【ことまき】 誕生日の短編+おまけ 【南ことり&西木野真姫】

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ことり-アイキャッチ19
1: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:10:26.72 ID:ruvcBbPj.net
ことまき課より

真姫ちゃんお誕生日おめでとう

まったりとどうぞ

※先に短くて誕生に関連のないおまけのシャンプーの話の方から

元スレ: 【ことまき】 誕生日の短編+おまけ 【南ことり&西木野真姫】

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2: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:13:14.87 ID:ruvcBbPj.net
「あれ、真姫ちゃん。
 どうしたの?」

「あ、ことり!」

ドアの前に背を向けて立っていた真姫ちゃんは、
私が部室に入るなり腕をがっしりと掴んで放してくれません。

そんな彼女はまるで、
火の手が迫っている時に水の入ったペットボトルを手に入れたような――
とにかく後がない必死の様子。

ここからは表情が見えないけれど、
これだけ密着していると普段は髪の毛で隠れている首筋が少し覗いていて、
ほんのりと汗をかいているのが、
はっきりとわかっちゃう。

「いい、希、凛。
 これが私の言っていた対価交換の『香り』よ。
 満足でしょ……?」

「……真姫ちゃん、
 変なこと言って逃げるのかと思ってたけど……
 そんな作戦は無意味だにゃー‼」

「当たり前やん。
 人に任せて逃げようと思った真姫ちゃんには、
 ちょっとお仕置きが必要だと思うんよ」

「うぇえ⁉
 ちょっ、
 ことりも何か言ってやりなさいよ!」

 三人が何か話してるけれど――ああぁ、さっぱり頭に入ってこない。
 
 何?
 
 この香りは何なの?
 
 品があって色っぽくて、
 フルーティーで……決して強くはないんだけれど、
 でも、何かとってもいい香り。

 と、そこで返事のない私を見てか、
 真姫ちゃんが振り向いて――あ、わかった。
 
 これ、真姫ちゃんからだ。
4: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:16:11.19 ID:ruvcBbPj.net
「ことり?」

惚けた私の表情を見てか、
不意を突かれたみたいに手を放す真姫ちゃん。

長くて可愛い睫を瞬かせて、
ピンチに少し瞳を潤ませつつ私を見つめる彼女が可愛過ぎて。

「ごめんね、真姫ちゃん」

先に謝って私は、
一言も話す間も与えずに……一年年下の彼女を抱きしめていました。

でもそんな真姫ちゃんは、
私よりも背がほんの少し高くって。

髪の毛の香りを嗅ごうと思うと、
本当にごく自然に顔を埋められる高さで。

邪な気持ちはないんだけれど、
ただただ私は、
自身の水面下で揺れ動く心も理解できないまま、
感覚を真姫ちゃんで埋め尽くしたいって、
思ってしまいました。

「すごい。すごい良い香り……」

鼻を首筋の辺りに押し付けているからか、
さっきよりも香りが頭の中にはっきりと広がって、
でもそのたびに私の頭はぼんやりとしてわからなくなっていく。

何かな。
柑橘系?

控え目で爽やかな柑橘系の香りと……そして、
相反するように強めで若干クセがあるような、
けれどとても安らぐ心地のいい香りが混ざった香りの感覚が、
鼻孔を通して全身を包んで。

「やっ、やめな、さい、よぉっ…………!」

真姫ちゃんは必死にそう言うけれど、
私の制服をぎゅっと掴んでいて、
決して力を込めて引き剥がそうとはしませんでした。

少し視線を移してみると彼女は頬を真っ赤に赤らめて眉尻を下げていて、
思っていた以上に不機嫌ではなさそう。

と、そこで。

「ストップストップストップ、すとーっぷ‼
 ことりちゃん、もうそれぐらいでええと思うんやけど⁉」

真姫ちゃん並みに顔を真っ赤にさせた希ちゃんと凛ちゃんに、
割って入られちゃいました。

はっと我に返ったように、
真姫ちゃんは私たち三人から離れて部室の反対側で小さく屈みこんでしまいます。
5: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:19:06.81 ID:ruvcBbPj.net
「こ、ことりちゃん!
 そ、それで、どうだった……?
 真姫ちゃんの香り」

恥ずかしそうにしていて全く目を合わせてくれないけれど、
凛ちゃんが私にそう質問を投げかけてきて、
改めて自分がとっても恥ずかしいことをしていたことに気付かされて――
ここで初めて恥ずかしさに頬が染まるのを実感しました。

「うん、とっても、と〜っても良い香りだったよ」

「う〜ん、ことりちゃんがこれだけの反応をするんやったら、本当かもしれんね……」

「いったい何が?」

「いや、今日真姫ちゃんが香水をつけてきたらしいんやけど……」

「香水!へぇ〜、それでとってもいい香りだったんだね!」

真姫ちゃんとおんなじ香りに包まれることができるって思うと、
何だかこそばゆいような気はするけれど、
とっても楽しそう。

「それがね!
 真姫ちゃんの香水、二万円するっていうんだよ〜⁉
 そんなの嗅いで違いが判るとも思わないけど、
 絶対嗅がせてもらわないとーって。
 真姫ちゃんが嫌がってばっかりだったからちょっと交渉してたところだったんだにゃ」

「だ、か、ら!
 そんな風に詰め寄ってくるから嫌って言ってたのよ、
 私は!
 それにいつも使う訳じゃないし、ちょっと試してみようって思っただけで、
 別にあなた達二人の気を引こうって思ったわけじゃ!
 あっ……うう」

