためであったり、睡眠不足は美容の天敵であったりということで基本的には早寝早起きをしているのだが、昨日はそんな余裕は無く、穂乃果の事を思い出して悶々としていた。


希「にこっち、顔色が優れんよ?どうしたん?」

なので、希に心配されるのは当然と言えば当然だ。
そんなに顔色が悪いのだろうか……と、鏡を見ると確かに血色が薄い、寝不足とは恐ろしい。

にこ「ちょっと色々あって眠れなくてね……大丈夫よ、迷惑はかけないから」

希「あんま無理したらあかんよ?」

にこ「大丈夫だってば……ちょっと寝るからまたね」

そう言って机に突っ伏する。そういえば最近はあまりこんな風に居眠りとかしてなかったな……

意識は、朝日差し込む教室の中に消えていった。
9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:54:16.55 ID:FPySbEj/.net
夢を見た。

私はステージを覗いてて

彼女は踊っていた

とても一生懸命で

心から感動して

心から妬ましかった

そんな夢。
10: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:54:41.11 ID:FPySbEj/.net
そして

ごん

不可抗力的に訪れた睡眠は、教師が頭に落とした出席簿によって終焉を迎えた。

にこ「っいったぁ!?」

「おい矢澤ぁ、授業始まってたぞー?大丈夫か?」

にこ「あ、はい……すみません」

後頭部がひりひりする。

なにも思いきり叩くことはないじゃないか、そう思いながらしかめっ面をして教科書とノートを開く。
……何も頭に入ってこない
寝ていたから当然といえば当然とだけど、そういう事ではない

穂乃果が私のことを、ねえ……
11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:55:07.94 ID:FPySbEj/.net
接点がないとは言えないけれど、別段必要以上に親しくした覚えもない、二人きりで遊んだこともない。

だからこそ、あの告白には

何故?

という疑問符が浮かぶばかりだ。

接点がないのに、人のことを好きになるもんなんだろうか

一目惚れ、という線もあり得るが、普通はある程度仲良くなって、それからではないんだろうか。

うーん……

分からないことを、あれこれ考える必要なんてない。
私は、答えの出ない問題を、広げた教科書ごと放棄することにした。
12: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:55:30.74 ID:FPySbEj/.net
その日の放課後、練習ではいつも通りだった

いつも通りというのは、穂乃果のことだ

特にこちらに話しかけてることも、ましてや寄ってくることすらない

……これではまるで


にこ「私が穂乃果のこと、気にしてるみたいじゃない……」

穂乃果「穂乃果がどうかした?」

にこ「うわっ……いきなり話しかけてこないでよ」

穂乃果「にこちゃんが穂乃果のこと先に話してたんだよ?」

にこ「う、まあそうだけど……」

穂乃果「もしかして、この前のこと気にしてる?」


穂乃果がこっそり耳元で囁いてくる
13: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:56:14.05 ID:FPySbEj/.net
私がなにも言えず口をぱくぱくさせていると


絵里「あ、いたいた……穂乃果、ちょっと話があるんだけど……どうかしたの?」

穂乃果「ううん、なんでも……なになに?あ、また後でね、にこちゃん」


ひらひらと手を振って、穂乃果は去っていった

「好きだよ?」

その一言が、頭の中でヘビーローテーションしている。

なんで、私なんだろう……

思考は止まらず、それでも答えなんて出ず、その日は練習に身が入らなかった。
14: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:56:37.67 ID:FPySbEj/.net
瞳は直視できないほどまっすぐなのに
言葉には一切の迷いがなかったのに
私は、そんな穂乃果のことを


にこ「……気味が悪い」

絵里「なにが?」

にこ「え?」

絵里「気味が悪いって……何かあった?」


まさか、口に出ていたなんて
私は苦し紛れに


にこ「い……いや、昨日やってたテレビ番組の話よ」

絵里「怖い話なら良してよ?私苦手なのよ」


苦笑いする絵里に、私も愛想笑いで返す
15: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:57:53.05 ID:FPySbEj/.net
気味が悪い

ある意味それは間違っていないのかもしれない

呆れるほど愚直なのに、その感情が歪んでいるのではないかと、そう思ってしまった

まっすぐすぎて、かえって捻れて見えてしまう

嫌いではない、良い奴だとは思ってるし、やると決めたことにはまっすぐな姿勢も見ていて気持ちが良い

だけど、だからこそ、あの曇りのない瞳が少しだけ、怖くなった
16: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:58:20.77 ID:FPySbEj/.net
……………


穂乃果「あ」

にこ「げ……」


放課後、部室に顔を出すと、一番会いたくない相手と遭遇してしまった
あからさまに嫌そうな顔をした私に対して、その表情はいつもと変わらなかった


穂乃果「酷いなあ、なにもそんな反応することないじゃん」

にこ「ご、ごめん……」


少しの間、沈黙がやってきた
バツが悪そうにそこにいる私に反して、彼女はなぜか笑っていた
さすがに空気に耐えられなくなり、その静寂を私から破ることにした
17: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:58:46.82 ID:FPySbEj/.net
にこ「あ、あのさ……」

穂乃果「ん?」

にこ「あんたさ……私のどこが好きなの?」

穂乃果は一瞬だけぽかんとした顔になり、笑いながら「なんだ、そんなこと」と話し始めた


穂乃果「ないよ?」

にこ「……は?」

穂乃果「だから、ないよ」

にこ「……ないって、どういうこと?」
18: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:59:14.38 ID:FPySbEj/.net
穂乃果はこちらをまっすぐ見つめながら


穂乃果「人を好きになるのに理由なんてないって思わない?」

にこ「いや、まあ……それはそうかもしれないけど」


そんな答えでは納得がいかない。

けれど、穂乃果は穂乃果で「答えなんてそれしか持ってない」と言いそうな顔をしている。


穂乃果「穂乃果はにこちゃんが好き、理由なんてそれだけで良いんだよ」


それから、穂乃果は一言も発さなかった。


相変わらず気味の悪さを感じつつも、それでもそれ以上は聞けなかったので、私もPCに向かうことにした。
19: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 18:59:49.17 ID:FPySbEj/.net
それから数日経って、私と穂乃果の関係は変わらない
変わらないというか、穂乃果が何もしてこない

まさか、本当に好きだって事を伝えたかったのだろうか?
穂乃果のことだし、あるかもしれない
けれど、やはり納得がいかない


希「なんかにこっち、難しい顔しとるね」

にこ「……そう?……かも」

希「なにか悩みがあるならいつでも言ってな?」


なんも解決しないと思うけど
なんて、けらけらと希が笑いかけるので、少しだけ救われる

いやー、穂乃果が私に告白してきたんだけど、なんか納得いかないのよねー。

なんて、口が裂けても言えないことだけれど
20: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:01:14.52 ID:0xCvzC+K.net
にこ「……まあちょっと悩み事ね、解決できる問題でもないけど」

希「何やら難しそうな話やね」


私につられて希もうーんうーんと頭を抱える


にこ「あんたが何を悩む必要があるのよ」


今度は私が、けたけた笑う


希「なんか力になれないかなーと」

にこ「これは私の問題だし、大丈夫よ」

希「んー……でも、あんま考えすぎたらあかんよ?」


はいはいあんがと

それだけ返したけれど、中々頭から離れてくれないのも事実だった
穂乃果のせいではないけれど……いや、穂乃果のせいか

本心なんだろうけど、本心が見えないのは、何故なんだろう
22: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:01:49.20 ID:0xCvzC+K.net
……………

やっぱり、ちゃんと話をしてみよう
という事で、放課後部活がない日に、穂乃果を呼び出すことにした


穂乃果「話ってなに?」

にこ「……あんた、本当に私の事好きなの?」

穂乃果「またその話?好きに決まってるじゃん」

にこ「それにしては、なんもしてこないわね」


すると、穂乃果がこちらに近寄ってくる
顔が、目の前まで差し掛かるところで止まりながら、


穂乃果「なんかしたいって言ったら、させてくれるの?」

にこ「そ、それは……」


「冗談だよ」と穂乃果が後ろに向かって小さく跳ねる
23: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:02:16.85 ID:0xCvzC+K.net
穂乃果「そういうのは、お互い合意の上でやる事じゃない?」

にこ「まあ、そうね……」


確かに、今のこいつになんかされそうになったら、それこそμ'sをやめてしまいそうだ
けれど、疑問はそれだけじゃない


にこ「じゃあ、好きになってほしい、とか考えないの?今のままだと単に穂乃果は私に告白してきただけよ?」

穂乃果「……あ」


虚を突かれたような顔になる穂乃果を見て、変に勘ぐっていた自分に呆れてしまう
つまり、なにも考えてなかったんだ。こいつは
24: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:02:46.48 ID:0xCvzC+K.net
にこ「はあ……あんた本当にバカよね」

穂乃果「う……まあバカだけど……でも好きになってほしい、とは考えてないかな」

にこ「へ?」


前にも言ったでしょ?と穂乃果は続ける


穂乃果「気持ちを伝えたかっただけだよ、それ以上の理由なんてない」

にこ「……それでいいの?」

穂乃果「……うん」


はい、この話はおしまい
と、穂乃果は荷物をまとめ出す
夕陽が消えそうな部室の中、その背中は物悲しげに私の事を拒絶していることを感じた
25: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:03:25.75 ID:0xCvzC+K.net
……………

にこ「と、いう事で穂乃果について、最近なんか感じない?」

海未「なにか、といいますと?」


そんなわけで、本人から聞けないなら近い人から
幼馴染ならいつも一緒だから、と思い二人に相談に乗ってもらっている


にこ「例えば様子がおかしいとか、なんでもいいわ」

ことり「うーん……そんな風にはなってないかなあ」

海未「いつも通りですね」

にこ「……そう」
26: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:04:03.03 ID:0xCvzC+K.net
これはあまり役には立たなそうだ、と肩を落としそうになったとき、口を開いたのはことりだ


ことり「あ、でもなんか最近ぼーっとしてる事が多いかも」

にこ「……いつもの事じゃないの?」

ことり「うーん、なんていうのかな……ぼけーっとしてるってより、何か……そう、誰かの事を考えてるような」

海未「それなら授業中とか、良く見かけますね」


……私の事でも考えてるんだろうか
穂乃果の事だ、その可能性は少なそう
27: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:04:57.49 ID:0xCvzC+K.net
ことり「でもこれくらいかなあ」

海未「力になれずすみません」

にこ「良いのよ、付き合ってくれてありがとう」


ますます意味が分からなくなってしまった

穂乃果のことも、私のことも

何もかも、分からなくなっていた
28: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:05:43.36 ID:0xCvzC+K.net
気持ちが知りたいのに、その気持ちが分からない
なんでこんなあいつに執心してるのかも分からない

あいつは「気持ちを伝えたいだけ」って言っていたじゃないか

それでおしまい、これで良いじゃないか

何も私があれこれ考える必要なんて、ない

はずなのに

頭から離れてくれないのは、なぜだろうか


……まさか、そんなこと
29: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:07:00.64 ID:0xCvzC+K.net
疑問を確信に変えるため、もう一度あいつと会うことにした
穂乃果は少し不機嫌そうだった


穂乃果「もー、穂乃果だって暇じゃないんだよ?」

にこ「悪いわね、本当」


と、軽く謝ると「まー良いけどさあ」と後手を組みながら


穂乃果「あ、でも会ってくれるのはもちろん嬉しいよ」

にこ「……そう」
30: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:07:39.95 ID:0xCvzC+K.net
穂乃果を席に座るように促すと、向かいでも隣でもない、はす向かいに座り始めた


穂乃果「……それで、話って何?」

にこ「やっぱわかんないのよね」

穂乃果「分からないって……こっちの気持ちは伝えてるよ?」

にこ「いや、まあ……それも分からないんだけど……」


そう呟きながら、穂乃果をちらりと眺める


何言ってるの?


と言わんばかりの顔をしている
当たり前だ。自分ですら何を言ってるのか分からないんだから
31: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:08:04.32 ID:0xCvzC+K.net
にこ「……なんであんたに、こんな悩まされなきゃなんないのかなーって」

穂乃果「……面倒なら、別に気にしなくたって」

にこ「悪いわね、これは私個人の問題だから」


穂乃果の制止を振り切る
そうだ、別に穂乃果の気持ちはどうだっていい
私が納得できないから、今ここでこうしているんだから


穂乃果「にこちゃん個人の問題?」

にこ「そ、なんでか分かんないけどあんたのことばっか考えてる」

穂乃果「そう、なんだ」
32: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:08:47.86 ID:0xCvzC+K.net
穂乃果が少しだけ目をそらす
私はまっすぐに見据えながら続ける


にこ「あんたに会えばなんか分かるかもしれないと思ったけど、成果なしね」


穂乃果は何も答えない


にこ「……穂乃果?」

穂乃果「あ、ううんごめんなんでもない」

にこ「……変なの」
33: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:09:19.76 ID:0xCvzC+K.net
穂乃果「話はそれだけ?」

にこ「ん、まあそうね」

穂乃果「……じゃあ、帰ろっか」

にこ「……ん」


……やっぱり、何かがおかしい


穂乃果「にこちゃん?」

にこ「……なんでもない、行きましょ」


別に何があったわけでもない
帰ろうと言われただけだ
それだけだ
それだけ、なのに

この胸のざわつきは、一体なんだって言うんだろう
34: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:10:11.92 ID:0xCvzC+K.net
様子がおかしい
おかしいのは穂乃果の方じゃない、私だ
一緒に帰っているけれど、どこか落ち着かない

隣に穂乃果がいて、何も話さず歩いているだけだ
本当に、ただそれだけなのに


にこ「なんか、変な感じ……」

穂乃果「何が?」

にこ「いや、なんでも」


穂乃果に聞かれてしまっていたようで、慌てて口を閉ざす
穂乃果はそれ以上は何も聞いてこない

夕暮れを背に、二人何も言わず黙って並んで

なんだかそれを、居心地良く感じてる私がいた
35: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:10:56.10 ID:0xCvzC+K.net
なんだか、さっきから気持ちが浮ついている

浮ついているとうのは、楽しみなことがあるっていう意味ではない

なんというか、心がふわっとしている
特に、変わりはないはずなのに


穂乃果「それにしてもこうしてにこちゃんと一緒に帰れるなんて夢みたいだなあ」


告白したかいがあったかな?なんて穂乃果がはにかんで笑う


にこ「楽しい?」

穂乃果「ん、楽しい」


なら良かったわ
そっぽを向いて、わたしも少しにやっとする

ぽつり。ぽつり。
二人で夕暮れを背に、長い影を落とす

そんな気持ちの良い時間は、不意に終わりを迎える
36: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:12:26.68 ID:0xCvzC+K.net
穂乃果「じゃ、穂乃果こっちだから」

にこ「あ……ええ」


そう言って、穂乃果は私の帰路とは逆に向かっていく
それを見送りながら

ざわ

少しだけ、胸がざわつく


……まただ、変なの


それからは何も考えず、まっすぐ家へと向かう

この時の私は、自分が穂乃果に抱いている感情の正体を、良く知らなかった
37: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:13:22.11 ID:0xCvzC+K.net
絵里「なんか、あなた最近穂乃果のことばっか見てない?」

にこ「え……そう、かな」


絵里に言われて、初めて自覚する
確かに、ここ最近なんとなく穂乃果のことを眺めている、ような気がする

勿論、告白されてから気にしてるという意味もある

でも、それがどうしたのだろう


絵里「あ、もしかして……」

にこ「なによ」


絵里が厭らしい笑みを浮かべるので、どことなく嫌な予感がした
38: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:13:58.10 ID:0xCvzC+K.net
絵里「穂乃果のこと、好きだったりするのかしら?」

にこ「……は?」

絵里「だってそうじゃない?一人のことずっと見てて、その人のことしか考えられないって、まさに好きっていうことじゃない?」

にこ「それは……ない、わね」


なぜなら

この感情は絵里のいうそれではない

と私が勝手に思っているから
それだけならこの話はおしまいね、と早々に切り上げ、私はそそくさとその場から逃げるように立ち去った

まだ、知らない
39: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:14:20.31 ID:0xCvzC+K.net
半分あてもなく外に出たけど、一つだけ、思うことがある

会いたい
顔が見たい
それから……それから?

