【SS】うちっちー「キミがボクを着るんだよ」曜「え?」

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曜-アイキャッチ6
1: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:01:50.51 ID:va0iLwp9.net
水族館がお休みの日は、ボクは一日のBんびりと過ごす。
身体の中までお日様と風を入れて、ふんわりしたボクになる大切な時間。

でも、その日、ボクははじめての休日出勤をしたんだ。

元スレ: 【SS】うちっちー「キミがボクを着るんだよ」曜「え?」

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2: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:03:12.81 ID:va0iLwp9.net
いつものように、背中のファスナーをあけて、お日様と風がいっぱいあたるところでごろごろ。
水族館がお休みの日は、ボクだけお休みだ。
難しい言葉で言うと休館日。
お客さんの人が来ない日。
でも、人間の人は、水族館で暮らすみんなのお世話をするから今日もお仕事だ。
でも、今日はいつもの休館日とは少し違った。
3: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:04:57.43 ID:va0iLwp9.net
「今度のパンフのモデル、浦の星女学院の子がやってくれるんだって?」

「ええ、スクールアイドル部の子が引き受けてくれたのよ」

「黒澤のお嬢達とか、淡島のホテルの子とか、すごいメンバーらしいね」

昨日のオープン前の打ち合わせで、ボクも人間の人と一緒に、そんな話を聞いていた。
そっか、今度の飼育員体験のパンフレットとか、ホームページとかのモデル、浦の星女学院の子がやってくれるのか。
窓からイルカプールを見下ろしてみた。
ここの人間の人と違う、おそろいの服を着た女の子が、ひとり、ふたり……八人、プールサイドのお掃除なのが、水のかけっこになってる。
4: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:06:09.96 ID:va0iLwp9.net
あ、あとからもう一人来た。
あの子は遅れてきたのかな?
あれあれ?なんか、逃げて行っちゃったよ。
なにがあったのかな?気になるから見に行きたいな。
でも、ボクは今日はここでごろごろしてる日だ。
自分では動けないからっていうのもあるんだけどね。
しかたない、朝だけどおひるねしちゃおうかな。
5: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:07:22.06 ID:va0iLwp9.net
「あれ?ここ、うちっちーが置いてあるんだ」

置いてあるとは失敬な。ボクは、優雅な休日を過ごしているのだよ。

「えっ、ちょっと誰?誰が喋ってるの?」

キミの目の前にいるじゃないか。

「まさか、うちっちーが喋ってるとか、善子ちゃんじゃあるまいし、私おかしくなったのかな」

キミはおかしくないよ。だって、ボクはキミに話しかけているんだよ。
というか、キミいま、ヨシコちゃんにものすごく失礼なこと言ったんじゃないの?
6: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:08:32.16 ID:va0iLwp9.net
「しゃべってるの……うちっちーなの?」

そうだよ。ようやくわかってくれたんだね。
この三津シーパラダイスのマスコット、うちっちーだよ。

「着ぐるみ、で、中の人、いないの?」

なんでおばけ見るような目でボクを見るの?
失礼だなぁ。
おしゃべりくらいはできるよ。それに、中の人は、ボクがうごくためのお手伝いをしてくれる大切なお友達だよ。
ところでキミは、さっき遅れてきて、なぜか逃げていった子だね。

「なんで、私が千歌ちゃんから逃げてきちゃったの、知ってるの?」

見てたもの。ほら、ここから見下ろしてごらん。
みんなキミを探してる。

「そうだね……」

もどらないの?
7: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:10:00.32 ID:va0iLwp9.net
「今は千歌ちゃんのところに戻りたくない」

チカちゃんにいじわるされた?

「ちがうの……多分、やきもちやいて、どんな顔でそこにいればいいかわからなくて逃げちゃったんだよ」

「私がいないのを気にせずに、梨子ちゃんとものすごく楽しそうに話してて」

じゃあ、リコちゃんのこと、怒ってる?

「わかんないけど、今は梨子ちゃんと普通に話せない気がする」

それがやきもち?