何かを言いかけてからふんっ、
とそっぽを向く真姫ちゃん。

でも、私はせっかくお揃いの香水をつけられると思ったのに、
ちょっと値段に手が届かなくって、
内心少し……ううん、
結構大きなショックを受けてしまいました。

「そっかぁ。私、真姫ちゃんとお揃いがよかったけど、ちょっと、無理だね……」
7: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:22:13.88 ID:ruvcBbPj.net
その後真姫ちゃんは結局、
あっさり二人にも香水を嗅がせてあげたみたい。

それからの練習の時も私はほんの少し引きずってしまって、
海未ちゃんにちょこ〜っとだけ注意されちゃいました。

帰る前には真姫ちゃんが近くに来て
「部室ではごめんなさい、急に驚かせて」
って心配されちゃって。

部室でのことを思い出して互いに頬を朱に染めつつも、
ちょっと髪の手入れとかシャンプーの話を一緒にして、
その日はすぐに家に帰りました。

あんまり元気がなかったから、
ぼーっと長湯しちゃって、
それからはすぐにベッドに入って眠っちゃった。



次の日の昼休み。

教室の皆が弁当を開け始める頃、
真姫ちゃんがひょっこりと私達二年生の教室にやってきました。

若干恥ずかしそうに頬を赤くしながら、
私に向かって手招きをして。

「ことり、ちょっといいかしら」

呼ばれるままに、
私は席を立って彼女の方へ。

「昼食、一緒に食べてもらってもいいかしら?」
9: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:28:30.02 ID:ruvcBbPj.net
穂乃果ちゃんと海未ちゃんに手早く事情を説明して、
真姫ちゃんと一緒に廊下に出ました。

昨日のことがあって恥ずかしかったから、
私は彼女の少し後ろを保つ歩幅で、
私達の部室へ。

なんだか昨日の一件以来、
真姫ちゃんの首筋を見る癖が付いちゃったかも。

別に暑くもないし走ってもいないのに、
ほんのり汗かいてる。

まあ私も人のことは言えないかもしれないけど。



部室に到着した私達は弁当を机に置いて、
ただ席に座るはず、
だったんだけれど。

「あら、ことりはそこに座るの?なら私もそっちに座るわ」

わざとちょっと離れた場所に座ろうと思ったのに、
なぜか真姫ちゃんはわざわざ私の隣に移ってきちゃって。

「せっかく二人で食べるんだし、あんまり離れる意味もないでしょ?」
って笑いかけてくれる彼女が、
何だか私よりも大きく見えて。

せっかく真姫ちゃんが気を使ってくれてるのに、
私の方が子供みたいって、
思っちゃいました。
11: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:31:06.22 ID:ruvcBbPj.net
「……それに、近くじゃないとわからないでしょ?」

急なセリフに少し首をかしげると、
真姫ちゃんが私の肩にもたれて、
そのままぴったりと頭をくっつけてきました。

一瞬何が起こったのかわからなくって、
真っ白になったけれど……
ほんの少しそのままの体勢でいると、
昨日私の家のお風呂を満たしていて、
今私の髪に少し残っている、
甘い香りに気付いちゃって。

「ことり、私とお揃いがよかったんでしょ?」

たぶん、
ううん、
見なくても私の顔が、
真っ赤になってるのがわかる。

もう、
だってすっごく熱いんだもん。

そのセリフは真姫ちゃんにとってもさすがに恥ずかしすぎたのか、
慌てて元の体勢に戻ってしまいます。

もちろん私と同じく、
その気恥ずかしさに悶えるような色で頬を染めて。

やっぱり昨日想像したみたいに、
真姫ちゃんとおんなじ香りに包まれるのはこそばゆくて、
でもそれ以上にその気持ちが嬉しくて、
とっても幸せだってことに気付けたよ。

それを真姫ちゃんに伝えると、
すごく恥ずかしそうな表情をした後、
弁当のプチトマトを床に落としちゃってた。

だからもう一つの気付いたことは言わないね。

そう、もう一つの気付いちゃった事なんだけど、
私があそこまでいい香りだと思ったのは……
たぶん香水じゃない方の香り、
心地よくて安心するような誰かさんのせいってことです。
12: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:33:34.27 ID:ruvcBbPj.net
おまけはここまで

まあおまけだからね

誕生日の方は文の量が大体
これの3倍くらいの長さだぜ

とりあえずここで続ける
14: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:40:05.99 ID:ruvcBbPj.net
「真姫ちゃん、寂しいの……?」

……ええ、そうよ。
寂しがり屋で悪かったわね。

「ふふ、何だかおかしいね。
 私、真姫ちゃんなら絶対にここにいると思って来たんだ」

まったく、変なこと言うのね。
それで、どうするの?
ウチの部にも新入生、そろそろ入ってくるわよ?
こんなところで座ってる場合じゃないんじゃないの、三年生さん。

「も〜。
真姫ちゃんだって、人のこと言えないでしょ?
 ピアノの前で泣いてたのに」

う、うるさいわね!
さっさと用件を言いなさいよ。
どうせ寂しいから、以外にもあるんでしょ、理由。

「えへへ、やっぱりばれちゃったか。
 あのね、真姫ちゃん。
 ……穂乃果ちゃんも海未ちゃんも、二年生の時のリボン、あげたんだって」

……何が言いたいの?