それからのことなんて、考えていなかった
ひたすら、その顔が見たかった

好き?

それはありえない。私は穂乃果に対してそんな感情を抱いてはいない
この感情に名前を付けるとすれば、それは


にこ「……執着、してるのかしらね」


気がつかないうちに、私は彼女に執着している
依存とも言っていいだろう

一緒にいるだけで心が安らぐ、離れていると会いたくなる

これを、執着だと、依存だと言わないでなんと言うのだろう
40: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:14:54.67 ID:0xCvzC+K.net
結局行くあてもなく、部室にたどり着いてしまった
まあ、昼を過ごすならここがいいか……とその扉を開ける

すると、そこには


穂乃果「あ、にこちゃん」


どくん
胸が跳ね上がったことを感じる


にこ「な、なんでここにあんたがいるのよ」

穂乃果「んー、なんとなく?」


なんとなくって何よ
なんとなくはなんとなくだよー
41: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:16:08.36 ID:0xCvzC+K.net
ふう、と穂乃果が一息ついたあと、こちらを見据える


穂乃果「最近、なんか良く会うね」

にこ「そうね」

穂乃果「ちょっと嬉しいかも」

にこ「……そう」


嬉しい、という単語に反応してしまい、顔が綻ぶ
合わせて、頬が紅潮しているのを感じた

たったそれだけのことなのに、私は単純だ

私だって、嬉しかったから
42: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:16:51.27 ID:0xCvzC+K.net
穂乃果「にこちゃんはどうしてここに?」

にこ「えーっと……なんとなく、かしら」

穂乃果「穂乃果と同じじゃん」


穂乃果が苦笑いをする


穂乃果「……それにしても、放課後はみんな一緒でワイワイやってるのに、お昼は逆にすごく静かだね」

にこ「結構この空気、好きなのよね」

穂乃果「なんかそれ、分かるかも」


私が笑うのに合わせて穂乃果もほんのりと笑顔になった
43: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:17:48.50 ID:0xCvzC+K.net
音は、窓の向こう、廊下の外から聞こえる喧騒くらい

まるで、世界から切り取られたような、そんなことさえ思えるこの場所が、私は前から気に入っていた

向こうで笑うあいつも、同じように気に入ってくれている

それがうれしくて、つい頬が緩む

それでもこうして下らない話に花を咲かせていたら、終わりを告げる鐘が鳴る


穂乃果「あ、もう戻らないと」

にこ「……そう、ね」


どこか胸がちりちりと痛む
44: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:18:14.98 ID:0xCvzC+K.net
穂乃果「えーと、にこちゃん?」

にこ「ん?」


穂乃果がすれ違いざま、耳元で


穂乃果「……好きだよ」

にこ「ん」


それから穂乃果はこちらを振り返らず、先へ行ってしまった
耳が熱にうなされているような気がする

やっぱり、私は


にこ「……依存してるわね」


と、そう思っておくことにした
45: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:19:05.85 ID:0xCvzC+K.net
……………


気がついたら彼女を目で追っていた

その不思議な行動から、目があった時の胸の高鳴りから、その感情は「恋なんだな」って、そう思うことにしていた

……でも、なぜだろう

意を決して告白しても、胸の高鳴りはやってこなかった

手で届く距離にいるのに、触れようと思えば触れられるのに、それをしようとは思えない

今はこの感情が本当に「恋」と、そう呼べるのか確信が持てない

遠くで、離れて見ていたから、輝いて見えたのかな

星は地上から眺めた方が綺麗なように
近づいたせいで、その輝きが感じられなくなったのかな

ただ、距離を取っていた方が良かったのかな
46: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:19:32.77 ID:0xCvzC+K.net
好きだよ


なんて言葉にしても、実感が湧かない
自分のことなのに、他人事みたいだ

会いたいのに、会うと気持ちが薄れていく
近づきたいのに、近づくと「好き」が離れていく

まるで、呪われてるみたいだ

分からないって言われても、私が分からないんだ


……にこちゃんに、悪いことしてるのかな


最近、にこちゃんの気持ちが、私に向いてきてるように感じる
それに、応えられない自分もいる
47: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:22:09.64 ID:+sPeCW/K.net
……………


耳元に、まだその音が残っている


好きだよ


頭の中で、前みたいにぐるぐると繰り返し流れている

けれど、以前とは違って、どこか心地良い気がする
良く分からないけど、多分穂乃果に対する感情が変化したからだと、そう思う

けれど、それに合わせて不思議だも思うのは、穂乃果だ
あからさまに、私を拒絶している
行動にはしてないけど、否定の感情を見せている気がする


……なんで?


穂乃果は好きな人と一緒にいられる
私は自らの独占欲を満たすことができる

まさにWin-Winの関係じゃないか

突如訪れた胸騒ぎは、その日いつまで経っても治ってはくれなかった
48: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:22:40.78 ID:+sPeCW/K.net
……………


最近、視線を感じる
と言っても、誰から見られてるのはすぐに分かったけれど

穂乃果だ

最近、穂乃果からの視線が増えている、気がする

目が合うことはない
というか、目を合わせようとするとすぐに逸らされる


にこ「そういうのが、気味悪いんだっての……」

希「何が?」

にこ「ん、なんでも」


希は何やら心配そうだ
49: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:23:08.51 ID:+sPeCW/K.net
希「ストーカーとか?」

にこ「近いけど、そういうのじゃないわよ」

希「どういうこと、それ……?」


まあ、心配されるほどのことはないわよ
そう言って、窓の外を眺める

空が、少しだけ曇っていた
50: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:23:39.79 ID:+sPeCW/K.net
最近、またにこちゃんのことを遠くから見ている
遠くから見ていると、また「好き」って気持ちを感じられると思うから

……まあ、相変わらず気味悪がられてるけど

目を合わせることはない
目を合わせると、また気持ちが離れて行きそうだから


穂乃果「……なんか、空回ってるなあ」

ことり「……どうしたの?」

穂乃果「ん、なんでも」


ことりちゃんが、心配そうに私を見つめてくる


ことり「なんかあったら言ってね?」

穂乃果「……ありがと」


窓の外を、ちらりと眺める

空が、少しだけ曇っていた
51: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:24:12.35 ID:+sPeCW/K.net
にこ「……あ」

穂乃果「……げ」


反応が以前と真逆だ

私は穂乃果に会えて少し気分が高揚している
反対に穂乃果は少し嫌そうな顔をしていた


にこ「げ、ってなによ」

穂乃果「いやあ、あはは……」


私はそう毒づいてからPCのある机へ向かい、穂乃果は苦笑いしたまま固まってしまった

相手するのも何か違和感があるので、気にせずPCに向かうことにした
52: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:24:47.37 ID:+sPeCW/K.net
穂乃果「……」

にこ「……」


……この空気は、少し耐え難い


5分もしないうちに意志を曲げ、穂乃果の方へ椅子を回す
穂乃果は灰色の窓の外を、だだぼんやり眺めているだけだった
私は頭を掻きながら


にこ「……そういえばさあ」

穂乃果「んー?」


穂乃果はこちらを見ようとしない
私は大きく「はー……」とため息をつきながら
53: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:25:28.48 ID:+sPeCW/K.net
にこ「あんた、最近私のことジロジロ見過ぎじゃない?」

穂乃果「……バレてた?」

にこ「不自然すぎんのよ、あんたは」


そっかあ……バレてたかあ
と、穂乃果も同じように頭を掻く


穂乃果「好きだから、じゃダメかな?」

にこ「それ、答えになりきれてない」
54: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:26:04.68 ID:+sPeCW/K.net
ダメかぁ……と穂乃果が少し項垂れる
相変わらず、その顔は窓の外に向いていた


穂乃果「……分かんなくなっちゃったんだよね」

にこ「なにが?」

穂乃果「自分の気持ちってやつ?」

にこ「どういうこと?」


私の一言に返答するように、穂乃果がようやくこちらに振り返る
55: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:26:51.95 ID:+sPeCW/K.net
穂乃果「この気持ちが恋なのか、はたまた別の何かなのか……良く、わかんなくなっちゃった」

にこ「……私にも分かんないわよ」


知ってるよー、と穂乃果は笑う
けれど、その顔は苦しそうに歪んでいた


穂乃果「遠くから見てた時は、こんな感じじゃなかったんだけどね」

にこ「近くにいるから、気持ちが離れていったの?」

穂乃果「そうかもしれないなぁって話」


そうつぶやいて、穂乃果はまた遠くを見るような目をする
56: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:27:50.14 ID:+sPeCW/K.net
好きだけど、好きじゃない

言葉にすると簡単な気もするけど、まったく意味が分からない


穂乃果「……あ、少し晴れてきた」


穂乃果の言葉に合わせて外を見ると、確かに太陽が辛そうに顔を覗かせている

その様子が、まるで


にこ「今のあんたみたい」

穂乃果「へ?」


穂乃果がきょとんとしている
私は口に出ていたことに焦って「いや、その」とたじろぎながら
57: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:28:16.42 ID:+sPeCW/K.net
にこ「ほら、今のあんたの顔。空模様にそっくり」

穂乃果「中々ロマンチックなこと言うね、にこちゃん」


それほどでも、と返すと穂乃果はようやく少し晴れたような笑顔を取り戻した


にこ「……練習、なかったわよね」

穂乃果「多分……えへへ、忘れちゃった」

にこ「リーダーなんだし覚えておきなさいよ」

穂乃果「ごめんごめん」

にこ「ま、長居しても仕方ないし、雨も降らなそうだし帰りましょう」


そう言って、私は荷物をまとめ出す
58: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:28:44.23 ID:+sPeCW/K.net
穂乃果「……なにも思わないの?」

にこ「なにが?」

穂乃果「勝手に告白して、振り回した挙句『よくわからない』って言っちゃったけど……」

にこ「……あんたに振り回されるのなんて、今に始まった話じゃないでしょ」


ほら、帰るわよ。と彼女を急かす
ん、とだけ答えて穂乃果もようやく荷物をまとめ出す


穂乃果「じゃあ、帰ろっか」


その瞬間、本当に一瞬の出来事だった
窓の外から、綺麗な夕陽が差し込んで、部室を、穂乃果の事を明るく照らした
一瞬だったけれど、鮮明に焼き付いている


穂乃果「……にこちゃん?」

にこ「あ、ああごめん……いきましょう」


……これは、変だ
以前そうだと決めつけた、依存や執着とは違う何かが、私の中に巣食い始めたような気がして、胸が跳ねた
59: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:29:22.72 ID:+sPeCW/K.net
……やっぱり、何かおかしい
穂乃果に対する感情が、変化している


穂乃果「でさあー……その時先生が……」


そんな私の心の内とは裏腹に、穂乃果に関してはさっきの元気のなさがどこへやら、といった感じだ


穂乃果「ねー聞いてる?」

にこ「え、あ……ごめんちょっと考え事してて」

穂乃果「もー、にこちゃんしっかりしてよね」


しかめっ面をしながらも、穂乃果は元気そうだ
それにしても、一体私はどうしたんだろう
60: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:29:58.26 ID:+sPeCW/K.net
隣で歩いてるだけ、それだけで胸が弾んだように脈打っている
息も苦しいし、きっと体調が悪いんだ
そう思うことにした矢先


穂乃果「じゃ、穂乃果こっちだから」

にこ「あ、ええ……」


寂しさが、一気に押し寄せてきた
行かないで、もう少しだけいてほしい

以前とは違い、そんなことを口走りたくなってしまったけれど、そのまま見送り、私も踵を返した
61: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:30:37.72 ID:+sPeCW/K.net
穂乃果と別れ、一人で影を落としながら、考え事をした

なんでこんな、今更こんな気持ちになるのか

頑固な私はそれを理解しようとしない

会いたくなって
触れたくなって
離れるのが嫌で
一緒にいると、身体が熱くなって

考えても考えても、答えは一つしかでてこない

単純明快、かつ理解しがたいその感情は


にこ「……そういうこと、なのよね」


夕陽を背にしたまま、私は空をただ眺めていた


穂乃果のことが、好きだ


そんな感情を胸に抱えて
62: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:31:27.05 ID:+sPeCW/K.net
……………


言葉にした後、気持ちがくっきりと形付いて行くのを感じた

私は、穂乃果のことが好きだ

今まで依存だの執着だの言葉にしてはいたけれど、きっと本当の気持ちから目を背けるために使ってた、言い訳みたいなものだったんだろう

とはいえ……


にこ「……はあ」

海未「どうかしましたか?」

にこ「ああ海未……いや、あんたの幼馴染って変よね」

海未「穂乃果ですか?……まさかにこに何か!」

にこ「いやいや別に穂乃果が悪いわけじゃないから」


と、今にも穂乃果へ説教しに行きそうな海未を慌てて制止する
63: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:31:53.85 ID:+sPeCW/K.net
……いやまあ、穂乃果が悪いと言われれば否定はできないけど

思えば告白されてから、ずっと穂乃果に振り回されているような気がする
変な感情を持ったり、告白されたと思ったら向こうから離れていったり……好きになったり


にこ「まあ、あの子って悪気があるわけじゃないのよね」

海未「いつも勢いで、理由なんてあまりありませんけどね」


海未が肩をすくめる


にこ「そうかもしれないわね」


と、合わせて私も肩を竦めて苦笑する
64: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:32:17.93 ID:+sPeCW/K.net
そう、あいつには理由なんてないんだ
馬鹿正直にまっすぐで、後先なんて考えないで、皆を振り回して
いつもの事じゃないか、今に始まった訳じゃない

そんなところに、惹かれているんじゃないか


海未「それにしても、なぜ穂乃果の話を?」

にこ「んー、まあちょっと、ね」

海未「はあ……」


好きなのよねー
なんて、言える訳ないじゃないか
ぽかーんとしている海未には申し訳ないが、こんなこと、さすがに相談できるもんじゃない

空は、少し青みがかっていて澄んでいた
65: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:36:35.30 ID:+sPeCW/K.net
穂乃果「……やほ」

にこ「……ん」


もう何回めだろう、こうして二人で会うのは
もはや運命なんじゃないかと思ってしまう
そして


穂乃果「……どうしたの?空ばっか見て」

にこ「……別に」


自分でも自覚している

……上手く、目が合わせられない

好きってこんな感じだったのか、自分のことなのに、言うことを聞いてくれない


穂乃果「もー、ちょっとにこちゃん?」

にこ「な、なんでもないから……ごめん」
66: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:38:38.19 ID:+sPeCW/K.net
深呼吸をして、穂乃果の方を振り向く
……いつもと変わらない、はずなのに