「うん、面白くないって思っちゃった。千歌ちゃんにこんな気持ちになったの、初めて」
8: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:11:12.83 ID:va0iLwp9.net
そっか、じゃあ、ボクがすこしだけ力を貸そうか?

「なんで?」

うん、人間の人は、難しく考えちゃうね。こう言うの、損得って言うんだっけ。
ボクはゆるキャラ、って言われてる。
ゆるキャラは、人間の人をゆるくして、みんな仲良くわらってもらうための存在だから。
それに、キミのこと、おどろかせちゃったし、ずっとのぞき見してたし。
あ、そういうファスナーのあいた着ぐるみに何が出来る、って顔はよくないな。
キミがボクを着るんだよ。
9: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:12:41.24 ID:va0iLwp9.net
「え?うちっちーを着るの?」

そう、それがボクの力。
ボクを着ると、キミはボク、つまり、うちっちーになる。
うちっちーだから、中でキミがどんな顔をしていても、チカちゃんにもリコちゃんにもわからない。
だから大丈夫だよ。

「そうか……じゃあ、うちっちーの力を借りようかな」

じゃあボクの中に入って。風を通しているからふかふかだよ。

「ちょ、なんでファスナーが勝手に閉まるの」

それもボクの力。普段は人間の人が外から閉めてくれるから、あんまりやらないんだけどね。
じゃあ、行こうか。
ところで、キミの名前、まだ教えてもらってなかったね。

「渡辺曜っていうの。曜日の曜でよう」
10: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:13:24.07 ID:va0iLwp9.net
ヨーちゃんか、いい名前だね。
じゃあ水族館にヨーソローだ。

曜「うちっちー、それ私の台詞だよ」

あ、ちょっと笑ったね。
もっと笑えるようになるまで、ボクと一緒に水族館を見て回ろうよ。
11: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:15:04.45 ID:va0iLwp9.net
イルカプールの下で、さっきの女の子のうちの二人と出くわした。

「うちっちーだ、マルちゃんうちっちーだよぉ」

「ルビィちゃん、曜ちゃんさがすの忘れちゃダメずら」

曜「ちょっと、マルちゃんとルビィちゃんにいきなり見つかっちゃった」

この二人は、マルちゃんとルビィちゃんっていうのか。
ヨーちゃんが、ボクの手で口を押さえる。
でも大丈夫。中の人の声は、外には聞こえないんだよ。

曜「そういうことは先に言ってよ」

今度はボクの手で胸をなでおろす。

ルビィ「うちっちーにも聞いてみようよ、マルちゃん」

花丸「このうちっちー、いきなり口を押さえたり、そのまま胸をなで下ろしたり怪しいよ、ルビィちゃん」

ヨーちゃん、そう見えちゃうから気をつけてね。
キミの動きはボクの動きなんだから。
今度はボクの手をぶんぶんふってるね。
あやしくないよ、あやしくないよ。
12: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:16:49.69 ID:va0iLwp9.net
ルビィ「ほら、あやしくないよって言ってる、マルちゃん」

花丸「ほんとかなぁ」

おっぱい大きい子がマルちゃんだね。

曜「何見てるの」

これは失敬。

花丸「じゃあ、うちっちー、マル達と同じ服を着て、髪の毛が肩までの子、見なかったずらか?」

少し上を向いて、首をかしげて、少し下を向いて考えて。
手のひらを右左。
つまり、見なかった。
あ、これはボクじゃなくて、中の人のヨーちゃんがしたことだからね。
13: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:18:24.06 ID:va0iLwp9.net
ルビィ「見なかったんだ。じゃあ、曜ちゃんに会ったら、みんな探してるって伝えてね」

ヨーちゃんがボクの手のひらでまるをつくる。オーケーの合図だよ。
ボクの手はミトンみたいになってるから、人間の人がするようなオーケーサインはできないんだ。

花丸「オラ、あんな顔した曜ちゃんを初めて見たから、心配ずら」

ルビィ「うん、だから早く見つけてあげたいよ」

やっぱり、みんな心配しているよ。ボクから出るならこの場でファスナー開けてあげる。

曜「……出られないよ」

そっか、わかったよ。じゃあもう少し中の人でいてね。

ルビィ「じゃあ、ルビィたちはあっち探すから、またね、うちっちー」

花丸「こっちの方はまだ探してないよ」

マルちゃんと、手をふって去って行くルビィちゃんを、ヨーちゃんはボクの手を振って見送った。
もう一度聞くけれど、ヨーちゃん、出てあげなくていいのかい?