「誰がいいかな〜って、考えたときにね。
 何となく、音楽室に一人でいる真姫ちゃんが思い浮かんだの。
 だから決めたんだ。
 私のリボン、真姫ちゃんにあげよう。って」

……いいの?
私なんかに?
だって、これ――

「私がもらってほしかったからいいの。
これで少しは、寂しくないでしょ?」

でも。

「あ〜、そうだなあ……じゃあ、真姫ちゃん。
代わりに私にも、去年使ってたリボン、
譲ってもらえないかな」

…………仕方ないわね。
そこまで言われると、断れないじゃない。
今度持ってくるわ。

「うん、ありがと。
 じゃあ真姫ちゃん、動かないでね――」
15: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:43:28.53 ID:ruvcBbPj.net
……これでいったい、何度目かしら。
首筋にかいた汗の不快感を我慢できずにさっと手で拭った私は、
嫌々ながらもベッドの上で体を起こした。

「まただ……」

呟きたくもないのに思わず独り言を零しながら、
近くにある携帯の電源を入れる。
画面のまぶしさに目を細めながら見た日時は『4月19日02時48分』。
今までの人生で一番寝覚めの悪い誕生日、ってところかしら。
深夜に目が覚めてしまった理由をことりのせいにして、
ほんのちょっぴり不機嫌に頬を膨らませる。

――連日やってきたのと同じようにすればいいの、
別に誕生日だからって何も変わらないわ。
あれには頼っちゃダメ。
そう心の中で自分に言い聞かせながら、
まだ激しく体の中を跳ね回って止まらない心臓のある位置に手を当てて、
すぅっと落ち着いて深呼吸。
暗闇に目を慣らして、部屋の隅をぼーっと見つめるの。
そうすれば自然に落ち着くはずよ、
ここ一週間はそれで何とか収まってるんだから。
16: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:46:17.12 ID:ruvcBbPj.net
……でも今日は、
今日こそはことりと話さざるを得なくなりそうな予感がして、
そう思うとむしろ胸の痛みは収まらなくって。
気が付けば電気のついていない部屋の中でも
見えてしまっていた机の上のリボンに向かって、
少しふらつきつつ足を動かしていた。
はっきりと指に伝わるその感触に、手がピクリと震える。
慌ててそれを掴んで急いでベッドの中へと舞い戻った私は
一層早鐘を撞き始めたのを何とか鎮めるように、
ぎゅっとそれを胸に押し当てて布団の奥まで潜り込んだ。
ことりが原因のはずなのに、
こうすればそばにいるような気がして、
少しずつ痛みが心地よさに変わっていく。

「ことり……」

こうして布団の中で聞くのは久しぶりだけれど、
彼女の名前を呼ぶ私の声はやっぱり自分のものじゃないみたいで、
誰かわからなくなる。
でもこうして名前を呼んでいるだけで心が満たされるのは、
確かなことだった。
ただ、その代償は――朝まで目が冴えて、眠れなくなるってこと。
17: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:49:04.75 ID:ruvcBbPj.net
あれは音ノ木坂学院が無事入学式を終えた日の出来事。
忘れるはずもないわ、
それ以来毎日夢に見て起こされてるんだもの。

入学式について率直に、端的に、感想を言うと……
廃校から無事に学校を守り抜けたことは、当然嬉しかった。

けれど、
3年生はもういない、
来年にはすでに最上級生となった三人とも別れなければならい、
そして私達2年生が新入生を支えていかなければならない。

そんな当たり前の事実を再認識してしまったばかりに、
去年の間に少し緩くなってしまった涙腺から零れだす何かを誰にも見せたくなくって、
私は音楽室に逃げ出した。

昔は大好きだった音楽室での弾き語りソロコンサートも、
今となっては余計に寂しい気分にさせられて。

口では「続ける」と言ったスクールアイドルを
こんな調子で本当に続けることができるのかなって思った時に、
私のユニットにはもう自分一人しか残されていないことに気づいてしまって。

とうとうピアノを弾く指が、
止まってしまった。
18: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:52:09.19 ID:ruvcBbPj.net
そんな時にふらりと現れたことりが、
ここ数日の悩みの原因。

おっとりしてるように見えて意外としっかり皆のことを見てる、
一つ年上の……あぁ、違った。

今は同い年なんだ。

とにかく、一つ学年が上の彼女は私のこともしっかりと見ていてくれて。

うっとりするような優しい声で、

「これで少しは、寂しくないでしょ?」

って去年使っていたリボンをくれたの。

少なくともそこまでは、私も平静を保てていたわ。

問題はその後。

目と鼻の先まで顔を寄せてきたことりは、
思わず声が出なくなるほどの優しい笑顔を向けてきて。

そして新品のリボンをそっと
――それこそ宝石でも扱うような手つきで――外して。

それをピアノの上に置いた後に、私の首に手をまわして……。

前までつけていたものよりかは当然艶はないけれど、
ずっと価値のある甘い香りのリボンを、結んでくれたの。

結局二言三言何も考えられない私の前で口を動かした彼女は、
足早に音楽室から出て行ってしまった。
19: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:55:19.67 ID:ruvcBbPj.net
それ以降、とてもささやかとは表現することができない胸の鼓動は
そのことを思い出すたびに止まらなくなってしまった。

原因はどれもこれも全て、
ことりのせい。

会話をしてしまったら私の何かがおかしくなってしまいそうで、
あの日以来ことりとは一言も喋っていない。

放課後にアイドル研究部へと足を運んでもそわそわして何も考えられなくって、
彼女が来た途端花陽か凛のところへ行くようになってしまった。

あと付け加えるなら、
1年生の時に私が使っていたリボンは数日前にことりの下駄箱へと、
恥ずかしさごと殴りつけるようにして押し込んできた。

勢い余って落ちたのをあわあわ拾って焦ったりはしたけれど。



……それでも、貰ったリボンはいつもつけたまま。

さっさと外せばいいのに、って思いつつも、
通学中でも授業中でも、あるかも分からないほんの少しの残り香を感じたくて、
少し鼻に近づけたりしてしまう。

私は原因がことりであるということしか分からない自身の変化に、
どうすればいいのかさっぱり分からなくなっていた。
20: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 20:58:11.50 ID:ruvcBbPj.net
結局あれ以来一睡もできずにずっとことりのことばかり考えていた私は、
少し眠い目をこすりつつもリボンをつけて学校へ登校。

