【ほのにこ】あなたと私のハッピーバースデイ sideにこ【ss】

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にこ-アイキャッチ27
1: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:01:15.85 ID:Ap1fwyZO.net
去年書いたのを地の文に書き直してみました

http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1437568814/

暇つぶしにどうぞ

元スレ: 【ほのにこ】あなたと私のハッピーバースデイ sideにこ【ss】

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2: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:02:38.42 ID:Ap1fwyZO.net
夏もいよいよ本気を出してくる頃、そろそろあの季節かと思い知らされる。
そう、それは


穂乃果「にこちゃんの誕生日かぁ……」


隣にいる穂乃果が、何か考えているようにつぶやいた。
そう、それは私の誕生日
一生に1度、同じ歳を祝ってもらえない大事な日


にこ「先に言っとくけど、夜は家族だけで誕生パーティするから空いてないわよ?」

穂乃果「知ってるよー……」


意地悪そうにそう答えると、穂乃果が肩を落としてうなだれた。
これは、助け舟を出さないといけないなと思い、平成を装いながら自分の発言に付け足した。
3: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:03:12.38 ID:Ap1fwyZO.net
にこ「……夜は、とは言ったけど、それまでも空いてないとは誰も言ってないわよ?」


みるみる穂乃果の顔が明るくなっていく。こんな風に表情がコロコロと変化するのもどことなく嫌いじゃない


穂乃果「そ、そうだね!よーし、放課後はにこちゃんのお祝いしよう!皆もさそって……」


穂乃果がまさにμ'sのLINEに一斉送信しようとするのを「ちょ、ちょっと待って」とすんでで止める。


にこ「べ、別に二人でも良いんじゃない?」

穂乃果「え、皆いたほうが楽しくない?」


はあ、まったく、この子って本当に……悪気がないんだから余計にたちが悪い
私は今すぐ頭を抱えたくなるもぐっとこらえて


にこ「えーと……その……そ、そうよ!放課後って言ってもそんな時間取れないし、多分あいつらのことだし部活中に祝ってくれるわよ!」
4: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:03:54.15 ID:Ap1fwyZO.net
苦し紛れの嘘、とはきっと今の私の発言のことを言うんだろう。
変な汗が意味もなく吹き出すし、やけに饒舌になってしまう。
けれど穂乃果は気づかないようで、「あー、そうかもね。分かった。二人きりでやろう!」なんて納得していた。
今回ばかりは、目の前で楽しそうにしている馬鹿に感謝しよう。
けど、まだ油断ならないのも確かだった。


にこ「そうそう、このことは、他の皆には内緒にしてくれる?」

穂乃果「良いけど……なんで?」


説明がめんどくさいから、とは言えず「いや、余計な気遣いさせても悪いしさ」とまた苦し紛れに嘘を吐く。
穂乃果は相変わらず気づいていないようで、「うん!」なんて元気に返事をしてくれた。

本当、今回ばっかりはこいつの馬鹿っぷりに感謝しておこう。そう思った。
5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:05:06.67 ID:Ap1fwyZO.net
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放課後、少し遅れて部室へやってくると(思えば、これもなんだか見え見えで分かりやすいけど)部屋の明かりがいきなり点灯し、目の前にはチープに飾り付けられた装飾と共に、大きく「Happy BirthDay NICO!」と書かれた垂れ幕が目に映った。


「お誕生日おめでとう、にこちゃん!」


そうして、同じ夢を追いかける仲間達からの祝福を受けた

内心はとてもうれしいけど、素直になれない私は「ありがと」と小声で答えた。しゃべる声が少し震えていたけど、お構い無しだ。
いつものPC席……ではなく、凛と花陽からど真ん中へ座るよう促されて仕方なく収まると、奥で待機していたのか、希と絵里がこれまた多きいケーキを持ってやってきた。


希「にこっちイチゴ好きやろ?だからイチゴたっぷりのショートケーキ買ってきたんよ」

絵里「ちなみに、ブランドを指定したのは私よ」


なぜか得意げに話す絵里に対して吹き出しそうになるも今度は心から「ありがとう」と告げた。
6: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:05:44.14 ID:Ap1fwyZO.net
そうして談笑しながら誕生日の放課後を過ごしていると、今度はことりと海未が何かを持ってきた。


海未「これ、皆からのプレゼントです」

ことり「結構頑張ったんだぁ」


すこし大き目の、いかにもプレゼント装飾を施された箱を前に、皆がうれしそうに私のことを眺めている。
私も少し気になるので「開けてもいい?」というとどうぞどうぞといわんばかりだ。


にこ「あれ、これって……」


現れたのは、少し小悪魔っぽいキュートな、でも普段遣いすることは絶対にない服だった。
つまり、ライブ衣装だった。


希「どう?皆で作ったにこっちの衣装は」


絵里「にこの小悪魔っぽさを取り入れて、次回のライブのセンター衣装にしようってね」

花陽「今回は、皆でアクセサリーとか作ったんだよ」


だめだ。本当にうれしくて今度こそ涙を我慢できなさそうだ。
それでも何とかこらえて衣装をまじまじと眺める。
7: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:06:21.28 ID:Ap1fwyZO.net
ここのワンポイント、なんか凛っぽいな……ビーズの部分は得意って聞いたし絵里かしら……

そう思いながら、一つのことを思いつく。


にこ「そういえば、穂乃果はどこやったの?」

穂乃果「えっとねー、ここ!」


そう得意げに穂乃果が指差したのは、腰のあたりについている……熊?のようなぬいぐるみだった。
少し糸がほつれていたり、左右で不恰好だったりしているのがどことなく穂乃果らしい。