曜「今更、出られないよ」

そっか、じゃあ、もうしこし水族館を見て回ろうよ。
まだ笑ってくれないのは寂しいな。
15: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:19:35.19 ID:va0iLwp9.net
「歩みを止めなさい、そこのリヴァイアサン」

セイウチのスノーちゃんの水槽の前で、後ろから声をかけられた。
ひょっとして、リヴァイアさん、というのはボクのことかな?
ボクはリヴァイアでなくてうちっちーだよ。
そう思いながらヨーちゃんがボクの身体で振り向くと、頭の右側におだんごを作っている子がいた。

曜「今度は善子ちゃんかぁ、本当に私だって判らないのよね」

もちろんだよ。誰の目にも、キミはうちっちーにしか見えない。
ところで、この子が、キミがさっき失礼なことを言ったヨシコちゃんだね。
16: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:21:02.66 ID:va0iLwp9.net
善子「髪がこのくらいで、けっこう引き締まった身体してるわりに胸だけ大きい子見なかった?」

ヨーちゃん、これはキミのことをほめているのかな?

曜「悪口ではないと思うよ……」

ヨーちゃんは、またボクの手で、知らないってボディランゲージする。

善子「あらそう、じゃあ、またね」

ヨシコちゃんはわりとあっさり引き下がった。
ヨーちゃんは、またボクの手でボクの胸をなでおろす。
さ、もうちょっと向こうに歩いていこ……
17: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:23:11.45 ID:va0iLwp9.net
善子「お待ちなさい」

後ろから、ボクの肩をヨシコちゃんがしっかりと掴んでいた。

善子「まず、私の名前はヨハネよ。覚えておきなさい」

え、だって、胸の名札、「よしこ」って……書いてある上を二重線で消してヨハネって書き直してある!
どういうことだいヨーちゃん。

曜「そういう子だっていうことで納得して」

人間の人は難しいんだね。

善子「そして、曜ちゃん」

ヨシコ、いやヨハネちゃんは、ボクの目をじっと覗きも見ながら迫る。
おかしいな、ボクがお仕事している間は、中の人が誰かなんて判らないはず。
それがボクの力なのに。

善子「いい加減すねてないで戻ってきなさい。千歌ちゃんは落ち込んで撮影にならないし、何より」

ヨハネちゃん、ものすごい怖い顔だった。

善子「リリーが責任感じて落ち込んじゃってるのよ。リリーにこれ以上あんな顔させたら、いくらヨハネが温厚な堕天使でも容赦名出来ないわよ」

善子「ま、いちゃついてる二人も弁護のしようがなかったし、その点に関しては曜ちゃんの肩を持つから戻ってきなさいな」
18: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:24:48.57 ID:va0iLwp9.net
ヨーちゃんは、ボクの両手をほっぺに当てて、首をかしげた。
なにをいっているのかよくわからないよ。
それをボディーランゲージで伝える。

善子「そ、そう、人違いだったようね。ごめんなさい」

そうだよ人違いだよ。ボクうちっちーだよ。

善子「曜ちゃんが中にいればもうけものだとおもって当てずっぽうしてみたけど、やっぱり外れだったみたいね。ヨハネ一生の不覚だわ」

ヨハネちゃんは、首をひねりながら去って行った。
ところで、リリーちゃんという人間の人が増えたけど、誰なの?