たった数週間前の3月から
随分遠いところへ来てしまった感覚に陥りつつ、
2年生の教室へ。

正直なところ、この教室も今の私にとっては害悪だった。

初日こそ目新しさを感じる事はあったけれど、
二日目にことり達が去年使っていた教室だということに思い当たってから、
また彼女のことを考えてしまって気が気でない。

何らかの病気で体が鈍ってしまったのね、
って明白に見て取れる緩慢な動作で椅子に座った後、
少しでも眠気を無くそうとすぐに机に突っ伏してしまう。

ああ、またリボンが鼻の近くに。

あのたおやかで可愛い先輩は、
寂しくないように〜なんて言って、
私には絶対に引き抜くことができないナイフを
胸に突き立てていったんだわ。

そうに違いない。
21: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:01:17.66 ID:ruvcBbPj.net
なんて考えながら少しでもそれを引き抜こうと、
無意味にリボンの先っぽを指で引っ張ってむなしい抵抗をしていると――
「ま〜きちゃん!お誕生日だねっ、おめでと〜!」と視覚外からの強襲。

正直言って恥ずかしかったしびっくりもするけれど、
この全身で擦り寄ってくる凛の攻撃は嫌いじゃない。

「真姫ちゃん、お誕生日おめでとう!」

何とか顔を上げると、いつでも安心させてくれる花陽の笑顔。

この二人と一緒にいるときは鋭い刃先が少しだけ柔らかく丸まって姿を潜め、
落ち着くことができる。

言わば、私にとっての癒し空間ね。

「西木野さん、今日誕生日だったんだ」

「おめでと〜」

二人につられるようにして、近くのクラスメイトが声をかけてくれた。

今までなかなか経験したことのない事態に、
素っ気なくなってないかな、
なんてことを思いながらお礼を言っていると……

「ねえ、真姫ちゃん、また眠れなかったの……?
 2年生になったばかりの週も寝不足だったけど」

「最近は大丈夫だったのにねー。
なんだかすっごく眠たそうだにゃ」

ピクリッ。と、
体が自分の意思に反して揺れる。

二人そろって至近距離で顔をじっと見てくるから、
私は思わず立ち上がってしまった。

今朝鏡を見てきたときには隈はなかったはず、
と思いつつも急いで後ろを向いて、
ポケットから取り出した小さな手鏡で確認。

一先ずほっと胸をなでおろす。
22: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:04:08.03 ID:ruvcBbPj.net
「……ひょっとして、ことりちゃんのこと?」

凛の想定外の言葉に、
脳天に直接パンチを入れられたみたいに頭が真っ白になる。

今、その言葉はタブー中のタブーだっていうのに。

まさかあの凛がことりのことに気づいてたなんて。

上手く隠してたつもりなのに、
おかげで顔に朱色を注がれちゃったわ。

「べ、別にそういう訳じゃないけど……なんでそう思ったのよっ」

「だってさすがにわかるよ〜。
真姫ちゃん最近、ことりちゃんを見る度にドギマギしてるんだもん」

「そういえば、名前を聞くたびに今みたいにリボン触ってるよね。
 入学式までつけてた新品のじゃないみたいだし……」

……す、鋭い。
23: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:08:02.02 ID:ruvcBbPj.net
「あ。
 でもね、私は、
 ちゃんと二人の間で解決した方がいいと思うんだ。
 この前相談してみたら、
 穂乃果ちゃんも海未ちゃんもそう言ってたよ」

そう言い切った花陽は、
どうしても辛いときは私と凛ちゃんに頼ってくれてもいいけど、
と繋げつつ、
私に向かってニッコリと微笑んでくれる。

そんな彼女は2年生になってからますます頼もしくなって、
勉強とかは教えてあげたりするけど本当に助けられてばかり。

一年前の彼女に、この事を教えてあげたいわね。

「ありがとう」

そんなこんなで素直にお礼を言ったら、
授業開始直前まで二人に抱きしめられて揉みくちゃになってしまった。

まあ、今までとは違ったこういう誕生日も、悪くはないかもしれない。
24: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:11:09.52 ID:ruvcBbPj.net
「ほのかちゃぁん、うみちゃん……
 わたしもうダメかも」

「もう!
 何を言ってるのことりちゃん、
 今日言うって言ってたのに〜!」

「そうですよ、ことり。
 さすがに明日からは黙っていられません!」

今日は真姫ちゃんの誕生日。

うん、そんなことわかってる。 

でも、でもでも。

「やっぱりむりだよ〜!」
25: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:12:06.46 ID:ruvcBbPj.net
3年生になってからというものの、
ことりは毎日よく眠れていません。

その理由は――自分のせいでもあるけれど――
とっても可愛い後輩の女の子です。

あの日のことは、忘れるはずがないよ。

だって、毎日その事ばかり考えてるんだもん。



私達幼馴染三人組は入学式の前日にも
普段通りおしゃべりしてたんだけど、
その中で些細なことが話題になったの。

穂乃果ちゃんが雪穂ちゃんにせがまれて
2年生の時に使ってたリボンあげちゃったんだ〜って言ったら、
海未ちゃんもこの前実家に帰ってきていた
お姉ちゃんにせがまれて渡したっていう、
ちょっとした話。

それで私も誰かにあげたいな〜って考えたときに、
ふと何となく、
音楽室に一人でいるあの子が思い浮かんで……。

それで気が付いたら私はその日の夜、
去年使っていたリボンをカバンの中に入れていたの。
27: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:15:16.19 ID:ruvcBbPj.net
次の日。