にこ「……あんたって、結構可愛い顔してるわね」

穂乃果「もー、やだなにー?」

にこ「や、別に」


そう、穂乃果はいつもと変わらない
変わったのは、穂乃果を見る私の目の方だ

なんとも思ってなかったのに、なんだかやけに可愛く見えてくる

これも、好きってことを自覚した影響なんだろうか
67: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:39:29.13 ID:+sPeCW/K.net
穂乃果「……珍しいね、にこちゃんがそんなこと言うなんて」

にこ「まあいろいろあんのよ」


いろいろかあ
そう、いろいろ


にこ「そういえば、あんた」

穂乃果「ん?」

にこ「私のこと、好きなの?」

穂乃果「うーん……色々考えたんだけど……好き、なんだけどなんかこう……ドキドキしないんだよね」

にこ「じゃあ恋心とは違う、ってこと?」

穂乃果「うん……そうだと思う」


少しだけ、肩を落とすと穂乃果はバツが悪そうだ
68: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:39:59.09 ID:+sPeCW/K.net
にこ「あんたがそんな顔するんじゃないわよ、湿っぽい」

穂乃果「でも色々迷惑かけたし……」

にこ「いいわよ、楽しかったし」

穂乃果「うーん……?」


なんとなく、予想していた

だいたい変な話なんだ

好きな相手に何もしようと思わないなんて

現に、今の私は穂乃果に触りたいし、感じていたい
そんなことも考えられないなら、それはきっと恋じゃない、当たり前だ

……だから、だからこそ止まりたくない
69: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:40:27.41 ID:+sPeCW/K.net
にこ「ねえ、穂乃果」

穂乃果「なあに?」

にこ「……好き、よ」

穂乃果「へ?」

にこ「だから、私は穂乃果のこと、好きよ?」

穂乃果「え、えーと……それはつまり?」

にこ「恋の方よ!」

穂乃果「あ、ああーってえええ!?」


驚くのが遅すぎる、やっぱりバカなんだ
でも、それが穂乃果だ
それが私の好きな穂乃果なんだ
70: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:41:14.25 ID:+sPeCW/K.net
にこ「まあ今のあんた相手だと返事は見えてるけど……」

穂乃果「うん、ごめんね……」

にこ「良いのよ、別に」


そう呟いて、私は穂乃果に近づく


穂乃果「ど、どういうこと?」

にこ「あんたに、私を好きになってもらおうと思う」


そういえば、言い忘れていたけれど

これは、私とこいつの、馬鹿みたいにまっすぐな恋の話
72: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:42:09.54 ID:+sPeCW/K.net
風の音

大きく開いた眼

染まる頬

黒く透き通ったツインテール

夕暮れの中

好きだった人に、告白された
73: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:42:35.86 ID:+sPeCW/K.net
好きかどうか、良く分からない

そんなことを、改めて告白した後だった
だからこそ、その一言に、とんでもなく驚かされた

それでも、私はこの言葉しかかけてあげられなかった


穂乃果「……ごめんね」


申し訳なさで、肩が震える
けれど、彼女はお構いなしにこちらへ近づいてくる
その顔の赤さをはっきりと確認できる距離で、にこちゃんは立ち止まり


にこ「あんたに、私を好きになってもらおうと思う」
74: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:43:02.90 ID:+sPeCW/K.net
その言葉に、つい固まってしまった


穂乃果「……へ?」

にこ「言葉通りの意味よ」


にこちゃんがぴょん、と後ろへ跳ねる


にこ「あんたが私のこと、好きか分からなくなったなら好きにさせれば良いじゃない」

穂乃果「は、はあ……」


言ってることがめちゃくちゃだ
それでも、にこちゃんは自信満々だ
75: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:43:35.74 ID:+sPeCW/K.net
にこ「まあそういうことだから、あんたはいつも通りしてて良いわよ」


じゃ、よろしく

と一言だけ言って、にこちゃんは先に行ってしまった
……何も返せずに、行ってしまった


……………


帰り道

一人で帰るしかなくて、仕方なく少し暗がりの道をとぼとぼ歩く
頭の中では、さっきのことがぐるぐると回っていた

好き、よ

冷静に考えると、なかなかおかしい話だ
好きだと思っていた相手に恋心を抱いていないことを自覚したあとに、その相手から告白されるなんて……まるで呪われてるみたいだ
76: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:44:43.35 ID:+sPeCW/K.net
好きだって、思っていれば良かったんじゃないか?

そんなことを考えた後、仕方ないことじゃないかと思い直す

だって、結局この気持ちが恋じゃなかったのなら、勘違いしてた頃に結ばれたところで、長続きするわけないじゃないか


穂乃果「でも好きになってもらうって……にこちゃん何するんだろ」


夕陽が、今にも眠りにつきそうな空
背にしたままで、私はただ歩むことしかしなかった
77: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:46:24.80 ID:1W69pTFb.net
翌日、にこちゃんは何もしてこなかった
というか、いつも通りだった

会えば一言挨拶して、他愛のない話をして
つとめて会いに来ることもなかった


……もしかして、これが『好きになってもらおう』ってこと?


なら、にこちゃんはバカなんだな、って思う

だって、いつも通りなら私の気持ちもいつも通りだ
これまでだって色々あったけれど、あったからこそその程度で揺らぐ心じゃないくらいにこちゃんが一番知っているはずだ

穂乃果「……意味わかんない」


と、机にもたれながら口を尖らせる
私だって自慢じゃないけどバカな方だから、そんなことの意味が余計わからない
78: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:47:05.83 ID:1W69pTFb.net
放課後は練習があるけど、なんとなく出たいような気になれず、早退することにした

他の学生たちに紛れて帰る道は、最近あまりなかったことでもあるので少し新鮮だ

陽は、まだ少し高い

今まで沈む夕陽を見送っていたこともあり、余計眩しく感じて、眼を細める


「何よ、らしくないわね」


そうぶっきらぼうなぼやきが聞こえた気がして、つい後ろを振り向くれけど、そこには人ごみだけで、誰もいない

ちょっとだけ後ろ暗さを感じて、足も重くなる


穂乃果「なんで、期待してんだろ……」

「……なにが?」


その声に振り向くと、今度こそにこちゃんがしかめっ面をしながらそこにいた
79: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:47:58.86 ID:1W69pTFb.net
穂乃果「あ、あれ……練習は……?」

にこ「サボってきた」


つまらないことを聞くなとでも言いたげに、にこちゃんが答える
少し早足のにこちゃんに並ぶように私も早足になる


穂乃果「サボってきたって……なんでまたそんな」

にこ「そりゃ、あんたと帰りたいからに決まってるでしょ」

穂乃果「……そっか」


にこちゃんは前を見据えているけど、その顔は少し赤らんでいる

……恥ずかしいなら言わなきゃ良いのに

慌ててその言葉を飲み込むけど、顔はそうなってくれなかったようで
80: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:48:25.95 ID:1W69pTFb.net
にこ「なに、その顔」

穂乃果「いや、ううんなんでもない」


少し、無言になる
聞こえるのは雑音だけで、なにもない

どこか心地よさを感じるけど、そわそわしているあたりにこちゃんはそうでもないようだ


にこ「告白してみたは良いけど……なにすれば良いか微妙なのよね」

穂乃果「うーん……」


あいにく、その問いに対する答えを私は持ち合わせていないので、一緒になって頭を抱える
81: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:48:45.93 ID:1W69pTFb.net
にこ「ま、いっか」

穂乃果「いいの?」

にこ「いいのよ」


言葉は相変わらずぶっきらぼうだけど、少し優しい声だった

しばらく歩いて、気づいたら周りには誰もいない
高く感じた空も、橙のグラデーションがだんだんはっきりしてきた

そこで、にこちゃんが立ち止まる


にこ「……ちょっと、手触ってもいい?」

穂乃果「?……いいけど」
82: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:49:31.25 ID:1W69pTFb.net
そう一言返して両手を差し出すと、にこちゃんがおもむろにその手を握る
ちっちゃな手のひらに、少し温かさを感じた


穂乃果「えーと……これは?」

にこ「いや、体温感じたかっただけ」


悪かったわね、とにこちゃんがその手を離す


にこ「じゃ、私こっちだから」

穂乃果「あ、うん……またね」


にこちゃんを見送りながら、握られた手を見返す

すっかり熱は冷めたのに、その手のぬくもりはいつまでも残っている気がした
83: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:50:09.58 ID:1W69pTFb.net
……………


ことり「穂乃果ちゃん、なんか元気ないね?」

穂乃果「そう?いつも通りじゃないかな」


なんか、すごくおとなしいから元気ないのかなって

そう言いながらことりちゃんが隣に座る

おとなしいから元気ないって思われるなんて少し心外だなあ、なんて思いながらも、確かにいつも通りのテンションじゃないなあとは思う

というか、柄に合わずなんでこんな悩んでるのか不思議だった
自分で蒔いた種だから、余計そうなのかもしれないと思い直す

悩むのも段々バカらしくなってきたので、眠気に身を任せることに決めた
84: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:51:12.25 ID:1W69pTFb.net
彼女が私を背に、ただ歩いている

私は無意識についていく

声をかけても、大声で叫んでも、彼女は前へと進み続ける

彼女がふと立ち止まり、振り返って手を伸ばす


「しょーがないわね、ほら」


とても優しい声だった

私はその手に触れようとして、その声に応えようとして

そして
85: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:52:12.75 ID:1W69pTFb.net
天井に伸ばした手が、虚しく空を切ったことで、それが夢だったことに気がついた

周りが少しどよめいている
笑ってる人、引いている人、こめかみをぴくぴくさせている人がいる


「あのなぁ高坂……お前学校で何してんだ?」

穂乃果「あはは……すみません」


と、苦笑混じりに頭を掻くと、一気に笑いの渦が巻き起こる

……変な夢だったな


教科書をとんとんと並べながら、そう思う
抽象的すぎて意味が分からない
夢に理由を求めるのもおかしな話だけど

見ると私の幼馴染が、今にもこちらへ飛びかかりそうなくらいおかんむりなことに気がついて、慌てて勉強しているふりをする

これは、休み時間が少し怖いなあ

先生の呪文みたいな単語をBGMに、陽の高い空をぼーっと眺めていた
86: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:53:04.61 ID:1W69pTFb.net
案の定飛んできた海未ちゃんの雷に直撃し、逃げるように教室から飛び出した

……なにも、あんなに怒ることないじゃん
いやまあ、悪いのは私の方なんだけど


それはそれとして、特にあてもなくふらふらと出てきてしまった

行く場所は考えてなかったけど、とりあえずあそこなら時間を潰せるだろうと思って、私は部室へ向かうことにした
87: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:53:45.61 ID:1W69pTFb.net
……………


鍵が開いてなかったので、職員室で鍵を借りて、部室へ入る
誰もいない部室は静かで結構好きだ

窓を開けると、木々の揺れる音や学生の賑やかな声が耳に心地良い
まるで世界からここだけ隔離されたような……ってちょっとくさすぎるかな


静かだなあ……なんてうとうとした矢先、肩をぽんぽん、と叩かれる

もう、人が気持ちよくなってるのに……と後ろを振り向くとそこには


穂乃果「……あれ?」

「なんで、こんな時間にあんたがいるのよ?」


少しだけ不機嫌そうに私を覗き込むにこちゃんがいた
88: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:54:36.15 ID:1W69pTFb.net
それから10分ほど経った

にこちゃんはキーボードを忙しそうに叩いてるし、私はスマホを意味もなくいじってる
特にお互いなにも詮索しないのが、それが却って空気を滞らせてしまって居心地が悪い

ちらり、とにこちゃんの方を覗く

すごい真剣な眼差しで、PVの編集をしてるようだった

あ、そこのパート上手く踊れたのに外された……でもそっちの方が綺麗に映ってるなあ……

なんて考えていたらにこちゃんが


にこ「あんたも物好きよね」

穂乃果「なにが?」


そりゃほら、とにこちゃんが続ける


にこ「わざわざここにいなくても、もっと楽しいところあるわよ?」


いやあ、いづらくなったというか……てか私を好きな人がそれでいいの?
なんてことは言えず、ただ愛想笑いで返す
89: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:55:14.53 ID:1W69pTFb.net
流れるのは、雑踏と、時計の針と、木が凪いだ音
それと、かたかたとリズミカルに鳴るキーボードが追加された

それでもやっぱり、どこか心地良い

部室はいつも通りなのに、どこか時間が止まってるような、そんな気がした
……ってこれもくさすぎるか

にこちゃん、作業終わったかな……

てか今何時だろ……

ああもういいか、考えるのもめんどくさいし……
90: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:56:24.65 ID:1W69pTFb.net
……………


寝ていたことに気がついてはっと体を起こしてみたけど、先ほどまでの雑踏の音はもう消えてしまっていることに気がついた

時計に目をやると、時刻は昼休みをとうに過ぎている


穂乃果「ん……?え、うそっ!?」

にこ「あ、ようやく起きた」


がばっと勢いよく立ち上がった私に、ぶっきらぼうににこちゃんが反応する
……ん?