穂乃果「結構かわいくない?悪魔をモデルにしたんだけど」

にこ「あ、悪魔ね……」


まったくそうは見えない、ということは胸のうちにしまいこんで「よくできてるわね」とお世辞を漏らす。
これだけで穂乃果がすごく喜んでくれるので、私としてもうれしい限りだった。
あ、と穂乃果が口を開く。
8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:06:56.90 ID:Ap1fwyZO.net
穂乃果「そういえば放課後だけど……」


思わず「ストップ!」と大声を出してしまったので、周りが何事かとざわついた。


真姫「なに、どうしたの?」

にこ「い、いや……なんでもないわよ」


きっと何人かに感付かれていそうで恐ろしい。私は咄嗟にスマホを取り出し、穂乃果へメッセージを送った。
しっかりと怒っていることを示すために、怒りのスタンプを添えて。


<放課後は内緒って言ったでしょこのバカ!>


メッセージを確認したのか、穂乃果の顔が一気に青ざめていく
そして<ごめんなさい>の一言と共に、謝罪を表すような猫のスタンプが送られてきた。

その場は何とかやり過ごして、放課後へと臨む私たちだった。
9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:07:46.26 ID:Ap1fwyZO.net
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腕時計の時間を確認して、いよいよ自分が遅刻していることを自覚する。
練習もほどほどにして、さあ帰ろうという時だった。
やはり私の悪い勘は当たってしまうのか、扉をくぐろうとする私の前に、見慣れた二人組がいた。


絵里「ねえ、にこ夜から家族でお祝いするんでしょう?」

にこ「そ、そうよ。それがどうかした?」


思わず緊張が冷たい雫となって頬を伝う。
私を阻もうかという状態で待ち構えていたその顔は、どこかいたずら染みた笑みをたたえていて、なんとなくからかわれていることが想像できる。


希「でもこのまま直帰なんて寂しいし、3年組で個別ににこっちのお祝いしたいなー……なんて」


もう希の顔はいたずら小僧と言って差し支えないくらいに歪んでいた。

いつもはこうなったら流されるか同じくらい悪ガキになってやるけど、今回はちょっと事情が違う。
10: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:08:59.88 ID:Ap1fwyZO.net
にこ「ご、ごめんちょっと急いでるから!」


間を潜り抜けようとしたその時、肩を思い切り掴まれた。それも二人に


絵里「まだ話は終わってないわよ〜?」

希「そうそう、この際だから腹を割ってはなさない?」


そういう二人は笑顔のままだけど、私にはどうも悪魔にしか見えなかった。
肩を強引に振りほどき、ドアに手をかける。


「ごめん、本当急いでるから、じゃ!」


そうして後ろを振り返らず走っているわけだけど、乗れる電車を逃して、焦って降りる駅を間違えて……結局時間は待ち合わせに指定したものよりもずっと遅れてしまっていた。

到着する頃には、もう恐らく30分近く遅れている。
私は焦りながら、秒針が進まないことを祈るしかできなかった。
11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:09:37.64 ID:Ap1fwyZO.net
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待ち合わせに指定した駅の改札をダッシュで抜けると、見慣れたサイドテールが待ちぼうけをしていた。


にこ「ごっ、ごめん、穂乃果!」

穂乃果「もーおそいよにこちゃ……って汗だくだけどどうしたの?」

にこ「なんでか分からないけど……絵里と……希にめっちゃ絡まれたのよ……」

穂乃果「とっとりあえず涼しいところに移動しようか?」

にこ「そうね……遅れてごめん……」

穂乃果「ううん良いってば、何かあったのかと心配しちゃったし……」


そういう穂乃果の顔が不安そうに歪んでいく。

そんな心配することもないじゃない、と考えたけど、そういう風に気に留めてくれるのはなんだか嬉しくて笑ってしまう。
12: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:10:23.25 ID:Ap1fwyZO.net
にこ「確か近くにファミレスあったわね?」

穂乃果「うん、1分もかからないんじゃないかな?」


じゃ、そこにしましょう。と穂乃果の手を引くように先へ進む

……ん?

若干の違和感を感じて穂乃果の方へ振り向いて


にこ「……良く考えたら、あんたに祝ってもらうのに私が先導しちゃダメじゃない?」


あ、と穂乃果が気付いたように反応した。
やっぱり、この子はバカだ。
20: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:29:54.46 ID:Ap1fwyZO.net
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−−一方そのころ、駅近くの茂みにて

希「凛二等兵、状況を説明せよっ」

凛「はいっ!対象二人は仲良くファミレスに入って行きましたにゃ!」

海未「あの……やめませんか?二人に悪いですよ」

絵里「あら、海未も乗り気だと思ってたけど?」

海未「そ、そんなことありません!第一こんな大勢で変質者ではありませんか!」

ことり「でも隠れるのってなんだかどきどきするね」

海未「ことりまで……はぁ、でもこんな人数でファミレスなんて入ったら見つかってしまいますよ?」

絵里「大丈夫よ、ぬかりはないわ」
21: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:30:27.67 ID:Ap1fwyZO.net
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少し落ち着いた雰囲気なのに、場違いのように勢いの良い店員に迎えられ、窓際の席へ誘導される。


穂乃果「とりあえずドリンクバーで良いかな、なんか食べる?」

にこ「うーん……いや、良いっ……!?」


そして、偶然にも視界に入ってしまったそれに思わず反応してしまう。
さすがに場違いな声を出してしまったからか、穂乃果も驚いて反応する。


穂乃果「え、何々どうしたの?」

にこ「い、いや何でもないわよ。ちょっと大きめの虫がいた気がして」

穂乃果「なーんだ。でも暑くなってきたから虫も増えてきたね」


そうね、なんて空返事をしながら、私の視線は向こうにくぎ付けだ。
……明らかに見覚えのある赤髪と、ボブカットの後輩がそこにいるのだから。
22: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:33:02.06 ID:Ap1fwyZO.net
ちょっと前

真姫「ねえ……やっぱり帰らない?まさかここに来るなんてあり得ないでしょ」

花陽「でも、もう入っちゃったし……」

いらっしゃいませー!