入学式が終わった後にふらふらと向かった音楽室には
想像していた以上にあっという間に着いてしまって。

今いるのかな、なんて軽い気持ちで覗いた私の目に入ったのは、
泣きながらピアノの前に座っている真姫ちゃんでした。

そこからはなんだか自分でもびっくりするくらい
思ったことが素直に口を衝いて出て、
あげようと思っていたリボンもプレゼントして。

……少なくともそこまでは、私も平静を保てていたの。

問題はその後。

リボンをつけ終わった真姫ちゃんをそっと近くで見つめていると……。

彼女は可愛い顔をびっくりするくらい真っ赤にして放心しかけていて。

そこで初めて気づいたの。

「誰がいいかな〜って、考えたときにね。
 何となく、音楽室に一人でいる真姫ちゃんが思い浮かんだの。
 だから決めたんだ。
私のリボン、真姫ちゃんにあげよう。って」

「代わりに私にも、去年使ってたリボン、譲ってもらえないかな」

この言葉が、まるで告白しているみたいだってことに。
28: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:19:07.01 ID:ruvcBbPj.net
全くそんなつもりは、
私にはなかった。

真姫ちゃんにリボンをあげたかった、
っていうのは本当に自然に思い浮かんだこと。

でも後になって考えれば考えるほど、
私は真姫ちゃんのことが、
その……すき、みたいに思えてきて。

あの時は私までつられて、
おんなじような顔をしちゃってたと思う。

そこからは自分でも何を言ってるか分からなかったけど何とか言葉を繋いで、
逃げるように音楽室から出ちゃったの。



それ以降、
真姫ちゃんのことを思い出すたびに体がざわついて、熱くなって。

自分でしたことなのに
何でこんなことになってしまったのかに理解が追い付かなくて。

すぐに穂乃果ちゃんと海未ちゃんには、ばれちゃった。

真姫ちゃんとお話をしてしまったらどうなるか分からないけど、
けど何とかして話したくて。

何度も部室で真姫ちゃんの方を見るんだけれど、
自分から話しかける勇気はなくって。

結局一度も話せないまま、今日を迎えてしまったの。
30: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:22:13.00 ID:ruvcBbPj.net
「う〜、なんかもどかしいよ〜!
あの海未ちゃんですらここまで言ってるんだよ、
あの海未ちゃんですら!」

「その言い草はなんですか、穂乃果。
親友の悩みとなれば、
いくら恥ずかしいことでも本気になります。
今日を逃してしまってはいつまでも解決しない、
そう思っているから私は言っているんです」

「ね?
海未ちゃんでもこう言ってるんだし、
本当に今日何とかしなかったら二人きりにするの手伝っちゃうよ?」

「で、でもぉ……」

これはことりと真姫ちゃんの問題だもん。

それは別に親友の二人や、
凛ちゃんと花陽ちゃんに頼りたくないってことじゃない。

それは心の中のどこかで、
私たち二人で何とか乗り越えたい問題だ、
って思ってるから。

全てが終わってから、μ’sの皆にはちゃんと結果を伝えたい。

ポケットの中に入れてある真姫ちゃんのリボンへと、
何か解決の糸口はないのかなって、
視線を移してみる。
31: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:25:54.36 ID:ruvcBbPj.net
「ことり。
きっと例の提案も真姫なら喜んで受け入れてくれますから」

「そうだよ、
まずは今日の放課後こそちゃんとお話ししなくっちゃね」

私はどうしても不安になりながらも、
二人に返事をしました。

本当に、
この二人にはいつも助けられてばっかり。

もし私一人で抱え込んでいたら、
たぶんそれこそどうにもならなかったと思う。

今はまだ何も行動に移せてはいないし不安だけれど、
前に進みたいとは思っていられるもん。



その後。

授業の間も私はずっと、
真姫ちゃんのことばかり考えていました。

私の方がお姉ちゃんなんだから私から頑張って近付いて何とかして、
『例の提案』もちゃんとする。

それを何とかして今日の間に、
絶対成功させないと。
32: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:28:04.94 ID:ruvcBbPj.net
そう思っている内に訪れた昼休み。

ずっと勇気の出なかった私の後押しをしてくれる、
大きな出来事がありました。


何となく外の空気をいっぱい吸いたくって中庭へ出た時に、
凛ちゃんと花陽ちゃんに挟まれてお昼を食べている真姫ちゃんを見つけたの。

こっちには気付いていなかったみたいだったから
少し眺めてみることにした私は、
あなたのおかげでこんなに悩まされてるんですよ〜、
って小さく呟きつつも今日もかわいいなぁって思ってしまって。


――そんな時にふと気づいちゃったんだけれど……
真姫ちゃんが何回も、
プレゼントしたリボンを顔に近づけていました。

その表情はとっても幸せそうな、
でも何か苦しそうな感じで。

今まさに真姫ちゃんを見ている私とおんなじような表情に思えて。

それで私もポケットに入れてあった真姫ちゃんのリボンを
取り出して胸に押し当ててみると、
とっても力をもらえるような気がしたの。

『なんだか、言えそうな気がする』

そう思ったのはあの日以来初めてのことだったから。

私はこの気持ちが弱まる前に、
絶対に今日中に思いを伝えようって、
そう決心することができました。

教室でもずっとリボンの香りを嗅いでいたから
皆の視線を感じたような気はするけれど、
それでも揺らがないほど今ははっきりと、
真姫ちゃんのことを真正面から考えることができるの。

一時も早く、
この気持ちを伝えたいって。
34: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:31:21.59 ID:ruvcBbPj.net
とうとう訪れた放課後。