曜「善子ちゃんが梨子ちゃんに付けた愛称」

なるほど、リリーちゃんはリコちゃんだったんだね。
ところで、さっきはボクの力が足りなくなったのかと不安になったよ。ヨハネちゃんの当てずっぽうでよかった。

曜「そういう子だっていうことで納得して……」

人間の人は、難しいんだねぇ……
19: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:26:09.89 ID:va0iLwp9.net
ボクの足は残念ながら短い。
なので、中の人が手伝ってくれてもヨタヨタ、ペタペタという歩き方になる。
ヨーちゃんは、ボクの身体で、建物の中をよたよた歩いて行く。

「オー、ウティッティ」

ボクはうちっちーだよ。変な発音で呼ばないで欲しいな。
目の前に、金髪の女の子がいた。うん、外国人さんなら発音がおかしくても仕方ないよね。
20: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:27:14.97 ID:va0iLwp9.net
曜「今度は鞠莉ちゃんだよ」

マリちゃん?どうしよう。ボク英語とかよくわからないよ。

曜「ハーフでお母さん日本人だから、日本語で大丈夫だよ」

それはよかった。一安心だよ。
でも、一安心じゃなくなったよ。

鞠莉「果南、ダイヤ、カムヒアー」

曜「大事なことだからもう一度聞くけれど、本当に私だと判ってないよね」

もちろんだよ。それがボクの力だよ。
大事なことだからも一度行っておくよ。
21: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:28:40.54 ID:va0iLwp9.net
「鞠莉、曜いたの?」

「曜ちゃんはどこですの」

向こう側から、二人来たよ。ここにいる三人とも、ボクはさっき下にいるのを見てたよ。

曜「聞かれる前に教えるけどポニテが果南ちゃん、ぱっつんがダイヤさん」

うん、ありがとうそれで覚えたよ。

果南「で、曜ちゃんはどこ?」

鞠莉「曜はまだノーよ。でもウティッティがいるわ」

果南「あのねえ、遊んでないで早く探さないと」

ボクもその方がいいんじゃないかと思うな。

ダイヤ「そうですわよ。今日は本来休館の日ですから、見た人がいないか聞く相手もいないのですから」

鞠莉「聞く相手ならいるじゃない」

マリちゃんがボクを見る。

鞠莉「ウティッティに聞いてみましょう」
22: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:30:32.91 ID:va0iLwp9.net
曜「ねえうちっちー、本当の本当に、私だって判らないのよね」

何度言わせるんだい。中の人をうちっちーにしか見えなくするのが、ボクの力さ。

果南「ま、仕方ないか。ねえうちっちー、私達と同じ服装で、髪の毛このくらいの子、見なかった?」

曜ちゃんが、ボクの首をかしげた。そして、ボクの手でボクの頭をかかえる。

鞠莉「ユードンノゥ?」

曜「イエースイエース」

曜ちゃん、キミがボクの中でいくら声を出しても、外にはつたわらないよ。

曜「そうだったね」

まあ、曜ちゃんはボクの中の人になるのが初めてだし、仕方ないか。

ダイヤ「知らないみたいですわね。お引き留めしてごめんなさいね」

ではこれで。
ヨーちゃんは、ボクの右手を挙げて挨拶すると、この場を去ろうとした。
23: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:32:15.61 ID:va0iLwp9.net
果南「ねえうちっちー、曜ちゃん見かけたら伝えて欲しいんだけどさ」

果南「曜ちゃんのこと忘れてキャッキャウフフしてたのは千歌ちゃんと梨子ちゃんが悪い。これはさっき二人まとめて怒っておいた。だから私に免じてこれでお終いにしてよ」

果南「でも、拗ねて行方不明になってるのは、戻ってきたらお説教だからね」

ダイヤ「果南、うちっちーさんはおしゃべりできないのに、どうやってそんな難しいことを伝えていただきますの?」

ヨーちゃん、ひょっとしてボクの中で変な汗をかいていないかい?
大丈夫、中の人がヨーちゃんだなんてわかるわけがないよ。
でも、ボクもなんか嫌な汗をかいてしまいそうだよ。おかしいね。