穂乃果「はい、2人で……禁煙でお願いします」


花陽「ほ、ほほほほ本当に来たよ!?」

真姫「お、おおおおお落ち着きなさい花陽!とりあえず絵里に連絡を……」

花陽「……ばれないかなぁ、こんなサングラスかけてて」

真姫「あの二人間抜けだから、大丈夫でしょ……多分」

花陽「ん?凛ちゃんからだ……『引き続き監視を続けよ』……乗り気だね」

真姫「はあ……こっちの身にもなってよ……」
23: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:33:50.24 ID:Ap1fwyZO.net
穂乃果「はい、ドリンクバー単品二つお願いします。じゃあなんかとってくるね、何が良い?」

にこ「んー、オレンジジュースお願い」

穂乃果「分かった、ちょっと行ってくるね」


あんがと、と適当に返事して、どう見ても不審者のそれに目を向ける。

大き目のきついピンクがフレームのサングラスをかけて、これでは「私たちは怪しい者です!」と看板を持って行進しているようなものじゃないか。

……そういえば、私も似たようなことしてたわね……
24: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:34:16.92 ID:Ap1fwyZO.net
そんな風に考えていたら


穂乃果「お待たせ―、はいオレンジジュース」

にこ「ありがと……はー、落ち着く」

穂乃果「そういえば希ちゃんと絵里ちゃん、誘わなくて良かったのかな」

にこ「何よ、二人じゃ不満?」

穂乃果「う、ううん!どちらかと言えば二人の方が……」


最後の方が良く聞き取れなくて「何?」と言うと「ううん、なんでもない」と少し慌てたように穂乃果が答える。

でも、どちらかというと大人数では私の方が困る。
今回は、少しだけ、勇気を出したいから
25: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:34:59.25 ID:Ap1fwyZO.net
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初めのうちは、どちらかというと嫌いな方だった。
能天気にヘラヘラと笑ってるくせに、私がほしかったもの、なくしちゃったものを全部持っているあいつが妬ましかった。
でも、それが全部あいつが計算でやっていることじゃなくて、内に持っている太陽みたいな暖かさから来ていることだという事を知ってから、そんな風には思えなかった。

明確に感情が変化したのは、絵里と希が加入した後くらいだった、と思う。

その頃はもうすっかり穂乃果に対する嫉妬心はどこかに消えてしまい、単純な憧れだったり、ライバル心を勝手に燃やしたりしていた。
そんなときだった。


穂乃果「にこちゃーん、一緒に帰らない?」

にこ「?良いけど……」


どういう風の吹き回しなのか、いつもは幼馴染と変えることがほとんどの彼女に誘われて、初めて二人で帰りを一緒にすごした。
そろそろ夏が迫りそうで、もう日がほとんど顔を隠しているのに、まるで日中のような暑さだった。


にこ「そういえば、何で二人きりなの?」


彼女のほうを向かずに、私はそう質問した。
いつもなら、ここにことりだったり、海未だったり。誰かいてもおかしくないから
26: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:37:06.40 ID:Ap1fwyZO.net
穂乃果もまた、私のほうを見ずに答えた。


穂乃果「うーん、なんとなく?」

にこ「なんとなくって何よ」

穂乃果「ごめん、冗談冗談……いや、にこちゃんとあまり二人で話したことないから、ちょっと気になって」

にこ「別に私は話すことなんてないわよ?」

穂乃果「私にはあるんだって……別に大して用事があるってわけじゃないんだけど、お話したかったの」


それから、いろんな事を話した。
将来のこと
学校のこと
昔のこと

とにかく話題が尽きないように、お互い必死だった
やがて話す内容も尽きて、無言の時間が訪れた。
27: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:38:01.15 ID:Ap1fwyZO.net
にこ「あんたって、意外と人のこと見てるわよね」

穂乃果「そんなことないよー、海未ちゃんに『穂乃果は周りが見えてなさすぎです!!』って怒られるし」

にこ「結構似てるし」

穂乃果「やっぱり?自身あるんだよね」


そう穂乃果が胸を張るので、たまらず吹き出す。
夕暮れが、私たちを暖かく迎えてくれて……いるとは思わないけど、それでもなんだかとても素敵な気分に慣れたのは確かだった。


穂乃果「まあいつもこんな感じだけど……これからもよろしくね」

にこ「ええ、よろしく」


穂乃果がおもむろに手を出してきたので、つられて私も手を差し出す。
そうして無意味に握手を交わした。その手は少し温かかった。

それから、無意識にあいつのことを見るようになって、それが友情とは別の感情だという事に気づくまで、そう時間は掛からなかった、と思う。

つまり、私は穂乃果のことが好きなんだって。
この想いを伝えたい、そう思っている。
28: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:38:47.47 ID:Ap1fwyZO.net
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私はふう、と一息ついて