穂乃果「なんで、にこちゃんここにいるの?」

にこ「3年は午前授業なのよ」


あ、そういうこと……じゃなくて!
91: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:56:54.87 ID:1W69pTFb.net
穂乃果「なら起こしてくれてもいいじゃん!」


机を勢い良く叩いて声を荒らげる私に対して、にこちゃんの対応は落ち着いたものだった


にこ「え?幸せそうに寝てるから起こしたら悪いかなーって」

穂乃果「悪くないよもー!」

にこ「それに、あんたの寝顔結構可愛かったし」


にこちゃんが頬杖をつきながらいたずらっぽく笑う
私はむう、と喉を唸らせながら悔し紛れに


穂乃果「……私のこと好きなら少しくらい優しくしてくれても良いじゃん」


どうせ、はいはいごめんなさいね、なんて軽くあしらわれるかと思ってた
けれど、その反応は予想外のものだった
92: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:57:27.98 ID:1W69pTFb.net
にこ「な、な……」


にこちゃんが、耳まで真っ赤にして固まっていたのだ
つられてなぜか私も赤くなってしまう


にこ「い、い、今言うことそれ!?」

穂乃果「い、言うよ!好きならもう少し気遣ってくれても良いんじゃない!?」

にこ「それとこれとは別でしょ!?」

穂乃果「一緒だよ!!」


こうなったらお互い引くに引けなくなってしまい、まるで目から火花を散らしそうな勢いだ
先に折れたのはにこちゃんの方だった
93: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:58:53.02 ID:1W69pTFb.net
にこ「はあ……悪かったわね」

にこちゃんは「はー」とため息をつきながら申し訳なさそうだ
まだ少し頬が赤いけど、だんだんとその口調が穏やかになっている
私も怒るのがバカバカしくなって、段々と落ち着いてきた


穂乃果「もういいよ……サボり確定だし」

にこ「だから悪かったって……」

穂乃果「ううん、寝ちゃってた私も悪いし」


ぺろ、と舌を出したあと、大きく大の字に伸びをする


穂乃果「でもせっかくサボったんだし、どうせなら楽しもうかな」

にこ「……で、なにすんの?」


実は……なんも考えてない
だと思った


それから、少しの間私たちは笑いあった
94: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 19:59:36.59 ID:1W69pTFb.net
穂乃果「それにしても、あれだねー」

にこ「あれって?」

穂乃果「なーんか、静かだね」

にこ「そりゃ授業中だからに決まってるでしょ?」

穂乃果「いや、そうだけどさあ……」


まるで、世界に私たちしかいないみたい
またくさいことを考えてしまったと思ったら


にこ「なんか、この世界に今私とあんたしかいないって言われても、そうかもって思えちゃうわね」


と、真顔でにこちゃんが答えるからつい


穂乃果「なんかにこちゃん、気障っぽい」

にこ「なによ、たまにはこんなこと言っても良いじゃない」

穂乃果「……ふふっ」

にこ「なによ、気持ち悪いわね」


なんて毒づくにこちゃんの声色が、ほんのちょっぴり暖かかった
95: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:00:03.53 ID:1W69pTFb.net
にこ「あー……えーっと、穂乃果?」

穂乃果「ん?」

にこ「その……今日は練習ないじゃない?」

穂乃果「そうなの?」

にこ「ちょっと、仮にもリーダーなんだからしっかりしてよ……まあいいわ、とりあえず練習ないけど暇?」


することといっても店番くらいだもんなあ
と、考えたので「うん、特にすることもないし」と答えると


にこ「じゃあ、帰り少し遊ばない?」

穂乃果「うん、良いけど……またなんで?」

にこ「……好きだから、一緒にいたいから……それじゃ、理由にならない?」

穂乃果「なら、ないと思う……けど」

にこ「んじゃ、決まりね」


相変わらずにこちゃんは火をかけたやかんのように熱くなっている

でも、それでも

少しづつ何かが進んでいるような、そんな気がした
96: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:00:29.23 ID:1W69pTFb.net
……………


案の定というか当たり前のように鬼の形相と化した海未ちゃんに捕まり、私はお説教をうけている


海未「だいたいあなたはいつもそうです!」

穂乃果「はーい……」


海未ちゃんはもっともらしい事をぶつけてくるけど、生憎今の私は右から左へ流れていってしまう

……にこちゃん待たせてるんだけどなあ

「じゃあ放課後駅前で」と言い残してどこかへ去ったにこちゃんに対していつ頃つくかも連絡できていない


海未「穂乃果、聞いているんですか!?」

穂乃果「ご、ごめんなさーい!」


これは、しばらく逃げきれそうにないなあ……
97: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:00:59.79 ID:1W69pTFb.net
海未ちゃんの猛攻をかいくぐり、なんとか逃げ出して駅まで走る

待ち合わせの時間からもう30分も過ぎている、一言「ごめん、遅れる!」と(もうすでに遅れてたんだけど)送ったんだけど、残念ながら返信は来ていない。

歩幅に合わせて、気持ちもだんだんと焦ってくる

早く、早く

気持ちが焦っても、距離はなかなか縮んでくれない

早く、早く

にこちゃん、どんな顔して待ってるのかな
怒ってるかな、怒ってないといいな……
98: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:01:38.85 ID:1W69pTFb.net
駅について辺りを見渡すと、見覚えのあるツインテールが腕を組んでしかめっ面をしていた


「ごめんごめん」と申し訳なさそうに駆け寄ると、彼女は開口一番に


にこ「遅い!」

穂乃果「海未ちゃんにお説教食らって……本当ごめん!」

にこ「私にも非があるのよね……まあいいわ、まずはゲーセン寄っていい?」

穂乃果「なにするの?」

にこ「久々にクレーンゲームでもしようかと思って」


お、いいねと二つ返事でOKし、ゲームセンターへ足を運ぶことにした
99: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:02:06.84 ID:1W69pTFb.net
穂乃果「にこちゃんすごいね、こんなおっきいぬいぐるみ二つも一気に取るなんて」

にこ「ふふん、コツがいるのよ」


得意げに話すにこちゃんを隣に、とりあえずあてもなくふらふらと歩く


にこ「さて、次は……」


ぐぅ〜
嫌なタイミングで鳴ってしまったお腹に多少の苛立ちとこの上ない恥ずかしさで、顔が真っ赤になる
にこちゃんはまさにいたずらモード、のような顔をして


にこ「お腹すいた穂乃果ちゃんのために、ご飯にしようかな〜」


と、にやにやとこちらを覗き込んでくる
何も言い返せず、むうと頬を膨らませながらその背中についていくことしかできなかった
100: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:02:44.91 ID:1W69pTFb.net
お腹すいたのもあるけど、落ち着きたいというにこちゃんの申し出に了承し、私たちは今カラオケボックスにいる


にこ「お腹空いたんなら適当に頼んじゃってよ」

穂乃果「はーい」


にこちゃんは何か歌いたいようで「いや、これは……」とか「これも良いけど……」なんて呟きながらリモコンと向かいあってる


穂乃果「どうかしたの?」

にこ「いや、好きだったアイドルの新曲出たからそれにしようかと……うーんでもこっちもいいなあ……」


なんか、子供みたい
とはいえず「あはは……」と苦笑する


にこ「いや……これにしよう」


画面が暗転して、曲が流れ出す


穂乃果「……バラード?」

にこ「そんな気分だったのよ」
101: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:03:33.31 ID:1W69pTFb.net
何千回唱えた好きって言葉はもう、届かない

それでも、その身に触れたくて

それでも、その心を感じたくて

夕暮れを背に、君をただ、想う


にこ「……ふう」


にこちゃんの一息とともに、後奏が終了する。


穂乃果「いい歌だね、これもアイドル?」

にこ「もともと歌の上手かったアイドルで、ソロ転向してからはシンガーソングライターやってるのよね」


穂乃果「……へえ」

にこ「ほら、次はあんたが歌いなさいよ」

穂乃果「えー、どれがいいかなぁ……」


ちらり、とその横顔を覗き込むと、さみしいのやら楽しいのやら、よくわからない表情をしていた
103: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:05:07.96 ID:1W69pTFb.net
にこ「んーっ……なんだかんだ結構歌ったわね」

穂乃果「もうすっかり暗くなっちゃったね」


見渡すと、もう陽はすっかり沈み、街灯やビルの明かりが私たちを照らしている
なんだかんだ2時間近く歌ったから、声がお互いがらがらになっていた


にこ「今日はそろそろ帰りましょう、遅くなるとマ……親に心配されるし」

穂乃果「うん、そうだね」
104: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:05:33.87 ID:1W69pTFb.net
じゃあ私駅の方だから、と踵を返そうとすると


にこ「あー、ちょっとまって……えーと確かここに……」


にこちゃんがカバンをガサゴソとあさり始める


にこ「あった、はいこれ」

穂乃果「……これは?」


にこちゃんに手渡されたのは、ちっちゃな紙袋だった

にこ「プレゼント、帰ったら開けてね」


それじゃ、とにこちゃんが走り出す
その背を見送ったあと、私も家へと足を運ばせることにした
105: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:07:11.66 ID:Py7m05yK.net
雪穂「おねーちゃん、なにそれ?」

穂乃果「にこちゃんからだって」

雪穂「へー……にこさんってセンスあるね、おねーちゃんに似合ってると思うよ」


にこちゃんに渡されたのは、ちっちゃなヘアピンだった
少し淡い緑に、ひまわりが散りばめられていて綺麗だ

にこちゃんは私のことを好きだ
私も面と向かって言っていた気がするけれど、にこちゃんのそれは何か違う

重い

よく言われる「恋人が重い」って意味とは違う
想いがこもっていて、それがすべての答えだって、そう思える

それくらいに私のことが好きなにこちゃんに嬉しくなって、気持ちに正直に応えてあげられないのが悔しい

ひまわりの中に、見慣れたツインテールがしかめっ面でこちらを覗いている、そんな気がした
106: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:07:41.56 ID:Py7m05yK.net
……………


翌日
せっかくもらったものを使わないのも申し訳ないので、早速付けて行くことにした


にこちゃん、喜んでくれるかな……ってなんでにこちゃんのことなんか考えてんだろ


と思っていたらことりちゃんが


ことり「穂乃果ちゃん、そのヘアピン可愛いね」

穂乃果「ああ、これ?この前にこちゃんにもらったんだ」

ことり「にこちゃんセンスあるね〜」


愛想笑いで返して、鏡で頭についたそれを眺める
なかなか似合っているのがなんか悔しい


穂乃果「お礼、言わないとなあ」


昼休みは部室にいるのかな、呼び出すのはなんか変だし練習とかで機会あったら行こうかな、なんて考えながらぼーっと空を眺めていた
109: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:12:47.79 ID:Py7m05yK.net
……………


にこ「……あ」

穂乃果「やほー」


今回あとに入ってきたのはにこちゃんだった
もう何度目かというやり取りを交わして、にこちゃんはこちらを見ずにPCのある机へ向かう

せっかく付けたのになあ、と少し不機嫌にしていたら


にこ「付けてくれたのね、それ」


と、にこちゃんがこちらを見ないままぶっきらぼうに語りかける
あれ、全然こっちのこと見てなかったような気がしたけどな、と思いつつ


穂乃果「うん、これ可愛いね。ありがと」


にこちゃんは後手をひらひらとさせながら「そりゃどうも」と返す
110: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:17:04.24 ID:Py7m05yK.net
……ん?

なにか違和感があるのは、きっと少女漫画とかで得た知識からくるものだ


穂乃果「えーと……にこちゃん?」

にこ「ん?」

穂乃果「あのー……それだけ?」


にこちゃんがようやくこちらを振り返る

普通、こういう時って「似合ってるよ」とか「可愛いよ」って感想をするもんじゃないの?
けれどにこちゃんの反応は素っ気ないもんだ


にこ「あんたに似合うかなーと思って買っただけよ」

穂乃果「ああ、そう……」


肩を落としかけた刹那、そのぶっきらぼうな態度の裏にある表情に気がついた

顔が、赤くなってる
112: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 20:32:33.06 ID:Py7m05yK.net
にこちゃんは特に何も思ってないわけじゃない
照れて何も言えないんだ

そう思うとなんだか嬉しくて、つい顔が綻ぶ


にこ「何よ、いきなり気持ち悪い……」

穂乃果「んー、べっつにー?にこちゃん面白いなあって」

にこ「なにも面白いことなんてしてないわよ」


なんてしかめっ面になるにこちゃんがおかしくて余計笑ってしまう

にこちゃんも諦めたようで柔らかく笑ってくれる

なんだか、とても幸せだなって思った
116: 名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 21:07:33.69 ID:Y6XXlkDb.net
……………


ひどくにやついているのが自分でもはっきり分かる


にこちゃん、結構分かりやすいんだなぁ……


反応が面白くて、またからかいたくなりそうだ


そう思ったけれど、すぐに立ち止まる

でも、それで良いんだろうか?
いたずらににこちゃんの気持ちを刺激して、それで本当に良いんだろうか?

私はにこちゃんのことを、まだはっきりとした気持ちで見つめられない

その手を握ることなんて、できない
118: 名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 21:34:39.91 ID:Y6XXlkDb.net
……………


穂乃果「はー……」

にこ「一体どうしたのよ?」

穂乃果「ん、自己嫌悪」


放課後練習が終わって、やることもないのでとりあえず暇つぶしに二人集まることにした
誘ったのはにこちゃんからだ

とはいえ、特にあてもないしやりたいこともない

追い打ちのようににこちゃんとはあまり会話がないのでさっきのことがぐるぐると回っていく

その結果がこの自己嫌悪

こうして並んで歩いていても、いつも通りだ
119: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 07:02:00.46 ID:1yR5hUxj.net
にこ「あんたが自己嫌悪って槍でも降ってきそうね」


そんな私の気持ちなんてお構いなしににこちゃんは冗談を言ってくる

にこちゃんはどう思ってるのかな

そう思っても臆病になって中々言い出せない
私は苦し紛れに「うるさいなー」と返すことしかできない


にこ「悩んでてもしょーがないじゃない」

穂乃果「……そういうもん?」

にこ「そういうもんよ」


ついこの前まで私のことで悩んでたはずなのに、なに言ってるんだろう
でもにこちゃんの顔はどことなく晴れやかだ
120: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 13:10:42.30 ID:MwBoU8IF.net
そういえば、と思いふと立ち止まる
それに合わせてにこちゃんも足を止める


にこ「ん、どうしたの?」

穂乃果「いや、あの……」

にこ「なによ、言いたいことあるならはっきり言いなさいよ」

穂乃果「あー、えーと……にこちゃんはなんで穂乃果のこと好きになったのかなー……って」


にこちゃんは驚きつつもすぐに平静さを取り戻した


にこ「んー、よく分かんないのよね」

穂乃果「……そう」


散々自分が言った後なのに、言われるとこうも響くもんなんだろうか、と後悔したあと


にこ「でも意識するきっかけだったのは告白よね」

穂乃果「そう、なんだ」


ということは、告白しなきゃこんなことにならなかったんじゃない?
そう思えると、嬉しいことのはずなのに余計後悔してしまいそうだった
121: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 18:18:14.75 ID:N3TJ2wX6.net
さすがに顔に出ていたようで、にこちゃんがすこし心配そうにしている


にこ「あんた、まさか自分のせいだーなんて考えてんの?」

穂乃果「いや、そんな……」

にこ「あんたバカなの?」

穂乃果「え、まだなにも」

にこ「あんたの顔見りゃ分かるっての……」


う、と声を漏らす
確かに隠し事は苦手だけど、ここまでバレてしまうものなのかと肩を落とす
にこちゃんは「はー」と大きく息を吐いてから


にこ「あくまできっかけだっての、別に後悔もしてないし」

穂乃果「そういうもんなの?」

にこ「そういうもんなのよ。別にあんたに嫌われてるわけでもないし」

穂乃果「まあ、それはそうかもしれないけどさあ」

にこ「私が良いって言ったから良いのよ」


それ以上は何も聞けず、少し歩幅がゆるくなったにこちゃんに合わせるように歩く
遠くで沈む夕陽が眩しくて、目を背けた
122: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 19:06:15.21 ID:N3TJ2wX6.net
……………


絵里「あら穂乃果、元気ないけどどこか悪いの?」


もう何度目だろうかという質問に対し飽き飽きしながら「ちょっと考え事してて」と苦笑いで答える
それに対して「穂乃果が考え事なんて珍しいわね」って返されるのももう飽きた
絵里ちゃんは私の向かいに座って


絵里「悩みならお姉さんに相談してみない?」


実はにこちゃんに告白したんだけど実はそこまで好きじゃなかったら今度はにこちゃんから告白されたんだー、どうしよう?
なんて口が裂けても言えないので


穂乃果「ちょっと人間関係で悩んでて」


と俯き加減で答えることしかできなかった
絵里ちゃんは腕を組みながら


絵里「人間関係、ねえ……」

穂乃果「ちょっと色々あってねー」

絵里「ふーん……相手の気持ちが分からない、とか?」

穂乃果「どっちかというと……自分の気持ち、かな?」
123: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 19:10:16.80 ID:N3TJ2wX6.net
それに対する絵里ちゃんの返答は「なら自分で解決するしかないわね」とあっけないものだった

「せっかく相談したのに……」と口を尖らせると、絵里ちゃんは真剣な眼差しで


絵里「あなたの気持ちはあなたのものよ?話を聞いたくらいでどうこうなるものでもないわ」

穂乃果「むうー……」

絵里「ま、自分で答え見つけることね」


そう言って絵里ちゃんは行ってしまった


自分で答えを見つける


そんなこと、できたら苦労するわけないのに、なんだかはぐらかされた気分だった
126: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/07(土) 08:35:58.26 ID:bEHxcjS6.net
……………

その日も練習に参加できる気がしなくて、適当に理由をつけてサボることにした
幸い、あまり詮索はされなかったけれど、周りの私を見る目が心配そうで胸が痛んだ


穂乃果「とはいえこんな気持ちじゃなあ……」


にこちゃんと今後どんな風に接していくか
にこちゃんに気持ちが傾いていない以上、いたずらに刺激するよりも距離を置いておいた方がお互いのためなんじゃないか?
何もかもうやむやにしてなんとなく遊んでいるのも良いんじゃないか?