花陽と凛は少しやっておくことがあるからって、
明らかに不審な様子で先に教室から出て行ってしまった。

まあさっき穂乃果からこっそり連絡が来てたのは知ってるけど、
当然私は知らないふり。

何の連絡かは知らないけれど、
一年生にも伝達に行ったのね。

あれだけダイレクトにおめでと〜って言っておいて、
サプライズの計画でもしているのかしら。

そんなことより問題はことりよ。

今の時間に一人で行っても、二人きりにならないかしら。

最近は私の方が部室につくのは早いし、
いつも穂乃果や海未と一緒に来るから大丈夫だとは思うけれど。

もしそんなことになったらどうなってしまうのかしら。


なんて少し不安になりつつ部室へと向かう私は内心、
たまたま二人きりになってしまうのも問題を解決するためには悪くない、
なんて考えていた。

軽く呼吸を整えた後ドアをゆっくり開く。

するとそこにいたのは――
ドアの近くの壁にもたれて、
思わずたじろぐほどの可愛さを繕いながら、
私のあげたリボンを握っていることりだった。

……前言撤回。

一瞬目があっただけで二人きりは私が持たないと気付いて、
恥を捨てて逃げ出そうと思った。

けれど急に開いた扉に一瞬びっくりしただけのことりは
すでに決め込んでたみたいに私の手を掴んで、
そのまま抱きつかれて部室に連れ込まれてしまう。
35: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:34:13.05 ID:ruvcBbPj.net
「は、放しなさいよことりっ!」

「いやだよ、真姫ちゃん。
逃げないで」

「で、でも……ッ」

私は今にも死にそうなのに、
ことりはどうしてそんなに落ち着いて話せるの?

私はこんなに息が荒くなってるのに、
ことりはどうしてそんなにゆっくりと呼吸できるの?

私の心をこんなに滅茶苦茶にしておいて、
なんでそんなに平然としていられるの?

本当に、ほんっとうに意味わかんない。

「ねえ真姫ちゃん。
ちゃんとそれ、
つけてくれてたんだね」

「…………」

「待たせてごめんね。
私、本当はもっと早く真姫ちゃんと話したかったんだよ」

言葉が浮かばない私は、
だんまりを決め込む。

いったいどうすればいいっていうの?

全然意味の分からない状況のはずなのに、
次第に私はことりから離れたくなくなってくる。

言葉は使えない状況で本来は気まずいはずなのに、
というか半分はそれで合ってるのに、
それでも彼女の温もりがとても心地よくて、
今はとても逃げようなんて思考に至らなかった。
36: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:37:07.29 ID:ruvcBbPj.net
「ちょっとごめんね」

軽やかに奏でられる音色のような声でそう告げたことりは、
一旦私からそっと離れてしまう。

一瞬で温度が全て奪われてしまったような感覚に陥った私は
なんでことりにずっと触れていたいのかはさっぱり分からないけれど、
とにかく彼女が今の私に必要なんだってことだけは、
理解できた。

――と、そんな風に私は惚けていたのだけれど、
ことりが急にブレザーを脱ぎ始めるものだから、
ビックリして一気に心臓の鼓動がまた早くなってしまう。

「なっ、何してるのよことり!
は、早く服を……」

「ううん、ほらまきちゃ〜ん。
おいで?」

 言われるままに、私はことりに抱き着く。

「手、ちょっといい?」

これもまた、言われるまま。

私の左手を両手できゅっと掴んで、
たわやかな胸に押し当てられる。

あれ?
こんなことって、してもいいの?

なんて一瞬疑問に思ったけれど、
私はすぐに彼女の言わんとしていることに気付いた。
37: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:38:04.39 ID:ruvcBbPj.net
今表面上はとっても落ち着いてお姉ちゃんみたいに
振る舞ってることりだけれど、
私の心臓と同じくらい……
むしろ私以上に心拍数が上がっているのが、
はっきりと分かったの。

今にも崩れ落ちてしまいそうなくらい震えている事も、
そこで初めて感じ取ることができた。

ことりはとっても色白だから、
まるで私の色に染まってしまったんじゃなの?
ってくらい真っ赤。

本当なら彼女だって緊張していることは
誰が見ても一瞬でわかるんだろうけど、
それだけ私の頭が鈍ってたってわけね。
38: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:41:17.11 ID:ruvcBbPj.net
「ね?
 ことりも真姫ちゃんと同じだよ。
 二人になったらどうなるのか、
 昨日までは本当に怖かったもん」
 
でもね、
って続ける彼女の顔は、
思わず誰よりも好きになってしまいそうなほど愛しくてたまらなくて。

「私、真姫ちゃんに勇気をもらったんだよ。
 絶対に今日、ちゃんと話そう、って」

「……ありがとう、ことり」

「ううん、いいの。
 だってずっと真姫ちゃんと一緒にいたかったんだもん」

――表立っては決して考えたりはしなかったけれど。

心のどこか、本当に端っこでは……
μ’sの皆が揃っていた去年程幸せな時間は、
本当に訪れるのかな、なんて思ってた。

でもそれは、どうやら失礼な話だったみたいね。

色んな人に祝ってもらって、
普段から大切な友達がいることを再認識させられて。

そしてまさか、ことりにこんな強い気持ちを抱くなんて――。

「真姫ちゃん、お誕生日おめでとう」

「……ことりにそう言ってもらえて、嬉しいわ」
39: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:44:24.11 ID:ruvcBbPj.net
そこでなんだか急にもじもじし始めたことりは、
私の手を握ったままいったん離れてしまった。