にこ「そういえば、予定とか決めてる?」

穂乃果「えーと……実は白紙です……」

にこ「誘ってきた方がそんなんじゃダメでしょ全く……」


ん?確かに誘ったのは穂乃果だけど、それを誘導したのは私だったっけ?
まあいいか、せっかくの誕生日だし、少しくらいのわがままはきっと許してくれるだろう。
それに、今ここにいるのは何かと問題がある


にこ「とりあえず、ここ出てから考えましょ」

穂乃果「えー!だってまだ30分しかたってないよ?」

にこ「良いのよ別に。元々休憩目的で入ったんだし、十分休めたわよ」


もし、穂乃果が花陽と真姫を見つけたりなんかしたら、
穂乃果『えー、すごい偶然!ねね、みんなでにこちゃんのお祝いしない?』
となるに決まってる。

私は穂乃果の手を引いて「ほら、行くわよ!」と急かすのだった。
30: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:40:48.96 ID:Ap1fwyZO.net
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穂乃果が「そういえば」と思いついて、そこからは穂乃果に案内されるような形になった。
ファミレスから徒歩10分程度、大通りから離れたそこにあったのはアンティークショップだった。


にこ「へえ、結構良い雰囲気ね。あんたにしてはやるじゃない」

穂乃果「穂乃果だってたまにはこういうお店くらい行くよー」

にこ「……本当は?」

穂乃果「ことりちゃんに教えてもらいました……」


そんなことだろうと思った。私は店内を見渡した。
31: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:41:54.25 ID:Ap1fwyZO.net
雑貨中心で、手作り感のあふれるぬいぐるみやキーホルダー、中にはシルバーアクセサリーなども置いてある。


にこ「この熊のストラップ、穂乃果みたいね」

穂乃果「がおー!って違うよ!!」

にこ「やめてよ恥ずかしい……でもこれ可愛いわね」

穂乃果「本当?」

にこ「うん、誕生日はこれにしてもらおうかしら」


そう言いながら、ふとあるものが目に飛び込んだ。
正直チープだけど、ピンクシルバーの指輪だった。
思わず、見とれてしまった。


穂乃果「……にこちゃん?」

にこ「あ、ううんなんでもない……じゃ、お願いします」

穂乃果「はーい」


レジへ向かう穂乃果を見送り、再び指輪を眺める。
こういうの、穂乃果とおそろいでつけるのも悪くないな……

ただ、付き合ってもいない私がそんなものを渡して、なんになるんだろうか。
32: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:42:58.02 ID:Ap1fwyZO.net
穂乃果「お待たせ、はいどーぞ」


後ろから声をかけられ、おもわずびくっと体がはねた。


穂乃果「あれ、どうしたの指輪なんか見て」

にこ「あ、ううんなんでもない……ありがと」


さ、ここも見飽きたしそろそろ行きましょうか、と外に出ようとすると


穂乃果「……あ、ごめんにこちゃん先に外で待っててもらえる?雪穂から頼まれごとされちゃってて」

にこ「ん?わかった……」


それから10分もしないうちに穂乃果が店から出てきた。


にこ「さて、次はどこに行く?」

穂乃果「えっと、もう少し歩くと展望台があるから、そこ行かない?ちょうど夕陽が綺麗に見えると思う」

にこ「良いわね、行きましょうか」
33: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:44:07.74 ID:Ap1fwyZO.net
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−−20分ほど前

凛(よーし<希隊長、潜入に成功しました(≧ω≦)ノ>と……)

凛(うう〜、なんかドキドキする)

凛(はっ!希ちゃんからだ!)

希<引き続き監視を続けよ!

凛(了解です!……っと)

凛(あ、あのマグカップ可愛い!)
34: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:44:33.71 ID:Ap1fwyZO.net
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−そして現在

凛「まさかラス1なんて、買えてよかったにゃ〜」

凛「……にゃにゃっ!?にこちゃん達はいずこへ!?」

凛「と、とりあえず希ちゃんにメールを……」
35: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 21:45:04.09 ID:Ap1fwyZO.net
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凛「ごめんなさいにゃぁ〜!」

希「よしよーし、凛ちゃんがんばったね〜」

絵里「しかしこれは由々しき事態だわ……」

海未「ええ、消息がつかめないとなると……って!見つからないならもう諦めて帰りましょう!」

絵里「あら、結構乗り気だったじゃない貴女」

海未「そんなことありません!」

凛「でも凛をお店に入れたの海未ちゃんだったにゃ?」

海未「うっ……だって、気になるじゃないですか!」

花陽「開き直り!?」

真姫(もう、帰りたい……)

ことり「……心当たりがあるかも」

希「ほー、どこどこ?」

ことり「えへへ、任せてっ」
41: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 22:20:06.82 ID:vvllq6mg.net
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穂乃果に連れてこられてやってきたのは、少し高いビルの展望デッキだった。
とはいえこのあたりでは有名なほうなので、私もその存在は知っている。
というか私より穂乃果がはしゃいでるのが不思議だ。もしかして自分が行きたいだけじゃなかったのか。


穂乃果「見てみてにこちゃん、良い眺めだよ!」

にこ「そうねえ」

穂乃果「ねえ、本当に見てる?」


穂乃果が私を覗き込むように視界へ入ってきて、思わず胸が跳ねる。
私は「見てる、見てるから」と後ずさりする。無意識的に顔も赤くなってしまったため、夕焼けが綺麗なことに感謝しておこう。
見ると、なぜか穂乃果も顔が心なしか赤くなっている。