悩んでも答えなんて出るはずもなく、今の私は目的もなくふらふら歩いているだけだった


こんな時、にこちゃんはどんな決断をするのかな?


まっすぐが取り柄といっても、相手がいるような話題で即決できるほど私は愚直じゃない

オレンジがかった空を背にして鳥が何羽かどこかへ去っていく


……本人に相談、してみる?


そんな風に問いかけられているような、そんな気がした
127: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/07(土) 19:08:58.30 ID:bEHxcjS6.net
穂乃果「結局、相談ってもなあ……」


あてもなくふらふら歩いた終着点は、どこかも良く分からないちっちゃな公園だ
住宅のはずれにあって、子供ひとりいない

というか、人影が見当たらない

いつもだったら不気味で仕方ないけど、どこに行っても人混みが付いてくるこの東京という町の中で、一人で悩むには今うってつけの場所だった


穂乃果「本人に直接?でもどうやって……」


どうして、どうして答えを出そうとしない私を急かさないんだろう
どうして、何も言わずにそばにいてくれるんだろう


なによ、らしくないわねー


そう背中を叩かれたような気がして後ろを振り返っても、何もない
けれど彼女が励ましてくれている、そんな風に思えた
128: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/07(土) 20:09:29.71 ID:bEHxcjS6.net
……………


にこ「……で、私に話って何?」


まずは、話をしてみよう
そういうわけで、昼休みににこちゃんを呼び出した


穂乃果「ああうん、実は……」


そこで、これまで考えていたことを打ち明ける
私のこと
にこちゃんのこと
今後の接し方、付き合い方

一通り話した後、恐る恐るにこちゃんの顔を覗くと、怒っているような呆れているような、不思議な顔をしていた


にこ「……やっぱ、あんたバカ?」

穂乃果「そんな、穂乃果はただ……」

にこ「それ、結局自分のことしか考えてないじゃない」

穂乃果「あ……」

にこ「私がどうとかそれっぽいこと言ってるくせに、私の気持ちとか全然考えてないのね」


何も言い返せなかった、事実だったから
にこちゃんは、にこちゃんが
そんな言葉で逃げて、肝心の相手のことなんて考えていなかった
こうして面と向かって言われるまで、そのことに気がつかなかった……私はバカだ

にこちゃんは続ける


にこ「私は別に良いのよ」

穂乃果「え……?」

にこ「そりゃまあ、この気持ちが叶うことに越したことはないわよ?でも別に付き合えなかったからって嫌われて距離を置かれるでもないんだし」

穂乃果「まあ、それは……」


さっきの呆れ顔と対象に、その顔は晴れやかに笑顔を見せている
129: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/07(土) 20:13:36.24 ID:bEHxcjS6.net
にこ「それに、前言ったでしょ?好きになってもらうって……私はまだ諦めてないし、諦めたくない」


にこちゃんがこちらをまっすぐ見据える
眩しくて、直視できなかった


にこ「だから、そんなこと言わないでよ。寂しくなるじゃない」


そう言いながら、にこちゃんが私の頭を大雑把にくしゃくしゃと撫でる
そのちっちゃな手は大きく、とても暖かく感じた


にこ「そんなわけだから、これからもよろしくね」


にこちゃんが手をパッと離す
私はボサボサになった髪を整えながら


穂乃果「あ、うん……よろしく」


どうして、にこちゃんはそんなに強いんだろう
どうして、そんなことをまっすぐ伝えられるんだろう
134: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/07(土) 22:05:35.55 ID:bEHxcjS6.net
……………


穂乃果「そういえばさあ」


ランチパックを開けながら、私は訪ねた


にこ「ん?」

穂乃果「好きになってもらうって言ってたけど……具体的に何するの?」

にこ「そうねー……実は特に考えてないのよね」

穂乃果「何それ」


思わず吹き出してしまう私に対して、にこちゃんは真面目そうな顔をしていた


にこ「何も考えてない、けど別に何かしたからって人の気持ちって大きく変わるもんでもないと思うのよね」

穂乃果「そう、かな?」

にこ「少なくとも私はそう思う」


いちご牛乳をすすりながらにこちゃんは続ける


にこ「まあ、仲良くなって、お互いのことを知って……知りたいって思うのも大事だと思うのよ」

穂乃果「ふーん……」


にこちゃんの言うことは難しくてよくわからなかった
けれど、何を言いたいのかは分かった気がした
136: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/07(土) 22:15:04.49 ID:bEHxcjS6.net
……………


穂乃果「お互いのことを知る、かあ……」


先輩で、μ'sのメンバーで
妹弟がいて
意地っ張りで、照れ屋さん
かと思えばまっすぐこちらを見据えて芯に触れるようなことを伝えてくる
あとは……私を、好きなこと

私が知っているにこちゃんは、こんな人だ

たまに何考えてるのか分からないけど……それもにこちゃんらしいと思う

逆に、にこちゃんは私のことをどう思ってるのかな
バカで頼りなくておっちょこちょいで……
あ、私も何考えてるか分からないって思われてそう

もう少し、お互いのことを知る必要がある
それは、にこちゃんの言う通りだと思った

私はにこちゃんのことをあまり知らない
ということはつまり、にこちゃんの方も私を良く知らないということだと思う
137: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/07(土) 22:18:18.49 ID:bEHxcjS6.net
……………


にこ「珍しいわね、あんたから誘うなんて」

穂乃果「ああうん、ちょっと、ね」


お互いを知るならまずは一緒にいなきゃ
そう思って、休日ににこちゃんを誘うことにした


にこ「で、どこか行きたいとこでもあるの?」

穂乃果「実は……特に考えてなくて」

にこ「だと思った」


にこちゃんは呆れ気味に苦笑いしている
それにつられて私も頭をかきながら苦笑いする
にこちゃんは「よし」と一言発して


にこ「たまにはちょっと遠くに行きましょう」


と告げて、私を置いて行きそうな勢いで先へ進んでいく
遠くって……どこだろう?
にこちゃんが何も言わないので、とりあえずその背中についていくことにした
139: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 00:13:05.51 ID:nWD3fM9X.net
……………


にこ「さ、着いたわよ」

穂乃果「ここは……」


にこちゃんにつられてやってきたのは、少し街から離れた天文台だ
確か……プラネタリウムが有名だった気がする


にこ「ま、たまにはこういうところ来るのも良いでしょ」

穂乃果「穂乃果こういうところだと眠くなるんだけど……」

にこ「それも良いでしょ、さー行くわよ」

穂乃果「ちょ、ちょっと待って!」


にこちゃんに手を引かれて、そのまま中へと歩き出す
その手は少し汗が滲んでいた
140: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 01:12:41.92 ID:nWD3fM9X.net
にこ「なんだかんだ言って、私もプラネタリウムは眠くなるのよね」


そう言いながらにこちゃんはシートを傾ける
……ならなんでこんなところに


にこ「まあ、頭空っぽにするなら丁度良いでしょ」

穂乃果「……かもね」


瞬間、辺りがだんだんと暗くなり、眠気を誘うアナウンスが流れてくる
スクリーンに映し出される星空はやっぱり綺麗だけど、眠くなるのも事実だった

隣をちらりと眺めると、もうにこちゃんは眠っていた


……自分が先に寝ちゃってるし


寝顔なんてそうそう見られるものでもないし、ついまじまじと眺めてしまう

腕は白く透き通っている
白魚?のように指は綺麗だ
肩から首筋にかけては細く、力を込めればすぐ折れてしまいそうだった
そしてその先……は、いいや


こうして眠ってると、お姫様みたいに可愛いのになあ


口はきついしいたずら好きだし、黙ってれば可愛いのにもったいない……でも、それがにこちゃんの良いところでもあるのかなって思った

結局のところ、そういうところも含めてなんだかんだ可愛いんだから、それで良いじゃん。そう思うことにした

アナウンスが子守唄のように感じらる頃、だんだん空が遠くなってきたので、私も眠気に身を任せることにした
142: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 01:20:24.93 ID:nWD3fM9X.net
……………


私は走っている。

どこかへ、どこかを目指して走っている。

誰かに会いたいような気がするけど、それも分からない。

やがて道は細くなり、行き止まりにぶち当たる

息が、切れる。

だらしないわね、後ろから声が聞こえる。

私は声のする方向へ振り向いて

そして
143: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 01:24:53.84 ID:nWD3fM9X.net
……………


「…ら………いって………ほら……ほ…か……」

穂乃果「うう……ん……」

「ほら起きて……も……ったのよ……」

穂乃果「もーすこし……あとちょっと……」

にこ「起きなさいこのバカ!」

穂乃果「っとうわああ!?」


耳元で大声を出されて思わず飛び上がる。
隣には表情に怒気を孕んでいるにこちゃんがいた


にこ「もうとっくに上映終わったわよ、いつまで寝てんのよ」

穂乃果「……自分だって寝てたくせに」


「私は終わる前に起きたから良いのよ」なんてにこちゃんが返す

……やっぱり黙ってた方が可愛いや、と評価を改める


にこ「ちょっとお腹すいたし、なんか食べない?」

穂乃果「うん、そうだね」


そう言いながら、私はようやくシートから身体を離す
たった1時間もない時間だったのに、ひどく疲れているような気がした
146: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 09:00:12.37 ID:EdEHqfBT.net
……………


にこ「何食べたい?」

穂乃果「んー……たこ焼き」

にこ「すみませーん、たこ焼き二つください」

穂乃果「天文台なのになんか遊園地みたいな売店あるんだね」

にこ「子供向けなんじゃない?」


そっか、と一言返して一息つく
プラネタリウムを出てから身体の調子が悪い
それでもにこちゃんに心配をかけさせまいとなんとか平静を装う


にこ「はい、持ってきたわよ」

穂乃果「ん、ありがと」


近くのベンチに並んで座って、たこ焼きを一つ頬張る

……味が分からない


にこ「こういうところの食べ物って大して美味しくないけどなんとなく食べたくなるのよね」

穂乃果「あ、うん……そうだね」

にこ「……麦茶飲む?」


ありがと、と一言放ってその水筒を受け取ろうとして

私は、そのままベンチから転がり落ちた


にこ「ちょ、ちょっと穂乃果!?穂乃果!!」


にこちゃん、怒るかな……心配かけさせちゃったな……


にこ「穂乃果……!!……ね……か!!」


混濁した意識の中、にこちゃんが私を呼ぶ声が遠くに聞こえる
147: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 09:08:53.94 ID:EdEHqfBT.net
……………


穂乃果「ん……」

にこ「穂乃果!」

穂乃果「あれ、にこちゃん……ここは……」

にこ「あんたの家よ……まったく、調子悪いなら言ってよ……」


身体を起こそうとするけど、手足が思うように動かない
仕方なく目であたりを見渡すと、確かに見慣れた私の部屋みたいだ


穂乃果「ごめん……」

にこ「謝るのは私の方よ……ごめん」


そのあと、事情をにこちゃんに説明してもらった
どうやら風邪を引いていたらしく、病院へ連れて行かれたあと点滴を打って、お母さんに家に連れてってもらったらしい
熱が高いからしばらく安静にすること


穂乃果「心配、かけさせちゃったね……」

にこ「するに決まってるじゃない……本当、死んじゃうんじゃないかって……」


にこちゃんの頬から雫が流れ落ちる
……心配かけさせちゃった


穂乃果「泣かないで……私が悪いんだから」


なんとか笑顔を装って、その頬を撫でる
小さく震えている、本当に心配してるんだ
148: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 11:21:40.42 ID:SxIHt49T.net
にこ「……とりあえず、お母さん呼んでくるね」

穂乃果「ん、ありがと……」


にこちゃんが部屋を出るのに合わせて、軽く目を閉じる
また、色んな人に迷惑をかけてしまった
にこちゃん、泣いてた……震えてた

その背中は身体以上に小さかった


……………


駆け寄ってきたお母さんを適当にあしらって、またにこちゃんと二人になる

さっきからにこちゃんは何も言わない、ただ俯いているだけだ
149: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 13:57:40.40 ID:SxIHt49T.net
穂乃果「あの……どうしたの?」

にこ「別に、どうもしてないわよ」


にこちゃんはこちらを向かずにそう答えた
……嘘だ
なんでかよく分からないけど、にこちゃんは何かを隠しているような気がした


穂乃果「じゃあなんでこっち見ないの?」


そう問うた瞬間、にこちゃんの肩に力が入ったような気がした


にこ「……怖いから」

穂乃果「何が?」

にこ「今の私……あんたになんかしそうで怖いのよ」

穂乃果「なんか……」


熱のせいか、にこちゃんが何を言いたいのかよく分からない
152: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 15:08:35.00 ID:XLE6udrg.net
にこ「そう、なんか……良く分からないんだけど、今のあんた見てると……ごめん」

穂乃果「……そっか」


にこちゃんの手に触れる
小刻みに震えていて、すぐにでも崩れてしまいそうだ


穂乃果「別に、そんな謝らなくて良いのに……変なの」

にこ「ちょっと、私は真剣に……」

穂乃果「……ふふっ」


なんだか、狼狽えているにこちゃんを見るのも面白くて、つい吹き出してしまった
にこちゃんもつられて笑顔を取り戻す


にこ「はー……あんたには敵わないわね」


にこちゃんはそう言いながら荷物をまとめ出す


穂乃果「にこちゃん……?」

にこ「そろそろ帰るわ、またね」


そう言って、彼女はそそくさと部屋から出てしまう
伸ばしかけた腕を力なく落として、もう一度目を閉じる


……別に、気にすることなんてないのに
153: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 15:49:41.69 ID:XLE6udrg.net
……………


流石に一晩じゃ良くなることもなかったので、翌日の学校はお休みすることにした
μ'sのみんなからひっきりなしに心配の連絡がきて、少し嬉しかった
……でも、にこちゃんからだけそれが来ない

なんでかというと……


穂乃果「別に来ることなんてないのに……」

にこ「何よ、悪い?」


こうしてお見舞いに来たから
お見舞いに来るにしても連絡くらいしても良いのに……それに、お見舞いとは言え結局やることもなくてにこちゃんは私のそばで漫画を読んでいる
155: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 16:48:29.15 ID:ZuCRMHbG.net
にこ「にしてもあんた、本棚揃えなさいよ……これじゃ何がどこにあるか分からないわよ」