何かと思えば私を部室の奥に連れて行って、
壁にもたれ掛って床に座り込んでしまう。

つやつやできれいな足をまっすぐに伸ばして。

「ま、真姫ちゃん。
 ここ、座っていい……よ?」

さっきまでの落ち着いた様子はどこへ吹っ飛んだのか、
とっても恥ずかしそうに上目使いでこっちに向かって、
少し小声で呼びかけてくることり。

言わなくても十分なほど、可愛い。

本当に本当に、可愛い。

まだ当然浮ついてるけれど、
ことりの方が恥ずかしがっているからか
少し思考力を取り戻しつつある私は、
イジワルをしてみたくなってしまった。

だってあんなにお姉さんぶってたことりが、
今は私の前でそんな面影もなく、赤面してるんだもの。
40: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:47:10.79 ID:ruvcBbPj.net
「ことり、悪いんだけど私はどうやって座ればいいの?
 向かい合って?
 それともことりが後ろから私のことを抱きしめてくれるの?」

へ?って、
素っ頓狂な顔をしたことりは壁にもたれてる時点で
向かい合うなんて発想はなかったみたい。

しかも私の言い方で、
自分が恥ずかしいことを提案していることに気付かされてしまったみたいな、
これ以上ないくらいの恥ずかしそうな表情。

もう限界値を振り切ってそうね。

「わ、私はそんなつもりじゃなかったの!
ちょっと話したいことがあったから、
話しやすい体勢になろうと思って!」

「ひょっとしてことり。
このリボンも『そんなつもりじゃない』、
なんていうつもりなんじゃないでしょうね」

「も、もちろん違うもんっ!
私は真姫ちゃんに貰ってもらいたかったのは本当だし……
もう、真姫ちゃんのいじわる」
41: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:50:43.28 ID:ruvcBbPj.net
今度はぷっくり頬を膨らませちゃった。

本当にことりは、いちいち表情が可愛くって、
見てるだけで幸せ。

となったら、座る向きは一つしかないわね。

昨日までの緊張感はいったいなんだったのかしら。

限界を突破して麻痺してるのか、
それとも最初を乗り越えると大丈夫な性格なのか、
もうどっちか分からないわ。

まあ今まででの人生で一番心臓が動いてるのは、
間違いないのだけれど。

「うぅっ……
まきちゃん、なんでこっち向いて座るの」

「誰よりも可愛いことりの顔が見たかったからよ。
それより話したいことってなに?」

向かい合っては……
想像していた以上に座りにくかった。

けれど彼女の柔らかい太腿が私のお尻にあたるだけで
そんなことは全く気にならなくって。

私からおでことおでこをくっつけてみると、
もうお互いの息がすぐにかかる距離。

口をぐっとつぐんで、全然目を合わせてくれない。
42: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:53:32.30 ID:ruvcBbPj.net
「真姫ちゃんがこんなにひどい人だって思ってませんでした。
 せっかく大切なことを話そうと思ってたのに、
 やっぱり言うの恥ずかしくなったもん」

「ごめん、ふざけ過ぎたわ。
 ちゃんと話を聞くから」

「……誕生日だから特別だよ?
 あんまりいじめられたらことり、
 拗ねちゃうからね」

すぅっと何度も何度も深呼吸をして、
その度に彼女の息遣いを感じて2分くらい経った頃かしら。

まだ震えてはいるし顔も赤いけれど、
最初のころの落ち着きを取り戻したことりは、
まっすぐに私の瞳を見つめてきたの。

私も頑張って逸らさないように、
見つめ返す。
43: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:56:07.89 ID:ruvcBbPj.net
「皆がいるから私がこんなこと言わなくても
 大丈夫だと思うけど、
 どうしても言いたかったから、
 言うね。
 ……真姫ちゃんには、
 寂しい思いをしてほしくないの。
 だから、その……
 私と二人で、
 ユニットを組んでくれませんか?」

真姫ちゃんは医学部に行くから
スクールアイドルをできるのはもう1年だけ。
その最後の1年を、私にくれませんか、と。
ことりは私に向かってそう言ったの。

「……嬉しい。
もちろん、喜んでお受けするわ」

これは確かに、
ことりからのお願いなのかもしれない。

彼女がそうしたいって思ってることは本心なのも間違いない。

でも私は彼女がそんな風に私と一緒に時を過ごして、
寂しい思いをさせたくないって言ってくれたことが嬉しくって。

でも目から涙が出そうになるのが恥ずかしい私は、
少し意地の悪いことを言ってしまった。

「でもあなたが卒業したら、
 また寂しくなっちゃうんじゃないの?」
44: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 21:57:05.00 ID:ruvcBbPj.net
そんな私のことをぎゅっ、
と力いっぱい抱きしめてきたことりは、
耳元にそっと口を寄せてくる。

「そうだよね。ことりは来年卒業しちゃう。
留年するわけにはいかないもんね。
 ……だからその責任は、
ちゃんと取るつもりだよ。
この先何年も、何年もかけて」

「それ、告白として受け取っていいの?」

「…………うん、いいよ」

「ありがとう」

こんなに優しくてかわいい子からの告白宣言を受けて、
幸せにならない人なんているのかしら。

少なくとも私は本当に、心の底から幸せだった。

人生で一番、幸せな誕生日。

それから私は素直に彼女の胸に顔を埋めて、
皆がこっそり様子を見に来るまでずっと嬉しさのあまり泣いていた。
45: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 22:00:04.52 ID:ruvcBbPj.net
「3人とも
『ことりに任せておけば安心ね』
って言ってくれてたわね」

