にこ「穂乃果…あのね」

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にこ-アイキャッチ11
16: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/04/12(日) 03:47:49.19 ID:tL0C2Xj0.net
 私がμ'sというグループに加入して、メンバーの皆と打ち解けたころ。
 私は、ふとやってくる罪悪感に苛まれるようになっていた。

 原因は、μ'sというグループができて、私が加入するまでに取った私の行動。
 動画に批判的な――ともすればいちゃもんにも見えるような――コメントを残したり、解散するように嫌がらせをしたり。
 後は……そうμ'sメンバーがバーガーショップで話しているところで、ポテトを盗んだり。
 あの時の私はどうにかしていたとしか思えなくて。嫌われていたとしても、おかしくはなかった。

 そう、不思議なことに私は嫌われていない。自惚れかもしれないが、私と彼女たちは友人であると思っている。
 それはひとえに穂乃果による影響だろう。

 高坂穂乃果。μ'sのリーダー。

 彼女には悪意というものが感じられなかった。僻み、嫉み、妬み、辛み。そういった、他者に向ける良くない感情が見受けられない。
 自分にできないこと、自分にはないもの。それらを持っているものに、素直な賞賛をぶつける。他者を恨めるような性格もしていない。
 いいやつなのだ、穂乃果は。こんな人間がいていいものかと思ってしまうほどに。

元スレ: にこ「穂乃果…あのね」

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17: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/04/12(日) 03:49:22.65 ID:tL0C2Xj0.net
「どうすればいいのかしら」

 私は、過去の行いを謝罪するべき、なのだろう。動画のコメントはともかく、私が直接彼女たちに行ったことを、なあなあにしていてはいけないように思う。
 これから、スクールアイドルとして活動していくためにも。

 でも、どうやって謝ればいいのか。謝らなければと思った時には結構な時間が経っていて、今蒸し返すのは相当に勇気が必要だった。
 もしあの時の行為を糾弾されたらと思うと、身が竦んでしまう。そんなことはありえないとわかっていても、可能性を否定しきれない。
 私は、どうしようもなく臆病だった。自身が傷つくことを恐れている。
18: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/04/12(日) 03:50:21.97 ID:tL0C2Xj0.net
「あれ? にこちゃんだけ?」

 部室で黙々と思案していると、穂乃果がやってきた。いつもとなりにいる幼馴染たちはいない。珍しいこともあるものだ。
 一年生たちもまだ来ていない。HRが遅れているのか、今日一番に部室へ来たのが私だった。
 一人だった時間は五分か、十分か。それほど長い時間だったわけではない。

「海未とことりはどうしたのよ」
「海未ちゃんは弓道部に顔を出してから来るって。ことりちゃんは委員会だって」

 そこで穂乃果はにへらっと笑う。穂乃果は、誰かと雑談するときほとんど笑顔でいる。
 もともと感情が顔に出やすいタイプなのか、表情の変化は多彩で、話している最中にいろんな顔に変化する。
 そしてその変化の合間に、穂乃果は楽しそうに笑みを浮かべるのだ。
 以前、なにがそんなに楽しいのか尋ねてみたことがある。返答は、お話するのって楽しくない? とのことだった。

「……ねぇ」
「なぁに?」
「あんたはその、謝りたいこととかってある?」
「謝りたいこと?」
「例えば、友達に嫌なことしてしまったりだとか」
「んー……。特に思いつかないかなぁ。あっても、すぐに謝っちゃうし」
「相手が気にしていなかったとしても?」
「そんなの関係ないよ。穂乃果が嫌なことをして、穂乃果が謝りたいと思ったから、謝るんだもの」
「……そう」
19: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/04/12(日) 03:51:50.81 ID:tL0C2Xj0.net
 謝りたいから、謝る。実に単純な思考。謝罪にそれ以上の理由はいらないのだ。
 穂乃果と話していると、自分の考えていたことが馬鹿らしくなってくる。うじうじとするより、思い切ったほうがいい。
 それこそ、穂乃果のように。

「あのね、穂乃果」
「どうかしたの?」
「私、あなたに謝らなきゃいけないことがあるの」

 ずっと言えなかったことがするりと口から流れていく。動画のこと、ポテトのこと、その他嫌がらせのこと。
 穂乃果はじっと、私の話を聞いていた。ただただ真剣な様子で。

「だから、その、ごめんなさい!」

 思いつくままに自身のμ'sに対しての悪行を露呈して、勢いで頭を下げる。
 心のなかの重荷がなくなったのを感じるのと同時に、嫌われたらどうしようという恐怖が大きくなる。

「にこちゃん、顔を上げて?」

 しばらくの沈黙の後、穂乃果はそういった。いわれるがままに顔をあげると、ふんわりと柔らかい感触と匂いに包まれる。
 身体に感じる軽い圧迫感と温かみ。さらさらと、何かが髪の間をすり抜けていく。
 抱きしめられて、頭をなでられている。泣きそうな子供をあやすように。
21: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/04/12(日) 03:52:41.48 ID:tL0C2Xj0.net
「気にしなくていいよ、そんなこと」
「そんなことって……」
「だってにこちゃんは、私たちを思ってやったんでしょう?」
「それは」

 そういう思いも、あったかもしれない。スクールアイドルは、厳しい世界だ。何もかもを自分でプロデュースしなければならないから、プロで活動するのとは違った厳しさが存在する。
 かつて私は、私たちは。その厳しさに耐えられなかった。穂乃果たちに、あんな思いをして欲しくなかったというのは、嘘じゃない。
 だけどやっぱり、嫉妬のほうが大きかった。何故今さらと、何故上手くいくのかと。私のときは失敗したのに、何故成功するのと。

「これじゃあ、だめ?」
「私の気がすまないのよ……」
「んー……。じゃあ今度ポテト奢ってよ。それで、この話は終わり」
「そんなのでいいの?」
「そんなのでいいの。ちょうどポテトが食べたい気分だったし、練習終わったら行こう?」
「……そうね」

 これ以上は何を言っても意味はないだろう。この話は、穂乃果のなかでは終わってしまったのだ。私の中では一区切りといったところだけど。
 ただ、随分と気持ちが楽になった。未だわだかまりは残っているけれど、それとも上手く付き合っていけるような気がする。

「もう少し強く、ぎゅっとして」
「ん」
「ありがと」

 今はもう少しだけ、このぬくもりを感じていようとおもう。
22: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/04/12(日) 03:53:28.46 ID:tL0C2Xj0.net
おわり

投げやりで申し訳ない
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