穂乃果「そ、そういえばもうそろそろおしまいかな?」


時計を見ると、もう6時になろうとしていた。確かに、夜のこともあるからそろそろ解散しないといけない

……だけど、もう少しだけいたいって、私の中の恋心がわがままを言っている

それでも素直になれない臆病者の私は「そうね」としか言うことができなかった。
42: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 22:20:59.55 ID:vvllq6mg.net
穂乃果「あ、良かったら記念写真撮らない?」

にこ「良いけど……逆光で見えなくならない?」

穂乃果「大丈夫大丈夫、最近のは写りもよくなってるし……ほらほら!!」


そう言いながら、穂乃果は私を抱き寄せて写真を撮った。


穂乃果「おっ、よく撮れてるよ、にこちゃん!」

にこ「どれどれ……確かに結構いい感じね」


見ると、良い笑顔の穂乃果と、反対にとても驚いた私の顔がはっきりと映っていた。
こんなんだったらちゃんと笑顔作っておくんだった。まあ良いか、これはこれで『らしい』って思えるし


穂乃果「えへへ、思い出にしようっと」

にこ「後で私にも送ってよ?」


もちろん!と答える穂乃果の笑顔が夕暮れにまぎれてとてもまぶしかった。
そんな時、後ろから声が聞こえた。


「あれ、穂乃果ちゃんと……にこちゃん?」


体が硬直した。全身の毛が逆立つような寒気を覚えながら振り向くと、そこにことりがいた。
43: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 22:44:48.57 ID:1WA0sa1j.net
穂乃果「おっ、ことりちゃん!どうしてここに?」

にこ「げっ……」


少しうれしそうな穂乃果をよそに、私は落ちてくる冷や汗をどう対処するか頭をめぐらせていた。


ことり「お母さんからのおつかいの帰りなの〜っ。二人はどうしてここに?」

にこ「ぱ、パーティに必要なもの買おうとしたらばったり会っちゃってねー!ね、穂乃果?」

穂乃果「え、あの、えっと……?」


我ながらなんてバレバレの嘘を、と思ったが、強引に「ねー?穂・乃・果?」と目配せをする。
穂乃果の方もわけがわからないというように「う、うん……?」と疑問符を浮かべながら適当にうなずいている。

にこ「いっけなーい、もうこんな時間!?にこはもう帰るねー!」

穂乃果「え、ちょ、ちょっとにこちゃん!?」

ことり「穂乃果ちゃんっ」

穂乃果「ん?」

ことり「あのね……」


穂乃果がことりに呼び止められていたみたいだけど、私はそんなことお構いなしにその場から逃げ去った。
44: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 23:17:04.05 ID:iSLS6CKn.net
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とりあえず降りてから少し待つと、穂乃果も一緒に降りてきた。
時間も時間だし、もう告白する気力も残っていない。そろそろ潮時だ。


にこ「……はー、まさかことりがここにいるなんて……流石にそろそろかいさ……」

穂乃果「あの、ね……にこちゃん」


穂乃果が呼び止める。


穂乃果「最後に、その……あそこの観覧車行かない?」


そう、この街にはちょっと場違いな観覧車が聳え立っている。
正直人気スポットでもないけど、結構遅くまで動いているので、夜景などを眺める分には良いと雑誌に載っていた気がする。
でも、何で今そこに行くんだろう?


にこ「いいけど……?」


とりあえず二つ返事でOKをしたものの、穂乃果はずっと無言だった。  
46: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 23:41:47.48 ID:pki6tyuQ.net
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−−一方その頃

絵里「観覧車?」

花陽「すぐそこのおっきいとこだよね?」

ことり「うんっ、多分そこに行くと思うよ!」

希「へー、なんでなんで?」

ことり「えへへ、ちょっとねー」

海未「ほら、早く行きますよ!」

凛「なんだかんだ海未ちゃんノリノリにゃ〜……」

真姫(……観覧車、乗ってみたいわね)
47: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/22(金) 23:59:44.07 ID:pki6tyuQ.net
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


観覧車は、ゆっくりと上昇して、だんだんと街が一望できそうなくらい高くなっていく。


にこ「……展望台もいいけど、観覧車も悪くないわね」

穂乃果「そ、そうだね……」


穂乃果が先ほどからそわそわしているように感じる。
髪を意味もなくいじったり、目を合わせようとしなかったり、こんなのいつもの穂乃果とはまるで別人だ。
私はたまらず

にこ「あんた、どうしたの?」


私の質問に、穂乃果はしばらく沈黙して、それからバッグをがさごそとあさり始めた。
取り出したのは、小さな箱だった。


穂乃果「……あのね、これ……プレゼント」


プレゼントはさっき貰ったと思うけど……
あの熊のストラップも結構かわいいし、満足している。
 

穂乃果「ううん、それとは別のやつ。もらってくれないかな?」

にこ「……まあいいわ。ありがと」
48: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:03:55.26 ID:X0J3Ww49.net
開けて良い?と聞くと無言でこくん、とうなずいたのでOKのサインと受け取って、丁寧に包装をはずしていく。
そうして出てきた箱を開けたら、そこには