「えへへ、何だか恥ずかしいね。
でも真姫ちゃんのことは、絶対に幸せにして見せるから」

今はもう真姫ちゃんの誕生日から何日か経った、
日曜日の夜。

少し遅れてはいるけれど
真姫ちゃんのお家で誕生日パーティーをしています。

雪穂ちゃんや亜里沙ちゃんも遠慮してくれたみたいで、
本当に久々にμ’sのメンバーだけの集まり。

卒業した3人からも誕生日に連絡を貰ってはいたみたいなんだけれど、
ちゃんと直接祝いたかったから。
46: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 22:03:06.23 ID:ruvcBbPj.net
「私たちが恋人同士ってこと、
 やっぱりばれてるかしら」

「あの反応だよ?
 たぶん、ううん、
 絶対ばれちゃってると思うなぁ」

食後で少しゆっくりしている時間だから、
私達はベランダで二人きり。

私って思っていたよりも初心みたいで、
未だに真姫ちゃんと二人きりでいる時に
『恋人』なんて言葉が出たら、
どきどきしてきちゃう。

けれどその『恋人』ってことは二人でユニットを組むという話で隠して、
まだ誰にも言っていません。

一緒にスクールアイドルをする理由を訊かれて
「真姫ちゃんが一人になっちゃうから」
って答えるといつも、
誰にでもにやにやされて深く追及はされてないけど。

そこで一つ思い出したことが。
47: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 22:06:04.60 ID:ruvcBbPj.net
「ねえ真姫ちゃん。
今も毎日リボンつけてくれてるのは知ってるけれど、
誰かに私があげたって言った?」

「……そ、そんな恥ずかしいこと
私からは言うわけないじゃないっ!」

何か思い出すことでもあったのか、
暗くても分かるくらいお顔が真っ赤。

少なくとも凛ちゃんと花陽ちゃんからは、
言われたんだね。

それなのにあの時の昼休みみたいに何度も顔に近づけてたら……
恋人だってさすがにばれちゃうよ。

まあそれも、いいと思うけど。

「3年生になった時も、
今つけてるのあげるからね」

「……っ!
ええ、ありがたく受け取っておくわ」
48: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 22:09:05.11 ID:ruvcBbPj.net
嬉しそうな表情を見せてすぐに
くるくると誰もいないベランダを見回して、
家の中につながる扉の窓から誰も見ていないことを確認して、
またすぐに戻ってきた真姫ちゃん。

いったい何をするのかなって思ってると、
急に腰に手をまわされて、
空いた右手で左頬全体を触られちゃった。

「な、何するのっ?」

「こ、ことり、
一つ言っておきたいことがあるの!
私はあなたに、
ただ幸せにしてもらってるだけじゃ嫌なのよっ。
 私も幸せにしてあげたいの」

前から今言うことに決めていたように、
頬を染めたままそう告げる真姫ちゃん。

私の恋人はどうやら、
さっきまで恥ずかしがっていたのが信じられないくらいに、
本当に大事なところではちゃんとかっこよく言えるみたい。

ちょっとだけ慌てちゃってるけれど。

今は真姫ちゃんの方が私よりも、
大きく見える。
49: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 22:12:31.26 ID:ruvcBbPj.net
「いい?」

「なっ、何が?」

大きく見えるとは言ったけれど
実際に真姫ちゃんは背が少し高いから、
私は上目遣いで視線を交える。

髪で周りが隠れちゃって、
瞳に映るのはもう真姫ちゃんだけ。

今までは彼女を幸せにすることだけを考えてたけれど、
こういうのもいいかもしれない。

ゆっくりと、
ゆっくりと彼女の顔が私に近づいてきて……。

「ちょっと、いつまで目を開けてるの?」

「えぇっ?
 だ、だって恥ずかしいけど、
 その、ずっと見ていたくって」

「わかったわ。
 が、がんばってみる。
 ことりは大丈夫なの?」

「ううん、さっきからずっとドキドキしてる」
50: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 22:15:06.45 ID:ruvcBbPj.net
お互いの心臓の音が聞こえるみたい。

なんで二人とも恥ずかしがり屋なのに、
こんな無茶をしちゃうのかな。

変なところで意地が強いせい?

でも結局私たちは、
目を開いて見つめあったまま、
初めてのキスをした。

自分の大好きな人と唇を合わせているという、
何とも言葉にできない不思議な感覚に、
全身がピクリと震える。

皆もすぐ隣の部屋にいるのに。

なんて思うと、
背徳感で頭がおかしくなりそう。

無意識に出た真姫ちゃんとことりの一瞬の声が、
どこから聞こえてるのかわからないくらい何度も響く。

開いていた眼を瞬かせると同時に、
私たちは慌てていったん離れた。

ほんの短いキスだったけれど、
純情な私達にはまだ刺激が強すぎるのは明らかだったから。
51: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 22:18:04.81 ID:ruvcBbPj.net
「やっておいてから言うのも変だけれど、
 二人きりの時にしたいわね。
 こんなに幸せなことは、
 もっと落ち着いた場所でした方がよかったわ」

「う、うん。
 そうだね!
 ま、真姫ちゃん顔赤いよ?
 早く冷静にならないと、皆に怪しまれちゃうっ」

「もうっ、
 それはことりも同じでしょっ?」

結局私達二人が一晩中弄られたのは、言うまでもありません。

それからお互いに何度か嫉妬しちゃって
その度に少しずつ積極的な行動ができるようになっていったのも、
二人で結成したスクールアイドルユニットが
にこちゃんと花陽ちゃんの定期アイドル談義で
毎回1時間以上話されるくらいに人気が出るのも、
また別の話。
52: 名無しで叶える物語(神宮)@\(^o^)/ 2016/04/19(火) 22:18:22.27 ID:ruvcBbPj.net
世界線は不明

とりあえずこれで撤退させてもらう

こんな薄暗い辺境に理由もなくわざわざ書き込んだりしねえぜ
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『【ことまき】 誕生日の短編+おまけ 【南ことり&西木野真姫】』へのコメント

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