穂乃果「別に、わざわざお見舞いに来てまでお説教しなくても……」

にこ「……まあいいわ、これの続きどこにあるの?」

穂乃果「えーとね、3段目の奥の方」

にこ「あったあった……あんがと」


手をひらひらと振って答える


穂乃果「てゆーかにこちゃん、何しに来たのさ」

にこ「何って……お見舞い。まあその様子だと明日にはなんとかなりそうね」

穂乃果「おかげさまで」


まあお見舞いとは言っても世話はお母さんがしてくれてるし、今更にこちゃんが来て何かできることがないってのは事実だ


にこ「……なんもすることないわね」

穂乃果「ふふっ、そうだね」


何笑ってんのよー、とほっぺたをぐりぐりされる
風邪移るよ、と私は冗談交じりに答える
なんか良く分からないけど、少し楽しい
156: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 16:51:41.30 ID:R7KfkXxF.net
にこ「ま、本当やることないし……帰るわ」

穂乃果「ま、待って」

にこ「ん?」


立ち去ろうとしたにこちゃんを、つい呼び止める
にこちゃんは不思議そうな顔をして戻ってくるけど、特に用事はなかった
本当、なんとなくだ


にこ「……なに?」

穂乃果「えと、その……て、手!」

にこ「手?」

穂乃果「握って欲しいなー……なんて」

にこ「良いけど……移るんじゃなかった?」

穂乃果「ま、まあまあ……」


そして、私の手をにこちゃんがそっと握る
私の方が今体温が高いのに、なぜだかすごくあったかくなった


にこ「……これでいい?」

穂乃果「ん、ありがと」
157: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 16:53:39.58 ID:VKT2hKuI.net
にこ「……今度こそ本当に帰るから」

穂乃果「うん」

にこ「元気が取り柄みたいなもんなんだし、早く治しなさいよ」

穂乃果「うん……」

にこ「じゃ、また明日……お休み」

穂乃果「……うん」


私は返事をして、その背中を眺めることしかできなかった

さっきまで温もりを感じてた手にそっと触れる

まださっきの体温が残っている気がするのは、熱のせいだ
きっとそうだ
158: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 17:52:56.31 ID:A3zfRIrz.net
……………


翌日
流石に2日も眠れば元気を取り戻すということで、すっかり元通りになった


穂乃果「みんな心配かけさせてごめんね」

海未「まったく、たるんでいるからそうなるんですよ!」

凛「そんなこと言って、海未ちゃん一日中そわそわしてたよね、かよちん?」

花陽「そ、そうだったねー、あはは……」

海未「なっ!?」

穂乃果「あ、あはは……」


心配そうなみんなを横目に、こちらを見ないにこちゃんをちらりと覗く
こっちを向いてはくれないけれど……安心してる、そんな気がする
159: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 18:50:17.90 ID:A3zfRIrz.net
穂乃果「とりあえず身体もなまっちゃったし、ちょっと走り込みしてくるね」

絵里「ええ、じゃあ私たちは屋上にいるから、頃合を見て合流してね」

穂乃果「ん、分かった」


そう言って、勢い良く私は部室を飛び出した
身体がなまっているのは事実だけど、なんとなく走りたくなったから

走っている間は、色んなことを忘れられると思ったから


……………


良い汗をかいた
本調子じゃないからみんなにうまく合わせられなかったとか、走ったせいで体力尽きてあまり本格的な練習ができなかったとかはあるけど、やっぱり体を動かすのは楽しいもんだ


海未「じゃあミーティングはこれくらいにして、今日のところは解散しましょう」


海未ちゃんの一言を皮切りに、みんながそれぞれの日常へと散り散りになる


穂乃果「にこちゃん、帰らないの?」

にこ「ちょっとPVの編集しようと思って」

穂乃果「もう遅いから、早く帰ろうよ」

にこ「……そうね」


そうして私は、にこちゃんの手を引くように部室から連れ出した
161: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 20:21:44.19 ID:DjoS/ujK.net
…………


穂乃果「とりあえず出ちゃったけど……」

にこ「どうせ宛てなんてないんでしょ?」


バレてた?
そりゃ、伊達に一緒にいないわよ
なんて下らない会話をしながら、私たちはすっかり日の沈んだ道を並んで歩く
宛てなんてない。けれどそれはそれで楽しい時間だった

時折覗かせるにこちゃんの照れた顔とか、私の失敗した話を笑いながら聞いてくれることとか

そんな大それたことはしてないけど、十分幸せだ


にこ「なんか、だんだん寒くなってきたわね」

穂乃果「うん、そうだね」


にこちゃんはそう言いながらカーディガンの袖を引っ張る
私は隣で軽く頷く
何気ない風景かもしれない
けれど、隣でにこちゃんが笑っているから、それで良いような気もする
162: 名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/ 2016/05/08(日) 22:38:30.66 ID:WcRq79ml.net
にこ「私……やっぱあんたのこと好きだわ」

穂乃果「照れてまで言うこと無いじゃん」

にこ「うっさい、なんか言いたくなったのよ」


なんて言うにこちゃんの顔が夕焼けみたいに赤くなっていて、なんか……


穂乃果「でも……やっぱ面と向かって言われると嬉しいかな」

にこ「何よ、やけにしおらしいじゃない」

穂乃果「私だってたまにはこんなことも言うよー」


笑ってはぐらかすけれど、心境が変わったのも確かだ
沈んだ夕陽を背にして、二人で歩いていく

……なんだか、気持ちを伝えるにこちゃんが、とても愛おしくてたまらなくなったんだ

なんて言ったらにこちゃんが飛び上がって喜びそうだったから、あえて内緒にしておこうと思う

……あ、そうそう言い忘れてた
これは私と彼女の、まっすぐすぎてお互い遠回りをしていく恋の話だってこと
169: 名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 07:32:42.28 ID:gd1Zx5I9.net
好きになってもらうって言っても、大して何か出来たというわけでもなく、むしろ気持ちがどんどん溢れて行きそうで

なんとなくこうして「好き」って気持ちを伝えることしかできなかった


穂乃果「でも……やっぱ面と向かって言われると嬉しいかな」


なんて言われて、本当はすっごく嬉しいのに、素直になれないわたしは毒づくことしかできない

そういう性分なんだから仕方ないと諦めても、自分で自分が嫌になってしまう

……でも、もし願うなら
隣で彼女がこうして笑っている時にいるのは私でありたい

そう願うくらいなら、許されてもいい気がする
171: 名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 21:51:35.82 ID:gd1Zx5I9.net
好きだって伝えてから、意識というか、気持ちというか、いろんな事が変化したような気がする
彼女に対する態度とか……ってそれはそこまで変化していないような気がするけれど

なんというか、こう……愛しさが中から溢れてきそうだった
それでも、思う事がある

穂乃果「それで、その時先生がさぁ」

にこ「……ふーん」

こうして、いつものように二人並んで歩く
そう、いつも通りなんだ
何か劇的に変化したわけでもなく、こうしていつもと同じ日常を過ごしている


穂乃果「じゃ、またね」

にこ「……ええ」

その背中が見えなくなるまで見送って、一つため息をつく

こうして、何もなく過ごしているなら、気持ちを抑えて、友達として過ごした方が良いんじゃないか?
その方が、お互い幸せになるんじゃないかって

いっそ、好きにならなきゃ良かったとさえ思えてくる
こんな気持ちになるなら、いっそ
……でも、だからこそ立ち止まる

私は諦めきれないし、諦めたくない

だって、私は、あいつのことを好きだから
好きな人が自分を好きになって欲しいと思うのは、当然のことだから
172: 名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 21:58:25.90 ID:gd1Zx5I9.net
……………


にこ「はあ……」

絵里「にこ、あんまため息をつくと幸せが逃げるわよ?」

にこ「わかってるわよ……出ちゃうもんはしょうがないじゃない」


空気が読めるというか、読めないというか……この友人は分かっているようでなにも知らなくて、かと思えば本質を突いてくるようなことを言ってくるから侮れない


絵里「あ、わかった!恋の悩みでしょ?」

にこ「……そんなんじゃないわよ」

絵里「……そう」


そんな「私は人の考えてること分かるのよ」なんて言いたげな顔をしたあとに、そんな寂しい顔をされては本音を話してしまいそうだ

それでも喉までこみ上げてきたそれをぐっとこらえて


にこ「ま、人間関係で悩んでいるって所は当たってるけどね」


と、フォローすることにした
絵里は元気を取り戻したようで、顔が少し明るくなった


絵里「にこは不器用だもんね」

にこ「うっさいわね、あんたに言われる筋合いはないわよ」

絵里「図星のくせに」

にこ「……うっさいバカ」


こいつの言う通り、不器用なことは認めよう
けれど、これから私は、どうやってあいつと付き合っていけば良いんだろうか
175: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 12:31:51.52 ID:i3qmTjma.net
心配してくれる絵里には申し訳ないけれど、一人で考えていた方が何かと楽なので、昼は部室でのんびりすることにした
……のだけど


穂乃果「やっほー」

にこ「ほ、穂乃果……」


まったく、なんだってこいつは会いたくない時にばっかり会ってしまうんだろう
どうやらお昼を食べようとしていたらしく、コンビニ袋からランチパックを取り出している


穂乃果「なんか、ここで食べると落ち着くんだよね」

なんて言いながら、穂乃果はランチパックを頬張り出す
それに触発されたからか私もお腹が空いてきたので、お弁当箱を広げる


穂乃果「そういえばさぁ……風邪引いた日なんだけど」

にこ「ん?」

穂乃果「にこちゃんなんか言ってた気がするんだけど……覚えてない?」


瞬間、胸が爆発しそうなくらい跳ねた
いきなりなにを言い出すんだこいつは。何か口に入れていたら一大事だった
動揺を隠しきれないまま私は


にこ「さあ?」


とふるえ声で答える。鈍感なこいつは気付いてくれなかったようで「ふうん、夢だったのかな」なんてアホ面をしている


弱っている穂乃果を見て襲いたくなった。


なんて、誰が言えるだろう、言えるはずもない
もし何をしようとしていたか、知られたらそれこそμ'sにはいられない

ああそうか、つまり私は臆病なのか

昼休みの空はどこまでも青く、私の気持ちとは裏腹に晴れやかだった
176: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 13:38:48.98 ID:i3qmTjma.net
……………


最近、気持ちの変化を感じる
それはほんの少しだけ、芽生えた感情
なんだか、にこちゃんのことが愛おしくてたまらない

今こうして、にこちゃんとお昼を食べているけれど、私はにこちゃんに近づきたいなと思っている


にこ「あんた……そんなランチパックばかり食べてるから太るのよ?」

穂乃果「……あ」


この前また海未ちゃんに体型のことで注意されたばかりだった……
頭を抱えそうになるけれど開けたものは勿体無いし食べちゃおうとかぶりつく
それを見てにこちゃんが呆れ顔で笑う

なんか、幸せだ
177: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 13:39:30.86 ID:i3qmTjma.net
穂乃果「にこちゃんは、お弁当作るとき栄養バランスとか考える?」

にこ「んー、一応彩りは考えるわね。野菜だけだと味気ないし、かといって肉ばっかだと茶色っぽくてやだし」


そう呟きながら、にこちゃんはプチトマトを一口食べる
なんな、小動物みたいで可愛いなぁって思ってしまった


穂乃果「へぇ……結構考えてるんだね」

にこ「適当よ、適当」

なんて悪態をついているけど、照れ隠しなのは見るだけで分かっちゃうあたり、にこちゃんは単純だなあ……と顔がほころぶ
すると、にこちゃんがお弁当を差し出して


にこ「……いる?」

穂乃果「いいの!?」

にこ「ランチパックだけだと飽きるでしょ」

穂乃果「わーい!って穂乃果箸もフォークも持ってないよ?」

にこ「これ使いなさいよ、まだ使ってなかったし」

穂乃果「あ、うん……ありがと」


にこちゃんが差し出した未使用のフォークを受け取る
その時、なんとなくがっかりしたことを、私もにこちゃんも気付いていない
178: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 13:40:04.04 ID:i3qmTjma.net
穂乃果「じゃあいただきまーす……ん、美味しいね」

にこ「当然でしょ?私が作ったんだから」

穂乃果「うん。ほんと美味しい!」

にこ「……もう一つくらいなら食べて良いわよ」

穂乃果「ほんと?ありがとう!」

こうして、何気なく過ごしている日常がたまらなく幸せだから、壊したくない

私がにこちゃんに抱いている感情の名前を、私は多分知っている

けれど、もし、また違っていたら
そう考えると、怖くて仕方なかった
182: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 19:57:22.85 ID:jMTtXA+6.net
……………


今日はなんとなく、一人で帰ることにした
ことりちゃんも海未ちゃんも用事はなかったみたいだけど、私にだってなんとなく一人で行動したい時くらいある

それに、にこちゃんも今日は一人でそそくさと帰ってしまったので一緒に帰る相手もいないから


穂乃果(それにしても、綺麗な夕焼けだなぁ)


空は燃えるように赤く、なんだかとても眩しい


きっと、私はにこちゃんのことが好き……なんだと思う

けれど、確信が持てない
また「たぶん」や「きっと」で、この感情を決め付けたくない

……そっか、きっも私は臆病なんだ

臆病だきらこそ、今度こそ間違えたくないんだ

その感情を、真剣に見つめていたいから
183: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 20:02:13.86 ID:jMTtXA+6.net
……………


人を好きになって、初めて知ることがある
自分の理性との戦いってやつだ

きっかけはこの前、穂乃果が倒れた時
不謹慎だけど、弱っている穂乃果を見て、その……少し触りたくなった。きっと欲に身を任せていたらそれ以上の事だってしてしまいそうだった
だからこそ、向こうから「手を繋いでほしい」と言われた時は全身から火が出そうになったくらいだ

そこからだんだん気持ちが溢れ出しそうで、そのせいで穂乃果を傷つけてしまいそうなのが怖い


にこ(……それにしても、綺麗な空ね)


空全体が明るい夕焼けに包まれていて、眩しさでつい眼を細める

……今日一人で帰ったのも、あいつに何かしそうな自分が怖かったからだ

恋って、こんなに辛いものなのか
私が不器用なだけじゃないのか

……いや、きっとどちらも正しいんだろう
恋はきっと辛いことの方が多いだろうし、私が不器用だこらこんなに悩んでいるんだ

真剣に考えているから、こんなに迷うんだって、自分にそう言い聞かせた
192: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 20:47:51.49 ID:jMTtXA+6.net
……………


昨日の綺麗な空はどこに行ったのかと問い詰めたくなるくらい、今日は暑い雲が悲しげに雫を降らせていた


穂乃果「雨かー……」

海未「風も強いですし、これでは屋上が使えませんね」

ことり「うーん、今日は解散で良いんじゃないかな?最近みんな張り詰めてたし、お休みの時間だって必要だよ」

海未「それもそうですね……では、私からみんなに連絡ておきます」


放課後、やることなくなっちゃったなぁ
最近はあまり練習以外のことで行動していないから、余計何もやることのなくなったことに対する虚無感を感じる


……あ、いや一つだけあった


最近は、にこちゃんと一緒に遊んでたかな
なんて考えながら、放課後のお誘いの文章を考えることにした
193: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 20:50:56.40 ID:jMTtXA+6.net
……………


雨の日は少し教室が暗いこともあって、先生の授業がいつも以上に子守唄のように感じる


にこ「ん?穂乃果から……」


小刻みに震えるスマホを取り出して、メッセージ内容を確認する


穂乃果<今日、練習なくなったみたいなんだけど、暇だしどっか行かない?