にこ「……指輪?」


さっきのアンティークショップで見かけた、小さなシルバーリングだった。
まさか、買ってくれていたのか。そういえばあの時の様子が少しおかしかったように感じる。


穂乃果「うん、お揃い……えへへ」


穂乃果がはにかみながら右手につけた片割れを見せてくる。

……これは、まずい

多分、今の私は気持ち悪いくらいにやけている。
にやけていないにしても、その顔をおさえるために必死で、結局気持ち悪い顔をしている。
私は素直な気持ちで答える。


にこ「……結構本気で嬉しいわ」

穂乃果「えへへ、良かったぁ……えっと、それで……その……」


観覧車は、もうすぐ頂上へ到達しようとしている。
49: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:08:34.97 ID:X0J3Ww49.net
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―  


絵里「おまじない?」

ことり「うん。前クラスの友達に聞いたんだけど……あそこの頂上で告白すると、必ず成功するんだって」

希「はー……そんな逸話が」

海未「……やはり帰りましょう」

花陽「海未ちゃん?」

海未「二人に悪いですよ……茶化すのは野暮です」

絵里「そうね……あー、楽しかった」

凛「このマグカップ早く使いたいにゃあ〜」

真姫「……花陽、凛。うち、くる?」

凛「行きたいにゃー!」

花陽「私もっ!」

ことり(……きっと、うまく行くよ)
50: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:34:11.68 ID:zxwiV8nH.net
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―  



穂乃果「……にこちゃんが、好きです」


世界が止まった。
本当に止まるわけはなく、観覧車はこの間にも動いている。
始めは、何も考えられず、頭の中で言葉が反芻していくだけだった
ようやく頭の中に言葉が響いたところで

なんで?
いつから?

そんな疑問ばかり頭の中で渦巻いて、喜びという感情はまだ浮かんでこなかった。


穂乃果「えっと……聞こえなかった?」

にこ「いや、聞こえたんだけど……ちょっと待って混乱してる……え?」


落ち着いて深呼吸しても、ダメみたいだ。
それどころか一呼吸置いたせいで余計にその言葉が頭の中に響いてきて、心臓が爆発しそうだった。


にこ「……えっと……ありが、とう?」


辛うじてでた一言が、それだけ
『ありがとうってなに!?』とすぐ突っ込みたくなるような、間の抜けた返事だった。
51: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:39:06.78 ID:X0J3Ww49.net
にこ「えっと……」


そこから、お互い無言になる。
心臓が穂乃果に聞こえてしまいそうなくらい響いている。
多分、顔も真っ赤になっているだろう。現に穂乃果も耳まで真っ赤になっている。
流石に空気に耐え切れずに


にこ「……なんか喋ってよ」

穂乃果「……なんか」

にこ「そういうことじゃなくて……」


そこから、またお互い沈黙するも、穂乃果がすぐに口を開いた。


穂乃果「……ことりちゃんがね」

にこ「ことり?」

穂乃果「この観覧車で告白すると成功するって聞いて……にこちゃんとずっと一緒にいたいなぁって思って……それで……」
52: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:41:25.84 ID:X0J3Ww49.net
にこ「……あんたバカね」

穂乃果「え?」

にこ「別にそんなのなくても、私でよかったら一緒にいてあげるわよ」


これが、私の精一杯の返事だった。
天邪鬼な私の、精一杯の素直な気持ち
たぶん、そんなおまじないなんてなくても、きっと大丈夫だって


穂乃果「……にこちゃんっ!」


穂乃果がいきなりこちらへ飛び込むや、私を抱きしめてきた。
好きな人に抱きしめられるのは、なんだかこそばゆくて、嬉しくて、たまらなく恥ずかしい


にこ「ちょ、ちょっとなによいきなり!」

穂乃果「にこちゃんでも良かったら、じゃなくて……私はにこちゃんが良い、にこちゃんと一緒にいたい」

にこ「……私もよ」


今の私達を一言で表すとするなら、それは幸せだ

……ただ、一つだけ後悔があるとすれば、私の方から告白できなかったことだ
53: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:42:41.40 ID:X0J3Ww49.net
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観覧車から降りると、私の左手は穂乃果の右手を捕らえていた。
手もそうだけど、この顔の熱さは今まで経験したことがない。
多分、穂乃果も同じだろう。夕焼けのせいとは思えないくらいには赤く染まっている


穂乃果「……手、あったかいね」

にこ「いつも握ってたじゃない」

穂乃果「そうだけど、なんかいつもと違うなって」

にこ「……そうかもね」

穂乃果「駅、もうそろそろだね」

にこ「そうね」

穂乃果「ちょっと寂しいね」

にこ「……そうね」


そうだ、と穂乃果が口を開く。
54: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:43:42.83 ID:X0J3Ww49.net
穂乃果「……今度の日曜日さ」

にこ「ん?」

穂乃果「また遊ばない?……二人で」


それって、つまりデートっていうんじゃないか?とは流石にいえなかった。
それくらい、柄にもなく緊張していた。


にこ「……いいわよ」

穂乃果「今度はちょっと遠くに行きたいなぁ」

にこ「どのへん?」

穂乃果「……熱海?」

にこ「ふふっ、流石に日帰りでは行けないでしょ」

穂乃果「えー……じゃあお泊り?日曜日は無理だけど」

にこ「えっ……」


穂乃果の一言で、つい固まってしまった。
泊まりということは、つまり
穂乃果も気が付いたのか「あっ」と一言発して固まってしまった。  
55: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:45:26.01 ID:X0J3Ww49.net
にこ「まあ、いいけど……」