果南「あ、それもそうか。じゃあ、戻ってこいって何とか伝えてよ」

曜ちゃんが、ボクの両手を顔の前でくっつけてマルにする。ボクは頭が大きいから、こうなっっちゃうんだ。

ダイヤ「じゃあ、お願いいたしますね」
25: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:33:42.89 ID:va0iLwp9.net
三人が去って行くのを、曜ちゃんはボクの手でバイバイして見送った。
数歩進んだところで、マリちゃんが振り向いた。

鞠莉「曜、千歌がソーサッドになってるから早く戻ってきてね」

ボクの中で、ヨーちゃんが汗をだらだら流しながら固まっている。
ヨーちゃん落ち着いて、本当にみんなにはうちっちーにしか見えてないから安心してよ。

鞠莉「って、伝言プリーズね」

ダイア「そうですね、私たちは9人揃わなければ何も始まりませんのよ」

今度こそ、三人連れだって去って行った。
係の人とお客さんは入れないドアにに入っていったから、バックヤードも見せてもらうみたいだね。

曜「本当に本当に、私だって判ってないのよね」

本当に本当に、他の人にはうちっちーにしか見えないよ。
実はけっこう自信が揺らいできたんだけど。
26: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:35:11.78 ID:va0iLwp9.net
外に繋がる扉の前に、女の子がいた。

曜「梨子ちゃん……」

あの子がリコちゃんでリリーちゃんなんだね。
今の曜ちゃんはボク、うちっちーだよ。だから、そのまま愛想良く素通りすれば大丈夫さ。

梨子「曜ちゃん」

ヨーちゃんが、ボクの足を止めた。
このまま歩いて。そうすれば、曜ちゃんだってわからないよ。
だって、ヨーちゃんの外がわはうちっちーなんだよ。

梨子「うちっちーの中にいるの、曜ちゃんだよね」
27: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:36:48.55 ID:va0iLwp9.net
曜「私だってわからないんじゃ、なかったの?」

きっとリコちゃんは、ボクの姿で判断していない。
ボクの中の人を見ている。
いや、リコちゃんだけでない。ここまで会ったみんな、ボクの見た目に迷ったけど、もしかして、とは思っていたんじゃないかな。
みんな、中の人のヨーちゃんのことを見ていたんだよ。
つまり、ボクの力は、人の目はごまかせる。でも、人の心の目まではごまかせないんだよ。

梨子「ごめんね、一人で取り残されると寂しいの知ってるのに、曜ちゃんに同じ思いをさせちゃった」

ヨーちゃんは、ボクの身体で棒立ちになってる。
態度で全部白状してるよ
だからもう、ボクの力じゃフォローできないよ。
28: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:38:08.79 ID:va0iLwp9.net
梨子「私、東京から来たばかりで、学校が始まる前で話す相手が誰もいなかったとき、千歌ちゃんに声をかけてもらった。だからね、学校でも一人にならずに済んだの」

ヨーちゃん、ちょっとだけでいいから、事情を教えて。

曜「梨子ちゃん、春に東京の学校から編入してきたんだ」

そうだったんだね。
だから、一人が寂しいのを知っているんだね。

梨子「だから、今日も千歌ちゃんと一緒にいるのが嬉しくて、それで、曜ちゃんのことほったらかしにしたみたいにしゃった」

梨子「本当にごめんね」

リコちゃんが頭を下げる。ヨーちゃん、キミはどうしたいんだい?
涙のしずくが落ちたのを、ボクは見た。
だから、ヨーちゃんにも見えているはずだよ。
29: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:39:11.96 ID:va0iLwp9.net
曜「……ごめん」