練習、休みになったのか……やることもないし良いか、それに嬉しいし
二つ返事でOKを出して、先生の眠くなる呪文との戦いを再開することにした


にこ(それにしても、この前も計画無かったし、どっか行きたいところでもあるのかしら?)


まあそんなことは穂乃果に任せてしまえば良いだろうと考え、先生の言葉は受け流して過ごしていた
194: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 20:54:34.32 ID:jMTtXA+6.net
……………


「ごめん、待った?」と駆け寄ってくる穂乃果に対して「私も今来たところ」なんて世辞は言えず


にこ「……遅い」


と、いつものように毒づいてしまう
それに対し笑いながら「ごめんってば」と返す穂乃果がいるから、私はこいつに甘えているんだなって思う


にこ「で、今日はどこに連れてってくれるの?」

穂乃果「んーとね、今日はちゃんと考えてあるよ」


まさか、と驚く私に反して穂乃果は胸を張ってやけに得意気だ


穂乃果「まあまあ、ついてのお楽しみってことで」


といたずらっぽく笑う穂乃果にときめいてしまうも「ふん、せいぜい楽しませてもらおうじゃない」と答えるあたり、やっぱり私は不器用だ
195: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 20:58:25.70 ID:jMTtXA+6.net
……………


それから45分くらいして、私たちは目的地へ到着していた
数日前に、同じところに来た気がする……


にこ「ここって……前来た天文台じゃない」

穂乃果「いやぁ、前はたこ焼きほとんど食べられなかったし……」


呆れた。本当食い意地だけは張ってるんだから
けれど実際に穂乃果が倒れてしまってその後の計画も崩れたことは確かなので、都合が良いといえば良かった


穂乃果「とりあえずプラネタリウムは前見ちゃったし、他のところ回ろうか」

にこ「そうね、結局売店とプラネタリウム以外まともに見てないし」

穂乃果「お互い寝ちゃったけどね」


「さ、行こうか」と前へ進む穂乃果の手に引かれるように、その背中についていく
いつもは当たり前の光景だったはずなのに、穂乃果についていくのがなんだか新鮮だった
196: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/10(火) 21:03:04.94 ID:jMTtXA+6.net
なんだかんだ、色んなところを回った
名前もわからない星や星座を見ながらお互いあーだこーだ言って
とんでもなく大きい望遠鏡を見て二人ではしゃいだり
なんか誰に渡すのか知れない変なお土産を買って

こうして穂乃果と売店で一息ついてアイスを食べながら、思うことがある
……もしかして、これって


にこ「なんか、デートみたいねー……」


と、ぼそりと呟いた
その直後


穂乃果「へっ!?」

にこ「え?」


穂乃果の声があまりに甲高かったので、つい振り向く
なんかからかわれるのかな、と思ったけど、予想は大きく外れていた
穂乃果の顔が、今まで見たことないくらい真っ赤に染まっていたのだ


穂乃果「え、いや……あはは何言ってるのかなにこちゃんは」

にこ「え、ちょっとほの」

穂乃果「あー!なんか喉乾いてきたかも!飲み物買ってくるね!」


逃げられたと言っても過言じゃないスピードで、穂乃果は自販機と反対方向へ行ってしまった

……なんなんだ、一体
202: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/11(水) 08:14:57.18 ID:ufKY5MuE.net
……………


息が切れて、ようやく立ち止まる

熱が引かない
心拍数が上がっている

そりゃ、あんだけ走ったら当然だろうと思うけど、なんか違う


……なんだったの、今の


たった一言、それも冗談みたいな台詞だった
なのに、なんで私はこんなに動揺しているのか、分からない

分からない、けど少しだけ嬉しかった、ような気がする
深呼吸して、ひとまず飲み物を買わないとって思ったけれど


穂乃果「自販機、逆方向じゃん……」
204: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/11(水) 20:09:25.58 ID:PeqwGOns.net
……………

体力も尽き、諦めて戻ったところ、にこちゃんが怪訝な顔をして私を待っていた


にこ「自販機反対方向だったでしょ……はい、代わりに買ってきたから」

穂乃果「あ、あはは……ありがと」


にこちゃんにオレンジジュースを差し出され、不恰好にそれを受け取る

……顔を、うまく見られない

意識しちゃうとどうしようもなくて、不自然につい目をそらしてしまう
にこちゃんは気付いているのかいないのか


にこ「何、また調子でも悪いの?」

穂乃果「あ、いやそんなことないよ?」

にこ「やめてよねー、また倒れられたらシャレにならないし」


なんて、いつものようにからかってくる
いつもなら私も「もー、大丈夫だって」なんて軽口を叩けるのに、今日に限って小さく頷くことしかできなかった


にこ「……たこ焼き、食べる?」

穂乃果「へ!?う、うんありがと!」


どことなくにこちゃんに気を遣われていることを感じながら頬張るたこ焼きは、なぜだかとても熱かった
205: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/11(水) 20:13:27.23 ID:PeqwGOns.net
……………


……なんか、様子がおかしい
今さっき穂乃果が戻ってきたけれど、目を合わせようとしないし口数がぐっと減っている
それに、近くに寄った時の反応といい、これは……

もしかして、意識されてる?

先程の発言に対する反応からもそれが伺える、ような気がする
それに、その反応の数々は見覚えがある
私がそうだったから、よく分かる


にこ「……たこ焼き食べる?」

穂乃果「へ!?う、うんありがと!」


……あんた、私のこと好きでしょ


と言いたくなる衝動につい駆られてしまう
いや、私も前はこんなんだったか……


穂乃果「たっ、たこ焼き美味しいね」

にこ「そうねー、こういうところの雰囲気もプラスよね」

穂乃果「そう、だね」


しどろもどろになっている穂乃果を見ると、ついからかいたくなる

……なんとか理性で押し殺すけど
208: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/11(水) 22:25:38.24 ID:PeqwGOns.net
にこ「それにしても、めぼしいところはだいたい行ったわね」

穂乃果「……あ、もう一つだけあるよ?」

にこ「え、どこ?」


んーとね、こっちこっち
と、せかせか歩く穂乃果について行く


にこ「って……外じゃないここ」

穂乃果「……天文台って、星が綺麗に見られるところに作られるんだよね?」

にこ「え?まあそうね」

穂乃果「じゃあさ、こっから見る星空ってすごく綺麗なんじゃない?」


ああ、そういうことか
それが好きな人と一緒に見る空なら尚更だ


穂乃果「でもまだ少し明るいね」

にこ「見えても金星くらいじゃない?」


空はまだ少しだけ夕焼けが名残惜しそうに残っている
遅くなるのもいけないし、帰ろうと方向を変えようとした刹那


穂乃果「……あ、見て!」

にこ「ん?」
209: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/11(水) 22:28:31.77 ID:PeqwGOns.net
空に、一瞬だけ光の筋が見えたような気がした


穂乃果「あー……消えちゃった」

にこ「流れ星なのかしらね」

穂乃果「なんで流れ星って構えてる時はこないくせに、こんな時ばかり来るんだろうね?」

にこ「へえ、じゃあ次見えたら何を願うの?」


穂乃果はうーん、と頭を抱えた後、一言だけ「内緒」と恥ずかしそうに答えた
じゃあにこちゃんは?と聞かれても私だってそんなのは内緒だ

でも、次もし見えたとしたら
今みたいな日常が、ずっと続けば良いのになって、思うのかもしれない
212: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/12(木) 10:01:32.55 ID:z/aCjDMQ.net
昼頃少し更新予定
215: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/12(木) 12:29:01.66 ID:z/aCjDMQ.net
……………


さすがに都会の空は向こうと比べ明るく、星も金星などの明るいものしか確認できない

時刻は既に19時を回っており、仕事終わりの会社員や居酒屋の客引きで賑わっている


にこ「もうすっかり夜ねー」

穂乃果「にこちゃん、時間大丈夫?」

にこ「今日はお母さんが休みだから大丈夫……てかあんたは大丈夫なの?」

穂乃果「まあ、うちは放任主義みたいなとこもあるから」


とはいえ、わざわざ駅前でやることはない
売店で結構食べたので、お腹も空いていない
とりあえず「ふーん」と返して、その辺りをふらつくことにした

……それにしても
さっきから穂乃果の様子が変だ。なんていうか……レトロRPGで勇者について行く仲間のように後ろを一定の距離を保ってついてきている
さすがに、これは歩きにくい
217: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/12(木) 13:16:59.61 ID:z/aCjDMQ.net
にこ「ねえ、穂乃果……そこまで人多くないんだし、後ろに居られると色々と迷惑なんだけど……」

穂乃果「はっ、えっ、ご、ごめん!」


少しきつめに告げると、穂乃果が恐る恐る隣へと移動してくる
……相変わらず距離を微妙に感じるけれど


にこ「どっか行きたいとこある?」

穂乃果「んー、ないんだよね」

にこ「……まあ結構遅くなってきたし、そろそろ解散しましょうか」

穂乃果「へっ!?」

穂乃果が「え、もう!?」と言いたげな顔をしながら振り向いた
本当に、この子は……色々と言いたいがそれをぐっとこらえていると、穂乃果が慌てながら続ける


穂乃果「あ、いや……そうだよね、もう遅いし心配させてもダメだし」

にこ「……そうね」

穂乃果「……また明日っ!」


穂乃果はそう言いながら、今度は彼女の自宅と逆方向へ駆けていく
さすがに追いかける気にもなれず、その背中を見送ることにした
218: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/12(木) 13:19:09.09 ID:z/aCjDMQ.net
……………


人ごみの中を掻き分けながら、ふと考える

穂乃果の感情のことだ

私だって鈍い方ではあるけれど、あんな反応を連発されては、流石にバカでも気付くだろう

けれど、自分の気持ちを早めるのはもう少し待とうと思う
決めるのは、穂乃果だ。私じゃない
きっと穂乃果がどんな結論を出しても、それを受け入れよう

だって、私は今の状況に十分満足しているのだから

……ほら、私はやっぱり臆病だ
221: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/12(木) 21:08:43.65 ID:z/aCjDMQ.net
慌てて走り出したけど、冷静に考えたら私の家は反対だ
息は整ってきても、胸の熱はなかなかどうして冷めてくれない

私は、きっとにこちゃんのことが好きなんだ
それでも、まだきっとだ

にこちゃんと一緒にいると楽しいし、幸せだ

でもそれが「にこちゃんと一緒にいるから」そうなのか、それともそうでないのか、まだわからない

そんな考えをしてしまうということは、それはやっぱり恋じゃないんじゃないか?

そう思うと、今より先へ踏み出せない
私は、まだ確信が持てない

……私って、やっぱり臆病だ
222: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/12(木) 21:12:21.71 ID:z/aCjDMQ.net
……………

今日の昼休みは、なんだか部室に行こうという気になれず、かといって教室で過ごす気にもなれなかったので、屋上からへ向かうとにした

別に部室へ行っても良いしにこちゃんにもし会えたら嬉しいし、いたとしたらくだらない話をしても楽しいかもしれない

けれど、なんとなく、空を近くで感じたくなった。一番の理由はこれかもしれない。幸い今日はとても良い天気で、雲もあまり出ていない。快晴だ

一体何度開けただろうかというその扉をくぐると、心地よい風が入り込んできた

もともとここの屋上は開放しているけれど、雨風が凌げないので生徒からはあまり人気がない

だからこそ、練習にはもってこいだったんだけど
228: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/13(金) 11:00:30.43 ID:7tuwbT2S.net
フェンスにもたれかかって、大きく深呼吸する
都会の空気ではあるけれど、街中で吸うそれよりはずっと澄んでいる

空は穏やか、なのに私の心は少し荒れている。荒れているというよりは何かに焦っていると言った方が正しいかもしれない

ぼーっと空を眺めていたら、不意にお腹が空腹のサインを鳴らす
そういえば、お昼を食べに来たんだと思い出し、袋からランチパックを開ける


そんなんだから、また太るのよ


なんておせっかいが聞こえた気がするけれど、お腹は空いてしまうしランチパックは美味しいから仕方ない

空腹と空が食欲を刺激しているような錯覚を覚える。噛み締めたパンは中々美味しかった


そんな時、扉が開いた
240: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/15(日) 07:29:56.21 ID:No40ojNp.net
絵里「あれ、穂乃果?」

穂乃果「絵里ちゃん?」


期待してた人とは違うけれど、それはそれで楽しくなりそうな人材だった
絵里ちゃんは私を捉えると、隣へとやってきて腰掛ける


穂乃果「絵里ちゃん、どうしてここに?」

絵里「なんか天気が良かったから遊びに来ちゃった。穂乃果は?」


私も似たような理由かな、と苦笑交じりに答える


絵里「……なんか、悩み事?」


その言葉に、一瞬だけ胸がどくん、と跳ねる
だんだん分かってきたけれど、絵里ちゃんは分かっているようで分かっていなくて、かと思えばこちらの図星をついてくるような事をさらっと言ってる

少しだけ目をそらしながら「なんで?」と問いかけると、その解答は実にあっさりとしたものだった
241: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/15(日) 07:35:08.44 ID:No40ojNp.net
絵里「え、顔が曇っていたからなんとなく?」


変な心配して損した、と肩を落とすとともに、なんだかんだ人の事を見ているんだなぁと感心する


穂乃果「まぁ悩んでいると言えば悩んでいるんだけど……」

絵里「前と同じ悩み?」


また一瞬だけ胸が跳ねる。本当に分かっているんだか分かっていないんだか
一言も返すことができなかったけれど、絵里ちゃんにはそれで察してもらえたようだった


絵里「なら、やりたい事を考えれば良いんじゃない?」

穂乃果「やりたいこと?」

絵里「あら、あなたが私に言ったのよ?」


そうだっけ?と軽く流すと、ちょっとしっかりしてよ、と苦笑交じりに返される


絵里「本当にそう迷ったなら自分勝手に、自分のやりたいことを考えてしまえば良いじゃない」


良いのよ、わがままでもなんでも
なんていう絵里ちゃんの横顔が、なんだかすごくお姉さんに見えるようだった
242: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/15(日) 07:38:43.29 ID:No40ojNp.net
……………


絵里ちゃんの言うことが、頭の中でぐるぐると反芻する

やりたいことを考える

思えば別に今回に限った話ではなく、いつもそうだったじゃないか
私の中で「かちり」と何かがはまったような気がする


自分の本当にやりたいことは


そうだ、いつだってそれは単純なことだった


好きかどうかなんてこの際どうだって良い、かもしれない
私は、にこちゃんと一緒にいたいだけだ
それで良いじゃないか。理由なんてなくったって、それで十分だった
246: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/16(月) 03:59:56.18 ID:SQUvIIS/.net
……………


今日は来ないのかな、なんてそわそわしてしまうと、我ながら恋する乙女みたいで少しだけバカらしい

それでも一人の方が何かと考えるのには楽だと思い直す

今のままでは、穂乃果とこれまで通りに仲良くなんてできない

何か行動を起こして、それで関係が壊れてしまうことがたまらなく怖い

だからこそ、一つの答えにたどり着く

それは、進まないこと

この状況に満足できているなら、それで十分だ
先へ進むことはなくったって、後ろへ退がることもないなら余計なことはしなくて良いってことだから

今こうして、穂乃果の隣で笑えているのが本当の望みじゃなくても、穂乃果も笑ってくれているなら、それで良い
247: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/16(月) 13:01:18.89 ID:qhBeueeE.net
……………