穂乃果「うん……」


気恥ずかしさから、無言になって私たちは駅まで歩いた。その手はずっと穂乃果とつながっていたけれど

あまりにもたどたどしくて、きっと何年後かの二人が見たら笑ってしまいそうな、そんな私達だった。


穂乃果「……もうついちゃったね」

にこ「そうねぇ」


もう目の前には、駅の入口が見えていた
もう、今日はおしまいだ
手を離したくないというわがままを、このとき叫びたかった。
もう少しだけ、体温を感じていたかった
56: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:46:23.41 ID:X0J3Ww49.net
穂乃果「じゃ、楽しんできてね」

にこ「ええ」

穂乃果「またね」

にこ「……うん」


少し、名残惜しい。
嘘。本当はすごく寂しい。こんなこと言うと笑われそうだけど、泣きたいくらい私はその手を離したくなかった。
すると、改札へ向かっていたはずの穂乃果がこちらへ駆け寄ってきて

穂乃果「……えいっ」


何か、柔らかい物が唇に触れた気がして、私がしているのがキスだということを知ったのは少し後のこと

唇の柔らかさだとか、穂乃果の香りとか、そんなものを感じたのは、ゆっくりと唇を離された後のことだった

口をぱくぱくさせて穂乃果を見つめる。穂乃果の顔はとんでもないくらい赤く、少し笑顔をたたえていた


穂乃果「……また明日っ!」


逃げられるように穂乃果が走っていく。


にこ「……なによ、あほのかのくせに……」


そんな穂乃果のことを、私は大好きだ
57: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:51:45.97 ID:X0J3Ww49.net
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―  

 
外から見たら、電気も消えて物音1つたっていない我が家に、少しどころじゃない違和感がある
そんな露骨さもなんだか微笑ましいけど、私はあくまで平静を装って扉をくぐる


にこ「ただいまー」


すると、急に部屋が明るくなり、そこには私の一番大事な家族が迎えてくれていた


「にこにーお誕生日おめでとう!」

にこママ「おかえりなさい。ほら、もう準備終わってるわよ?……あら?」

ここあ「にこにーなんかニヤついてる?」


途端に顔を抑える
まさか、ずっとそんな顔をしてた?
流石に動揺を隠しきれなかった


にこ「そ、そそそそんなことないわよ!?」

にこママ「……ねえ、にこ」

にこ「な、なに?」

にこママ「……今度紹介してね?」


そういうママの目が、私の左手を捉えていた事に気づいて、慌てて隠す


にこ「な、な……ち、違うからっ」

にこママ「ふふっ、あら、そう?」

にこ「もー!」

こころ「お姉さま、はやくはやくっ」

ここあ「めっちゃ頑張ったんだからね!」

にこ「もう、引っ張らなくても行くわよー」


3回も誕生日を祝ってもらえるなんて、私は幸せものだ
58: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:56:38.62 ID:X0J3Ww49.net
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もうすっかり夜の闇があたりを覆って、パーティもすごく楽しくて、私以上にはしゃいでたチビ達はすっかり眠ってしまった
リビングで一息ついて、左手をぼーっと眺めていたら、思わず笑みがこぼれてしまう


にこ「……ふふ」

にこママ「にこも、もうそういう人が出来る歳なのね」

にこ「ま、ママっ!?」


寝かしつけたあとなのか、ママが寝室から顔を出してきた
まさか、見られてた?


にこママ「隠してもダメよ?」

にこ「え、えっと……」


何も言えない私に反して、ママは柔らかい笑顔のままで私の向かいに座った


にこママ「だって指輪なんて付けてすごい綺麗に笑ってるんですもの、分かるわよ?」


やっぱり、親には敵わない
私はゆっくりと口を開いた


にこ「……あのね、ママ」

にこママ「なあに?」

にこ「……相手、女の子なの」

にこママ「へー……女の子」


私の告白にママが少しだけ驚いたように見えたけど、すぐに表情が元に戻った
59: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 00:57:24.43 ID:X0J3Ww49.net
にこ「うん……変かな……?」

にこママ「変だなんて、にこが選んだ子ならいい子に決まってるじゃない」


ママは優しく私に語りかけてくれた
それだけで、心がすっと落ち着くのを感じる


にこ「そ、そうかな?」

にこママ「そうよ……ねえ、どんな子なの?」

にこ「えっとね……」


それから、朝までかかりそうなくらい、穂乃果のことを話した。
ママは、優しい笑顔でそれを聞いてくれた。
やっぱり私は、幸せものだ。
64: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 01:07:08.36 ID:zxwiV8nH.net
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朝日が、今日の私を優しく迎えてくれているような、そんな気がする
もう誕生日は過ぎたけど、昨日あれだけ幸せになれたならそれでいい
……それはそれとして


にこ「……で、なんであんたがにこの家の前にいんのよ!」

穂乃果「……えへ、来ちゃった」


何故か穂乃果が家にいる
朝早くインターホンが鳴ったと思ったら目の前に元気そうな穂乃果がいたんだから驚きを隠せなかった


にこ「きちゃったじゃないわよもー!」

にこママ「あら、お友達……ってあなたμ'sの?」


なんてやり場のない怒り……?をぶつけていたら、準備を終えたのかママが部屋から出てきた
穂乃果はさっきまでのだらーっとした感じをやめ、背筋をピンと伸ばしている
なんだか、少し滑稽に見えて笑ってしまう