ボクの中にいたら、リコちゃんにその言葉は届かないんだよ。
ヨーちゃん、もう、外に出た方がいいんじゃないかな。

曜「……ごめん、まだ勇気が出ない」

ヨーちゃんは、ボクの手でリコちゃんの手をとる。
そして、ボクの頭を下げる。

梨子「曜ちゃん、千歌ちゃんが、待ってるからね」

ヨーちゃんが、もう一度ボクの頭を下げた。
30: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:42:28.57 ID:va0iLwp9.net
イルカの海のの客席の一番上の立ち見スペースに、ボクとヨーちゃんはいた。
客席には8人の女の子。
みんな、さっき会った子だけど、一人だけまだ会っていない子がいた。
柵にもたれて、ただ、水面から顔を出すイルカを見ている子だ。
一人だけ離れたところに座っているヨハネちゃんが、こっちをちらっと見た。
そして、ボクたちを無視するように、またプールを見てる。
ルビィちゃんが気がついて、こっちに手を振ろうとして、マルちゃんに止められていた。
31: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:43:10.10 ID:va0iLwp9.net
曜「……」

あの柵にもたれてる子がチカちゃんなんだろう。行かなくていいのかい?

曜「……」

ずっと、ボクのなかにいるわけにはいかないんだよ。ほら、ファスナー開けてあげるから。

曜「……」

ほら、チカちゃんがこっちをじっと見て……いるじゃないか!
32: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:44:53.36 ID:va0iLwp9.net
いつの間にか、ボクたちの目の前にチカちゃんがいた。
目を覗き込んでくる。
チカちゃんの目は、少し赤かった。きっと、泣いたあとだ。
そして、ボクの目は、中の人であるヨーちゃんの目でもあるんだ。
だから、ヨーちゃんは泣き止んだばかりのチカちゃんに目を覗き込まれてるということなんだ。

曜「ごめん千歌ちゃん、ごめんね!」

そのままボクの身体で逃げだそうとする。
でも、ヨーちゃんはボクの中の人になるのが初めてだ。
だから、最上段の立ち見スペースから下に降りる階段を踏み外した。
それも、階段を飛び出しているじゃないか。
33: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:45:37.31 ID:va0iLwp9.net
曜「ダメだこの落ち方はー」

身体が縦に回転している。ボクは着ぐるみだから多分なんともない。
でも、中の人のヨーちゃんは。
だから。
34: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:47:01.44 ID:va0iLwp9.net
曜「あれ?とまってる?」

時間を引き延ばしてるのさ。いま真っ逆さまに階段から落ちている最中だよ。

曜「私、高飛び込みやってるから、これダメな落ち方だってわかるよ」

でも、キミが傷つくとここにいるみんなが悲しむし、キミだって痛い思いをするよ。
なにより、これ以上チカちゃんを泣かせたいのかい?

曜「それは、やだな」
35: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:48:12.61 ID:va0iLwp9.net
だから、ボクの力でキミが無事に着地できるようにする。
そのかわり、今日の分の力は全部使っちゃうから、あとはヨーちゃんが自分でなんとかするんだよ。

曜「え?」

やれやれ、初めての休日出勤はこれでおしまいのようだね。
ボクは休日手当とかもらえないゆるキャラの着ぐるみだけど、みんながゆるく笑えるように、今日最後のの仕事を精一杯させてもらうよ。
36: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:49:19.61 ID:va0iLwp9.net
本当なら外れないボクの頭が、落下の衝撃で外れちゃったみたいだ。
でも、ヨーちゃんは無事だった。
ボクの中の人をこうやって、自分の目で見るのは新鮮だよ。
バツがわるそうに苦笑いするヨーちゃんの胸に、チカちゃんが飛び込んだ。
37: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2016/05/27(金) 01:50:16.35 ID:va0iLwp9.net
この日ボクが見たのはここまでだよ。
あのあと、チカちゃんとヨーちゃんとリコちゃんは仲直りできたようだね。
それからしばらくして、三人で遊びに来てくれたんだよ。そのときに、ヨーちゃんがボクに、ありがとうって言ってくれたんだ。
でも、ヨーちゃんはもうボクの中の人ではなくなってたから、どういたしまして、っていうボクの言葉を届けられないのが、ちょっと残念だったかな。

(おしまい)
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