穂乃果「ねえにこちゃん、一緒に帰ろっか?」

にこ「ええ、そうね」


案の定帰りは穂乃果に誘われて、私もそれに快諾する
なんだかんだ、これもいつもの光景だ


穂乃果「今日の練習も結構大変だったね」

にこ「でもあれくらいやらないと、そろそろ大事な局面だし」


そうだね、なんて穂乃果は頬を描きながら苦笑する
いつものように、穂乃果と一緒にいることがたまらなく楽しくて、それでいて少し切ない

私は、停滞することを選んだから
変わらないことが得策だと思ったから、今こうしてここにいる

きっと、穂乃果も分かってくれる、なんとなくそんな気がする
248: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/16(月) 13:15:18.77 ID:sP6z3yjR.net
……………


穂乃果「でさ、穂乃果違うって言ったのに……」


なんて、会話が途切れないように下らない話を振りながら帰るけれど、どこかズレている錯覚を覚える
多分、原因はにこちゃんだ
こうしていつものように帰っているけれど、どこか距離感があるような気がする


にこ「いや、それはあんたが悪いんじゃない?」

穂乃果「……そうかなぁ」


いや、距離感があるわけじゃない
離れようとしていない、でも近づこうともしていない
そこで止まったままだ、だから違和感があった
251: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/16(月) 20:41:03.39 ID:phAMWL1L.net
この前の私のような、物理的に離れていることじゃない
どことなく、にこちゃんが私の事を拒絶しているような気がする
……いや、違う
私のことを、じゃなくてにこちゃんが、にこちゃん自身を拒絶している
確信は無いけれど、そんな気がした


にこ「どしたの、穂乃果?」

穂乃果「あ、いや、ううんなんでもない」


どうしてそんな風になっているのかは分からない
多分、にこちゃんにも思うところがあるかもしれない

けど、それでも


穂乃果「……ねえ、にこちゃん」

にこ「ん?」

穂乃果「ちょっと、手握っても良いかな?」

にこ「良いけど……はい」


ごめんね、と一言謝って、その手をそっと握る


穂乃果「ありがと、もう良いよ」

にこ「いきなりどうしたの?」

穂乃果「……ちょっと、ね」


その手は以前感じた緊張であったり、恥じらいというものが感じられなかった
もしかして、好きじゃなくなった?
それは違うと思った。だったらわざわざ一緒に帰ってくれるなんてありえないから

それ以上は何もできず、何も言えず、私とにこちゃんはいつも通りの帰り道を過ごしていた
260: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 08:38:35.47 ID:+xjcT9IY.net
今日も、空は青いなあ
なんて考えながら、いちご牛乳を啜りつつ空を眺める
そういえばにこちゃんもいちご牛乳良く飲んでるなぁ……って今それはどうでも良いか
空はとても透き通っていて、なんだか見透かされたような気分だった

昨日のことを思い返していた
まるで、何かを諦めたような横顔
それは、こちらにもそれ以上先へ進んではいけない脅迫めいた何かを感じてしまった
だから何もできなかった
だから何も言えなかった
つまるところ、私の臆病さが邪魔をしていた


希「あれ、穂乃果ちゃん?奇遇やね」

穂乃果「あ、やっほー希ちゃん」

なんだかここはいろんなお客さんが来るなあ
希ちゃんも以前の絵里ちゃん同様隣に腰をおろしてコンビニ袋を取り出した
261: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 08:42:13.34 ID:+xjcT9IY.net
穂乃果「希ちゃんもここでお昼?」

希「そやね。なんか天気が良かったから来ちゃった」


絵里ちゃんも同じこと昨日言ってたよ、なんて笑いながら返す
パリッとした海苔が香ばしそうなおにぎりを一口齧りながら、希ちゃんは


希「なんか、穂乃果ちゃん元気ないよね?」


一瞬心臓が胸から飛び出しそうになったけれど立て直し「やっぱりわかる?」と苦笑いする


希「穂乃果ちゃんは元気が一番!みたいな性格やしね」

穂乃果「なーんかそれみんな言うよね」

希「まあまあ、褒めてるんよ?」


なんて希が言うので、不満はぐっと喉奥にしまいこむことにした


希「なんの解決にもならんと思うけど、なんかあるならいっそ話してみ?」


そう言われて、何故か胸の奥がすっと落ち着いた気がした
262: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 09:00:55.93 ID:+xjcT9IY.net
少し大きめに深呼吸して、「私の友達の話なんだけど」なんて下手な前置きをしつつ


穂乃果「なんか仲良い人から避けられてるというか、変に距離を置かれているというか……よく分からないけど前よりも進まない感じなんだって」


希ちゃんが何かはっとした表情をした気がするけれど、気にせず続けることにした


穂乃果「相手の子は多分今より悪くならないためにそういう選択をしたんだろうけど、その子からしてみれば何それ?って感じで」

希「その子は相手の子のこと、好きなんかな?」

穂乃果「わかんない……でも大切にはしたいって」


希ちゃんが腕を組みながらうーんと唸る
何故か分からないけれど、私はその光景を生唾を飲み込んで見届ける
出てきた答えは、絵里ちゃんに勝るとも劣らないあっさりしたものだった


希「なら、きちんと話せば良いだけと違う?」
266: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 12:37:00.41 ID:+xjcT9IY.net
浸透していくような気がした


穂乃果「そうかもしれない、ね……うん、きっとそうだ」


希ちゃんはいつものようないたずらっぽい笑みを浮かべた後


希「まぁにこっちも穂乃果ちゃんも基本的に鈍感なくせに変なところで勘繰り深いし、案外お似合いやない?」


その一言で、全身の体温が一気に上昇していくのを感じた。


穂乃果「なっ、なっ……」

希「自分の友達、なんてさすがにベタすぎやない?」

穂乃果「まぁ、それは自分でもそう思うけど…」


顔を真っ赤にしてうつむくことすることしたできない私に対し、希ちゃんは「うちは何でもお見通しなんよ?」と言いたげな表情をしている。


希「ま、そんなわけやし、たぶん大丈夫よ」

穂乃果「そうやって他人事みたいに」


他人事やもん、なんて笑う希ちゃんも見ていると、なんだか心が洗われるような錯覚を覚えた。
267: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 12:50:16.20 ID:+xjcT9IY.net
……………


考えてみれば当然の事だ
人の気持ちなんて、そうそう汲み取れるものじゃないし、まして私は相手の事を少ししか知らない

希ちゃんの言う事は何の気もない当たり前の事かもしれないけど……私たちには必要な事だった

やっぱり、話をしよう
にこちゃんの気持ちを聞いて、私の気持ちを正直に伝えよう

考えるよりも先に、私はスマホを取り出していた
268: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 12:51:29.84 ID:+xjcT9IY.net
……………


穂乃果「来てくれてありがとね」

にこ「別に、気にすることないわよ」

夕暮れの部室の中で、私は今それと対峙している。
にこちゃんは昨日と同様に優しい声色の中に少しこちらを突き放すような冷淡な口調でこちらを見据えた。


穂乃果「隣、いい?」

にこ「良いけど……どうしたの?」


ちょっとね、と断りをいれつつにこちゃんの隣に空いている椅子に腰かける。
気を抜けば肩が触れそうで、顔から火が出そうになる。
いっそ、この熱が向こうにも伝わって、それで全て解決になれば楽なんだけどなぁ……
けれど、隣にいる鈍感娘はそんなことお構いなしのようだ。


にこ「……で、『ちょっと』って何よ」

穂乃果「にこちゃん、話をしよう」


だから、話さなきゃいけないんだ。
そうしないと、何も進まないから。
何も変わらないから。
272: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 20:15:54.46 ID:+xjcT9IY.net
……………


にこ「話って…なにを?」

穂乃果「分からない、けど……私たち、何にも知らないんだよ?」


何を、と聞こうとする前に穂乃果は続ける。


穂乃果「お互いのこと、相手が何を考えているのかとか、どうしたいのか、とか……当たり前の事かもしれないけれど、私たちはそんなことさえ知らないんだよ?」


そう熱弁する穂乃果は、何やら熱を持ってこちらへ語りかけてくる

にこ「……いいわよ、まずは何を話す?」

穂乃果「……私ね、ちょっとにこちゃんと距離があるような気がするの」


先ほどまでの熱はどこへやら、穂乃果はうつむきながら弱弱しい声色でそう告げた。
273: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 20:16:32.65 ID:+xjcT9IY.net
にこ「距離感?」

穂乃果「うん、なんだかよくわからないんだけど、最近にこちゃんが私から離れていきそうで」

にこ「……そんなこと、ないわよ」


返事がとぎれとぎれになってしまったせいなのか、はたまた別の確信があるのか、穂乃果の目は「嘘だ」とこちらへ問いかけているようだった。


穂乃果「……じゃあどうしてにこちゃんは近づいてこないの?何もしようとしないの?」


返そうと思った言葉は、穂乃果のそれにかき消されてしまう。


穂乃果「どうして、好きだって言ってくれたの?私も確かに言ったことはあるけど……でも、あの時私に言ってくれたのは違うでしょ?」

にこ「それは……」
274: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 20:17:18.30 ID:+xjcT9IY.net
何も言い返せなかった。
本当にその通りだったから。私は『穂乃果との関係を壊したくない』ばかりに『自分の気持ちに嘘をついてしまう』という愚行を重ねていた。

けど、だからと言って私の気持ちが何になるというのだろう。


にこ「じゃああんたはどうしたいの?」


ようやく、呻くような返答を行う。
穂乃果は少しうろたえながら。


穂乃果「……わからない」

にこ「結局わからないじゃないの。私があんたを好きだって言ったところで、それで何が変わるの?何も変わらなかったじゃない。何も変わらないなら、どっちも楽な道に逃げたいと思うでしょ普通?」

穂乃果「それは……!」
275: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 20:19:09.79 ID:+xjcT9IY.net
続きの言葉は出てこなかった。穂乃果は唇をかみしめながらただうつむいた。
そろそろやめた方が良い、と心の中で聞こえたような気がしたが、吐き出したものは出し切るまで止まってくれないのも事実だった


にこ「もう疲れたのよ、『好きになってもらう』なんて綺麗ごと並べたところで、私に出来ることなんて限られてる」


追い打ちをかけるように言葉を重ねる
これじゃ、まるで捨台詞みたいだ
私は、穂乃果を見ていられなくて、つい背を向けてしまう
けれど


穂乃果「……本当に、自分勝手だね、お互い」

にこ「……え?」


震える声にはっとして振り向くと、そこには頬を濡らす穂乃果がいた。
276: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 20:19:36.95 ID:+xjcT9IY.net
穂乃果「相手が相手が……って言っても、結局自分本位のことしか話していない。だからお互い分からないんだね」


胸を太い杭のようなもので打ち付けられた気分になる。

きっと、あいつも分かってくれる

そんな単語で自分の行動を正当化していただけだという事に、今ようやく気が付いた。
きっと穂乃果も同じことを考えたのだろう、だから自然と涙がこぼれているのだ。


にこ「……そうね」


と漏れ出した声とともに、氾濫したその川を指でせき止める。
涙でぬれているその頬に確かな熱を感じて、私も同様に涙を流していることをようやく知った。
278: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 21:17:29.09 ID:g+9tu3xR.net
にこ「じゃあ今度はあんたの話を聞きたい……本当はどうしたいの?」


今度は、心からしっかりとその言葉を告げる。
穂乃果は伸ばした私の手をそっと握りながら。


穂乃果「分からない、分からないけど……でも、それでも私はにこちゃんと一緒にいたい」

にこ「……それで?」

穂乃果「この感情が本当に好きって感情なのか、そうじゃないのかまだ分からない、でも……」


続きの言葉は、言わせなかった。
279: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 21:18:03.42 ID:g+9tu3xR.net
やってしまったという後悔と、唇の柔らかさを感じた熱情が混じって、慌てて顔を引きはがす。


にこ「……ごめん、つい」

穂乃果「良いよ。別に」

にこ「……なんか分かったこととか、ある?」


穂乃果は唇を人差し指で押さえた後、震える声で


穂乃果「もう一度してくれないと、分からない、かも」


ああ、もう……本当に
今度はお互いの体温を確かめるように、しっかりと向き合って。

こんな簡単なことなら、さっさとやっておくんだった

本当に一瞬のことだったけれど、永遠のような祝福を感じていた。
そう、その瞬間、私たちは永遠を手にしていた。

なんてね
280: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 21:18:52.08 ID:g+9tu3xR.net
……………

にこ「……結局、お互い変にこじれて遠回りしていただけだったのよね」

穂乃果「なんだかんだあっさりしたもんだったよね」


今日の帰りはいつもと違う。
当たり前のように感じていた街並み、人の流れ、空でさえも新鮮に思えた。
きっと、それは私の左手にいる彼女のせいだ。


穂乃果「やっぱり、こうしているとちょっと恥ずかしいね」

にこ「そう?私はようやく念願かなって嬉しい限りだわ」

穂乃果「いつも以上に手汗すごいくせに何言ってんのさ」


強がりも、こんな風に返されては打つ手がない
でも、それで良い。私は意地っ張りだけど、それが穂乃果に伝わっているのなら別にそれで十分だ
281: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 21:19:33.80 ID:g+9tu3xR.net
にこ「これからどうなるのかしらね?私たち」

穂乃果「というと?」

にこ「こうして晴れて付き合うことになったけど、まだお互いのことを知らないし、そもそも同性の交際って世間的に認められてないじゃない?」


だから、と続けようとした言葉は、穂乃果によって塞がれた
頬を染めた穂乃果を見た後、私も同様に顔を真っ赤にしながら抗議する。


にこ「ちょっと、いきなり何を」

穂乃果「でも、この気持ちは変わらないよ?間違ってても、私の気持ちは変わらない」


それに、と穂乃果が続ける


穂乃果「まだ始まったばかりなんだから、そういう先のことはまた今度考えれば良いよ」


私はそれに対して一番の笑顔で「そうね、そうよね」なんて返す。

そう、穂乃果の言うとおりだ。
私たちはまだ始まったばかりだ。

今の私の左手には、全てがある
今は、それで良い。
それだけで良いんだって、そう確信している
282: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 21:21:05.61 ID:g+9tu3xR.net
――綺麗な夕焼けだね

――ちょっと眩しすぎるくらいにね

――良いじゃん、綺麗なんだし


そういえば、夕焼けが真っ赤な翌日は雨が降るんだとか
まあ、そんなことはどうでも良いか、綺麗なのは確かなんだし


――ねえ、にこちゃん……好き、だよ

――なに、また勘違い?

――そ、そんなことないもん!

――ふふっ

――にこちゃんは?

――え?

――にこちゃんは、どうなの?

――聞くまでもないでしょ?私は……


燃える夕暮れに背を向けながら、それでも私たちは前へ進んでいく
283: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/05/18(水) 21:21:49.70 ID:g+9tu3xR.net
これにておしまい

知って欲しくて、知りたくて、触れてみたくて、感じたくて
好きってつまり、そういうこと

そんなテーマでした
ありがとうございました
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