穂乃果「はい!リーダーをやってます、高坂穂乃果です!」

にこママ「えーと…そのにっこにっこにー♪の母です」

穂乃果「よ、よろしくお願いします!」


ママが何かに気づいたのか、急に笑顔をいたずらっぽいそれに変えて、穂乃果へ耳打ちする


にこママ「……お邪魔だった?」
65: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 01:08:55.37 ID:zxwiV8nH.net
穂乃果はきょとんとした後「いえ、そんなことは!」と返しているけど、私は思いっきり焦りながら

にこ「ちょっとママ!?」


穂乃果は何も気づいていないようで、またきょとんとした顔をしている


穂乃果「にこちゃんどうしたの?」

にこ「いや……その……」

にこママ「なんでもないですよー?穂乃果さん、にこをよろしくね?」

穂乃果「は、はい……?」

にこ「も、もうにこたち行くから、行ってきます!」


ほら、早く!と穂乃果を急かして扉へ急ぐ
とんでもなく恥ずかしかったけど、ちょっとだけ嬉しかったのは内緒の話だ
71: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 01:15:51.07 ID:zxwiV8nH.net
穂乃果「なんだったんだろ、にこちゃんのお母さん」


未だに気づいていない穂乃果をよそに、私は顔から火が出そうだった


にこ「……知らないっ!ほら、行くわよ!」

穂乃果「ちょっとにこちゃん置いてかないでよー!」


思い直してぴた、と立ち止まる


にこ「……あのさ」

穂乃果「……ん?」

にこ「手、繋がない?」


そう言って左手を差し出すと、穂乃果の顔が今まで以上に明るくなる


穂乃果「……うん!」


夏は朝から焼けるほど暑いけど、つないだ手はとてもあったかかった
72: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 01:16:45.00 ID:zxwiV8nH.net
そういえば、と私は口を開く


にこ「知ってた?」

穂乃果「え、なにを?」

にこ「オトノキって、アクセサリー禁止なのよ」


みるみるうちに穂乃果の顔が青くなっていくのがなんだかおかしく見えた


穂乃果「えー!早く言ってよ!付けちゃったよ!それに、にこちゃんだって付けてるじゃん!」


穂乃果の抗議に対して、私は至って冷静だ


にこ「学校で外せばいいじゃないのよ」


ほら、と私は指輪をさっと外す
穂乃果は何故か悔しそうな顔をしながら


穂乃果「うぐっ……そ、それもそうだよね、あはは……」

にこ「……ふふっ」

穂乃果「あー!にこちゃん笑った!」

にこ「笑ってないわよー」

穂乃果「嘘だー!笑ってたよー!」

にこ「笑ってないってば……ぷくく」


こういう朝も、案外悪くないって思う
76: 名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 01:21:09.55 ID:zxwiV8nH.net
にこ「あ、そうだ穂乃果」

穂乃果「ん?」

にこ「あんた誕生日の前の土日って暇?」

穂乃果「今んとこは暇かなあ」

にこ「なら、その日でかけない?……二人で」


どうせなら、少し遠出もしてみたいしと付け加えておく


穂乃果「うん!にこちゃん大好き!」

にこ「わっ、私も大好きよ!」


抱き着かれてしまい、反射的に返したものの、暑いし熱いしでどうにかなりそうだ


穂乃果「あれー、にこちゃん照れてるー?」

にこ「照れてないわよ!」

穂乃果「……顔真っ赤のくせに?」


いたずらっぽく私の顔をのぞき込むので、余計に顔が熱くなる


にこ「……もうっ!あほのか!知らないっ!」


そう毒づく私の顔が、あいつくらい笑顔だってことを、私はこの時気づいていなかった
79: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 01:49:56.39 ID:X0J3Ww49.net
しばらく歩いていたら、見覚えのある2年生2人組が歩いていた
そういえば、この辺は通学路だった


穂乃果「あっ!ことりちゃんと海未ちゃんだ!おはよー!」

ことり「おはよー、穂乃果ちゃんっ、」

海未「おはようございます。今日はにこと一緒なんですね」


ちょっとそこでね、なんてあからさまにぶっきらぼうにそう返す

はあ……せっかく二人きりだったのに……

なんて心の中で肩を落としていたら、スマホが小さく震えだした。穂乃果からだ


穂乃果<そんなに拗ねなくても、放課後いっぱい遊ぼ?


心のなかで「バカ」と悪態をつく私の顔は、とても笑顔だったと思う。


海未「なんだかにやついていますが、どうかしました?」

穂乃果「えへへ、なんでもなーいっ!ほらいこっ!」
80: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 01:53:12.86 ID:X0J3Ww49.net
……多分、今が人生で一番幸せだって感じる
好きな人と一緒にいられたし、それ以上にいろんな人に祝福を受けて


ことり「ほらにこちゃんもはやくっ」

海未「急がないと遅刻してしまいますよ」


来年も、人生で一番幸せだった……なんて言えるのかしら?


穂乃果「よーし……いこっ、にこちゃん!」

にこ「ちょっと、引っ張らないでよ!」


その前に一番幸せにしたいやつがいるから、まずはそっちからだけどね


にこ「……ふふっ」

穂乃果「どうしたの?」

にこ「なんでもない、ほら行くわよ!」

穂乃果「……うん!」


願わくば、どうかこの太陽がいつまでも私の隣で微笑んでいてくれますように

なんてね。
81: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/23(土) 01:54:36.02 ID:X0J3Ww49.net
これにておしまい。

一生に一度しかないこの瞬間を、あなたと二人で過ごしたい

そんなテーマでした。
ありがとうございました。

8/3にまた会いましょう
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